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Title
翻刻 陽明文庫蔵『歌枕名寄』(中)
Author(s)
樋口, 百合子
Citation
樋口百合子 : 人間文化研究科年報 (奈良女子大学大学院人間文化研
究科) , 第26号, pp.350-339
Issue Date
2011-03-31
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/2830
Textversion
publisher
前号 (第二十五号) 「陽明文庫蔵 『歌枕名寄』 巻第三十六」 に引き続き、 「調巻三十六軸外 未勘國部上」を掲載する。 〈翻刻〉 謌枕名寄 調巻三十六軸外 未勘國部上 磐城山 87 〈 12―3195 〉 いはき山たゝこえきませいそさきのこぬみの濱に我たちまたん 88 秋風抄 家持 駒なつむ岩城の山をこえかねて人もこぬみの濱にひとりかもねん 89 定長 いたつらにゝほふもつらし心なき岩木の山の花の夕はへ 古奴美濱 90 後十七 俊頼 いほさきのこぬみの濱の空貝もにうつもれていく代へぬらん 91 続後十五 家隆 跡たえて今はこぬみの濱楸いく世のなみの下にくちなむ 木綿間山 河哥下巻河部ニあり 92 中務卿 つき草のはなたの帯のゆふま山たえぬる妻を鹿や鳴らん 93 六百番 顕昭 ゆふま山松の葉風にうちはへて蝉のなくねも嶺わたるなり 九オ」 矢野神 万十詠紅葉 94 現六 〈 10―2178 〉 つまかくすやのゝ神山露霜ににほひそめたりちらまくおしみも 95 常磐井入道 秋といへは鳴や小鹿のつまかくすやのゝ神山露もそむらん 96 同 光俊 名にたかきやのゝ神山さ夜ふけてはや弓張の月もいるらし 益神山 97 同 つらさのみますの神山しめかけていかにいのりししるしなるらん 志奈布勢山 98 知家 四三 (比較文化学専攻)
樋
口
百
合
子
翻刻
陽明文庫蔵『歌枕名寄』
(中)
よゐのまに雪つもるらん槙のはのなゝふせ山に風も音せぬ しなふせ山紀伊國背山に載之 99 〈 3―291 〉 槙の葉のしなふせ山 万三 巻来山 100 万十 〈 10―2187 〉 妹が袖まきこの山の朝霧ににほふ紅葉のちらまくおしも 九ウ 」 能登香山 101 万十一 〈 11―2424 〉 紐鏡のとかの山もわれゆへか君きませるにひもとかすねん 礒邊山 只是海辺山但八雲御抄越前又松嶋有之 102 新勅三 家隆 夏衣ゆきてもすゝしあつさ弓礒への山の松の下陰 103 知家 浪かゝる磯邊の山の松虫は音にあらはれて聲うらむ也 104 万十一 〈 11―2444 〉 白真弓いそへの山の常盤なるいのちならはや戀つゝおらん 佐奴山 或哥枕讃岐云々 105 〈 14―3473 〉 さの山にうつやをのとのとほかともねもとかころかおゆに見えつる 兒持山 106 俊頼 こもち山谷ふところにおひたちてきゝのはくゝむ花をこそ見れ 107 万十四 〈 14―3494 〉 こもち山 若 ワカ 蝦 カヘル 手 テ のもみつまて ね 以下本ノマゝ もと はもふなはあとかもふ 安可見山 十オ」 108 万十四 〈 14―3479 〉 あかみ山草ねかりそけあはすかへあらそふいもしあやにかなしも 塩干山 109 万十四 〈 16―3849 〉 いきしにの二の海をいとひみてしほひの山をしのひつる哉 借香山 或云是春日山也 110 万十 〈 10―2195 〉 鴈金の聲きくなへに明日よりはかりかの山はもみちそめなし 五百隔山 111 万六 長 〈 6―971 〉 白雲の龍田の山の露霜に色つく時にうちこえて 客 タヒユク 行 君はいほへ山いゆきさくみて 賊 アタマモル 守 つくしにいたり 山のそき野のそきみよと 伴 トモノヘ 部 をわかちつかはし やまひこのこたへむきはみ谷くゝのさわたるきはみ 国かたをみせしたまひて冬こなり春さりゆけは とふ鳥のはやみきたりて龍田道の岡へのみちに 十ウ」 に 丹 管 士 つゝし のにほはむ時の桜花さきなむ時に山たつの 面影山 112 六帖 我せこかおもかけ山のさかさまにわれのみ戀てあはぬねたしも 113 伊頼母 別にしつらさや今ものこるらん面影山のありあけの月 情山 114 六百番 たえはてぬなさけの山に雲きえてはるゝ心やほしあひのそら 物思山 四四
115 拾十三 年をへてしけきなけきをこりもせてなとふるこ い 本 れ物おもひの山 来座山 116 同 〈 7―1097 〉 人丸 我せこをきませの山と人はいへと君もきまさぬ山の名ならし 妻戀山 117 衣笠 ゆふつくよくれ行まゝに鳴まさる秋の小鹿の妻戀の山 十一オ」 片敷山 118 六帖 夏ころもかたしき山の時鳥なく聲しけくなりまさる哉 寝山 119 西園寺入道 ころもうつね山のいほのしは
く
もしらぬ夢ちにまよふ手枕 120 知家 そらやきけあくるね山の時鳥名のりしつゝそしのはさりける 衣々山 121 曽丹集 好忠 冬こもりきぬく
山をみわたせははるゝまもなく雪はふりつゝ 暁山 122 中務卿 きぬく
のあかつき山の時鳥たれにわかれてねをはなくらん 誰彼山 123 定家 おもふにはくれなむなけのいそけとも花におほめくたそかれの山 夕影山 十一ウ」 124 続古 前内大臣 かれく
に霜をきまよふ冬の日は夕かけ山の道芝の露 煙山 125 六帖 世中をなけきにくゆるけふり山はれぬ思ひをなにゝそめけん 雨山 126 懐中 あめ山のあたりの雲はうちつけにくもりてのみそ見えわたりける 雪氣山 127 兵衛 とひわたる煙の末もはてそなき雪氣の山の奥の夕暮 照月山 128 朝日影てるつき山にてる月を面影にしてみむといふものを 星岡山 129 昭門 よゝをへていくよになりぬ久方の天くたりけん星をかの山 神垣山 十二オ」 130 千早振神垣山の榊葉はしくれも色もかはらさりけり 御倉山 131 千十八物名 俊頼 みくら山槙の屋たてゝすむ民は年をつむともくちしとそ思 右一首まゝきのやたてといふ事をよめる 御階山 132 懐中 四五わたるともつえをもつかし君か代は御はしの山のうこきなけれは 籬山 133 良教 夕暮のまかきの山やこれならん月をへたてゝ鹿そなくなる 134 家持 八重葎まかきの山の夕暮によるはこえしと松虫そなく 135 万代 こめやらぬ心そつらき夕暮のまかきの山の花の下陰 〈注 玉垂山の下に細字同筆にて書けり〉 玉垂山 136 頼綱 あらはにやうちもみゆらん玉たれの山のは出る月のひかりは 琴引山 顕昭哥枕但馬國入之 137 六帖 いつくにかしらへの聲のたえぬらん琴ひき山のをとのきこえぬ 十二ウ」 138 しら浪のよりくる絲をよりかけて風にしらふる琴引の松 挿頭山 139 俊継 春の日のかさしの山の桜花ちりかふことそ面影にたつ 松原山 里 140 色かへぬ松はら山の陰よりもしけきは君かめくみ也けり 141 君かため一木に千代をちきりつゝゆくすゑとをき松はらの里 爪木山 俊頼 142 夜とゝもにすむはつま木の山なれやなかてや鹿の秋はすくらん 右家集云殿上にて鹿を所の名によめる 芦間山 或云常陸国云々池ハ攝州難波云々 143 舟とむる入江の棹のをとすみてあしまの山にのこる秋かせ 石陰山 十三オ」 144 俊頼 身をしれはあはれとそ思てる日うすきいはかけ山にさけるうの花 峯越山 145 尋きて我こそ君をえはたみねこし山路をはいつかわすれん 引野山 八雲御抄拾遺元輔哥云々 末野山 146 家隆 朝日さす末の野山の嶺つゝき空行人は雲もかゝらす 千里山 147 法性寺入道 都にて月の雲井やなかむらん千さとの山の岩のかけ道 渚原山 148 能宣 人しれぬ戀をのみこそすはら山これよりふかく入ぬと思へは 藪黒山 十三ウ」 149 むかしみし人をそ今はわすれ行やふくろ山のふもとはかりに 四六
鞘方山 屋代嶋にあり周防有之 150 嵐ふくさやかた山に雲消て月影たゝむ迫門のしら波 諸端山 151 つらしとてもろはの山にかへるともわれ山彦になりてたつねん 入佐山 原 八雲御抄但馬國云々 152 源兼昌 ゆふつくひ入さの山の高根よりはるかにめくる初しくれかな 153 経家 あつさゆみ春の日くらし引つれているさの原にまとゐをそする 鳥住山 154 六百番 ふかけれは聲もきこえす鳥すみのやとりは山の名にこそ有けれ 嬰兒山 155 我ことやうひねはなくと時鳥みとりこ山に入てこそきけ 十四オ」 思子山 或云彦山也 156 懐中 かくてのみわひ思ひ子の山なれは身はいたつらになりぬへらなり 呼子山 157 明教法師 名にたてるよふこの山のよふこ鳥はや鳴出ぬ春きたりとて 子呂伏山 158 いときなき戀はいまやはならふらんこゝころふしの山ともえつゝ 麻機山 159 ことゝもにあさはた山みをる物は木々の紅葉の錦也けり 熱佐山 160 天津風ふかすもあらなん夏の日のあつさの山に雲ものとけし 今案云長門國厚郡也或云梓山懐中云々 和夫加山 十四ウ」 161 良玉 身のうさをおもふ涙はわふか山なけきにかゝる時雨也けり 半山 162 初霜やそめはつすらん紅葉はのむらこにみゆるはした山かな 右半山習俗抄美作國云々此哥近江入之 葉垂山 163 時雨するはたれの山は紅葉はの色つくほとの名にこそ有けれ 深師山 164 なへてそのふかしの山にいりぬれはかへらん道もしられさりけり 近見山 165 懐中 おもふ人ちかみの山ときくからにふもとのはらもなつかしきかな 限山 166 同 我ためによき事みせは世中に今はかきりの山に入なむ 十五オ」 四七
管木山 嶋 167 あら礒のつゝきの山は風さえてをちかた人にかへるしらなみ 168 あふことのつゝきの嶋にひく 鯛 本 のたひかさならは人もしりなん 比弖山 169 むかし我門出にしてしひての山心よはらすかくる物かは 武倍山 170 六帖 人よりも思のほれる君なれはむへ山くちはしるへなりけり 大山 171 同 我せこを我こふらくは大山のつゝしの花のことさかり也 中山 美濃國 172 懐中 君もこす我もゆかすの中山はなけきのみこそしけるへらなれ 阿比中山 十五ウ」 173 西行 あつまねやあひの中山ほとせはみ心のおくの見えはこそあらめ 或云安威中山云々 冨山 174 むかしより名つけそめけるとみ山は我君の代のためにそ有ける 志古山 付小口原 175 西行 雲鳥やしこの山路はさてをきつをくちかはらのさひしからめや 語山 奥州也 176 肥後 小夜ふけてかたらひ山の時鳥ひとりねさめの友ときくかな 火田山 畑山 177 新六 為家 はた山のおのへたかゝや――― 原山 筑前國太宰府 178 為家 はら山のさゝ屋の床のかりふしに鳥の音きこゆ明ぬこのよは 十六オ」 龍御山 179 源仲正 雲はれぬりうのみ山の時鳥 て 以 下 本 ん をかけたて鳴わたる哉 故奈白嶺 180 万十四 〈 14―3478 〉 とほしとふこなのしらねにあほしたもあは人したもなにこそよされ 管御嶽 181 拾七物名 紀輔時 かゝり火のところさためすみえつるはなかれつゝみのみたけ也けり 熊山嶽 182 西行 ふもと行舟人いかにさむからしくま山たけをおろす嵐に 吹明峯 183 家隆 秋の夜を吹あけの峯の木枯に横雲しらむ山のはの月 四八
杉谷 184 実仁法し すき谷のふるすにやとる鶯のなく聲春のしるしなりけり 十六ウ 」 八十隅坂 185 万三 〈 3―427 〉 百 モゝ たらすやそすみ坂に手向せは過行人にけたしあはむかも 186 堀百 俊頼 もゝたらすやそすみ坂の白つゝししらしな人は身にこそふるとも 住坂 或云上野國 187 万四 〈 3―504 〉 君か家に我すみ坂の家ちをもわれはわすれしいのちしなすは 尾崎隈 188 野への草またあをしとやかた岡のおさきの隈にきゝす鳴なり 真井隈 189 俊頼 ま井のくまはなつ日くれはわかるとも水のみなはにあはさらめやは 水茎岡 有近江 有筑前八雲御抄近江云々 190 古廿 水くきのおかのやかたに妹とあれとねてのあさけの霜のふりはも 191 万十 〈 10ー2193 〉 秋風の日にけにふけは水茎の岡の葛葉も色つきにけり 十七オ 」 192 万十 〈 10―2208 〉 鴈金のさむくなり行水茎の岡の葛葉は色つきにけり 193 現六 さゝの葉のさやく霜夜は水くきのおかの屋形にふしそわひぬる 194 順徳院 水茎の岡のあさちのきり
く
す霜のふりはや夜寒なるらん 195 万七 〈 7―1231 〉 天霧あひ日かたふくらし水茎の岡の水門に浪立わたる 跡見岡 196 澄寂 霜かれの跡みのおかの下草もかくろへはてゝつもる白雪 佐奈都良岡 197 万十四 〈 14―3451 〉 さなつらの岡に粟まきかなしきかこまはたくとも我はそともはし 伎波都久岡 198 同 〈 14―3444 〉 きはつくの岡のくゝみら我つめとこにものたまふせなとつまさね 美夜自呂岡 199 同 〈 14―3575 〉 みやしろのすかへにたてるかほか花さきい て 以下本 そねこめてしのはん 十七ウ」 伊奈岡 200 同 〈 11―2539 ・ 14―3470 〉 あひみてや千とせやいぬるいな岡もあれやしかもふきみまちかてに 切蒲岡 201 元輔 朝またきゝりふの岡に立雉は千代の日つきのはじめ也けり 202 家隆 はし鷹のきりふのおかのたけの露をおふちの鈴とみかく月影 巣立岡 小野 四九203 伊家 春くれはすたちのおかの鶯のこゑならはしに今そ鳴なる 204 寂蓮 こをおもふすたちの小野を朝行はあかりもやらす雲雀なく也 指南岡 205 隆源 むらきえし雪も外にはみえなくにしるへの岡はなをそつもれる 入日岡 206 続古 土御門 はし鷹のすゝのしのはらかり暮て入日のおかにきゝす鳴くなり 十八オ」 渚久藻岡 207 衣笠 時しあれはすくもの岡の初わらひ下にたへてもしる人はなし 角岡 208 匡房 つのゝ岡南にかへる梅の花君かみことにかよふ也けり 鞆岡 209 顕氏 とねりこか袖や露けきとも岡のしけきさゝふのいつさいるさに 鞠岡 210 時用女 まりのおかなにをかゝりと思ふらんかたうつ浪の音はかりして 離岡 211 現六 かた山のすそ野のはらのはなれ岡夏草しけみ鹿やこもれる 安騎野 212 万一 〈 1―46 〉 秋のゝにやとかる旅人うちなひきいもねせしやもいにしへ思に 十八ウ」 大野 213 すかるなく秋の大野をきてみれはいまそ萩はら錦をりかく 荒野 又或夷荒野 顕昭哥枕云私云非別名云々 214 万一 〈 1―47 〉 みくさかるあら野にはあれとはすき行君かゝたみの跡よりそかし 215 同二 〈 2―227 〉 天さかるひなのあら野に君をゝきていもひつゝあれはいけりともなし 216 覚性法し 故郷は我なれ衣かさぬらし秋風さむしひなのあら野も 東野 有吉野云々 217 万一 〈 1―48 〉 あつまのゝ煙のたてるところにてかへりみすれは月かたふきぬ 218 法印実伊 雲こそは空になからめあつまのゝ煙もみえぬ夜はの月影 219 定家 あつまのゝ露のゆかりのかや莚見ゆらんきゝてしきの ふ 本 とは 右光明峯寺十首哥合 信野 十九オ」 220 〈 2―96 〉 真薦かるしなのゝ真弓我ひかは 宇 ウ マ 真 人さひていなといはんかも 借高野 五〇
221 万七 〈 7―1070 〉 ますらおか弓末ふりたてかるたかの野さへきよくてる月よかも 阿波野 原 222 〈 7―1404 〉 かゝみなる我見しかけをあはの野の花たち花の玉にひろはん 223 時鳥いまきなけともかゝみなるあはのゝはらにゝほふたち花 敷野 224 〈 10―2143 〉 君にこひうらふれをれはしきのゝの秋萩しのきさほ鹿なくも 沙額田野 225 今はゝや小雨もは ぬ 以 下 本 さぬ かたの野への秋萩おりてかさゝん 入野 原 或甲斐國 226 新古四 〈 10―2277 〉 さをしかのいるのゝ薄はつ尾花いつしか妹か手まくらにせん 十九ウ」 227 家隆 誰かために入野の真萩それなから籬のすゝきとふ人もなし 228 順徳院 かり人のいるのゝ露のしらま弓末もとをくて秋かせそ吹 229 源顕國 みちとをみ入野のはらのつほすみれ春のかたみにつみてかへらん 花野 小野 230 万十 〈 10―2285 〉 秋萩の花のゝ薄ほには出す我こひわたるこもりつまはも 231 宰相 ふる雪の花野に出てしつのめかあさての若菜今やつむらん 旗野 232 万十 〈 10―2338 〉 みそれふり板間風ふきさむき夜やは た 本 の今夜わかひとりねん 小竹野 原 万哥には左々野 しのゝ 233 〈 10―1977 〉 きゝつやと君がとはせる時鳥さゝ野にぬれて今夜鳴わたる 234 小鹿ふすさゝのゝ原のしの薄うらさひしけに見ゆる山さと 薄野 二十オ」 235 土御門 すゝきのゝみとりか末の初尾花なひくにつけてよるかたもなし 聞都賀野 236 万十一 〈 11―2752 〉 わきもこをきゝつか野へのねふりの木我はしのひえすまなく思へは 末原野 237 同 〈 11―2638 〉 梓弓すゑのゝ原にとかりする君か弓つるのたへんと思へや 238 光明峯寺 ぬれつゝもしゐてみかりの梓弓末の原野に霰ふるらん 誰葉野 八雲御抄載之 239 〈 12―2863 〉 たかはのにたちしなひたるみわ小菅ねかくれてたれゆへにかは わか戀さらん 等夜野 五一
240 堀百 源顕仲 しつのおか柴かりみたりとやの野に今朝そ霞はたなひきにける 麻掃保久野 241 〈 14―3441 〉 まとほくの雲ゐにみゆる妹か家にいつかいたらむあゆめあか駒 二十ウ」 右或云非野名云々 水久君野 242 万十四 〈 14―3525 〉 み く ゝ 野 に か も の は ほ の す こ ろ か う へ に こ と を ろ は へ て い ま た ね な ふ も 津武賀野 243 家隆 春きぬと雪まの若菜しつのめかつむかのゝへを朝かすみゆく 美都賀野 万十四雑哥にありみつか野に鷹狩 安治麻野 越前にあり 244 〈 15―3770 〉 あちま野にやとれる君かかへりこん 万十五 和射美野 今案云 美濃國 和射美原也 245 〈 11―2722 〉 わきもこか笠のかりてのわさみのに我は入ぬと妹につけこそ 二一オ」 鈴野 須 ス タ ノ 陀 イ 246 きゝす鳴すゝのに君か道すへてあまふますらんいさ行てみん 朽師野 付山 小河 247 君こふと衣のすそをくたしのゝ山の小河のやせこそわたれ 御食師野 248 〈 13―3296 〉 ちゝ母にしられぬこゆへみけしのゝ夏野の草をなつみくるかも 張野 249 権中納言 あつまちのはりのゝ清水えてしより神の社といはひそめてき 奥野 250 堀百 藤原顕仲 あさ に よイ けに見れともあかす白露のおくのゝ萩の秋のけしきは 岡野 251 経衡 朝またきおか野のゝへのつほ菫つむへきほとになりも行かな 二十ウ」 大野 所々有之 252 万十一 〈 11―2457 〉 大野らの小雨ふりしく木の本に時とよりこよ我思ふ人 蟹大野 253 俊頼 あしてなきかにの大野にはなされてするかたもなき身をいかにせん 狩場小野 254 新古十一 〈 12―3048 〉 みかりするかりはの小野のなら柴のなれはまさらて戀こそまされ 255 同 草深きかりはの小野をたち出て友まとはせる鹿そ鳴なる 256 続古 知家 五二
入日さすゆふかりをのゝ下はれて草とふ鳥の跡もかくれす 狩路小野 池 257 万三 長 〈 3―239 〉 若草にかりちの小野に し 鹿 ゝ こそはいはひふせらめ うつらこそいはひもとほれ 258 万十二 〈 12―3089 〉 とをつ人かりちの池にすむ鳥のたちてもゐても君をしそ思 二二オ」 押垂小野 259 万十六 〈 16―3875 〉 琴酒をゝしたれ小野に出る水ぬるくはいてす 寒 ヒヤ 水 の心もけやにおもほゆる 略之 宇乃原 或上野 或山城 260 しらさりきたのめしことをわすれ草身のうのはらにおふる物とは 青見原 261 好忠 道芝も今日は春へとあをみ原おりゐるひはりかくろへぬへみ 兒笠原 262 六帖 君かきるこかさの原にゐる雲のたえすはするゝ戀もするかな 宇奈比兒原 263 同 名におはゝいつれもかなし朝ことになてゝおほしゝうなひこかはら 朝田原 二二ウ」 264 朝日さすあさたのはらの霜よりも消て戀しき君かことのは 朝原 265 あさ原にさ夜うちふけて恋しきはせこそしるらめひとりぬるよは 不遇原 266 親房 戀ふともあはすのはらにさく萩の花のちりなん名こそおしけれ 浮沼原 近江 267 相坂の関をはしらて人心うきぬの原になとまよふらん 歎森 268 ねきことをさのみきゝけん社こそはてはなけきの森となるらめ 269 現六 信実 まとはるゝなけきの森のさねかつらたえぬや人の心なるらん 270 金八 いかゝせん歎の森はしけゝれと木の間の月のかくれなきよを 茂森 二三オ」 271 み山なるしけ木の森の下紅葉いつくをもりてそむるしつくそ 花薗森 272 東宮 春のくるけふをわれやはわすれまし花その森のかすまさりせは 風森 273 按察 うらみしな風のもりなる櫻花さこそあたなる色にさくらめ 五三
本ノマゝ 森 274 衣笠 夕立のしつくの森の下草は秋のよそなる露やをくらん 名越森 名越山 同所 275 季能 六月のなこしの森の夕すゝみ御祓もまたぬ秋の夕かせ 往合森 276 中務卿 風かよふかた枝に露やこほるらん夏と秋とのゆきあひの森 出入森 二三ウ」 277 □ 新 六 カ □ 光俊 神よいかにいつをいつとかたのむへきはかなきいきの出入の森 吉忠杜 278 資隆 よしたゝの森の下草年をへてしけりさかりに見ゆる宿かな 何然杜 279 俊頼 鶯は春まちつけていつしかに森のたえまに聲もらすなり 山下杜 280 信実 ふり行は杉のみとりも色つきて杪さひたる山もとの森 田中杜 今案非名所 281 為家 山きはの田中の森にしめはへて今日里人の神まつる也 耳森神 只神の名 282 長能 ちはやふる天のいはつきをしひらき我にそかたるみゝもりの神 須留毛宜森 二四オ」 283 仲正 世の中は思ひみたれてふる雪のかゝるかたなきするもきの森 雪林 284 土御門院 紅のかすみや今朝はにほふらん雪の林の春の明ほの (二行分の空白を隔てて、すぐに「未勘國部下」に続く。 ) 〈注〉1 凡例は前号に従う。 2 「未勘國部下」 は 『古代文学研究 第二次十九号』 (二〇一〇 年十月)に掲載。 [付記] 翻刻掲載の御許可を頂き、また御教示いただきました 名和修陽明文庫長に末尾ながら心より感謝申し上げます。 五四