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(1)

301

平 20.都土木技術センター年報 ISSN 1882-2657 Annual Report

C.E.C., TMG 2008

2. 地下水流動保全対策技術資料の紹介

Technical Report Concerning Groundwater Preservation Method

技術支援課 橋原正周、住吉卓 佐々木俊平(現(財)道路保全技術センター)

1. はじめに

東京のような密度の高い都市空間を有効に活用 するため、近年、道路の地下化、鉄道や駅の地下化 及び地下河川の整備など、地下に大規模構造物を構 築することが多くなっている。

東京都建設局においても、慢性的な交通渋滞の解 消、良好な住環境の維持、地球温暖化防止などのた め、環状第八号線を地下空間に整備するなど都市空 間の有効活用を図ってきた。

この整備を進めるにあたって、地下水流動の保全 を考慮し、地下水流動保全対策を検討し、実施して きた。

土木技術センターでは、事業実施部所と協力し、

蓄積してきた知見を「地下水流動保全対策技術資 料」として取りまとめたので概要を紹介する。

2. 地下水流動保全対策技術資料の概要 (1) 概説

1) 地下水流動阻害

構造物を構築する地面の下には地下水が存在し、

その地下水は地形や地質に応じて流動している。

このため、地下に大規模な線状構造物を築造した 場合、図-1に示すように本体構造物や仮設の土留 壁が地下水の流動阻害を生じさせることがある。つ まり、地下水を遮断した構造物の上流側では地下水 位が上昇(ダムアップ)し、下流側では地下水位が

地下構造物の建設

地下水流動の阻害

一次的現象

地下水位上昇・低下等

二次的現象

地盤沈下 井戸枯れ 漏水

増加 液状化危険度増大等

図-1 地下水流動阻害による地盤環境変化右図は 1)

(2)

低下(ダムダウン)する(一次的現象)。これに伴 い、上流側では地下構造物への漏水や浮力の増大な ど、下流側では地盤沈下や井戸枯れなど、周辺環境 への様々な影響(二次的現象)が懸念される。

2) 大規模線状地下構造物

トンネルなどの大規模線状地下構造物(以下、地 下構造物という)の建設工事にあたっては地下水の 処理が重要であり、一般に、土留めは止水壁の機能 を有し、その先端は地盤深くまで達し、帯水層を遮 断することが少なくない。

図-2に示す東急目黒線連立事業(鉄道の地下化 工事)の事例では、止水壁が、主な帯水層である武 蔵野礫層及び東京礫層の砂礫層を遮断している。こ の事例では、地下水位低下による腐植土層等の圧密 沈下が懸念された。

3) 地下水流動保全対策

地下構造物の建設による地下水流動の阻害を回 避するために地下水流動保全対策(以下、地下水対 策という)が必要となる。

地下水対策には、構造物の建設位置や深さなどを 再検討し、地下水への影響が小さくなる様に工夫す る方法や、人工的な施設により地下水の流れを確保 する地下水流動保全工法(以下、対策工法という)

を実施する方法がある。

4) 地下水対策の検討概要

地下水対策の検討フローを図-3に示し、概要を 次に述べる。

①調査

まず資料調査、現地調査や各種試験等により地 質・地下水状況を把握し、無対策時の地下水の変動

地質時代 現世

沖   積  

洪    積    鮮新世

第       四       

地 層 名 地 質

盛土 表土 層 腐植土層 粘性土層 砂質土層 砂礫層 関東ローム層 板橋粘土層 相当層 武蔵野礫層 渋谷粘土層 相当層

東京層

東京礫層

上総層群 腐植土 粘性土 砂質土 砂礫 関東ローム 凝灰質粘土

砂礫 凝灰質粘土

粘性土 砂質土 粘性土 砂礫 砂質土 粘性土 固結シルト

砂質土 Ab Ap Am As Ag Lm Lc2 Mg Lc1 Toc1 Tos Toc2 Tog Togs Togc Kc Ks Ab

Ap 腐植土層 Am

Lm Lc2 Tog Mg

Tos Lm

Am Ab

Kc

Ks Ks Ks Ks

Mg Lc1 Lc2

Kc Togc

Togs

止水壁下端 主な帯水層

躯体

D.L. (m) 70.0

60.0

50.0

40.0

30.0

3K400 3K200 3K000 2K800 2K600 2K400 2K200 2K000

図-2 土留め壁が帯水層を遮断する事例

事業計画

概況把握

地質・地下水状況の把握

周辺環境へ及ぼす影響

評価基準の設定

無対策時の影響予測

地下水対策

は必要

地下水対策の選定

地下水対策の効果予測

対策効果

は十分

地下水対策の施工

所定の性能

を満足

維持管理

路線計画

・地下構造物の線形 形状・寸法 資料調査

現地踏査 流域全体の調査

地層構成と帯水層の分布状況

・帯水層の地下水分布

・水文・気象データ 地盤調査・地質調査

・ボーリング

・土質試験等

一次的現象

・地下水位の上昇・低下等 二次的現象

・地盤沈下・井戸枯れ等

二次的現象の基準値 一次的現象の基準値

数値解析 浸透流解析

・同定解析のうえ予測 簡易計算

帯水層と構造物の位置関係

・構造物 本体及び仮設 検討終了

対策の種類

・工法 組み合せ等 施工時期

・仮設対策 恒久対策 数値解析等

・無対策時と同手法で予測

透水性の確保

・材料・施工法

施工中の観測 性能確認

モニタリング メンテナンス

調            設     

施   工  

・   維   持   管  

地下水調査

・地下水位

・地下水流動性

・帯水層

Yes

No

No

Yes

Yes No

管理値の設定

図-3 地下水対策の検討フロー

(3)

(一次的現象)によって周辺環境にどのような影響

(二次的現象)が生じるかを予測する。

次に、周辺環境の影響項目に対する評価基準を定 めて予測結果と照合し、地下水対策の必要性につい て判断する。

②設計

地下水対策が必要な場合、対策効果の予測及び評 価を行いながら地下水対策方法を選定し、設計する。

③施工・維持管理

地下水位観測などによる計測管理を行いながら 施工し、完成時には性能確認をする。

施工後は、周辺地下水位の変動や、集水井戸、涵 養井戸、通水部の目詰まりなどをモニタリングし、

必要なメンテナンスを施す。

(2) 調査 1) 概況調査

地下構造物の建設工事にあたっては、対象地及び その周辺における地質・地下水の概況を調査し、地 下水変動の課題を把握する。このため、地形図、地 質図、空中写真、既往の調査報告書等による資料調 査及び現地踏査を実施する。

地下水は、一般に透水性が高い砂質土層や砂礫層 を帯水層として流動している。降雨、地表の土地利 用、河川水位や地下水利用等により局所的な変動は あるが、大局的な流向は、図-4に示すように地形 に沿ったものと考えられている。また、旧河道部や

河谷底地などになっている箇所は水みち

...

になって いる場合が多い。

したがって概況調査では、帯水層や水みち...

、地下 水位低下により地盤沈下が生じやすい軟弱な沖積 層や河道部など、工事で問題となる箇所を把握する ことが重要である。

2) 地質・地下水状況の把握

概況調査の結果に基づき、工事箇所を含む地下水 の流域全体を対象として、地層構成と帯水層・難帯 水層の分布状況などを調査する。

また、工事箇所周辺のボーリング・土質試験や、

地下水位観測、地下水流動調査・帯水層調査等によ り、地質・地下水の状況を詳細に把握する。

図-5に、東急目黒線連立事業における地質・地 下水状況の整理例を示す。この図より、洪積砂礫層 の地下水流、及び立会川暗渠周辺の水みち...

など、河 図-4 地下水流動の模式図2)

下末吉面 淀橋台 荏原台 地形分類

武蔵野面 目黒台 台地斜面 河谷底地

武蔵小山駅 東急目蒲線

西 補助46号

洗足 30

洪積砂礫 Dg 層地下水位標高線

平成10年9月 豊水期 洪積砂礫層の地下水の流れ

河谷底地の川筋の沖積層中の地下水の流れ 51

51 51

52 53

54 56 55

57 58

58 57

56 55

54 53

53

53 52 51

51

図-5 地質・地下水状況の整理例

200 m 500 m

トン

自記観測井 人力観測井 55測線

図-6 地下水観測井の配置例

(4)

谷底地の沖積層の地下水流を鉄道路線が横断して いることがわかる。

図-6に、環状第八号線(練馬トンネル)工事に おける地下水観測井戸の配置事例を示す。この事例 では、計画路線の道路端から左右各々10 m、100 m、

200 m、500 m の地点に観測井戸を設置し、地下水 位を観測した。この観測井戸のうち 200 m までの範 囲内は詳細調査区域として、自記水位計をなるべく 設置し、連続観測できる井戸を多く配置した。

3) 周辺環境へ及ぼす影響

地下水位の上昇・低下などの一次的現象が生じた 場合、これに起因する地盤沈下、水質悪化、井戸枯 れなど種々の二次的現象のうち、どの項目に影響が 及ぶか、周辺の地形・地質等の自然条件や土地利用 状況などの社会的条件から判断して絞り込む。

その際、概況調査やボーリング・地下水位観測等 により地質・地下水状況を把握するとともに、古く から住んでいる人への聞き取りなども参考になる。

特に、地下水利用が活発、軟弱地盤が堆積、重要 構造物に近接、貴重な植生等の生態系の存在する場 合は、二次的現象について入念な調査が必要となる。

4) 評価基準の設定

地下水流動の影響評価を行うためには、上記 3) で絞り込んだ二次的現象に対して、実害を及ぼすと 判断される基準値を定めるとともに、これと定量的 に関連づけて地下水位変動などの一次的現象に対 する基準値を定める。

例えば地盤沈下について、周辺家屋に変状を生じ させないための許容沈下量(二次的現象の基準値)

を設定し、この沈下量を引き起こすと算定された地

下水位低下量から地下水位の下限値(一次的現象の 基準値)を設定する。二次的現象の基準値を複数設 定した場合は、それらすべてを満足させるための地 下水位の上限値・下限値等を一次的現象の基準値と して設定する。

5) 無対策時の影響予測

地下水対策を施さない場合の地下水の変動を、数 値解析(有限要素法による浸透流解析)等によって 定量的に予測する。

数値解析の概念を図-7に示す。解析モデルの解 析次元は地質・地下水や構造物の状況などに応じて 使い分ける。

一般に、地下水影響予測における数値解析手法の 精度は、対象の建設工事が行われる前の地下水状況

(観測水位)を解析モデルによりいかに再現できて いるかが重要である。しかし、地下水涵養の仕組み は必ずしも明確でなく、また帯水層や地下水位など の情報は限られた地点しかないため、試行的に計算 を行い、現況の観測水位に合致するようパラメータ を修正・設定することになる。

6) 地下水対策の必要性判断

以上の検討に基づき、当該工事における地下水対 策の必要性を判断する。地下水対策が不要な場合は 検討終了となる。

図-8に示す環状第八号線(練馬トンネル)工事 の事例では、準三次元浸透流解析による影響予測を 行い、無対策の場合、工事前と比較して最大 1.16 m の地下水位低下が生じるという解析結果を得た。こ れは許容値とした 1.0 m を満足しておらず、地下水 対策が必要となった。

水文状況

(気象,地下水利用)

地下水位・水質

(観測データ)

帯水層の構造

(地形分類,地質断面)

浸透流パラメータ

(透水係数,貯留係数など)

地下水環境に与える要因

(地下構造物の建設)

浸透流解析

(地下水流動)

移流・分散解析

(汚染・塩水の拡散)

鉛直2次元解析 準3次元解析 平面2次元解析

3次元解析 水質への影響を考慮

(汚染・塩水化)

鉛直方向の流れを無視でき る場合

(水平流のみ)

鉛直方向の流れは無視でき ないが,平面的な流れに定 方向性がある

(奥行き方向一定)

鉛直方向の流れは無視でき ず,平面的な流れも定方向 性がない

鉛直方向の流れを無 解析次元 視できる

水平流のみ 鉛直方向の流れを無視

できないが 平面的な流 れに定方向性がある

奥行き方向一定 鉛直方向の流れを無視

できず 平面的な流れに も定方向性がない

準3次元解析

雨水浸透

堀割構造 自由地下水位分布

地形面 A層 B層 C層

3次元解析

透水性層A

透水性層B

難透水性

被圧地下水 自由地下水 雨水浸透 地形面

平面2次元解析

被圧地下水位分布

堀割構造

鉛直2次元解析

堀割構造

透水性層 難透水性層 土留め壁

図-7 数値解析の概念右図は 1)

(5)

(3) 設計

1) 地下水対策の選定

対策工法の概念を図-9に示す。構造物によって 遮断された地下水流の上流側で地下水を集め(集 水)、構造物と交差する区間はパイプなどを用いて 通過させ(通水)、構造物の下流側で地下水を地盤 に還元する(涵養)。現状では、地下水対策の明確 な設計手法は確立されておらず、工事毎に検討がな されている。

地下水対策を選定する場合、帯水層と構造物の位 置関係、対策工法の種類、効果や施工時期を十分考 慮し、現場状況、コストなどを含めて総合的に判断 する必要がある。

施工時期について、過去に施工した環状第八号線

(井荻トンネル)の事例では、無対策で土留め壁の 施工を進めたところ地下水位低下の問題が生じた ため、施工を継続しながら地下水対策を検討・実施 した。結果的には、第一期工事・第二期工事の躯体 構築に合わせて設置した通水管(図-10(a))や、

一部区間で実施した柱列式ソイル壁の切削除去で は顕著な効果が見られず、躯体構築後に水みち...

(旧 河道)に設置した斜め集水・涵養パイプ(図-10(b))

による通水効果が大きく、設置箇所周辺で地下水位 差が縮小した。

しかし、一度生じてしまった地下水位の変動を回 復することは難しいため、地下水流動阻害が懸念さ れる場合は、土留め施工時から地下水対策を実施す ることが重要である。

その後の事例では、東急目黒線連立事業では、土 留め施工時の対策工法(仮設対策)としてリャージ 工法(図-11)を採用し、本体完成後に供用する恒 久的対策工として、鉛直ドレーン+水平ドレーン

(図-12)などを採用した。また環状第八号線(練 馬トンネル)では、根入れの深い土留め壁による地 下水流の遮断が生じないように、地山の帯水層の一 部を通水区間として確保する地下水対策として、水 中躯体移動設置工法(図-13)やニューマッチクケ ーソン工法(図-14)を採用した。

(a) 第一期・第二期工事の通水管 (b) 斜め集水・涵養パイプ

図-10 通水管を用いた地下水対策の例

無対策時(最大1.16mの水位低下)

図-8 影響予測の事例

図-9 対策工法の概念1)

(6)

揚水井戸 (孔径150mm)

注水井戸

( 孔径300mm) 配 管

口径40mm

揚水ポンプ

( 注水に必要な地

下水の汲み上げ 逆洗ポンプ

( 井戸の目詰まり

防止 洗浄 制御盤

( インバータによる

ポンプの制御

上流側 下流側

制御盤

( インバータによる

ポンプ等の制御

洪積砂礫層

帯水層

水位センサ

過剰揚水の監視 スクリーン

開口率20% スリ

ット間隔1.0mm

フィルター

硅砂2号

水位センサ

( 目詰まりによる井戸

水位上昇の監視

スクリーン

開口率20% スリット

間隔1.0mm フィルター

硅砂2号 F

流量計

(揚・注水量の監視 目詰まり防止目

的の定期汲み上 げによる排水

図-11 施工中の地下水対策(仮設対策)の例(リチャージ工の概念)

鉄道躯体 地下水流方向 水平ドレーン

砕石5号

鉛直ドレーン

砕石5号

吸出し防止シート 吸出し防止シート

埋戻し用砂

埋戻し土 M-40

土留め壁

固結シルト 砂礫 粘性土

図-12 鉛直ドレーン+水平ドレーンによる地下水対策(恒久対策)の例

図-13 水中躯体移動設置工法による地下水対策の例3)

図-14 ニューマチックケーソン工法による地下水対策の例4)

(7)

2) 地下水対策の効果予測

上記 1)(地下水対策の選定)で選定した地下水 対策について、上記(2) 5)(無対策時の影響予測)

で用いた方法により、地下水対策の効果を予測する。

3) 地下水対策の適否判断

効果予測により、上記(2) 4)(評価基準の設定)

で設定した基準値を満たすような地下水対策が適 する対策となる。

図-15 に示す環状第八号線(練馬トンネル)工 事の事例では、地下水対策後の地下水位低下量は最 大 0.7 m 程度と予測され、許容値 1.0 m を満足した。

(4) 施工・維持管理 1) 透水性の確保

不必要な地盤の乱れや、対策工法施設の目詰まり 等が生じないよう、適切な材料選定や入念な施工に より所定の透水性を確保する。

それでも地盤の不均一性や局所的な水みち

...

等に より、予測したとおりの対策効果が生じないことも ある。そのため、地下水位等の管理値を設定し、施 工中の観測を実施し、地下水流動や周辺への影響を 与えないようにすることが重要である。

2) 管理値の設定

上記(2) 4)(評価基準の設定)で設定した地下水 位や地盤沈下量等の基準値に、安全を見込んだ施工

時の管理値を設定し、施工管理に用いる。

3) 施工中の観測

施工中は地下水位や地盤沈下等を観測すること により、地下水流動や周辺への影響を把握し、管理 値を超えた場合等には、原因や対策を検討する。ま た観測値は、こうした施工中の計測管理に用いるこ とはもとより、完成時の性能確認や供用後の維持管 理における判断等に際し極めて重要である。

環状第八号線(練馬トンネル)工事では、地下水 位低下量の目標値を 1.0 m(家屋に支障を来さない 地盤の許容沈下量 2 cm に対応)とし、図-16に例 示するように、施工中(事前・事後含む)の地下水 位観測を実施した。図-17 に施工前~施工後の地 下水位コンターの変化を示す。

図-16 は水中躯体移動工法(図-13)の適用箇 所付近の測線(55 測線)における地下水位の経時 変化を示しており、この測線では、工事中に上下流 の地下水位差が拡大し、工事後に縮小する傾向が見 られる。一方、図-17(b)では、練馬トンネル北西 側(上流側)の地下水位標高が A.P. 36~37 m の区 間において、南東側(下流側)の地下水位標高は A.P. 34~37 m 程度と不連続であり、上下流に地下 水位差が生じていることがわかる。地下水位の挙動 には、当該工事による影響の他、降水等による季節

(a) 無対策時(最大 1.16m の水位低下) (b) 対策時(最大 0.71m の水位低下)

(図-8 再掲)

図-15 効果予測の事例

(8)

変動や他箇所の工事の影響なども複合しており、一

概に当該土留め・本体工事や地下水対策による影響 や効果を断定できないこともある。既報5)では、施 工前から実施していた地下水位観測データを用い て、降水による地下水位の季節変動の影響を排除し、

トンネル工事の地下水位変化への影響範囲を求め る検討事例を示した。

4) 性能確認

対策工法として設置した施設は、十分な初期性能 を有し、長期に渡って稼働が可能であることを確認

する。

全施設の通水試験を行い、直接的に性能を確認す ることが望ましいが、地下水位観測の結果等から判 断することもある。

5) 維持管理(モニタリングとメンテナンス)

①維持管理の概念1)

維持管理の概念を図-18 に示す。これは、対策 工(施設)の性能(地下水位低下量など)の経時的 な変化を示している。すなわち対策工の性能は、「初 期性能から時間とともに低下し、メンテナンスによ

2002.6 2002.12 2003.6 2003.12 2004.6 2004.12 2005.6 2005.12 2006.4 2002.4

上流側地下水位

下流側地下水位 トンネル工事中

トンネル工事前 トンネル工事後

55測線

()地下水位 A.P. +m ()降雨量 mm/day

42 40 38 36 34

200 150 100 50 0 300

図-16 地下水位観測データの例

トン 55測線

水中躯体移動設置工法

ニューマチックケーソン工法

トン 55測線

(a) 施工前(2002.4) (b) 施工後(2006.4)

図-17 地下水位コンターの変化の例

(9)

って回復する」、というサイクルを繰り返す。

ここに「限界値」とは地下水流動阻害の影響によ って超えてはならない地下水位低下量等の値であ り、これに地盤調査や影響予測等の不確実性に対す る余裕を見込んだ値が「許容値」である。「管理値」

は、対策工の供用開始後に目詰まり等で性能が低下 した場合のメンテナンス実施時期を判定するため の管理上の基準値であり、また、この性能低下を考 慮して「設計値」が定められる。

② モニタリング

モニタリングは施工前(調査段階)や施工中(計 測管理・初期性能確認)にも実施するが、ここでは 施工後のモニタリングについて述べる。

施工後のモニタリングには、周辺環境に地盤沈下 等の悪影響を及ぼさないためのモニタリング(地下 水位観測や地表測量など)及び、地下水対策(施設)

の性能を確認するためのモニタリング(通水管内の 流量や施設の目詰まり状況等の確認)がある。

モニタリングは極力長期に渡って実施すること が望ましく、地下水位の季節変動を考慮すると、施 工後少なくとも 1 年間程度は実施すべきである。

③ メンテナンス

地下水流動保全工法の井戸(集水・涵養施設)に 対する負荷は通常の井戸に比べて小さいため、地盤 の初期の目詰まり(土粒子の細粒分の移動による目 詰まり)がないようにしておくことにより、長期的

な地盤の目詰まりの可能性は小さく、定期的なメン テナンスの必要性も小さくなるものと考えられて いる。

ただし、対策工の性能が管理値まで低下した場合 には、性能回復のためのメンテナンスが必要となる。

④ 維持管理の課題

地下水流動保全工法は、現状では実施事例が多く ないため、対策工の施工後に周辺の地下水流動が経 年的にどう変化するか、また、対策工の性能がどう 変化するか等については定式化されていない。

従って、多くの事例で長期に渡ってモニタリング 及びメンテナンスの経験が蓄積されることが、各々 の対策が適切に機能するために重要である。

3. おわりに

本文で紹介した内容の詳細については「地下水流 動保全対策技術資料」を参照されたい。本文及び技 術資料の活用により、各部所での地下水流動保全対 策への関心が高まり、今後の事業における環境保全 検討の一助となれば幸いである。

最後に、技術資料に事例として収録した各工事の 関係諸氏に感謝の意を表します。

図-18 維持管理の概念1)

(10)

310 参 考 文 献

1) 地盤工学会地下水流動保全のための環境影響評価と対策 -調査・設計・施工から管理まで-編集委員会 (2004):地下水流動保 全のための環境影響評価と対策 -調査・設計・施工から管理まで-、地盤工学会

2) 土質工学ハンドブック改訂編集委員会 (1982):土質工学ハンドブック、99、土質工学会

3) 島田剛、工藤山城、桜井昭二、中村一郎 (2006):水中躯体移動設置工法を用いた地下水流動保全対策の施工事例、基礎工、Vol.34、

No.3、70-73、2006.3

4) 島田剛、竹石英之、木佐貫徹、山本佳正 (2006):地下水流動保全対策工としてのニューマチックケーソン工法 -東京都建設局 環状 8 号線南田中トンネル工事での対策事例-、基礎工、Vol.34、No.3、74-77、2006.3

5) 佐々木俊平、住吉卓、高橋賢一、山本富士男 (2007):季節変動を考慮した工事による地下水位影響範囲の考え方、平 19.都土木 技研年報、183-189

参照

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