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[Attitudes and Behavior of the First Generation of Factory Wokers: A Case Study in Laos]

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東南 ア ジア研究 38巻 1号 2000年 6月

工場労働者 の第

1

世代 をめ ぐる職務意識

-

ラオスを対象 と して -

*

彦 **,鈴

義 ***

Attitudesand Behaviorofthef、irstGeneration ofFactory W orkers: A CaseStudy in Laos*

AkihikoOHNO**andMotoyoshiSUzuKI***

Themodeofworking liferequiredin modem factoriesdiffersmarkedlyfrom thatin agricultureorruralhouseholdindustries.Intheinitialphaseofindustrialization,factory workerssocializedinatraditionalworkingmilieuareobligedtostrictlyobservefactory rulesandconstantlyapplythemselvestotheirassignmentunderthehierarchyoffor ma-lizedsupervision.

Thepurposeofthisresearchistoempiricallyexploretheattitude-behaviorlinkofthe firstgenerationoffactoryworkersinLaos.Thedataforthisstudywerecollectedfrom a sampleofblue-collarworkers(N-358)infurnitureandgarmentfactories.

Ourstudyrevealedattitude-behaviorlinkscontrarytothemannerwidelyobservedin industrialized societies. Two distinctwork attitudes were extracted:workers'mal -adaptation to the factory system and organizationalcommitment. Workers'mal -adaptation induceslaborturnoverand work withdrawalbehavior,and organizational commitmentenhanced morale. Thisraisesquestionsabouttheeffectivenessoflabor一 managementmeasurestakeninWesternindustrializedsocietiestoenhancebothproduc -tivityandwelfareofworkersinnon-industrializedsocieties.

じ め

ラオ ス人 の労働観 につ いて

,

「カ ンボ ジア人 が稲 を植 え,ヴェ トナム人 が それを収穫 す る。そ して ラオス人 は, その稲 の育 つ音 を聴 いて時 を過 ごす」 とい うイ ン ドシナの格言 が あ る。 政府 開発援助 な どの資金 を使 って な され る ラオ スの道 路 建設 の現場 で働 く人 々 の大半 が 出稼 ぎの ヴェ トナム人 で あ る とい う現実 は, あ くせ くと働 くことに忌避感 を もっ ラオス人 の気質 を表 す こう した格言 を妙 に説得 的 に して い る。 その ラオス も,1986年 か ら新思考 (チ ンタナ カー ン ・ * 本稿 レフェ リーの指摘 は的確 かつ有益 で あ った。 記 して謝意 を表 したい。 なお, 本稿 の文責 (質 問 票 の構成 を含 む) は大野 にあ る。

** 青 山学 院大学 国際政治経済学部 ;SchoolofInternationalPolitics,Economics and Business, AoyamaGakuinUniversity,4-4-25Shibuya,Shibuya-ku,Tokyo150-8366,Japan

*** 三重大学人文学 部;FacultyofHumanitiesandSocialSciences,MieUniversity,1515Kami hama-cho,TsuCity,Mie514-8507,Japan

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東南 ア ジア研究 38巻1号 マイ) とよばれ る市場経済化 をめざ した経済 改革 に着手 した。さ らに,1997年 にはアセア ン加 盟 を果 た している。 こうして,大規模製造工場 が ほとん どなか った ラオスに も海外直接投資 に よる製造工場 の設立 が相次 ぐことにな った。 この ことは,在来 のそれ とは異質 の 「労働 の場」 と 「工場労働者 の第 1世代」 の登場 を意 味 してい る。 工場労働者 の第 1世代 とい うとき,本稿 で は, それが歴史 の一朗 であ るとい う認識 にた って い る。 この認識 は,次 のふたっの分析視座 にかかわ って くる。西欧社会で は,労働 (labor)と は原罪 に対 して与 え られ た罰 とも解釈 され る苦役 とみな されていた。 それ は,近代経済学 の テ キス トにお いて,労働供給 の決定が正 の効用 を もつ所得 と負 の効用 を もつ労働 (同義的 に,正 の効用 を もつ余暇) の場 でな され るとい う仮定 と符合 している。負 の効用 を もつ と想定 され る 労働 をお こな うことにつ いて,幾つかの理 由付 けがな されて きた。 た とえば,労働 自体 には意 味を求 めず に仕事 の外 に存在す る価値 を追求す るために働 くとす る仕事 の道具性 (instrume n-tality)仮説 はその代表であろ う。開発途上国 とい う文脈 で いえば,生 きるために働 くとい う生 存欲求 の充足 (生存仮説) も提示 され うる。 これ に対 して,仕事 における自己実現 のよ うに仕 事 その ものに意味を求 め る自己表 出 (expressive)仮説 は, もはや労働 が負 の効用 を もつ こと を想定 して いない。1) このよ うに人 々の労働観 につ いて普遍 的解釈が存在 しない ことは, マズ ローの欲求段 階説 を もちだす まで もな く,先進工業社会 と工業化 の初期段階 にある社会 とで は 異 な る労働観 が支配す るであろ うことを予測 させてい る。2) もしそ うな らば, 採用 され るべ き 労務管理戦略 もまた異 な ることになろ う。 第2に,労働 の場 の変容 に対す る人 々の態度 も労働観 の解釈 を複雑 に している。 トム ソンは, 自然 の リズムによ って課 せ られ,生活 との峻別 がな され に くく, またお喋 りを しなが ら過 ごす ことと揮然一体 とな った在来社会 にお ける労働形態 を課業本位 (task-orientation)と捉 えて, 時間規律 に基礎 をお く工場労働 と対比 させている[Thompson1967]。3)課業本位 である労働 が 普遍 的な環境 で社会化 された人 々が工場労働者 の第 1世代 とな った とき,彼 らにとって 「工場 とは新 たな監獄 であ り,時計 は新 たな看守」 とな り, さ らには 「工場 は,規則 そ して管理 その もの」 とす らな りうる [Landes1969]。 この ことは経営者 の立場 か らすれば,カ ー等 [Kerr

e

t

α7.1960]の指摘 す るよ うに,工業化社会 において要請 され る もっとも困難 な変容 のひ とつ は, 秩序 と規律 (regularityanddiscipline)とい う工場組織 の もつ特異性-の労働者 の馴化 とな ろ う。 同時 に,在来 の作業環境 とは異質 な未知 の作業環境-の馴化 を要請 され る労働者 も,大 きな心理的負担 を強 い られ ることにな る。 しか し, こうした歴史研究 の指摘 も,現在 の開発途 1) こうした議論については,例えばWatson[1987]を参照されたい。 2) 豊かな社会における労働者の職務態度と行動を論 じたものとして,Goldthorpeetal.[1968]が ある。 ここで議論されている職務意識は本稿の対象とする労働者のそれとは大きく異なっている。 3) 同様の問題意識を扱ったものとして,0'Malley [1990]がある。

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大野 ・鈴木 :工場労働者 の第1世代 をめ ぐる職務意識 上 国研究 で は顧 み られ る ことは少 ない。 た とえ扱 われ た と して も, 資本家 によ る労働者 の搾取 とい う, やや冷静 さを欠 いた議論 に終始 す る傾 向す ら認 め られ る。 本稿 で は,首都 ヴェ ンチ ャン市 にあ る家具 お よび縫製工場 の製造工程従事者 を対象 と した質 問票調 査 の結 果 か ら,工場制度 とい う新 た な労 働環 境 に身 を置 いた人 々の職 務意 識 を検 討 す る。 Ⅰ

研 究 の 対 象

本稿 の対 象 は,ヴェ ンチ ャン市郊外 にあ る家具工場 (日系,従業員数 369名)と縫製工場 (タ イ ・ラオ ス合弁,従業員数 250名) の従業員 で あ る。 質 問票 (置留法) によ る調査 がな され, それぞれで 194名 と 164名,計 358名 の有効 回答 (無効回答率 14.8%)が得 られた。なお,対象 は製造工程従事者 に限定 してお り,事務職 は含 まれて いない。調査 は 1998年 3月 にな され た。 男子労働者比率 は,家具工場 で は 55.3% そ して縫製工場 で は 20.5% で あ り,か な り女子労働 使用 的 とな って い る。学 歴 (表 1) は, ラオスが社会主義 国で あ ることを考慮 して も,経済発 展 の初期段 階 にあ る社 会 と して は比較 的高 い水準 にあ る。 双方 の工場 は ヴェ ンチ ャン市 の郊外 にあ ることか ら,従業員 の多 くも農村 出身 で あ る。 父親 の職業 も農業 が中心 で あ り,都市 の近 代部 門従事者 によ る近代 的労働力 の再生産 はいまだ一般化 して いない (表2)。平均年 齢 は,そ れぞれ 28.07歳 と 23.80歳 で あ り,比較 的若 い世代 が中心 とな って い る (表 3)。 ラオ スで は工 業化 が緒 につ いたばか りで あ る ことを考 えれば当然 であ ろ う。 表1 学歴構成比 (卒業基準,%) な し 小学校 中学校 高 校 専門学校 合 計 家具工場 5.2 25.3 34.5 28.4 6.7 100.0 縫製工場 7.3 28.0 28.7 26.8 9.1 100.0 表2 父親 の職業構成比 農 業 工場労働者 公務員 自営 ・商人 死 亡 その他 合 計 家具工場 49.2 16.6 14.9 2.8 16.6 0.0 100.0 縫製工場 44.4 13.9 15.9 9.2 15.2 1.3 100.0 荏 :死亡の場合,生 前の職業 は不明。 表3 年齢 と勤続期間 の平均値 年 齢 勤続期間 (月) 家具工場 28.07(8.61) 60.55(58.98) 縫製工場 23.80(5.58) 27.50(23.39) 注 :( )内は標準偏差。 5

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東南 ア ジア研究 38巻1号

労 務 管 理 1. 家具工場 設立 して10年 に満 たないが, ラオスで は比較 的大規模 な工場 で あ る。 事務職 の10名 を除 け ば,残 りは製造工程従事者 で あ る。職 制 は,一般労働 者 が280名 (6.8万 キ ップ),副班長35名 (7.5万 キ ップ),班長35名 (10万 キ ップ),副主任2名 (23万 キ ップ),主任5名 (28万 キ ップ) そ して タイ人 の技術者 2名 で構成 されて い る。 か っこ内 は, 月給 で あ る。4)給与 は固定給 で あ り,出来高給 は採用 されて いな い。一般労働者 につ いて いえ ば,月25日就労 した と して,労働 日当た りの報酬 は約2,700キ ップ とな る。 これ は近 隣 の農業労 働賃金 とはぼ等 しい。5) 製造工程従事 者 の約 20%を 占め る役 職者 はす べて内部昇 進 で まか なわれて お り,昇進 を軸 に労 働誘 因制度 が構築 されて い るといえ る。 しか し一般 的 には, 開発途上国 で は昇進 とい う長 期 的 な労働誘 因 に労働者 が期待通 り反応 しない場合 が多 い。6)日本人経営者 は

,

「班長 に昇進 す ると給与 が高 くな るが, そ うす るとさば るよ うにな る。 そ こで手 当 を半分 にす ると翌 月 にはよ く働 くよ うにな る

とい う。 この ことは労働誘因 と しての昇進 が期待 され るよ うには機能 して いない ことを示 唆 して い る。7) そ こで1998年 か ら,主任 までの従業員 につ いて毎月勤務評価 を して,上位 10% に1万 キ ッ プ,次 の30%に5,000キ ップの報奨金 を与 え るとい う中期 的 な労働誘因制度 を導入 した。残 り の60% には報奨金 はない。日本人経営者 によれ ば,報奨金 は名誉 とい うよ りは給与 の増額 と し て受 け取 られてお り,現在 まで の ところ少 しは労働意欲 が出て きた との ことで あ る。報奨金刺 度 の導入 の背景 に は,長期 で はな く中期 の労働誘 因 によ り労働者 を動機付 けよ うとす る意図が あ る。短期 的労働誘 因であ る出来高給 の導 入 も視野 に入 れ て い るとい うが, これ もこう した意 図 の反映 といえ よ う。 労働者 の大半 は工場 の周辺 の村 か ら供給 され る。離職 率 は低 い。 それ も離職 とい うよ りは, いっ の間 にか出勤 しな くな り,調 べてみ ると村 で働 いて いた ことが多 い とい う。 4) 調査時点で,はば 2,450キップ- lUSドル (通貨危機の影響 もあり大きく変動)である。 5) 例えば, 近隣村では手機織 りが盛んであるが, 織子の日給 もほぼこの水準にある。 詳 しくは, 大 野 [1998]を参照のこと。 6) 例えば,Ohno [1995]を参照されたい。 7) これについてはふたっの解釈が可能 となる。ひとつは,彼 らの労働供給曲線が後方屈曲となって いることがある。すなわち財市場が充分に浸透 していない経済では,余暇選好が強 くなる可能性 がある。 第2に,組織における職位が帰属地位 (ascribedstatus)として捉えられ,本来組織 と して期待される獲得地位 (achievedstatus)として認知されていないことである。 この点につい ては,例えばOhno [1995]を参照されたい。

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大野 ・鈴木 :工場労働者の第 1世代をめぐる職務意識

2.

縫製工場 1993年か ら操業を開始 した比較的新 しい工場 (資本比率 :タイ9割, ラオス1割)であ り, 201台の ミシ ンを装備 し,事務職 をあわせて250名 の従業員が いる。工場 には5ライ ンあ り,そ れぞれに監督者 1名 とアシスタン ト3名がつ く。 彼 らは,縫子か らの内部昇進で まかなわれて いる。 縫子 の採用 には特 に困難 はない し,採用 に際 しては学歴 も不問 とされて いる。他県 出身者 の ための寮 もあ り,約50名が寄宿 している。 労働法 の規定で は雇用最低年齢 は18歳であるが, この工場 では16歳以上 と している。 労働時間 は8- 12時,13- 17時の1日8時間労働 の1 シフ トで週6日制 である。 東南 アジアの縫製工場 で一般 的な2- 3シフ ト体制 はとられていな い。労賃 が安 く (タイの5分 の1程度),またEU か らラオスに付与 された特恵関税枠 がさ らに 各縫製工場 に割当て られていることもあ り,縫製工場経営者 の労働生産性 を高め る意思が弱 い よ うである。8)事実,生産現場 を見 る限 り, ライ ンの流れ はスムーズとはいえない。 給与 は,基本給 の月1.45万 キ ップに 日給 (時給 175キ ップで計算)が加 わ る。 さらに,約7 割 が もらうとい う皆勤手 当て6,000キ ップ, 食事手 当て1万 キ ップそ して超過勤務手当て (時 給 の125%)も含 めて平均で月6.5か ら7.5万 キ ップとなる。 基本給 は毎年 1,000キ ップ増額 さ れ るが,給与額全体 か らみれば僅かな比率 にとどまってお り, ほとん ど年功賃金 とはな ってい ない。また年 1回の ボーナスが あ り,出勤 と作業態度 を考慮 して全労働者 の10%に基本給 の2 カ月分, そ して80% に半月分が与え られ る。 欠勤率 は2か ら3%と低 い水準 にとどま っている。 しか し,離職 は週5名程度 とい うか ら,年 間 の離職率 は100%程度 とかな り高 くな っている。 これ は同業他社への転職 が中心であるとい う。調査時点で は,ヴェ ンチ ャン市 を中心 にラオスには53の縫製工場が稼動 してお り,縫子 は 比較的代替的就業機会 に恵 まれている。 この ことは,後 に示す意識調査 の結果か らも裏付 け ら れ る。 3.労務管理 の特徴 ある一定の職務行動 を労働者 に求 め るには,(1)監視, (2) 自律的な労働 を実現す るため の労働規律 の確立, そ して (3)誘因制度 の提示が主要 な手法 と してあげ られよ う。 労働規律 には,欠勤 ・遅刻 などの工場規則 の遵守 を求 める初歩的な段階か ら, いわゆ る トヨタ ・システ ムなどで要請 され る小集団活動 をベースとした高度 な段階まで大 きな幅 を持 っている。前者 は 工場労働者 に求 め られ る基礎 的な規律であ り, その遵守 は監視 の対象 に属す るといえよ う。 後 8) ミシンの台数よりも1割ほど縫子を多 く雇用 しているが,これは欠勤に対応するためとのことで ある。要素価格の観点か らして,ラオスでは労働の遊休よりも資本のそれが問題となっているこ とを示唆 している。 7

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東 南 ア ジア研 究 38巻 1号 者 は,上記 (2) と対応 している。対象 と した工場 で は自律的職務行動 を期待 で きる段階 には な く, む しろ,初歩 的な工場規則 の遵守 が課題 とな って いる。9) 縫製工場 の工場規則 (19条 で構成)を例 にとろ う。主要 な規則 を示す と

,

「従業員 は出勤 と退 社 時 を出勤 カー ド (パ ンチ ・カー ド方式 :筆者注) に記録 して,給与支払 いの時 にカー ドを提 示 しな くて はな らない。 カー ドに記録す ると同時 に仕事 を始 めな くて はな らず, また就業 中 は 社外 に出て はな らない。他人 のカー ドを使用 した ときには, 当事者双方 のボーナスは支払 われ ない。3分以上 の遅刻 を した場合, た とえ無欠勤 で もその月の皆勤手 当 は支払 われない。欠勤 届 けは前 日までに提 出 され な くて はな らず, また欠勤 が3日以 内な らば基本給 の減給 はない。 無断欠勤 の場合, 1日当た り1,400キ ップが基本給か ら差 し引かれ る。 3日続 けて無断欠勤 を した ときには解雇 とな る。 病欠 の場合, 医師 の診断書 が あれば3日まで は有給 (年 間 15日ま で) とす る。工場付属物 の窃盗 は,給与 の支払 いな しに解雇 とな る。 終業 のベルによ り従業員 は退社 を許 され るが, これ に違反すれば500キ ップが給与 か ら差 し引かれ る」 などである。 この工場規則 か ら,欠勤 を含 めた厳格 な時間管理 を読 み取 る ことがで きよ う。 それ はまた, 工場労働 の第 1世代 に とって は,定時法 とい う馴染 みのない時間観念 の遵守 を要求 されてい る ことを意味す る。10)すなわち, こうした管理規則 は, それが工場 で は基本 的な規律 であると し て も,課業本位 であ る就業形態 に職業社会化 された人 々に とって は 「時計 は新 たな看守」 と感 じられ ることに もなろ う。本稿 の重要 な検討課題 のひ とっ は, こうした大規模工場 が組織 と し て要請す る秩序 と規律, さ らには自然 の リズムに従 わない作業形態 が工場労働者 の第 1世代 の 職務意識 に及 ぼす影響 であ る。 家具工場 を運営 す る日系企業 はイ ン ドネ シアに も工場 を もってい るが,労働力 の質 につ いて 日本人経営者 は

,

「イ ン ドネ シアと比 べて ラオスで は,監督者 が見て いない とす ぐにさぼ り労働 意欲 に欠 ける」 な どの問題が あ るとい う。 自律的な労働意欲 が ひ きだせてお らず,監視 を主軸 と した労務管理 が要請 され る段 階 にあるといえ る。先 に紹介 した昇進 によ り労働意欲 が低下す るとい う指摘 も併 せて考 えれば,工場労働者 の第 1世代 が工場 とい う組織環境 にいまだ馴化 し てお らず, また組織 の提示す る労働誘因 に も充分 には反応 していない現状 が浮か びあが る。 9) 日本的労務管理方式を代表する5Sも,筆者が訪ねた東南アジアの工場では4Sが掲げられてお り,最後のSである 「しつけ (self-discipline)」がはずされていることが多かった。「しつけ」の 段階まで労務管理が進むには時間が必要というのが,多 くの経営者の回答であった。 10) 定時法と不定時法については, 角山 [1984]を参照されたい。 ここでは,近代の定時法の登場 と ともに等価等質の労働時間を単位 とする賃労働が発生 し,近代的時間管理に労働者が取 り込まれ る様子が措かれている。

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大野 ・鈴木 :工場労働者の第1世代をめ ぐる職務意識

Ⅲ 職務態度 と職務行動の下位概念

本稿 で は,職 務 態度 (occupationalattitude)と職 務 行 動 (occupationalbehavior)とい う ふ たっ の職 務 意識 に焦 点 を当て, 前 者 が後 者 の先行 因 子 とな る とい う組 織 (か つ て の産 業 ) 心 理学 の枠組 み を採 用 す る。11) 職 務 態 度 と職 務 行 動 にか か わ る複 数 の質 問- の回答 か ら, 因子 分 析 (因子 抽 出 は主 因子 解 , バ リマ ックス回転 , 摘 出因子 の最 小 固 有 値 は1) に よ りそれ ぞ れ の職務 意識 の下 位 尺度 を求 め る。各 因子 は, ア ンダー ソ ン ・ル ー ビ ン法 に よ り求 め られ た因子 得 点 で数 値 化 され る012)な お, 本 文 で は質 問 の キ ー ・ワー ドを使 用 し, 質 問 の全 文 (翻訳 ) は関連 す る表下 (表4 ・6 ・9・ 13)に示 され る。 質 問 へ の回答 は, そ の ステー トメ ン トが 「強 く妥 当す る (- 4)」か ら 「全 く 妥 当 しな い (- 1)」 の 4肢 法 の リッカ ー ト得点 で評 価 され て い る。 職 務 態度 につ いて は, ふ たっ の工場 で 同様 の因子 負 荷 パ ター ンを もつ有意 な2因子 構 造 が検 出 され た (表 4)。第 1因子 は,工場組織 その もの に対 す る一 体感 を表 す職務 態度 で あ り,組 織 表 4 職務態度 にかかわる因子分析の結果 (因子負荷行列) 全 体 家 具 工 場 縫 製 工 場 第1因子 第2因子 共通性 第 1因子 第2因子 共通性 第 1因子 第2因子 共通性 1誇 り 0.84 - 0.10 2 愛着 墜 0・01 3良職場 0.72 - 0.12 4 家族的 0.63 - 0.31 5厳規則 - 0・05 旦些 6単調 - 0.17 0.82 0・71 99 0・41 0・69 9ヱ蔓 0・13 0・53 99 0・39 0.49 0.63 - 0.16 0・72 - 0・38 旦二軍 0.70 -0.44 0.69 0.70 0.85 - 0.01 0.67 0.83 - 0.28 0.54 0.72 - 0.01 0.41 0.72 - 0.25 0・66 - 0・10 旦旦巨 0.68 - 0.19 0.83 7 3 2 8 4 2 7 7 5 5 7 7 0 0 0 0 0 0 固有値 2.33 1.50 2.11 1.56 2.88 1.18 分散 % 38.87 25.06 35.12 22.74 47.95 19.59 注 :下線のついた項 目が因子の解釈に用い られた。 キー ・ワー ド 質 問 1 誇 り 2 愛着 3 良職場 4 家族的 5 厳規則 6 単調 この工場で働 いていることを誇 りにしている。 この工場 に愛着を感 じる。 この工場で働 くことは,他で働 くよりも良 い。 この工場 は家族的である。 工場規則を窮屈に感 じる。 私の仕事 は単調である。 ll) ここでいう職務行動 とは,職務行動 に対する意思 (behavioralintentions)である。 12) この方法では,因子得点 は基準化 されている。 9

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東南 ア ジア研究 38巻 1号 表5 給与満足度 家 具 工 場 縫 製 工 場 大 変 満 足 0.5% (1) は ば 満 足 3.6% (7) や や 不 満 16.0% (31) 大 変 不 満 79.9% (155) E MⅣnu ll J一 F J 3 2 9 0 1 6 6 2 rL U rL U iZq iZq % % % % 9 8 1 2 7 7 2 2 3 4 1 合 計 100.0% (194) 100.0% (164) 注 :( )内はサ ンプル数。

心 理学 で い う職務 コ ミッ トメ ン ト (organizationalcommitment) に近似 す る概 念 で あ る。13)

第 2因子 は,工 場 規 則 や仕 事 の単 調 さ とい う近 代 的工場 に特 有 の作 業 環 境 に対 す る態度 で あ り,工 場 制 度 とい う異 質 な環 境 に心 理 的 に馴 化 して いな い こ とを示 す非 馴 化 の因 子 とみ なせ る。14) ところで非馴化 は, 職務 満足 の因子 と も捉 え うるか も しれ ない 。 しか しそれが経 済発展 の初期段 階 に特 有 の職務 態度, す なわ ち非馴化 で あ る ことが, これか らの議論 の中で明 らか に され る。 なお, この因子得 点 は符号 を逆 に して馴化 得点 と して扱 う。 給与 満足度 につ いて は, 「現在 の給与水準 に どれ ほど満足 して い るか

とい う質 問へ の回答 (大変 満足- 4-大変不満- 1)で計 測 し,職務 態度 を構成 す る独立 の因子 と した。結果 は表5 に示 され る。 給与 満足度 を独立 因子 と したの に は,次 の理 由が あ る。給与 満足 にかか わ る質 問 も職務 態度 を構成 す る項 目に含 めて因子分析 をお こな った と ころ,全体 で は有 意 な独立 の第3 因子 (ただ し1項 目の み) と して検 出 され た。 家具 工場 で も独立 の第3因子 とされ たが,縫 製 工場 で は第 1因子 に吸収 され た。 また,給与 は企業 の労務管理 にお いて最 も操 作可能 な変数 の ひ とつ で あ る ことか ら, それが どの程 度 の効 力 を もっか を検討 す る必要 が あ る。 そ こで給与 満 足 につ いて は因子分 析 か ら外 して,職 務 態度 の下位 尺度 の ひ とつ とす る。15) なお,給与 水準 が職務行 動 に与 え る影 響 につ いて は,(1)離職 率 の抑 制 (離職抑 制仮説 )の 他 に,(2)高賃 金 が怠業 の機 会費用 を高 め る ことか らモ ラールを高 め る,また は (3)労働 者 13) 組織 コミットメントについては多 くの議論があるが [Kidron1978], 今 日最 も受 け入れ られてい る概念 はポーター等 [Porteretal.1974]による定義であろう。 彼 らは組織 コミットメントを, (1)組織の目標 と価値観の受容, (2)組織-の利他的行為, そ して (3)組織の成員 としてと どまる意思, という下位概念で捉えている。 ポーター等が用いた質問項 目の内容か らしても, 本 稿で用いられる組織 コミットメントは一番 目の下位概念に相当 している。 14) 組織 コ ミッ トメ・ン トと馴化 とい うふ たっ の職務 態度構造 につ いて,読者 は- ∼ ツバ ー グ [Herzberg1966]の動機付け要因 (motivator) と衛生要因 (hygiene) という二要因説を連想す るか もしれない。 しか し,本稿でいう馴化を構成する質問内容には衛生要因 と某かの対応関係は 認められるが,組織 コ ミットメントと動機付け要因は全 く異なる内容である。

15) ここで給与満足度が馴化 に含 まれなかったことには留意 したい。 というのも, もし本稿でいう馴 化が先進工業社会で把握 され る職務満足な らば,給与満足度 は馴化 に包摂 され るはずである。そ

(9)

大野 ・鈴木 :工場労働者 の第 1世代 をめ ぐる職務意識 表6 職務行動 にかかわ る因子分析 の結果 (因子負荷行列 ) 全 体 家 具 工 場 縫 製 工 場 第 1因子 第2因子 共通性 第 1因子 第2因子 共通 性 第 1因子 第 2因子 共通性 位 任 進 力 矢 車 避 地 責 昇 努 喪 集 忌 1 2 3 4 5 6 7 蒜 一 〇 ・ -1 一 〇 ・ -。 一 0.78 0.05 ー 0.16 0.03 0.08 0.18 - 0.03 - 0.01 o ・ -7 一 〇 ・ -3 麺 1 8 0 7 3 3 0 6 5 5 3 6 5 5 0 0 0 0 0 0 0 o ・ -9 一〇 ・ -7 一 〇 ・ -5 一 〇 ・ -。 一 - 0.02 - 0.18 - 0.10 - 0.05 0・26 旦二軍 0・04 旦ユ§ 0.23 0.68 3 2 1 5 7 8 2 6 6 3 2 6 5 5 0 0 0 nU 0 0 0 二 〇 ・ -3 一墜 o L 0.76 - 0.01 - 0.01 - 0.13 0.07 一一0.10 - 0.01 - 0.01 S l o ・ -。 一〇 ・ -。 一 9 5 0 0 7 0 5 5 5 7 5 5 5 5 0 0 0 0 0 0 0 固 有 値 2.07 1.65 1.88 1.69 2.32 1.62 分散 % 29.55 23.56 26.88 24.11 33.13 23.18 注 :表4とおな じ。 キー ・ワ- ド 質 問 1 地位 2 責任 3 昇進 4 努 力 5 喪失 6 集 中 7 忌避 一生 懸命働 いて,高 い社会 的地位 を得 たい。 もっと責任 のあ る仕事 を したい。 昇進 したい。 同僚 よ りももっとよ く働 くよ うに して い る。 働 く意欲 を失 って い る。 仕事 に集 中で きな い。 ときお り,働 くのが嫌 にな ることが あ る。 に贈与交換 (giftexchange)の認識 を もたせてモ ラールを高 め る, さ らに (4)低所得経済 で は高賃金 が労働者 の栄養水準 を改善 す ることによ り労働生産性 を高 め る[Wonnacott1962]と の指摘 もあ る。 (2) ∼ (4)の仮説 は,総称 して効率賃金仮説 とよばれ る。 これ らの仮説 の是 非 を厳密 に問 うことは本稿 の問題意識 か ら外 れ るが,給与満足 が職務行動 に与 え る効果 を検討 す ることか ら, こう した仮説 の妥 当性- の ヒン トを得 ることはで きよ う。 以上,組織 コ ミッ ト メ ン ト・

化 そ して給与 満足度 を職務態度 の下位尺度 と して措定す る。 次 に,職務行動 にかかわ る 7つ の質問- の因子分析 か ら,表6に示 され る2因子構造 が検 出 された。16)第 1因子 は職務 - の積極 的 なかかわ りの意思 を表す モ ラール, そ して第 2因子 は怠 業 と解釈 され る。一般 には, この.i,たっ の因子 は逆相 関 にあ ると考 え られ るが,今 回の対象 に つ いて は独立 した職務行動 と して検 出 された。 この ことは, それぞれの職務態度 が異 な る職務 行動 に影響 す る ことを予測 させてお り, その確認 が本稿 の中心的 な検討課題 とな る。 このふ た つ に離職意思 (表 7) を加 えた 3つ を職務行動 の下位尺度 とす る。 表

8

に職務態度 と職務行動 の下位尺度 の企業別得点 (平均値 と標準 偏差) が示 され る。

16) なお, ここで い う職務行動 は,行動 - の意思 (behavioralintentions)で あ る。

(10)

東南 ア ジア研究 38巻 1号 表 7 離職意思 家 具 工 場 縫 製 工 場 離 職 意 思 な し 83.0% (161) 将来 は離職 したい 13.4% (26) 離 職 し た い 3.6% (7) F nu g GiiZ 1 5 9 0 8 6 1 iZq Jq ∫_ H-% % % 8 1 1 1 2 6 5 4 合 計 100.0% (194) 100.0% (164) 荏 :( ) 内 はサ ンプル数。 表8 職務態度 ・職務行動得点 の企業別平均値 の差 家 具 工 場 縫 製 工 場 t-値 有 意 確 率 職務態度 組織 コ ミッ トメ ン ト 馴 化 賃金満足度 0.10 (0.93) - 0.ll(1.07) 1.99 0.ll(1.05) - 0.13 (0.93) 5.18 1.25 (0.54) 2.41(0.08) 16.32 P<4.7% P<0.2% P<0.0% 職務行動 モ ラール 怠 業 離職意思 - 0.06 (0.90) 0.07(1.10) 1.20 - 0.06(1.06) 0.07 (0.93) 1.18 1.21(0.49) 1.54 (0.61) 5.80 P<22.9% P<24.1% P< 0.0% 注 :賃金満足度 :大変満足- 4-大変不満- 1の4肢法 の得点。 離職意思 :離職 したい- 3, 将来 は離職 したい- 2, 離職意思 な し- 1, の3肢 法 の得点.他 はア ンダー ソ ン ・ル ー ビン法 によ る因子得点。 ( ) 内 は標準偏差。 職務態度 図1 職務意識 の構 図 なお職務態度 の下位尺度 につ いて は,

Z--

0.37(組織 コ ミッ トメ ン ト) -0.24(馴化)

+

I.52(賃金満足度) F- 106.97,Wilksのユニ 0.53,x2- 228.75(p<0.01% ),正 判 別 率- 81.0% とい う0.01% で有意 とな る標準化 された正準半順り関数 がえ られた。職務行動 につ いて は,離職 は別 と して, ふ たっの グループは有意 には判別 されていない。 なお,職務態度 に関 してふ たっ の工場 が有意 に判別 された ことか ら,本稿で は工場別 に計測結果 が示 され る。 ふ たっの工場 で 職務態度 に差異 があ ることにつ いて は,双方 で異 な る労務管理戦 略が採用 されていることが理 由のひ とつ と して考 え られ るが,本稿 で はそれを確認 で きるだ けの資料 が得 られていない。 た

(11)

大野 ・鈴木 :工場労働者の第1世代 をめ ぐる職務意識 だ しこれか ら議論す るよ うに,双方 の工場 で,職務態度 と職務行動 につ いて同様 の因果関係 が 確認 で きる。 本稿 で は, この因果関係 に注 目す る。以下, これ まで に検 出 した職務態度 と職務 行動 の下位尺度 の関係 (図 1参照)を検討す る。

Ⅳ 職務態度 と職務行動 の関係

1.稚職意思 表 7でみたよ うに,離職意思 は全体 的 に低 い ものの,縫製工場 で相対的 に高 くな ってい る。 この ことは前述 した双方 の工場 にお ける離職率 の相違, そ して代替的就業機会 の有無 につ いて の質問への回答 (表9)と対応 して いる。ふ たっの工場 の労働者 にみ られ る対照 は,ヴェ ンチ ャ ン周辺 に縫製工場 の進 出が相次 いで いることか ら,相対的 に縫子 たちに代替 的就業機会 が与え られて い るためで あ ろ う。 ただ し調査 時点 で は,構造調整 融資 に と もな うコ ンデ ィシ ョナ リ テ ィによ りラオスは緊縮財政 を余儀 な くされてお り, さらに通貨危機 (1997年)の影響 や ラオ ス自身 が外貨危機 に陥 って いることもあ り,国 内での代替的就業機会 はきわめて限 られて きて い る。 労働者 は, こうした超過供給状態 にあ る労働市場 を認識 して いるといえ る。 離職 関数 が表 10に示 され る。 欧米 の社会 を対象 とした同様 の研究 で は組織 コ ミッ トメ ン ト が離職 の有力 な先行 因子 とされてい るが, われわれの対象 で は,馴化 が離職 の共通 の先行因子 とな って い る。工場制度 に

化 で きて いな い ことが離職 を誘発 す るとい う関連 が指摘 され よ う。組織 コ ミッ トメ ン トは,それが相対 的 に高 い水準 にある家具工場 でのみ有意 とな ってい る。 縫製工場 で は代替 的就業機 会 に対 して楽観的認識 を もつ労働者 はど離職意思 が有意 に高 く な ってい るの に対 して,家具工場 で は有意 とな っていない。 これ は表 9につ いてみた,双方 の 工場労働者 にみ られ る代替 的就業機会 についての認知 の差異 と対応 してい る。 す なわ ち,家具 工場労働者 に とっては,転職 はそ もそ も現実 的な選択肢 で はない ことを物語 って いる。 またす でにみたよ うに,給与不満 が強 い (表5) に もかかわ らず,給与満足度 とい う金銭的理 由が離 職意思 と有意 に関連 していない。 しか も,代替的就業機会が存在す る縫製工場 の労働者 につ い て も給与不満 が離職 の有意 な説明因子 とな っていない ことは,開発途上国 の経営者 がよ く指摘 す る 「少 しで も高 い賃金 が提示 され るとす ぐに離職 して しま う」 とい う関係 が,少 な くとも労 働者 の職務意識 について は確認 で きない ことを示 して いる。無論 この ことは, よ り高 い賃金 の 提示 が離職 の契機 とな ることを否定 す るもので はない。 13

(12)

東南 ア ジア研究 38巻1号 表9 代替 的就業機会 の存在 につ いて 家 具 工 場 縫 製 工 場 容 易 に 探 せ る 2

.

1

%

(4) 探せば何 とかな る 41.8% (81) ほ と ん ど 無 理 56.2% (109) Eiid F J一 Eiid 2 0 2 2 8 6 lⅦL U IZtt -EZq % % % 4 8 8 3 8 7 1 4 3 合 計 100.0% (194) 100.0% 荏 :( )内 はサ ンプル数。 質問) 「現在 と同 じ労働条件 の仕事 を探す ことは容易 ですか?」 表10 離職関数 (標準化係数) 全 体 家 具 工 場 縫 製 工 場 組織 コミットメント 馴化 給与満足度 職階 勤続期間 (月) 教育水準 代替 的就業機会 性別 ダ ミー 企業 ダ ミー -0.18 (1 3.61)'川 - 0.20 (- 4.21)は' -0.07(- I.08) -0.07(- 1.38) 0.02 (0.40) -0.03 (- 0.70) -0.19 (- 3.69)… 0.03 (0.50) 0.24 (3.57)… I 0.26(- 3.49)' ' + - 0.24 (- 3.24)… 0.05 (0.68) - 0.09 (- 1.24) 0.18 (2.44)* - 0.05 (- 0.76) - 0.04 (- 0.46) 0.08 (1.14) - 0.14 (- 1.76) - 0.23 (- 3.03)* * - 0.12(- 1.48) - 0.08 (- 1.05) 0.01 (0.12) I 0.04 (- 0.45) - 0.26 (- 3.47)… - 0.03 (- 0.38) サ ンプル数 358 自由度調整済 みR2 0.23 F一値 12.71*… 条件指標 9.34 194 0.17 4.87*** 9.25 164 0.18 5.55叫* 8.85 注 :1)条件指標 (condition index):多重共線性 の診断 に用 い られ る指標 であ り 5- 10の とき弱 い多 重共線性,10- 30の とき中程度 の共線性, そ して値 が 30を越 す と共線性 が深刻 とな る。表 で は, その最大値 (condition number) のみが示 されている。 本稿 の回帰分析 で は深刻 な多重共

線性 がなか った ことか ら, 説 明変数 の分散分解 のデー タ (VarianceInflation Factors) は示 さ れていない。以降の表 で も同様。 回帰診断 につ いて は,Belsleyetal.[1980] を参照 されたい. 2)代替的就業機会 :容易 に探せ る- 1- ほとん ど無理 - 30 職階 :監管者- 1,役職 な し-0。 教育水準 :な し- 0,中卒 - 1, 中卒 - 3,専門学校 - 4。 性別 ダ ミー :男子- 0,女子- 10 企業 ダ ミー :家具工場- 0,縫製工場 - 1。 3) ( )内 は t一値。… p< 0.1%,*'p<1.0%,*p<5.0%

2.

モラール と怠業 モ ラール関数 と怠業関数 が,表 11と表 12に示 されてい る。 職務態度 の下位尺度 の うち, モ ラールにつ いて は職務 コ ミッ トメ ン トが唯一有意 な変数 とな ってお り,馴化 のみな らず給与満 足度 もモ ラールにかかわ っていない。 ところが怠業 につ いて は,馴化が有力 な因子 とな ってい る。 や は り家具工場 でのみ,組織 コ ミッ トメ ン トも怠業 を抑制す る効果 を弱 いなが らも示 して いる。給与満足度 は怠業 に も関連 してお らず, われわれの対象 に関 して は,効率賃金仮説 を少

(13)

大野 ・鈴木 :工場労働者 の第 1世代 をめ ぐる職務意識 表 11 モ ラール関数 (標準化係数) 全 体 家 具 工 場 縫 製 工 場 組識 コ ミッ トメ ン ト 0.43 (8.86)… 馴化 給与 満足度 職 階 勤続期間 (月) 教育水準 性別ダ ミー 企業 ダ ミー サ ンプル数 I 0.13 (I 2.75)事 * 0.03 (0.52) - 0.09 (- 1.80) 0.01 (0.24) 0.09 (1.79) - 0.09 (- 1.75) 0.11 (1.60) 0.43 (6.75)… * - 0.ll(- 1.72) - 0.03 (- 0.51) - 0.09 (- I.32) 0.12 (1.80) 0.10 (1.47) - 0.10 (- 1.53) 358 自由度調整済 みR2 0.22 F一値 13,28''* 条件指数 7.04 0.42 (5.42)''' - 0.15 (- I.95) 0.08 (0.97) - 0.10 (- 1.40) - 0.01(- 0.09) 0.11 (0.16) - 0,08 (- 1.02) 194 0.22 8.91は ' 5.97 荏 : ( ) 内 はt一値。… P< 0.1%,H p< 1.0%,'p< 5.0% 表12 怠業 関数 (標準化係数) 全 体 家 貝 工 場 縫 製 工 場 組織 コ ミッ トメ ン ト

化 給与 満足度 職 階 勤続期間 (月) 教育水準 性別 ダ ミー 企業 ダ ミー サ ンプル数 - 0.17 (- 3.50)… - 0.52 (-ll.20)*川 0.06 (0.98) - 0.03 (- 0.59) - 0.01 (- 0.04) - 0.01 (- 0.12) 0.01 (0.14) - 0.06 (一 0.87) - 0.17 (- 2.75)'+ - 0.52 (- 8.51 ) ** * 0.10 (1.63) - 0.02 (- 0.37) 0.13 (2.05) - 0.02 (- 0.33) - 0.01(- 0.12) 358 自由度調整済 みR2 0.27 F一値 17.46榊 条件指数 7.04 194 0.31 13.09+*' 5.97 - 0.09 (- 1.21 ) - 0.40 (I 5.29)*榊 - 0.08 (I 0.99) - 0.07 (- 0.97) - 0.06 (0.80) - 0.01(- 0.07) 0.11 (1.54) 荏 :( ) 内 はt一倍。''*p< 0.1%,**pく1.0%,*p< 5,0% な く と も支 持 は で き な い。 職 務 態 度 と職 務 行 動 との 関 係 に お い て , 組 織 コ ミ ッ トメ ン トが モ ラ ー ル の, そ して 馴 化 が 怠 業 の 先 行 因 子 と な る とい う対 応 関 係 が 確 認 さ れ た。 労 働 者 が 工 場 組 織 に馴 化 で きな い と き, そ れ は怠 業 や 離 職 を誘 発 す る。 しか し, 馴 化 の程 度 は モ ラ ー ル に は影 響 を 与 え て い な い。 モ ラ ー ル に か か わ る の は組 織 コ ミ ッ トメ ン トで あ る。 怠 業 の 阻 止 と モ ラ ー ル の 高 揚 は労 務 管 理 の 重 要 な課 題 で あ るが , そ れ ぞ れ に馴 化 の 促 進 と組 織 コ ミ ッ トメ ン トの 高 揚 と い う異 な る労 務 管 理 戦 略 が 必 要 と な る こ とが わ か る。 な お , ラ オ ス と い う文 脈 に お け る組 織 コ ミ ッ トメ ン トの 解 釈 に 15

(14)

東南 ア ジア研究 38巻1号 ついて は,「楽 しい」 とい う感情 との関連で後述す る。 また,馴化が職務行動 に有意 にかかわ ることはあ って も給与満足度が職務行動 に説明力を持 たないことは,労働条件 の有力な構成要因 と考え られ る給与-の満足度 と馴化が独立 の意識で あること,すなわち工場規則や単調 な作業への労働者 の意識面での反応が組織心理学で通常概 念化 され る職務満足 と しての性質 を帯 びてお らず,む しろ本稿で指摘す る工場組織への非馴化 を表す ことを示唆 している。

3.

労働誘因への反応 と職務意識 報酬体系への認知度 とふたっの職務意識 との関係を確認 しよ う。今回の質問票では,技術習 得が昇給や昇進 に結 びつ くか否か とい う報酬体系 にかかわ るふたっの質問を用意 した。総体的 には,技術習得が昇給 や昇進 につなが ることを労働者 は認知 している (表13)0 報酬体系の認知 と職務意識 の単相関 (表 14) か ら, 認知 の程度が組織 コ ミッ トメ ン トやモ 表13 技術習得 と昇給 ・昇進 の関連 の認識 技 術 ・ 昇 給 技 術 ・ 昇 進 家 具 工 場 縫 製 工 場 家 具 工 場 縫 製 工 場 強 く妥当す る 妥当す る あまり妥当 しない % % % 4 5 6 6 8 4 4 4 全 く妥 当 しない 0.5% ) \J ) 1 9 2 3 0 7 7 1 ( iZⅦL u Jq lⅦ 1 % % % % 2 4 9 0 8 3 7 0 4 4 甘 mu E F Jl F / O 4 9 1 9 9 ( ( lHI U ロト 柑U 29.4% (57) 58.8% (114) 10.8% (21) 1.0% (2) g F J ︻■「■ r E H1 2 4 2 6 7 6 2 ( irlt 3 円ト1 % % % % 9 0 4 7 3 9 3 3 4 3 1 合 計 100.0% 100.0% (194) 荏 :( ) 内 はサ ンプル数。 キ ー ・ワ ー ド 質 問 技 術 ・昇 給 この工場 で は技術 を習得すれば給与 が高 まる。 技 術 ・昇 進 この工場 では技術 を習得すれば昇進 で きる。 注 :強 く妥当す る- 4-全 く妥当 しない- 1。 表14 報酬制度 の認知 と職務態度 の関係 (単相関係数) 家 具 工 場 縫 製 工 場 技 術 ・昇 給 技 術 ・昇 進 技 術 ・昇 給 技 術 ・昇 進 組 織 コ ミッ トメ ン ト 0.24' ' 0.22 0.51… 馴 化 - 0.12 0.03 - 0.19 給与満足度 - 0.04 0.05 0.04 モ ラール 0.47'叫 0.49*** 0.37叫* 怠 業 0.10 0.10 - 0.06 離 職 0.12 0.09 - 0.05 0.59= ' - 0.22' 0.28+** 0.45+++ -0.16 - 0.10 注 :… p< 0.1%,事'p< 1.0%,'p< 5.0%

(15)

大野 ・鈴木 :工場労働者の第 1世代をめ ぐる職務意識 ラー ル と強 い関 係 を もつ こ とが わ か る。 確 か に本 稿 の対 象 は工 場 労 働 者 の第 1世 代 で は あ る が, 工場 の提供 す る労 働誘 因 に は期待 され る方 向 に反応 して モ ラールを高 め るとい う構 図 が指 摘 で きよ う。 しか し怠 集 は,誘 因制度 の認 知 と関連 を もって いな い。 この ことか らも, 怠 業 が 先進 工 業 国 とは異 な る発生 の メカニ ズムを もつ こ とを確認 で きよ う。 この点 につ いて は, 次章 で別 の観 点 か ら考 察 す る。

サヌックとス トレス

ラオス と近 似 す る文化 を持 っ タイ人 につ いて, サ ヌ ック (楽 しい) で あ る ことが仕事 につ い て の重要 な関心事 で あ る ことが よ く指摘 され て い る。 そ こで, サ ヌ ック とス トレスの解 釈 か ら 馴 化 の もつ意 味 を再 検 討 して み よ う

「工場 で働 くこ とはサ ヌ ックで あ る」と 「就業 中 に ス トレ スを感 じる」 とい う質 問 (強 く妥 当す る- 4-全 く妥 当 しな い - 1) を用意 した。 その回答 の 結 果 が, 表 15に示 され る。 サ ヌ ック とス トレスにつ いて, これ まで検討 した職務 態度 と職務 行 動 の下位 尺 度 お よび い く つ か の追 加 的質 問 との相 関係 数 が,表

1

6

に示 され る。サ ヌ ック とス トレスに は,ふ たっ の工場 と もに有意 な関係 (表

1

6

-

1) は認 め られず,双方 は独 立 な意識 で あ る と考 え られ る。 仕 事 が サ 表 15 サヌック (楽 しい) とス トレス サ ヌ ッ ク ス ト レ ス 家 具 工 場 縫 製 工 場 家 具 工 場 縫 製 工 場 強 く妥当する 12,9% (25) 20.7% (34) 23.7% (46) 20.1% (33) 妥当する 71.6% (139) 53.9% (90) 71.1% (138) 70.1% (115) 妥当 しない 14.9% (29) 23.2% (38) 3.6% (7) 6.7% (ll) 全 く妥当 しない 0.5% (1) 1.2% (2) 1.5% (3) 3.0% (5) 合 計 100.0% (194) 100.0% (164) 100.0% (194) 100.0% (194) 注 :( )内はサ ンプル数。 表16-1 サヌックとス トレスの意味 (単 相関係数) サ ヌ ッ ク ス ト レ ス 家 具 工 場 縫 製 工 場 家 具 工 場 縫 製 工 場 この工場で働 くことが楽 しい 就業中にス トレスを感 じる -0.12 0.13 - 0.12 0.13 工場には友人が多 くいる 0.36… 0.21* * 0.14 0.06 上司は面倒見が良い 0.30… 0.30… - 0.24… 0.02 注 :強 く妥当す る- 4-全 く妥当 しない- 10 H

'p<

0.1%,

Hp<

I.0%,

'p<

5.0% 17

(16)

東 南 ア ジア研究 38巻 1号 表16-2 職務態度 と職務行動 との関係 サ ヌ ッ ク ス ト レ ス 家 具 工 場 縫 製 工 場 家 具 工 場 縫 製 工 場 悲 皮 組織 コミットメント馴 化 - 0.0.0143… 0.0.39糊*09 - 0.- 0.5716*… - 0.0.0231… 給与満足度 - 0.06 0.37は - 0.07 0.09

.

一 離職意思 - 0.15 0.02 0.23… 0.14

モラ-ル 0.38+* + 0.22… - 0.05 0.01 注 :- p<0.1%,''p<1.0%,事p<5.0% 表17 離職 とモラールおよび怠業 との相関 (単相関係数) モラール 怠 業 離職 家具工場 - 0.08 0.17a 縫製工場 - 0.04 - 0.04 注 :a:P<2.0% 人間関係 コミットメント=

=

=

=コ園

匪 針1----I--ト観 ス トレス4--→ 囲 図2 サヌックとス トレスの職務態度 ・行動の関係 注 :1) [==]職務態度,E=]職務行動。 2) 矢印実線 は有意な正の相関,矢印破線 は 負の相関,破線のみは無相関を示す。 ヌ ックで あ ることは,友人 や上 司 との人 間関係 と有意 に正 の関係 を もって い る。 また, サ ヌ ッ クは組織 コ ミッ トメ ン トや モ ラール と も有意 な相 関が見 られ る。 これ は,組織 コ ミッ トメ ン ト が モ ラールを有意 に高 め るとい う事 実 と整合 的で あ る。 す なわ ち, サ ヌ ックが組織 コ ミッ トメ ン トを介 して モ ラールを高 め るとい う因果 の連鎖 を確認 で きる。 これ に対 して ス トレスは, サ ヌ ック とは相 関 を もたず,怠業 や馴化 と相 関 して い る。馴 化 で きて いない ことが, ス トレスを もた ら し,怠業 の程度 を高 め る とい う連鎖 が確認 され よ う。 ここまで議論 して きた構 図 が, 図 2にま とめ られ る。 この ことか らサ ヌ ックとは個人 の職 務 へ の直裁 的関係 にかかわ る 「楽 しさ」 で はな く, む し ろ職場 の対人 関係 にお いて捉 え られ るべ き概 念 といえ る。 ラオ語 で 「働 く」 は, タイ語 との共

通 の語 でtham (do)ngan(work)で あ るが,nganに は宴会 ・集団 の意 味 が あ り,tham ngan を文字通 り訳 せ ば宴会 を催 す,また は集団 をつ くるとな る。表16の結果 か ら,そ う した農作業 を背後 に もっ語義 との対応 を読 み取 る ことは可能 で あろ う。 またサ ヌ ックが組織 コ ミッ トメ ン

(17)

大野 ・鈴木 :工場労働者の第 1世代 をめ ぐる職務意識 トと強 い相関 にあ ることは,本稿で捉 え られた組織 コ ミッ トメ ン トが先進産業社会でそ うであ るよ うな工場組織 その ものに対 して とい うだけでな く, そ こで働 く人 々 との関係 において醸成 され る職務態度 と しての色彩 を もつ もの と理解 され うる。事実

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「工場 には友人が多 くいる」お よび 「上司 は面倒見が良 い」は組織 コ ミッ トメ ン トと 0.1% 水準で有意 な正 の関係がある。誘因 制度 を労働者 に周知 させ るだけでな く良好 な人間関係 の構築 もまた組織 コ ミッ トメ ン トを高 め るであろうことは,開発途上国 における労務管理戦略で考慮 され る必要がある。 これに対 して馴化 はサ ヌ ックと相関 してお らず,人間関係 を伴わない工場 の組織的特性 に対 す る態度 であ るといえ る。 また人間関係 は,家具工場で上司 との関係 に相関がある他 は, ス ト レスの要因 とはな っていない。 なお,馴化 は勤続年数や年齢 と有意 な相関 を もってお らず,馴 化 が短期的な事象で はないことがわか る。 これまで幾っかの側面か ら検討 して きた ことか ら, 馴化 は,工業化 の初期段階 における労働者 の工場組織への職業社会化 にまつわ る心理的

蝶 で あ り,先進工業社会 における職務満足 とは異 なる性質 を もつ といえ る。 なお,離職 とモ ラールおよび怠業 との相関 (表 17)については,家具工場でのみ離職 と怠業 に有意 な正 の相関が確認 され るだけである。 これ は縫製工場で は馴化 で きなか った縫子が同業 他社へ転職す る可能性が高 い (い うまで もな く,転職 によ り解消 され る問題 とは限 らない) の に対 して,代替 的就業機会 の望 めない家具工場 の労働者 の場合,馴化 で きずに怠業 とス トレス の程度 の高 くな った人 々が離職す ることな く企業内に滞留す るため と考え られ る。17) これは, 労使双方 にとって望 ま しい状況で はない。 結 論 大規模製造工場 は,工場制度 の もつ組織特性 に馴化 した 「規律 ある (disciplined)」, そ して 工場 の提供す る労働誘因によ く反応す るとい う意味 において 「労働意欲 のあ る (motivated)

労働者 を需要す る。 しか し今 日の開発途上国の多 くで は, ラオスがそ うであるよ うに,先進工 業国が歴史 と して経験 して きた手工業や問屋制度 な ど幾っかの生産形態の歴史的変遷 を経 るこ とな く大規模 な工場制度が突如 として持 ち込 まれ る傾向がある。 その ときに,在来 の労働環境 で社会化 された人 々が容易 に工場制度 に馴化 しうるのか, また労働誘因制度 に適切 に反応 しう るのかが,本稿 の問題意識 であ った。 本稿で は,職務態度 と職務行動 の下位尺度 を措定 して, その因果関係を探 った。 そ こで は, 先進工業国で広 く確認 され るの とは異 な る職務態度 と職務行動 の関係 が検出 された。結論 を要 約すれば, モ ラールを高め るのは職務 コ ミッ トメ ン トであ り,馴化や給与満足度 ではない。 ま 17) 同様 の指摘 については,大野 [1998] を参照 されたい。 19

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東南 アジア研究 38巻 1号 た,労働者 は労働誘因 に反応 してモ ラールを高 めてお り, この限 りで は適切 な労働誘因の提示 が有効 とい う先進工業社会 と同 じ経路が確認 で きる。 しか しモ ラール とは独立 の職務行動 と し て検 出 された怠業 は,

化 を先行因子 と していた。 すなわち経営者 にとって,労働者 のモ ラー ルを高 め るには組織 コ ミッ トメ ン トを高 め る戦略が, また怠業 を抑制す るためには馴化 を促す とい う異 な る戦略が要請 され ることにな る。 これを労働者 につ いていえば,彼 らが労働誘因 に は反応 す る ものの工場 の もつ組織特性 には馴化 しきれない とい うア ンビヴ ァレン トな心理状態 にあ るといえ る。 また組織 コ ミッ トメ ン トが, それが相対 的 に高 い水準 にあ る家具工場 におい てのみ,離職 や怠業 を抑制す る機能 を果 た していた。 この ことは先進工業国で確認 され る事実 と符合 しているが, ラオスにおいて も,経済発展 の過程でそ うした関係 が一般化す るのか, そ れ とも家具工場 が 日系 であ ることで説 明 され うるのか につ いては今後 の研究 に委 ねたい。 最後 に,職務行動関数 において性別 ダ ミー ・教育 ダ ミーそ して職階 ダ ミーが有意 とな ってい ない ことに付言 してお きたい。 こうした意識調査で は性別 でみて職務意識 に差が検 出で きない ことが多 い [大野 1992・93;清川 1993]。特 に他 のアジア諸国 と比較 して性別役割分業が顕著 で はない東南 ア ジアで は, この帰結 は当然か もしれない。 また教育 や職階が職務意識 に与 え る 影響 は,先進工業社会 において も組織心理学 の大 きなテーマ とな って きた。 こうした産業化 し た社会 を特徴づ ける近代的因子が労働者 の職務意識 にどのよ うにかかわ って くるか につ いて, タイにおける企業調査 [Ohno 1995]で は, それ らが先進工業国で検 出 されたの とは異 な る影 響 を職務意識 に与 えているとい う指摘 がある。 産業化 が進展す るとともに,教育 や職階が組織 構成 に組 み込 まれてい くことを考 えれば, こうした近代的因子が人 々の意識 にどのよ うな影響 を及 ぼすか は重要 な検討課題 となろ う。 しか し今回の対象 について は,教育 や職階 と職務意識 とに有意 な関連 が検 出で きなか った ことは, ラオス社会 とそ こでの労務管理 がそ うした段階 に 達 していない ことを示唆 している。 参 考 文 献

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参照

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