氏 名 島田 壽美子 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医科学 ) 学 位 記 番 号 医工博甲 第320号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 人間環境医工学専攻(生体環境学コース) 学 位 論 文 題 名 地域別合計特殊出生率の変化率に影響する子育て環境要因の検 討 -「健やか親子21」の調査から-
(Analysis of child-rearing environmental factors influencing the percentage change in regional total fertility rate:from a survey of Healthy Parent and Children 21)
論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 杉田 完爾 委 員 准教授 笠井 剛 委 員 准教授 端 晶彦
学位論文内容の要旨
(研究目的) 本 研 究 は 、 「 健 や か 親 子 21を 促 進 す る た め の 母 子 保 健 情 報 の 利 活 用 」 に 関 す る 乳 幼 児 健 診 時 の 親 子 の デ ー タ や 自 治 体 調 査 デ ー タ を 用 い 、 ま た 、 国 勢 調 査 に よ る 各 市 区 町 村 の 人 口 動 態 や 母 子 医 療 の 指 標 と な る 分 娩 施 設 数 を 利 活 用 し 、 合 計 特 殊 出 生 率 の 変 化 率 に 影 響 す る 子 育 て 関連 要 因を 明 らか に す るこ と を目 的 とす る 。 (研究方法) 1 . 研 究デ ザ イン : 生態 学 的 研究 2.研究対象 市区町村別合計特殊出生率は、5年間ごとに出生率の平均値として公表されている。その合計特 殊出生率の2003 年から 2007 年と 2008 年から 2012 年のデータを抽出し変化率を算出し用いた。 また、全国の市区町村から無作為に抽出された 110 市区町村の、3,4 か月児乳幼児健診を受診した 親子を対象にした「親と子の健康度調査」の自記式調査を用いた。回答数は 5,955 人であった。調 査内容は、子育てにおける環境要因と考えられる 10 項目を選択し、得られた複数の回答は肯定的 認識と否定的認識の 2 群化した。そして、個票で抽出された肯定的認識データを、市区町村ごとに 割合を算出し、市区町村ごとの肯定的認識のデータとした。 また、自治体の母子保健活動の指標となる「健やか親子 21」の推進状況に関する各市区町村の 自治体取り組みに関するデータを用いた。自治体取り組み内容は、親が支援されていると実感しや すい 6 項目を選択した。質問方法は2件法である。さらに、地域における子育て関連要因としては、 国勢調査による各市区町村の人口動態として、人口数、高齢化率、産業別就業人口数、持家率を抽出しデータとして用いた。各市区町村別分娩施設数はホームページで公開されている数値を用いた。 3.解析方法 市 区 町 村 別 合 計 特 殊 出 生 率 の 変 化 率 に 影 響 す る 子 育 て 環 境 要 因 を 明 ら か に す る た め に 、 市 区 町 村 別 合 計 特 殊 出 生 率 の 変 化 率 を 目 的 変 数 とし、子育て肯定的認識,自治体取り組み, 市区町村人口動態を説明変数として相 関 分析 を 実施 し た。ま た、全説 明変 数 を 用い て ステ ッ プ ワ イ ズ法 に よる 重 回帰 分 析 によ り 関連 を 検討 し た 。 (結果) 市区町村別合特殊出生率の変化率の上昇に影響する関連因子として、子育て肯定的認識で「 父 が 子 と 遊ぶ 」、「 ゆった り と した 気 分で 子 育て 」に 有意 な 正の結果が見られ、子育てに関連 する要因では、「第3次産業就業人口割合」、「分娩施設数」に有意な正の結果が得られた。逆に 負の有な結果は「持ち家」であった。特に、重回帰分析の結果でも、関連が高かったのは「 父 が 子 と 遊 ぶ 」 「第3次産業就業率」であった。自治体取り組みは、関連性が見られず、取り組んで いる内容に差異が生じ、関連性が認められなかったと考える。育児の肯定的認識の10項目は全てが、 正の結果であった。母親の育児に対する肯定的認識が合計特殊合計等出生率の上昇に関連を示す結 果となった。 (考察) 「父が子と遊ぶ」は特に関連が強かった。父親の子育て参加は、母親の育児不安や子育てストレ スの軽減となり、母親の精神的安定につながり、合計特殊出生率の変化率の上昇に影響を与える要 因になると考えられる。「ゆったりとした気分で子育て」は、子育てしている母親が、ゆったりと した気分で、子どもと過ごせる時間をもてると感じる認識である。まわりからの良好なサポートが 維持されることで、母親の育児認識が安心して、ゆったりとした気分で子育ての認識となり、合計 特殊出生率の変化率を上昇させる要因として示唆されたと考えられる。また、母親が子育てに、肯 定的認識を持つことが出生率の上昇に関連があることも示唆された。さらに、第3次産業就業人口 の割合の高い地域は、経済的に世帯収入が高くなり、養育費にお金がかけられることもあり、合計 特殊出生率の変化率に上昇を与える要因として示唆されたと考えられる。 本研究の強みは、今回の調査は全国から無作為に抽出した市町村データであり、母集団を代表で きることである。また、縦断的な解析をしたことにより因果関係を推定できる点である。 (結論) 市区町村別合計特殊出生率の変化率の上昇させる環境要因として、「父が子と遊ぶ割合が高い地 域」「ゆったりとした気分で子育てしていると認識している割合が高い地域」「子育てに肯定的認 識を持つ割合が高い地域」「第3次産業就業人口割合が高い地域」「分娩施設数の多い地域」の影 響が示唆された。