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一党優位と二党競合 : マレーシア、トルコ、インド

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一党優位と二党競合 : マレーシア、トルコ、イン

著者

間 寧

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

IDEニュース

2

ページ

6-7

発行年

2018-12

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00050636

(2)

ア ジ 研 の 公 開 講 座 報 告

アジ研の公開講座報告

IDE N

ews

6 IDE ニュース No.2(2018.12)  本コースでは、競争的な選挙制度のもとで なぜ一党優位制や二大政党制という異なる政 党制が成立し、維持されているのかをテーマ に選んだ。そして⑴かつての一党優位制の崩 壊後、徐々に二大政党へ移行したインド、⑵ 近年野党が伸張して一党優位が崩れ、今年 5 月の総選挙でついに政権交代が実現したマ レーシア、⑶一党優位制を生んだ議院内閣制 の廃止(大統領制の導入)を決めたトルコと いう 3 カ国を取り上げ、この問いに答えた。 また、政党制の違いに応じて、どのような政 治や政策が生まれているのかを考察した。  一党優位制とその衰退を比較したのが、表 1 である。一党優位制成立の主な要因は、広 い政権基盤、政権のブランド力、選挙で勝利 を導く戦略、支持層への所得分配である。で はなぜ一党優位制は衰退に向かうのか。イン ドではそもそも所得分配が高階層に偏ってい たため、他の 2 国と比べて一党 優位制の基盤が脆弱化する可能 性が高かった。マレーシアでは 盤石に見えた一党優位制も、指 導者の汚職という新たな負の要 因の発生により終焉を迎えた。 トルコでは一党優位制確立を助 けた議院内閣制をあえて廃止し、 大統領制に移行したことで政党 制が揺らぎ、衰退の兆候を見せ ている。  各国についての講演の内容は 以下のとおりである。インドで は独立以来、国民会議派による 一党優位制が成立したが、1960 年代後半から 80 年代にかけて 政党制は揺らぎ、徐々に二大政 党制へ移行した(図1)。政治 社会的複雑性を持つインドに とって一党優位体制はそもそも

一党優位と二党競合

――マレーシア、トルコ、インド――

間   寧

0 10 20 30 40 50 60 70 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 (%) 投票率 会議派 大衆連盟/インド人民党(BJP) (注)「大衆連盟」(1951 ∼ 77 年)は「インド人民党」(BJP)(1980 年∼)の前身。 (出所)Election Commission of India (http://eci.nic.in) に提示されている連邦下院

選挙データより筆者作成。 図 1 連邦下院選挙における投票率および「会議派」と「インド人民党」(BJP)の 得票率 表 1 一党優位制とその衰退の比較 国 与党 基盤 ブランド 選挙 分配対象 衰退の主因 インド 国民会議派 広階層 独立主導 カーストや地主によ る動員 高階層 経済失政と分配 不平等 マレーシア 連盟党 多民族 独立主導 一票格差と少数派取 り込み 多数派民族 指導者汚職 トルコ 公正発展党 保守派 経済成長 組織政党による動員 低所得者 大統領制移行 (出所)筆者作成。

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アジ研の公開講座報告

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7 IDE ニュース No.2(2018.12) 不自然な政党システムだった。1980 年代末 以降は、インドは合従連衡による頻繁な政権 交代、そして 2 大連合政党制の時代に入っ た。2000 年代以降は 2 大連合政党制の時代で、 与野党ともに合意形成が求められ、より巧み な戦略が必要となっている。政党間の安定的 関係の維持を優先するため、与党は不人気な 政策(労働関連法、小売業への外資開放、農 業補助金削減など)をとりにくくなっている。  マレーシアの今年 5 月の初の政権交代では、 ナジブ前首相の信用失墜が根本要因で、これ にマレー人票の分裂が加わった(図2)。民 主主義の定着に向けた政治制度改革が進展す る兆しがある一方、課題は山積している。現 時点では公約への対応に追われ、成長戦略は 不明である。まずは賢人評議会答申と 5 カ年 計画中間報告が、今後を見通すための指針と なる。選挙後に連立与党が安定多数を確保 し、短期的には政権瓦解のリスクを回避する であろう。ただし潜在的リスクとして、マハ ティール首相からアンワル氏への後継、多民 族連合対マレー人政党への両極化、連立与党 政党間の政策志向の相違、将来の首相選出方 法の未定などが存在する。   トルコで 2002 年以降 に 公 正 発 展 党(AKP) を与党とする一党優位制 が台頭した大きな理由は、 経済の高成長と安定化 だった。一党優位制確立 (2011 年)以降は、AKP は社会を価値観的に両極 化させる戦略を採ったが、 それが支持基盤を固めた と は 言 い 切 れ な い。 実 際、大統領制導入の動き が 始 ま る と、AKP 支 持 者の一部が競合政党であ る民族主義行動党(MHP)へ流出している。 2016 年末以降の国民投票や選挙では MHP の 協力で何とか過半数支持を維持している(図 3)。2017 年に集権的大統領制が導入された ことで議会の役割は低下し、与党の機能も低 下すると見込まれる。一党優位制は大統領制 の導入に寄与したが、大統領制は一党優位制 を衰退させるだろう。 (はざま やすし/アジア経済研究所 地域 研究センター) 図 2 希望連盟を支持したのは誰か?    0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 2008年 2008年 2013年2013年 2018年2018年 0 20 40 60 80 100 -45 -40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 0 20 40 60 80 100 (注)1) マレー半島部の選挙区(165)が対象。マレー人比率が高い選挙区ほど国民戦線の得 票率が高くなる傾向は持続。ただし切片は低下(左図)。   2) 国民戦線得票率の前回選挙との差分(2018 年得票率− 2013 年得票率)とマレー人比 率との間に相関なし(右図)。→全民族が国民戦線を敬遠。 (出所) マレーシア政府官報 P.U. (B) 306-312, 347 および選挙委員会報告書、新聞報道をもとに 報告者作成。 図 3 2018 年 6 月国会選挙後の議席配分(定数 600) AKP, 293 CHP, 148 HDP, 67 IP, 44 MHP, 50 (注)青色は与党、グレーは野党。 (出所)トルコ選挙結果より筆者作成。

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