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経験型実習を取り入れた小児看護実習における一般病院の小児病棟と障害児施設での学びの特徴: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

経験型実習を取り入れた小児看護実習における一般病院

の小児病棟と障害児施設での学びの特徴

Author(s)

松下, 聖子; 金城, やす子

Citation

名桜大学紀要 = THE MEIO UNIVERSITY BULLETIN(19):

77-84

Issue Date

2014-03

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/12323

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Ⅰ.はじめに  医学や看護学の発展,患者のニーズの多様化により, 患者の抱えている健康問題に対して看護師自らそれぞれ の看護場面における問題を理解し,その解決策を考え, 実践する能力,つまり,看護実践能力が求められている。 看護実践能力とは,ヒューマンケアの基本に関する実践 能力,看護の計画的な展開能力,特定な健康問題を持つ 人への実践能力,ケア環境とチーム体制整備能力,実 践の中で研鑽する基本能力をいう(文部科学省,2004: 松谷ら,2010)。この看護実践能力を育むため,看護学 実習では,看護理論を活用し,対象者の情報収集・分 析・看護計画の立案と実施・評価という看護過程の展開 による問題解決思考を養ってきた。しかし,看護過程中 心の思考は,人間の特定の部分だけが過度に強調され, 看護の全体性や関係性を見落とす可能性があり,「経験 から学ぶ」実習教育が重視されるようになった(芥川, 2007)。  小児看護実習(以下実習という)は,少子化,医療技 術の進歩により入院期間短縮化等,受け持ち期間が短く 実習展開が困難な状況にある。さらに,本学では地理的 特性により小児病棟での実習が難しく,一部の学生は障 害児施設を利用して実習を行っている。小児病棟での実 習は,乳幼児を対象に呼吸器疾患や感染症の患児が多く, 受け持ち期間は2~4日である。一方,障害児施設では, 幼児を対象に,主に脳性まひの子どもたちを5日間受け 持ち実習している。実習では,経験型実習を取り入れ, 学生が主体的に学べる環境を準備し,カンファレンスを 用いて内省および根拠を明確にした援助を促している。 また,カンファレンスではカードメソッドを活用し,学

経験型実習を取り入れた小児看護実習における

一般病院の小児病棟と障害児施設での学びの特徴

Characteristics of Students

’ Learning in the Pediatric Ward of

the General Hospital and an Institution for Disabled Children

in a Meio University Pediatric Nursing Practicum which

Incorporates Hands-on Training

松下 聖子,金城やす子 

要旨  小児看護実習は,一般病院の小児病棟と障害児施設を利用している。学生は,小児病棟または障害児施設のどちら か1週間の実習を経験する。  本研究の目的は,小児看護実習を通して学生が,どのような学びを経験しているのかを明らかにし,実習施設によ る学びの特徴から実習目標の達成状況を検討することである。実習終了後に作成した学びのカードメソッドによる図 解を分析対象とした。カードメソッドの最終表札を一覧表にし,最終表札の中から学びのキーワードを抽出し,カテ ゴライズした。カテゴリーを比較分析し,実習施設による学びの特徴を実習目標から考察した。その結果,学びのキー ワードは,小児病棟14,障害児施設9で,9カテゴリーが抽出された。[発達段階や病態の理解],[観察とアセスメント], [ケアの実践],[信頼関係],[家族],[遊び]の6カテゴリーは,共通の学びのカテゴリーであり,障害児施設での 学びはこの中に含まれていた。[子どもの安全],[情報共有],[小児看護の展開の速さ]の3カテゴリーは,小児病 棟で実習した学生のみの学びであった。学生たちの学びは共通するものが多かった。これは,施設による受け持ち患 児の特徴に違いがあっても実習目標である「小児の成長発達の理解」と「小児および家族に必要な援助の実践」は, 十分に学べることを示唆するものであった。 キーワード:小児看護実習,経験型実習,小児病棟,障害児施設,学びの特徴

【研究ノート】

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びの振り返りを行っている。そこで,カードメソッドの 図解をもとに小児病棟と障害児施設での学びの特徴を検 討した。 Ⅱ.経験型実習とは  経験型実習は,1997年に安酸がJ.デューイの教育理 論をもとに提唱した看護実習教育方法論で,学生の経験 の意味の深化と拡充を支援する。J.デューイは,経験 を「直接的経験」と「反省的経験」に分けて説明してい る(早川,1994)。「直接的経験」とは,感覚的接触を特 徴とし,経験はまだ洗練されておらず,様々な事物が混 沌としている状態をいう。一方「反省的経験」とは,説 明や理解を特徴とし,外延的で普遍的な要素を見つけ出 すことができる。経験型実習教育は,これまでの看護基 礎教育の「理論→演習→実習」という系統的な教育方法 に対して,「実習→演習→理論」という新しいパラダイ ムをもとにした教育方法であり,経験から学んでいくと いう学力を重視する「臨床の知」の修得に焦点を当てて いる(藤岡ら,2008:安酸,2005)。そのため,学生が 実習の中で直面した問題や困った経験を教材化し,その 問題や課題の解決のために学生自ら探求する学習過程を とり,学生の経験と主体性を重視している。そして,最 終的には「ヒューマンケアリング」を目指している(安 酸2011)。  学生は,患児(者)や家族との関わりの中で,様々な 経験や思いを抱き,自分なりに経験を意味づけていく学 習行動を行っている。しかし,学生一人では独りよがり の解釈になったり,貴重な体験が意味づけされずに終 わったりしてしまう。したがって,直接的な経験ができ る実習環境の調整や反省的経験がともにできる教師の教 授活動が必要となる。直接的経験をする機会を学生に与 え,その意味づけをする反省的経験までを経験型実習と する。そのため,経験型実習では,学生が経験した内容 を意味づけるためのカンファレンスが重要であり,カン ファレンスでは,関わりの中から援助の必要性をどのよ うにアセスメントするのかを導く指導に重点が置かれる。 Ⅲ.小児看護実習の概要 1.実習目的  成長発達段階にある小児の健康上の諸問題を総合的 に理解し,看護を実践する能力を養う。 2.実習目標  1)各成長発達段階にある小児を理解し,成長発達を 促すための生活援助ができる。  2)小児及び家族の看護上の問題を明らかにし,必要 な援助を実践する。 3.対象学生  人間健康学部看護学科3年次に在籍し,小児看護 方法論の単位を修得している学生 4.実習施設  1)保育園実習:N市内の9か所の保育園  2)病 院 実 習:公立病院1か所・私立病院1か所・ 障害児施設1か所 5.実習単位:2単位(90時間)  1)1週目:保育園実習 1単位(45時間)  2)2週目:病 院 実 習 1単位(45時間) 6.実習方法  1)保育園実習:担当するクラスで,保育士の保育計 画に沿って,日常生活支援を中心に実習を行い, 保育を通して小児の成長発達を理解する。  2)入院している児を受け持ち,看護援助やコミュニ ケーションを図りながら,健康障害の状況を理解 する。また,健康障害が小児の発達や日常生活に どのように影響しているのかを理解する。学生は, 3か所ある実習施設のうち1か所の実習施設で実 習を行い,実習施設のローテーションは行わない。 7.実習指導体制:実習では,各グループに1名の教員 が指導にあたる。教員は,1グループごと3つの実習 病院をローテーションする。指導にあたっては職位や 教育・臨床経験が異なるため,実習前のオリエンテー ションでは,3名全員が入り,学生の状況を確認し, 指導上のポイントや留意点について意見交換してい る。また,実習中および実習終了後は,情報交換を行 いながら進めている。 Ⅳ.研究目的  学生は,実習を通してどのような学びを経験している のかを明らかにする。また,実習施設による学びの特徴 から実習目標の達成状況を検討する。 Ⅴ.研究方法 1.研究対象:研究同意の得られた実習グループ,小児 病棟3グループ,障害児施設3グループを対象に実習 終了後に作成した学びのカードメソッドによる図解を 分析対象とした。対象となった学生は,1グループ6 名の計36名である。図解に用いたカードは,1人5枚 記載し,1グループ30枚のカードを使って図解を作成 した。 2.研究期間:平成25年6月~10月 3.研究方法:カードメソッドの最終表札を一覧表にし, 名桜大学紀要 第19号

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最終表札の中から学びのキーワードを抽出し,カテゴ ライズした。そして,カテゴリーを比較分析し,実習 での学びを明らかにし,実習施設による学びの特徴を 実習目標から考察した。 4.倫理的配慮:小児看護実習で作成したカードメソッ ドの図解を研究対象として活用することについて,実 習評価の確定した後,学生に文書および口頭で研究の 趣旨および目的を説明し同意を得た。その際,研究参 加は自由意思によるものであること,参加の有無が実 習評価に一切関係しないこと,研究参加の有無により 学生生活の不利益は被らないこと,研究の途中であっ ても研究参加への辞退が可能であること,今後の実習 指導に活用したいこと,結果は匿名性を確保して公表 されることなどを説明した。研究同意の確認は,同意 書の提出を持って研究同意とした。なお,研究を進め るにあたって大学の倫理審査委員会の承認を得た。(承 認番号25-002) Ⅵ.結果 1.実習施設別カードメソッドの最終表札と学びのキー ワード  各実習グループのカードメソッドの最終表札は,以下 の表1に示す通りである。学生の学びは,実習施設によ る受け持ち患児の特徴の違いはあっても共通するものが 多かった。  学びのキーワードは,小児病棟13個,障害児施設9個, 合計21個のキーワードが抽出された。 2.学びのキーワードの分類  最終表札の中から抽出された21個のキーワードから9 カテゴリーが抽出された(表2参照)。[発達段階や病態 の理解],[観察とアセスメント],[ケアの実践],[信頼 関係],[家族],[遊び]の6カテゴリーは,小児病棟と 障害児施設での共通の学びのカテゴリーであった。さら に,障害児施設での学びはこの中に含まれていた。[子 どもの安全],[情報共有],[小児看護の展開の速さ]の 3カテゴリーは,小児病棟で実習した学生のみの学びで あった。 文中の[大カッコ]はカテゴリー,「かぎカッコ」は学 びのキーワード,“ウムラウト”は学生がカードに記載 した内容を示す。なお,学生がカードに記載した内容は 意味が通じるよう(小カッコ)で,言葉を補った。 1)発達段階や病態の理解  [発達段階や病態の理解]は,小児病棟の「児の病態, 発達段階を理解する」,「児の発達段階に応じた看護」と 障害児施設の「子どもの発達段階や生活,性格などの特 徴」,「個別性のある看護」,「病態を理解」によって構成 されていた。  “患児の発達段階によって観察項目は変えていかなけ れば観察ができないので,患児の発達段階を考慮した観 察項目をあげる必要性がある”,“言葉の面ではまだ発達 していないので乳児や幼児では泣いたりぐずったりして 伝えることがあるため,その時にどこを観察するのかが 看護のポイントになってくる”,“児それぞれ持っている 疾患,症状,運動機能,性格が違うため一人一人に応じ た関わり方がある”などその子の状況を考慮した関わり の大切さを学んでいた。また,“病態をしっかり理解す ることで本当の意味でケアの必要性が見えてくる”,“常 に患児の疾患の特徴を頭に入れておかなければ,その時, その時に必要な関わり(ケア・指導)が行えない”,“た だ援助を行うのではなく,どうしてこのような援助をし ているのかを考えることで,病態が理解でき,より援助 の必要性を理解することができる”など援助を行うため に病態を理解すること,つまり知識の必要性を実感して 表1.実習施設別カードメソッドの最終表札と学びのキーワード(太字がキーワード) 一 般 病 院 の 小 児 病 棟 障 害 児 施 設 最   終   表   札 小児看護では,児の病態,発達段階を理解することで 退院指導などの家族へのサポートや遊ぶときの児の安 全を守ることができる。そのためにはチームで情報を 共有することが大切。 子どもの発達段階や生活,性格などの特徴を知り,子 どものできること・できないことを明確にし,できる ことを伸ばし,自立につながる関わりを持つ。 発達段階に応じた看護をふまえたケアの実施によって 小児看護の展開の速さを感じ,また,発達段階に応じ た保健指導をする時のポイントのために他職種との連 携,プレイタイムが家族支援のひとつになっている。 子どもたちは言葉で訴えることができないため,それ に気づけるような観察力と相手の立場に立って考える ことが個別性のある看護へつながる。 子どもと家族との信頼関係を築いたうえで根拠を持っ て観察・アセスメントを行うことで,適切なケアの提 供ができる。 病態を理解したうえで,自立を促すために児の特性を 考慮し,児の立場になって信頼関係を築いたうえで日 常生活に必要な援助をするためには遊びを通した保育 と家族の協力が必要。

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いた。 2)観察とアセスメント  [観察とアセスメント]は,小児病棟の「根拠を持っ て観察」,「アセスメントを行う」と障害児施設の「観察 力」,「子どもの発達段階や生活,性格などの特徴」によっ て構成されていた。  “お母さんの話を鵜呑みにして症状を見るのではなく, 専門職である以上いろんな方向性からその症状を見て, 何が原因なのかを考える必要がある”,“観察という言葉 に重みがあることに気づいた。なぜ,何のために行うの かという根拠をしっかり持ち,また,こどもにとってそ れができるかどうか考えたうえで,アプローチすること が必要”と自らの五感を使って観察し,考えて援助する ことの重要性に気づいていた。さらに,“苦痛を伴うケ アでもその子の今の状態から(そのケアが)必要ならば, 確実に行うことが大切。また,それが必要だと自信を持っ てケアを提供することは,患者さんだけでなく自分のた めにも必要なこと”,“病態・症状・薬の作用・副作用・ 治療を含めてケアを展開する必要がある”と,何のため に援助するのかという援助の意味を理解することの大切 さを感じていた。 3)ケアの実践  [ケアの実践]は,小児病棟の「適切なケアの提供」 と障害児施設の「自立につながる関わり」,「相手の立場 に立って考える」によって構成されていた。  “子どもの疑問に答えられるように病態を理解し,ケ アの必要性に根拠を持って行動することが重要。そして, 子どもに分かりやすい言葉で説明しながら,協力して治 療に取り組んでもらえるようにすることが大切”とケア や治療の必要性を患児が理解するためには,専門的知識 の活用と発達段階に応じた説明を行うことの必要性を感 じていた。また,“障がいや疾患を抱えているため自分 のことが全部できないけれど,できないことすべてを必 要以上に手助けすることは子どもの成長・自立によくな い。どこまで手助けするのか考えなければならない”と 患児の自立を促すケアを実施するためにはどのようにし たらよいかとケアすることの意味について考えていた。 一方で,“ニーズをくみ取るために,その子の置かれて いる立場に立って考えることは大切だが,本当に理解す ることは難しい”とケアを実施するために対象を理解す ることの困難さを感じていた。 4)信頼関係  [信頼関係]は,小児病棟の「子どもと家族との信頼 関係を築いた」と障害児施設の「信頼関係を築いた」に よって構成されていた。  “幼児は,社会性も発達の途中であるため嫌なものは, 嫌と言い拒否する。そのため信頼関係を持ったうえで一 緒にいられる関係を作らなければ看護を提供するのは難 しい”,“どんなケアをする時も子どもとの関係をうまく 築いていかなければ介入は難しい”と子どもとの関係づ くりの必要性と困難さをあげていた。また,“食事介助 や口腔ケアなどの援助を行う際は,児との信頼関係を築 くことで,児も心を開いてくれスムーズに行うことがで き児への負担軽減につながる”と信頼関係を築くことの 意味について考えていた。さらに,“子どもの輸液管理, 服薬管理,日常生活の援助を家族と協力して行う必要が ある。そのため,家族や子どもとコミュニケーションを 図りながら,信頼関係を築き,(入院している)子ども の一時預かりや親が不安や困っていることはないか話を 聞くことが大切”と,子どもだけではなく親とも信頼関 係を築くことの大切さを学んでいた。 5)家族  [家族]は,小児病棟の「家族へのサポート」,「家族支援」 と障害児施設の「家族の協力」によって構成されていた。 “小児科は子どもが対象であるため親が24時間付きっき りになることからくる疲労感や子どもへの不安など様々 な思いが生じていることがあるため家族への支援につい ても視野に入れて援助する必要がある”,“患児の母親は 自分の子どもの病気や症状についてよく理解されてお り,症状に対しての対応方法や処置,薬の管理まで,全 て行っており,~略~家族で(子どもを)援助していく 際の負担は大きい”と,病気や障害のある子どもを,病 院や家庭で親が世話をすることの大変さを実感し,親へ の支援の必要性を感じていた。また,“弟が入院してい て,お姉さんと祖母と見舞いに来ていて,帰る時に(お 姉さんが付き添いで残る)母親のズボンをつかんで泣い ている姿を見て,小児の入院は家族全体に関わってくる のだと知った”と入院している子どものきょうだいを含 めた家族支援について考えていた。一方で,学生が企画 したレクレーションに参加した母親の様子から“レクの 中で他者とのコミュニケーションをとることができ,患 児だけでなく,家族の笑顔もみることができたので,(レ クによって)入院生活におけるストレスを少しでも軽減 できたと思う”と,家族の様子について観察し,学生レ クがストレス軽減のひとつの方法になることを理解して いた。 6)遊び  [遊び]は,小児病棟の「遊ぶ」,「プレイタイム」と 障害児施設の「遊び」によって構成されていた。 名桜大学紀要 第19号

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 “今日,一緒に子どもと遊ぶということを通して,入 院中の子どもにとっても「遊ぶ」ということが,とって も重要だと学んだ。遊ぶ前と遊ぶ後では表情や言葉など も変わるし,気分転換,ストレス発散,友達づくりなど もできることが分かった”,“子どもたちに(プレイタイ ムの)参加を促し,参加してもらうことで子どもの笑顔 や興味を示し,一つのことに集中する様子など普段見ら れない様子からプレイタイムの重要性を学んだ”と,プ レイルームでの遊びや学生が企画したプレイタイムでの 子どもたちの様子から,子どもにとっての遊びの意義に ついて考えていた。 7)子どもの安全  [子どもの安全]は,小児病棟の「児の安全を守る」 で構成されていた。  “プレイタイムでは使用する物品など児が口に入れて も安全なものを使う,使った後は消毒するなど(入院児 は)様々な疾患を持っているため,感染しないように配 慮することが大切”,“プレイタイムの時間やプレイルー ムでは,楽しく子どもたちが遊ぶだけではなく,安全面 にも配慮していけるような見守りが必要”と感染に留意 し,安全に遊べる環境づくりの大切さを感じていた。 8)情報共有  [情報共有]は小児病棟の「情報を共有する」で構成 されていた。  “少ない時間の中でバタバタと(プレイタイムの)準 備していて学生同士だけでなく,保育士さん,看護師さ ん,先生と多くの人に協力してもらって行えたプレイタ イムだった。チームとして協力することの大切さを改め て実感した”と,チームで行動するためには,互いの状 況を理解し合うことの大切さを学んでいた。また,その 子の病態を理解し,“子どもは一つのことに集中するこ とが難しいため,吸入などに対する不快な思いも取り除 きながら子どもを引き付けるような工夫が大切”とその 子にあった援助方法を見つけ,より良いケアの提供を行 うためにも子ども一人ひとりの情報をチームで共有する ことの大切さを学んでいた。 9)小児看護の展開の速さ  [小児看護の展開の速さ]は,小児病棟の「小児看護 の展開の速さ」で構成されていた。  “昨日はゼーゼーと喘鳴が聞こえていたが,今日は昨 日に比べて小さくなっているのを聞き,子どもの回復の 速さにびっくりし,小児の展開の速さを実感した”,“日々 状態が変わっていく中で,それに合わせてしっかり呼吸 法などを指導していく必要がある。治っていくことでつ い安心してしまったが,呼吸状態を観察していくことが 大切である”など,子どもの観察を通して,子どもの回 復力の速さと,その時々の子どもの状態に合わせて展開 される看護の速さに驚いていた。 表2.学びのキーワードの分類 カテゴリー 一般病院の小児病棟 障 害 児 施 設 発 達 段 階 や 病 態 の 理 解 ・児の病態,発達段階を理解する ・発達段階に応じた看護 ・子どもの発達段階や生活,性格などの特徴 ・個別性のある看護 観 察 と アセスメント ・根拠を持って観察 ・アセスメントを行う ・観察力 ・子どもの発達段階や生活,性格などの特徴 ケ ア の 実 践 ・適切なケアの提供 ・自立につながる関わり ・相手の立場に立って考える 信 頼 関 係 ・子どもと家族との信頼関係を築いた ・信頼関係を築いた 家 族・家族へのサポート・家族支援 ・家族の協力 遊 び・遊ぶ ・プレイタイム ・遊び 子どもの安全 ・児の安全を守る 情 報 共 有・情報を共有する ・他職種との連携 小 児 看 護 の 展 開 の 速 さ・小児看護の展開の速さ

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Ⅶ.考察 1.経験型実習を取り入れた小児看護実習における学生 の学び  カードメソッドの最終表札から学びのキーワードを抽 出し,小児病棟で実習した学生と障害児施設で実習した 学生の学びのキーワードを比較した結果,共通する学び が多かった。このことは,学生の学びには,受け持ち患 児の状況,疾患や症状だけではなく,置かれている立場 や家族の関係も含めた全体としての関わりが大切とな り,疾患や症状だけの理解では看護実践に結びつきにく いことを示していた。そのためには援助を行うための病 態の理解の重要性,自らの五感を使って観察し,考えて 援助することが重要であり,一つひとつの援助の意味を 理解することが大切であると学んでいた。しかし,対象 を理解することや子どもとの関係づくりの困難さも経験 していた。  学生たちは,入院児がプレイルームや学生企画のプレ イタイムに参加することを通して,遊びが入院児にとっ てストレス発散の機会となり,入院という非日常的な環 境の中で,日常を取り戻す唯一の瞬間であることを感じ 取っていた。また,遊んでいる子どもの姿を見て,親た ちの笑顔が増え,親同士の交流にもつながることを学ん でいた。 病院と施設実習の大きな違いは,急性疾患が多い小児病 棟実習で経験した「展開の速さ」である。小児病棟の在 院日数がかなり短期化し,平均在院日数が2~3日であ ることを考えると,生活支援の視点で看護を展開する障 害児施設実習では気づけない視点であった。小児は,抵 抗力が弱く,感染を受けやすく,様々な機能が未熟ある いは不十分であるため予備力や対応力が乏しいことや正 常範囲や閾値が狭いという特徴から,状態が悪化しやす い。一方で,新陳代謝も盛んで,細胞の作り変えも活発 であるため,状態の変化に早期に対応することで,回復 に向かうことを学んでいた。“治っていくことでつい安 心してしまったが,呼吸状態を観察していくことが大切 である”と記載しているように,小児を看護する看護師 は,鋭い観察力を持ち,敏速に対応していくことの重要 性を実感していた。また,学生は看護するためには看護 師の関わりだけではなく,情報をチームで共有すること の大切さを学ぶことができていた。  谷口ら(2009)は,学生の学びを実習記録から抽出し カテゴリ化している。その内容は,【看護の対象として の家族】,【観察の重要性】,【成長・発達の理解】,【知識 の重要性】,【成長発達に合わせた援助】,【子どもの人権 の遵守】,【援助に遊びを取り入れる重要性】,【対象と良 い関係を築く】などであった。本学の学生の学びと共通 する点も多くあった。しかし,遊びの意義について考え ている点は本学の学生の学びの特徴であると考える。つ まり,遊びを援助や患児との関係づくりの道具として捉 えるのではなく,遊びが日常を取り戻す瞬間であると捉 えているように,患児にとっての遊びを考えているので ある。このことは,学生が,看護過程の展開に縛られず, 患児との関わりの中から学び取ったものだと考える。  小児看護実習で取り入れている経験型実習では,学生 が自ら経験の意味づけをしていくことに視点をおいてい るため,習得すべき技術項目や課題はあえて設けていな い。結果に示した学生の学びは,学生が積極的に子ども と家族に関わり,その関係性の中で,感じ,学び取った ものであり,看護実践を行いながら「子どもとは」,「小 児看護とは」を考えた結果だといえる。また,学生の学 びは,「自分がどうしたかったのか,自分がどうだった のか」という学生自らの思いではなく,「その子と家族 はどうしたいのか,その子と家族がどうなったらよいの か」を考える過程でもあった。看護過程を展開し,問題 点を抽出するという実習の方法論からだけでは導き出せ ない看護の本質そのものに迫る実習が経験できていた。  学生の作成したカードメソッドの図解の中心は,「病 態の理解」であり,すべての実習グループが示していた。 実習における教科内容には,問題解決を目的とする看護 過程の教科内容(直接的経験により学習できる内容)と 患者-看護者関係に関連した教科内容(経験を意味づけ, 内省する反省的経験)がある(安酸,2008)。経験型実 習の主な学習方法は後者にあたるが,学生は講義や演習 を通して小児看護学に関する基礎的知識を持って実習に 臨む。したがって,学生は,子どもとその家族との関係 性の中で,直接的経験をした後に,自分の持っている知 識を拠りどころに反省的経験へと向かったと考える。つ まり,藤岡(2008)が説明しているように,講義などで 得た知識や理論は,経験を意味づけるための手段として 用いられたと考える。また,経験型実習では,カンファ レンスが重要となるため,カンファレンスでは,学生の 経験をもとに「〇〇ちゃんと関わってどう思ったのか」 「なぜ,そう思ったのか」「なぜ,そのケアをしようと 思ったのか」「この子の発達段階は・・」「家族の状況は どうなんだろう」という問いを繰り返し行っていく。安 酸(2008)が述べているように,カンファレンスでの教 員や指導者の関わりが,反省的経験をさらに深化させる と考える。学生の学びは,カンファレンスを通して再経 験することにより,看護の意味づけ,評価につながって いた。 2.実習目標の到達度  実習目標の第1としてあげた「各成長発達段階にある 名桜大学紀要 第19号

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小児を理解し,成長発達を促すための生活援助ができる」 については,主に保育園実習で経験することが多い。し かし,小児病棟や障害児施設で,その子の状況に応じた 関わりの大切さや子どもにとっての遊びの意義を考えて いること,またカード図解から安全に遊べる環境づくり の大切さを学んでいることが明確になり,実習目標は概 ね達成できたと考える。次に,実習目標2「小児及び家 族の看護上の問題を明らかにし,必要な援助を実践する」 については,援助を行うために病態を理解することの重 要性への気づき,自らの五感を使って観察し,考えて援 助をすることの重要性や援助の意味を理解することの大 切さを学んでいた。さらに,ケアを実践し自立につなが る関わりや家族支援の必要性等の視点から,病気や障害 のある子どもを病院や家庭で世話することの大変さを実 感していた。親への支援の必要性と入院している子ども のきょうだい児を含めた家族支援について考えられてい ることから,提示した実習目標2についても概ね達成で きたと考える。  実習施設による受け持ち患児の特徴や実習方法に違い があっても,実習目標である「小児の成長発達の理解」 と「小児および家族に必要な援助の実践」は十分に学べ ることが示唆された。学生の学びから示唆されたことは, どこで実習をするのか,いわゆる施設の検討だけではな く,何を学ばせるのかという実習内容や方法の検討が重 要であるという視点であった。また,どう学ばなければ ならないのかとステレオタイプ的な実習内容の提示では なく,臨床という豊富な教材のある場面において,学生 自らがケアの主体者となり,アセスメントし,ケアを実 践することが重要であり,そのための指導力が必要であ ることが示唆された。 3.今後の課題  経験型実習では,従来の行動主義モデルから脱却し, 何を教えるべきかではなく,学生が何を学ぶかというこ とが重要であり,本実習でも習得すべき技術項目や課題 はあえて設定していない。そのため学習内容は,学生個々 の経験とそれを意味づける教員と指導者の指導力にゆだ ねられている。教員と指導者には,学生の経験をもとに 学習内容を整理,精選し教材化すること,学生の主体性 を引き出し,学んでいこうとする意欲を引き出す関わり が求められる。そのためには,経験型実習教育について, 臨床指導者と共通理解をし,学生が考え,計画・実践す る看護が経験できるような学習環境を整えること,個別 性に配慮し,個別性を重視した看護実践,いわゆる参画 型看護教育の実践ができる人材,物的両面からの環境整 備が重要である。 Ⅷ.おわりに  今回,小児病棟と障害児施設での学生の学びと実習目 標の到達度を検討した。学生の学びは,経験型実習を取 り入れることで,小児病棟,障害児施設での学びは共通 するものが多く,実習目標も概ね到達できていた。  経験型実習は,対象と関わる経験を通して感じたこと や考えたことを既習の知識や学習により深めていき,対 象に合わせた援助の意味について考えていく実習であ る。そのためには,学生の曖昧模糊とした「直接的経験」 を「反省的経験」にしていく過程で,学生と教員との対 話が重要となる。この時,何が問題なのか,何を教えた いのかという教員としての思いではなく,学生が,何を 感じ,何に困り,どうしたいと思っているのかという学 生の視点に立った指導を模索しながら,さらに学習過程 を支援していきたい。 文献 芥川清香・勝山吉章(2007):「看護学実習における経験 型実習教育の検討-学生の安全意識を高めるための 教育実践報告から-」,『福岡大学人文論叢』,第39巻, 第2号,pp.309-325. 藤岡完治・安酸史子・村中さい子・中津川順子(2008): 『学生とともに創る臨床実習指導ワークブック』,医 学書院,pp.13-15. 早川 操(1994):『デューイの探求教育哲学』,名古屋 大学出版会 安酸史子(1997):「経験型の実習教育の提案」,『看護教 育』,Vol.38,No2,pp.902-913. 安酸史子(監訳1999):『ケアリングカリキュラム看護教 育の新しいパラダイム』,医学書院 安酸史子(2000):「学生とともにつくる臨地実習教育」, 『看護教育』,Vol.41,No10,pp.814-825. 安酸史子(2005):「考え実践できる看護教育-経験型実 習教育-」,『看護教育』,Vol.57,No4,pp.74-79. 安酸史子(2011):「ケアリングをいかにして教育するか」, 『看護教育』,Vol.44,No2,pp.172-180.

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名桜大学紀要 第19号

Characteristics of Students

’ Learning in the Pediatric Ward of

the General Hospital and an Institution for Disabled Children

in a Meio University Pediatric Nursing Practicum which

Incorporates Hands-on Training

MATSUSHITA Seiko, KINJO Yasuko 

Abstract

The pediatric nursing practicum utilizes the pediatric ward in a general hospital and an institution for disabled children. The students practice at either of those facilities for a week. The objective of this study is to elucidate the students' learning experiences and examine the level of progress toward the goals of the practicum while considering the characteristics of their learning experiences at the practicing institutions. Thus, we created an illustration of the students' learning using a “card method,” analyzed it, and extracted 13 learning keywords from the training at the pediatric ward, and 9 from the institution for disabled children. From a total of 21 keywords, we drew 9 categories. Six categories out of those 9 are as follows: [understanding of the developmental stage and the pathological condition], [observation and assessment], [practice of caring], [trustful relationships], [family], and [playing]. Those were common in the training at both facilities. However, the other 3 categories, [children's safety], [information sharing], and [quickness of practicing the pediatric nursing], were found only in the pediatric ward training. The goals set for the practicum are to understand the children's developmental stage and to support the children and their family members as needed. The results show that many categories are common in the students' learning experiences and that the students can achieve the goals set for the practicum in spite of the differences in the characteristics of the children they cared for and the facilities they practiced at.

Keywords: Pediatric Nursing Practicum, hands-on training, pediatrie ward, institutions for disabled children, charcteristics of learning

参照

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