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保健事業推進のための国保データベース(KDB)システムの活用

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(1)

463 保健医療科学 2014 Vol.63 No.5 p.463−466

J. Natl. Inst. Public Health, 63(5): 2014

<解説>

保健事業推進のための国保データベース(KDB)システムの活用

鎌形喜代実

国民健康保険中央会

Utilization of the National Health Insurance Database to implement

the PDCA cycle

Kiyomi K

AMAGATA

All-Japan Federation of National Health Insurance Organizations

抄録  国民健康保険中央会は,平成24年度から,都道府県国保連合会が保険者の委託を受けて行う各種制 度の審査支払業務及び保険者事務共同電算業務を通じて管理する「特定健診・特定保健指導」「医療 (後期高齢者医療含む)」,「介護保険」等に係る情報を利活用し,統計情報等を保険者向けに情報提供 することで,保険者の効率的かつ効果的な保健事業の実施をサポートすることを目的とした国保デー タベース(KDB)システムの開発を行ってきたが,平成25年10月から情報提供を開始し,平成26年 7月に当初予定していた63帳票すべてを提供するに至った.  保険者はKDBシステム等から提供される健診・医療・介護等データを分析することにより,集団 (地域・職域)及び個人の健康課題を明確化し,それに対応する目的・目標を設定し事業計画を策定し た上で,それに沿った効率的・効果的な保健事業を実施するために活用することができる.また,実 施した事業の評価は,経年的なデータ等を活用しながら行い,次の課題解決に向けた計画の見直しを 行っていくというPDCAのサイクルに沿った事業の展開をしていく.データを多く活用する場面とし ては,計画の企画立案の時点(P)及び評価を実施する時点(C)となる.いくつかの帳票は,国・ 県・同規模保険者や地区別・保険者別に比較検討することができる.  今後は,KDBから出力されるデータをどのように読み込み活用していくのか現場での意見を反映 させながら機能改善を図り充実していきたい. キーワード:国保中央会,PDCAサイクル,KDB,国保データシステム,レセプト・健診データの突 合,データ活用による保健事業の実施 Abstract

 The National Health Insurance Database of Japan, dubbed “Kokuho Database” (KDB), was started to be developed in 2012 by the All-Japan Federation of National Health Insurance Organizations, has been partly available since October 2013 and fully available for all 63 analysis forms since July 2014. KDB’s aim is to support the insurers (i.e., municipalities that manage the national health insurance) to

連絡先:鎌形喜代実

〒100-0014 東京都千代田区永田町1丁目11番35号 全国町村会館内 Zenkoku Choson Kaikan Bldg, 11-35, Nagata-cho 1 chome, chiyoda-ku Tokyo, 100-0014, Japan. T e l: 03-3581-6821 Fax: 03-3581-0002 E-mail: [email protected] [平成26年9月11日受理]

特集:特定健診・特定保健指導の評価と課題

(2)

I.

国保データベース(KDB)システムの開発

国民健康保険中央会は,平成24年度から,都道府県国 保連合会が保険者の委託を受けて行う各種制度の審査支 払業務及び保険者事務共同電算業務を通じて管理する 「特定健診・特定保健指導」「医療(後期高齢者医療含 む)」,「介護保険」等に係る情報を利活用し,統計情報 等を保険者向けに情報提供することで,保険者の効率的 かつ効果的な保健事業の実施をサポートすることを目的 とした国保データベース(KDB)システム(図1)の 開発を行ってきたが,平成25年10月から情報提供を開始 し,平成26年7月に当初予定していた63帳票すべてを提 供するに至った.

II.

データヘルスの推進

政府は,平成25年6月14日に閣議決定した「日本再興 戦略」や同日関係9閣僚が申し合わせた「健康・医療戦 略」において,レセプト等の医療・保健情報等の分析を 行いそれらの結果に基づいて保健事業を促進することを 政策目標とした.

J. Natl. Inst. Public Health, 63(5): 2014 464

鎌形喜代実

implement health services in an effective and efficient manner. It provides them the statistical data managed by the prefectural national health insurance organizations on “specific health examination and specific health guidance,” “medical insurance (including for the elderly aged 75 or over),” “care insurance,” etc.

 Each insurer is expected to implement effective and efficient health services following an action plan that includes the objectives and goals corresponding to the specified health issues in the population (community or occupational field) and individuals based on KDB data analysis . Health services will be implemented following the Plan-Do-Check-Act (PDCA) cycle. Assessment will utilize the annual data and actions will be revised to solve the new health issues clarified by the assessment. Data utilization is especially important in the plan (P) and check (C) stages. Using the analysis forms, data from each insurer can be compared with data nationally, by prefecture, by municipalities of similar population size, other insurers, and among the local areas for a specific insurer.

 It is expected that the knowledge to interpret and utilize KDB data will accumulate and improve KDB’ s functioning by incorporating the opinions of local users.

keywords: All-Japan Federation of National Health Insurance Organizations, PDCA cycle, KDB, national health insurance data system, linkage of health insurance claims and health examination data, implementation of health services utilization data

(accepted for publication, 11th September 2014)

(3)

これらの政府方針の下に,平成26年3月「国民健康保 険法に基づく保健事業の実施等に関する指針」が改正さ れ,その中で市町村はレセプト等のデータ分析に基づく 保健事業を実施すること,その事業はPDCAサイクルを 意識した計画として展開すべきことが明記された.

III.

保険者の果たすべき役割

平成25年3月厚生労働省の委託研究である「保険者機 能のあり方と評価に関する調査」の報告書が取りまとめ られた. この報告書の中では,いくつかある保険者の機能の1 つとして,レセプトデータ・健診データを活用し,加入 者の健康の保持増進を図ること,2つには,増大する医 療費の適正化を図り,加入者の負担を軽減することなど を果たすべき役割として明確にした.

IV. KDBの帳票について

KDBの帳票類は,「特定健診等データ管理システム」・ 「国保総合システム・後期高齢者医療請求支払システ ム」・「介護保険審査支払等システム」から抽出された データを連携させている. また,主傷病名を最大医療資源傷病名(診療行為・医 薬品・特定機材等のレセプトデータから最も医療資源を 要した傷病名)の考え方に基づき決定し,10帳票の傷病 分析に採用している.これにより,地域において医療費 負担の割合の大きい疾病を明らかにし,原因を究明する とともに保健事業のターゲットを絞ることが可能となる. また,全国で同一の方法により主傷病名を決定すること により,疾病別医療費について全国・同規模保険者・県 との比較が容易にできるようにしている. 各帳票は,データをCSVで抽出・加工することができ るので,図表化により「見える化」して比較検討するこ とができる(図2).

V.

KDBの活用について

保険者はKDBシステム等から提供されるデータを分 析することにより,地域住民の健康課題を明確化し,目 的・目標を設定し事業計画を策定した上で,それに沿っ た効率的・効果的な保健事業を実施することができる (図3).また,その評価はデータを活用しながら行い, 次の課題解決に向けた計画の見直しを行っていくという PDCAのサイクルに沿った事業の展開が求められている. 特にデータ活用場面では,計画の企画立案の時点(P) 及び評価を実施する時点(C)が重要である. ここでは,KDBの帳票のいくつかを活用しながらど のような事業展開に繋がるのかについて述べる. 465 保健事業推進のための国保データベース(KDB)システムの活用

J. Natl. Inst. Public Health, 63(5): 2014

図3 国保データベース(KDB)システムの活用ポイント 《使用データ》 《集計単位》  健診  34帳票  医療  40帳票  (レセプト)  介護  18帳票  統計  7帳票 個人単位   12帳票 保険者単位   地区別  28帳票   保険者別 37帳票 比較情報   県    37帳票   同規模  19帳票   国    30帳票 図2 帳票類の集計単位・使用データ

(4)

1.現状把握(健康課題を明確化していく) 保健事業計画を企画立案していくにあたり各種データ から現状分析を行う.同時に今まで実施してきた保健事 業を評価し,できていること,できていないことを整理 する. 〈地域の状況を把握する〉 地域の人口構成や被保険者の構成,高齢化率,死因な ど国・県・同規模保険者との比較をしながらどのような 地域の傾向があるのかをみる. また,質問票調査からは運動・食事・服薬・喫煙等の 状況を把握し,他と比較する中で被保険者の生活習慣の 特徴をみることができる.特定健診では,性年齢別の受 診状況,有所見率でどのような健診項目の数値が高く出 ているのか確認することができる.医療については一人 当たりの医療費の状況,医療費を押上げている疾病を把 握し,予防可能な疾病について確認する.介護について は,介護認定の状況,介護給付費,要介護者の有病状況 をみていく.市区町村別データでは,県内の保険者別に 14データを比較することができ集団の健康課題が見えや すくなる. 〈生活習慣病のレセプト分析 厚生労働省様式3-1∼7〉 性年齢別にどのような疾病が多くなっているのかをみ る.糖尿病・高血圧症・脂質異常症・虚血性心疾患・脳 血管疾患・人工透析等複数の生活習慣病の罹患状況をレ セプト分析からみていく. 〈健診有所見者状況 厚生労働省様式6-2∼10〉 性年齢別・地区別に各健診検査項目の保健指導判定値 以上の状況から集団全体の健康状況を把握し課題をみて いく.また,健康診査の結果から保健事業対象者を明確 にし,なににターゲットを絞っていくのか検討する. 〈健診ツリー図・保健指導対象者一覧・疾病管理一覧〉 健診受診者を肥満・非肥満別・リスク因子別に確定す ることができる.保健指導対象者・要受診勧奨者・要疾 病管理者(糖尿病・脳卒中・虚血性心疾患)を個人デー タで見ることがでる.個人の行動変容や重症化予防につ ながるなどハイリスクアプローチに活用することができる. これらの帳票類を活用しながら健康課題を明確化し, 保健事業計画を立案していく. 2.保健事業の評価に活用する 帳票の中には,経年的な(5年間)データを集団・個 人単位でみることができるものがある.検査データの改 善,生活習慣の変化等目標の達成度を確認し,次の事業 展開に活かしていく. 〈集団のデータ 質問票調査・保健指導群と非保健指導 群・医療費分析〉 保健指導を実施し,その結果で生活習慣の改善状況が どのように変化したのか,対象者の健診検査値の変化を みることにより地域全体の健康状態の改善状況をみる. また,生活習慣病関連医療費の変化をみることができる. 〈個人のデータ 被保険者管理台帳・疾病管理一覧・個 人別履歴〉 ハイリスクアプローチとして保健指導した結果,健診 データの改善状況どのような変化が現れているのか.ど のような行動変容があったのか受診状況も含めレセプト を確認しながら対応を検討する. 〈最終評価 複数年の事業評価〉 死亡率や,有病率,メタボリック・シンドロームおよ びその予備群の割合などを見ることで,全体の健康状態 の改善等目的が達成できたのか数値で確認することがで きる.また,生活習慣病関連医療費の適正化の効果を帳 票からみることができる. 3.その他 ある健康課題の対策を行うためにはどの帳票類を活用 するかの視点が重要である.例えば,「特定健診未受診 者対策」・「糖尿病性腎症重症化予防」・「治療中断者対策 (レセプトとの突合)」などにKDBのデータを活用し対 象者を絞り込むことができる. また,ポピュレーションアプローチとして被保険者の 健康度を上げるための一次予防事業としてもデータを活 用することができる.

VI.

まとめ

これまで各保険者は,保健師等が様々なデータを駆使 しながら地域住民の健康課題に対応し保健事業を展開し てきていたが,多くは手作業によるデータ集計を基に行 われてきた. 今回構築したKDBシステムはビッグデータを集計・分 析できるので,これを活用していただき,効率的・効果 的な保健事業を実施されることを期待している. 今後は保険者等の意見を聴きながらKDBの機能改善 を図り,一層充実していきたいと考えている.

参考文献

[1] 津下一代.標準的な健診・保健指導プログラム(平 成25年4月).東京:社会保険出版社;2013.6.27. p.264. [2] 国民健康保険中央会.国保データベース(KDB) システム活用マニュアル.2013.10. p.122.

J. Natl. Inst. Public Health, 63(5): 2014 466

参照

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