Title
内視鏡的除去を行ったMilk of calcium renal stoneの1例
Author(s)
藤塚, 勲; 工藤, 卓次; 大日向, 充; 久保, 隆
Citation
泌尿器科紀要 (1990), 36(12): 1447-1450
Issue Date
1990-12
URL
http://hdl.handle.net/2433/117067
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion
publisher
泌 尿 紀 要36=1447-1450,IggO 1447
内 視 鏡 的 除 去 を 行 ったMilkofcalciumrenalstoneの1例
岩手医科大学泌尿器科学教室(主 任:久 保
隆教授)
藤塚
勲,工 藤
卓 次,大
日向
充,久 保
隆
MILK OF CALCIUM RENAL STONE TREATED
WITH
ENDOSCOPIC EXTRACTION:
A CASE REPORT
Isao Fujizuka, Takuji Kudo, Mituru Ohinata
and Takashi Kubo
From the Department
of Urology,
Iwate Medical University
The patient,
an 18-year-old woman, visited a local doctor complaining
of right flank pain.
Characteristic
findings
obtained
by X-ray examination
suggested
milk of calcium renal stone
in the calyceal diverticulum
of the right kidney, she was introduced
to our clinic on February
16, 1989. Although examinations
on admission
showed no urinary
tract obstruction
or renal
function disorders, since she repeatedly suffered from flank pain, we decided to remove the stone
percutaneously
and widen the mouth of the diverticulum.
Conventional
percutaneous
nephroli-thotripsy methods were used to endoscopically
remove the stone but we were unable to ascertain
the mouth of the calyceal diverticulum.
Thus, we removed the nephrostomy
tube.
The stone was composed
of 83% calcium
oxalate
and 17% calcium
phosphate.
She was
released from the hospital with no particular
postoperative
complications
and at present the
flank pain has disappeared.
Percutaneous
treatments
against
milk of calcium
renal stone are
discussed.
(Acta Urol. Jpn. 36: 1447-1450, 1990)
Key words:
Milk of calcium renal stone, Endoscopic extraction
緒 言 Milkofcalciumrenalstoneは1959年Howelli) が 命 名 し た 比 較 的 稀 な 疾 患 で あ る が,そ の 特 徴 的x線 所 見 か ら 診 断 は 容 易 で あ る,従 来 の 報 告 を 見 る と 無 症 状 の も の は 経 過 観 察,ま た 何 ら か の 症 状 を 有 す る も の に 対 して は,opensurgeryが 適 応 さ れ て い る が,今 回 わ れ わ れ は 経 皮 的 に 内 視 鏡 を 用 い て 除 去 し え た milkofcalciumrenalstoneの1症 例 を 経 験 し た の で 報 告 す る. 症 例 患 者=18歳 の 女 性 主 訴:右 側 腹 部 痛 既 往 歴,家 族 歴=特 記 事 項 な し 現 病 歴=1988年12月 頃 よ り右 側 腹 部 痛 を 認 め,某 医 に て 検 査 を 受 け て い た.KUBお よ びIVP,超 音 波 検 査,CTよ り腎 杯 憩 室 結 石(milkofcalciurnrenal stone)の 疑 い で,1989年2月16日 に 精 査 を 目的 と し て 当 科 に 紹 介,同 年3月8日 治 療 の た め 入 院 と な っ た. 入 院 時 検 査 成 績:血 液 一 般 お よ び 血 液 化 学 に て 異 常 所 見 な く,血 清 電 解 質 も 正 常 でCa4.7mEq/L,BUN l2.2mg/dl,cro.6mg/d1で あ っ た. 腎 機 能 検 査 に て 異 常 値 な く,そ の 他,尿 沈 渣,尿 化 学 も 正 常 で あ り,尿 路 感 染 も 認 め な か っ た, X線 検 査 所 見:仰 臥 位 の 単 純 撮 影 に て 右 の 腎 部 に 一 致 し て 淡 い 小 石 灰 化 陰 影 の 集 積 像 を 認 め た.ま た 立 位 の 単 純 撮 影 で は 同 様 の 位 置 に 上 方 を 平 面 とす る 半 月 状 の 石 灰 化 陰 影 を 認 め(Fig.la),い わ ゆ るmilkof calciumrenalstoneの 所 見 で あ っ た.IVPで は 右 腎 の ほ ぼ 中 央 部 に 腎 杯 憩 室 を 認 め(Fig.1b),こ れ ら の 石 灰 化 陰 影 は 憩 室 内 に 存 在 す る も の と 思 わ れ た.ま た 他 の 腎 杯 や 左 腎 に は 拡 張,変 形 等 の 異 常 を 認 め な か った(Fig.lb).右 腎 のCT検 査 で はFig.2の ご と く で,上 がplain,下 がenhance像 で あ る.Plaln に て 腎 の 中 央 部 に 嚢 状 の 憩 室 を 認 め,そ の 中 にhigh densityな 結 石 が 半 月 状 を 呈 して い た.Enhanceに
1448 泌 尿紀 要36巻12号1990年 ab Fig.La:Plainfilmonerectpositionshows 曜'half-moon"-shapedshadowofstones. blIVPshowsthecalycealdiverticulurn oftherightkidney.
霧
Fig.2.CTscanoftherightkidneyreveals smal置stonescontainedinthelarge calycealdiverticulumoftherightkidney. て 容 易 に 造 影 さ れ る こ と よ り腎 孟,腎 杯 と の 交 通 性 が 確 認 さ れ た(Fig・2).同 部 の エ コ ー検 査 で も 憩 室 内 の high-echoと 典 型 的 なacousticshadowを 認 め,腎 杯 憩 室 結 石 の 所 見 で あ っ た.以 上 よ り,右 腎 杯 憩 室 と睡
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b Fig,3.a:Percutaneouspyelographyshowsthe calycealdiverticulumandtherenal pelvis.(proneposition) b=Percutaneousnephrolithotripsyusmg therigidnephroscope・ そ の 中 に 発 生 し たmilkofcalciumrenalstoneと 診 断 し た. 臨 床 経 過1尿 路 の 通 過 障 害 や 腎 機 能 障 害 は 認 め ら れ な か っ た が,側 腹 部 痛 の 既 往 が あ っ た た め,疹 痛 の 原 因 と な っ て い る と 思 わ れ る 結 石 の 除 去 を 行 う こ と と し た. 患 者 の 入 院 期 間 に 制 限 が あ っ た た めopensurgery で は な く経 皮 的 除 去 を 選 択 し た,1989年3月14日 通 常 のPNLの 方 法 に 準 じ て,超 音 波 ガ イ ド下 に 憩 室 を 穿 刺 し ガ イ ド ワ イヤ ー を 挿 入(Fig.3a),テ レ ス コ ー フ 型 タ イ レ ー タ ー に て 拡 張 し 腎 痩 を 作 成 し た 。 つ い で 3月17日 硬 性 鏡 を 用 い て 二 期 的 に 内 視 鏡 下 に 結 石 を 除 去 し た(Fig.3b).そ の ま ま で は 結 石 の 再 発 が 危 惧 さ れ た た め,憩 室 口 の 拡 張 を 行 う た め に,憩 室 口 の 観 察 を 試 み た が 内 視 鏡 に て 確 認 す る こ と が で き ず,結 石 除 去 の み で 腎 痕 を 抜 去 した. 摘 出 した 結 石 はFig・4に 示 す よ うに 大 き さ は0.5 mmか ら最 大2mm程 度 で,赤 外 線 吸 収 ス ペ ク ト ロ フ ォ トxト リ ー に よ る 分 析 の 結 果,シ"ウ 酸Ca83 %,リ ン酸Cal7%で あ っ た, 術 後 のX線 検 査 で は 単 純 撮 影 に て 残 石 は な く,IVP に て 術 前 と同 様 に 憩 室 も 造 影 さ れ て お り,腎 痩 抜 去 後 3日 目 に 退 院 し た.そ の 後 外 来 に て 経 過 観 察 中 で あ る が,9ヵ 月 経 過 し た 現 在,結 石 の 再 発 もな く,側 腹 部 痛 も 消 失 して い る 。考
察
Milkofcalciumrenalstoneは1959年Howel1 に よ りX線 単 純 撮 影 に て 側 臥 位,ま た は 立 位 で 上 方 に 水 平 面 を 持 つ 半 月 状 陰 影 を 示 す も の と 定 義 さ れ て お り1),1970年Pomeranz2)に よ りcystictypeのCの
藤 塚,ほ か=Milkofcalcium・ 内 視 鏡 的 除 去 ロラご 庶 浮 鵯 κ 層 ・'!乍 ・!「∫ 1. Fig.4.ExtractedstonesaboutO.5∼2mmin diameter 型 とhydronephrotictypeのH型 に 分 類 さ れ て い る.本 邦 で は1968年 広 中 ら3)が 第1例 目を 報 告 以 来, 当 教 室 の 逢 坂4),鈴 木5)の 報 告 を 含 め80例 近 い 報 告 例 が あ る.守 谷 ら6)の71例 の 集 計 に よ る と,年 齢 で は30 台,20台 に 多 く,男 女 比 は32:39と ほ ぼ 同 等 で,側 腹 部 痛 等 の 痙 痛 を 機 に 発 見 さ れ る も の が 多 い が 無 症 状 の も の も あ る. 治 療 法 と し て は 無 症 状 の も の は 経 過 観 察 と さ れ る こ とが 多 く,症 状 を 有 す る も の は,憩 室 壁 切 除,腎 部 分 切 除 な ど のopensurgeryが 適 応 と な っ て い る.こ のopensurgeryを 選 択 す る 理 由 と して,蜂 谷 ら7)は Pomerantzの 分 類 のC型 の 場 合 に は,憩 室 と 腎 杯 と の 交 通 路 つ ま り憩 室 口 が 狭 く,憩 室 内 の 尿 停 滞 そ の も の が 結 石 形 成 の 原 因 と な っ て い る た め,憩 室 の 切 除 が 再 発 防 止 の た め に 必 要 で あ る と し て い る,こ の よ うに 本 邦 で はmilkofcalciumに 対 し て は,近 年 一 般 の 尿 路 結 石 の 治 療 法 と し て 主 流 を な して き て い るendo-urologicalな 治 療 法 つ ま りESWLや 内 視 鏡 を 用 い て の 除 去(PNL)は ま だ 報 告 され て い な い の が 現 状 で あ る. し か し な が ら,単 な る 腎 杯 憩 室 結 石 に 対 し て の endourologicalな 治 療 報 告 は 欧 米 で 散 見 さ れ て 来 て い る.DretlerB)ら は10例 の 腎 杯 憩 室 結 石 症 例 に ESWLを 行 っ た 報 告 を し て い る が,そ の 成 績 は 残 石 率 が80%と 高 く,ま だ 検 討 の 余 地 が あ る も の と 思 わ れ る.こ れ に 対 してHulbert9)ら は 経 皮 的 結 石 除 去 と 拡 張 器 や バ ル ー ン ダ イ レイ タ ー に よ る 憩 室 口 の 拡 張 を 10例 に 施 行 し 全 例 で 結 石 の 除 去 が 可 能 で あ り,半 数 の 症 例 で 憩 室 の 消 失 が 認 め られ,経 皮 的 除 去 の 確 実 性 を 1449 示 してい る.ま た 彼 は大 きな 腎杯 憩 室 で憩 室 口の非 常 に 小 さな ものの 処理 を経 皮 的 に 電 気 凝 固(fulgura・ tion)し,2週 間 の 腎塵 留置 に よ り4ヵ 月 後 に憩 室 の 消失 が 得 られ た と しID),同 様 に 腎護 胞 に対 す る経 皮 的 電気 凝 固術(endocystlysis)tl)の 有 用 性 を報 告 して い る.こ の よ うに 腎杯 憩 室 に対 す る処 置 法 が 確立 され た な ら,手 術 侵 襲 も少 な く,繰 り返 し施 行 す る こ とが 可 能 であ る とい う利点 か ら も,milkofcalciumに 対 して も経 皮 的 な 内視 鏡 に よ る除 去を 治療 法 の第 一選 択 と して も良 い もの と思 われ る. 本 症例 で は 憩室 口の確 認 が不 能 で あ った た め 拡張 術 が 行 え ず,患 者 の入 院 日数 に 制限 が あ った た め電 気 凝 固術 も行わ な か った が,PNL施 行 時 に 逆 行性 に色 素 等 を注 入 し,憩 室 口を確 認す る とい った工 夫 も必 要 で あ った と反 省 して い る,今 後 再 発 が生 じた 時 に は再 度 PNLを 行 い,憩 室 に対 して はfulgurationを 施 行 した い と考 えて い る,結
語
18歳 の 女 性 に 発 生 し た 右 腎 杯 憩 室milkofcalcium renalstoneに 対 し て 内 視 鏡 に よ る 除 去 を 行 っ た の で, 経 皮 的 操 作 に つ い て の 有 用 性 を 検 討 し た. な お 本 論 文 の要 旨は 第200回N本 泌 尿 器 科 学 会 東北 地 方 会 に おい て発 表 した.文
献
1)HowellRD:Milkofca且ciumrenalstone. Jurol82:197-199,1959 2)PornerantsRH,KirschnerLMandTwigg HL:Renalmilkofcalciumcollection: reviewofliteratureandrepQrtofcase.J Urol103:18-20,1970 3)広 中 弘,酒 徳 治 三 郎,桐 山 蕾 夫,福 田 和 男=腎 杯 憩 室 内MilkofCalciumStoneの1例.泌 尿 紀 要141571-574,1968 4)逢 坂 宇 一,長 根 裕,岩 動 隆,大 堀 勉,松 岡 昭 治,戸 田 宏,鈴 木 俊 彦:Milkofcalcium renalstoneの1例.西 日 泌 尿38:270-275, 1976 5)鈴 木 信 行,長 根 裕lMilkofcalciumrenal stoneの1例.泌 尿 紀 要25:183-187,1979 6)守 屋 賢 治,西 尾 正 一,前 川 正 信,小 早 川 等,安 本 亮 二:MilkofCalciumRenalStoneの1例. 泌 尿 紀 要32:221-225,1986 7)蜂 矢 隆 彦,野 垣 譲 二,川 添 和 久,布 施 卓 郎,滝 本 至 得=MilkofCalciumRenalStoneの1例. 臨 泌40:649-65Ll986 8)PsihramisKEandDretlerSPlExtracor・ porealshockwavelithotripsyofcaliceal diverticulacalculi.Jurol133=707-711,1450 泌尿 紀 要36巻12号1990年 1987 9)HulbertJC,ReddyPK,HunterDW, Castaneda-ZunigaW,AmplatzKandLange PH=Percutaneoustechniques{brtheman・ agementofcalicealdiverticulacontaining calculLJurol135=225-227,1986 10)HulbertJC,LapointeS,ReddyPK,Hunter DWandCastaneda-ZunigaW:Percutaneous endoscopicfulgurationofalargevolume calicealdlvcrticulum.Juro1138=116-ll7, 1987 n)HulbertJC:Intrarenalendosurgicaltech・ niqucs.In:AtlasofEndourology.Editedby Ampl・t・K・ndL・ng・PH・PP・267-273・ YearBookMedicalPublishers,Chicago, London,1986 (ReceivedonJanuaryl6,1990Acceptedo皿Apri藍5,1990)