ノウ・ハウの法的性質-2-著者
盛岡 一夫
著者別名
K. Morioka
雑誌名
東洋法学
巻
18
号
1
ページ
p71-108
発行年
1975-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00006077/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaノウ・
ハウの法的性質⇔
盛 岡
一
夫
一 はじめに ニ ノウ・ハウの定義 三 ノウ・ハウの法的性質 日 ノウ・ハウと特許を受ける権利 ロ ノウ・ハウと先使権用︵以上東洋法学第蝋.六巻一号︶ 日 ノウ・ハウと権利︵無体財産権︶ 囚 むすび日 ノウハウと権利︵無体財産権︶
ノウ・ハウの法的性質について、多数説、判例は、ノウ・ハウを経済的価値のある事実的財産というべきであっ て、法律的に権利︵無体財産権︶とは認められないと解しているが、ノウ・ハウを無体財産権と解することはできな いのであろうか。まずはじめに、わが国の学説、判例を紹介することにする。ω 学説
播磨助教授は、 ﹁ノウ・ハウは、法によって保護されない財産であり、権利ではない。したがって、特許権のよう ノウ・ハウの法的性質口 七一東洋法学 七二
な独占的排他的な支配権としての効力はなく.法の保護、特に工業所有権法の保護の対象ではありえない。このこと ︵1︶ は.ノウ・ハウは.いかなる範囲内で保護されるかという法的保障の領域も持っていないことになる﹂と解される。 紋谷助教授は.ノウ・ハウそれ自体無体物であるから所有権の客体とはなりえず.また特許等を受けていないもの であることから特許権等工業所有権による保護の対象ともなりえない。しかし.それは重要な財産的価値のあるもの であって.移転佳を有する.また.それは産業活動のいわば沈澱物として.営業活動のいわば沈澱物たる﹁のれん﹂ に類する事実上の財産ともいうべ愚牲質を有するものである.したがウて.ノウ・ハウは現物出資の羅的ともなり. ハ溶︶ また貸借対照表能力をも有する一種の無体財産であると解きれる。 ノウ・ハウは﹁のれん﹂に似ていると解される大隅博士は.工業の生産過程において必要な知識および経験がノウAウであぶら・法律上いわゆる物︵巌霧︶ではなく.所有権の晶表身奈蓬れ.蓬.﹁ノウAウの
中には特許の対象となりうるものもあるが.しかしノウ・ハウは.通常.工業上必要とされる特定の結果をもたらす ための操作または手段方法からなっているのであって.その精密きそれ自体の性質上特許の対象となりにくいか.ま たはそれに適しないものである。したがって.通常は特許権のような無体財産権の対象ともならない。このようにノ ウ・ハウは物権その他の支配権の対象とはならないが.しかしそれ自体独自の財産的価値をもっている。この意昧 で.それは事実的財産というべきものである。この点において.ノウ・ハウは.得意先関係・仕入先関係・販売の機 会・営業上の秘訣などのいわゆる﹃のれん﹄ないし﹃グッドウイル﹄に似ている。 ﹃のれん﹄は多年の営業活動の結 果営業に定着したもので、営業の収益力がこれに依存するところが少なくなく、それが財産価値を有することは疑いをいれない。しかし、のれんは財産上の価値ある事実上の関係にすぎなく、特定の権利の対象として保護されるもの でないことは、一般に認められているところである。工業技術の知識および経験としてのノウ・ハウの法律上の性質 は、あたかもこれに類するものといってよいであろう。ちょうど﹃のれん﹄が営業活動の沈澱物であるといわれるよう に、ノウ・ハウも一定の生産手続の遂行の過程において生じた沈澱物というべきものであり、それ自体として独自の 経済的価値を有するが、権利の客体として特別の保護をうけるものでないことは、 ﹃のれん﹄の場合と異ならない。 ︵3﹀ その意味で、いずれも事実上の財産といってよい﹂と解される。 註︵1︶ 播磨良承﹁工業所有権法1﹂九一頁、なお、同助教授は、あとで紹介する昭和四一年九月五日の東京高裁判決を引用さ れ、この判旨を正当ときれ、次のように述べられる。 ﹁判旨のいうように、ノウ・ハウは、権利ではないから、工業所有 権のもっ絶対権・支配権としての排他的差止の効力は発生しないが、契約、つまり、ノウ・ハゥの実施許諾の契約の中 で、一定の約東を確実に実行しなかった︵漏洩した︶という契約違反については当事者間の不完全履行として法的責任 を問うことを認めていることは正当であろう。しかも第三者による侵害は別個のこととする。それは、ノウ.ハウはいか なる範囲の技術・技能であるかは法の関知せざるところであるから、ノウ・ハウの実施契約のところでこの範囲・内容を 契約自由の原則の下にチェックしておかねばならないのである。もしこの契約に違反したり、契約を守らなかった場合 は、債務不履行による損害賠償を求めることは当然としなければならない。なぜならば、ノウ・ハウは、特許として出願 をせず、発明を公開しないことによって得られる利益を取得し、審査による時問的消費を節約し、特許料の支払いを不要 とし、保護期間の制約もないという利点は、逆に侵害されることの危険負担を自ら負うものであり、その危険を甘受しな ければならないのは当然であると私は解したいがどうであろうか。論者は、ノウ・ハウの保護を不正競争防止法によって 保護しようとするのであるが、この場合、ノゥ・ハウを広く営業上の秘密として把握すること自体に困難な問題を含んで
いる、とともにノウ・ハウが必ずしも肇上の利轟蕪難止︶籍びつくか蕨的藷ずきと馨農いk現行
ノウ・ハウの法的性質口 七三東洋法学 七四
不正競争法上の明文を欠いている。ノウ・ハウは法的性質としての権利ではないのであるから、財産としての契約の場に ヤ ペ ヤ ツ ペ 登場したときのみ保護されるものと考えられる﹃債権﹄の目的となる他ないのではなかろうか。したがって、契約の場に 登場しないノウ・ハウは工業所有権ばかりでなく、無体財産法の立場からは、何も考慮する必要性ぷ、もたないものと考..ん るほかはなかろう。なぜなら登録出願主義をとるわが法制度の下では当然のことである。技術や技能夢曳のものには.創作 者の人格の表現そのものがあるという点で入格権といえようが.反対も多い。もし.ノウ・ハウについて法的性質を決定 し簿らかの法によってその保護をはかろうとするならば.それは現行法︵工業所有権法︶を改正するのではなく.別の法 域において工業所有権以外のところで.ノゆ・ハウの法的保護を試みなければ.特許権等工業所有権の既成の権利とは区 別ができなくなり混乱を生じ.法の隅的を失うであろう﹂ ︵黛︶ 紋谷暢男幕紛答堀晶圃嚢畷おレ感びその保護﹂穏・一亨スト五〇〇号五七四頁 ︵び︶ 大隅健一郎﹁ノウ・ハウの貸借対照表能力﹂商法の譜問題三一八頁以下.同ηノウ・ハウの現物出資﹂商法の譲問題一 八九翼. 三〇頁以下、同﹁ノウ・ハウとその譲渡﹂商法学論集︵小惣谷先生 古稀記念︶八頁以下.同憲.龍田節﹁ノ少・ハウをめぐる議問題﹂実務民事訴訟講璽会社訴訟・特許訴訟三ご︸頁.なお 大隅﹁ノウ・ハウの貸借対照表能力﹂前掲三一九頁は、ノウ・ハウの保護にっいて. ﹁ノウ・ハウは所有権または特許権 のような排他性を有する支配権の対象とはならないから、その秘密の保護にっいては法律上.格別の手段は与えられては いない。ただ、それが特定の特許発明の実施過程に関するものである場合には.その発明が特許権により保護される範囲 内においては.ノウ・ハウもまたこれにより間接的にかつ事実上保護されることとなるが.そうでもない場合には.ノウ ・ハウの保有者みずから秘密の漏洩を防ぐために必要な措置を講ずるほかなく.その意味で事実上の秘密保持の手段に頼 るほかない。しかし、他入により不法な手段によるノウ・ハウの盗用その他の侵害が行なわれた場合には、不法行為の成 立が認められるものと考える。ノウ・ハウについては所有権や特許権のような権利は認められず、しかも民法七〇九条は 不法行為の要件として権利の侵害をかかげているが、しかしそのいわゆる権利侵害は行為の違法性を表わす標識にすぎな く、違法な行為により他入に損害を与えたときは、所有権といった特定の権利の侵害はなくとも、不法行為が成立すると解するのが、近時の有力な学説である。これによれば、ノウ・ハウの保有者の使用人の買収・脅追等不法な手段によるノ ウ・ハウの盗用その他の侵害がなされた場合には、民法上の不法行為が成立し、侵害をうけたノウ・ハウの保有者は、侵 害者に対して、これによって生じた損害の賠償を請求しうるものといわなければならない﹂。と述べられる。 ③ 判 例 ノウ・ハウという用語が用いられ、その法的性質について述べた判例としては、東京高裁昭和四十一年における仮 ︵工︶ 処分申請却下決定に対する抗告事件の一件のみである。 本件の事実関係は次のごとくである。船舶のプロペラ軸の軸受装置オイル・ルブリケーテッド・スタン・チューブ ・シーリングの製作過程における技術上の秘訣いわゆるノウ・ハウを有するX会社︵申請人︶は、A会社との間にア メリカ合衆国およびカナダに眼定して本件シーリングのノウ・ハウに関するライセンス契約を締結した。ところが訴 外A会社は、この契約を締結したのち、臼本において本件シーリングを製作販売する目的で日本の会社と合弁会社Y 会社︵被申請人︶を設立し、その資本の四五%を出資し、二名の取締役を派遣した。X会社は訴外A会社がY会社を 設立して本件シーリングを製作販売させることは、訴外A会社がX会社に対する右ノウ・ハウの契約業務違反である という。すなわちY会社は訴外A会社と法律上同一人であるから右ノウ・ハウを使用して本件シーリングの製作販売 をすることについては、訴外A会社に対するのと同様に、Y会社に対しても本件シーリングの製作販売の禁止を請求 することができるとしてY会社を相手に仮処分の申請をした。しかし東京地方裁判所はこの申請を却下したので、こ の決定の取消しをもとめて抗告した。 ノウ・ハウの法的性質口 七五
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東京高等裁判所は、右抗告を棄却して.次のように判示している。 ﹁ノウ・ハウが法律上如何に理解さるべきかは兎もあれ、財産的価値の存することは明であり.しかも未だ法律的 には権利とは認められないものであると云わぎるを得ない。而してノウ・ハウ契約︵技術援助契約︶により被援助者 ︵ノウ・ハウについて︶である締約当事者は右契約により知得したノウ・ハウを契約で限定された範囲外に洩らして はならない義務を負担することは当然であるが.右義務は契約上の債務であり.約旨に反して.ノウ・ハウを他に洩 らした債務者︵仮処分の債務者ではない.以下同断︶が.契約上の損害賠償等の責を負うことも疑いないけれども. 締約当事者以外の第三者が、債務者より教示され、又は偶然の事惜等によリノウ・ハウを知得した場合.右ノウ・ハウ を使用して製作をする場合.これが差止めをすることは.現行法上.特段の規定がないので.できないものと解する を相当とする。けだし.ノウ・ハウは財産的価値のあるものではあるが、権利︵無体財産権であるか.債権であるか を問わず︶的なものとして第三者にも強制的にこれを認めさせるだけの効力を法律が許容しているとまでは現在のと ころ.解し得ないからである。ノウ・ハウの擁護はこれを保持する者が産業上の秘密として他に漏洩することを事実 上防止する外はないと云わぎるを得ない。しかも被申講人申越フウケシャ有限会社は、その構成員である社員申に. 前述の契約当事者である債務者ワウケシャ社があり︵その出資額渉資本の四五パーセントであるとのことであるが︶. 取締役二名は右債務者会社から選任されているとしても.法律上は被申請人が前示契約に対する第三者の地位にある ことは抗告人の自陳するとおりであるから、被申請人が債務不履行に協力又は援助を与えたとして違法な行為がある ものとしても.損害賠償の責を負うかどうかは別とし.これに対し.本件申講の仮処分により保全さるべき講求については、その疎明がないものと云うべく、又保証を立てしめて、右疎明に代えることも本事業については不相当と考 えられる。さればこれと同趣旨に出で、本件仮処分申請を却下した原決定は相当であり、他に右決定を取消すべき違 法の点も認められない。﹂ 註︵i︶ 東京高決昭和四一・九・五下級民集一七巻九・一〇号七六九頁
㈹英米法
前述のようにわが国ではノウ。ハウを権利と解していないのであるが、イギリスやアメリカでは、ノウ・ハウの法 的性質をどのように解しているのであろうか。イギリスやアメリカでは、ノウ・ハウ︵ζo類ポo毒︶という用語を用 いないで、トレード・シークレッツ︵欝鑑①器R簿ω︶という用語を用いてきた。ノウ・ハウは、イギリスにおいて は、トレード・シークレッッのなかに包含して用いられ、アメリカでは同義語として用いられている。最近アメリカ ︵1︶ ではノウ・ハウという用語が用いられるようになったが、判例でノウ・ハウの用語が用いられることは少ない。ここ でノウ・ハウの法的性質についての判例・学説を紹介することにする。大別すると、財産理論︵嘆εRq簿8曙︶と 信頼関係理論︵8誌箆①濤芭凌蝕霞ωびむ島8曙︶とになる。 ω 財産権説︵鷲εR受村蒔ぼ︶ ︵2︶ ζ器象俸竃器湊↓3880ρ↓鷺.<●窯2段事件 原告は、被告のたばこ会社に独創的な広告方法があるといって手紙をだした。原告がこの手紙に書いた広告方法の アイディアは、二人の紳士が立っていて、そのうちの一人がシガレット箱︵廊鼻品Φ鑑。蒔震①欝ω︶をきし出し、 ノウ・ハウの法的性質目 七七東洋法学 七八
..譲巽①○器亀野霧Φ、.といい.他の一人が..20簿鋸鉱鼠回も 臓欝oぎ○竃馨禽幣一翻、.と答えるものである.原告は最 後に﹁私は.このアイディアは.妥当な報酬を請求するに十分な価値を有することを確信する﹂と書いてあった。 その後.被告はこのアイディアと同じような広告をだした。それは.二人のゴルファ⋮と一入のキャディーが立っ ていて.一人のゴルファーが開いたシガレット・ケース︵⇔蒔舞簿欝8白 駿Φ︶をもち.他のゴルファーがチェスターフィ ルドの箱︵饗鐸齢聡窺O帯聾 票欝熱戴締︶を持っていて...團.嵩獣鼻雛Oぎむ 毒欝熱鑑欝、.というス灘ーガンを書いてあり. そして下の方に、帆駕難繋讐嘗晦嚢欝審黛ぞ難篇聴轡襲磯総欝嘗O欝舞講簿類..と印刷してあ爲た. 原告は被告に損害賠償の請求をした。第一審裁判所は被告に九、○○○ドルの支払を命じたので被告は控訴した。 控訴裁判所も第一審判決を支持し.その判決のなかでアイディアの性質について. ﹁われわれは.抽象的なアイディ ア︵鶴訂窪鷲江鎌舞︶は財産権︵鷲8爾蔓甑臓ξの目的とならないことを認めるが.われわれが本件にみいだすよう な具体的な形態︵8糞薄⑦︷霞蓉︶をとるときには.売買の目的となりうる財産権となるというのがわれわれの見解で ある。もちろん.これは新規︵き誌同︶で新しいものでなければならない﹂と述べている。 ︵3︶ ⑦繹ざ臨勲簿簿露2蝕露巴雛 ご勲嘗事件 原告の広告業者が被告の銀行に開示したラジオプログラムのアイディアを被告が使用したので.原告は被告が使用 したアイデぜアの報酬を請求して訴を提起したのに対し、裁判所は次のように判示し.原告の請求を認めた。 ﹁法はトレード・シークレッッ︵鍵&①。 。8器鍍︶に制限された財産権︵ぬ欝一簾&嘆8角蔓婦お窪︶を認め.また. 契約違反︵ぼ窪魯鉱8艮獲。静︶または信頼義務違反︵<凶o賦瓜9亀8匡箆窪8︶によるそれらの使用または開示︵象絶8弩①︶に対して差止の救済を認めている。もう一歩すすめると、アイディアにすくなくとも制限された財産権 を認めることができる。このステップが最近なされた法は、今、アイディアが特許を受けることができない場合でも また著作権の目的とならない場合でも.アイディアに財産権の効力を与える︵↓富㌶乏ぎ毒αQぞ塁Φ頃9汁8餌嘆○速旨畷 江αQ窪ぼ鱒β箆鶏薯窪跨ogαQび爵①箆8欝避富器おぎ吋℃舞窪欝び一①8N。 肛qどΦ988℃胃おげけ︶Q このような概念 は、しかし、法の保護を受けるためにはたんなる抽象的なものではならない。これは具体的な詳細な形態︵8暮匡Φ 留鼠一&︷霞β︶をとるものでなければならない。これはもちろん新規でなければならない。このようなアイディアの 使用︵巷篶○嘆翼陣呂︶については、アイディアが公表されないで公共の所有になっていない場合は、本法行為の理論 によって、または法律上推定される契約︵8馨鍔9ぼも瀞︵ご一二鋤≦︶もしくは準契約︵2鉱占o導奉9︶の理論にょっ て補償を受けることができる。﹂ ︵4︶ 瀬昏o身く●2謹8涛事件 トレード・シ⋮クレッッ保護の根拠として、生田氏は、イギリスでは早くから信頼義務違反説がとられ、アメリカ ぬ では財産権説がとられてきたが、一九一七年のホームズ判事の意見以来信頼義務違反説が多くなったとされる。そし て、財産権説は一八六八年の瀬魯o身く●20匡o涛事件にはじまるとされる。 ﹁麻布の製造業を創始開発したピーボ ディーはノォフォ⋮クを雇ったが、両者間に、この企業秘密を雇主の利益のみに使用し、その漏洩を防止する契約書 を作成した。その後ノォフ培ークは両者の関係を知るクックと契約してピーボディの製造法に習った機械による麻布 工場を建設した。マサチューセッッ最高裁は、特許に適すると否とを問わず企業秘密である製造法は財産権であり、 ノウ・ハウの法的性質目 七九
東洋法学 八O
︵5︶︵6︶ 秘密保持の契約違反や第三者に対する漏洩からの保護に価するとしている﹂と紹介しておられる。 ㈲ 信頼義務違反説︵ぼ$3亀8覧箆窪8︶ ︵7︶ ζ○蔚窪ダ憲o鶏事件 この判例はイギリスにおける基本的なりーディングケースである。原告モリソンの先代と被告モートの先代とはパ ートナーであった.そしてモリソンの死亡直前にその息子は秘密を学ぶ必要性もまた機会もなしにパートナーシップ の従業員として働くことになったが.モートの先代が死亡前にその息子に秘密処方︵零農騰酔騰焦饗︶を悪意で開示し ていることがわかゆたので・その使用の差止の訴がなきれた。 ターナー判事は.あるケースは財産性︵嘆名韓蔓︶により.他のケースは契約︵8欝嘗総紳︶により.さらに僑託 ︵欝霧酔︶や信頼︵8誌観窪8︶にもとづいて取り扱われてきた。裁判所は当事者の良心︵8器鼠窪8無跨⑦饗吋蔓︶に 義務を負わせ.これを利益をうける当事者に.それを信頼して湘利益が与えられたところの約束を履行する義務を強 制するのと同じようにかれに要講するとして.信頼または契約違反にもとづいて息子のモートに差止命令をした。 ︵8︶ ご離響馨階翼Φ欝o霞Q G噂嚢&醗Opざ裟鐘弩鳥事件 原告は.被告が雇用期間中に修得した秘密の製法を開示または使用するのを差止めるために訴えた。 ︵被告は原告 の元の被用者であった︶。 ホームズ判事の有名な判示は次のごとくである。 ﹁われわれは、この問題に対していくらか異ったアプローチをす る。商標︵欝鼠Φ簿鍵蔚︶やトレード・シークレッツ︵簿鼠①鶏 。9お欝︶に適用される﹃財産﹄..鷲8霞蔓、、という用語は、法が誠実︵αqo&犠鉱夢︶の基本的要求をなす第一次的な事実の第二次的結果の未分析な表現である。原告が価値 ある秘密を持っているか否かに関係なく、被告は受諾した特別の信頼︵の需。芭8蔑雛窪8︶によって、その事実を知 っている。財産は否定できるが信頼は否定できない︵↓誇鷲8角蔓旨亀訂留φ冨山橘ぴ纂夢①8無箆窪8。欝8一訂︶ それゆえに、この事実の出発点は、財産でも正当な法の手続︵身①鷺8霧ω9冨乏︶でもなく、被告が原告と信頼関 係︵8氏箆Φ導芭邑讐ご霧︶にたったこと、もしくはこれらのいずれかである。これが対立となっているが、確認さ れるべき第一のことは、被告がそのうけた信託を不正に濫用してはならないことである。これが信頼関係における通 常の義務︵5舞一ぎ。箆Φ簿︶である。たとえ被告が原告の秘密を知ったことによって、いかなる不利益をうけようと も、被告は誠実に義務を︵ぼ巳窪註爵魯Φαqo&︶負わなければならない﹂。 この判示は、トレード・シークレッッの保護について財産理論︵鷲8Rな浮8蔓︶の有用性を疑問としたホームズ 判事が、使用者と被用者との信頼関係に求めるべきであるとされたものである。すなわち信頼義務違反︵ぼ$畠亀 ︵9︶ ︵10︶ 8篤箆窪8︶であるとの理論によったものであり、その後のr罫国筈陣8註盲やOρ︸ぎρ︿.U錺げR事件、 ︵11︶ ︵12︶ ︵13︶ 津きぎく。ゑ誘魯簿事件、図鎚菖ぎダ丙魯”欝鋤&ω唇鉱9事件、ω畠巳窪薯おく。詔讐帥嘗畠ヲρ事件等に引用 されている。 の ノウ・ハウの用語を用いてその法的性質について判示したものとして幻&?即28犀創く﹂無津2事件があ ︵欝︶ る。 獄ールス・・イスは外国の政府および会社と航空機のエンジンの製造に必要なノウ・ハウの技術援助を行なう契約 ノウ.ハウの法的性質綱 八一
東洋法学 八二
をして、ご欝℃。 a餌鷺唱曙欝窪錺と8巻顕霧の支払をうけた。翼ールス・ロイスがぎ鷺℃雲欝℃避導①纂ωとして受領 した金額に税金を課することが適法であるか否かについて問題となった。 ラドクリフ卿は﹁﹃ノウ・ハウ﹄について.私はこれを資産︵霧。 。震酔︶として述べることに異論はない。これは無形 のもの︵陣簿窪αQ讐⑳︶である。しかし、のれん︵讐&譲箆︶も同じである。⋮これを当然の貸借対照表の項目︵訂同§8− 纂灘齢欝欝︶とは考えない.しかし.これは撚ールス・ロイスのものとして生産.および開発、編結びついたとき現実 となる.そして.その全部ではないが大部分は.各種のライセンス契約︵欝趣霧轟騰鋤灘灘瞬︶に定められたリスト. 図面.ならびに製造および技術資料に有形的な記録︵欝騨欝鳳瓢捲撫講轍︶がみられる。 ⋮それは.工場や事務所の建 物.倉庫.プラントや機械.あるいは特許権.薯作権や商標権︵齢讐階羅霧じのような独立した法律上の権利.きら 紀のれんとさえ容易に比較できない。 ﹃ノウ・ハウ﹄は高度に特殊化された生産組織︵瓢讐嘗。 り隠良餌騨a嘆o象&農 o茜霧羅ぎ欝︶にゆきわたり.かつ.製造業者がその生産目的のために保持し.その製品にその価値を表示するかぎ り.これを固定資本︵訟器蜘霞覧駐︶と表現するのは正しいとおもうが.そのように表現するにあたっては・ ﹃ノウ ・ハウ﹄を固定資本のより直接な要素︵り ・霞鉱αQ簿よR嬢霞瓢α⑦鷺o艮。り︶から区別する固有の相違によって容易に否定で きる類推をしているということを理解しなければならない。⋮﹃ノウ・ハウ﹄は.いかなる意昧においても.製造業 者にその価値を失うことなく.製造業者自身の営業外の他人に伝達し.または分けることのできる特異の性質を有す る。⋮これらの考察から、 ﹃ノウ・ハウ﹄は、類推によって固定資本と述べられる財産であるが、それは、その所有 者自身が決定する用途によって非常に容易にそのカテゴリーを変更することのできる種類の無形のものである﹂と判示した。 ◎ ターナーは、秘密情報︵8陳箆霧鼠=講9欝蝕o嵩︶またはトレード・シークレッツは財産か否かについて裁判 所は、たびたび考えるが、この点については決定的な判決はないとしてU信ぎ旨留2。ヨ雲誘掲o壌儀RO9 ︿● ζ器㌶巳事件におけるホームズ判事の判示を引用して、これはアメリカの判例にたびたび引用されていると述べてい ︵拓︶ る。 カルマンは、営業秘密とのれん︵αQ&註εを比較し、財産理論によって保護しようとする。のれんは営業の一部 分にすぎないが財産権と解されており、また、営業の秘密範囲︵。 ・oR9呂ぼ話︶とのれんとは同様に不法な侵害を受 けやすいし、多くの点で類似している。のれんは財産権として保護を受けているのであるから、営業秘密も同様の保 護を受けるべきである。当事者間に一定の関係がある場合に、財産概念︵嘆8簿蔓8昌8讐︶は、訴訟原因︵8霧① o出斡&8︶として重要ではない。なぜならば、救済は契約または信頼関係違反で解決することができるからである。 しかしながら、財産理論は付加的な訴訟原因になるし、救済を選択する範囲をひろげるものである。そして、Uq ︵掲︶ 寄客事件におけるホームズ判事の判示は、当該事件のような情況においてのみに制限すべきであるとする。 ライアンは、財産理論と信頼関係理論とは、粍矛盾するものではなく、多数の事件において、これらの二っの理論の 一方または両方を用いることができるとし、﹁たとえば、Aが価値あるトレード・シークレッツをもっていると老える と、それはAの財産となる。Aが、Bに秘密を保持する約束をさせてこれをBに告げる。Bは、約束に違反して、こ れを世問に公にする。または、これを自分の利益のために使用する。Aは、BがAの財産を窃取︵巨確署3嘆一舞。︶ ノウ・ハウの法的性質目 八三
東洋法学
八四 したという理由で、または、Bが、信頼関係に違反したという理由で、あるいは両方の理由で、Bに対し訴を提起す ることができる。裁判所は、財産理論をもちいることもあるし.信頼関係理論によることもある。どちらを使うか は.特定の事件の事実関係に依存する。被告が非常に違法性のつよい行為をしたときは.裁判所は、通常.信頼義務 ︵”︶ 違反の角度から議論する。このような要素がないときは、裁判所は.しばしば財産理論をもちだす﹂という。 英米法の判例・学説についてわが国の学者は次のように紹介している。 坪田氏は.アメリカの判例においては.辮欝僧9韓鷺$事件以来.特許を受けていないノウ・ハウよりも自由競 争の確保の方が優先すべきものと考えられるようになったとされ.ノウ・ハウそれ繍体は権利として保護きれず.ノ ウ・八ウが財産権として一人歩きして信任違背者または不正手段による盗用者以外に対し.権利主張しうるものでは ︵猫︶ ないと紹介しておられる。永田博士は.アメリカの判例は.一般にノウ・ハウを財産権と認めず.かつ.当事者の契 約・信頼または競争関係がないときは.ノウ・ハウを権利として認めず.保護を与えない。すなわち.ノウ・ハウを ︵欝︶ 保護する根拠は財産権ということではなく.当事者間の関係に重きをおいているようであると紹介しておられる。江 口教授は.営業秘密を財産権として保護するのではなく.秘密が獲得されたときの手段の違法性︵譲8おぼ一灘器︶を ︵20︶ 裁判所は問題にしていると紹介しておられる。 ノウ・ハウを法的に権利として認めていないと紹介するこれらの見解に対して.山崎教授は.営業秘密が財産であ ることはアメリカでもイギリスでも古くから認められてきているとされ、営業秘密は、営業財産であり、営業者はそ の秘密に対し財産権を有するものである。営業秘密に関する契約や信任関係のないときでも、営業秘密は保護をうけ︵21︶ るのであって、それ自体のれんの一構成要素として営業者の財産になると紹介しておられる。土井教授は、イギリス ・アメリカにおいても大陸法諸国においても、アイディア、トレード・シークレッツ、ノウ・ハウなどといわれるも ︵2 2︶ のは財産としての存在が認められているとされ、英米法について次のように紹介される。 ﹁英米法諸国においては、 財産の概念は大陸法諸国におけるよりも、弾力的であって、トレード・シークレッツやノウ・ハウも財産の概念にふ くめられている。トレード・シークレッツに関する判例は、主として不正競争︵§㌶同8臼℃。蜂一暮︶の分野におい て発生したもので、衡平法の原則にしたがって、トレード・シークレッツの所有者は、信頼してその秘密を開示した 他人がこれを使用または処分する行為を禁止するため、差止命令︵ゆ三琶亀9︶の救済が与えられている。もっとも 典型的なケースは、雇用者にその使用人または以前の使用人が雇用中に取得した秘密の情報またはデータを開示また は使用する行為の差止命令を与えるものである。この救済は、秘密の性質を知って他人からトレード・シークレッツ を取得した者が、それを使用することを禁止するためにも与えられる。これらの判例においては、トレード・シーク レッツを、所有者の﹃財産﹂︵鷺ε霞な︶とか﹃財産権﹄︵箕8段蔓樋蒔﹃酔︶であると表現したものが多い。しかし、ト レード・シークレッッを財産権ということは、有体物の所有者がその有体物に対して有する使用、収益、処分の絶対 ︵23︶ ・排他的権利や、特許によって与えられる権利とまったく同一であることを意味するものではない﹂。 ︵璽︶ アメリカの学説・判例について、小野博士は、次のように紹介しておられる。多数説は、トレード・シークレッッ の所有者はそれを排他的に用いる権限︵唇乏Rε営異の蕊①○コ酔8夢o露息霧圃89島の≦禽鉱︶があると考えて いる。とくに、工程などに関するトレード・シークレッッについては、差止命令によって保護される財産権︵嘆8鯉蔓 ノウ・ハウの法的性質口 八五
東洋法学
八六 層魁るであることは確立された原則であるとまでいわれており、単なるアイディア︵露RΦ箆鶏︶などは疑問とする エリスも、それが特許能力を有しているか否かに関係なく、単に公表されていない発明であるトレード・シクレッシ を.財産として取扱うには何の支障もないといっている。また.トレード・シークレッッを他の財産の所有者と同様 にそれを自由に処分することができるというのが多数の見解であるが.いくつかの裁判所は通常の財産と同様に老え ない。トレード・シ⋮クレッツは、薯作権や特許権とは.その性質上.同一の保護原理が適用されず.財産として. 所有者の同意のない冒用や奪取に着眼きれ保護されてきた、トレード轡ンークレッッにおける財産は.動産︵魯舞蕉︶ にはにておらず.むしろ無体的価値︵薯作権・特許権︶における財産権のほうににているときれる、したがって.普 通法上および衡平法上のタィトルの原理︵黛講臨窓慧 り⇔二轟瓢欝熱3駄難階簿紺︶の適用はむずかしノ\場合によれ ば不可能である.しかし.アイデ4アに対してすら財産権を認めている。 註︵叢︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ 土井輝生﹁ノウ・ハウ﹂二一頁.紋谷﹁麟蓉箋−驚○乏およびその保護﹂前掲五七二頁.同﹁座談会企業秘密の防衛﹂ジ ュリスト四二八号六七頁.小野墨延﹁営業秘密の保護﹂五閥三頁以下 ︸黛ぎ貸︾や欝愈9一総塑麟。鱒8︵一8㎝︶ おo o搾ω瓢︾警③G o㊤︵麟G っりり圃o っρρこφρ ︵這総︶ OO o竃器即駆器︵蕊①○ ○︶ 生田典久﹁米・英における企業秘密の保護﹂ジュリスト四二八号五一頁、なお.同氏は.カリフォルニア民法典九八○ 条㈲は、トレード・シ⋮クレッツを財産権としており、財産権説をとれば、トレード・シークレッツは、信託、譲渡、遺 贈が可能であり、課税の対象ともなろうと述べられる。 O箋鷺餌P燐鼠ΦFq溝鉱添◎o箏冨鉱鋤霧鋤鼠8墨留−憲鍵一塗留會一〇8︵&夢お霧塁署竃導Φ馨yやお⇔ 。は、営︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ ︵10︶ ︵難︶ ︵B︶ ︵B︶ ︵M︶ ︵15︶ ︵1 6︶ ︵17︶ ︵娼︶ 業秘密の所有者︵○≦β角亀節$号霧窪簿︶は﹁営業秘密に財産を有する。衡平法裁判所は契約違反︵︿互呂窪象8亭 齢墜9︶や信頼関係違反︵夏S魯9。8ま窪8︶し、それを自己自身のため使用、もしくはそれを第三者に開承しよう とする者に対して保護をする﹂というこの判示は、実にあまりにも狭すぎると批判している。 ︵一〇 〇鰹︶O山母o膿ご8い﹂●○ダ⊆ 飛一もo旧霞α趙び﹂。○拝ω鼻o o 鐘麟¢●ψ一8︵お霜︶ この判示について、土井教授は、トレ⋮ド・シークレッツないし、ノウ・ハウの財産としての存在と矛盾するとは解し てはならないとされ、 ﹁トレード・シークレッツは、譲渡またはライセンスの目的とすることができる点において財産と みなされる。しかし、特許とちがって、所有者は、他人が善意の手段によって独立して同一のトレ⋮ドシ・iクレッツを 発見したとき、その他人がこれを使用するのを携除することはできない。この点において、トレード・シークレッツを財 産として扱うことが困難なため、ご瓢勺o旨事件は、財産の窃取でなく、信頼義務違反の法理によったのである﹂と述べ られる︵﹁ノウ・ハウ﹂八二頁︶ O oωZ罫Q o’曽ムし 〇一︵る嘉o o︶ 80搾 浅さω︵お器︶ ω誤型鱒血O蕊︵6総︶ ⑩富堵搾邸αo o臼︵お臼︶ ︵一8鱒︶一︾=炉戸O oO一 ↓瑛器門︾導8ひρ↓び¢一餌類9↓獲血oつ りoR簿ω︾℃●一bo O巴一導餌90P9汁.℃為o o㎝ ジョン・ライアン当アヌリカ合衆国におけるトレ正ド・シークレッツ保護の法理﹂海外商事法務七七号二二頁 坪田潤二郎﹁特許政策とノクゼハウの秘匿﹂特許管理二二巻七号六七五頁以下、なお、同氏は、ω9βOo霧鷲o事件 の最高裁の判決を﹁特許を受けていない考案を第三者が複製・模倣することを禁止する州の立法は、連邦法の特許政策と ノウ・ハウの法的性質目 八七
︵雄︶ ︵20︶ ︵蟹︶ ︵22︶ ︵23︶
東洋法学 八八
矛盾し無効である、というにある。ことに9箏鷲o事件の判決中においては、特許を受けていない考案を複製使用する こと自体を禁止すべき根拠はないものと判示されているので、特許をうけていない発明考案や技術情報それ自体の使用差 止は許されるべきではないことになる。したがって、この判決の提起する第一の問題点は、ノウ・ハウの盗用に対して損 害賠償は認められても.や震霧碧①簿欝智蓉齢す︸は許されるべきではないことになる。米国の学者の意見もこの点にっい て.ほぼ一致している︵キッチ教授︹シカゴ大学︺及びカプラン教授︹ハ⋮バード大学︺もそのように説かれる︶。それ では.なんらかの制眼つきの欝鷺箸鎌蜷貯資鷺甑霧は認められるであろうか。この点をめぐっては.まさに見解のわか れるところであるが.ブループリントの盗用事件において.第八控訴裁判所は.も ○ぐむ講欝9総鷲Φ事件の判旨を引用して 鷲澱羅麟慧欝貯讐欝舞陣霞を蒼定したが・二年間の紺簿饗鎌藁鑓欝欝舞雛聯をそのブルー・プ夢ントの使用に対して認めた ︵ひ.〆プトン事件遍灘遣鈴欝々ら 。蕊鶯零ご︶この事件で留意すべき点は.その欝溝噂舞鴛畷剛三綴糞餓繋がブルー・プ サントそれ趨体の使用に対して認められ.そのブルー・プリントに牝体されているノウ・ハウないし技術情報の使用に対 しては向けられていない.ということである。したがって.この判決の滞鳴愚o墜昌籔㎞総客鉱霧は. ノウ・ハウの不正 使用に対して向けられたのではなく.ブルー・プリント作成の労力・費用の鷺謎趣鷲○鷲鑓鉱婁に対する差止であったも のとみることができる。現に.裁判所は二年間という期閥の設定について、被告が自らブルー・プリントを作成するに は.その位の期間がかかるであろうということを目途としている。したがって、この限りにおいて.原告は二年間創業者 利得をあげることを認められたことになる。﹂と紹介しておられる。 なお、土井輝生﹁国際知的財産取引の基本閥題﹂三二頁もo り審騒事件と9露唱8事件を紹介しておられる。 ︵経営法学全集7︶二六頁 永田大二郎﹁特許﹂特許等管理 江欝順一﹁アメリカ不正競争業法における営業秘密︵↓鏡富も り霧器誘︶にっいて﹂松由商大論集第一五巻五号六五頁 山崎晴一﹁アメリカのコモン・鷺iにおける営業秘密﹂東洋法学第三巻一号三頁 土井﹁ノウ・ハウ﹂七九頁 土井﹁ノウ・ハウ﹂八一︸興︵24︶ 小野﹁営業秘密の保護﹂二四五頁 ︵ま︶ ㈲ わが国の多数説は、ノウ・ハウについてそれ自体高い財産的価値を有するものであり、事実上の財産といって ︵2︶ よいが、権利として保護きれるものではないと解し、判例も、ノウ・ハウは財産的備値のあるものではあるが、権利 ︵無体財産権であるか、債権であるかを問わず︶的なものとして第三者にも強制的にこれを認めきせるだけの効力を 法律が許容しているとまでは、現在のところ解しえないと判示している。 多数説、判例のいうように、ノウ・ハウは無体財産権に包含されないのであろうか。 臼D まずはじめに、技術を開発した場合に、なぜ特許を取得しないで、ノウ・ハウとして秘密のまま利用するのか ということを考えることにする。特許法は、特許権の効力につき原則として﹁特許権者は、業として特許発明の実施 をする権利を署薯﹂︵難磐窺定している。特許権は絶対権であり排他性を有するから、第三者は不可侵義 務を負う。したがって、正当の理由がなく他人の特許を実施すると特許権の侵害となる。特許権者は業として特許発 明を独占的に実施することを有するので、特許権を侵害する者または侵害するおそれがあるものに対し、その侵害の
停止発は予蓼葉す詮嘉できる︵辮雑麺︶.特許権者は、あ養璽捨よ・て、侵害の行馨組成
した物の廃棄、侵害の行為緩晃設備の除却その他の侵害の予睦必要な行為籍求す歪とができる︵難議○
麟、一︶. 特許権が侵害された場合には民法第七〇九条によって、損害賠償を請求することもできるが、特許法は、特許権者を ノウ・ハウの法的性質昌 八九東洋法学 九〇
強く保護するために、侵害者が侵害の行為によって利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者の受けた損害の響推定す窺定︵肇雑謹、奮び特許権の馨者はその侵害行為について濃があっ砦のと推定する規
定護けていゑ講義︶.すなわち.民法第七〇九条の場合は.被害蓮馨の挙要任があるが・特許法は・侵
害者に過失の挙証責任を転換しているのである。 このように技術を開発した場合に.特許権を取得すれば.特許法によウて厚く保護きれるのに.なぜ.特許権を取 得しないで.ノウ・ハウとして技術を秘密のまま利用する方法を選ぶようになったのであろうか。特許法は.出願鏡ら翠六鷺を嚢髭・多簾.誘内奪晶薯巖論製藻用していゑ.︵舗
鑑3審票遅讐嘉軌巖盆欝艦嚢で.さ是特簾得忽れる毒長期間萎している、巌翁
制度のもとで特許権を取得するには.技術を公開せぎるをえないので.秘密を保持できる場合には特許出願をしない でノウ・ハウとして秘密のまま温存するのである。特許法は技術の公開の代償として発明者に一定期間独占権を付与 するのである。技術を公開して特許を取得し.独占権を付与されるよりも.ノウ・ハウとして秘密のまま保持するこ とが有利の場合もある。技術を開発した場合に.特許を取得しようとすれば.技術が公開きれるので.それが重要価 値のあるものであればあるほど競争関係にある他の企業に無償で技術の内容を教えることになる。そこで.できるだ け技術の公開をさけるために、一部分はノウ・ハウとして秘密を保持することもある。開発した技術の全部を出願し ︵3︶ ないで、一部分だけ出願して特許を取得し、他の部分はノウ・ハウとして温存しておく場合もある。 ある国で付与された特許権の効力は.その国の領土内においてのみ効力を有し.他の国には効力をおよぼさないから、世界各国に効力をおよぼすためには、各国別にそれぞれ特許出願して登録をしなければならない。すなわち各国 別に特許を取得しなければ、その国の保護を受けることができないのである︵属地主義鷲ぎ。覧①鉱齢巽旨&呂蔓︶。 たとえば、譲本で付与された特許は目本でのみ効力を有するから、ドイツで独占的に使用したいときは、ドイッの特 許法にもとづきドイッに特許出願して特許を取得しなければならない。同一人が日本とドイッで特許を取得しても、 これらの特許権は別の存在であり、それぞれ独立である。同一発明については、日本とドイッで特許が付与された場 合、たとえドイツで取得した特許権が無効となり、または消滅しても、日本における特許権の効力には影響をおよぼ さないのである︵特許独立の原則鷲ぎ。覧o無跨oゆ&9①&窪8亀短富馨ω︶。 パリ条約︵Oo導。温窪亀評蕾ま同夢①鷲9Φ&魯o=&霧鼠鐵嘆ε段蔓︶は、各国間における出願に係る同盟 国の国民の特許権は、同一の発明について他の国︵同盟であるとないとを問わない︶において取得した特許権から独
立したものとすゑ謝僑第麺窺定している.そして、あ篁項の規定は、厳格縁釈するものとし、特
に、優先期間中の出願に係る特許権が、無効または消滅の理由についても、また、通常の存続期間についても、独立のものであるとい憲睦解釈し菩れ婆らない︵畿課約第爺﹀と規定している.
このように、ある国で付与された特許権の効力は、その国の領土内のみ限定され、他の国には効力をおよぼさない から、各国の保護を受けようとすれば多額の費用と手数をかけて各国ごとに特許出願して特許の登録を受けなければ ︵4︶ ならない。 これに対して、ノウ・ハウは属地主義の問題がないから、ある国に限定きれることなく、秘密に保持きれている期 ノウ・ハウの法的性質目 九一東洋法学
九二 間は世界各国に対して一応効力を有する。これはノウ・ハウが、特許のように制定法上の独占権︵馨舞纂○莞筥8? 薯貯︶ではないからである。ノウ・ハウの所有者は、第三者が同一内容のものを独占で開発しないかぎり世界各国に 独占を主張することができる。したがって.技術を開発した場合に特許の出願をしないで.ノウ・ハウとして秘密の ︵5︶ まま利用することもあるのである。 @ 次にノウ・ハウは経済的価値を有するものであるか否かについて考えることにする、 企業間の競争の激烈な今鷺において優位な地位を占めるためには.競争関係にある他の企業よりもすぐれた技術を 開発す蒸必要があるが.この技術を開発するためには.多額の費用と長い期間をかけて研究しなければならない。す ぐれた技術を開発した企業は.自国で製品を生産し輸出することができるが.必ずしも有利とはいえなくなってきた こと.また.技術を開発しても技術進歩の急速化した今日では.その技術の開発直後にきらにすぐれた技術を他の企 業によって開発されることもあり.その独占状態は短期間になってきていることなどの理由によって.製品を生産し て輸出するのみでなく.その技術の価値がある間に.直接に技術そのものを売って利益をはかろうとするようになっ てきた。世界じゅうの多くの企業は相前後して.あるいは同時に.同じ研究をはじめ、ほとんど同時に技術を開発し ているような現状である。 また.技術の開発に多額の費用、長い時閥、多くの労力をかけていては、企業間の激烈な競争にかてない企業は. 技術のおくれをとりもどすために、技術を導入することが多い。外国の企業は技術開発に多額の投資をしているが、 わが国は.多額の研究費を投ずるよりも.外国から技術を導入する方法をとっている。戦後、わが国が欧米先進国との技術格差を縮め、経済の驚異的な高度成長をもたらしたのは、外国からの優秀な技術の導入であった。わが国は先 ︵6︶ 進国から技術を導入し、これを吸収することによって発展してきたのである。この技術援助契約︵富畠ぎぴαQざ巴効? ω碧窪88纂轟9︶には、特許とともにノウ・ハウが契約の対象となっている。技術の急激な進歩によって、技術が 複雑高度になると特許の明細書だけでは、実際にその実施の過程において技術上の操作などの詳細はわからないか ら、特許とともにノウ・ハウを導入することによって、早く生産し販売しようとするのである。 近時、技術援助契約において、ノウ・ハウ実施契約︵ぎ○毒洋o毒ぽ窪8罐村8第。簿︶またはノウ・ハウ譲渡契約 ︵器の蒔轟箏。簿○こ90壌ポ○名︶という単なる技術援助契約は少なくなり、合弁会社設立契約をともなうものが多くな ︵7︶ ってきている。この合弁会社設立契約の場合に、ノウ・ハウは資本充実の原則からみて、現物出資の目的とすること ができるか否かについては問題がある。 このように、ノウ・ハウは経済的価値を有し、国際的に取引きの対象となっており、金銭で表示しうる価値を有し ︵8︶ ている。したがって、ノウ・ハウが経済的価値を有していることは、学説・判例の認めるところであり、また、アメ ︵9︶ リカではアイディアでさえ、具体的な形態︵88憲①︷段導︶をとるときは、財産権として認めている。 技術導入契約においては、その契約期間が規定きれているが、その期間が満了した場合に、更新するか否かはわ からない。技術を導入した企業は、その技術を習得すると契約の更新をしないこともあるからである。契約終了 後、技術を導入した企業はノウ・ハウを返還しなければならないが、技術的知識および経験であるノウ・ハウを伝授 され、いったん覚えたものを返還する︵忘れる︶ということは不可能である。したがって、技術を供与した企業は、 ノウ・ハウの法的性質口 九三
東洋法学 九四 ノウ・ハウを返還きせることが困難である。 このような理由から.技術援助契約︵富魯蓉一轟8巴霧塁欝8①8糞審9︶において合弁会社︵憲纂<。簿鶏の8欝− ℃弩緒︶の形態を用いるようになってきた。すなわち.技術を供与する企業と.これを受ける企業とが共同して合弁会 社を設立する。このときに外国の企業は.ノウ・ハウを現物出資し.わが国の企業は.現金出資をするのである。 娘こで.ノウ・ハウの現物出資についての問題点について考えることにする.ノウ・ハウの現物出資について.長 谷部教授は次のような問題があると指摘される.まず.第一の問題は.ノウ・ハウを現物出資の目的とする蔦とがで きるか否かという点であるとされ.現物出資の給付は会社成立前または新株発行前に全部なされなければならない
ハ墾鱗誌課御鵡︶.黛ノマハあ揚出資義術上の秘訣の縫で・宏かへ会勢笠欝季さ馨
ものである。このように.出資の履行が会社成立後の将来未必の時期にかかるような財産が.資本充実の立前から現 ︵鶏︶ 物出資として許されるか否か疑問であると指摘される。 たしかに.ノウ・ハウは.産業上の利用において.実際に適用するのに必要な技術的知識および経験であり秘密と されているものであるから.会社成立前または新株発行の効力発生前に全部の履行を完了することはきわめて困難で ある。文書.図型などの有形物となっているときは.会社成立前に履行することが可能であるが.工場に技術者を派 遣し.実施について技術指導を要するときは.会社成立前に全部を履行することは不可能である。 しかし.この点については商法第一七二条但書を拡張解釈して、ノウ・ハウの現物出資を認める見解がある。大隅 博士は.商法第一七二条但書によれば、 ﹁現物出資の給付は会社成立前になすことを要するが.登記・登録その他権利の設定または移転をもって第三者に対抗するために必要な行為は、会社成立後になすことをうるものとされ、この
規定は新株発行の場倉も準曇れている︵麺齢﹀.これは、会蔑立前窪人砦会社は存奮ないから、会社
名義による登記登録はできないし、また新株発行の場合には、会社はすでに存在するが、払込期間ーその翌日に新株発行の効力皇ずる︵煙摯麟︶ー髭詮登記・登録筆完了するこあ困難霧合が少なくないこ毒考慮
したものであ.て、この規定は鉱業権のように登録が権利移転の勢発生要件とな・ているもの︵謹雑︶管類推適 用されるものと解しなければならない。そしてこれらの場合には、現物出資者は、請求があれば、登記・登録等のた めに必要な書類を発起人または会社に提出しておくことを要するものと解すべきである。この規定の趣旨から考える と、商法は現物出資の給付は会社成立前または新株発行の効力発行前になすことを原則としているが、しかし出資の 目的物の性質上会社成立前または新株発行の効力発生前に給付できないものについては、その後において履行するこ とを認めているものということができる。したがって、営業の出資の場合における営業上の秘訣の伝授のごときも、 会社成立後または新株発行の効力発生後遅滞なくなせば足りるものと解しなければならない。これと同様に、ノウ・ ハウの出資の場合においても、会社成立前または新株発行の効力発生前には可能な範囲において履行をなし、その他 ︵n︶ の部分はその後履行しうるようになったとき遅滞なく履行すれば足りる﹂ものと解される。 はじめに、ノウ・ハウは現物出資の目的となりうるか否かということから老えることにする。 資本充実の原則から、現物出資の目的となりうるものは、貸借対照表に資産として計上されうるものであるかぎり その種類を問わないと解されている。すなわち、現物出資の目的となりうるものは、動産・不動産・鉱業権・漁業権 ノウ・ハウの法的性質口 九五東 洋 法 巌ず 九六 ・特許権などの権利のほか、営業の秘密・得意先関係・仕入先関係などの経済上重要な価値を有する事実上の財産お よび営業の全部または一部もその目的となりうる。したがって、ノウ・ハウが貸借対照表に資産として計上されうる ものであれば.現物出資の目的となりうることになる。ノウ・ハウの貸借対照表能力︵霧。 。魯旨蔓o︷犀8譜−げ○乏窪 訂一墜8匂 りぎ簿︶について考えるには.ノウ・ハウが貸借対照表に資産として計上されうるための要件.すなわち.金 銭で表示しうる価値を有すること.譲渡が可能であること.および法的保護を受けるものであることの三要件を異備 するものであるか否かを考えればよいことになる。 ノウ・ハウは.前述のように技術援助契約などにおいて.国際的に取引の対象となっており.金銭で表示しうる価 値を有しており.さらに.後述するように.ノウ・ハウの所有者は.それを不正に侵害されたときは損害賠償を請求 することができる。このようにノウ・ハウは.三要件を具備するものであるから、貸借対照表に資産として計上され うる。したがって.ノウ・ハウは現物出資の目的になりうると解する。 次に.現物出資の履行は.金銭出資の払込期日︵会社成立前または新株発行の効力発生前︶に.現物出資の目的た
る財産の全部履行奮なけれ婆ない︵璽蝶悲瞭翁鵡︶が.ノ守ハウの場合髪け簡讐ついて老え
る。 ︵捻︶ この問題点については.前述の大隅博士の商法第一七二条但書を拡張解決される見解に賛同するものである。ノウ ・ハウは技術的知識および経験であり、無形の存在であるが.文書、図型等の有形物となって存在しているときは、 会社成立前に履行することが可能である。しかし、工場に技術者を派遣し、実施について、技術指導を要するときは、会社成立前に全部を履行することは不可能である。商法は第一七二条但し書において、登記・登録その他権利の 設定または移転をもって第三者に対抗するために必要な行為は、会社成立後になしてもさし支えない旨規定してい る。また、営業上の秘訣の伝授、得意先の紹介等も会社成立後遅滞なく履行すればよいと解されている。ノウ・ハウ も技術者を工場に派遣し、実施について技術指導を要するような場合には、その性質上、会社成立前に全部を履行す ることは不可能であるから、会社成立後遅滞なく履行すればよいとおもう。商法第一七二条但し書が適用される場合 でも、資本充実の原則の要請から、登記・登録の手続をとるために必要な書類は、発起人総代に提出することを要す ると解されている。これと同様に、無形のノウ・ハウの場合にも、会社成立後発起人から請求があったときは、いつ でも技術指導ができるように用意しておかなければならない。 第二の問題として、長谷部教授は、ノウ・ハウの評価がきわめて困難であることを指摘される。すなわち、ノウ・ ハウは技術上の秘訣であるから、必然的に外部に対して秘密とされるものである。したがって、これを現物出資とし て出資する際にも、その秘密は会社︵設立申の会社︶以外の者に対し厳格に守られることを要請する。ここに、ノウ ・ハウの出資者は秘密の漏洩を恐れ、検査役の現物出資の調査に際しても関係設計図などの全部を提出したがらない ︵稔︶ から検査役がこれを知得し、これを財産的に評価すること自体きわめて困難であると指摘される。 たしかに、指摘されるようにノウ・ハウは技術上の知識および経験であり、秘密のものであるからその評価は困難 である。特許権者は、業として特許発嬰警的箋施する権型有する︵辮雑第︶が、ノウ・ハウは、その秘密が 保持されている間のみ価値を有し、競争関係にある他の企業よりも優位な地位を占めるものであり、これが公表きれ ノウ・ハウの法的性質口 九七
東洋法学 九八
ると、経済価値はなくなる。したがって.出資者は秘密の漏洩をおそれて検査のときに詳細な開示をしないから、検 査役は不十分な関係資料によって調査することになる。ノウ・ハウの無体財産の性質上その評価が困難であり、場合 によっては.会社成立役に価値のないことがわかることもあろう。このように.ノウ・ハウの評価は困難であるが. このようなことは.特許権.商標権等についてもいえることである。ノウ・ハウの評価が困難ということは.その本 来有する特質の裏返しともいえるわけである。評傭が困難ということは、ノウ・ハウが現物出資の懲的となりうるこ ︵巖︶ とを否定する理欝にはならない。 現物出資の目的たる財産を過大に評価することは.資本の充実を害し会社債権者のみならず.金銭出資をした他の株主窓害す楚た馨響・商法は・叢設立蓄ε垂款無響記載雲叉罐灘嶽︶奪.現惣
資をなしうる者箋起人康害てあ久瀬纏︶ぎた、厳重な検査墨け逢毒案している︵罐謹嚢﹀.
の ノウ・ハウの保護について考えることにする。ノウ・ハウの所有者は.ノウ・ハウが不止な手段によって侵害 きれた場合に法律上保護をうけることができるのであろうか。 ノウ・ハウの保護は.特許制度のアンチ・テーゼであるから.ノウ・ハウの保護を広く認めると.発明の公開を奨 ︵欝︶ 励する特許制度の意義が失われ特許制度が掘り崩きれることになるとしてノウ・ハウの保護に批判的見解がある。ま たノウ・ハウ保護の問題は.いかに保護するかよりは.むしろいかに特許制度と調和させて保護するかに重点が置か ︵絡︶ れているとの見解があるが、紋谷助教授の述べられるように、ノウ・ハウの保護は、究極においては特許制度との関 係において検討されなくてはならないが.それだからといって、競争秩序を乱す行為を放任しておいてよいという理︵葺︶ 由はないし、また両者は並存関係にあるのであって、選択的関係にあるのではないと解すべきであろう。 ノウ・ハウの保護の必要性について、ノウ・ハウは競業上重要な財産的価値あるものであると同時に、高度に発達 した現在の資本主義機構の下においては、それ自体一種の商品として移転している。しかして、この価値を支えるも のはひとえにその秘密性であり、この秘密性の破壊行為は、ある場合には所有権の侵害行為にもまして、競業活動上 ︵娼︶ および流通機構上致命的な結果を招来するといわれており、また、ノウ・ハウはその所有者にとっては重要な経済的 価値を有する財産であるから、その秘密の保持につき重大な利益の存することはいうまでもなく、それだけに、その 者と競争関係にある企業にとっては、そのノウ・ハウを手に入れたいという強い欲求がある。その結果、不正な手段 によるノウ・ハウの侵害行為が行われる。このような場合にノウ・ハウを法的に保護することの必要性があると主張 ︵鴛︶ きれている。 このようにノウ・ハウは保護することが必要である。そこでノウ・ハウ保護に関する国際商業会議所決議︵ぎ§− 墨ぎ醤一〇富導び霞無9営臼Φ種8植男。ω○﹃鉱oP即○富&99図蓉毒き類○壌︶は企業が、他の企業の秘密ノウ・ハウ ︵ωΦR9犀8≦ふo毒︶をその同意なしに使用︵蕊Φ︶すること、漏洩︵鎌毒蒔①︶すること、譲渡︵霞き。 。︷R︶することは 不法であるとし、また、知的財産保護国際合同事務局︵ω●H罰φHしω畦$琵ぎ富讐呂象欝図冨寒討竃霞回鋤鷲? 富&霞留﹃冥○鷲蚕傷凶導亀9疹亀。︶が作成した﹁発明に関する発展途上国のための模範法︵霞&色ζ妻︷霞U? ︿Φ一〇胤おO霊導円奮9ぎ器葺δ霧︶﹂も、 ノウ・ハウの所有者の同意なくして、その使用、開示︵島毘8畦Φ︶また は伝達︵8§q欝置︶は不婆みなす旨規定している︵踏罐鱗︶. ノウ・ハウの法的性質口 九九
東洋法学 一〇〇
さらに、アメリカにおける多数の判例によって確立された原則を集約した不法行為法リストメント︵菊①。 。婁①簿Φ簿 無跨⑲ζ≦無↓○誘︶は、第七五七条に﹁他入のトレード・シークレッツを特権︵鷲三一膿Φ︶なく開示または使用 する者は.次の場合にその他人に対して責任を負う。③不正な手段︵薮鷲ε爾鷺舞器︶によって発見したとき.㈲誰・ の者の開示または使用が.その者に秘密を開示するときに当該他人がその者に課した信頼義務違反となるとき、⑥そ の者が.第三者からその秘密をそれが秘密であり.かつ第三者が不正な手段によってそれを発見した.または.その 第三者によ蒸開示がその第三者の当該他入に対する義務違反となる事実の認識︵蓉欝鋤織静齢鑓纂韓︶で知得したと き.その者が.その秘密をそれが秘密であり.かつその者に対する開示が錯誤によってなきれたという事実の認識を もって知得したとき﹂と規定して.ノウ・ハウを保護している、 英米においてはノウ・ハウの侵害に対して.損害賠償請求権と差止請求権を認めているが.わが園の判例は差止 ︵20︶ 請求権を否定している。損害賠償講求権を認めることについては間題がない。判例はノウ・ハウが権利︵無体財産権 であるか.債権であるかを問わず︶的なものとして第三者にも強制的にこれを認めさせるだけの効力を法律が許容し ているとまでは現在のところ解しえないとして差止請求権を否定している。 差止請求権の問題について舟橋教授は、妨害排除講求権についても.不法行為の成立についてその違法性が.被侵 害利益の種類、性質と.侵害行為の態様との両面から相関的に判定されるべきであるとされる我妻説を発展させて. 妨害排除請求権にもこれと同様の老え方にしたがうべきであるとされる。右の相関的判断について、不法行為の場合 にはその効果として、いわば抽象的な代替性の強い金銭支払義務を生ずるにすぎないから、そこでは賠償支払を認めることによって生ずる賠償権利者、賠償義務者の双方の事情は何ら考慮しないですむのに反し、妨害排除の場合に は、その効果として具体的な現状回復の事実状態を生じ、それがまた、当事者双方によって新たに重大な利害関係を 生ずることになるわけであるから、ただ不法行為の場合のように、単に被害利益の強固さの程度と、侵害行為の悪性 の度合いとが相関的に考慮されるのみならず、そのうえにさらに妨害排除の実現を認めることによって生ずべき侵害 者の犠牲の程度と、妨害排除を否認することによって生ずべき被害者の不利益の程度等も相関的に考慮して、その存 ︵瓢︶ 否を決定しようと述べられる。 この理論はノウ・ハウの侵害の場合にも妥当する。したがって、ノウ・ハウの侵害についても差止請求権を認める ことができるし、また認めることが必要である。ノウ・ハウが侵害きれた場合、過去の損害に対しては不法行為によ る損害の賠償を認めて保護しても、これはあくまでも事後の救済であり、損害の漿補であるにすぎない。侵害され技 術が開示されてから損害の償いとしてのみ損害賠償を請求するのでは完全な保護とはいえない。むしろ侵害が現にな きれている侵害行為を阻止することによリノゥ・ハゥの保護は完全である。ノウ・ハウは、公開されないで秘密のま ま保持されるζとを生命とし、公知公用となったときに消滅するからである。現になされている侵害行為を阻止しな いでおいて、侵害が大きくなってから損害賠償を請求することは社会的利益を否定することになる。 ⇔ 前述のように英米においてノウ・ハウを保護する主な根拠として、財産理論︵鷲ε費蔓夢8蔓︶と信頼関係理 論︵8鷺箆①濤芭箆象δ議爵8蔓︶とがある。古くはアイディアに対しても財産権を認めていたが、U¢勺o簿8 2①ヨ窪議男o毛血段Oρ︿.竃餌ω一昏傷事件におけるホームズで判事の信頼義務違反の理論によって保護を与えてから ノウ・ハウの法的性質口 一〇一