• 検索結果がありません。

平成20年3月

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "平成20年3月 "

Copied!
177
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

システム技術開発調査研究 19‐R‐10

アジアにおけるグリッドを活用した システムのニーズに関する調査研究

報告書

平成20年3月

財団法人 機械システム振興協会

委託先 財団法人 国際情報化協力センター

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

http://ringring-keirin.jp

(2)

わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件 は急速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、

直面する問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度 化する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。

このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人機械システム振興 協会では、財団法人日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、機械システ ムに関する調査研究等補助事業、新機械システム普及促進補助事業を実施しております。

特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技 術、あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますの で、当協会に総合システム調査開発委員会(委員長 東京大学 名誉教授 藤正 巖氏)を設 置し、同委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を実施しており ます。

この「アジアにおけるグリッドを活用したシステムのニーズに関する調査研究報告書」

は、上記事業の一環として、当協会が 財団法人国際情報化協力センターに委託して実施し た調査研究の成果であります。今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえ で、本調査研究の成果が一つの礎石として役立てば幸いであります。

平成20年3月

財団法人機械システム振興協会

(3)

はじめに

本調査研究は、財団法人 機械システム振興協会からの受託により、財団法人 国際情 報化協力センターが実施した「平成 19 年度 アジアにおけるグリッドを活用したシステ ムのニーズに関する調査研究」の成果をまとめたものある。

グリッド・コンピューティングとはネットワークによって結ばれたコンピュータやデー タ、或いはセンサーなどの多数の資源を共有し、一つの仮想的なコンピューティングを実 現する仕組みをいう。このグリッドとは、本来電力網の意味する「Power Grid」に由来す る用語として、発電所がどこにあるかを意識することなく電気を使うように、グリッド・

コンピューティングのユーザも、資源がどこにあるのかを意識することなく、必要な時に、

必要なだけこれらを利用することができる。かつては、その利用は高速大量の演算を必要 とする科学技術分野に限られていたが、近年においては、ウェブサービスの技術と連携し て、ビジネス分野においても、重要な技術として、日本のIT企業や欧米のIT企業も積極 的なグリッド・コンピューティングの利用を進めている。

本調査研究では、日本と経済的、社会的に関係の深いアジア各国・地域のグリッド・コ ンピューティングの研究・利用の現状と今後のニーズ、および今後の課題について調査を行 うとともに、日本のグリッド・コンピューティングをリードする独立行政法人 産業技術 総合研究所グリッド研究センターのもつ地球観測グリッド(GEOGrid)を題材に、アジア 広域のグリッド利用についての検討を行った。

本調査研究の実施にあたり、ご指導、ご協力頂いた委員各位、関係者各位に深く感謝の 意を表する。

平成20年3月

財団法人 国際情報化協力センター

(4)

目次

1. 調査研究の目的 ... 1

2. 調査研究の実施体制 ... 4

3. 調査研究の内容 ... 10

第1章 グリッド・コンピューティング ... 10

1.1 グリッド・コンピューティングとは ... 10

1.2 GEOGrid ... 14

1.3 ASTER ... 15

1.4 アジア太平洋先端ネットワーク(APAN)の活動 ... 16

1.5 グリッド・コンピューティングにおけるGISの利活用 ... 27

1.6 グリッド・コンピューティングの推進組織 ... 38

1.7 ビジネス分野におけるグリッド・コンピューティングの利用 ... 44

第2章 アジアにおけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 45

2.1 アジアにおけるグリッド・コンピューティングの推進機関 ... 45

2.2 中国におけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 47

2.3 インドにおけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 54

2.4 韓国におけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 58

2.5 マレーシアにおけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 64

2.6 フィリピンにおけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 66

2.7 シンガポールにおけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 69

2.8 台湾におけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 75

2.9 タイにおけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 79

2.10 ベトナムにおけるグリッド・コンピューティングの利用状況 ... 83

第3章 アジアにおけるグリッド・コンピューティング研究機関のニーズ ... 85

3.1 アプリケーションニーズ ... 85

3.2 衛星画像とGISを使ったGEO Gridなどのグリッド・コンピューティングのアプリ ケーションニーズ ... 89

3.3 その他のグリッド・コンピューティングのアプリケーションニーズ ... 91

3.4 グリッド・コンピューティング技術者に対するニーズ ... 96

第4章 グリッド・コンピューティング広域情報ネットワークの可能性 ... 102

4. 調査研究の成果(まとめ) ... 105

5. 調査研究の今後の課題及び展開 ... 109

(5)

1. 調査研究の目的

2004年12月に発生したスマトラ沖地震とそれから派生したインド洋津波は、アジア各 国に大きな災害をもたらしたことは記憶に新しい。このことは、災害を減らし、災害から の復旧を迅速に行うためには、減災1情報や被災情報、或いは環境に関する情報などが必要 であること、また、アジア広域の情報共有の必要性を改めて知らしめる結果となった。

この様な共有すべき情報の中の重要なものの一つとして、衛星センサーデータや地理情 報システム(GIS:Geographic Information System)が挙げられる。これらの情報の有効 活用により、減災や被災状況、環境状態の把握などに大きな威力を発揮させることができ る。しかしながら、その情報量は膨大であり、アジア各国が平素から個々に情報を持つこ とはコスト面や管理面から見て困難であるといえる。こうした課題に対して、コンピュー タやデータ、或いはセンサーなどの多数のリソース(資源)をネットワークで結び、共有 して、一つの仮想的なコンピューティングを実現する仕組みであるグリッド・コンピュー ティング技術の利用が、問題解決の手段として、有効であると考えられる。

本調査研究は、日本がアジアに提供可能な衛星センサーデータを題材に、グリッド・コ ンピューティングを利用したアジア広域情報ネットワーク構築の可能性について、アジア の関係者と討議し、検討するとともに、アジアにおけるグリッド・コンピューティングの 実態を調査することを目的とするものである。

具体的には、独立行政法人 産業技術総合研究所(以下産総研)グリッド研究センター、

および、関係機関と協力して、アジアにおけるグリッド・コンピューティング研究の現状 やその利用実態の調査を行い、また、それに合わせて、グリッド・コンピューティングが 可能な能力を持つ各国のカウンターパートを特定して、日本の持つ高性能光学センサー ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection radiometer)により取得 された衛星データとGEOGrid(Global Earth Observation Grid)2の利用により、アジアの 広域で減災や環境問題などの利用に日本と各国を繋ぐグリッド・コンピューティングを実 現することが可能かどうかを調査研究するものである。

こうした利用や、グリッド・コンピューティングシステムの運用ができるかどうかの意 見交換と議論を行うために、アジア各国・地域から関係者を日本に招聘した。

1 「減災」と言う用語は阪神・淡路大震災以降に使われ始めた用語で、災害はくいとめることができない が、発生する被害を最小限に抑えるための取り組みを意味する。本報告書では、英語のmitigation(軽 減する、緩和する)がdisaster mitigation(災害軽減)、flood mitigation(洪水緩和)などとして使われ ており、こうした言葉を合わせて「減災」と表記している。

2 GEO Grid:産総研が推進している地球観測グリッドのこと。グリッド技術を用いて、地球観測衛星デ

ータの大規模アーカイブ・高度処理を行い、さらに各種観測データベースやGIS(地理情報システム)

データと融合させて、ユーザが手軽に扱えることを目指したシステム。減災、環境、資源探査、農業な どの分野での利用が期待される。

(6)

(背景)

グリッド・コンピューティングは、ネットワークで結ばれた多数の資源を共有し、一つ の仮想的なコンピューティングを実現するための基盤技術である。かつて、その利用は高 速大量の演算を必要とする科学技術分野に限られていたが、近年においては、ウェブサー ビスの技術と連携して、ビジネス分野においても重要な技術となっており、日本のIT企業 や欧米のIT企業も積極的なグリッド・コンピューティングの利用を進めている。調査会社 IDCによると、2004年に20億ドル規模であったこの市場規模は、2010年には75億ドル に拡大していくと予測している。また、グリッドの研究においても、グリッド技術の開発 や普及促進、および国際標準化を進めるOGF(Open Grid Forum)などの活動があり、活 発な議論が展開されている。

アジア各国・地域においても、政府の研究機関を中心にグリッド技術の研究は行われて いるが、個々の国だけでは具体的なグリッドシステムの実用現場が殆どなく、技術を習得 する環境がないことにより、技術者の層は薄い。そのため、アジア諸国では、こうした具 体的なアプリケーションを通して、グリッド技術の実用化を図ることが喫緊の課題となっ ている。

(必要性)

(1)アジア諸国とのグリッド・コンピューティング連携

-グリッド・コンピューティングの研究や実用化は欧米、および日本が進んでいる。

アジアは欧米に比べて遅れており、国際的な場においても発言力に乏しい状況とな っている。こうしたことから、アジアの文化や環境に根ざした活動を行い、実績を 積むことが必要となっている。

財団法人 国際情報化協力センター(以下 CICC)では、グリッド・コンピュー ティングの研究や実用化で国際的にも知名度が高い産総研グリッド研究センター と協力し、こうしたアジア諸国と連携して具体的なプロジェクトの可能性を調査研 究するものである。日本のリーダシップによるグリッドコミュニティの醸成と、日 本が持つグリッド技術の利用による具体的な活動を行うことが、アジアに対する日 本のプレゼンスを示す上で重要である。

(2)日本にとっての必要性

-日本や欧米のグリッド・コンピューティングは科学技術分野のサイエンスグリッド の利用に始まり、徐々に企業向けのビジネスグリッドの利用が進められている。ア ジアにおいても同様の動きをしていくものと思われ、先ずは、既に実績のあるサイ エンスグリッド分野で、協力体制作りが必要である。

-衛星データや GIS(地理情報システム)を利用する減災や環境調査などは、各国そ

(7)

れぞれが必要としており、日本の持つ技術による貢献が可能である。今後、これら の分野で、協力関係を発展させることが、日本のプレゼンスを高め、同時に日本に とっても裨益することとなる。

この様に、アジアのグリッド・コンピューティングに対する期待や要求を調査し、日本 との協力関係を築くことは、欧米中心に偏りがちなグリッド・コンピューティングの技術 や応用を日本主導により推進していくための重要な課題であるといえる。

(8)

2. 調査研究の実施体制

(1)実施体制

本調査研究は、財団法人 機械システム振興協会の委託を受け、財団法人 国際情報化協 力センターが実施した。本調査研究の実施体制は財団法人 機械システム振興協会内に「総 合システム調査開発委員会」を、財団法人 国際情報化協力センター内に「アジアにおけ るグリッドを活用したシステムのニーズに関する調査研究委員会」を設置して、本調査研 究の計画、実施状況、実施経緯について、意見、アドバイスをいただいた。

実施体制図

財団法人 機械システム振興協会 総合システム調査開発委員会

委託

財団法人 国際情報化協力センター

アジアにおけるグリッドを活用 したシステムのニーズに関する

調査研究委員会 協力

独立行政法人 産業技術総合研究所 グリッド研究センター

(9)

総合システム調査開発委員会委員名簿

(順不同・敬称略)

委員長 東京大学 藤 正 巖 名誉教授

委 員 埼玉大学 太 田 公 廣 地域共同研究センター

教授

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛 エレクトロニクス研究部門

副研究部門長

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携推進部門

産学官連携コーディネータ

委 員 東北大学

工学研究科 教授 中 島 一 郎 (未来科学技術共同研究センター長)

委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫 総合理工学研究科

教授

委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦 工学系研究科

准教授

委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸 新領域創成科学研究科

教授(副研究科長)

(10)

アジアにおけるグリッドを活用した システムのニーズに関する調査委員会委員名簿

(敬称略)

委員長 独立行政法人 産業技術総合研究所 関口 智嗣 グリッド研究センター

センター長

委員 サイバー大学 小西 和憲 IT総合学部

教授

委員 財団法人 日本情報処理開発協会 坂下 哲也 データベース振興センター

時空間情報システム推進室 室長

委員 慶應義塾大学 福井 弘道 総合政策学部

教授

委員 株式会社 オークニー 森 亮 代表取締役

事務局 財団法人 国際情報化協力センター 橋爪 邦隆(専務理事)

永谷 光行 中司 陽子 中林 保子

(11)

(2)調査および討議方法

主として、以下の方法により調査および討議を実施した。

本調査研究の対象国・地域である中国、インド、韓国、マレーシア、フィリピン、シン ガポール、台湾3、タイ、ベトナムに関して、

- インターネットによる検索により、調査対象とする当該国・地域におけるグリッド・

コンピューティング利用の現状、および関連機関などに関する基礎情報の収集と整 理を行った。

- インターネットによる基礎情報を基に現地の関連機関などに出張し、実情の調査を 行った。

- 対象国・地域の研究者・技術者を日本に招聘し、各参加者によるエコノミーレポート の発表および討議を行った。

(3)招聘討議

委員会での論議、および各国で得たヒャリングを基に2008年1月22日から25日にア ジアの関係者を日本に招聘し、グリッド・コンピューティング研究機関のニーズ、および 今後の協力などについて討議を行った。この開催にあたっては、産総研グリッド研究セン ターの関口センター長を始め、各研究者、および委員各位の協力を受け、以下の招聘討議 を実施した。

① 招聘国・地域:中国、インド、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、

タイ、ベトナム

② 招聘人数:14名(中国、韓国、台湾、タイ、およびベトナムからは2名ずつ、その 他は1名ずつを招聘)

自費参加者:2名(台湾から2名)

③ 招聘者・自費参加者の所属先

本報告書では、招聘討議参加者の氏名を(国・地域名)で表す。また、以降、参加者 の個人名が必要な場合は以下の表2 - 1を参照する。

3 本調査研究報告書では台湾を台湾、Taiwan、または、Chinese Taipeiと記述している。また、台湾の研 究機関名をNational Applied Research Laboratries(国家実験研究院)などと記述をしているが、これ らは固有名詞として、そのまま使っていることをおことわりする。

(12)

表2 - 1 招聘参加者の所属先 氏名 招聘者の所属先:和文名、(略号)、英文名

(中国1) 中国科学院計算所(CNIC, CAS)

Computer Network Information Center, the Chinese Academy of Science

(中国2) 中国科学院研究生院(GUCAS)

Graduate University of the Chinese Academy of Science

(インド) ハイデラバード大学(UOH) University of Hyderabad

(韓国1) ソウル国立大学コンピュータサイエンス・工学部(CSE, SNU)

School of Computer Science and Engineering, Seoul National University

(韓国2) 韓国科学技術情報研究院eサイエンス部(KISTI)

e-Science Division, Korea Institute of Science and Technology Information

(マレーシア) MIMOS公社(MIMOS) MIMOS Berhad

(フィリピン)先端科学技術院(ASTI)

Advanced Science and Technology Institute

(シンガポー ル)

ナンヤン工科大学(NTU)

Nanyang Technological University

(シンガポー ル2)*注)

インフォコム開発庁 国家グリッドオフィース(NGO, IDA)

National Grid Office, Infocomm Development Authority of Singapore

(台湾1) 国家実験研究院(NARL)

National Applied Research Laboratories

(台湾2) 中央研究院(ASGC)

Academia Sinica Grid Computing

(台湾3) 国家実験研究院高性能コンピューティングセンター(NCHC, NARL)

National Center for High-Performance Computing, NARL

(台湾4) 国家実験研究院高性能コンピューティングセンター(NCHC, NARL)

National Center for High-Performance Computing, NARL

(タイ1) 国家電子コンピュータ技術センター(NECTEC) National Electronics and Computer Technology Center

(タイ2) ソフトウェア産業促進局 国家グリッドセンター(TNGC, SIPA) Thai National Grid Center, Software Industry Promotion Agency

(ベトナム1)ホーチミン市郵電部(DPT, HCMC)

Department of Post and Telematics, Ho Chi Minh City

(ベトナム2)ベトナム科学技術アカデミー(VAST)

The Vietnamese American Science & Technology Society

注)今回の国内招聘には参加していないが、質問票の一部に回答を依頼した。必要な場合 は、ナンヤン工科大学からの招聘者を(シンガポール)、または(シンガポール1)、

NGOからの回答者を(シンガポール2)として区別する。

(13)

④ 招聘期間:2008年1月21日(月、日本到着)~1月26日(土、日本出発)

⑤ 討議次第:

表2 - 2 討議スケジュール

日程 実施内容 場所

1月22日(火) -産総研招聘のアジア地質 関係者との共同討議

秋葉原ダイビル コンファレンスルーム 1月23日(水) -GISの紹介

-エコノミーレポート(前半)

-産総研研究者との討議

産総研つくば研究所

1月24日(木) -エコノミーレポート(後半)

-企業関係者との討議

国際大学GLOCOM

1月25日(金) -グリッド・コンピューティングの アジア広域利用に関する討議

秋葉原ダイビル

注)本報告書で(出典:エコノミーレポート)と記述している場合、1月23日、ま たは、1月24日に発表された各国・地域からの招聘者によるエコノミーレポート のプレゼンテーション資料によるものである。

(14)

3. 調査研究の内容

ここでは、第1章で、グリッド・コンピューティングの定義、GEOGridの概要、および、

アジアにおける関連活動について述べる。第 2 章では、調査対象の国・地域におけるグリ ッド・コンピューティングの利用状況を、第 3 章では、研究機関のニーズにつて、また、

第4章では、広域情報ネットワークの可能性について検討を行う。

1 章 グリッド・コンピューティング

1.1 グリッド・コンピューティングとは

グリッド・コンピューティングとは、複数のコンピュータをネットワークで結ぶ4ことに より仮想的な高性能コンピュータを作り、そのリソース(コンピュータの計算能力、スト レージの記憶容量、ストレージに蓄積されたデータ、および、人など)をユーザの必要に 応じて利用することができるシステムのことを指す。つまり、グリッドの技術とは、組織 や距離、データの種類に制限されることのない高度なネットワークの利用技術であり、仮 想化技術であるといえる。こうした利用方法により、一台一台のコンピュータの処理能力 や記憶容量が低くても、仮想的な超高性能の能力を持つコンピュータとして、大規模な計 算処理やデータの蓄積・利用ができる。「グリッド」とは、本来、高圧送電線網(パワーグ リッド)に由来した言葉である。コンセントに挿せばいつでも電気が使える様に、グリッ ド・コンピューティングはネットワークを経由して、どこにコンピュータがあるかを意識 することなく、情報処理ができるネットワークインフラと言っても良い。このグリッド・

コンピューティングを構成するコンピュータは、スーパーコンピュータであっても、複数 のコンピュータを結合したクラスタ型5のコンピュータであっても、一台のコンピュータあ るいはパーソナルコンピュータ(PC)であっても良い。(図1.1 - 1参照)

図1.1 - 1 グリッド・コンピューティングネットワークのイメージ

4 この複数のコンピュータは隣接していても、ネットワークで繋がるならば地球上のどこにあっても良い。

5 超並列コンピュータ(MPP:Massively Parallel Processor)や計算クラスタ、ストレージクラスタ、ウ

(15)

グリッド・コンピューティングの分類方法はいろいろあるが、日本のグリッド協議会に よると次の4種類に分類6されている。(表1.1 - 1参照)

コンピューティンググリッド:高速計算サービス データグリッド:超大規模データ処理サービス ビジネス・グリッド:高信頼ウェブサービス PCグリッド:遊休PCの活用

また、これらを組み合わせたサービスもグリッドとなる。

表1.1 - 1 グリッド・コンピューティングの分類

分類 内容

コンピューティング グリッド

大規模な計算が必要な場合に有効。科学技術計算や金融のポー トフォリオ、シミュレーションなどに利用される。これにより一 台一台では計算能力の低いコンピュータでも高性能コンピュー タの計算能力が出せる。

データグリッド 大規模なデータベースが必要な場合に有効。衛星データや気象 データ、各種のセンサーデータ、取引データの蓄積などに利用さ れる。一ヵ所では格納や加工することが難しい場合にデータが遠 隔地で分散していても、仮想的に一つのストレージと考えて利用 できる。

ビジネスグリッド 企業内、あるいは企業間の連携を実現する。ウェブサービスの 一形態として、注目を集めており、いろいろな研究や実証が行わ れているが、一般的な企業が利用するのは、まだ少し先になるも のと思われる。国内では、産総研と富士通、日立、NEC による ビジネスグリッド・コンピューティングプロジェクトが行われ た。また、シンガポールでもSaaSなどを意識したグリッドの検 討が進められている。

PCグリッド PC の遊休時間を使って大規模な計算処理を実現する。最も有 名なプロジェクトが誰でも参加できる SETI@home7などである が、アニメーションやレンダリング、企業のバッチ処理などにも 利用されている。大学内のPCの遊休時間を使って、いろいろな 計算をさせるキャンパスグリッドなど事例は多い。

6 グリッド協議会 http://www.jpgrid.org/about/group.html

7 SETI@home (The Search for Extra Terrestrial Life at Home):地球外生命体を探査することを目的とし て、個人の家庭にあるインターネットに接続されたPCを使って、宇宙からくる電波を解析するプロジ ェクト。1999年から2005年末までの間に、その解析ソフトウェアは500万件のダウンロードがあり、

200万年分のCPUパワーが使われたという。

(16)

グリッド・コンピューティングは仮想化により、ネットワークを経由して、どこにコン ピュータやストレージなどのリソースがあるかを意識することなく、また、異なる組織に よって運営されていても、動的に変化するグリッドシステムを安全に安定的に、また使い やすく情報処理ができる。こうしたグリッド・コンピューティングを支え、安心して利用 するためにセキュリティ面での配慮がなされており、安定的に利用するために必要な情報 資源(計算資源,記憶資源,ネットワーク資源など)が必要なだけ提供されるように仮想 化されており、使いやすく利用するためにエンドユーザは特に端末の裏側で何が起きてい るか気にする必要なく情報サービスへのアクセスを可能にするように考慮がされている。

こうしたことを実現するために、多くの標準が決められており、国際的なグリッドの推進 団体Open Grid Forum(OGF)などによって制定されている。

グリッドは、従来、シミュレーションや数値演算など科学技術計算、データベースに格 納されているデータの分析や蓄積された知識の利用などに使われてきている。現在もサイ エンスグリッドとして、こうした利用は主流である。

近年では、ビジネス分野での利用も進められ、基幹業務の災害時の対応のため、複数ヵ 所にプログラムやデータを置く災害回復システムや、アクセスグリッドと呼ばれる遠隔会 議や遠隔医療の分野などにも使われ始めている。

グリッドの構成

OGFは次世代グリッドの世界標準仕様として、Open Grid Services Architecture(OGSA)

を制定している。この OGSA の構成はハードウェア、基盤ソフトウェア/プロトコル、ミ ドルウェアおよびアプリケーションの各レイヤから構成されている。

ミドルウェアとはOSなどの基盤ソフトウェアとアプリケーションの間に立ち、例えば

WindowsとLinuxのOSのような仕様の違いを吸収し、アプリケーションに提供する情報

を統一化するものである。こうしたミドルウェアとして、現在はGlobusが提供するGlobus Toolkit 4.0(GT4)が事実上の標準として用いられている。

グリッドと高性能コンピュータ(HPC)

最近はコンピュータの性能が向上し、さらにその価格が低下している。こうしたことか ら、クラスター型の高性能コンピュータ(HPC:High Performance Computer)の利用に よりグリッドは必要ないとの意見もある。しかしこの二つは全く異なる次元の論議として 捉える必要がある。グリッド・コンピューティングはその名のとおりコンピューティング

(計算をする)であって、「グリッドコンピュータ」というハードウェアがあるわけでは ない。

グリッドの役割はすでに述べてきたように、世界中に分散しているリソースをネットワ ークで繋いで仮想的な超高性能なコンピューティングインフラを作り、遠く離れた人々が

(17)

リソースを共有し、協力することである。一方、HPCは計算を行う、データを蓄積するな ど物理的なリソースを指している。そのため、グリッドと HPC はどちらかを選ぶという 択一的なものではなく、グリッドを実現するために、こうした HPC からPC までをリソ ースとして利用している。

アジアのグリッド活動

アジアのグリッド活動の多くはサイエンスグリッドとしての利用であり、主に政府の研 究機関、大学が活動している。また、グリッドを構成するために、それぞれの国・地域内 においては、学術ネットワークが利用されている。(図1.1 - 2参照)

図1.1 - 2 アジアの主要学術ネットワーク

さらに、これらの学術ネットワーク同士を国際的に繋げるために、アジア太平洋地区に おいては、アジア太平洋先端ネットワーク(APAN:Asia Pacific Advanced Network)が組 織され、国際的共同研究が可能となっている。

こうしたグリッドアプリケーションの取組みの一つに独立行政法人 産業技術総合研 究所(産総研)のグリッド研究センターが推進している地球観測グリッドGEOGrid(Global Earth Observation Grid)がある。GEOGridなど地球や地質、環境、減災に関するグリッ ドにおいては、地理情報システム(GIS)の利用は欠かせない。

(18)

1.2 GEOGrid 8

GEOGrid(Global Earth Observation Grid)とは産総研のグリッド研究センターが推進 している地球観測グリッドの意味である。この GEOGrid はグリッド技術を用いて、地球 観測衛星などのデータをサーバにアーカイブし、高度な情報処理を行って、各種観測デー タベースやGIS(Geographic Information Systems:地理情報システム)データと融合し、

ユーザが手軽に扱えることを目指したシステムである。

GEOGridは「全地球を対象とした大規模な衛星データに対応した高度処理技術」、「協力

機関とのセキュアな相互運用性」、「多様なユーザに対するセキュリティの維持」を可能と するシステムといえる。また、「標準的なウェブサービスのインターフェイス」を使用する ことにより、地球上のどこにあるかを問わず、国内外の研究機関などとネットワーク上に 分散する各種地球観測データ(地上観測データや地図情報など)と大規模な衛星データと の統合利用の実用化研究を行っている。(図1.2 - 1参照)

GEOGrid の特徴は、経済産業省が所有している地球観測衛星(ASTER:Advanced

Spaceborne Thermal Emission and Reflection radiometer)などの画像データをベースマッ プ(基本図)として、産総研の持つ地球科学情報(地質および環境)を統合し、国際標準 に準拠したグリッド技術によって、以下のような特長を持つシステムの構築を行っている。

‐高精度なベースマップの生成:ASTER、PALSAR(Phased Array type L-band Synthetic Aperture Radar)などで得られた大規模な衛星のデータに、高度な幾何・

放射量・大気(揺らぎやひずみなど)の補正を加える処理を行い、高精度なベース マップを生成する。

‐多様な観測データのマップ化:生成したベースマップや他機関によって分散管理さ れている観測データ(MODIS:Moderate Resolution Imaging Spectroradiometerな ど)を仮想的に一つにまとめてマップ化する。

‐セキュアな相互運用:グリッドの標準アーキテクチャOGSA(Open Grid Services Architecture)に準拠している。また、GEOGridと同様の活動を行っている米国GEON

(Geosciences Network)など、他機関のシステムとの相互運用を試みる。

‐既存の地図情報との容易な重ね合わせ:標準的なウェブサービスのインターフェイ スにより、GISデータ、フィールドセンサーデータ、既存の地図情報と組み合わせ ることを試みる。

(19)

図1.2 - 1 GEOGridのシステム概要

(出典:産総研のプレゼンテーション資料より)

当調査研究では、経済産業省が所有している地球観測衛星からの ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection radiometer)などの画像データをベースマッ プ(基本図)として、産総研の持つ地球科学情報(地質および環境)を統合し、グリッド 技術によって、アジア地区を対象にその利用を検討するものである。

1.3 ASTER

ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection radiometer)は資源問 題や地球環境問題の解決に貢献することを目指して経済産業省が推進している計画の名称 である。この計画実現のために、米国航空宇宙局(NASA)の地球観測計画(Earth Observing System:EOS)に参加し、NASAの衛星EOS-AM1にASTER センサーを搭載している。

このASTERはリモートセンシングの利用により、地質調査、資源探索、地球規模の環境

変化(温暖化、砂漠化、オゾン層破壊、酸性雨、鉱物研究等)を把握するためのデータ処 理を行う。このASTERデータを受信する地上データシステムをASTTER GDS(ASTER Ground Data System)という。

(20)

1.4 アジア太平洋先端ネットワーク(APAN)の活動

グリッド・コンピューティングを行うためには、安全で、安定的なネットワーク環境が 必要となる。こうしたネットワークの多くは、それぞれの国・地域の学術ネットワークが利 用されている場合が多い。アジア太平洋地区においては、アジア太平洋先端ネットワーク

(APAN:Asia Pacific Advanced Network)9がその主導的な役割を果している。

1.4.1 APANの起源-NSFプロジェクト

APAN は、アジア域内のほぼ全ての研究・教育ネットワークが参加するコンソーシアム であり、その歴代チェアは Kilnam Chon(初代、韓国KAIST教授)、後藤滋樹(2代、早 稲田大学教授)、Jianping Wu(現在、中国の清華大学教授)である。

APAN が設立された 1997年当時は、国際回線が高価だったこともあり、ほとんどの研 究・教育ネットワークは米国への国際リンクを所有することだけで精一杯であった。つま り 、 ア ジア域 内 ネ ットワ ー ク は、郵 政 省 (当時 ) の APII(Asia Pacific Information Infrastructure)回線と、WIDE(Widely Integrated Distributed Environment)プロジェクト の衛星リンクから構成されるAI3(Asian Internet Interconnection Initiatives Project)だけ で構成されていた。アジア域内の研究・教育機関間の通信が、米国経由で接続されるため、

伝送遅延も大きく、中継する米国ネットワークの負担も大きかった。このため、アジアに ゲートウェイを構築し、アジア内のトラヒックをこのゲートウェイに集束させ、このゲー トウェイと米国との間に高速バックボーンを設定することが、米国とアジアの双方にとっ て効率的であるという、当時の全米科学財団(NSF)ディレクタ Dr. Steven Goldstein氏 が非公式に提案し、APANはそれに基づくものであった。10

1997年5月にNSFが公募した国際高速インターネット計画HPIIS(High Performance International Internet Services)に対して、APAN はインディアナ大学を代表とする

TransPAC計画書をまとめ応募した結果、1998年8月に研究資金の授与が確定し、9月に

ワシントンで調印式を実施、10 月に日米間の35Mbps ATMリンクを設定して、APANを 米国の研究教育ネットワークに接続することができた。2003年10月まではJSTが日本側 のリンクオーナとして資金援助を行ったが、科学技術庁が文部省に吸収合併されたため、

関係者と協議した結果、通信総合研究所(CRL(当時)、現在 独立行政法人 情報通信研 究機構:NICT)が新たな TransPAC の日本側リンクオーナ(東京-ロサンジェルスが 2.4Gbps、および東京-シカゴも2.4Gbps)になった。

2004 年 3 月に NSF が公募した国際研究ネット接続プログラム IRNC(International Research Network Connections)プログラムに対して、インディアナ大学とInternet2を 主提案者として、APAN-JPは再度応募した。これまでの実績・CJK(中国・日本・韓国)

9 http://www.apan.net/

10 http://www.jp.apan.net/meetings/011025-APAN-TransPAC-WS/konishi-paper.ppt

(21)

接続強化計画が評価され、2005年1月~2009年12月までの5年間、TransPAC2プロジ ェクトとして、NSFからの研究資金を受けることが確定した。2005年4月以降、TransPAC2 は東京-ロサンジェルスの10Gbps 回線を運用し、また、インディアナ大学とMoU を結 んだNICTが東京-シカゴ間に10Gbpsを協力的に運用し、さらに、SINETの東京-ニュ ーヨーク10Gbps回線がTransPAC2のバックアップ協力していることで、APAN日米リン ク10Gbps x 3が構成され、現在に至っている。11

1.4.2 APANのアジア域内ネットワーク

米国NSFが、APAN-JPを主パートナとしてアジアへの研究教育ネットとの接続性を確 保している理由は、日本を通すことで最も効果的に、アジア諸国の研究教育ネットへ接続 できるからである。当初は、APIIの日本-シンガポールおよび日本-韓国リンクと、WIDE の衛星リンク(タイ、インドネシア等)しかなかったが、NSFのTransPACリンクが設定 された後、中国と台湾が自ら東京へのリンクを設定したため、アジア域内のネットワーク が東京を中心として拡充されることとなった。12

2004年のIRNC応募に向けて、APAN-JPはアジア域内ネットワークを強化する必要に 迫られたが、考察の結果、この時点で最も効率的な方策は、日韓および日中をギガビット 化することであった。幸いにも、旧郵政省のデータ通信課とCRL国際連携室の支援により、

TransPAC2計画書をNSFに提出する際は、日韓の2.4Gbps化を達成済みで、香港経由で

の日中2.4Gbps化を同年内に完成するというコミットを追加できたため、IRNC基金を獲

得することができたとも言える。13

一方、東南アジア地域での研究教育ネットワークについては、MAFFINのフィリピンリ ンクと、WIDEのAI3衛星ネットワークが主たるネットワークであるに留まり、大きな展 開は困難なように思えたが、2005年1月にDANTEから依頼され、APAN-JPはTEIN2の 実現に向けて努力することとした。

当初は、APAN-JPとしては、

* 既存のNICT東京-香港2.4Gbpsリンク上にTEIN2トラヒックをトランジットする。

* 国立情報学研究所(NII)が東京-シンガポールリンクを新設し、TEIN2 トラヒック をトランジットする。

これにより、東京-シンガポールおよび東京-香港間にTEIN2用の622Mbps回線を新設 し、TEIN2が誕生した。14(図1.4 - 1参照)

11 http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h17/050404/050404.html

12 http://www.jp.apan.net/noc/history/japanese.shtml

13 http://www.jp.apan.net/meetings/0301-APAN-fukuoka/cjk-konishi.ppt http://www.cn.apan.net/CJ-HK/

14 http://www.jp.apan.net/meetings/0507-tein2/

(22)

図1.4 - 1 TEIN2 Topology

このような経緯を経て、現在、APANは図1.4 - 2のトポロジーを実現している:

図1.4 - 2 Asia Pacific Backbone Topology

(23)

1.4.3 APANにおけるGEO Grid関連の活動

APANにおける GEO Grid関連の活動は、GEO関連のものと、Grid関連のものに大別 され、まだ、その両者が充分に統合されるには至っていない。15

“Area” や ”Committee” は各 WG の協調を促進するものでしかなく、実際の活動(APAN 会合でのプログラム作成等)は各WGに任されることとなる。

‐Natural Resource Area:衛星データを使う Earth Monitoring WGと、地上に設置する Field Serverによる環境調査を行う Agriculture WGに分かれて活動している。

‐Earth Monitoring WG:詳細な道路地図の作成が主要議題として討議され、従来からあ る地図情報を収集し、これにASTER衛星データから(雑音情報を除去して)道路情 報を自動的に抽出、Web XMLデータ上に追加・加工処理を加えるプロジェクトがAIST を中心に推進されている。さらに、市街地については、Google Earth等のデータを利 用して、詳細な地図作成も検討の視野に入れている。16

‐Agriculture / Field Server WG:従来から良質な農作物を生産するための、農業支援の ための地球環境観測等を進めていたが、地球温暖化の危機を迎えて、2007年10月か ら、日本-ネパールの共同研究として、エベレスト近傍のイムジャ氷河湖(湖面標高

5,010m)の観測活動を開始した。このため、ネパールの研究教育ネットワークNREN

の協力を得て、エベレスト登山の基地ナムチェから、2 つの中継基地(コンデ、チュ クン)を経て、イムジャ湖へWiFiリンクを延ばした。フィールドサーバはナムチェと イムジャ湖にそれぞれ一基設置された。ナムチェのフィールドサーバは現時点でも稼 動しているが、コンデ ⇔ チュクン間の WiFi リンクが寒さによる電池障害で建設 1 週間後に不通となり、2008 年 4 月に再度登山し、改良したフィールドサーバを設置 する計画となっている。17(図1.4 - 3参照)

15 http://www.apan.net/meetings/hawaii2008/presentations/ga/grid.pdf

16 http://www.apan.net/meetings/hawaii2008/proposals/global-road-asia.html

17 http://www.jp.apan.net/meetings/0801-hawaii/jt-apan-imja-preso1.pdf

(24)

図1.4 - 3 ネパールイムジャ氷河湖のフィールドサーバ

‐Grid Committee:約4年前にできた時には、上記4つのWGのうち、Agriculture / Field Server WGを除く、3つのWG関連の討議を Grid Workshopという形で行ってきた。

しかし、それぞれが独立したセッションを開催するように成長したため、Grid機能の 実運用をMiddleware WG内での検討に委託、2008年夏のAPAN NZ会合で解散する 予定となっている。

‐Middleware WG:セキュリティに焦点を当て、米国や欧州との連携を軸に、国際協調 活動を進めている。例えば、2008年1月のAPANハワイ会合では、次のような発表・

討議がなされた:SSL/TSLサーバ認証、バーチャル組織のための協調管理基盤、欧州 におけるAAI連盟、中国における連盟識別子と資源共有、日本における大学間PKI認 証とShibboleth、NIIによるCyber Scienceインフラとグリッド運用、大学間のロー ミングサービス、Magicプロトコルを用いたShibbolethでの個人属性の交換など。18

‐e-Science WG:グリッド応用・そのインフラについて幅広く討議するWGであり、

多様な応用、クラスターコンピュータ、ネットワーク構成、高精細度の画像通信方式 等についての発表がなされた。グリッド応用としては、バイオグリッド、GEO Grid、

e-Health、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)等について討議された。また、デスク トップ・ベースのアクセス・グリッドと見なせる EVO(Enabling Virtual organizations)

に関する発表・デモも実施された。19

18 http://www.apan.net/meetings/hawaii2008/proposals/middleware.html

(25)

1.4.4 新しいネットワーク技術

研究教育ネットワークは、研究教育活動のための新しいインフラを提供し続けること、

および、最先端のネットワーク技術を研究開発、そしてテストベッドでの実験および全国 的な展開を続ける必要がある。ただし、商用インターネットでは困難な、研究教育ネット ワーク間(マルチドメイン間)の協調を得やすいという利点があり、商用インターネット では実験が困難な新しいネットワーク技術を世界規模で速やかに実行できる。

本節では、研究教育ネットワークで現在開発されている、ポリシーに忠実に従ったIPパ ケットの(レイヤ3)経路制御技術、動的なレイヤ1-2回線提供技術、およびこれらを支 えるネットワーク計測技術に関して報告する。

〔1〕 経路制御技術: BGP Path Matrix & BGP ComPATH

本来、米国内での通信であるべきものが、韓国経由となり、伝送性能が著しく劣化した 経験を踏まえ、BGPプロトコルの標準的な設定法について国際的に協調する必要性、その 具体案(強すぎるlocal preferenceの使用を止め、AS Path prependでASパス長を揃えた 上で、MEDs を利用する)に向けて努力しよう、という提案がなされた。20しかし、世界 規模での協力を得て、経路制御法を変更することは容易でなく、1年以上を経た今日でも、

この提案は普及していない。

APAN-JP NOCでは、現在のBGP経路制御状況を把握する作業を続けている21

① APANと接続している研究教育ネットワークの責任者から、実現して欲しい経路制御、

その優先順序について、希望経路制御を自ら書き込めるウェブサーバを立てた:

BGP Path Matrix

② 米国オレゴン大学がリードしている Route Viewプロジェクトに参加し、公開されて いる経路制御ソフトウェア Zebra を実装したサーバを立て、他の研究教育ネットワ ークがBGPピアリングすることで、実時間のBGP経路制御状態を把握する: Route View

③ ①と②を比較し、異なる経路制御を見つけると、これを出力する: BGP ComPATH

④ 他の研究教育ネットワークと協力して、ポリシー、または、経路制御を修正しても らい、③の出力数を低減する作業を行う。

今後の作業として、各ASに国別および地域別(アジア等)の識別子を付与したデータ ベースを作成し、他国を経由して戻ってくる経路、他の地域を経由して戻ってくる経路を 実時間で検出するツールを開発する予定である。

20 http://transpac.org/presentations/2006/International%20R&E%20Peering%20v1.1.pdf

21 http://www.jp.apan.net/meetings/0801-hawaii/kurokawa.pdf

(26)

〔2〕 動的なレイヤ1-2回線の提供:DCN (Dynamic Circuit Network)

10Gbps で使えるルータが高価であり、普及しないことが大きな理由であるが、JGN2

を含め、世界の研究教育ネットワークではレイヤ 2 のネットワーク(VLAN)をグローバ ルに展開したいとする動きが始まっている。しかし、LANやVLANはシングルドメイン(同 一ポリシー/同一企業)に有効なネットワークであり、マルチドメイン(異なったネットワ ーク間)では運用管理上の未解決な問題が多くある。例えば、自分のVLAN内(トラヒッ ク等)の情報を他のネットワークにどこまで開示できるか。一方では、障害発生時、情報 開示しないと(時差もあり)復旧作業が遅れる等の問題もある。また、アプリケーション の要求(遅延、ジッタ等)に応じて、適するネットワークサービスが異なることもあり、

APAN-JP NOCでは、グローバルなレイヤ2とレイヤ3についての比較検討を行った。22

さらに、レイヤ1の回線帯域を動的に変更できる機器(Ciena)が登場したこともあり、

エンド・ツー・エンド間で動的なレイヤ1、または、レイヤ2の自動設定を行うInternet2 のDCNや ESnetのSDNサーバなどの開発・実験が進んでいる。(図1.4 - 4参照)

図1.4 - 4 DCN

動的なレイヤ 1-2 のエンド・ツー・エンド回線の実験的提供に当たり、APAN-JP は TransPAC2 と連携し、日米間は TransPAC2 ルータ Juniper(東京とロサンジェルス)を MPLSで結び、さらに、IPの上で動くIDC(InterDomain Controller) として、Interent2が

DCN

(27)

支援・DRAGONが開発しているOSCAR IDCを採用する計画である。23また、DCNに用 いられる Network Markup Language(NML)はOGFで標準化される予定である。24

3〕 ネットワーク計測技術: perfSONAR

APAN-JPでは、TransPACと連携して、Internet2が開発を進めてきたネットワーク計測

システム Observatory を構築し、高性能ファイル転送等の実験等に使用してきた。25

かし、このObservatoryプロジェクトが完了し、マルチドメイン間の計測やLayer1-2の計 測機能の追加を目的として、Internet2・ESnet・GEANT2が協力して、perfSONARプロジ ェクトが2007年に開始されたので、APAN-JPもこのプロジェクトに参加している。 現 在、ESnetとGEANT2が加わったことで、LHC等のマルチドメイン/国際実験を協調環境 が整いやすくなり、perfSONAR関連のプロトコルもOGFで標準化される予定となってい る。26

1.4.5 APAN/TEINをさらに発展させるために

APAN の目的は、アジアのゲートウェイ(日本)を中心として、スター型のネットワー クをアジア域内に開発・構築し、(アジアのゲートウェイである)日本と米国との間に高速 なリンクを設定すること、すなわち、日本を頂点とする階層的なネットワークをアジアに 構築し、高性能な研究教育ネットワーク環境を整備することであった。しかし、農水省が フィリピンへの国際回線を提供していることを除き、わが国がアジア諸国への国際回線料 金を分担/負担することのは財政的に容易ではない。

さらに、東南アジア諸国ではまだ独占的な電気通信キャリアによる高額な回線販売が継 続している国も多く、これらの国から日本への専用線料金は米国への専用線料金と、(距離 は大幅に違い、仕入れ値は異なるはずなのに)同額な場合が多い。このため、アジアの研 究教育ネットワークは引き続き米国に接続し、本来アジア域内でのトラヒックも米国経由 となり、ビデオや音声等の実時間通信には適さないネットワーク構成が未だ存在すると共 に、アジア域内での研究教育ネットワークが普及しない傾向があった。

2004年1月のAPANハワイ会合において、ECのODA予算取りを企画中のDANTEか らTEIN2計画:

-EC予算が約10Mユーロ、TEIN恩恵国等が2.5Mユーロの計12.5Mユーロの予算

-2004年4月からFeasibility Study, 2004年10月から実装準備、2005年10月から 運用が説明されたが、多くの参加者(日本からはCRLの松本氏)はその実現を疑問視した

23

https://wiki.internet2.edu/confluence/download/attachments/19074/DCN-SUITE-OSCARS-INSTALL-v0.

2.pdf?version=1

24 http://www.gridtoday.com/grid/1999180.html

25 http://www.jp.apan.net/meetings/0801-hawaii/ikeda-hawaii1.ppt

26 http://www.jp.apan.net/meetings/0801-hawaii/LHC.ppt

(28)

ことがその議事録から分かる。27 図1.4 – 4はTEIN2プロジェクトのタイムスケールで ある。

図1.4 - 6 TEIN 2プロジェクトのタイムスケール

EC予算を確保後、DANTEは恩恵国の出席者費用一式を負担し、さらに、非恩恵国にも 参加要請して、精力的に計画推進、特に、恩恵国の国家予算確保を要請し続けた。しかし、

日本では総務省が TEIN2 計画に消極的で、2005 年 1 月のAPAN バンコク会合期間中の

TEIN2会議には、総務省関係者は欠席する旨を通知した。DANTEは後藤APAN-JPチェア

に相談・NIIから松方氏が出席することで、「日本の欠席」という事態を回避した。さらに、

同会合期間中、後藤チェアの引率で、DANTEのDai Davies氏とDavid West氏がAPAN-JP 小西事務局長に対してTEIN2計画への協力を要請してきたため、この要請を引き受けざる を得なかった。

以後、事務局長が中心となり、TEIN2を実現すべく、以下の活動がなされた:

- TEIN2のトポロジー(東京、香港、シンガポールがハブになる)を示し、APAN-JP

メンバに示した後、David Westに意見打診したところ、否定はなかった。28 - MAFFINの6Mbpsフィリピン回線を155Mbpsに増速し、フィリピンはこの回線を

使ってTEIN2に参加する。

- TEIN2が本当に実現されそうだ、という情報をベースに、CRLが再びTEIN2会議

に出席するよう説得する。CRL 所有の香港線の上に、TEIN2 トラヒックを乗せた い。

- NIIが、タイ線を切っても良いからTEIN2シンガポール線を提供するよう説得する。

27 http://www.apan.net/meetings/honolulu2004/wg-comm/dante.htm

(29)

結果的には、

- CRL は香港線と計画中のシンガポール線のポリシー/AUP を一緒にしなければな らない。

したがって、CRLのTEIN2バックボーン(香港線とシンガポール線)協力は “all or nothing”である。

- CRLの回線を使う以上、利用機関はNICTとの共同研究契約等を持つ必要がある。

ということで、TEIN2のバックボーン(香港線とシンガポール線)をNIIが提供すること

で決着、1.4.2で述べたトポロジーが完成した。つまり、APANハワイ会合では困難だと思

われた計画が、日本の積極的な参加で、TEIN2ネットワークが実現された。29

TEIN2計画が2008年夏に終了するので、DANTEは再びEuro Aid予算を確保した:

- 2008年1月-2011年12月までの4年間に、Euro Aid基金は 11.4Mユーロ、TEIN 恩恵国から6.6Mユーロを集める。

- TEIN恩恵国は、下記のように、概ね、(TEIN2時代の20%から)30%の負担から 始め、2011年には40%の負担をする。

- 2012年以降は、Euro Aid基金は大きく減少するという前提で、TEINネットワーク が存続・発展するよう、アジア主体のTEIN組織を設立する。

表1.4 - 1はアジアのTEINプロジェクトパートナーを示している。

表1.4 - 1 アジアのTEINプロジェクトパートナー

29 http://www.tein2.net/server/show/nav.622

(30)

アジア主体のTEIN組織の設立に向けて、TEIN2 Org. Task Forceが設立され、TEIN組 織の理事選挙を2008年1月22日のハワイ会合で実施する予定であったが、日本が理事就 任を辞退したこと、TEIN2 Org. TFをリードした韓国が中国のリーダシップを嫌ったこと 等もあり、事前には、誰も理事選挙に立候補しなかった。この状況で、TEIN2ハワイ会合 の前夜、APAN Coordination Committee(APAN理事会)が相談し、TEIN2会議中、APAN の1プロジェクトとして、TEINネットワークの維持・発展に努力したいと宣言した。

これに対し、DANTEはAPAN理事会に下記を要求し、引き続き、両者間で協議が続け られ、次回のAPANニュージーランド会合(2008年8月4日 – 8日)までに決着される 予定となっている。30

(31)

1.5 グリッド・コンピューティングにおけるGISの利活用

1.5.1 はじめに

ネットワークを介して広域に散在する情報資源などのリソースを仮想的に統合し、利用 者の需要に必要なリソースを世界中から、その時々に収集し、高度に連携させて利用する ための基盤技術であるグリッド・コンピューティングは、GIS(地理情報システム)の高 度利用においても注目されている。

例えば、日本政府による「GISアクションプログラム2010」(2007年)では、「地理空 間情報高度活用社会」の実現のためには、「国や地方自治体等から提供される地理空間情報 をより使いやすい情報に加工したり、別の情報を付加すること(いわゆるデータの二次利 用)によって、より付加価値の高い地理空間情報」を作っていくことの必要性が謳われて おり、散在する情報資源を統合することによる新たな付加価値の創造に期待がよせられて いる。

他方、民間市場では、近年 Googleに代表されるウェブでの GIS(地理情報サービス)

により、それまで専門的な領域とされてきた地理情報がウェブサービスを通じて、一層国 民にとって身近な存在となってきている。(図1.5 - 1 参照)

図1.5 - 1 地理空間情報利活用の流れ

■GISアクションプログラム

■e-japan2000 ■準天頂衛星

■統合型GIS指針

■地理空間情報活用推進計画

時間経

?

特定の少数ユーザが特定の業務で利用

ツールやサービスの拡大により、不特定多数のユーザが主に位置を把握する目的で利用

ツールやサービスのさらなる拡大により、不特定多数のユーザやビジネスで、コンテンツの発信も含めた多様な目的で利用 基本法の時代において、時空間情報の利活用やサービスの拡大並びに価値を高めるためには?

ブログやマッシュアップ等のWeb2.0的な利活用の 拡大により、多種多様なコンテンツやサイトが増加・・・

■地理空間情報 活用推進基本法

■マッシュ アップ

(Web2.0)

  google yahoo、(API)

(協力:gコンテンツ流通推進協議会)

そこでは、衛星画像や地質データ等との統合による様々なサービス創出が模索されてお り、今後、地理空間情報を取り扱うサービスにおいて、グリッド・コンピューティングの 利活用が広まってくると思われる。

例えば、地質情報に代表される地下構造のデータにおいては、プローブ情報のような動

(32)

態データや気象情報などと組み合わせて利用することで、道路の陥没や土砂災害などの危 険回避情報を車両や個々の利用者へ提供することも可能になるのではないかと考えられて いる。(図1.5 - 2参照)

図1.5 - 2 プローブ情報と地質データの組み合わせ例

(財)日本情報処理開発協会データベース振興センター(以下、「DPC」という)では、

以上のような状況を踏まえ、時空間情報を伴う多種多様なデジタルコンテンツ(g コンテ ンツ)の利活用基盤整備に向けた事業を積極的に推進している。本節では、グリッド・コ ンピューティングを活用した地理空間情報の利活用について、現状と課題について述べる。

1.5.2 事例

事例1)地質データの利活用

平成18 年度DPCでは、(独)産業技術総合研究所地質調査総合センターと連携し、地 下の3次元データ(時空間基盤データと称する)に関して、コンテンツ市場の拡大とサー ビス産業への活用を検討し、幾つかのツールを構築した。

地質図に代表される地下構造データは、時間的要素を含む時空間基盤情報である。また、

津波・地震などの自然災害への対応や、環境汚染や産業災害などに対する住民の漠然とし た不安や心配に対応するために、適切な情報を提供するためのリソースとなりうる。

しかしながら、それらの情報は基本的に2次元で表現されており、これを3次元的に読 みとり、解釈することは専門家でなければできない。また、地質情報は一般的に目的ごと に産官学で分散して生成・管理され、その量も膨大になっているため、それらの所在を探 すためにも、専門知識が必要になっている。

図 1.2 - 1 GEOGrid のシステム概要
図 1.4 - 1 TEIN2 Topology
図 1.4 - 3   ネパールイムジャ氷河湖のフィールドサーバ
表 1.4 - 1 はアジアの TEIN プロジェクトパートナーを示している。
+7

参照

関連したドキュメント

平成 28 年度は発行回数を年3回(9 月、12 月、3

 福島第一廃炉推進カンパニーのもと,汚 染水対策における最重要課題である高濃度

※定期検査 開始のた めのプラ ント停止 操作にお ける原子 炉スクラ ム(自動 停止)事 象の隠ぺ い . 福 島 第

 本計画では、子どもの頃から食に関する正確な知識を提供することで、健全な食生活

第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日

2013(平成 25)年度から全局で測定開始したが、2017(平成 29)年度の全局の月平均濃度 は 10.9~16.2μg/m 3 であり、一般局と同様に 2013(平成

平成 26 年度 東田端地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 26 年度 昭和町地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 28 年度 東十条1丁目地区 平成 29 年3月~令和4年3月

2011年(平成23年)4月 三遊亭 円丈に入門 2012年(平成24年)4月 前座となる 前座名「わん丈」.