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著者
永瀬 邦夫
著者別名
Nagase Kunio
雑誌名
経営論集
巻
19
ページ
145-162
発行年
1982-03-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005820/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja注70
監 査 基 準 の 研 究
監 査基 準 制定 の過程 につい て 永 瀬 邦 夫 145 − は じ め に 監 査 基 準 は , 監 査 実 務 の中 に 慣 習 と し て 発 達 し た も の の な か か ら ,一 般 に 公 正 妥 当 と 認 め ら れ た と こ ろ を 帰 納 要 約 し た 原 則 で あ っ て , 職 業 的 監 査 人 は , 財 務 諸 表 の 監 査 を 行 うに 当 り, 法 令 に よ って 強 制 さ れ な く と 乱 常 に こ れを 遵 守 し な け れば な ら な い も ので あ る 。 我 国 の 監 査 基 準 は 昭 和25 年7 月 経 済 安 定 本 部 企 業 会 計 審 議 会 の 中 間 報 告 と し て 公 表 さ れ て以 来 現 在 の よ うな 監 査 基 準 へ と展 開 さ れ て き た の で あ る。 当 時 , 我 国 の監 査 基 準 設 定 の 参 考 に さ れ たの が , ア メ リ カ 会 計 士 協 会 (American Institute of Accountants, AIA 後 のAmerican Institute of Certified Public Accountants, AICPA ) に よ る監 査 基 準
(general accepted auditing standards ) であ っ た 。 ア メ リ カ に お け る監 査 基 準 の発 展 も 歴 史 的 に は 浅 い も の で あ り ,そ の 制 定 は1930 年 代 に 起 っ た 一 つ の 事 件 を 契 機 に 始 ま っ た とい わ れ る。 そ の事 件 と は, Mckesson & Robbins
会 社 事 件 で あ り, Carey の 言 葉 を 借 り れ ぼ , 監 査 の 危 機 (A Crisis inAuditing ) で あ っ た ぴ。 本 論 で は , ア ノ リ カ の 監 査 基 準 制 定 の契 機 に な っ た
こ0 事 件 を 中 心 に , 監 査 基 準 判 定 の過 程 を 考 察 し て い く。
John L. Carey, The Rise of The Accounting Profession, 1970, p. 20
二 監査手続の不一致
我国 の監査基準は,監査一般基準,監査実施基準及 び監査報告基準の3 種 に区分され,監査一般基準は,監査人 の適格性の条件及び監査人 が業務上守 るべき規範を 明らかにす る原題であ り√監査実施基準は,監査手続の選択適
用 を 規 制 す る 原 則 で あ り, 監 査 報 告 基 準 は , 監 査 報 告 書 の記 載 要 件 を 規 律 す る原 則 で あ る。 監 査 基 準 の設 定 理 由 と し て 一 つ に は 次 の よ うに 述 べ ら れ てい る % 「 監 査 を 実 施 す る に 当 り選 択 適 用 さ れ る 監 査 手 続 は , 企 業 の 事 情 に よ り異 な る も の で あ っ て , 一 律 に こ れ へ 規 定 す る こ と は 不 可 能 で あ り, 監 査 人 の 判断 に まつ と ころ が 大 で あ る。 し か し な が ら監 査 の能 力 と 経 験 は 個 々 の 監 査 人 に よ っ て 差 異 か お る か ら , 一 切 を あ げ て 監 査 人 の 自 由 に 委 ね る こ と は , 必 ず し も社 会 的 信 用 を が ち う る所 以 で は な い 。 そ れ と 同 時 に 又 監 査 の実 施 に 関 し て は 公 正 妥 当 な 任 務 の限 界 を 明 ら か に し な け れ ば , 徒 ら に 監 査 人 の責 任 を 過 重 な ら し め る 結 果 と も な る。 従 っ て , 監 査 に 対 す る 信 頼 性 を 高 め る と と も に , 任 務 の範 囲 を 限 定 す るた め , 監 査 人 の 判断 を 規 制 す べ き一 定 の 基 準 を 設 け て , こ れ を 遵 守 せ し め る こ と が 必 要 で あ る。」 こ の文 章 の中 で も見 ら れ る監 査 の 基 準 と 手 続 の区 別 は ど の よ うに 考 えら れ
る のか 。AICPA の 一 般 に 認 め ら れ た 監 査 基 準 (general accepted auditingstandards ) で は , 次 の よ うに 述 べ ら れ て い る ‰ 「監 査 基 準 は , 監 査 手 続 と
は 相 違 す る 。 す な わ ち 手 続 は 遂 行 さ るべ き 行 為 に 関 す る も の で あ る が , こ れ に 対 し て 基 準 は こ れ ら 行 為 の遂 行 の資 格 の標 準 と , 採 用 さ れ た 手 続 の 使用 に。 よ っ て 達 成 さ れ るべ き 目 標 と を 取 扱 う も の で あ る。 監 査 手 続 と 区 別 さ れ る監T 査 基 準 は , 監 査 人 の 専 門 的 な資 格 に 関 与 す るだ け で な く , 検 査 の 遂 行 及 び 報
告 に お け る 監 査 人 に よ っ て 及 ぼ さ れ る判 断 に も 関 与 す る 。(auditing standardsdiffer from auditing procedures in that procedures relate to acts to be performed,
whereas standards deal with measures of the quality of the performance of
those acts and the objectives to be attained^by the use of the procedures undertak-en. Auditing standards as distinct from auditing procedures concern themselves.not only
with the anditor's professional qualities but also with the judgement exercised by him in the performance of his e χamination and in his report. )」
監 査 の 「基 準 」(standards) と い う語 は, 1940 年 代 に 入 っ て 造 ら れ た も の=・ で あ り, そ れ 以 前 に は な か った の で あ る。 基 準 と い う用 語 が 新 し ぐ 造 ら れた の は , 一 つ の 事 件 を 契 機 に し て で あ り, そ の 事 件 の生 起 す る背 景 に そ の理 財 を 求 め な け れ ば な ら な い 。 AIA
は, 1936 年 「独 立 公 共 会 計 士 に よ る財 務 諸表 の 検 査 」(Examinationof Financial Statements by Independent Public Accuntants ) を ,1917 年 の監T
監査基準の研究 147 査 手 続 に関す る公 報 の第二 改訂 版 とし て公表 し た。 こ の1936 年 公 報は, 財務
諸 表 の意義 と限 界 , 監 査人 め広 義 の責任 を 論 じ , 有 効 な内部 統制 制度 (ef-fective systems of internal control)に お く信 頼 の適否 を 強 調し ていた。 これ
らの論述 は ,証券 取 引委員 会(Securities and Exchange Commission SEC )とAIA とが密 接に 協力 した 結果 であ りい これ ま で欠 け てい た 監査 のため の概 万念的 基 礎を 確 立し た も ので あ った3)。 し かし, 1936年 公報 に は,二つ の論点 ごについ て妥協 があ った。 Chatfie!d は 次 の ように 述 べ てい る4)。「 棚卸 資産 (inventories)及 び受 取 勘定(receivables) の検 証に 関 す る監査 人 の責 任に つ い て,多年 の間 ,一 致 した 見解 が存 在 し なか っ た。一 部 の公 認 会 計士 は受 取 勘 定に つい て ,当該 債 務 者か ら直 接 確認(confirmation)す る方 法を採用 し , また 他 の会 計 士 は, 内部 統制 が適 切で あ れば, か か る事 項は 不必 要 であ る とみ なし てい た。 同様 に, 多 く の監査 人は, 棚卸 数量 につい て立 会い かつ試 査す べ きであ る(witnessing and testchecking inventory counts) と主 張し たが ,イ
ギ リス及 び ア フ リカの伝統 的 な慣習 では ,経 営 者 の署 名 済棚卸 表 (inventorysheets signed ) に信 頼を おい てい た。 か か る論 拠 は, 会 計士 は熟 達し た鑑 定
人(appraisers)で はな く, 棚卸 資産 の実 地検 査 を実 施 し た と表 明す ることは , 彼 等 が棚卸 資 産評 価 の責任 を 負 う如 き印象 を 与 えか わ ない とい う点にあ った。
かか る意見 の相違 の結果 とし て, 1936年 の公 報 は, 棚 卸 資産 の立会照 査(phy-sical checking ) 及 び受 取 勘定 の通信に よる直 接 的 な 確認 (direct mail con-firmations )は 要請 せず と示 唆し た の であ る。」 1936 年公 報 に よれば ,棚卸 資産 及 び受取 勘 定 にっ い て次 の よ うに述べ られ て い る5≒ 「 在庫 品 の量 ・質お よび 状 態 の場 合に おけ る会 計 士 の義務お よ び 責 任 は,環 境 に よ って異 な る。 しか し ,彼 〔監査 人〕 は, 主 とし て,量 ・質 お よび状 態 に 関す る情 報を ,会 社 の責 任役員 お よび従 業 員 に 依存し なけ れば なら ない 。 技術 的 な知 識を 求 めず ,かつ 実質 的 な 困難 を もた らさない事業 の 場 合に は, 会 計士 は, 依頼 者と の特 別 の取 決 めに よ って, 専 門的 な知 識を 不 可欠 とす る場 合 より 乱 い っそ う大 きな責 任を と る こ とが 容認 され うる。 数 量 が注 意深 く決定 され た こ と,かつ ,質 と状 態 が十 分 に考慮 を払 われた こと を確 かめ るた め, 合 理的 な質問 と試 査を 行 な えo 棚卸 表 乱 実 地棚卸を 行 ない , 価額 を決 定し , また ,計算 と集 計 を 行 な った ことにつ き,それぞ れ 責任あ る人 た ちに よって, 署名 さ れ(to be signed or initiated)てい ること
を見ざわめよ。……棚卸 高を,もし記帳 されてあれば在庫品記録(the stockrecords
) と, 数量・価額お よび評価の裏づ廿 に (in support of quantities,prices and values), 試査に よる比較(a test comparison)を行なえ。重要な
差異あれば ,十分に説明されるべきであ る。」 そして 「受取勘定についての 最良の検証は,債務者と,負債 の存在に関して,直接に通信することである。 そして,この手段は,依頼 者との協定の後にとられ うる。 このような確認は, 内部牽制の十分な組織を もつ会社 の場合にはしばしば不要と考えられるが, 不整 (irregularities) を摘発す る手段とし て最も有効なものの一つであ る。 もしそれが採用 されるならば,確認 依頼者を勘定残高一覧表 と比較した後, 会計士 の返送用宛名を もつ封筒に入れ,かつ,会計士あ て返信用封筒を同封 してそれらを 自身 で郵送せ よ。」 1936 年公報 のうちに見 られる棚卸資産及び受取勘定の記述の中での意見の 差異が,その後間 七なく,公共 の意見 の圧力に よって解消されることになる‰
それは, Mckesson & Robbins 会社の虚偽 の発覚を契 機とす るのであ る。
注
1) 「大蔵 省企業会 計審議会中 間報告」昭和31 年12 月。2
)AICPA ,Codification of Statements on Auditing Standards, 1977, p. 9.3 ) Carey, op. cit., p. 21.4
)Michael Chatfield , A‥History of Accountin ぶドThought, 1974, p. 135. 津阻 ・加藤訳 『チ ャド フ ィールド会計思想史 』173百 。5
) 中西 旭『監査原論 』123−127 頁。6 )Carey, op. cit., p. 22.
三 Mckesson & Robbins 事件 1938
年初頭Mckesson & Robbins 製 薬会社の債権 者Julian Thompson は,当該企業 の製薬原料部門は最も有利な径営活動にもかかわらず,かかる 利益が直ちに再投資され,現金 が蓄積 されていない点に気がついた。 また帳 簿上に示された製薬原料 の在庫品にかけ られた保険金額があ まりにも過少で あったことも不思議 であった。先 の取 締役会は,棚卸資産額を減ず る決定を なし,Philip Coster 社長にそ うすべきことを要請した のであ る。 ところ力乱1938 年末 の棚卸資産は100 万 ドルも増加していたの で あ る。 疑念をもった
監査基準の研究 149Thompson は, 製薬 原料 の在 庫が実 際 に存 在す る証 拠を 経 営陣 が 提出す る
まで, 300万 ドル の社 債 の承認 を 拒 否し た ‰Mckesson & Robbins の 事 件は これを契 機 に明 るみ に出 た の であ る。 1934
年 の証 券取 引所 法 (Securities and Exchange Act ) に よって,1939 年1
月か らMckesson & Robbins 事 件に つい て公 聴 会 が開か れ た。 SEC の
調査 の 目的 は ,次 の諸点 を 決定 す る こ とであ った2)。 一 証 明す る会計 士 に よっ てな さ れた 監査 の 性格 と範囲
二 会計士 に よる監 査 が一 般 に 認め られた 基 準に一 致し てい るか否 か 三 一般 に認 め られた 監査 基準 が 財務 諸表 の信 頼 性を 保証 す るに 適切で あ
る か否 か Mckesson
& Robbins 事件 のSEC に よっ て明 らかに された 事実経 過 は
次のご と くであ る3)。 「Mckesson & Robbins の証券 は, New York 証 券 取引所 に上場 さ れて取 引 され てお り,1934 年 の証 券取 引所 法 のも とで登 録 さ れてい た。 1937年12 月31 日 の年 度 末 の同 社及 び子 会社 の財 務 諸表 は ,Price,Waterhouse 会 計事 務所 に より証 明 され,当 委員 会 とNew York 証 券取 引所に 提出 され ,株主 に対 し て87,000,000 ドル に のぼ る連 結総 資産 を報 告し てい た。 これ らの資 産 の うち ほ ぼ19,000,000 ド ルが全 く架 空 のも のであ る こ とは現在知 られてい る。 架 空 の項 目は ,棚卸 資 産10,000,000 ドル ,受 取勘 定9,000,000 ド ル, 銀行 預金75,000 ドル か らな り, そ れ らは, Mckesson &Robbins
会社 のConneticut 支 店 と, 子会 社 の一 つ であ るMckesson &Robbins
,Ltd の帳 簿に記 録 され てい た全 く架 空 の海 外薬 品 事業 た るBrid-geport
事 務所 で の営業 活動 か ら発生し た もの であっ た。 1937年 度中 , これ らの事業 単位 にお け る架空 売上 は ,18,247,020 ドル60 セン トに のぼ り,架 空 の粗利益 は1,801,390 ドル60 セ ン ト と記 録 され てい た。
虚 偽(fraud)の発覚 時点 又 は1938 年12 月 頃に ,架空 資産 はほ ぼ21,000,000
ドルに増 加し てい た。 虚偽 は ,1926 年11 月にGirard & Co. と の合併以来,Mckesson
& Robbins の社 長Frank Donald Coster に よっ て工 作 され て
いた。 現実 に は ,Coster はPhilip M. Musica で あ り,後 者の名前 で商
業詐欺(commercial frauds) で有罪 とさ れてい た。 虚 偽を 実 行す るに当 り,Coster
は後年 に は主 に 彼 の三 人 の兄 弟を 手 伝 わせた のであ る。 George E ,Dietrich,
Musi(a, Robert J. Dietrich, Bridgeport のMckesson & Robbins の
発送,受 入,保管部門め長であ り,本名はRobert Musica であ る。 GeorgeVernard, 本名はArthur Musica は,事務所,郵送先名 簿,銀行勘定及 びMckesson の諸会社がおそ らく架空 の事業を行なったダ ミー会社の活動 を管理し ていた。 詐欺(deception) を成し遂げ るため, 仕入は, Mckesson の諸会社に よ って,5 つ のカナ ダの売り主からなされた ようにし,それら売 り主はその後Mckesson の 勘定のた め, 彼らの倉庫に商品を保管し てい るようにみせか
け た。売上は, Mckesson の勘定のためw. w. Smith & Co. によって 行なわれた ように みせ,商品は後者に よって直接カナダの売 り主か ら得意先
こへ発送してい る ようにし た。 仕入代金の支払と売上代金の回収 は, Mckes-son の勘定のため,Manning & Co. とい うMontreal の銀行業 者によっ て行なわれてい るようにし た。 w. w. Smith &
Co・ , Manning & Co. そし て5 つ のカナダの売 り主は, 架空取引をささえるためにCoster によって使用された全く架空 かあ るいは 単な る口実であったことは現在判明し ている。 これらの企業 名で印刷され作 成された送 り状,通知及び他の証憑類 は,架空 の取引に現実味を与 えるため に使用されたのであ る。 これらの書類作成に加えで, Smith と Manning との一連 の契 約や保証そし てSmith に関す る偽造信用報告が使用された。 鴇 品が売却 されたと仮定された外国会社は実際に存在し ていた が, McKes-son によって表 明された ような事業は何ら行なわていな かった。 架空 の取引は, 1923年1 月31 日に会社組織にされたCoster の前の会社で あ るGirard & Co. の存在中 の初期に源を 発してお り,上述の金額に達す
る まで増加して行 ったわけ であった。」
結果 とし て,Coster とそ の一派は,12年間 の間に, Mckesson & Rob-bins 会社から約290万 ドルも私消し ていたのである。 1939
年2 月30 日の公聴会において,12名の会計専門職(accounting profes-sion )が証人 とし て呼ばれ, SEC 側の主任会計士William w. Werntz に
よって調査 された。これらの証人に間われた質問は, A I A の1936年公報に 関するものであ った。彼らの証言の一致点は, 1936年公 報 の目的 が,新しい 手続を導入す ること又 は古い手続を改善するとい うこと よりむしろ,会計専
監査基準の研究 151
門職や大 衆 のため に一 般 に認 め られた実 務を 公式 化す る こ と (to formulategenerally accepted practice )で あ った , とい うことで あ る。 し か 乱 これ ら
○証人 の意見 では ,当該 会計 事 務所 に よって実施 され た手 続 は,当 時 一 般 に 認め られ てい た手 続 と同 じ であ った とい うことであ る4)。
すな わち ,「1935 年以 前 の監 査 では ,会 社 の従業 員 の署 名 済棚 卸表 示 提 出 されてお り, 1934年 以 後 は , カナ ダの仕 入 先が 保管し てい る棚卸 数量 の確 認 書(written confirmations)を 人 手し , そ れ と注文 書を 試 査(test-checked)し てい る。 毎年2 名 もし くはそ れ以 上 の会 社 役員 が貸 借 対照表 に記 載 され てい る棚卸 資産 の状 態 及 び数量 に 関 し て正式 に 証 明し た。 売 掛金 は通 信 に ょ り確
認 されなか った 瓜 得 意 先 勘定 の貸方 記 入 は現金収納 帳 の記 入内 容 と比 較 さ
れ,製 造原 料販 売 の記 録 は継 続 棚卸 記録(perpetual inventory records) と得
意先 へ の送 り状及 び船 荷 通 知状(shipping advices) す べ て偽 造 であ った
-一 に対し て試査されていた5)」のである。 このように, Mckesson & Rob-bins 会社の監査を行なったPrice, Waterhouse 会計事務所 は,A I A の1936 年公報に表 明された一般に認められた監査手続に準拠し ていた ことにな るのである。
注
1)Chatfield, op. cit., p. 135・ 前掲書,173頁。2
) SEC, Accounting Series Releases, No. 19, pp. 26-273 ) ibid・,pp. 28-294
)James Don. Edwards, History of Public Accounting in the United States, 1978, p. 165.5
)Chatfield,op. dt., p. 136, 前 掲書,173頁。
: 四 Mckesson & Robfoins 事件に関するSEC の結論 Price,
Waterhouse 会計事務所 の監査手続について,特に1936年公報に おいて議論 の余地があ ったとされる棚卸資産及び受取勘定につい ての監査手 続に関して, SEC は次 のように述べてい る1)。 受取 勘定について,「全体 として見れば, Price, Waterhouse 会計事務所によって採用された受取勘 定 の監査計画(audit program) は,勘定の確認が計画の中に含 まれていなか ったけれど 乱 財務諸表 の検査のための当時 の一般に認められた手続に一致
し て い た 。 し か し な が ら , こ の事 件 の 諸 事 実 は , 『 実 践 的 か つ 合 理 的 であ る・ 場 合 は 常 に そ し て受 取 手 形 と 売 掛 金 の 合 計 が 企 業 の 流 動 資 産 又 は 総 資 産 の 相
当 部 分 を 表 示 す る 場 合 に は(wherever practicable and reasonable, and wherethe aggregate amount of notes and accounts receivable represents a significantproportion of the current assets or of the total assets
of a concern )』 必 要 な 手 続 とし て受 取 手 形 及 び 売 掛 金 の確 認 を 以 後 採 用 す る 際 に , 確 認 の 効 用 と 専 門 職 の 知 恵 (the utility of circularization and the wisdom of the profession ) を 論 証 し てい る の で あ る。」 棚 卸 資 産 に つ い て , 「 棚 卸 資 産 の 検 証 の た め のPrice, Waterhouse 会 計 事 務 所 の 監 査 計 画 は , 本 質 的 に , 当 時 の 一 般 に 認 め ら れ た 監 査 実 務 に よっ て 規 定 さ れ た も の で あ っ た 。 し か し な が ら , 相 当 の 意 見 の 差 異 が , 数 量 ,質 及 び 状 態 の 物 的 検 証 に 関 し て 監 査 人 の 義 務 と 責 任 の 範 囲 に つ い て , こ の期 間 に 会 計 士 の 間 に あ っ た と我 々 は 考 え る。 Price, Waterhouse は ,多 く の専 門 職 と 同 様 に , 棚 卸 資 産 の 数 量 , 質 及 び 状 態 の 検 証 は 記 録 に 限 定 さ れ る べ き で あ る と い う立 場 を と っ て い た 。 し か し な が ら , 監 査 人 は , 試 査 に ょ っ て か ,
棚 卸 の 立 会 に よ っ て か , こ れ ら の 方 法 の 組 合 せ に よ るか (by test counts, byobservation of the inventory taking, or by a combination of these methods )
し て , 棚 卸 資 産 と の 物 的 接 触 を 得 るべ き で あ る とい う, 我 々 が是 認 す る見 解 を 支 持 す る等 し く権 威 あ る 意 見 七 もつ 多 く の 人 々 が い た 。 棚 卸 資 産 の慎 重 な 検 証 は , こ の 事 件 で は √ 虚 偽 を 発 見 す る た め に 必 要 と さ れ な か っ た 。 そ れ 故 。Price, Waterhouse 会 計 事 務 所 の 見 解 の下 で さ え ,実 際 に 棚 卸 を 行 な っ た 従 業 員 の 調 査 を な し , 依 頼 人 に よ っ て 表 明 さ れ た 通 り の 棚 卸 資 産 が 存 在 し た か 否 か を 実 査 (inspection) に よっ て 決 定 で き な か っ た こ と を , 他 の 会 計 士 が 大 目 に 見 る で あ ろ う こ と は ,我 々 に は 不 満 足 な こ と で あ る 。 我 々 は , 依 頼 人 の 棚 卸 資 産 と の 物 的 接 触 を 要 求 す る手 続 を 通 常 な (normal ) も の とし て以 後 採 用 す る さい 会 計 専 門 職 の行 為 に 委 ね る も の で あ る 。」 そ七 て さ ら にSEC の 結 論 は 次 の よ うに 続 く へ 「 記 録 , 専 門 的 証 人 の証 言 及 び 認 め ら れ た 権 威 あ る文 献 に よ っ て 明 ら か に さ れた 事 実 に 基 づ く我 々 の 結 論 は, Price, Waterhouse 会 計 事 務 所 に よっ て 遂 行 さ れ た 監 査 は , 大 体 は ,範 囲 と 用 い ら れ た 手 続 に 関 し て ,Girard-Mckesson 契 約 の 期 間 に 必 須 の も の と 一 般 に 考 え ら れ て い た も の に 形 式 的 に は 一 致 し て い た 。 資 産 及 び 利
監査基準の研究 153: 益 の著し い 過 大表示 (gross overstatement) を 発見 で きなか った こ とは, 監 査業務 が行 なわ れた そ の方 法 に帰 す るこ とがで き る。 業 務を 実 施 す る際 に , 彼 らは, 専 門的仕 事 に 必要 で, また 監査に おい て周知 の権 威 あ る著 書にお い て推奨 され てい る入手し うる証拠に 関 わるあ の程度 の用心 ,せ んさ く,そ し て分析(that degree of vigilauce, inguistiveness, and analysis)を用 い るこ と ができな か った。 さ らに , より良い 実務 と考 え られ, か つ多 くの会 計士 に よ って用い ら れてい るけ れ ど も,公聴 会以前 に は,専 門 職 に よって必 須 の もと 考えら れてい な か った 監査 方 法 (audit steps) で あ る ,規 則的 な棚卸資 産 の 実査 と受 取勘 定 の確認 を含 む 手続 に よる実際 の立会 及 び独 立 の確認 に よっ て。 監査人 が同会 社 の記 録を 強 めたな らば ,過大表 示 は開 示 さ れた であろ うo ‘゛゛ しかしな が ら, 検 査 され てい る会 社 の記 録や 証憑 に よっ て明 らか に された諸 事実が実 査又 は 独 立 の確認 に よって監 査人に よって よ り広 くチ ェ ッ クされ る
とい う監 査手 続 の 発展上 重 要 な前進(a material advance in the development ofauditing procedures
) であ る, と我々 は強 く感 じ る。 監 査 の基 礎が ,帳簿 や
記録に現 わ れ る資 料 に限 られ ていた 時 代は , もし か つ て存 在 し てい た とし て
乱 そ の時 代は過 ぎ 去 っ て久し い。 長年 の間 ,会計 士 は,通 常 適用 さ れる手
続 のな か で,資 産 , 負債 の現実 の存 在を実 査又 は独 立 の確認 に よって立証 す るため ,記 録 の外 へ(outside the records) と進 ん でき た。 こ の報告 で繰 り返 し指摘 さ れた よ うに , こ の ことが拡 大 され る多 くの方 法か お る。特 に ,棚卸 資産 の実査 や受 取 勘 定 の 確認 に関 す る監 査手 続は ,公 聴会以 前で は ,任 意な 方法(optional steps) と考 えら れていた が ,種 々 の会 計団 体 に よっ てすで に 採用 された 解 決策 に 一致 し て ,投 資 家 に対す る包 括的 かつ 信 頼し うる財務 諸 表(comprehensive and dependable financial statements to investors)の表示lこ 関す る通 常 の監 査手 続 とし て認 めら れるべ きであ る, とい うのが我 々 の意見 であ る。」 SEC のか か る 結論 につ い て, Price, Waterhouse 会 計 事務 所 は,次 の ような表 明を なし てい る3)。 「我 々 の検査 の範 囲及 び手 続 は契 約 時点 の 専 門 的基準 に実 務的 に一 致し ていた と,SEC の報 告 は明 確に 認 め てい る。我 々 の契約 期間 中一 般 に 遂行 さ れ てい なか った が , こ の特 別 の虚 偽 の結果 とし て そ れ以来 広 く展 開さ れ て きた監 査手 続 の基準 は , この 事件 には 適用 不能で あ るとは 明らか であ る。」
し かし な が ら, Price, Waterhouse 会 計事 務所 は ,1933 年1 月1 日以 降Mckesson & Robbins 会 社 より受 領 し た 監査手 数 料を 同会 社 に返 済し てい
るの であ る。 1940年11 月, Mckesson & Robbins 会社 の管 財人 であ るWil-liam Wardall に 次 の よ うな書 簡を 送付し た4)。 「 貴兄 は, 同 会社 か ら横領
す る謀 議 に加 か った債 務 者た る前社 長 , そ の三人 の兄 弟及 び 他 の人 た ちの虚 偽 と不 正 に関し て, Mckesson & Robbins 会 社 ,前 社 長そし て前 任 者及 び
子 会社 に よって受け た 損失を 我 々 に通 知し て きまし た。 貴兄 は ま た, Me-kesson
& Robbins 会社 の役 員 や取 締役 のあ る もの は虚偽 の存在を 発見 す
るご とが でき なか った こ とに , 義 務 の遂行 上 怠慢 であ り,そ れ故 に ,それ に よっ て生 じた 損失に 法的 に責 任を 有す るか もし れない と,公 言し て き まし た。 独 立 公 共 会計 士 とし て,我 々も また, Mckesson & Robbins 会社 の帳 簿 や 記 録 に関 す る我 々 の検 査 が, か か る虚 偽 ,不 正及 び損 失を 開示 し えなか っ た とい う事実 に よって, かか る損 失 に責 任 を有 す るか もし れ ない とい う貴 兄 の 主張 を 共に 議 論し てきた 。 我 々 がす で に貴 兄 に通知 し て きた よ うに, Me-kesson & Robbins 会 社 と の関 係 期間 中 の我 々 の義 務 は,注 意 深 くかつ一 般 に 認 め ら れた 会計実 務や 手続 に従 って 行 な われた とい うのが,証 券取 引委員 会 や 独 立に 行動 す る我 々事務所 のノ ソバ ーに よっ て,照 尺 に照 らし てさ え, あ らゆ る事実 の吟 味後 に形成 され た我 々 の確 固 た る確信 であ る。 その 後 の開 示 かお る追加 の手 続が 虚偽 の 発見 を 生か か もし れ ない とい う可 能 性を示し て い るけ れ ど 乱 かか る手 続 は,一 般 に認 め られた 会計実 務 のも とで は必 要 と され てい ないし , 慣習 的 で もな く, また我 々 の サ ー ヴィ スを 依頼 す るMe-kesson & Robbins の役員 の 明確 な指 令 がな け れば着 手 され得 なか った。役
員 た ち は, 我 々 の 検査 が資 金 の不 正 流用 か 勘定 操 作 (misappropriatiorxS offunds or manipulations of the accounts ) かを 明 らか にす るに は十 分 に広範 囲
な もの では ない と文 書 で通知 さ れ たに もかか わ らず ,彼 ら役 員た ち は我 々を
指 図 す る こ とはなか った 。我 々が 雇用 さ れ我 々 の証 明書(certificates)に よって
及 び我 々 の報 告 書に よっ て述べ られた 限 られ た 性質 の検 査 とい う行 為おい て , 我 々は 怠 慢 な行 為又 は不 作為 の罪(guilty of any negligent act or omission)
はな か ったし , あ るい はそ の逆 に間 違 い心 し てい なか った が , 我 々 はMe-kesson & Robbins 会社 が 犠牲 者(victims)であ っ た と同じ虚 偽 の犠 牲 者で あ った とい うこ とが,我 々 の立 場 であ る。 さ らに ,当 該 の損失に 関し て我 々
監査基準の研究 155
に 責任 を 負 わ せ よ う と す る如 何 な る訴 訟 に お い て 乱 こ の 立 場 は 維 持 さ れ る, も0 と我 々 は 信 じ て い る 。 Mckesson & Robbins 会 社 の 前 社 長 ら に よっ て 欺 ま さ れ た 虚 偽 の 結 果 とし て, Mckesson & Robbins 会 社 の 種 々 の財 務こ 諸 表 は , 財 政 状 態 と経 営 成 績(their position and the results of their operations) を 公 正 に (fairly)に 表 示 し て い る とい う趣 旨 の 意 見 を 我 々 は 表 明 し て き た 。 虚 偽 の 発 見 に 伴 っ て , こ れ ら の 意 見 が 誤 り で あ る と判 明し た 。 十 分 な 配 慮 と 高度 の 専 門 的 な 基 準 に 従 っ て業 務 を 遂 行 し た 後 に 意 見 は誠 実 に 与 え ら れ た , とい う事 実 に も か か わ らず , 我 々 は進 ん で ,1933 年1 月1 日以 降 の か か るす べ て の 意 見 に よ っ て受 領 し た 総 額522,402 ド ル29 セ ン トを 返 済 す る こ とを 収 し 出 る。」 Price,
Waterhouse 会 計 事 務 所 は, Mckesson & Robbins 会 社 の 監 査
にお い て は , 当 時 一 般 に 認 め ら れ た 監 査 手 続 に 従 っ て 監 査 を 実 施 し た こ と は,.SEC の公 聴 会 の証 言 に お い て も 明 ら か な こ と で あ っ た 。 し か し な が ら ,SEC
のMckesson & Robbins 事 件 に 関 す る 結 論 に あ るご と く ,Price,Waterhouse 会 計 事 務 所 の 側 に も十 分 な る 配 慮 が 欠 け て い た と も 言 え る のJ
で あ ろ う。 そ のた め に こ そ , 監 査 手 数 料 の 返 済を 申 し 出 ざ るを 得 な か っ た の であ ろ うし , そ れ 以 上 に , 監 査 手 数 料 の 返 済 とい う出 来 事 自 体 が , 当 時 の会 計 専 門 職 に 与 え た 影 響 は 重 大 な こ と で あ っ た こ と は , 想 像 す る に 困 難 な こ と で は な い 。 Demond は , 「Coster-Musica の話 は , 会 計 専 門 職 の もつ 限 界
と経 営 者だ ち と に よ る 絶 え る こ と の な い 実 地 練 習0 一 つ (one of ceaseless.experimentation with the limitations of accountancy and directorships) で あご
った 門 と述 べ て い る。
と こ ろ で , 事 件 の 中 心 人 物 で あ るF. D. Coster す な わ ち ,Philip Musiac
は, 1938 年12 月16 日 午 後 , 逮 捕 直 前 に 自 殺 し た 。 自 殺 す る直 前 に 彼 は ,Mor-will Goddard の “What interests People and Why ” とい う本 を 読 ん で
お り, 次 の文 章 に 線 か 引 か れ て い た とい う6)。 「大 衆 が 知 ら さ れ た こ と の な い 真 実 と は , 大 制 度 の 複 雑 な 財 務 は , 十 分 に チ ェ ッ ク さ れ 得 る の で ど の取 引 乱 過 度 の時 間 と費 用 を 除 け ば , 検 証 さ れ る とい う実 践 的 シ ス テ ムが こ れ ま
で 考 案 さ れた こ と が な い , とい う こ と で あ る(The truth, which the publichas never been told, is that no practical system has ever been devised by which
the complicated finances of a large insititution can be throughly checked so ●
that every transaction is verified, except at prohibitive time and cost)・」 注 1 )2 )3 )4 )5 )6 )
SEC, op. cit., pp 31 −32ibid., pp. 34-35The Journal
of Accountancy ,1940, p. 95 Findings and opinions.c. w. DeMond, Price, Waterh∂use & Co. in America, 1980, pp. 272-273.Edwards, op. cit., pp. 166−167.DeMond
,op. cit., p. 262.ibid., p. 262.
五 監 査基 準 の制定 Mckesson
& Robbins 事件を 契 機にAIA は,1936 年公 報 の見直 しを す
る こ とにし ,1939 年5 月に ,監 査手 続委員 会(the committee on auditing
pro-・cedures) の報告 とし で次 の問題 につ い て勧告 を行 な った の であ る。
棚 卸資産 の検 査 受 取勘定 の検 査
独 立公 共 会 計士 の選任
独 立 公共 会 計士 の報告 様式 う
これ ら の勧 告 は, 「監 査手続 の拡張 (Extention of Auditing Procedures)上 とし て公 表 さ れた 。
棚卸資 産 及 び受 取 勘定 につ い ては,次 の よ うに 拡張 さ れ た の であ る1)。 棚卸資 産 に つい で,「㈲今 後 ,独立 し た公認 会 計士 が, 棚 卸資産 を一 重要要 素 とす る企業 財務 諸表 につ い て, 署名を 付け て報告 をし よ うとす る場 合,次 〔の手続〕が一 般 に認 め られた 監査 手続(generally accepted auditing procedure)
で あ るべ き であ る。
棚卸資 産 諸 勘定 お よび 諸記録 に つ い て 試 査 と 照 合(auditing tests andchecks )を 行 な うこ とに加 えて ,彼(会計士)が ,実施 可 能 にし て合理的 であ る限 り, 自 ら また は彼 の 代理 に よっ て,実 地 棚卸 に出 席 し ,か つ, 適当 な観 察 と質問 に よっ て ,実 地 棚卸 の方 法 の有効 性を , また , 依 頼者 の提示 す る棚 卸 表 とそ れ の諸 記 録に置 か れ うる信頼 度を , 確か め るべ きであ る。 〔なお〕, こ れに 関 連し て ,公 認会 計士 は,彼 の観 察下 に実 地 棚卸 が テ ス トさ れ ること を 求 め うる。
監査基準の研究 157(B ) 今 後, 棚卸 資産 が通 常 の営業 過程 におい て倉 庫業 者そ の 他の外 部 の保管 者 の許 にあ る場 合は, こ の ような保管 者か ら書面 に よる直 接 の確認 〔を 求め ること〕 が ,承 認 され る手続 であ る。 た だし ,そ れ の金 額が 企業 の流 動資産 の , また 資産 会 計 の一 重要 部 分を 占 め る場 合 は ,独立 した公 認 会計 士は ,補 足 的な 諸質 問 (supplementary inquiries)を 行 な うべ きであ る。」 そし て,受 取 勘定 は次 の ように 拡張 さ れた。 「今 後実 施可 能 であ っ て合 理的 であ る限 り, 手 形お よび帳 簿 債権 〔受 取 勘 定〕 の合計 額が 企業 の流 動資産 また は資産 合計 のブ 暇要部 分を 占め る場 合に は, 債務 者 と の直 接 の通 信に よ り手形 お よび帳 簿 債務 の確 認 [を 求め る こと] は,公 認 会計 士 の監 査 報告 の伴な う財 務諸表 監査に おけ る一 般に 認 め られた監 査 手続 と み とめ られ るべ き であ る。 な 社 告 監査 に おけ る受 取 勘定 確認 の方 法 ・範囲 お よび時間 は , また,全 部 の受 取 勘定 かそ れ の一 部 かは ,独立 した 公認 会計 士 に よって ,彼 の判 断を 要す る他 の手続 面 にお け る よ うに ,判 定 され るべ き であ る。」 AIA に よ る勧告 , す な わち 「監査 手 続 の拡張 」 は ,SEC に よるMe-kesson
& Robbins 事件 の裁 定前 に公 表 さ れた もの であ り,SEC のこの事
件0 結論 で も述 べ られ てい る よ うに ,会計 諸 団体 の努 力が こ こに示 された も の とい え るの であ る。 1939
年AIA の年 次大 会 におけ る講 演 の中 で ,Mckesson & Robbins 事
件 の公 聴 会 のSEC 側 の主 任会計 士 であ ったw. w. Wenntz が ,「我々 が 会 計原 則 に費 や し てきた 時間 に対 比し て ,合 理的 な監 査 が行 な われ たか否か とい う問 題 に関 係 す る主張 は以 前 ほ と んどな か った」 とのべ ,独 立監査 の基 本 概念 ,経 営 者 と独立 監査 人 の相 対的 責任 ,監 査 が遂 行 さ れ る能 力 ,財務諸 表 と脚 注 に含 まれ る情 報つい て の監査 人 の責 任 ,そ し てか か る財 務諸表を 誤 らしめ ない た めに要 求 され る開示 につ い て の監査 人 の 責任 を 論じ た の で あ が )。 こ の講 演 が監査 の基 本的 基準 の展 開を 導 い た の であ った。 1941 年2 月SEC は ,新 た に「証 明書」 の追 加 規則 を 公 布し , 監査は一般 に 承認 され る監査 基 準に従 うべ き旨を成 文 化し , 「会 計士 の証 明書 は,監査 が,環 境に 応 じ ,一 般に認 め られた 監査 基 準 にし たが っ て行 なわ れたか と う
かを , 開陳 し なけ れば な ら な い (The accountant certificates……shall statethat whether the audit was made in accordance with generally accepted
員 会 め 解 釈 に 従 え ば , 一 般 に 認 め ら れ た 監 査 基 準 (generally accepted audit-ing standards
) と は , 単 に 一 般 に 認 め ら れ た 通 常 の 手 続 (generally recognizednormal auditing procedures ) が 使 用 さ れ る こ と の み で は な く , さ ら に こ の 手
続 が 適 当 に 訓 練 さ れ た 者 に よ り 職 業 的 能 力 を も っ て 適 用 さ れ る こ と で あ る 」 と の解 説 がSEC よ り示 さ れ た がレSEC とA I A と の 論 義 か ら, 次 の よ う な 見 解 が 示 さ れ , 「監 査 基 準 は , 監 査 手 続 に よう て得 ら れ る 証 拠 の 性質 と範
囲 を 規 制 す る 監 査 の根 本 原 則 と み な す こ とが で き る(Auditing standards maybe regarded as the underlying principles of auditing which control the nature
and extent of the evidence to be obtained by means of auditing procedures )」 と し て , 監 査 基 準 と 監 査 手 続 の 区 別 が 強 調 さ れ る こ と に な っ た の で あ る ‰ 1947
年AIA は ,「 監 査 基 準 試 案 」(Tentative Statement of Auditing Stand-ards-Their Generally Accepted Significance and Scope )を 公 表 し た 。 そ の序 文 に は 次 の よう に 述 べ ら れ て い る4‰ ■ ■ ■ 「監 査 基 準 は レ 監 査 手 続 と 区 別 さ れ るべ き も の と い え よ う。 後 者 は 遂 行 さ れ る べ き行 為 に 関 す る も の で あ るが , こ れ に 対 し て 前 者 は こ れ ら 行 為 の 遂 行 の 資 格 の 標 準 と , 採 用 さ れ た 手 続 の 使 用 に お い て 達 成 さ れ る べ き 目 標 とを 取
扱 うも の で あ る (Auditing standards may be said to be differentiated fromauditing procedures in that the latter relate to acts to be performed, whereasthe former deal with measures of the quality of the performance of thoseacts,
and the objectives to be attained in the employment of the proceduresundertaken )」
こ の序 文 は, AICPA の 現 在 の文 章 と はほ と ん ど同 じ も の で あ る と 考 え て 良 い も の で あ る。 AIA は ,こ の試 案 で 監 査 基 準 を , 一 般 基 準 (general stand-ards
), 実 施 基 準 (standards of field work ), そ し て 報 告 基 準 (standards ofreporting ) に 区 別 し て お り, こ の 試 案 自 体 は ,翌 年 の1948 年AIA の 年 次 大
会 に お い て 承 認 さ れ , 一 般 に 認 め ら れ た 監 査 基 準 (Generally Accepted Aud ・iting Standards-Their Significance and Scope ) と し て公 け に さ れ る こ とに な
る。 こ の 一 般 に 認 め ら れ た 監 査 基 準 は, 1949 年 に 報 告 基 準 に 一 項 を 付 加 し , 現 在 のAICPA の 監 査 基 準 と し て 成 立 す る こ と に な る ‰
注
監 査 基準 の研究 1592 ) Carey, op. cit., p. 147.3
) 中 西 旭 , 前 掲 書, 28頁 。4 ) Carey, op, cit., p. 148.5
)1947 年 試 案 と 現 在 の 監 査 基 準 と 対 照 し て 表 示 す る こ と で , 監 査 基 準 の 本 質 の 変 動 の 無 さ を 明 確 に し て お く 。
1947 年 試 案
一 般 基 準 (General Standards ) (1) 専 門 的 能 力 の 原 則 The e
χamination is to be per-formed by a person or personshaving adequ
・ete technical train-ing and proficiency as an auditor
(2) 独 立 性 の 原 則 In all matters relating to theassignment,
an independence inmental attitude is to be main ・tained
by the auditor or auditors
(3) 正 当 な 注 意 の 原 則Due professional care is to beexercised in the performance of
the e χamination and the prepa-ration of the report
実 施 基 準 (Standards of Field work )(1
)計 画 性 の 原 則 The work is to be adequatelyplanned and assistants,
if any, areto be properly supervised.
② 内 部 統 制 信 頼 性 測 定 の 原 則 There is to be a proper study
and evaluation of the e χisting in-ternal control as a basis for
reli-ance there on a ・nd for the deter-mination of the resulant e χtentof the tests
to which auditing procedures are to be restricted. (3) 証 拠 力 の 原 則 AICPA 監 査 基 準 同 左 同 左 同 左 同 左 同 左
Sufficient, Competent evidentialmatter is to be obtained throughinspection,
observation, inquiries,and confirmations to afford a rea ・sonable
basis for an opinion reg-arding the financial statements under examination
報 告 基 準(Standards of reporting)(1) 会 計 原 則 準 拠 に 関 す る 報 告 の 原 則
The report shall state whether the financial statements are pre-sented in accordance with gen-erally accepted principles of Ac-counting
(2) 継 続 適 用 に 関 す る 報 告 の 原 則 The report shall state whether such principles have been
consi-stently observed in the current ・period in relation to the preceding
period.
(3) 公 開 明 示 充 足 の 原 則 Informative disclosures in thefinancial statements are
to . be regarded as reasonably adequate unless otherwise stated in the report 同 左 同 左 同 左 同 左 (4) 意 見 表 明 , 意 見 差 控 の 場 合 は 理 由 表 示 , お よ び , 検 査 の 概 要 並 び に 責 任 範 囲 指 摘 の 原 則 The report shall either con-tain an expression of opinion
regarding the financial state-ments, takien as a whole, or anassertion to the effect that onopinion cannot be
expressed. when an overall opinion cannot be expressed, the reasons there ・
中 西 旭 , 前 掲 書 ,30-33 頁 。Carey, op. cit., pp. 148-149.AICPA,
op. cit.,pp. 9-10.
監 査基 準 の研 究 161
for should‘be stated in all caseswhere an auditor's name is as-sociated with financial
state-merits, the report should con-tain a clear-cut indication ofthe character of the auditor'sexamination,
if any, and thedegree of responsibility he is
taking.
六 むすび にかえて
我国 の監査基 準は, アメリカの監査基準を手本に設定されたものであった。 アノリカの監査基準 乱Mckesson & Robbins 会社 の虚偽事件を一つ の契 機にし て制定 されたものであった。我国の監査基準及 び準則 乱 その制定以 来何度か改訂が加えられてい る。昭和40年に監査実施準則の改訂が,昭和41 年に監査基準及 び監査報告準則が全面的に改正され, そして昭和51年に監査 実施準則及び監査報告準則の改訂が行なわれた。 ここで特に注目すべき点は, 昭和41年に全面改正されたことであ る。そ の改訂の背 景には,昭和39年から 昭和40年初頭に至る問 の企業 の倒産が相ついだからであ る。たとえば,日本 特殊鋼,サソウェ ーブ ,富士車輛,そして山湯特殊製鋼であ った。これらの 企業 の倒産に よってレ 企業 の監査につい て,監査体制 の強化を要求する世論 の声が高まった。ここに,我国の監査基準及び準則へ の改訂への動きが高ま り,アメリカの監査手続から監査基準への展開ないしは監査手続の拡張 と同
じ ような展開がみられたとい っても過言ではない。 AIA は ,Mckesson &Ribbins 事 件 におい て,SEC 報告が出た後に,SEC との共同作業に よ
って今日の監査基準 の土台を築いてきた。 The Journal of Accountancy 誌上において,この事件に関するSEC 報告について,次 のように論じてい る1)。「会計専門職への信頼が委員会報告のうちに反映 されでい る」 とであ る。我国の監査基準制定力顎口何 であれ,「監査基準は,監査実務の中に慣習 として発達し たもののなかから,一般に公正妥当 と認 められたところを 帰納
要約 し た原則」 であ り,監査 基 準 の最初 の公表 以来30 年以 上 を 経た今 日,特 に 現在 の経 済的 ・社 会的 状況を 考慮し つつ , 会計 専 門職 の立 場 か ら考慮し た 一 般に 公正 妥当 と認 め られる監査 基 準を, 我 国 の土 壌 の うち に 求め る必要か お るのでは な かろ うか。 常 に監 査 の危 機 は, 目前 に あ る と。 (1982年1 月21日) 注