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人型デバイスを用いた鉄道駅構内の案内表示の研究

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Academic year: 2021

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人型デバイスを用いた鉄道駅構内の案内表示の研究

ーヒトと機械の関係から見る、ヒトとコミュニケートするエモーショナルな機械のあり方ー

 A Research on the station guidance using humanoid device

The Relation between Human and Emotional Machine for Human Communication

1w110518-0

望月  純 指導教員 長   幾朗   教授

MOCHIZUKI Jun Prof. CHOH Ikuro

概要: 日本の未来の社会ではヒトとコミュニケートする機械が必要になることが、現在の予測から明確になり つつある。過去から現在までのヒトと機械の諸相を整理すると、ヒトとコミュニケートする機械には、

D.A.Norman の言うエモーショナルなデザインが求められると思われた。本論文では、マネキンにコンピュータを 付与したものを人型デバイスと呼び、これをヒトとコミュニケートする機械のひとつに位置づけている。都市の 鉄道駅構内の案内表示として用いられる人型デバイスをガイドマネキンと呼び、それがヒトにどのような情動を 引き起こすのか実験で評価した。同時に案内表示として人型デバイスが有効かどうかを確かめた。また、株式会 社七彩の協力のもと、マネキンに関わりのある方々からヒアリング調査も行った。ヒアリング記録と実験結果か ら、ガイドマネキンは鉄道駅構内での使用には向かないと結論づけられた。しかしヒトとコミュニケートする機 械に対し我々ヒトがおもしろさや楽しさを感じるための効果や演出を好む傾向があることが分かった。

キーワード:鉄道駅構内の案内表示、方向の認知、ヒトとコミュニケートする機械

keywords: station guidance, cognition of direction, machine for human communication

1. はじめに

 本論文は人型デバイスのガイドマネキンを用いた日 本の都市部の鉄道駅構内の新しい案内板・誘導サイン の有効性を調査するための研究である。また、研究を 通し未来におけるヒトとコミュニケートする機械のあ り方を論じている。人型デバイスのガイドマネキンと は項目 2 で説明するような、ヒトの形をしたオブジェ クトに、センサーやマイコンを付与した、ヒトとコミュ ニケートするための機械である。この人型デバイスを 研究するにあたり、項目 3 で述べる今日におけるヒト と機械の諸相や日本の社会背景を整理し、D.A.Norman の理論に基づき項目 5 のような実験行い、ガイドマネ キンがヒトにどのような情動を引き起こすのか評価し た。

2. 人型デバイスのガイドマネキンとは

 理想型の人型デバイスは図1のような一般的に用い られるファッション展示用のマネキンの顔面等の一部 をディスプレイに差し替え、そのディスプレイにはマ ネキンに内蔵されたコンピュータから出力される映像 が映し出される仕組みを持つ機械である。インター フェースとなる部分には各種センサーが付与されてい る。本論文では、この人型デバイスを研究するために 図 2 で示される形のプロトタイプの人型デバイスを 扱っている。図 2 はガイドマネキンのプロトタイプで あるが、ガイドマネキンは、それが指さす方向に何が あるのかを顔面ディスプレイに表示するもので、ユー ザーがガイドマネキンの手を動かすとその指さす方向

に応じ顔面ディスプレイに表示される内容が変化す る。本論文で扱う人型デバイスはこのガイドマネキン であり、これが将来使われる場面として、鉄道駅構内 に配置され、誘導サインを顔面に表示する視覚情報と しての役割をすることが想定される。

1

図 1 理想型の人型デバイスの仕組み

図 2 人型デバイス ( ガイドマネキン ) のプロトタイプ ディスプレイ , スピーカー コンピューター , バッテリー

センサー

(2)

3. ヒトと機械の諸相からみる人型デバイス

 現代においては、ロボットやコンピュータといった テクノロジーを指し機械と我々は呼ぶが、我々ヒトか ら見て機械は常に議論の対象となってきた。例えばか つて、ヨーロッパの産業革命では、紡績機の発明によ り多くの職人が仕事を失い、それがラッダイト運動と いう機械の破壊事件へとつながった。また、文学作品 にも機械は度々テーマとなる。「オズの魔法使い」で もヒトと機械の境界は何なのかという疑問が暗に示さ れている。現代においては、ヒトを介在しない代理生 産者としての機械が稼動し、一部ではテクノロジー失 業という問題が生じている。そんな中、日本において は人口減少に伴い、未来においては第三次産業にも機 械が必要とされると予測されるが、ヒトとコミュニ ケートする機械のデザイン・あり方はまだ明確でない。

そこで D.A.Norman の示す、ヒト中心のエモーショナ ルなデザインに則り、人型デバイスを研究した。

4. ヒトの形である理由

 視覚パターン認知の研究によれば、我々は見なれた 物体に対し、知覚されるその物体の形状自体、一貫性 を保った安定した認知を得ているのだという。これを 視覚不変性というがガイドマネキンはヒトのこの性質 を利用し、ヒトの形の注意しやすい、あるいは見つけ やすい特性を帯びた鉄道駅構内の案内表示を実現しよ うという狙いがある。

5. 実験

実験では Norman の示す 1) 本能的デザイン、2) 内省的 デザイン、3) 行動的デザインという3つの観点からガ イドマネキンを調査し評価した。本能的デザインとは、

主に外観のことを指し、本能的デザインの優れている モノはそれを初めて見たヒトが、そのモノの機能や使 い 道 を 理 解 す る 前 に、好 感 を 持 て る モ ノ で あ る と Norman は説明している。つまり、それを見て「なんか 良い」や「おもしろい」あるいは「とにかく使ってみ たい」という情動をすぐさま引き起こすものであるか どうかという観点が本能的デザインの観点である。実 験ではガイドマネキンを実験参加者に使用してもらっ た後、本能的デザインについての質問と SD メソッド を用いた主観評価の質問に答えてもらった。内省的デ ザインとは、本論文のガイドマネキンでいうならば、

ガイドマネキンを使用したことで使用者は満足感を得 られるか、または、それを使用したことは長く記憶に 残りうるか、というような観点におけるデザイン性の ことである。実験でガイドマネキンが内省的デザイン の観点を調査すること、すなわち実験参加者のガイド マネキンの使用が長く記憶に残るような体験であるか を調査するのは、時間的な問題で困難であったため、

6. 実験結果と結論

 実験結果から、現在地からみた目的地の方向を直感 的に把握できるというガイドマネキンのシステム自体 は、有効で利便性の高いものであると分かったが、鉄 道駅構内の案内表示として、ヒトの形の外観である必 要が無いという評価も多かったことや、ガイドマネキ ンの操作の方法に関して、鉄道駅構内では不適切でる という意見もあったため、ガイドマネキンは駅構内で の使用には向かないという結論に至った。しかし、ガ イドマネキンの外観、すなわち本能的デザインの観点 で実験結果を分析すると、「駅構内ではガイドマネキ ンの使用はしない」と評価した実験参加者のほとんど が、SD メソッドを用いた質問においてガイドマネキン に対し、「おもしろそう」という回答をしていることや、

ヒアリング記録からも、例えば「ガイドマネキンがお じぎをしたらどうか」というような、ガイドマネキン の外観や効果演出に関する意見もあったことから、

我々はヒトとコミュニケートする機械に対し、楽しさ やおもしろさといった“ポジティブ”な情動が引き起 こされるようなものを求めている傾向が伺えた。ゆえ に、ガイドマネキンは鉄道駅構内ではなく、アミュー ズメント施設や美術館等での利用で効果的であると結 論づけている。またこの実験結果からは確かに、未来 における我々と我々と密接に関わるコミュニケートす る機械に、エモーショナルなデザインが必要であるこ とが導かれた。

7. 参考文献

1) Donald Arthur Norman. 「エモーショナル・デザイ ン 微笑を誘うモノたちのために」. 新曜社 , 2004.

2) 日本視覚学会 . 「視覚情報処理ハンドブック」. 朝 倉書店 , 2000. pp.277-288.

2

実験参加者にはガイドマネキンを使用してみた印象と して、その体験が記憶に残りうるものであるかどうか という仮想的な状況を想像してもらい主観評価の質問 を回答してもらった。ゆえに実験で得られた内省的デ ザインに関する評価は、実質的で正確な評価に直接つ ながらない点で注意してほしい。行動的デザインの観 点とは、いわゆるユーザビリティの面で優れた設計が されているかどうかということである。ガイドマネキ ンの機能を理解できるか、その機能を用いて、正確に 現在地から目的地の方向を把握できるか等の必要最低 限のユーザビリティテストを行った。以上のように実 験では、ガイドマネキンが 1) その外観に対して使用 者はどのように感じるか、2) その使用者に記憶の残る ような体験を与えうるか、3) 機能を理解してもらい、

ユーザビリティを満たすものであるかどうかという3 点を調査した。

参照

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