ベ ン トス研究会 誌
Benthas Research 24,1983砂 質 干 潟 に お け る 、 移 動 性 の 多 毛 類Armandia
sp.の
生 態 分 布 を 決 定
す る 要 因 の:解析(予
報)
玉
置
昭
夫
(九州大学理学 部天 草臨海実験所)
Analysis
of
the
factors
determining
the
ecological
distribution
of
the
mobile
po lychaete
A rmandia
sp,
on
an
inte rtida I sand
flat
(preliminary
report)
Akio TAMAK I
Abstract
Analytical
study
was carried
out on the factors
which regulate
the
ecological
distribution
of the mobile
polychaete
Arrnandia sp, on
an intertidal
sand flat.
The larval
settlement
on the particular
zones of the
flat
is determined
by the three
processes:
passive
accumulation
of the larvae
by slowdown of the transporting
force
of the water
current
or the wave, active
selection
of the substratum
by the settling
larvae,
and predation
by the hermit
crab pioaenes
niti.dimanus
and exclusion
by the ghost
shrimp C'allianassa
japonica.
In the summer season
when the sea water
on the flat
is calm,
the
subsequent
population
movement after
settlement
on the flat
can be
regarded
as a random dispersion
process
on a one-dimensional
space
with an incomplete
reflection
boundary
due to sand ejecting
activity
of Callianassa.
In winter
when the northery
wind prevails,
the
vigorous
incoming
waves together
with the flow tide
expel
the animals
from the surface
of the sand and carry
them to the landward
end of
the flat.
は じ め に
一般 に 、砂泥底 ベ ン トスの分布要因が論ぜ られ る時、成体 の分布 とその時点 における幾 つか の物
1)
九 州 大 学 天 草 臨 海 実験 所 邦 文 業 績
第63号
2)
こ の 報 文 は 、 昭 和56年11月24・25日東
京 大学 海 洋 研 究 所 で開 催 され た 「多 毛 類 の 分 類 ・生
活 史 ・生 態 に 関 す る シ ンポ ジウ ム」 で発 表 した概 要 に一 部 加 筆 した もの で あ る6
*)
国 立 科 学 博 物 館
、 今 島 博 士 の 査 定 に よれ ば、 本 種 形 態 は
、Armandia bioculata Hartman
理 ・化 学 的要 因 の 分 布 の 相 関 が 考 察 さ れ る こ とが 多 い 。 しか し、 観 察 され た成 体 の 分 布 は 、 浮 遊 幼
生 の 底土 へ の 定 着 お よ び その 後 の 移 動 ・分 散 な どの 過 程 が 複 合 され た結 果 の は ず で あ る。 しか も、
それ らの 過 程 に は物 理 的要 因 の み な らず 、 生 物 学 的 要 因 の 作 用 が 含 ま れ て い る。 本 稿 で は、 砂 質 干
潟 に お け る移 動 性 の 多 毛 類 の一 種Armandia sp,(オ
フ ェ リア ゴ カ イ 科)を 取 り上 げ、 そ の 時 空 間
分 布 が い か に生 息 場 所 の 構 造 に規 定 さ れ、 また い か に同 位 栄 養 段 階 に あ るベ ン トス種 問 の 関 係 に よ
って 変 容 を 受 け るか を 実 証 しよ うと した研 究 の 概要 につ い て 述 べ る。 同時 に 、 分 布 に 関 与 して い る
物理 的 要 因 と生 物 学 的 要 因 を 分 け る こ との難 し さを 実 例 を 挙 げ て論 じた い。
研 究 地 の 概 観 研 究 地 は 、 西 九 州 、 天 草 下 島 の 北 西 に あ る 富 岡 湾 に 面 し た 砂 質 干 潟 で あ る (図1)。 大 潮 最 大 干 潮 時 に は 、 岸 か ら335π しの 距 離 に わ た っ て 干 出 す る 。 干 潟 の 高 度 は ほ ほ 小 潮 平 均 低 潮 線 よ り 下 に あ り、 ま た そ の 傾 斜 は 緩 や か(1 /300)で あ る(図5)。 干 満 差 は3 mほ ど あ り 、 毎 日 全 域 が 水 没 す る 。 干 潟 は 北 東 方 向 に 開 け て い る の で 、 季 節 風 の 影 響 の 受 け 方 に は 大 き な 季 節 差 が あ る 。 す な わ ち 、 夏 は 時 た ま の 台 風 時 を 除 い て 、 凪 ぎ あ る い は 南 寄 り の 風 の 日 が 多 い の で 、 干 潟 上 の 水 は 静 穏 で あ る が 、 そ れ 以 外 の 季 節 に は 北 寄 り の 風 が 卓 越 す る の で 、 沖 か ら 大 波 浪 が 押 し 寄 せ 、 荒 れ る こ と が しば しば あ る 。 干 潟 堆 積 物 は 、 粒 径 値 が0.125∼0.25mmの 細 砂 を 主 と し、 シ ル トー 粘 土 分 は2.5%以 下 で あ る。 砂 層 の 厚 さ は 、 最 も岸 側10m幅 の 帯 状 部 で5∼10cmで あ る こ と を 除 い て は 、30∼60cmで あ り、 そ の 下 は 貝 類 遺 骸 の 厚 い 堆 積 層 に な っ て い る。図1調
査 地(黒 塗 矩 形 部)付 近 の 地 形
ベ ン ト ス の 採 集 法 調 査 区 域(図1黒 塗 部)は 、 構 幅300mの 矩 形 地 で あ り、 こ こ に60∼ 五20飛 間 隔 で4本 の トラ ン セ ク トを 設 け た 。 トラ ン セ ク ト上 、 岸 か ら 大 潮 平 均 低 潮 線 ま で10∼30mご と に 採 集 地 点 を 設 定 し た 。 1979年7月 以 来 毎 月1∼2回 、 大 潮 干 潮 時 に25㎝ ×25㎝ ×10㎝ 深 の 方 形 枠 内 の 砂 を1㎜ 目 の 篩 で ふ る い 、 残 っ た 動 物 を10%ホ ル マ リ ン水 溶 液 で 固 定 した 。 後 日 、 こ れ らを 実 体 顕 微 鏡 の 下 で 同 定 ・計 数 した(成 体 の 調 査)。 ま た 、1本 の 代 表 トラ ン セ ク トを 選 び 、 大 潮 時 ご と に 、88cm2×1.4㎝ の 円 筒 コ ア に よ っ て 砂 柱 を 採 取 し、 ホ ル マ リ ン 固 定 し た 。 こ れ らを 、0.125tmn目 の 篩 上 に 洗 い 出 し 、 採 れ た 動 物 を 実 体 顕 微 鏡 の 下 で 同 定 ・計 数 し た 。 さ ら に 描 画 装 置 つ き 実 体 顕 微 鏡(25倍)を 用 い て体 長 の 測 定 も行 な った(定 着 幼 生 の調 査)。
多 毛 類 の う ち 、 な ぜArmandia
sp.に
注 目 し た か
1979年7月 に お け る 、 干 潟 各 地 点 の 成 体 ベ ン トス 種 組 成 の 類 似 度 を 木 元 のCπ指 数 に よ り求 め 、 田 中1未 発 表)の 重 心 法 に よ っ て 地 点 の ク ラ ス タ ー 化 を 行 な っ て み る と 、 大 き く4群 が 認 め ら れ た 。 そ れ ぞ れ の 群 は 海 岸 線 に 平 行 な 分 帯 に 対 応 して お り、 数 的 に 優 占 す る種 あ る い は 標 微 種 に よ っ て 、 岸 か ら 沖 へ 向 か い 、Prionospio krusadensis、 Callianassa japonica(ニ ホ ン ス ナ モ グ リ)、 Solen strictusで マ テ ガ イ)、Umbonium moniliferum(イ ボ キ サ ゴ)-Diogenes nitidimanus
(テ ナ ガ ツ ノ ヤ ドカ リ:イ ボ キ サ ゴ の 空 殻 に 生 息 す る)、 帯 と 名 づ け ら れ る(図2)。 こ の う ち 、 大 型 で 数 的 に 優 占 す る ニ ホ ン ス ナ モ グ リ と イ ポ キ サ ゴ ー ヤ ドカ リは 、 底 質 環 境 の 変 革 作 用 や 捕 食 作 用 な ど を 通 じて 、 よ り小 型 の マ ク ロ ベ ン トス 各 種 の 生 存 や 挙 勤 に 大 き な 影 響 を 与 え 、4分 帯 を 形 成 す る の に 貢 献 し て い る こ と が 、 そ の 後 の 研 究 に よ り 明 ら か に な っ て き た 。 と こ ろ で 、 こ れ ら 大 型 ベ ン ト ス の 分 布 は 、 幾 つ か の 物 理 的 要 因 に よ っ て 第 一 義 的dC定 さ れ て い る こ と が 分 か っ て い る 。 こ こ で は 、 ス ナ モ グ リの 生 存 は 、 餌 と し て の デ トラ イ タ ス の 濃 度 と 砂 層 の 厚 さ に よ っ て 規 定 さ れ る た め 、 そ の 分 布 は 最 も 岸 測10m幅 を 除 い た 高 潮 帯 に 限 定 され て お り、 ま た 懸 濁 物 食 者 で あ る イ ボ キ サ ゴ や ヤ ドカ リは 、 冠 水 時 間 と 懸 濁 微 小 餌 粒 子 の 濃 度 の 制 約 に よ っ て 図2砂 質 干 潟 の 群 集 帯 区 分 。4本 の ト ラ ン セ ク ト 上の 白 ヌ キ 幅 、 点 刻 幅 お よ び 黒 塗 幅 に よ り、 そ れ ぞ れ 方 形 枠(625cm2)あ た り の イ ボ キ サ ゴ 、 テ ナ ガ ツ ノ ヤ ドカ リの 個 体 数 お よ び ニ ホ ン ス ナ モ グ リの 巣 穴 の 数 を 示 す(1979年7月 中 旬 の デ ー タ) 。 低 潮 部 側 半 分 に し か 生 息 で き な い と だ け 述 べ て お く(図5参 照)。 と こ ろ で 、 小 型 マ ク ロ ベ ン トス の 生 活 型 は 、 そ の 移 動 性 に よ っ て 大 き く2分 で き る 。 す な わ ち 定 住 型 と 移 動 型 で あ る 。 こ れ ら の 分 布 要 因 を 解 析 す る た め の 作 業 量 は 、 後 者 を 扱 う 時 の 方 が 、 移 動 す る 分 だ け 多 く な る 。 そ れ ら に 対 し て 開 発 さ れ た 方 法 は 、 少 し修 正 を 加 え れ ば 前 者 に 対 して も適 用 で き る こ と に な る 。 さ ら に 、 干 潟 に 優 占 す る 各 多 毛 類 の ト ラ ン セ ク トに 沿 う 分 布 の 形 は 、 広 が り方 に は 差 が あ る も の の 、 基 本 的 に は 同 類 型 と み な せ る こ と が 分 か っ た 。 こ の よ う な わ け で 、 優 占 多 毛 類
の 中 で 最 も 和 動 力 の 大 き いArmandia sp.の 分 布 に 対 す る 物 理 的 要 因 お よ び 上 記 大 型 ベ ン トス の 活 動 の 影 響 に つ い て 検 討 す る こ と に な っ た 。 本 種 成 体 の 体 長 は1㎝ ほ ど で 、 砂 粒 を 食 べ な が ら砂 表 層1㎝ 以 内 を 移 動 す る 。 解 析 の 順 序 と し て 、 ま ず 浮 遊 幼 生 の 状 態 か ら 干 潟 に 定 着 す る 時 の プ ロ セ ス を 検 討 し、 次 に 定 着 後 の 移 動 を 扱 う。 Armandia sp.幼 生 の 干 潟 へ の 定 着 初 め に 、 周 年 に わ た るArmandia sp.幼 生 の 加 入 の 時 間 変 化 を 図3に 示 す 。 こ の ほ か 体 長 組 成 の 図3Arntandia Sp.個 体 群 密 度 の 時 間 的 消 長 。 トラ ン セ ク トG(図2)上 の 全 採 集 地 点 の 密 度 を 総 計 し た 。 黒 塗 部は 、 変 態 前 の 個 休(新 規 定 着 個 体 と み な せ る)を 表 わ す 。 定 着 幼 生 採 集 サ ン プ ル よ り 作 製 。 図41980年 、6月29日 お よ び7月14日 に お け る 、Armanciia sp,個 体 群 の 体 長 組 成 の 場 所 変 化 。 ト ラ ンセ ク ト(;(図 2)上 の 各 採 集 地 点 ご と に 、 定 着 幼 生 採 集 サ ン プ ル よ り サ イ ズ ヒ ス ト グ ラ ム を 作 り 、 岸 か ら沖 へ 向 か っ て順 次 た て に並 べ た 。 ヒ ス トグ ラ ム 中 、 黒 塗 部 分 は 、 変 態 前(新 規 定 着)の 個 体 を 表 わ す 。
推 移 な ど も検 討 した 結 果 、 時 間 的 な加 入 様 式 は、 原 則 的 に は 大 潮 周 期 と一 致 して い る こ とが 分 か っ
た 。 ま た、 特 に1980年6月
下 旬 に大 量 の 加 入 が あ り、 そ の 後1ケ 月半 ほ ど大 き く減 少 して い る の
が 目立 つ。 そ こ で まず 、6月 下 旬 か ら7月 中 旬 に か け て の 個体 群 の 動 きを 夏 季 の 様 相 の 典 型 と して
取 り上 げ る。 図4は
、 トラ ンセ ク トG(図2)上
の各 採 集地 点 ご と に定 着 幼 生 採 集 サ ンプ ル よ り作
製 した 体 長 組 成 図 を 、 採 集 日 ご と に ま と め た も の で あ る。6月 下 旬 、Armandia幼
生 の 定 着 は 、 干
潟 中 央 部 の マ テ ガ イ 帯 と最 も岸 側 のPrionospio帯
周 辺 に限 定 して 行 な わ れ て お り、 イボ キ サ ゴ帯
や ス ナ モ グ リ帯 へ の 定 着 は ず っ と少 な い。 と こ ろで 、一 般 にベ ン トス浮 遊 幼生 が 砂 泥 底 に定 着 す る
時 、 そ の 分 布 は 局 在 して い る こ とが 多 い と言 わ れ て い る。 そ の プ ロ セス を 扱 う際 には、 少 な くと も
以 下 の3つ の 可 能 性 を 検 討 しな け れ ば な らない 。(1)浮遊 幼 生 が、 能動 的 に あ る底 質 を 選 択 して 定 着
す る、(2)そ の幼 生 に対 す る排 斤 力 や致 死 作 用 を 持 つ 種 が 特 定 の地 域 に生 息 して い るた め 、 定 着 場 所
が それ 以 外 に限 られ る、(3)海水 の 流 れ や 波 浪力 の 勢 い が 減衰 す る こ とに よ って、 幼 生 が あ る箇 所 に
受 動 的 に 集 積 され る。
表1Armandia sp.浮
遊 幼 生 の 干 潟 特 定 群 集 帯 へ の定 着 を決 定 す る要 因 の 可 能 性 と その 検 証
*ス ナ モ グ リが 通 常 表 癌 下10em以 下 の 深 屑 に 住 み 、 浅 い 砂 層 に 入 ら な い 性 質 を 利 用まず 、(1)と(2)の可 能 性 を、 観 察 や 実 験 に よ って検 討 した 結 果 を 表1に
示 す。 これ に よ り、 イ ボ キ
サ ゴ帯 と マ テ ガ イ帯 の 間 でArmandiaの
定 着 数 に差 が あ る の は 、 砂質 の 誘 引 力 の 差 に加 え て、 致
死 作 用 が あ る ヤ ドカ リの 存 否 の 差(図2、 ト ラ ンセ ク トG参 照)に よ る と こ ろ が 大 き い と思 わ れ る。 一 方 、 ス ナ モ グ リ帯 の砂 の誘 引力 はRrionospio帯 の 砂 と 同 程 度 で あ る の で 、Prionospio帯 に 比 べ て ス ナ モ グ リ帯 へ の 定 着 が 少 な い の は 、 ス ナ モ グ リの 活 動 が 原 因 し て い る の で あ る 。 ス ナ モ グ リは 造 巣 、 摂 食 活 動 に よ っ て 生 じた 排 出 砂 を 巣 穴 開 口 部 の ま わ り に 排 出 し、 マ ウ ン ドを 形 成 す る。 室 内 に お い て 、 こ の 活 動 は 確 か にArmandia幼 稚 体 を 殺 し う る こ と が 示 さ れ た が 、 そ の 割 合 は 小 さ く、 野 外 に お け る 定 着 数 の 少 な さ を 説 明 で き る ほ ど で は な か っ た 。 筆 者 は 、 ス ナ モ グ リ帯 に 入 っ た 浮 遊 幼 生 は 、 ス ナ モ グ リが 砂 を 排 出 す る 際 に 生 ず る 上 向 き の 噴 出 流 に よ っ て 吹 き飛 ば さ れ 、 さ ら に 上 げ 潮 流 に 乗 せ ら れ て 岸 近 く に ま で 運 ば れ 、 そ こで 定 着 す る の で あ る と考 え て い る 。 こ の よ う な 、 ス ナ
モ グ リの 砂 粒 子 排 出 に伴 う微 細 物 吹 き飛 ば し作 用 は、 トラ ンセ ク ト0に 沿 う粒 度 分 析 の結 果 に も 明
瞭 に 出 て き た(図5)。 す な わ ち 、 シ ル トー 粘 土 分 の 割 合 は 、 大 潮 低 潮 線 か ら 中 央 部 マ テ ガ イ 帯 ま で 漸 増 し て い る が 、 ス ナ モ グ リ帯 に 到 る と 急 減 し 、 岸 近 く に な る と 再 び 増 加 して く る 。 こ こ で 、 上 記(3)の 可 能 性 を 検 討 して み る 。 図5の 干 潟 高 度 プ ロ フ ァ イ ル を 見 る と 、 マ テ ガ イ 帯 は よ り 低 潮 部 か らの か け 上 り の つ き あ た り、 す な わ ち テ ラ ス を 成 し て い る 高 潮 部 へ の ス テ ッ プ に な っ て い る こ と が 分 か る 。 こ の 付 近 に 至 る と 、 砂 を 構 成 す る 鉱 物 粒 と 貝 殻 片 の う ち、 よ り 比 重 の 軽 い 成 分 で あ る後 者 の 割 合 が よ り低 潮 部 側 に 比 べ て 急 増 し、 ま た 大 型(≧2㎜)の 貝 類 遺 骸 が た ま っ て く る(図5)。 こ れ ら の 事 実 は 、 沖 か ら侵 入 し て く る 波 浪 の エ ネ ル ギ ー が 、 マ テ ガ イ 帯 を 越 え る ま で に ほ と ん ど 放 出 さ れ て 失 わ れ る こ と を 示 して い る 。 そ れ に 伴 っ て 、Armandiaの 幼 生 も受 動 図5ト ラ ン セ ク トG(図2)に 沿 う 高 度 プ ロ フ ァ イ ル お よ び 堆 積 物 組 成 の 諸 因 子 の 変 化(1980年 7月 下 旬 の 測 定 値)。Silt-Clay: Fraction <63um, Shell *:Shellfragments/Mineral+Shell fragments(≧ 63um), Shell**: Shell remains≧2mm, Sorting:σI,(lnclusive graphic standard deviation)=φs4-φis4+φ9亀 毛 φ5・
的 に 集 積 され た可 能 性 も大 い に あ る。 実 際 マ テ ガ イ帯 は 、 多 くの 種 の 浮 遊 幼生 が 定 着 す る場 所 に な
って い る。 な お 、 干 潟 の 最 も岸 側 に位 置 す るPrionospio帯
の 砂 層 の 厚 さは5cmほ
どで あ り(図5)、
この よ う な浅 い砂 層 を 嫌 うス ナ モ グ リの 侵 入 か ら免 れ て い る。 その た めArmandiaの
定 着 も保 証
され て い る。
Armandia
sp.の
干 潟 定 着 律 の 移 動
実 は 、Armandia sp.は
、 干 潟 に定 着 して か ら しば ら く幼 稚 体 の 時 期 を 過 ご し た 後 、 再 度 変 態
して成 体 型 に な る(図3、4)。
変 態 に伴 って 、 形 態 は うず む し形 か ら紡 錘型 に変 わ り、 食 性 も底 表
の有 機デ トラィタ ス食 か ら、 砂粒 を飲 み 込 ん で、 そ の 表 面 の有 機 物 を 消化 す る型 に変 わ る。 定着 か ら
二 度 目の 変 態 ま で の 期 間 は 長 くみ て も2週 間 で あ る(図4)。
さ らに 本種 は変 態 。成 長 しな が ら、
定 着 場 所 か ら移 動 じて ゆ く。 図4を
見 る と、1980年6月
下 旬 に定 着 して か ら2週 間 後 まで に 個体
群 が 移 動 して い る こ とが 読 み とれ る。 特 に マ テ ガ イ帯 か らイ ボ キ サ ゴ帯 へ の フ ラ ッ クス が顕 著 で あ
る。 ま た、Prionospio帯
か らス ナ モ グ リ帯 へ の フ ラ ック ス も存 在 す るが 、 そ の進 行 速 度 は 前 者 の そ
れ よ りも小 さい 。 一 方 、 マ テ ガ イ帯 か らス ナ モ グ リ帯 へ の フ ラッ クス は ず っ と小 さい。 この よ う な
フ ラ ック ス の 差 を もた らす 要因 と して 、 以 下 の4点
に絞 る こ とが で きた。(1)隣接 す る群 集 帯 の 砂 質
の間 で、 本 種 成 体 を 誘 引す る力 に 差 が あ る、(2)本種 成 体 は 、 ス ナ モ グ リの排 出 す る砂 の堆 積 の 下 敷
に な って死 亡 す る、(3)む しろ 、 ス ナ モ グ リに よ る砂 の 再 堆 積 作 用 は 、 本種 の忌 避 行 動 を 引 き起 こす、
(4)本 種固 休 間 に 空 間 占有 を め ぐって 反 発 力 が 生 じ、 そ れ が一 部 個体 群 を 「空 白地 」 に押 し出 す原 因
と な る。
表2/Armandia sp.成
体 の 移 動 を も た らす要 因 の 可 能 性 とそ の検 証(室
内 実験)
筆 者 は 、 以 上 の 可 能 性 を 室 内 実験 に よ って 検 証 して い っ た。 そ の結 果 を ま とめ て 表2に 示 す。 本
種 成 休 は 、 餌 と して の 砂 粒 表 面 の有 機物 被 膜 の質 を口 吻 に よ って吟 味 しな が ら、居 るべ き砂 を 選 ん
で い る。 底 質 選 択 姓 実 験 の 結 果 は、 ス ナ モ グ リの活 動 に よ って砂 粒 の餌 料 価 値 が上 昇 した こ とを 示
唆 す る。 しか し、 ス ナ モ グ リが 本種 を排 除 す る こ とが 肯 定 され た の で、 現 実 の野 外 で は スナ モ グ リ
の 砂 の 再 堆 積 作 用 に よ る 排 斥 力 が 砂 質 の 誘 引 力 を 上 回 る た め 、 本 種 成 体 の 侵 入 を 阻 害 し て い る こ と に な る 。 ま た 、 ス ナ モ グ リ帯 の 砂 質 そ の も の は 魅 力 が あ る の だ か ら 、 い っ た ん そ こ に 入 っ た 本 種 個 体 群 は ゆ っ く り と 分 散 す る こ と に な る 。 一 方 、 マ テ ガ イ 帯 と イ ボ キ サ ゴ 帯 の 砂 の 誘 引 力 に は 差 が な か っ た 。 ま た 、 本 種 個 体 間 の 反 発 性 は 検 出 さ れ な か っ た 。 以 上 の こ と か ら、 本 種 成 体 の 夏 季 に お け る 移 動 は 、 物 理 的 な 壁 (一 岸 壁)の み な ら ず 、 ス ナ モ グ リ の 形 成 す る生 物 学 的(不 完 全)反 射 壁 を 持 つ よ う な 一 次 元 空 間 上 を 、 密 度 に 依 存 しな い で ラ ン ダ ム に 分 散 す る過 程 と し て 扱 え る だ ろ う。 冬 期 に お け るArmandia sp. 個 体 群 の 動 き 冬 期 に お い て は 、Armandia sp.越 冬 個体 群 の 分 布 は 次 第 に 岸 方 向 に 片 寄 っ て く る(図6)。 こ れ は 、 こ の 時 期 の 北 寄 り の 季 節 風 が 引 き起 こす 大 き な 波 浪 が 沖 か ら干 潟 に 侵 入 し て く る 時 、 動 物 を 砂中 か らた た き 出 し、 さ ら に こ れ ら が 上 げ 潮 流 に よ っ て 岸 方 向に 運 ば れ る か ら で あ る 。 こ の こ と は 、 北 風 の 強 い 日 、 現 場 に お い て ス レ ッ ジ ネ ッ ト用 の 網 を 底 表 か ら離 して 固 定 し、 浮 遊 して ぐ る ベ ン トス を 捕 捉 す る実 験 を 行 う こ と に よ っ て 確 証 で き た 。 図61980年10月 下 旬 ∼1981年2月 下 旬 に お け る 、hラ ン セ ク トG(図2)上 のArmandia sp.成 体 の 分 布 。 成 体 採 集 サ ン プ ル よ り作 製 。