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「水素」にどのように立ち向かうか:独立行政法人産業技術総合研究所/秋葉悦男

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Academic year: 2021

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水素エネルギーシステム Vol.32, No.4 (2007) 巻 頭 言

巻 頭 言

「水素」にどのように立ち向かうか

独立行政法人産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 主幹研究員

秋葉悦男

最近、「水素エネルギー時代」がそこまで来ていて、研究者や技術者に は大いに期待していると公の場所で発言されることを聞くことが多い。 そのような時に理由は自分自身でもはっきりしないが、思い出すことがある。 1990 年であったと記憶するが、モハベ砂漠の太陽熱発電所を訪問するためにロスアンジェ ルスにある電力会社を訪問した。例のカリフォルニアの排気ガス規制について、議会へ最近 呼ばれたばかりという人たちと発電所へ出発するまで歓談した際に、「高速道路に給電設備を 張り巡らして電力を自動車へ供給し、インターから自宅までは電池で走れば排気ガスの問題 は無い。」と得意げな顔で言われた。地下鉄の第三軌条のように車から受電用のバーがでてい る様子を想像したりもした。 昨年、ボルドー大学を訪問した際には、ボルトー市内の低床式の路面電車にも驚いた。路 面電車へ市内では第三軌条から給電されているが、そのパワーライン上を人や自転車が横断 しても感電しない仕掛けになっていた。給電と感電防止を両立させた特別な仕掛けがあると のことである。余談であるが、郊外では無情にもパンタグラフを上げているのを見てもう一 度、驚いた。 現在、著者は燃料電池自動車へ水素貯蔵材料を用いて水素を搭載する事を目指して研究開 発を進めている。自動車は外界からエネルギー的に独立しているので、それ自身がエネルギ ーを搭載しなくてはならない現状を前提に様々な議論を進めている。しかしながら、外界か ら自動車へエネルギーを供給する方法の検討や、様々な方策で自動車へ搭載しなければなら ないエネルギーを最小限にするような技術開発の方向性も当然あると思っている。今日、必 ずしもそのような方向性の研究が数多くあるわけではないが、存在することさらには存在す るべき必然性があることも事実である。 「水素」に期待していると一般から言われていても、トータルで技術や社会を見れば、数 多くある選択肢の一つに過ぎないことを忘れてはならないと思う。 もし、我々が水素エネルギー社会を目指していて、そして水素エネルギー協会のメンバー がその先頭に立っているとしたら、誰よりも先にかつ恐れず、その時々に考えられる複数の 選択肢を社会に示す責任があると思う。 しかしながら、就職して以来水素の研究をずっと続けてきたが、その間「水素」という言 葉を本来の目的ではないことに使うのを残念ながらたくさん見てきた。直ちに普及すること がないと高をくくったとしか思われないようなものもその中にはあったと言わざるを得ない。 そのような事例と我々の境目は、唯一、我が国ひいては世界のエネルギーシステムの健全性 を第一に考え、自らの心に逆らって自らの研究や開発を選ぶべき第一の選択肢としないこと にのみあるのではないかと思う。特に、今世紀後半の二次エネルギーとしては水素と電力し かないのではと言われる現在、水素社会実現のリーダーシップを握る水素エネルギー協会の 我々の責任はますます重いのではないだろうか。 -1-

参照

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