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広域的な植生分布を対象とした空間的な連続性の分析について

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Academic year: 2021

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広域的な植生分布を対象とした空間的な連続性の分析について

熊谷樹一郎,前田壮亮

Spatial Continuity Analysis of the Distribution of Vegetation-covered Areas on a Regional Scale

Sousuke MAEDA and Kiichiro KUMAGAI

Abstract:Recently, it is required to investigate the distribution of vegetation-covered areas on a regional scale for the conservation of ecosystem and the symbiotic relationship. We have proposed the concept of extracting the spatial continuity of vegetation-covered areas like green corridor in urban areas. NDVI are adopted as the potential of the existence of vegetation-covered areas and applied to the spatial autocorrelation analysis in the proposed method. In this study, we verified the results of the proposed method through the investigation of the statistical status of NDVI around the extracted areas.

Keyword:植生指標(NDVI),空間的自己相関分析(spatial autocorrelation),SSC(spatial scale of clumping),植生軸(green corridor)

1. はじめに

近年,都市住民は,自然との親しみや潤いある生 活環境などを求めるとともに,その活動範囲は広域 化している.加えて生態系の保全が重要視されてい る現在では,都道府県広域緑地計画などで大規模な 緑地を拠点とするネットワークを考慮した「緑の将 来像図」が策定されるなど,緑の分布を広域的な視 点から分析する必要性が高くなっている.

著者らは,都道府県広域緑地計画で挙げられる「緑 のネットワーク」の一部を担う植生軸に着目し,衛 熊谷:〒572-8508 大阪府寝屋川市池田中町17-8 摂南大学 工学部 都市環境システム工学科 TEL & FAX:072-839-9122

E-mail:[email protected]

星データから得られたNDVIを植生の被覆量に関す るデータとして採用した上で,空間的自己相関分析 と地形分析を応用した植生軸抽出方法を提案してき た(熊谷,2005).

これまでに開発・検討を進めてきた本方法では,

空間的自己相関で指定される距離パラメータdに着 目し,どの距離パラメータにおいても正・負の空間 的自己相関ありと判定された領域は,植生被覆量の 多い箇所,あるいは少ない箇所がある空間スケール で集積しており,さらに,距離パラメータdごとの 判定領域を重ね合わせた結果を標高とみなした地形 データとすると,その尾根線や谷線には植生被覆箇 所の空間的な連続性に関する重要な情報が含まれて いる,といった仮説を設定してきた.本報告では,

(2)

「緑の将来像図」で指定された植生軸と比較するこ とによって,抽出された植生軸の特性を調査・分析 するとともに,仮説の妥当性を考察した.

2. 対象領域・対象データ

対象領域として大阪府全域を選定し,広域的な植 生情報を内包しているLandsat ETM+(空間分解能:

30m×30m)データを対象データとして採用した.

大阪府は北部を北摂山系,西部を金剛生駒山系,南 部を和泉葛城山系に囲まれており,領域内には淀川,

大和川などの大規模な河川が含まれている.高度経 済成長期には急速に都市化の進んだ地域や計画的な 開発が進められた地域なども存在し,植生分布につ いても多様であることが予想される.また,対象デ ータには,幾何補正処理とMODTRAN に基づいた 大気補正処理を実施し,CCTカウント値を反射率に 変換した上でNDVIを計算している.

3. 植生軸の抽出方法

本研究では,空間的な分布のパターンを統計的に 分析する空間的自己相関分析を適用し,重ねあわせ ることによって地形分析を応用した植生軸の抽出方 法を開発した(熊谷,2005).以下に,適用した分析 方法の概要を述べる.

3.1 空間的自己相関分析の適用

本研究では,距離パラメータd=90mから60mピ ッチで空間的自己相関分析を適用し,各距離パラメ ータd から得られた検定統計量 z(d)を有意水準 0.1 で「正の空間的自己相関あり」,「空間的自己相関な し」,「負の空間的自己相関あり」の3種類に判定し た面積の比を計算し,隣り合う距離パラメータdで の変化量を得た.その結果,変化量の収束が確認で きた値を基に距離パラメータ d=330m~990mを分 析の範囲として採用した(熊谷,2005).

3.2 SSC の作成概念と植生軸候補の抽出 距離パラメータdの最大値で「空間的自己相関あ り」とされた領域を最下層とし,最小値で「空間的 自己相関あり」とされた領域が最上層となるまで,

距離パラメータdの値ごとの出力結果を重ね合わせ

ていく,といった方法で作成される SSC(Spatial Scale of Clumping)を提案している(熊谷,2005). 図-1にSSCの作成概念を示す.さらに,この SSC の重なりの層数を標高と見なした地形データを仮定 した上で,地形分析の考え方を応用し,植生軸候補 を抽出している.

3.2.1 正の SSC の概念と植生軸候補の抽出 正のSSCの場合,図-1のSSCのA領域は,そこ を中心とした近傍から遠方にわたって植生被覆量の 多い箇所が集積していると解釈できる.また,D領 域については,近傍では植生被覆量のばらつきがあ るものの,遠方までを見ると植生被覆量の多い箇所 が集積していると判定される領域である.ここで,

正のSSCが生じる領域では,植生被覆量の多い箇所 が対象となることから,緑地保全型の植生軸を抽出 していると解釈できる.一方,図-1のA領域から集 積の低い領域をつなぐには,植生被覆量の多い箇所 がなるべく集まっている連なりを抽出することが望 まれる.そこで,正のSSCの重なりの層数を標高と 見なした上で地形分析により水系線,集水域を計算 し,尾根線を抽出することで,正の植生軸候補とし ている.図-2(a)に正のSSCと植生軸候補を示す.

3.2.2 負の SSC の概念と植生軸候補の抽出 負のSSCの場合,図-1のSSCのA領域は,そこ を中心として近傍から遠方にわたって植生被覆量の 少ない箇所が集積していると解釈できる.また,D 領域については,近傍では植生被覆量の多く存在す る箇所やランダムな箇所があるものの遠方までを見 ると,植生被覆量の少ない箇所が集積していると判

図-1 SSCの作成と概念

(3)

定される領域である.負のSSCでは,植生被覆量の 少ない箇所が対象となることから,図-1のA領域の ような箇所に対して周囲から植生軸を効率的に到達 させるアプローチを取っている.具体的には,空間 的に植生被覆量の少ない箇所が集積している図-1の A領域を到達地とした上で,負のSSCを地形データ として水系線を自動計算させ,到達地から伸びるも のを植生軸の候補として選定している.選定された 水系線は,近傍で植生被覆量の少ない箇所が集積し ている領域を避けながら到達地まで連なる負の植生 軸候補と位置づけられる.図-2(b)に負の SSC と 植生軸候補を示す.

4.検証方法と結果 4.1 検証方法

本報告では,植生軸候補の妥当性を検証するため に,大阪府の「みどりの将来像図」の植生軸や道系 軸を比較の対象(以降,比較軸)として使用した.

まず,距離パラメータの最大値に着目し,植生軸候 補と比較軸に,図-3に示すような1980mごとに990 mの調査領域を設定した上で,調査領域の範囲を距 離パラメータの 60mピッチで減少させ,そこでの NDVI の統計量を求めた.また,調査領域から得ら れた値の平均値を基に検定の考え方を用いて統計的 観点から検証した.

4.2 検証結果

4. 2.1 正の植生軸候補での検証

図-4と図-5に検証結果を示す.図-4の横軸は,抽 -4

-3.5 -3 -2.5 -2 -1.5

990 930 870 810 750 690 630 570 510

調査範囲(m)

定統計量

5%

図-5 検定統計量による検証(正の植生軸候補)

調査領域:990m

0.5 0.6 0.7 0.8

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 距離(標準化後)

NDVI

調査領域:510m

0.5 0.6 0.7 0.8

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 距離(標準化後)

NDVI

植生軸候補 × 比較軸

図-4 相対度数での比較(正の植生軸候補)

図-3 調査領域の設定

調査領域の設定

図-2 正・負のSSCと植生軸候補の抽出結果

植生軸候補

集積なし 集積度

(b) 負のSSCと植生軸候補

植生軸候補

集積度 集積なし

(a) 正のSSCと植生軸候補

(4)

出された各々の植生軸・比較軸について全長を1と なるように標準化したものであり,層数の低い領域 が距離0となるように表したものである.縦軸は,

相対度数で上位10%のNDVIの値をプロットしたも のである.図-5では,横軸を調査範囲,縦軸は比較 軸と植生軸候補について,相対度数上位 10%での NDVIの平均値の差を検定統計量で表している.

図-4 より,990m の調査領域では,植生軸候補と 比較軸ともにNDVIの高い箇所を抽出している傾向 にある.一方,調査領域を小さく設定した場合,比 較軸では全般的にNDVIの低くなる傾向にあるのに 対して,植生軸候補ではNDVIの高い値が保持され ており,軸の近傍にNDVI の高い箇所が集まってい ることを確認できる.図-5では,有意水準5%でみる と全ての調査範囲で有意な差があることを確認した.

4.2.2 負での植生軸候補での検証

図-6では,横軸の全長の表し方は図-4と同様であ るが,縦軸は NDVI の最大値をプロットしている.

図-7は,図-5と同様にNDVI最大値の平均の差を表 している.

図-6より990mの調査範囲では,比較軸と植生軸 候補ともにNDVI最大値は高い値となっているのに 対して,調査範囲を小さくした場合,植生軸候補に おいては,比較軸よりもNDVIの高い値を保持して いる傾向が確認できる.図-7の負の植生軸での検定 結果では,全般的に有意な差が得られなかったもの

の,調査領域が小さくなるにつれて,植生軸候補の NDVI 最大値の平均が比較軸のものを上まわる傾向 が見られた.

5.おわりに

本報告では,正・負の空間的自己相関ありと判定 された領域から得られた植生軸の候補について,

NDVIの局所的な統計値を基に検証してきた.

その結果,正の植生軸候補では,植生被覆量の多 い箇所を優先的に抽出しており,植生軸抽出方法の 妥当性が示唆された.負の植生軸候補では,軸の近 傍で植生被覆量の多い箇所を抽出している傾向が示 された.

参考文献

熊谷 樹一郎(2005)空間解析を応用した植生軸抽 出方法の開発,「環境情報科学論文集19」,65-70.

-2.5 -1.5 -0.5 0.5

990 930 870 810 750 690 630 570 510 450 390 330

調査範囲(m)

検定統計量

5%

図-7 検定統計量による検証(負の植生軸候補)

調査領域:990m

0 0.2 0.4 0.6 0.8

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

距離((標準化後)

NDVI

調査領域:330m

0 0.2 0.4 0.6 0.8

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

距離(標準化後)

NDVI

植生軸候補 × 比較軸

図-6 最大値での比較(負の植生軸候補)

参照

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