NDC 547.65
合成開ロレーダ(SAR)によるターゲットの
運動パラメータ推定法
中 村 重 之* 山 根 國 義** 松 尾 優***
(昭和63年8月31日受付)
An Estimation Method for Motion Paramenters of Moving Targets with Synthetic Aperture Radar (SAR)
Sigeyuki NAKAMURA* Kuniyosi YAMANE* * and Masaru MATUO* * *
(Received August 31,1988)
Abstract
A synthetic aperture radar (SAR) is a remote−sensor which can product two−dimensional high resolution images covering the large earth area. As the radar is based on a principle of coherent imaging, the SAR images for moving targets are degraded with smearing and defocusing. This fact suggests the possibility of obtaining the target s mo−
tion from SAR data. lf knowing the target motion, no degrading image can be achieved.
A developed estimation method for the motion paramaters (position and velocity) of the targets from SAR data is described in this paper,
1.はじめに
合成開ロレーダ(SAR)は,24時間・全天候型のリモー トセンサであり,等速移動する航空機などに搭載した小さ な開口のアンテナを用いて等価的に大きな開口のアンテナ を合成することにより,地表面のような静止したターゲッ トを光学センサに劣らない高い分解能で映像化できる。し かしSARでほ,運動しているタ.一ゲッ.ト.の像は,イメー ジシフト・レンジウォーークにより結像位置の狂いを生じ,
またアジマスディフォーカスにより鮮鋭さを失うことが知 られている。このことは,SARデータがターゲットの動 きを反映しており,データを適切に処理すれば,それから タ デットの動きが得られることを示唆している。もし ターゲットの動きを推定することができれば,劣化した画 像を修正できるだけでなく,船舶の海難位置の探索や救助 活動にも役立てることができる。ω
本報告は,このような観点から,SARデータからター ゲットの位置や速度,加速度といった運動パラメータを推 定する方法を提案し,その有効性を数値的に確かめたもの である。更に実用に際して問題となる諸点について検討し,
最後に運動ターゲットの鮮明映像化処理への応用について も触れている。
2.運動ターゲットのSARデータとレンジ圧縮
像②
* 津山工業高等専門学校 ** 京都工芸繊維大学
*** 福井工業大学
任意の方向に,任意の速度で運動する点ターゲットを図 1に示す系のアンテナ#1で観測して得られるSARデー タ(検波処理後の受信ホログラム信号)は時刻tとパルス エコーの遅れ時間τの関数として
h(t, T)= Kexpj[一2kri(t) + ?/ (LETII一 一 r,(t)) 2] (1)
のように表わすことができる。ここに,Kは定数, kは波 数,αは角周波数挿引率,cは光速, r1(t)はアンテナ#1・
ターゲット間の斜距離である。また,SAR信号では,パ ルス継続時間内でのr1(t)の変化は無視できるので, tとτ とを独立変数と見て,r1(t)を, tとτの2次元関数形で示
津山高専紀要第26号(1988)
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図1 SAR観測系
している。図1において,アンテナ#1とターゲットが時 刻t=toでレンジ方向に並ぶとすると, r1(t)は車軸近似 のもとでrl(t) = Rl 一 vr (t 一 to) + t 1(V 一 v.)2+ v,2
(2)
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の曲線(b)は静止ターゲットのレンジ圧縮像であり,両者を 比較すると,零ドップラー時刻のずれがイメージシフトの,
ri方向の分布のずれがレンジウォークの,更に曲率の違い がアジマスディフォv一一カスの要因となっていることがわか
る。
R,
ri
(a)
(b)
と表わせられる。ここに,V。, V,,暇,碕は, t=toにお ける速度および加速度(添え字xはアジマス方向を,rは レンジ方向を表わす),VはSARの移動速度である。ター ゲットが静止している場合,r1(t)は, v。=v,=0,畷=
ar=0を代入して V2
rl(・)=・R・+2R、(・一・・)2 (3)
となる。
式(2)に見られるように,ターゲットまでの斜め距離rl(t)
はターゲットの動きを反映して時間的に変化するが,その 様子は,式(1).のSARデータにレンジ圧縮処理を行なうこ とにより知ることができる。その結果として得られるレン ジ圧縮像は
ho (t, T ) == Kexp [一j2kri (t)] Sp [ri(t) 一 ri] (4)
のように記述できる。ここに,riは滑面のレンジ方向座標,
Sp[]は周波数掃引率によって定まる広がり関数で,そ の広がりが分解能を与える。従ってレンジ圧縮することに より,各時刻での斜め距離rl(t)を分解能の精度で求める ことができる。図2の曲線(a)は,運動ターゲットまでの斜 め距離r1(t)の時間変化を考慮しながら式(4)のレンジ圧縮 像を図示したものであり,これよりレンジ圧縮像は湾曲し
た1次元ゾーンプレートになる.ことがわかる。また同じ図
t
to
図2 レンジ圧縮像(a)運動ターゲット(b)静止ターゲット
3.運動パラメータ推定の基本原理(3)
前池のようにレンジ圧縮像は,レーダ・ターゲット問距 離の時間的変化を表わすもので,そのことを利用すればレ ンジ圧縮像からターゲットの運動パラメータを推定するこ とができる。
今,レンジ圧縮によって得られた.各時刻でのrl(t)と,
アンテナ#1とターゲットがレンジ方向に並ぶ時刻toを式
(2>の関数形に当てはめ,同式右辺の各べき項を計算すれば,
0次と1次項の係数から運動パラメータのうちR1, Vrが 得られる。しかしそのためにはtoを知る必要がある。さら に仮にtoが判っているとしても,このままでは残りの運動 パラメータであるV.,q, a,を推定することができない。
そこでtoと,すべての運動パラメータを推定するため,図 1のよ.うにアンテナ#1と同一軌道上で,それより間隔B だけ後方にもう一つのアンテナ#2を並べ,両アンテナを 交互に切り替えながらデータを記録する。得られた2組の SARデータにそれぞれレンジ圧縮を施し,両アンテナか
らターゲットまでの各時刻での距離r、(t),r2(t)を検出す る。このときア.ンテナ#2からターゲットまでの距離r2(t)
は,近軸近似のもとで
r2(t) [= R2+ tt [一21B(V−v.)+ Riv.1 (t 一 to)
(5)
十{(V−vx)2十v,2十Bclx−Ricl,}(t−to)2]
で与えられる。ここにR22=R ]2+B2である。
式(2)と式(5)よりr1(t)とr2(t)の2江差をとると
r2(t)2一 ri(t)2= B2 一 2B (V v.) (t 一 to) 十 Ba. (t 一 to)2
〈6)
合成開戸レr一ダ(SAR)によるターゲットの運動パラメータ推定法 中村・山根・松尾
なる関係が得られる。従ってレンジ圧縮によって得られる 観測値rl(t)とr2(t)の2乗差を各時刻ごとに計算:し,その 値がB2となる時刻をtoとすればよい。しかしこの場合,
分解能の有限性による観測値rl(t), r2(t)の検出誤差がto の推定精度を大きく左右する。今像再生処理を数値的に行 なうものとして離散フーリエ変換によるレンジ圧縮を考え ると,r1(t), r2(t)は,分解能ごとに量子化され図3の実 線に示すように階段状に変化する像となる。そこでtoの推 定精度を向上させるために,量子化されたデータを多項式 回帰によって同図の破線のように滑らかな2次曲線(式(2),
(5)よりr1(t), r2(t)は2次曲線に近似できる)に補正し,
そのデータをtoの推定に使用する。
次に求めたt。と,補正したrl(t), r2(t)をそれぞれ多項 式回帰を行ない,得られる0次,1次,2次項の回帰係数 をCo, Cl, C2, Co , Clt, C2 とすると,これらの対応 関係から
Ri :: Co Xo== Vto
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〟C,c+,,11}S filEr;iiiil ?,iit,一,,CcO,C,,ic,,c,,V−r:,c一,)Cic,(,c,,,B,)(7)
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2 BB2 2 CCO
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X
α
磯一 B2Co
のように,全ての運動パラメータを推定することができる。
3.シミュレーションによる基本原理の検証
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以上に述べて来た芳法が現実のパラメータの下で機能す ることを確かめるために,計算機シミュレーションを行な い,その有効性について検討する。
図3の観測系において,CCRS*所有のSAR−580を参 考にして表1のようにパラメータを決定した。(4}アンテナ 間隔Bについては,1機の機体に2つのアンテナを搭載す ることを想定してボーイング747型機の機体長に相当する 値を用いた。また加速度は,0次,1次に比べて一一段と精 度の劣る2次の回帰係数を基に計算を行なうので,その推 定は厳しくなる。従ってここでは,ターゲットは等速直線
嚢t
図3 レンジ圧縮により得られるデータ(○印:距離変化点)
表1SARパラメータ
運動すると仮定し,加速度の推定は行なわない。
以上の条件のもとでシミュレーションにより時刻toでの 位置と速度を推定する。図4(a)に位置の,(b)に速度の推定 結果の表示法を示す。図中の○印の位置は,仮定したター ゲットの速度の大きさと移動方向を表わしており,○印か ら突出している線分は,そのターゲットの時刻toにおけ る位置及び速度の誤差の大きさと方向を表わしている。
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SAR進行速度 パルス繰り返し周波数
時刻toでのアンテナ#1・ターゲット問距離 距離分解能
アンテナビーム幅 アン.テナ#1・#2間距離
* カナダ国立リモートセンシングセンター
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図4 推定結果の表示方法
津山高専紀要 第26号 (1988)
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図5 運動パラメータ推定結果
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図6 観測系の構成と推定結度
図5は,運動パラメータの推定結果である。これより,
ターゲットの速度のレンジ方向成分v,が±15km/hより小 さくなると推定精度が急激に低下していることが判る。v,
が小さい場合に観測されるレンジ圧縮像の軌跡は零ドップ ラー部分を含んで穏やかに変化するので,データ中の量子 化数が少なくなり,変化範囲に対する量子化誤差の割合が 多くなる。そのため多項式回帰の精度が低下し,それがto の精度に,従って運動パラメータの推定精度に影響するた めである。また,アジセス方向にその影響が顕著に現れて いることも同図から判る。
図6は,よりよい推定結果を得るためのSARパラメー
タについて検討するためのもので,図5を基準とし,これ と,SARパラメータを変更して得ら itる推定結果とを比 較しながら検討する。図5と図6(A)からは,分解能の違い による推定精度を比較することができ,分解能が小さい方 が推定精度が良いことが判る。これは,分解能が小さい方 がデータの量:子化雑音が小さくなり,回帰による補正精度 がよくなるからである。図5と図6(B)からは,ビーム幅の 違いによる推定精度を比較することができ,ビーム幅が広 い方が推定精度が良いことが判る。これは,ビーム幅が広 くなるとターゲットがアンテナビームに捕捉される時間が 長くなり,レンジ圧縮像の軌跡の距離の変化が大きくなり,
合成開ロレーダ(SAR)によるターゲットの運動パラメーータ推定法 中村・山根・松尾
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図6 観測系の構成と推定結果
推定における回帰演算の精度が向上するためである。.図5 と図6(C)からは,ターゲットまでの距離の違いによる推定 精度を比較することができ,ターゲットまでの距離が遠い 方が推定精度が良いことが判る。これは,ターゲットまで の距離が遠くなるほどターゲットがアンテナビームに捕捉 される時間が長くなるためである。図5と図6(D)からは,
アンテナ間隔の違いによる推定精度を比較することがで き,アンテナ間隔が広い方が推定精度が良いことが判る。
これは,アンテナ間隔が狭くなるとr1(t)とr2(t)の差が縮 まるため量子化されたそれらの2乗差からでは精度の良い toの推定が難しくなるためである。
以上のことから,運動パラメータを精度よく推定するた めには,分解能が高く,アンテナのビーム幅とその間隔が
広く,アンテナ・ターゲット間距離が大きい程良いことが
判る。
4.推定精度の向上法と受信機雑音の影響(5)
しかし,前節で述べた中ではもっとも良い,表1のパラ メータをもちいても,ターゲットの速度のレンジ方向成分 v,が±15㎞/hより小さくなると推定精度が急激に低下し ている。その主な原因は,前述のように回帰演算の精度の 低下であるから,回帰精度を向上させるためには,得られ
たデータをすべて用いるのではなく量子化データの距離変 化点(図3中の○印)のデータだけを用いて回帰演算を行 なえば良い。この方法で運動パラメータを推定.した結果を 図7に示す。この図から,全ての速度で精度の良い推定が
津山高専紀要第26号(1988)
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(b)速度
図7 運動パラメータ推定結果(距離変化部分のデータのみ使用)
できていることが判る。
ただし,実際のレンジ圧縮像にはさまざまな雑音が加わ り像の品質が劣化するので,真の距離変化点が推定できな くなる可能性がある。ここでは受信機雑音の影響について 検討する。
図8(a)に受信機雑音を考慮する場合の,同図(b)に考慮し ない場合のレンジ圧縮像の時間変化を示す。同図(a)では,
量子化された距離変化は規則正しい階段状に変化している のに対し,(b)でのそれは,距離変化点が1点に定まらず不 安定に変化している。従って,そのようなデータを用いた 回帰演算では誤差が大きくなると考えられる。図9に,実 際的な受信機雑音を考慮して品質の悪いレンジ圧縮像を作 成し,それを基にして運動パラメータを推定した結果を示
す。同図は距離変化点を全て用いて回帰演算を行なったも ので,受信機雑音を考慮していない図7に比べるとアジマ ス方向の運動パラメータの精度が低下している。
5.静止背景に埋もれた運動ターゲットのレンジ圧 縮写の分離
本方式による運動パラメータの推定では運動ターゲット のレンジ圧縮像を利用するが,実際には運動ターゲットは 静止背景中を動くので,SARデータをレンジ圧縮処理す ると,運動パラメータの軌跡は無数にある静止ターゲット によるレンジ圧縮像に埋もれてしまう。したがって,運動 ターゲットの反射率が静止背景のそれに比べて十分大きく ない場合,運動ターゲットのレンジ圧縮像を静止背景から
合成開ロレーダ(SAR)によるターゲットの運動パラメータ推定法 中村・山根・松尾
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(a)雑音なし
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(b)雑音あり
図8 受信機雑音のレンジ圧縮像に及ぼす影響
取り出す必要がある。そこでその方法について検討す
る。(5)
本方式では,アンテナを2つ用いるので,同一観測域に 対してそれぞれのアンテナから1枚ずつ計2枚のレンジ圧 縮像を得ることができる。背景にある各静止ターゲットの
レンジ圧縮像は,ある一定時間差だけずれていることを除 いて両画面でまったく同じである。したがって,この時間 差を考慮して両画像を重ねると静止ターゲットの像は完全
に一致する。一方,運動ターゲットについては,ターゲッ トが運動しているので,両画像は時間差を考慮しても一致 しない。この性質を利用して,両画像を時間差を考慮して 複素減算すれば,静止ターゲットのレンジ圧縮像は相殺さ れて消去され,両アンテナから見た運動ターゲットのレン ジ圧縮像だけが残る。図10は,運動ターゲットと静止ター ゲットが各1個ずつ存在する場合のレンジ圧縮像であり,
(a)はアンテナ#1で得られた画像(以下#1画像と略す),
(b)はアンテナ#2で得られ.た画像(以下#2画像と略す),
図11(a)は,上述の方法で#1画像から#2画像を複素減算 した画像(以下(#1一#2)画像と略す)である。同図 より,静止ターゲットのレンジ圧縮像だけが消去されてい ることが判る。しかし(#1一#2)画像には,図11(a>の ように両アンテナから見た同一運動ターゲットの2つのレ ンジ圧縮像が残る。したがって2つのレンジ圧縮像のうち どちらの像がいずれのアンテナで得られたものかを判定し なければならない。以下にその判定法を検討する。
式(2),(5)より,時刻toにおけるレンジ圧縮像の持つ勾配 は,これらの式をtについて微分した導関数にtoを代入す ることにより次のように求まる。
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(8)
r2(to) = 一 一illE 」B (V 一 vx) + Rivrl
ここで,Rl=R2, R2》vxを考慮すれば,rl(to) , r2(to)ノ
は,ターゲットの速度のレンジ方向成分v,によって決ま るといえる。図11に,v,をパラメータとした(#1一#2)
画像を示す。日持より,v,が正すなわちターゲットが SAR軌道に向かって運動しているときは,海図(a)のよう
に,(#1一#2)画像は右下がりになり,アンテナ#1
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図9 受信機雑音を考慮した場合の運動パラメータの推定結果
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図10 運動ターゲットを静止ターゲットのレンジ圧縮像 一運動ターゲット(Vx=0㎞/h、Vr=20km/h)
……静止ターゲット
によるレンジ圧縮像がアンテナ#2によるものよりも遠く に現れることが判る。v,が小さいときは,同図(b)のよう に2つのレンジ圧縮像は一部重なるが,アンテナ#1によ る像の方が遠くに現れるという特徴は変わらない。一方,
v,が負すなわちターゲットが.SAR軌道から遠ざかる方向 に運動しているときは,(#1一#2)画像は同図(d)のよ うに右下がりとなり,アンテナ#2によるレンジ圧縮像が アンテナ#1によるものより遠くに現れている。この特徴 もv,の大きさに左右されない。したがって(#ユー#2)
画像が右下がりの場合は,遠い方にあるレンジ圧縮像をア ンテナ#1によるもの,他方をアンテナ#2によるものと 判定し,右上がりの場合は近い方をアンテナ#1によるも の,他方をアンテナ#2によるものと判定すれば良い。し かしレンジ方向の速度がほとんど零の場合,(#1一#2)
画像はほぼ左右対象になり,しかもアジマス方向に速度 Vxを持つ場合,同図(c)のように#1画像と#2画像の遠 近関係が途中で入れ替わるので,このような場合には上記 の方法を用いることができない。したがって,ターゲット の速度のいかんにかかわらず判定できる新たな方法を考え
29970
−8 0 再 TIME [sec)
(b) V. =Okm/h, V. == 5km/h
図11 ターゲットのレンジ方向速度に対する(#1一#2)
画像の依存性
アンテナ#1によるレンジ圧縮像 ……アンテナ#2によるレンジ圧縮像
る必要がある。
6.鮮明映像化処理への応用②
前説までに述べて来た方法で推定したターゲットの運動 パラメータを用いると,受信信号からターゲットの運動の 影響を取り除くことができる。以下に,その信号処理の方 法について述べる。
(A>レンジウォークの除去
推定した運動パラメータのうちR1とr1(t)を用いて式(1)
のホログラムのレンジ軸を時刻tに応じて(rl(t)一R1)
だけシフトすることによりレンジウォークのないホログラ
ム
hi (t, t)= Kexpj 1−2kri (t) + k/ ( 一9i;rl一 一 R,) 21 (g)
を得る。
(B)イメージシフトの除去
ホログラムh1(t,τ)に含まれる各位相成分のうちレン ジ方向の運動が寄与する成分を式②を用いてまとめると
合成開ロレーダ(SAR)によるターゲットの運動パラメータ推定法 中村・山根・松尾
窟︺国O呂く餌
30050
3001e
29970
一8 O S
TIME [sec]
(c)vx=100km/h, v.=Okm/h
デットに対するホログラムの形となっており,明らかに ターゲットの運動による影響が取り除かれていることが判 る。したがって,このホログラムを通常の処理によって映 像化すれば,静止ターゲットの場合と同様に鮮明な映像が 得られることになる。
7.む
30050
冨
・3eelo巴葛
Z9970
−8 0 8 TIME [sec)
( d) v. == Okm/h, v.=一20km/h
k
expj ¢ R(t) = exp [一 j fu 1−2Riv, (t 一 to)
十 (v.2 rm R iclf) (t 一 to) 21 ]
(IO)
となる。そこで推定した運動パラメータのうちR1, v,,
a,を用いて式(IO)の成分を計算し,その複素共役をホログ ラムh,(t,τ)に乗じることによりイメージシフトのない ホログラム
h2 (t, r) = KexQp
Q[r2.kiRi+ 一gi/EIIE?ii2S):1.,2−7RV, X)2 (t 一 to)2ai)
+。・(2−Rl)2}]
を得る。
(C)アジマスディフォーカスの除去
推定した運動パラメータのうちR1,v。を用いてh2(t,τ)
に含まれるアジマス方向の運動が寄与する位相成分 k
・xpjφ・(t)=・・p[一jR、{(・・一2V・・)(tnvt・)2日(12)
を計算し,その複素共役をに乗じてアジマスディフォーカ スのないホログラム
V2
h3(t・τ)=Kexpj[一2k IR,+2R1(t−to)2 (13)
・讐(c穿一R、)・}]
を得る。上式は式(1)に式(3)を代入して得られる静止ター
す
び
本報告では,ターゲットの運動により劣化したSAR画 像を修正し鮮明な画像にもどすため,SARデータから
ターゲットの正確な動きを推定する方法を提案し,推定の 可能性について検討した。
本方式は,SAR軌道上の前後に設置した2つのアンテ ナにより収集したSARデータにレンジ圧縮処理を行な い,それぞれのアンテナからターゲットまでの斜め距離を 検出し,その距離データより多項式回帰を行ない,得られ た回帰係数によりターゲットの位置,速度,加速度の推定 をおこなうものである。
さらに,本方式の有効性を確かめるために計算機シミュ レーションを行なった。その結果,大筋において意図した 推定が行なえたが,ターゲットの速度のレンジ方向成分が 小さいときは,レンジ圧縮像の量子化誤差が影響してアジ マス方向の推定精度が低下することが判った。そこで,多 項式回帰に用いるデータを距離変化のある点だけに限れば 推定精度の低下を防止できることを明らかにした。但しそ の際,受信機雑音が推定精度に少なからず影響を及ぼすの で,それを軽減しなければならないことも判った。
また実際に運動パラメータ推定を行なうときに必要な,
静止背景中から運動ターゲットのレンジ圧縮像を取り出す 方法についても検討した。
今後は,耐雑音性能の向上,静止背景を分離する際の新 たな方法の提案さらに最終目的である推定結果を用いた SAR画像の鮮明映像化法についても検討していく必要が
ある。
参 考 文 献
(1) R. K. Raney: Synthetic Aperture lmaging Radar and Moving Targets , IEEE Trans.
Aerosp. & Election. Syst., AES−7, 3, pp. 499−505 (May 1971) .
(2)中村(昌),山根,松尾: 合成開ロレーダによるター デットの運動パラメータ検出法 ,情報処理研究会資 料,1986−6(1686,6).
(3)中村(重),中村(昌),山根,松尾: 合成開ロレー ダによるターゲットの運動パラメータ推定法 ,昭和 61年電気関係学会関西支部連合大会資料,G11−7,
(1986.6).
津山高専紀要第26号(1988)
(4)前田惟裕: SAR航空機実験について ,合成開口1/一 ダ(SAR)による地球観測説明会資料, pp,1−12,
宇宙開発事業団(1983.11).
(5)中村,山根,松尾: 合成開ロレーダによるターゲッ トの運動パラメータ推定法 ,昭和62年電子情報通信
学会半導体・材料部門全国大会資料,S1−5
(1987,11).