Title
Expression of vascular endothelial growth factor receptors is
closely related to the histological grade of hepatocellular
carcinoma( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
天岡, 望
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1418号
Issue Date
2007-01-17
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23137
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 天 岡 望(岐阜県) 博 士(医学) 乙第1418 号 平成19年1月17 日 学位規則第4条第2項該当
Expressionofvascu[ar endothelialgrowthfactor receptorsiscIosely related to the histo[ogicaIgrade of hepatocellu暮ar carcinoma
(主査)教授 安 達 洋 祐
(副査)教授 高 見 剛 教授 森 脇 久 隆
論文内容の要旨
背景と目的
血管新生は悪性腫瘍の発育にとって不可欠である。Vascular endothelialgrowth factor(VEGF:
血管内皮増殖因子)は,血管新生に関わる最も重要な因子のひとつであり,血管内皮細胞に存在する VEGF受容体(VEGFR)に作用し,腫瘍問質の血管新生に関与する。近年,悪性腫瘍の治療分野では, VEGFやVEGFRの阻害薬を用いた抗血管新生治療が注目されている。 VEGFRは血管内皮細胞に特異的とされていたが,その後様々な腫瘍細胞にも存在していることが確 認され,そのような腫瘍では,VEGFはautocrine機構によって腫瘍細胞の増殖に関与しているとされ, VEGF阻害薬やVEGFR阻害薬を用いた抗血管新生治療が,栄養血管を標的とした間接的な効果だけでな く,腫瘍細胞を標的とした直接的な効果も期待できるのではないかと考えられている。 VEGFRの中でも,VEGFRl(Flt-1)とVEGFR2(Flk-1)はそれぞれ異なった作用を有しており,Flk-1は血 管内皮細胞の増殖シグナルを伝達するが,Flt-1はFlk-1の血管内皮増殖促進作用を抑制するとされて いる。ところがこれまで,肝細胞癌(HCC)組織の腫瘍細胞におけるVEGFR発現の有無については十 分に解明されていない。 そこで今回,HCCの腫瘍細胞におけるVEGFR(Flt-1とFlk-1)発現の有無について調査し,その発 現が腫瘍細胞の増殖に関与するか否かを明らかにするとともに,VEGFRの発現パターンが組織学的分 化度と関連するか否かについても調べた。 方法 (1)1998年1月から2003年12月の間に,岐阜大学医学部附属病院腫瘍外科で切除したHCC50例を 対象とした。パラフィン切片に免疫組織化学的手法を用いて,VEGFRl(Flt-1)とKi67,VEGFR2 (Flk-1)とE167をそれぞれ二重染色し,個々の腫瘍細胞におけるこれらの発現について,各 症例400倍5視野における腫瘍細胞をすべてカウントした。 (2)Flt-1とFlk-1の発現について,全腫瘍細胞に対する陽性細胞の割合が高い例を陽性群,低い 例を陰性群とし,Flt-1陽性群と陰性群,Flk-1陽性群と陰性群におけるKi67indexを比較し た。 (3)Flt-1とFlk-1の発現パターンに基づき,①両レセプター陰性群,②Flt-1(+)・Flk-1(-)群, ③Flt-1(一)・Flk-1(+)群,④両レセプター陽性群の4群に分類し,各群間でのKi67indexを 比較した。 (4)Ki67陽性細胞におけるVEGFR発現について調査し,増殖期にあるHCC細胞のVEGFR発現パター ンについても観察し,組織学的分化度を含む臨床病理学的因子との関連について検討した。
-99-結果 (1)Flt-1陽性群は,陰性群と比較してKi67indexが低かった(jtO.0234)。FlkTl陽性群と陰性群 との比較では,Ki67indexに差を認めなかった。 (2)Flt-1とFlk-1の発現パターンと,各群間でのKi67indexの比較では,両レセプター陰性群は, Flt-1のみ陽性群やFlk-1のみ陽性群と比較してKi67indexが低かった(jtO.0491,jtO.0196)。 また,両レセプター陽性群は,FltTlのみ陽性群やFlk-1のみ陽性群と比較してKi67indexが 低かった(声0.0026,タ<0.0001)。 (3)Ki67陽性細胞のうち,Fltl陽性の割合は平均34.0%と低く,Flkl陽性の割合は平均63.5%と高 かった。また,この場合のVEGFRの発現パターンは,Fltl(-)・Flkl(+)が54.3%と最も多 かった。 (4)Ki67陽性細胞におけるVEGFRの発現パターンは組織学的分化度と関連がみられ,高分化HCCで は7例中7例でFlt-1の発現に関らずFlk-1が発現し,申分化HCCでは21例中20例でFlt-1 のみあるいはFlkTlのみが発現していた。低分化HCCでは7例中6例で両レセプター陰性ある いは両レセプター陽性であった。 考察・結語 HCC組織では腫瘍細胞自身にもFltTl及びFlk-1の発現がみられ,Fl-1とFlk-1のどちらか一方 が発現している領域は,両方の発現がみられない領域や両方の発現がみられる領域と比べてEi67 indexが高いことが示された。すなわち,どちらか一方のレセプターが発現しているときは腫瘍細 胞の増殖活性が高く,両方のレセプターが発現しているときは互いの作用が打ち消され増殖活性に 影響していないと考えられた。 Ki67陽性細胞のみを対象とした検討によると,VEGFRの発現パターンはHCCの組織学的分化度と 関連性がみられ,高分化から申分化,低分化と悪性度が進行するにしたがって,Flk-1がFl卜1の 発現と関係なく発現するパターンから,Flt-1あるいはFlk-1のどちらか一方が発現するパターン, さらには両受容体とも陰性あるいは陽性のパターンになることが示唆された。 本研究はVEGFRの発現パターンとHCCの分化度との関連を示しており,VEGFやVEGFRの阻害薬を 用いた抗血管新生治療において,患者ごとに治療方法を選択できる可能性が示唆された。 論文審査の結果の要 旨 申請者 天岡 望 は,肝細胞癌の腫瘍細胞にVEGFRが発現し,その発現が腫瘍細胞の増殖に関 与しており,Flt-1とFlk-1の発現パターンが組織学的分化度と関連があることを明らかにした。 本研究の成果は,腫瘍学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]
Expression of vascular endot,helialgrowth factor receptorsis closely related to the histologicalgrade of hepatocellular carcinoma
ONCOLOGY REPORTS16,3-10(2006).