経済の寡 占化 と不安定性 (II)
―シ ミュレー ションによる分析 一
近 藤 学 I 問 題 II 統 合型寡 占経済モデル EI 長 期均衡成長経路 と黄金均衡成長経路 W 黄 金均衡成長経路の数値例 V 黄 金均衡成長経路の意義 とその規定因 WI シ ミュレー ションの準備 と5つ のシナ リオ (以下,本 号) VEl シミュレー ションの結果 VI シ ミュ レー シ ョンの準備 と 5つ の シナ リオ 我 々 の モデ ルにお いては,経 済 の寡 占化 は さ しあた り次 の 3つ のパ ラメー タ の変化 で特徴づ け られ る。 (i)要 求価格 反応係数 αl(i=1,2,3)の 増加 (il)需 給 反応係数 %(1=1,2,3)の 低 下 (lil)蓄積 反応係 数 ゑ (1=1,2)の 低下 ただ し,よ り現実 的 な仮定 として,労 働 者 の賃金率 wに 対す る要求価格 反応 係数 亀お よび賃金率 に対す る需給反応係数 73は,資 本家 の それ よ り常 に半分 の 大 きさ を取 る もの と想定 す る。 これ らの係数 は相 互 にバ ラバ ラに変化 す るの ではな く,経 済過程 の構造変化 に規定 されつつ,互 いに関連性 を もって,次 第に変化 してゆ くもの と考 え られ る。 そ こ で,具 体 的 に は 次 の 5つ シナ リオ を想 定 し,そ れ ぞれ 完 全 競 争 型(C),低 度寡 占型 (OL),中 度寡 占型 (OM),高 度寡 占型 (OH),独 占型 (M)
彦根論議 第 306号 α l,2 %,2 ゑ ,2 2 3 殆 完 全 競 争 型 ( C ) 低 度 寡 占 型 ( O L ) 中 度 寡 占 型 ( O M ) 高 度 寡 占 型 ( O H ) 独 占 型 ( M ) 0.00 0.04 0,03 0.01 0.03 0,03 0.02 0.02 0,02 0.03 0.01 0,01 0.04 0.00 0。01 0,00 0.02 0.005 0.015 0,01 0.01 0.015 0,005 0.02 0。00 す なわち,経 済が競争的であればそれだけ,企 業の価格支配力 (αl)は 弱 く, 代 わって市場の需給関係の影響力 (γ)が強 く価格 を支配す る。 また,産 業構造 の重化学工業化 に伴 う固定設備 の増大,最 低必要資本量の増大,独 占利潤によ る内部留保の増大等は短期的な観″点か らの投資態度 を慎重化 竹 の低下)さ せ 1 4 ) る。 次 ぎに,論 ″点を明確 にす るため,初 期 の価格体 系 は資本家 お よび労働 者 の満 足 の い く状 態,す なわ ち,欧 の=pや,R(の=RK=RNの 状 態 にあ り,稼 働率 も均衡 稼 働率 dやが実現 して い る状 態,す なわ ち dO=dⅢ =1(i=1,2)を 出発 ″点に と る。 さ らに, シ ぞ れ 次 ぎの よ
ミユレーションを終結させ るために,稼 働率および雇用率にそれ
うに具体的な上限と下限を設定 した。
d m i n = 0 . 5 ≦ d O ≦ d m a x = 2 ( 1 = 1 , 2 ) u m i n = 0 , 5 ≦ u ( t ) ≦u m a x = 1 . 5 (52) (53) また, (a) (b) ( C ) 資本 蓄積率 の初期 条件 につ いては次 の 4つ のケー ス を想定 した。 gl(0)=0.08>n, g2(0)=0.08>n (好況) glΦ)=0.06<n,gス の=0.08>n (消 費財 部 門の優 先 的発展) gO=0.06<n,g家 ぃ=0.06<n (不 況) 14)北 原氏は,独 占企業の投資行動が 「過剰能力」の発生や 旧式設備 の廃菜 に ともな う損失 回避の ため に慎重化す る可能性 とともに,「巨大規模 の新生産物 の開拓 =新 生産部 門の形 成」による独 占段階におけ る突発的発展の可能性 について論議 されている。 こうした長期 的 な観点か らの投資行動 の変化 につ いては本稿 では考慮 されていない。北原勇 『独 占資本 主義の理論』有斐閣,1997年 ,第 二編参照。 15)制 約条件 (52)は結果的に以下のシ ミュレー ションでは有効でな く,(53)のみが有効 である。経済の寡占化 と不安定性(II) 103 (d)glKOl=0.08>n,gス の=0,06<n (生 産財部 門の優 先 的発 展) 以上 で,経 済 の寡 占化 が経済の不安 定性 に どの様 に影響 す るか を検討す るこ と 力章できる。 V H シ ミュ レーシ ョンの結果 完全競争型か ら独 占型にいたる 5 つ シ ミュレー ションの結果は以下の とお り である。 <特 徴 :完全競争型> (1)実 質賃金率 Rは 好況時 (a)に 下落 し,不 況時 (C)に 上昇 している。 (b, d)の ケー スでは,Iilol ttIスの=140ゆ え, と もに初期 の雇用率 政り,稼 働 率 dlolは均衡水準 とな り,資 本蓄積の進展 とともに両部 門の稼働率 は最初互 い に反対方向に動 く (ケー ス (b)で は 仇が上昇 し らが下落,ケ ース (d)で は 仇が下落 し めが上昇す る)が ,両 ケース とも全体 として好況過程に入 り,最 終 的には稼働率 は上昇す る。 ただ し,Rは ,(b)の ケースでは上昇 し,(d)の 1.<完 全競 争型 αl,2=0,9/1,2=0・04,ゑ ,2=0・03;亀 =0,佐 =0。02> タ イ プ C ( a ) (b) (d) 停 止 時 期
停 止 原 因 uが 、上lFR uが 上 限 u が 下 限 uが 上 限
h 0 1 ↑ 1 . 0 4 0 1 ↓ 0,98 a ↑ 1.84 ↑ 1.97 ↓ 0.59 ↑ 1.8 仇 ↑ 1.84 ↑ 1.91 ↓ 0.59 ↑ 1.82 u ↑ 1.64 ↑ 1.78 ↓ 0.45 ↑ 1.65 R ↓ 0。49997 ↑ 0。5014 ↑ 0.5002 ↓ 0。4982 pl ↑ 10.07 ↑ 10,12 ↓ 9.96 ↑ 10.05 p2 ↑ 10,07 ↑ 10.06 ↓ 9.96 ↑ 10。11 W ↑ 5.03 ↑ 5,04 ↓ 4.98 ↑ 5,04 / r ↓ 0.7404 ↑ 0。7412 ↑ 0.7412 ↓ 0.7396
104 彦 根論叢 第 306号 ケー スでは下落す る。 その理 由は,(b)で は p2が らの低 下 に よ リー 旦下 落 し, 最 終 的 に は上 昇 す るが,そ の増大 の テ ンポが wの 増 大 に遅 れ るため で あ る。 (d)で は,あ の上昇 に よ り,p2の 上昇 が wの 上 昇 を上 回 るため Rは 低 下 す る。初 期 条 件 を,Illoltt 120<140と設 定 して み る と (例 え ば 110=60,120= 75),(b,d)は 全体 としては不況過程 とな り, と もに Rは 上昇 す る。 (2)資 本 ス トック編成 hは ,両 部 門の資本 蓄積率 が均 等 の場合 (a, c)に は均 等発展 が生 じる。消 費財部 門の成長 力が高 い時 (b)に は,hは 一 旦上昇 し,下 落 に転 じるが,最 終 的 には上昇 す る。 す なわ ち,消 費財部 門の優 先 的発 展 が生 じる。逆 に,生 産財部 門の成長力 が高 い時 (d)に は,hは 一 旦下 落 し, 上昇 に転 じるが,最 終 的 には最初 の水準 よ り下落す る。す なわ ち,生 産財部 門 の優 先的発 展 が生 じる。 (図 2(d)参 照 ) (3)労 働分 配率 μは,好 況時 (a, d)に 下 落 し,不 況時 (C)に 上昇す る。 ただ し,消 費財部 門の成長 力が高 い時 (b)に は上昇 す る。 (4)価 格 お よび賃金率 は好 況 時 (a, b, d)に は上昇 し,不 況時 (C)に は下落す る。 図 2 ( a ) 9 1 m i n = 0 0 m a x = 1 2 3 9 8 6
g2min‐ 08 max‐ 128986 u min=914286 max=164
経済の寡 占化 と不安定性 (II) <特 徴 :低 度寡 占型> (1)実 質賃金率 Rの 変動 パ ター ンは完全競 争型 と同一 であ る。 (2)資 本 ス トック編成 hの 変動 パ ター ンは完全競 争型 と同一 であ る。 g2min=06 max=1419 2.<低 度寡 占型 αl,2=0・01,9/1,2=0・03,n,2=0,03;α 3=0・005,9/3=0・015> タ イ`プOL (b) (d) 停 止 時 期
停 止 原 因 u力 【上 FR uが 上1‖】「t uが
下 限 uが _上 限 h 0 1.00 ↑ 1.04 0 1,00 ↓ 0 . 9 8 仇 ↑ 1.84 ↑ 1.95 ↓ 0.59 ↑ 1.83 仇 ↑ 1984 ↑ 1.88 ↓ 0.59 ↑ 1985 u ↑ 1.64 ↑ 1.75 ↓ 0.45 ↑ 1.68 R ↓ 0。4998 ↑ 0.501 ↑ 0.5002 ↓ 0.499 pl ↑ 10.05 ↑ 10.09 ↓ 9 , 9 8 ↑ 10.04 p2 ↑ 10,05 ↑ 10.04 ↓ 9.98 ↑ 10,08 W ↑ 5 . 0 2 ↑ 5.03 ↓ 4.99 ↑ 5.03 μ ↓ 0。7404 ↑ 0.7411 ↑ 0。7410 ↓ 0,7399
106 彦 根論叢 第 306号 (3)労 働分 配率 μ の変動パ ター ンは完全競争型 と同一 であ る。 (4)価 格 お よび賃金率 の変動パ ター ンは完全競争型 と同一 であ る。 図 3 ( d ) p min‐99521 max‐ 1 9 1 m i n = o 7 2 2 m a x = 1 1 1 5 7 g2min=06 maxⅢ 144 3.<中 度寡 占型 αl,2=0・02,%,2=0,02,ゑ ,2=0,02;23=0・ 01,%=0.01> タ イプOM (a) (b) (d) 停 止 時 期 7 停 止 原 因 uが 上 限 u が 上 限 u が 下 限 u が 上 限 h 0 1.00 ↑ 1.04 0 1.00 ↑ 1.01 仇 ↑ 1.82 ↑ 1.68 ↓ 0.61 ↑ 1.7 仇 ↑ 1.82 ↑ 1.63 ↓ 0。61 ↑ 1.68 u ↑ 1.7 ↑ 1.52 ↓ 0。46 ↑ 1 . 5 8 R ↓ 0.4999 ↑ 0.501 ↑ 0.5001 ↓ 0.499 pl ↑ 10.05 ↑ 10.07 ↓ 9.98 ↑ 10,03 p2 ↑ 10.05 ↑ 10,02 ↓ 9.98 ↑ 10.07 W ↑ 5.02 ↑ 5,02 ↓ 4 , 9 9 ↑ 5.03 μ ↓ 0.7406 ↑ 0.7414 ↑ 0,7409 ↓ 0.7402
経済の寡占化 と不安定性(II) 107 <特 徴 :中 度寡 占型> (1)実 質賃金率 Rの 変動パ ター ンは完全競争型 と同一 であ る。 (2)資 本 ス トック編成 hは ,消 費財部 門の成長力が高 い時 (b)に は,完 全 競 争 型 と同一 であ るが,生 産財部 門の成長力が高 い時 (d)に は,一 旦下落す るが,最 終 的 には最初 の水準 よ り上昇 す る。す なわ ち, ど ちらの場合 も消費財 部 門の優 先 的発展 が生 じる。 (図 4(d)参 照 ) (3)労 働分 配率 μ の変動 パ ター ンは完全競争型 と同一 であ る。 (4)価 格 お よび賃金率 の変動パ ター ンは完全競争型 と同一 であ る。 図 4 ( d ) p min_995353 max=1 u min=3 max=158 4.<高 度寡 占型 αl,2=0・03,挽 ,2=0,01,れ ,2=0・01;23=0・ 015,%=0.005> g l m i n = o 7 1 4 m a x = l o 5 2 h min=858571 max=1008 92 min=06 max=132 タ イ プ OH (b) (d) 停 止 時 期 停 止 原 因 uが _上 限 u が 上 限 u が 下 限 uが 上 1限 h 0 1,00 ↓ 0.98 0 1.00 ↑ 1 . 0 7 仇 ↑ 1,62 ↑ 1.51 ↓ 0 . 6 8 ↑ 1.62 あ ↑ 1.62 ↑ 1.56 ↓ 0,68 ↑ 1.51 u ↑ 1.61 ↑ 1.53 ↓ 0.5 ↑ 1.6
彦根論叢 第 306号 <特 徴 :高度寡 占型> (1)実 質賃金率 の Rの 変動パ ター ンは変化 し,好 況時 (a)に 上昇す るよう になる。 (図5(a)参 照) (2)資 本 ス トック編成 hの 変動パ ター ンは変化 し,消 費財部 門の成長力が高 い時 (b)に は,一 旦上昇す るが,最 終的には下落す る。すなわち,生 産財部 門の優先的発展が生 じる。逆 に,生 産財部 門の成長力が高い時 (d)に は,中 度寡 占型 と同一 である。すなわち,消費財部 門の優先的発展が生 じる。(図5(b) 参照) (3)労 働分配率 μの変動パ ター ンは変化 し,好 不況 に関わ らず,上 昇す る (a, b, C)か または一定 (d)に 留 まる。 (4)価 格 お よび賃金率 の変動パ ター ンは完全競争型 と同一 である。 図 5 ( a ) p min_l max=1 R ↑ 0.5002 ↑ 0,501 ↑ 0.50007 ↓ 0,499 pI ↑ 10.03 ↑ 10.06 ↓ 9.99 ↑ 10.02 p2 ↑ 10,03 ↑ 10.01 ↓ 9.99 ↑ 10.06 W ↑ 5,02 ↑ 5.02 ↓ 4.99 ↑ 5.02 μ ↑ 0.7409 ↑ 0.7417 ↑ 0.7408 0 0,7407 0 1 m i n = 0 8 m a x = 1 1 3 2 9 9
9 1 m i n ‐m m a x _ 1 1 9 経済の寡 占化 と不安定性 (II) 図 5 ( b ) p min=l max‐ 100449 g2min‐ 0719 max‐ 0942
5.<独
占型 αl,2=0・04,9/1,2=0,n,2=0,01;亀 =0.02,9/3=0>
< 特 徴 : 独 占型> ( 1 ) 実 質 賃 金率 R の 変 動 パ ター ンは変化 し,好 不況 に関 わ らず一定 に留 ま る。 h min‐ 975596 max=1.23 R min=5 max=501403 タ イ プ M (a) (b) (d) 停 止 時 期 停 止 原 因 uが 上 限 u が 上 限 u が 下 限 uが _上 限 h 0 1 ↓ 0,95 0 1 ↑ 1,05 あ ↑ 1.62 ↑ 1.5 ↓ 0,68 ↑ 1.58 あ ↑ 1.62 ↑ 1.58 ↓ 0.68 ↑ 1.5 u ↑ 1.61 ↑ 1.56 ↓ 0.5 ↑ 1.56 R 0 0。 5 0 0。 5 0 0.5 0 0.5 pl 0 10 0 10 0 10 0 10 p2 0 10 0 10 0 10 0 10 W 0 5 0 5 0 5 0 5 μ 0 0.7407 0 0.7407 0 0,7407 0 0,7407110 彦 根論議 第 306号 (2)資 本 ス トック編成 hの 変動パ ター ンは,高 度寡 占型 と同一 であ る。 (3)労 働 分 配率 μ の変動 パ ター ンは変化 し,好 不 況 に関 わ らず一 定 に留 ま る。 (4)価 格 お よび賃 金率 の変動パ ター ンは変化 し,好 不況 に関 わ らず一定 に留 まる。 図 6 ( d ) p m i n _ l m a x ‐ 1 6 . < 全 体 的特徴 > 次 に,こ れ ら 5つ の タイプ全体 を通 してみ る と,経 済の寡 占化 の及ぼす影響 につ いて,次 の特徴 が読 み取 れ る。 (1)ど の タイプであろ うとも,glω)=gスの=nで なければ体系は黄金均衡成長 経路の上方か または下方に累積的にHTL離してゆ く。すなわち不安定である。 (2)ど の タイプであろ うとも,glω)=g家の手nか つ gl。)十gスの<2nの 場合 には 経済は下方HfL離す る。 それ以外の場合 には経済は上方にHTL離す る。 (図7参 照) (3)資 本蓄積率 が両部 門で均等 な場合 には,価 格 (pl,p2),稼 働率 (仇, a),資 本 ス トック増加率,生 産増加率 も均等な動 きをす る。従 って相対価格 p =p1/p2,資 本 ス トック編成 h=K2/Kl,生 産編成 え=x2/Xlは 定 に留 ま る。 (4)資 本蓄積率が両部 門で不均等な場合 には,相 対価格 p,資 本ス トック編成 0 1 m i n = 0 7 1 3 m a x ‐0 9 5 3 h min=813301 max‐ 1053 g2min‐ 06 max=1199
h , 生 産 編成 え も不均 等性 な動 きをす る。 ただ し,独 占型の場合 は相対価格 pは 一 定 に留 まる。 (5)好 況 であれ,不 況 であれ,そ の上 限 または下 限に到達 す る期 間は長期化 す る。好況 (a)の 場合 には,そ の期 間は 5→ 5→ 7→ 11→11と な り,不 況 (C)の 場 合 で は,3→ 3→4→6→6と な って い る。 (b, d)の 場合 も同様 であ る。 (6)上 限 ない し下 限到達 時の稼働率 が 経済の寡 占化 と不安定性 (II) 図 7 領城 a∼d内 部は下方不均衝 好 況 時 (a)に は次 第に低 下 し (仇お よび 領 域 e∼hは 上方不均衝 らは■84→ ■84→ ■82→ ■62→ ■6の ,不 盛 紛 耀 録】益 皇鴇 義 展 況 時 (C)に は次 第に上昇 (仇お よび 働 は0.59→0.59→0。61→0。68→0.68)し てい る。 この ため,稼 働率 の変動係数 は 両 部 門 と も減 少 して い る。 (仇の 変 動 係 数 は0,360→0,359→0。337→0,290→ 0。287,あ の変動係数 は0.357→0。356→0.335→0.286→0。287) (7)経 済 の寡 占化 に よ り,発 展 の不均 等性 は強 まる傾 向が あ る。実 際,資 本 ス トク編成 hの 変動係数 は寡 占化 に よ り増大 してい る。(hの 変動係数 は0.0217 →0.0217→0,0162→0.0338→0。0353とな り,中 度寡 占のケー ス を除いて増大 し て い る) (8)実 質賃金率 Rは ,お おむね好況時 (a, d)に 下 落 し,不 況時 (C)に 上 昇 して い る と言 え るが,経 済の寡 占化 とともに,そ の変動幅 は縮小 し,独 占 17)標 準偏差 を平均 で除 した値。 18)不 均等性が強 まる理 由は,価 格支配力の増大 によ り物価が高位安定 し,投 資の増大が実 質賃金率 の低下や労働分配率 の低下 を引 き起 こしに くくな り,そ の結果,消 費財生産部門 の生産変動が相対的に低位安定化す る反面,生 産財部 門の成長が従来 と同様 な型の投資行 動 に よ り行 われ るため であ る。実際,δlの変動係数の び2の変動係数に対す る比率 は,完 全 競争型 と高度寡 占型 を比較すれば1.00840→ 1.013986と 増大 している。すなわち,相 対的に は生産財部 門の方が消費財部 門に比べ て変動が大 き くなる傾 向が読み取れ る。 (1.00840→ 1.00843→ 1.00597→ 1.013986→ 1) n O
112 彦 根論叢 第 306号 型 では不変 とな る。実 際,実 質賃金率 の変動係数 は次 第に小 さ くなってい る。 (0.00230→ 0.00142→ 0,00142→ 0.00141→ 0) (9)財 の価格 は,好 況時 に上昇 し,不 況時 に下落 してい る。 しか し,寡 占化 に よ り,そ の変動係数 は小 さ くなってい る。(plの変動係数 は,0.00576→ 0.00392 →0.00333→ 0.00249→ 0)ま た,価 格 の下方硬 直化 がみ られ る。例 えば,不 況期 (C)の plの 水 準 は,9,96→ →9,98→ 9.98→ 9.99→ 10と 上昇 して い る。p2も 同 様 。 (10)賃 金率 wは ,好 況時 (a, b, d)に 上昇 し,不 況時 (C)に 下落 して い る。 しか し,寡 占化 に よ り,そ の変動係数 は小 さ くなってい る。(wの 変動係 数 は0,00495→ 0,00327→ 0.00299→ 0.00259→ 0)ま た,賃 金率 の下方硬 直化 がみ られ る。不況期 の wの 水準 は,4.98→ 4.99→ 4.99→ 4.99→ 5と微 増。 (11)労 働分 配率 μ はおおむね好況時 に下落 し,不 況時 に上昇す る傾 向 をもつ が,寡 占化 とともにそのパ ター ンは変化 し,上 昇傾 向が強 まる。 また,そ の変 動係数 は小 さ くなってい る。(労働分 配率 の変動係数 は;0.000896→ 0.000655→ 0.000591→ 0.000534→ 0) す なわ ち,経 済構 造 の寡 占化 は,不 安 定性 を除却 は しないが,景 気循環 の形 態 に大 きな影響 を及ぼす。具体 的 には,循 環 周期 お よび不況局面 の長期化,数 量変数 の振副 の縮小化 ない し停 滞化,天 丼感 の ない景気拡大,価 格や賃金率 の 下 方硬 直化,労 働分 配率 の安 定化,部 門問発展 の不均 等性 の拡大, と い った一 般 的特徴 を もつ こ とが分 か る。特 に,経 済の寡 占化 を雇用 問題 の側面か らみれ ば,技 術 進歩 に よ り資本構成 の高度化や労働 投 入係数 の減少 に よ り,同 一 の生 産水 準 に対 す る雇用 量 は減 少 す る。 また資本 の生産性 aの 上昇 に よ り,同 一水 準 の有効 需要 に対 す る稼働 率 は相対 的 に低 下す る。 さ らに,蓄 積 反応係数 れの 低 下 に よ る短期 的意思決定 に よる投 資の慎重化傾 向 との相乗効 果 に よ り,雇 用 問題 は (特に不 況期 には)一 層深刻化 ・長期化 す る もの と考 え られ る。他 方, 先 進工 業 国にみ られ るよ うな,労 働供 給増加率 nの 低 下 は雇用 問題 の深刻化 を 19)吉 富勝 『ア メ リカの大恐慌』, 日本評論社,1965,第 5章 ,柴 田徳太郎 『大恐慌 と現代 資 本主義』,東 洋経済新報社,1996,第 4章 など。
経済の寡占化 と不安定性(II) 113 緩和 す る一要 因 として重要 な関連 を もつ こ とが分 か る。 また,有 効 需要 の側 面 か らみれば,寡 占経済が収穫逓増 型の生産 技術 を持つ と仮定す る と,生 産規模 の増大 とともに さ らな る投 資需要 の拡大 が必要 とされ,ま た不ヤ醐 におけ る寡 占価格 の相対 的高水準→消 費需要 の一 層の減退 とい うルー トとも運動 して,い わゆ る 「生産 と消 費の矛盾」が よ リー 層構造化 し,先 鋭化す ると考 えられ る。 経 済構造 の寡 占化 に よ り諸変数 の動 きが どの様 に変 わ るか, を (b)の 場合 (gl(。)=0.06<n, g2(0)=0.08>n)と (d)の 場合 (gl(。)=0.08>n, g2(0)=0。06 <n)の 上 限 までの最小 到達期 間 (前者 は17期,後 者 は18期)に つ いて,諸 変数 の絶対的な大 きさが相互比較可能 なようにグラフ化 してみた ものが図 8で ある。 Cは 完全競争のケース,Mは 独 占のケー スである。み られ るように,経 済の寡 占化 とともに,数 量変数は明白な停滞的傾 向を見せ,価 格変数は下方硬直的傾 向 を見せ ていること,お よび資本ス トック編成 hで みた不均等性の増大が確認 され る。 なお,図 中の最大値 (max)と 最小値 (min)は いずれ も上限到達時に おけ る 5つ のケー スの中での最大値 と最小値 を表す。 本稿 は,労 使双方の要求が両立す るとい う想定の下に,経 済の寡 占化 を 3つ のパ ラメー タの総体的変化 によって捉 え,そ の影響 をシ ミュレー ションによっ 図 8 ( b ) PERIDO‐17 d e にl m i n = 1 1 7 m a x ‐1 9 7 w m i n ‐5 m a x ‐5 0 4 1 2 20)拙 稿 「不安定性の論理構造」,彦 根論叢第282号,1993,お よび拙稿 「現代国家の介入に ついて」,経 済評論第36巻7号,1987,参 照。 h min=1 0369 max‐ 12305 p l m i n ‐1 0 m a x ‐1 0 1 1 9 2 R min=5 max=501352
彦根論叢 第 306号
PERlDO=18
d e にl m i n ‐9 4 m a X = 1 . 8 3
pl min_9 9914 max‐ lo o456
M 図 8 ( d ) w min=5 max‐50368 て追跡 した。ほぼ従来 よ り寡 占経済の特徴 として理解 されていた一般的特徴 を 提 えることが出来た もの と考 える。最後に,本 稿 で十分検討す ることの出来な か った点 としては, まず,寡 占化に伴 う企業の投資行動の変化があげられる。 我々のモデルでは,寡 占化の一環 として,短 期的な需要 =利 潤追求型の投資態 度の慎重化 伍 の低下)を想定 したが,寡 占企業の長期の投資行動,特 に新産業 や新市場の創出に向けて集中的 ・競争的に投資が行われるような場合や, 自己 資本力の増大 を前提 としたエ クイテイ ・ファイナンスを積極的に活用 した革新 投資の集 中的増大等については全 く考慮 されていない。 また,生 産財部門と消 費財部 門の資本家は全 く同等のパ タメー タをもつ と想走 したが,消 費財部門が 生産財部 門に比 してよ り競争的であるとか,両 者の間で価格支配力が異なると いった問題, また技術進歩の影響 も考慮 されていない。 さらに,本 来の寡 占経 済の特徴 とも言 うべ き労資間の要求不両立や スタグフレー ションの発生,国 家 の介入 といった諸問題について も考慮す ることが出来なかった。これらの検討 は機会 を改め て行 いたい。 (了) h min‐314666 max‐ 9835 R min=498239 max‐ 5 ( 1 9 9 6 . 1 2 . 4 )
経済の寡 占化 と不安定性 (II) 115
EconoHlic Monopolizatiom and lnstability:
A Computer SiIIlulation Analysis
Manabu Kondo
The monopolization of econonlic system is one of the most outstanding features in contemporary capitalism.But in the previ‐ ous studies it had been subdivided into two parts,such as rnicro and macro econonlic aspects,and these aspects had been dealt as if they 、vere unrelated each other.Attore over,though monopolization proc‐ ess involves some quality or gradational changes in it, these fea‐ tures had not been taken into consideration satisfactorily.
This paper has two objectivesi the first is to build the model 、vhich can represent a transitional process from perfect competi‐ tion economy to monopolistic one and which can also include both rnicro and macro aspects.After that,we discuss the existence of "Golden Balanced Gro、 vth Path" and its irnplication to actual growth path.The above is discussed in part one.
The second objective of this paper is to shed light on the relation‐ ship bet、veen econornic monopolization and instability.Using corn‐ puter sirnulation method,、 ve investigate how the instabilities are effected by econonlic monopollzation.
From these sirnulations 、 ve reprOduce the econornic features 、vhich had been indicated in the past literatures concerning rnonop‐ ollzation such as ''change of business cycle'', "prolonged stagna‐ tion'ち "proSperity 、vithout lively expansion" and "ill― balanced growth".13ut in this paper we do not discuss the econoHlic fluctua‐ tion peculiar tO monopollstic economy such as''stagflation". The above is discussed in part two.