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Literature review on the competency of facility nursing care workers in nursing care for dementiaAkihiro OTANI

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認知症介護における施設介護職員のコンピテンシーに関する文献研究

2018831日受付/201921日受理 1 学校法人日本教育財団名古屋医専

大谷 明弘

1

Literature review on the competency of facility nursing care workers in nursing care for dementia

Akihiro OTANI

要 旨

本研究は,認知症介護研修の現状と課題を確認した上で,施設介護職員に対する認知症介護教 育に「コンピテンシーcompetency)」の概念を導入することの意義を明らかにすることを目的に 文献研究を実施した.論文検索には,CiNiiJ-STAGE医中誌 webを活用し,11本の論文が該当 した.結果,施設介護職員のコンピテンシーに関する研究がほとんど行われていないことが明ら かになった一方で,隣接領域である看護師や主任介護支援専門、社会福祉士等に関しては,既に いくつかの研究が行われており,各々の専門教育に導入され始めている現状が明らかになった.

このことは,施設介護職員を対象とした認知症介護教育にもコンピテンシーの導入が可能なこと を意味している.今後の課題は,施設介護職員が置かれている労働環境の現状把握,認知症介護 における熟練介護職員の優れた行動特性の具体的な概念および省察的実践との関連性を明らか にすることである.

Abstract

The purpose of the present study was to perform a review of the literature to clarify the significance of introducing the concept of "competency" to dementia nursing care education for facility nursing care workers after confirming the current state and problems of dementia nursing care training. Eleven papers were found through literature search utilizing CiNii, J-STAGE, and Ichushi web. The results revealed that there is almost no research concerning competency of facility nursing care workers, while there are already several studies on related occupations such as nurses, care managers, and social workers, and competency is beginning to be introduced in the specialized education of each occupation. This signifies that competency can also be introduced for dementia nursing care education for facility nursing care workers. Future issues are the clarification of the current status of the working environment where facility nursing care workers are stationed and clarification on the relationship between Specific concept of superior behavioral characteristics of skilled nursing care workers and reflective practice in dementia nursing care.

キーワード認知症介護研修事業,施設介護職員,コンピテンシー

Key wordsdementia care training,  facility nursing care workers,  competency 

(2)

Ⅰ はじめに

日本における現在の認知症施策は,2015年に厚生 労働省が策定した「認知症施策推進総合戦略(新オ レンジプラン)」を中心に展開している.その基本 理念は,「認知症の人の意思が尊重され,できる限り 住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続 けることができる社会の実現を目指す(厚生労働省

2015:1)」ことであり,そのために7つの柱が立てられ ている.その一つである「認知症の人を含む高齢者に やさしい地域づくりの推進」では,「良質な介護を担 うことができる人材を質量ともに確保していくた め,既存の認知症介護実践者研修等について,医療 介護等の連携に資するよう,必要な研修内容の見直 しを行うと共に新任の介護職員等が認知症介護に最 低限必要な知識技能を修得できる研修を創設するこ と(厚生労働省 2016:4)」がうたわれており,認知症介 護に関わる人材育成の必要性を示している.

日本における認知症介護研修事業は,1986年に開 始された「痴呆性老人処遇技術研修」が発端であり,

2000年まで実施されていた.その後,ゴールドプラン

21の中で「痴呆介護研修事業」が創設され,2006年に は「認知症介護研修事業」として呼称の変更および研 修内容の一部が変更され,現在に至っている.

改定された点は,「生活」をケアの基本として捉え ることを示したうえで,認知症の人の生活を中心と した理解や介護方法等の知識や理論の修得だけでな く,実践的な介護方法の修得を目的としたプログラ ムに修正されている点である.しかし,阿部は「認知 症介護研修事業は,現在まで継続し全国で219,235人

2016年3月現在)の実践者が研修を修了しており,わ が国における認知症介護の人材育成は短期間で効率 的に養成が進んできており,量的な整備は順調である といえる.しかし,改定から約10年が経過し,認知症 を取り巻く環境は激変し,現行の研修体制もいくつ かの課題が指摘され,新たな研修システムが必要とな ってきている(阿部 2016:435).」と指摘している.

このような研修システムの評価には,受講生の専 門的能力の到達度が分かる指標や教育目標としての 指標が求められる.近年,国内外の保健医療専門職の 養成課程において,その指標として用いられている のが「コンピテンシーcompetency)」の概念である.

コンピテンシーとは,McClellandによって提唱され た「高い業績を示す個人の行動特性」のことを指して いるMcClelland 1973:13).

本研究は,施設介護職員(以下,介護職員)を対象と した認知症介護教育にコンピテンシーの概念を導入 することの意義を明らかにするものである.次項よ り,認知症介護研修事業の現状と課題およびコンピ テンシーの概念について述べていく.

Ⅱ 認知症介護研修事業の現状と課題

認知症介護研修事業の中で,初任者や無資格者を 対象とした「認知症サポーター養成講座」があるが,

これは一般市民を中心とした基礎知識の共有が主な 目的であり,具体的なサービス提供場面が想定され ているものではない.また,介護業務従事者を対象と した基礎的な研修としては介護職員初任者研修があ るが,これは高齢者あるいは認知症の人に限らない 一種のゼネラリストとしての介護業務従事者の養成 体系であると言える.さらに,自治体や各種団体単位 で介護サービス従事者等に向けた基礎的研修が行わ れている場合もあるが,全国全サービス事業形態に 共通するようなものは存在しないことが報告されて いる.こうした現状から認知症介護基礎研修の創設 についての検討が始まり,それと同時に認知症介護 実践研修(実践者実践リーダー両研修)の内容につい ても見直しが図られた(認知症介護研究研修仙台セ ンター 2016).

一方で,主な課題としては,①認知症介護の質の格 差拡大,②介護未経験者や初任者に対する教育機会 の不足,③日数回数定員数等を原因とした研修へ の参加のしにくさ,④行政間での研修内容等の格差,

以上の4点が挙げられている(阿部 2016:435).また,

井上2010は,現在の研修内容は,知識や技術を詰め 込むことに力点が置かれており,研修主催者として は,「何を教えるか」は見えるが,「何をできるように するのか」は見えておらず,受講生としても「何を教 わるか」は理解できても「何ができるようになるか」

は見えないままであり,主体的な目標設定が欠落し た状態であると言わざるを得ないと述べている.つ まり,研修の成果が施設で活用されていないことを示 唆したものだと言える.こうした状況は,介護施設利 用者(以下,利用者)のQOL にも影響を与えかねない.

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従って,今後は初任者や無資格者から指導的立場 の者までがより理解から実践に結びつきやすいよう な具体的で客観的な指標に基づく認知症介護教育に よる人材育成が求められる.

Ⅲ コンピテンシー(competency)の概念および定義

コンピテンシーに関する初期の定義は,ハーバー ド大学のRobert Whiteによるものであると言われて いるJMAMコンピテンシー研究会 2002:192).その 後,1970 年代に同大学の McClellandによってビジ ネスの世界に導入された.その定義は,研究者やコン サルティング会社によって異なるものの,例えば冒 頭で述べたMcClellandの定義やスペンサーらによっ て定義された「ある職務または状況に対し,基準に照 らして効果的,あるいは卓越した業績を生む原因と して関わっている個人の根源的特性(スペンサーら

2001:11)」を挙げることができる.一方で,日本にお いては,加藤が過去10年余りの日本におけるコンピ テンシー概念を総括し定義した「行動によって見極 められる(知覚される)動機,自己効力感,思考,スキ ル,知識などを含む総合的な能力の概念であり,高業 績につながると予測されるもの(加藤 2011:20-21)」

を挙げることができる.そして,スペンサーらは,コ ンピテンシーを「達成とアクション」「支援と人的サ ービス」「インパクトと影響力」「マネジメントコンピ テンシー」「認知コンピテンシー」「個人の効果性」の6

つに分類している.

こうした中,2016年末に発表されたOECD(経済 協力開発機構)の国際学習到達度調査PISAとIEA

(国際教育到達度評価学会)の国際数学理科教育動

向調査TIMSSにより,日本の子どもの学力低下が

明らかにされた.これに伴い,日本においてもPISA

調査の枠組みの基本概念となっているOECD の「キコンピテンシー(主要能力)」に注目が集まるよう になり,教育分野への導入が始まった.OECDによ る「キーコンピテンシー」とは,①社会・文化的,技 術的ツールを相互作用的に活用する能力,②多様な 社会グループにおける人間関係の形成能力,③自律 的に行動する能力の3つに分類されている(旺文社教 育情報センター 2005:2).

従って,コンピテンシーとは単なる知識や技能,IQ

のような読解力,文章力,計算力といった測定しやす

いものよりも動機や自己概念,思考パターン,人間特 性といった測定しにくいもの(加藤 2011:6を指して おり,言い換えれば,複雑な要求に応える能力評価の 概念であると言える.

一方で,コンピテンシー概念の実践活用に関する 研究としては,McClellandがコンピテンシーによる 評価と職務での成功との間には高い相関がみられる ことを明らかにしている(井村 2005:93).また,池田 はコンピテンシーの概念をソーシャルワーカーの実 習教育に用いることは,教育側実習指導者学生の 三者にとっての到達目標がより明確になると述べて いる(池田 2005).さらに,高は,コンピテンシーモデ ルは行動特性による項目で構成されるため,適切な モデルに基づいた評価であれば,従来主観的になり がちであった人事評価を客観的に示すことが可能に なると述べている(高 2015:43).従って,認知症介護 を行う熟練介護職員の優れた行動特性を明らかにし,

それに基づいたコンピテンシーモデルを構築するこ とができれば,介護職員や実習生の教育に役立つと 考える.そこで本研究は,認知症介護における介護職 員のコンピテンシーに関する国内の先行研究を整理 し,研究の現状と導入の意義を明らかにすることを 目的とした.

本研究における用語の定義について,認知症介護 は「認知症のみられる介護施設利用者に対して介護 職員が行う日常的な介護」と定義する.また,コンピ テンシーは「熟練介護職員に共通する成果を上げ続け ることのできる行動特性」と定義する.ここでの熟練 介護職員は,①認知症介護の経験が10年以上ある者,

②指導的立場の者,③管理的な業務のみではなく,実 際の認知症介護に従事している者,以上の3点を条件 としている.また,コンピテンシーは,「能力」「専 門性」と同義語として使用されることも多いが,言葉 の意味に差異があるため,本研究ではこれらの用語 は使用せず「コンピテンシー」のまま使用することと した.

Ⅳ 研究方法

文献検索は,データベースCiNiiJ-STAGE医中 誌 web「認知症」「行動心理症状」BPSD「介護 職員」「介護」「ケア」「ケアスタッフ」および「コンピテ ンシー」competencyをキーワードとしていれて,こ

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れらのキーワードを組み合わせて検索した(平成30

年3月31日).検索の際,研究内容が重複するもの,ま たは同一の事例検討や学会シンポジウムの企画紹介 のみの文献は内容を精査し対象外とした.

Ⅴ 結果

文献検索の結果,6本が該当した.しかし,該当し た 6 本は本研究の目的である施設介護職員を対象と したコンピテンシーに関する研究ではなかったため,

隣接領域である看護師に関する論文3本,介護支援専 門員のコンピテンシーに関する論文2本の合計5本を 追加し,最終的に11本の論文を対象とした.

該当した論文11本の内訳としては,現場の訪問介 護員を対象とした研究が1本,新任介護福祉士のコン ピテンシーモデルの検討に関する研究が1本,介護教 育におけるコンピテンシーモデル導入の意義に関す る研究が1本,保育士介護士のコンピテンシー評価 に関する研究が1本,社会福祉士を目指す学生や実習 生を対象とした研究が2本,隣接領域である看護師の コンピテンシーに関する研究が3本,介護支援専門員 のコンピテンシーに関する研究が2本であった.具体 的な内容については紙幅の都合上,割愛させていた だくため詳細については表1を参考.

Ⅵ 考察

1.本研究で対象とした先行研究の動向

本研究は,今後,認知症介護教育に取り入れるべき 概念として,具体的で客観的な行動特性である「コン ピテンシーcompetency)」に着目した.本研究で唯 一現場に勤務する介護職員を対象としていた訪問介 護員のコンピテンシーモデル2010は,訪問介護員 の教育に活用できるだけではなく,新人から指導的 立場までの全ての段階の介護福祉士や管理職の教育 システムにも応用ができる点で意義がある.また,須 永ら2010が明らかにした新人介護福祉士のコンピ テンシーモデルは,望ましい新任介護福祉士の行動 特性を明確化し,介護現場への就業前教育に活用で きるようにした点だけではなく,一般企業への就職 に応用できる可能性を示唆した点においても重要な 意義を持つと言える.さらに,コンピテンシーの評価 に焦点を当てた中村ら2016の研究は,保育士およ び介護士の教育研修の一助になるだけではなく,チ

ームとしてのパフォーマンス向上にも影響を与える 可能性がある点で更なる研究の発展が期待できる.

池田2005が作成した社会福祉士を目指す学生 実習生を対象とした自己評価用コンピテンシー評価 シートは,実習に参加する大学生や実習先の指導者,

大学教員の三者が同じシートを活用し,評価すること で学生の実習課程の各段階において到達目標や成長 度をこれまでより確実に把握し,共通理解できる点 で意義がある.また,藤田ら2008のコンピテンシー を活用した評価の導入は,ソーシャルワークスキル の明確化のみだけではなく,学生の自己評価や教員,

実習先の指導者の客観的評価を可能とする点でも大 きな意義がある.大学や専門学校を卒業し,初めて現 場に入る新人職員が抱える不安や戸惑いは,社会福 祉士に限らず,介護福祉士等の他の専門職にとって も同様であろう.その習得すべきスキルが可視化さ れている両者の研究は,今後の教育システム開発の 基礎的部分に位置づけられると言える.

2015の研究は,筆者の着眼点と同様であるこ とから意義があると言えるが,一方で対象文献が4本 と少ないため,井上2012と同様に他の隣接領域に おける専門職のコンピテンシーモデルや国外の先行 研究の現状把握が必要になるだろう.

西澤2008),山根ら2010),松本ら2017が質的 研究により明らかにした専門分野に求められる看護 師のコンピテンシーは,日々の職務内容や今後達成 すべき目標に根拠を提供すると共に自身のアイデン ティティの確立や,日々の自己評価にも活用できる 点で意義がある.今後は,質的研究によって得たこれ らの知見を標準化する意味でも量的調査等を含めた 更なる実証研究が望まれる.そうすることで,専門看 護師の教育システムに援用でき,それが指導的立場 の看護師育成に繋がることで,最終的には日本にお ける看護師全体としての質の向上に寄与するものと 考える.

井上20102012の研究は,介護支援専門員の能 力,力量,実践力を施設の問題現象に照らし合わせた 分析を行い,そのうえで主任介護支援専門員育成の 課題把握および介護福祉士の基礎養成教育への接点 について論じている点で意義がある.さらに,介護支 援専門員の実践能力がどのような要素で構成されて いるのか,つまり介護支援専門員のコンピテンシー

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表1 対象論文11本の概要

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(6)

の構成要素を明らかにするために,隣接領域である 他の専門職のコンピテンシーに焦点を当て,ミクロ メゾマクロの各レベルの視点で考察している点も意 義がある.この分析の視点は,今後,筆者が本研究を 遂行していくうえで非常に参考になる視点である.

2. 認知症介護における介護職員のコンピテンシーに焦点 をあてた研究の現状

認知症介護教育に関する多くの先行研究がある中 で,何故これまで日本においてコンピテンシーの概 念に着目した研究が行われてこなかったのか考察す ると,以下の点が考えられる.隣接領域である看護師 や介護支援専門員は,それぞれの資格法において職 務に関する規定がされており,その資格を有する者 でなければ職務に就くことはできない.つまり,誰が 見てもその職務内容や技術が客観的に把握しやすい ことを意味している.従って,コンピテンシーの抽出 に結び付けやすいのではないかと推測できる.

一方で,認知症介護を問わず介護すること自体は,

資格を有していなければその職務に就くことができ ないということはなく,その意味では,介護職員自身 の個人的な能力や技術等の裁量が職務の遂行に大き く影響を与える(高 2015:43).こうした能力や技術の 捉えにくさが要因となり,逆にコンピテンシーの概 念として抽出することが難しいのではないかと推測 できる.

3. 認知症介護教育にコンピテンシーの概念を導入する 意義と予測される効果や変化

認知症介護教育へのコンピテンシー概念の導入の 意義は,冒頭で述べたOECDや隣接領域である訪問 介護員や看護職員,介護支援専門員,社会福祉士等 の養成課程において既にコンピテンシーの概念が導 入され始めている点や,須永らが単に介護技術の指 導を行うのではなく,コンピテンシー評価やそれに 基づく指導の必要性(須永ら 2010:107を提言してい る点から十分にあると言える.この点については,高 も訪問介護員のコンピテンシーモデルに関する研究 が,介護福祉士のコンピテンシーモデルに十分適応 できると述べている(高 2015:42).

一方で,コンピテンシーを介護職員の教育に活用す ることでもたらされる効果や変化について具体的に 言及している先行研究はないが,冒頭で述べたスペン サーらの6つの分類の中の「個人の効果性」に着目す

ることで推測することができる.つまり,「個人の効 果性」とは,狭義の意味では「セルフコントロール」

「自己研鑽」「柔軟性」「組織へのコミットメント」と分 類することができ,このことから達成重視の能力だ けではなく,個人の内的成長への影響についても示 唆していることが分かる.従って,コンピテンシーに 着目した教育は,介護職員自身の行動変容に加え,内 的成長にも影響を与える可能性があると言える.

4. 今後の課題

本研究における今後の課題として,以下の3点が挙 げられる.第一に,介護職員が置かれている労働環境 の現状把握が必要になる.積極的に研修に派遣して いる施設もあれば,全く派遣しない施設もあり,また 派遣したくてもできないほど日常業務に追われてい る施設もある.もし,このような時間的余裕がない状 況に置かれ,研修自体に参加できないのであれば,い くら研修内容を改善してもその効果が期待できない.

このことは,施設間における介護サービスの質の差 にも繋がりかねない.

第二に,認知症介護における「熟練介護職員の優れ た行動特性」とは一体何なのか,その具体的な概念を 明らかにする必要がある.目指すべき介護像を明ら かにすることで,今後どのようなコンピテンシーを 抽出すべきかが明確になると考えられる.

第三に,熟練介護職員はその行動特性に加え,内的 特性にも特徴があると考える.そのため,熟練介護職 員のコンピテンシーと「省察的実践」の関係性に着目 した研究も今後の課題である.

Ⅶ 終わりに

本研究は,国内の文献に限定したため,今後は別な キーワードによる検索に加え,国外の先行研究にも目 を向けた更なる文献研究が必要となる.そのうえで,

上記で示した3点の課題に取り組むことができれば,

認知症介護における熟練介護職員のコンピテンシー の可視化につながり,それが介護職員の習得度や技 術レベルに応じた教育体制構築の一助になると考え る.最後に,本研究においてご指導をいただきました 立命館大学の岡田まり先生,並びに南九州大学の林 典生先生には深く感謝申し上げます.

(7)

Ⅷ 文献

阿部哲也2016わが国における認知症介護研修シス テムの動向日本認知症ケア学会誌 152,p435 David C. McClelland 1973 Testing for Competence

Rather Than for Intelligence. American Psychologist.

p7,13

藤田久美山本佳代子青木邦男2008社会福祉教 育におけるコンピテンス評価項目の検討山口県立 大学福祉学部紀要14,65-78

池田 雅子2005社会福祉実習教育における学生の 自己コンピテンスアセスメントの活用について コンピテンス評価結果の分析を通して北星学園大 学社会福祉学部北星論集42,pp49-65

井上 貴詞2010福祉人材の育成とコンピテンシー

−主任介護支援専門員の育成の課題に焦点をあて て−キリストと世界 20,pp1-39

井上 貴詞2012介護支援専門員に求められる実践 能力の研究Ⅰ内容分析による実践能力の概念構造 化キリストと世界22,pp29-58

井村直恵2005日本におけるコンピテンシー―モデ リングと運用--京都マネジメントレビュー7,pp93 JMAMコンピテンシー研究会2002『コンピテンシ ーラーニング─業績向上につながる能力開発の新 指標』日本能率協会マネジメントセンター,p192

加藤恭子2011日米におけるコンピテンシー概念の 生成と混乱 日本大学経済学部産業経営研究所所 報68,p6,pp20-21

厚生労働省2014日本における認知症の高齢者人口 の将来推計に関する研究 平成26年度厚生労働科 学研究補助金特別研究事業,pp1-59

厚生労働省2015認知症施策推進総合戦略(新オレ ンジプラン)認知症施策推進総合戦略〜認知症高 齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜,p1

厚生労働省2016介護保険最新情報 535「認知症介 護実践者等養成事業の実施について」の一部改正 について」,p4

高宏2015介護教育におけるコンピテンシーモデル 導入の意義生老病死の行動科学19 p43

認知症介護研究研修仙台センター2016認知症介 護基礎研修,実践研修等のあり方およびその育成 に関する調査研究事業,pp1-139

松本志保子片山はるみ2017回復期リハビリテー ション看護に従事する看護師のコンピテンシー日 看管会誌211,pp17-21

中村誠司水上勝義2016保育士介護士コンピテ ンシー尺度の提唱 未来の保育と教育 東京未来大 学実習サポートセンター紀要3,pp53-60

西澤 知江真田 弘美萱間真美2008皮膚排泄ケ ア認定看護師の褥瘡管理コンピテンシーモデルの 構築日本じょくそう学会誌102,pp117-121

日本ホームヘルパー協会2010訪問介護員のコンピ テンシーモデル報告書日本ホームヘルパー協会,p9

旺文社教育情報センター2005教育におけるコン ピテンシーについてOECDPISA調査」の基本 概念,pp1-3

ライルM.スペンサーシグネM.スペンサー2001『コ ンピテンシーマネジメントの展開導入構築活用』

訳梅津祐良成田政横山哲夫生産性出版,p11

須永一道柳沢利之2010新任介護福祉士のコンピ テンシーモデル短大生及び短大卒生のコンピテン シーモデルからの考察新潟青陵大学短期大学部研 究報告40,p107.

山根 俊恵東 美奈子草地 仁史[他3名]2010精神 科認定看護師のコンピテンシーに関する研究日本 精神科看護学会誌531,pp27-38

参照

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