インターネット無料情報源の有効活用について
医薬情報ネット21
1 著者抄録:昨今のインターネットの普及には目をみはるものがある。我々医薬情報ネット21 (PINET21,以下PINET)は,無料で入手できるインターネット情報源について情報交換を行い, 若干の成果を得たので報告する。まずメンバーが手分けして製薬企業にとって有用なサイトを収 集し,編集してVirtual Libraryを構築した。その中で製薬情報について特にユニークで有用なサイ トをいくつか紹介する。次に無料のインターネット情報源を積極的に活用する手段として注目さ れる自動巡回ロボットについて紹介する。さらに,無料情報を活用する際の留意すべき著作権上 の問題点についても検討を加えた結果を報告する。これらよりインターネット上の無料情報源に は有用なものがあり,ますます利用が拡大するに違いないことを確認した。最後に,企業内の情 報担当者は情報収集力に加えて情報の解析力をも備えるべきであると提言し,そのためにはPINET のような人的ネットワークが重要な手段となることを強調したい。 キーワード:Virtual Library,インターネット,無料情報源,製薬情報,自動巡回ロボット,著作 権,情報スペシャリスト,人的ネットワークEffective use of the Internet free source
PINET211Author Abstract: The recent spread-out of the Internet is surely remarkable. The authors,
Pharmaceutical Information Network 21 (i.e. PINET) have exchanged information regarding free sources available on the Internet and report the result in this paper. Useful sites for pharmaceutical companies are collected, edited and an integrated link page so-called “Virtual Library” is built. Some especially unique sites among them are introduced in this paper. The automatic circulating robots are introduced as a means to collect and utilize free information sources on the Internet effectively and positively. Some copyright issues which have to be paid attention when ones utilize free information source are also described. It is confirmed that there are useful free information sources on the Internet and the use of them are expanding more and more. In addition, it is suggested that information specialists in firms should have not only information collecting ability but also information analyzing ability. Finally, the importance of human network like PINET is also emphasized.
Key words: Virtual Library, internet, free sources, pharmaceutical information, automatic round
robot, copyright problem, information specialist, human network
(情報管理 44 (1): 28-41)
1. はじめに
数年前までは,情報にはお金がかかるという考え が常識であった。しかし昨今のインターネット技術 の革新により,誰でもどこでも情報を無料で容易に 入手できる環境となった。 身近な例として,厚生労働省やFDAによる新薬審 査経過,添付文書,日米欧三極特許庁の特許公報, 米国国立医学図書館によるPubMed(Medline)など の官公庁からの情報提供,民間企業および大学など の研究機関からの技術論文やpress releaseなどの無 料サービスがある。 PINETはこうした環境の中で一歩先の道を探索 するために集まった,医薬品産業関連の情報を扱う メンバーによる任意の勉強会であり,メンバーの1 人が所属する(株)ホンネットのサーバ上に情報共有 の場と してのHome Page(図1)を開設している。 我々はインターネット上の無料でかつ質の高い,有 用な医学薬学関連情報を効率的に収集する方法を 1医薬情報ネット21 1PINET21検討した。成果としてVirtual Library,サイト活用事 例,自動巡回ロボットの活用,留意すべき著作権関 係をまとめたQuick Referenceなどを報告する。
2. インターネットの拡大と医薬品
産業情報の動向
毎年発行される通信白書1) および関連文献2) に, 世界のインターネットホスト数の急激な増加推移 図1 PINET公開ホームページ 図2 インターネット拡大の動向(通信白書ほかから作成)が示されている。国内ドメイン数も,この2年間で あまりにも急激な増加を示したため,企業の受ける 影響も大きい。同様に国内プロバイダ事業者数も増 加の一途にある(図2 1,2))。なかでも,医薬品業界 では日米欧三極による臨床試験の国際ハーモナイ ゼーションが着々と進みつつあり,関係省庁の情報 公開の気運がにわかに高まるなど,インターネット のもたらす情報変化の影響はことに大きい。 2.1. 検索エンジンによる製薬情報の収集 我々はインターネットを日常気軽に利用してい る。初心者でも抵抗なくそれなりに検索できるの は,特徴的な機能を備えた検索エンジンといわれる ものが,行き渡っているからである。特にディレク トリ型の代表であるYahooは定評があるが,Gooや AltaVistaなどのロボット型も有効である。また複数 の検索エンジンを一度に検索できるメタサーチエ ンジンも出現している。利用者は目的に応じて各種 の検索エンジンを使い分けるとよい。 一般的に医薬関連用語である疾病名で検索した 場合,効率的に情報を入手できるものだろうか。我々 は日頃よく使う単語で,国内外の主な検索エンジン を検索してみた。結果を表1に示すが,ヒットするサ イト数に大きな差があることがわかった。浅井勇夫 氏も「検索デスク」(http://www.searchdesk.com/)に おいて同様の傾向を指摘している。 さらに,我々はこのあと絞り込み検索を行い,目 的とするサイトに到達しようとした。詳細は省くが 若干の成果を得たものの,ノイズが多く,絞り込み 作業が大変難しいことがわかった。必要な情報を迅 速かつ的確に入手しうるさらに高機能の検索エン ジンの出現が望まれる。 一方インターネット上の情報収集ツールとして リンク集がある。特定のジャンルについてのみ調査 する場合はこのリンク集の利用も効果的な方法で ある。我々も製薬企業に有用なサイトを収集したリ ンク集「Virtual Library」を構築することになった (第3章参照)。 2.2. 製薬関連企業Home Pageの最近の特徴 このような製薬関連の情報の場合,検索エンジン などを利用するよりも効果的と思われるものに,製 薬企業のHome Pageがある。企業は限定されるが, そこでの情報は相当に専門的で絞り込まれたもの であると考えてよい。製薬企業のHome Pageには, 最近以下のような特徴がみられる。 ・ 自社製品の製品情報の活発な掲載によるPR効果: この方式は海外,特に米国において顕著である。 国内企業では,医薬品の適正使用アピールと安全 性情報の提供という責務を担って規制当局と企 業側担当者の努力が続いている。 ・ 医療従事者向け情報の提供:医師などを対象とし た医療現場で必要とする薬剤の詳細な情報が強 化されている。 ・ 米国におけるクリエイティブパワーに富む画面 による効果3):新しい効果をねらった人体の完全 な画像データを掲載するなど,インパクトのある 情報の提供が始まっている。 ・ M&AとHP:昨今,企業の統合や吸収合併などに よりHome PageのURLが頻繁に変わることが多い 表1 検索エンジンの比較−医学用語によるWEBサイトヒット件数一覧−
が,最近変化のあったURLとその対応の仕方をみ ると,ほとんどの企業では,新規URLを紹介しリ ンクして変更先へとぶように対策がなされてい た。つまり企業にとってHome Pageは重要な顧客 に対する情報の窓口であることを認識している ことを表していると思われる。 2.3. 治験薬データベース情報との比較 具 体的 な 治 験 薬の 情 報 に関 し て,製 薬 企 業の Home Pageと商用治験薬データベース(以下治験薬 DB)とを比較検討した結果を表2に示す。治験薬DB に情報が未収録でもHome Pageには情報が掲載され ている場合,あるいは治験薬DBに開発情報が収録 されていても,より開発が進んだことを示す最新の 情報がHome Pageには掲載されている場合があるこ とがわかった。 治験薬全体においてどの程度このようなことが あるのかは不明であるが,情報開示の傾向ととも に,今後 は開 発ス テー ジの 更 新情 報に おい ては Home Page情報の価値がますます高くなると予測さ れる。
3. Virtual Libraryの構築と運営
ブックマークの収集はインターネットを効果的 に利用するために必要な作業であるが,個人で多数 のURLを収集するのは骨の折れる作業である。また 多数のURLを収集したいわゆる「リンク集」が数多 くあるが,必ずしも満足できるものではない。そこ で我々は製薬企業内の情報担当者に適したリンク集「Virtual Library」をPINETのHome Pageに構築した。
作業はまず各自が手持ちのブックマークを持ち 寄ることから始まり,それらを整理,分類して配列 し,収集が不十分なジャンルについては再度集中的 に収集した。2001年1月時点における収録サイト数 の統計を表3に示す。ジャンル数,サイト数ともに まだ満足できるものではないが,現時点での特徴と しては以下のことがいえる。 ・ 製薬企業の情報担当者が共通して使うジャンル を収集した。 ・ 新薬の開発は国内外同時展開が必須となってい るため,海外のサイトも国内サイトに劣らず収集 した。 ・ 一般的なサイト(ジャンル)についてはこれらは 他に検索ツールが多くあるので収集対象から外 した。 ・ 情報検索のツールには,情報担当者としてイン ターネット出現以前から興味があるので,検索エ ンジンについてかなり注意して収集した。 ・ リンク集を積極的に収集することで,少ない労力 で収集効果を上げることを狙った。 ・ 治験薬データベースに関しては現在のところ収 集サイト数が少ない。 このVirtual Libraryの今後の運営方針として我々 は今のところ次のように考えている。 ・ 今後もメンバーが協力してサイトの収集,ジャン ルの拡充に努める。定期的にサイト切れチェック 作業(メンテナンス作業)を実施する。またいっ たん収集したサイトについても適宜その利用価 値を確認する(場合によっては削除する)。 ・ 例えば重要なサイトに簡単な解説をつけるなど 使いやすい工夫を加えていきたい。 ・ 一般にも公開する(URL:http://navi.honnet.co.jp/ pinet/index.htm)。
4. 無料電子ジャーナルの活用と評価
医薬品の研究開発においては多岐多数の学術雑 誌の 利用 が必 須で ある が,冊 子体 と とも に電 子 ジャーナルの購読料が急騰しており,そのためほと んどの製薬企業において図書予算対策に苦慮して いるのが現状である。そこで無料の電子ジャーナル を探し出し,その有効活用を図るため,調査を行っ たのでその結果を以下に報告する。 4.1. 電子ジャーナルの長所 まずは無料・有料を問わず,従来の冊子体と比較 して電子ジャーナルには下記のような多くの長所 がある。 ・ 冊子体より早く入手可能 表2 各社のHPと治験薬データベースの収載内容の差・ 各自PCから自由にアクセス可能 ・ 社内から同時に複数人数がアクセスして利用 可能 ・ 多くの場合,文献内容を検索可能 ・ データの容易な編集加工 ・ ハイパーリンク機能による関連文献の参照:二次 情報データベースからリンクして利用可能 ・ マルチメディア(音声・動画など)の活用も可能 あえて短所を挙げると, ・ 冊子体のようなブラウジング効果が得にくい, ・ 冊子体と比べると読みにくい(個人の好みの問題 でもあるが), ・ 古い年代の蓄積が少ない。 4.2. 無料の電子ジャーナルとは 今回対象とした無料電子ジャーナルは次の定義 に基づいて収集した。 定義:各論文(Article)の全文(書誌事項+本文) が無料で画面上に表示,またはテキスト形式やPDF 形式でダウンロードできる,インターネット上で提 供される雑誌。 対象とする電子ジャーナルにはそのサービス内 容によりいくつか種類4) がある。 (a)フリーアクセス(全論文の全文に無料アクセス 可能のもの,本来の無料電子ジャーナルに相当) (b)期限付きフリーアクセス(数か月といった期間 限定利用のもの) (c)Back Issueのみ可能(最新版ではなく,一定期間
表3 Virtual Library収録サイト数(URL: http://navi.honnet.co.jp/pinet/index.htm)
をすぎた過去のものが対象となっているもの) なお,冊子体購読者のみが無料でアクセスできる 電子ジャーナルは除外した。 表 4 は収集したライ フサイエンス系無料電子 ジャーナルを分野別に統計したものである。全分野 にわたり,なんらかの電子ジャーナルが存在するこ とがわかる。 4.3. 無料電子ジャーナルの現状と問題点 収集したライフサイエンス系無料電子ジャーナ ルに関して現状では以下のことがいえる。 ・ 日本の電子ジャーナルの発行数は少ない。 ・ 欧米の無料電子ジャーナルはかなりあるが,完全 無料のものは少ない。 ・ 期限付き無料のものが多く,期限切れで有料に変 わっていく。
・ Back Issueのみが無料のものもある(例:High Wire
Press)。 ・ 無料電子ジャーナルを網羅的に調査するのは,相 当な労力を要する。 4.4. 無料電子ジャーナル活用における留意点 現在は電子ジャーナルに関してはまだまだ過渡 期ともいえ,今後の動向を把握し対応することが重 要であるといえる。特に下記に挙げたようなことに 留意して,無料電子ジャーナルをうまく活用するこ とが肝要である。 ・ 無料で全文を提供するサービス(例:HighWire Press,PubMed Central)には特に期待したい。 ・ 常に必要とするものを選別し,こまめにアクセス しておく。 ・ 利用期限切れ情報や新規の無料電子ジャーナル のニュースに注意しておく。 ・ 冊子体購読者無料の電子ジャーナルを図書室と 連携してうまく活用する。 ・ 無料だけではなく有料の電子ジャーナルも含め て,電子ジャーナルを全体として効果的に活用で きるように計画的に利用を推進する。
5. 無料情報源の活用事例
PINETで提供しているVirtual Libraryには,相当 数のサイトが収載されているが,その中でもメン バーが特に薦める有用なサイトをいくつかここに 挙げる。 5.1. 医薬品関連情報サイト URL:http://Ask Jeeves.comAsk Jeeves, Inc. が提供するサイトであり,医薬品 関連情報の検索にはユニークな手法で目的情報に 導いてくれる。具体的には,図3に示すように,例 えば「Hypertension(高血圧)」という検索用語を入 力すると,それに関するいろいろな側面からの質問 が出される。この場合,知りたいことは「高血圧」 の危険性か,循環器系の疾病としての病状なのか, あるいはその治療法なのか,日常のヘルスケアなの か…というようにいろいろな角度からの質問がな される。これに対して返答をしていくQ&A形式で, 最終的に自分の目的とする情報に的確にたどり着 けるというものである。 5.2. Medlineブラウザ(Vectorサイト) URL:http://www.vector.co.jp/magazine/softnews PubMedは医薬・製薬分野においては日常的に利 用 さ れ,か つ 専 門 性 の 高 い 情 報 源 で あ る。こ の PubMedを専門にブラウズする機能を持つソフトが 無料で入手できる。キーワードから簡単にブラウズ する機能は,初心者の検索には大変便利なものであ る。本ソフトは,Vectorという各種ソフトのダウン ロードサイトからダウンロードが可能である。 図3 Ask Jeevesでの検索例
Vectorでは他にもMedline関連の編集加工用のソ フトをはじめ,Silver Platter関連など多くのソフト が提供されている。 5.3. 医薬産業関連における統計資料サイト 我々は,医薬産業に関係する各種統計データを必 要とする場合が多く,表5に特に活用に値すると思 われる代表的なサイトをいくつか記載する。この中 の日本製薬工業協会のサイトにアクセスして得た データをCSV形式でExcelにダウンロードしてグラ フにしたものが図4である。このように統計資料を 見栄えのするグラフへと容易に加工編集すること が可能である。 5.4. 治験情報(日本語)サイト これまでは,国内では治験に関する情報はあまり 提供されてこなかったが,表6に紹介するような大 学関係をはじめとする各種サイトが有効である。特 にe治験ドットコムと治験情報ネットは2000年9月 にリリースしたばかりで,一般ユーザを対象とする 情報源として注目している。 記載した各種治験情報サイトをその情報の範囲 の広がりと利用する対象者層によってマトリック ス評価すると図5のようになる。大学病院,医薬品 機構などの提供するものは,医療従事者向けの限定 された特定の情報源であるのに対して,内容は限定 されるが一般ユーザを対象としたのが,e治験ドッ 表5 医薬品産業関連の統計資料サイト 図4 平均寿命に関する統計データ(日本製薬工業協会資料から作成) 表6 治験情報のサイト
トコムや治験情報ネットである。他方,厚生労働省 をはじめ公共機関提供のものは幅広い内容である といえる。 5.5. 有用な特許情報サイト 対応特許調査は,医薬品情報に限らず全分野にお いて頻繁に行われる調査の一つであり,調査方法も 確立されている。その調査に利用できる無料の情報 源という点では,ヨーロッパ特許庁のサイトが有効 であることも,関係者にはよく知られている。そこ で,一般的な商用データベースとの差異が,どの程 度あるものなのかについて具体的に調査した結果 図5 治験に関する情報(日本語) 表7 対応特許収録状況の比較 図6 特許明細書の連続ダウンロード
を表7に示す。その結果,日常の調査範囲において 両者間で問題になるような差異はなく,むしろ無料 の特許庁サイトは有用であることがわかった。ま た,無料情報源としての特許庁サイトの有効な利用 法として原報入手がある。しかし,各特許庁のサイ トで準備されている原報入手機能は,ページごとに PDFファイルがダウンロードできるだけであり,数 十ページにおよぶ特許明細を入手するには非効率 的である。そこで比較的安価で入手できる市販の連 続ダウンロード用ソフトを利用してみると,難なく 迅速に処理することができた(図6)。
6. 自動巡回ロボットの事例
5) 無料の情報源として有用なサイトは多い。しか し,各サイトから情報を収集するためには単調な画 面操作を繰り返さなければならず,非常に多くの時 間を要する。この点がインターネット上の情報を収 集する上での大きな弱点となっている。昨今この弱 点を解消する方法として,ロボットが注目されるよ うになった。今回はPINETの一部メンバーのもとで 稼働している利用例を紹介する。 6.1. ロボットの選択6,7) ロボットによる主な情報収集の方法としては,更 新(追加・削除・変更)されたファイルの情報をダ ウンロードする方法と,指定したディレクトリとそ の下層全体をダウンロードする方法とがある。各 ファイルでは誤字,脱字,収録するディレクトリ, リンク先等々,内容の本質的な部分とは直接関わり のない末節の更新が頻繁に行われている。現行のロ ボットには,更新内容が本質的か否かを識別する機 能が欠如しており,前者の方法でダウンロードされ た情報では,内容の本質的な部分での更新が全く行 われていないものが大半である。このようなノイズ の多い情報収集を避けるため,後者のロボットを利 用し,本質的な部分が更新されたファイルのみを自 動抽出ダウンロードするなどのカスタマイズ化を 図っている。カスタマイズ化の方法については,6.3. において改めて説明する。 6.2. ロボットの設定インターネット上にはfree wareまたはshare ware のロボットが多く紹介されている。今回はそのうち の 一 つ で あ るWebAuto(( 有) ヤ ナ ソ フ ト,http:// www.yanasoft.co.jp)についての実際の活用事例を記 す。ロボットには次のように標的とするサイトと各 サイトへのアクセス方法を設定し登録する。 (1)アクセス手順の設定 (図7):標的URL,ダウン ロードデータの保存場所,アクセスの条件 標的URLとしては通常,Home Pageのトップペー ジのURLを登録する。そのURLの末尾は….htmlまた は….htmで終わっていることが多い。また,ダウン ロードしたデータを保存する場所には,ギガ単位の 容量を準備したいものである。 (2)アクセス頻度・優先度の設定:巡回頻度と間隔, 複数URL巡回時の優先順位,タイマー予約 ロボットによる大量のデータのダウンロードは, 社内のネットワークのみならず情報提供側のサー バにも大きな負荷を与える。そのため,社内の通信 部門と事前に打ち合わせるとともに,ロボットの試 運転を行いアクセスの状況を把握する必要がある。 図7 WebAuto−アクセス手順の設定−
また,情報収集の効率化を進める上では夜間に巡回 をはじめ,翌朝までにダウンロードとその後の処理 作業が終わるように各種の設定を行うことを推奨 する。その場合は,タイマー予約を利用すると便利 である。しかし,サーバが設置されている国との時 差も考慮し,アクセス回数が多いと予想される勤務 時間は避けるようにタイマーをセットする配慮も 必要である。 (3)ダウンロードデータ範囲の設定:内部・外部リ ンク巡回指定,METAタグの外部巡回の有無な ど,巡回に関する設定 標的のファイルには通常,幾重にもリンクが張ら れている。リンク先の情報もダウンロードしたいと きは,事前にテストを行う必要がある。それは,ダ ウンロードする情報量がネズミ算的に増えるから である。参考までにリンク数の設定が問題となった 例を紹介する。あるHome Pageでの外部巡回リンク 数が3のときは約4時間でアクセスが終了したが,5 に増やしたときは1日経ってもアクセスが終了しな かったことがある。なお,ロボットを利用して大量 の情報の入手を計画するとき,インターネットの接 続時間については無制限利用で契約することを薦 める。 6.3.ロボット入手情報の加工 WebAutoによる情報の入手とその利用の流れは 図8にまとめることができる。種々のサイトからの 情報収集を実現させるためには,ダウンロードした 大量の情報から必要なもののみを取り出す作業の 簡略化を図る必要もある。残念ながら汎用性のある free wareまたはshare wareはみられないので,次のよ うな工夫を凝らしている。 (1) 脱タグ 必要な情報を取り出す方法としては種々のエ ディタまたは検索ソフトを利用する方法あるいは プログラム処理をする方法がある。いずれの場合も 通常,単純なテキスト文を対象として処理が行われ るので,ダウンロードされたHTML文のタグを除去 し,汎用性のあるデータベースに変換している。こ の作業には簡単な自製のプログラムでも対応でき る が,share ware のDelTag(http://www.vector.co.jp/ soft/win95/net/se084949.html)を利用すると便利であ る。なお,ディレクトリ,文字の色・大きさ,リン ク先などの情報は,DelTagで処理する段階で自動的 に削除される。 (2) ハイライト MS-DOSのDIFF機能を利用して上記で脱タグさ れたテキスト文を処理すると,更新された個所を識 別することができる。この場合,末節の更新(例: 更新日の変更,スペルミスの訂正等々)を識別する アルゴリズムをプログラムに登録し,DIFFを回避す る機能を持たせることによって,内容の本質的な更 新部分にのみハイライトさせることができる。この アルゴリズムを概説すると次のようになる。更新情 報が更新日の場合を例にとると,更新日は通常,各 ファイルの特定の場所に入力されており,また特定 の数字の並び(例:.XX.XX.2001)を採っている。 そこで,ある更新情報がこれらの条件に適合してい るときは,更新情報とはみなさないようにプログラ ムに判断をさせ,人による確認作業(ハイライト) を回避させている。 (3) 情報の分類 分類したい情報の種類をまず選定し,各分類に特 徴的な用語を整理する。この場合,使用する特徴的 な用語の同義語辞書(シソーラス)を準備すると, 精度の高い分類が可能となる。次いで,対象となっ た用語を含む情報を抽出するプログラムを自製す れば,ダウンロードした大量の情報を目的別に自動 的に分類することができる。このとき,目的とする 用語を含むか否かを機械的にチェックする方法と 図8 ロボットによる新規情報の入手から利用への流れ
してシソーラスと近接演算の手法を組み合わせる (一種の人工知能)ことによって精度を上げること ができる。例えば,drug delivery system(薬物送達シ ステム)またはDDSでロボットによる自動検索をす ると(同義語処理のみの場合),多くのDDS関連の情 報を見逃すことを経験した。一方,delivery systemで は,貨物関連の配送システムのニュースがノイズと して拾われる。このとき,貨物を表す用語とdelivery systemとが近接するときはノイズとして除去する工 夫を凝らすと,DDS関連の情報を高い比率(約90%) で含んだクラスタを形成することができる。同様の 工夫を他の分類にも応用することにより,希望する 技術内容ごとに情報を分類することができる。 (4) システムの統合 上記(1) から(3)の各工程を自動的に連続させる と,ギガ単位でダウンロードしたインターネット上 の情報であっても,夜間のうちに情報収集から必要 とする情報の自動分類までを行うことが可能とな る。また,同一テーマの下で各種のサイトから収集 した情報を蓄積することによって,新しいデータ ベースを構築することも可能である。すなわち,イ ンターネット上の情報源は,各種のfree wareまたは share wareと若干の自製のプログラムとを組み合わ せ,加工処理することによって,貴重な情報源とし ての存在感を強くアピールするようになる。ダウン ロードした情報の加工処理の仕方によってその存 在感も大きく変わるので,情報担当者の新しい腕の 見せ所でもある。 6.4. ロボット活用における課題 実務経験からロボットを活用するときの課題と して,下記のようなことが挙げられる。 (1)ダウンロードデータの著作権問題:ダウンロー ドしたデータは,先に事例報告したように,蓄 積してさらなる利用への展開が可能であるが, その場合著作権を侵害しないように,事前に協 議あるいは対策が重要である。 (2)自動ロボット禁止サイトの確認:事前に Home Pageなどで巡回ロボットを禁止していないかど うかを確認しておくこと。 (3)トラブル対応:禁止サイトであることの記載が ないHome Pageの管理者から厳しい警告文が送 付された場合は,迅速かつ適切な対応が必須で ある。 (4)ウイルスへの対応:予想しない不良サイトから のウイルスなどにも留意が必要である。 このほか,調査という知的行為を機械処理に任せ ることに強い抵抗感をもたれることもある。そのた め,大量の情報を対象とした場合,ロボットを活用 することによって作業が大幅に効率化されること を十分に説明し,関係者の理解を得ることも必要で ある。
7. インターネット情報源の利用と
著作権
本稿ではインターネット上の無料情報源は役立 つものが多く,うまく活用することを勧めてきた。 しかしインターネットの普及の裏側では,これまで には例のなかった各種トラブルが増えている。我々 自身が日常意識し注意することで,事前に対応が可 能なことも多い。その代表例である著作権の問題に ついて言及する。 7.1. Quick Referenceの作成 著作権とは,著作者の知的活動の成果である著作 物が公正に利用され,かつ著作者の権利も保護する ためのものであり,著作権法に制定されている。ま た,著作権は国内では著作物に対して自動的に付与 される権利であり,代表的な権利として複写権・翻 案権などがある。これらを確認の上,詳細な勉強は 別途行うとして,我々は身近な問題に適切に対応す るためのQuick Reference(表8)を作成した。これ は,Webページも含めて新聞や各種文献などのいわ ゆる著作物というグループと,特許・法令・憲法・ 時事報道・判例・時刻表・統計数値などのそれ自体 には著作権が発生しないデータのグループ,最後に データベースといわれるグループの3種類のカテゴ リーに関して,我々が一般的によく行う行為が,著 作権上許容されるのか,あるいは不可なのかについ て簡単明瞭に記載したものである。一部には註釈を 付記し,簡潔な表現で日常いつでも参照できる資料 にした。 表の詳細説明に代えて,いくつか実際に遭遇する 事例について,留意すべき点を以下にまとめた。 7.2. 具体例による留意点 事例(1):イ ン タ ー ネ ッ ト で 見 つ け た 論 文 を コ ピーし て社 内グ ルー プメン バー に送 付 する場合8) ・ 対象物は著作物であり,明らかに著作権がある。 ・ 複数の複写は,公的な会議であれば著作権を侵害 することになる。 ・ 無断複製に該当しない私的使用という範囲の解 釈には,不明瞭な点もあるが,会社の会議での使 用には十分な注意が必要である。 事例(2): 新聞情報を抽出して,それらを関連会社 に有料で提供する場合9) ・ 新聞情報である点に注意する。新聞のほとんどの 情報には著作権がある。・ したがって上記の行為は,対象の情報を別の形に 翻案したことに相当する。つまり翻案権の侵害に なり訴訟の対象になりかねない。 ・ この場合,事前に著作権者に許諾を得るべきで ある。 ・ さらに有料で販売するなら,原情報を購入する必 要がある。 事例(3): 一般報道記事を自分の論文に引用する 場合8) ・ ニュースなどは一般的に報道記事であり著作権 があるが,引用することは可能である。ただし引 用の範囲については次の点をクリアしているこ とが必要である。 ① 引用する必然性があること ② 引用の範囲にも合理性・必然性があること ③ 必要最小限の範囲であること ④ 質量ともに引用先と引用部分との関係が主 従であること 事例(4): Web サイトから各種情報源にリンクを張 る場合10) ・無断リンクは成立する。 ・リンク自体は著作権の侵害には相当しない。 ・複製権の侵害にも相当しない。 ・リンクは引用に相当するのかどうか,現時点では 明確ではない。 ・リンクが問題になるのは,リンクを張られた側に とって名誉や信用を損なうような場合である。 <リンクを張る場合の留意点> ・ リンク先の情報の見せ方:引用著作物と被引用著 作物の明瞭区別性があること。つまりあたかも自 分のサイトの一部分であるようなリンクの張り 方は適切ではない。 ・ リンクの張り方:原則としてリンク先のTOPペー ジに張ること。そしてそのWebの作成者を明確に すること。
8. まとめ
我々 PINETのメンバーはこれまで収集した有効 な情報源を可能な範囲で取り上げた。まとめとして 医薬品研究開発の進展の流れに沿ってそれらの情 報源がどのように役立っているかをグラフに示す。 図9に示すように基礎研究から臨床開発そして市販 への時間的経過において,必要な化合物・医薬品・ 特許情報などの基本的なものから,薬効・規制・文 献・市場情報などのさらに進んだステージの情報に 到るまで,インターネット上のしかも無料の情報源 が存在することと,それらをうまく利用すれば大抵 の情報は入手できることがわかった。将来,このよ うな無料の情報源が質・量ともにますます充実して いくだろうと確信している。 そこで従来の情報担当者に限らず,研究者自ら がこういった便利なツールを目的に応じてうまく 利用することを勧める。一方で情報を専門に扱っ てきた我々情報部門関係者は,今のレベルにとど まらず,その先を進むべく以下のような能力を磨 きたい。 (1)無料情報源で対応できることと,そうでないこ とを識別する能力 (2)より高度な情報処理・情報解析力 (3)付加価値をつける編集加工能力 本報告においてインターネット上の無料情報源 表8 著作権に関するQuick Referenceの収集とその有効活用を提案したが,これらは日頃 「PINET」というメーリングリスト上で,メンバー が互いに手持ちの情報や知識を公開し,共同で情報 収集活動をして得られた成果の一端である。情報関 係者が適切に情報を活用するためには,一般的にい われる「勘+情報解析力」と「リーガルマインド」 が必要であるが,それを習得するには,我々 PINET
が実証するように企業の壁を越えてgive and takeの 精神で情報交換を行う幅広い人的交流こそが『最後 の決め手』となるということを強調したい。 終わりにあたり,著作権Quick Referenceの校閲を いただいた虎ノ門法律事務所の北村行夫弁護士に 深謝する。 医薬情報ネット21メンバー 網本 淳子:日本新薬医薬情報センター学術情報部情報資料課(〒601-8550京都市南区吉祥院西 ノ庄門口町14)Tel. 075(321)9087 E-mail: [email protected] 安藤 聡子:協和メディアサービス市販後調査室(〒104-0033中央区新川1-8-5 KKビル)
Tel. 03(5566)1721 E-mail: [email protected]
伊藤 幸紀:住友製薬研究本部研究計画推進部(〒554-0022 大阪市此花区春日出中3-1-98) Tel. 06(6466)5209 E-mail: [email protected]
上野 祐子:エーザイ研開人事部情報室(〒300-2635茨城県つくば市東光台5-1-3) Tel. 0298(47)5784 E-mail: [email protected]
岡 紀子:住友化学工業有機合成研究所研究グループ(開発)
(〒569-1093大阪府高槻市塚原2-10-1)Tel. 0726(92)5347 E-mail: [email protected]
勝山 麗:塩野義製薬医薬開発本部医薬開発部(〒553-0002大阪市福島区鷺洲5-12-4) Tel. 06(6455)2064 E-mail: [email protected]
酒井 満:武田薬品工業創薬研究本部研究推進部(〒532-8686大阪市淀川区十三本町2-17-85) Tel. 06(6300)6832 E-mail: [email protected]
清水 巌:(財)大阪科学技術センター地域COE推進室(〒594-1157和泉市あゆみ野2-7-1大阪府
立産業技術総合研究所内) Tel. 0725(51)2532 E-mail: [email protected]
須藤 公夫:大塚製薬情報室(〒541-0045大阪市中央区道修町1-7-1) Tel. 06(6943)0033 E-mail: [email protected]
辻河 登:田辺製薬知的財産・情報部(〒532-8505大阪市淀川区加島3-16-89) Tel. 06(6300)2718 E-mail: [email protected]
中井 芳治:藤沢薬品工業研究本部(〒532-8514大阪市淀川区加島2-1-6)
夏原やよい:バイエル薬品マーケティング学術情報(〒532-8577大阪市淀川区宮原3-5-36) Tel. 06(6398)1097 E-mail: [email protected]
浜崎 泰嗣:ゼリア新薬工業研究開発企画部(〒103-8351中央区日本橋小船町10-11) Tel. 03(5644)7053 E-mail: [email protected]
平野 弘之:ジーエスプラッツ(〒103-0027中央区日本橋1-7-11日本橋東ビル7階) Tel. 03(3276)3021 E-mail: [email protected]
松岡 靖史:ウエルファイド研究本部研究企画(〒573-1153大阪府枚方市招堤大谷2-25-1) Tel. 0720(56)9210 E-mail: [email protected]
松浦智佳子:協和醗酵工業技術情報センター(〒194-8533東京都町田市旭3-6-6) Tel. 042(725)2555 E-mail: [email protected]
本木 宏昭:ポーラ化成工業医薬品企画部(〒221-0833神奈川県横浜市神奈川区高島台27-1) Tel. 045(322)7148 E-mail: [email protected]
安田 一代:ホンネット(〒525-0027滋賀県草津市野村5-14-12) Tel. 0775(66)2865 E-mail: [email protected]
参考文献
1) 郵政省(編集).ぎょうせい.「平成11年度版 通 信白書」第一章 特集インターネット. 2) 渡邊 修.インターネット上の情報管理.情報管 理.Vol.39,No.12,1997,p925-938. 3) 日本インターネット協会設立一周年記念シンポジ ウム.情報管理.Vol.37,No.12,1995,p1145-1147. 4) 梶原賢一郎.文献検索を取り巻く諸問題.(http:// www.ktarn.or.jp/kurume-u-hp/ayumi09.html)5) No Need Robot Club.(http://www.juraihelm.com/ NNR/)
6) Web用自動巡回ロボット(Share ware) (http://www.na-yamaki.com/link/Tmbserch.htm)
(http://www.999.co.jp/soft/list/jp/help.html)
7) Windows95/98:インターネット&通信:Web 用: 自動巡回(Free Ware).(http://computers.yahoo.co.jp/ download/vector/win95/net/www/auto/) 8) 横井 信.マルチメディア時代の出版と著作権. ( h t t p : / / w w w . t m c . t m c n e t . o r . j p / k u r u m e - u - h p / yokoi.html) 9) 佐藤義幸.ネットワーク時代の知的所有権入門. INTERNET Magazine.p360-363.
10) 岡村久道.Webコンテンツと知的財産.Internet Week ’97.