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目の学部 学科注Contents 概説 p60 京都大学手塚哲央教授 エネルギー 資源の研究は 工学的な問題だけでは なく 政治や政策に関わる人間の判断が影響を与え る 研究の重要課題の 1 つは地熱 風力 太陽光などの 再生可能エネルギーへの移行 第 40 回 エネルギー 資源 Column 日本

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(1)

第40回

学部

学科

C

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概説 �������������������

p60

京都大学 手塚哲央 教授エネルギー・資源の研究は、工学的な問題だけでは なく、政治や政策に関わる人間の判断が影響を与え る ❖研究の重要課題の1つは地熱、風力、太陽光などの 再生可能エネルギーへの移行

Column

日本のエネルギー・資源の現状 ��

p62

入試情報  ����������������

p64

太陽光発電 ���������������

p66

福島大学 齊藤公彦 特任教授主な5種類の再生可能エネルギーの中でも、太陽光発 電は発電機が不要で、個人でも電力を得ることが可能 ❖高効率・薄型結晶シリコン太陽電池を研究

海底鉱物資源 ��������������

p68

東京大学 中村謙太郎 准教授日本近海に4種類の海底鉱物資源が存在。海底資源 の利用をめざし、複数の技術を組み合わせて場所を 特定 ❖海底資源の研究は地球や生命の進化の過程にもつな がる分野

核融合������������������

p70

京都大学 小西哲之 教授 ❖2億℃以上のプラズマ状態を1秒以上持続させ、水 素からエネルギーを取り出す核融合 ❖核融合炉を使ったバイオマス・核融合ハイブリッド システムを研究

教育�������������������

p72

秋田大学国際資源学部英語は必須。開発技術だけでなく、文理融合教育を 行い、資源開発の専門家を育成 ❖ 約1カ月間の「海外資源フィールドワーク」は全員 必修

卒業後の進路 ��������������

p74

 産業革命以降、人類は石油や石炭、天然ガスといった 化石燃料等を利用し、経済発展を果たしてきた。   日本は、国内の石炭が日本のエネルギー供給の中心を 担っていたが、1960年代以降急速にエネルギーの需要が 増え、高度成長期には中東から輸入された安価な石油が 経済発展を支えた。しかし、第四次中東戦争を契機に 1973年に起きた第一次石油ショック、次いでイラン革命 による影響で1979年には再び原油価格が大幅に高騰す る第二次石油ショックが起こった。一方で、日本のエネ ルギー自給率は7.0%(2015年度)と、他のOECD諸国 と比較しても低い水準であり、原油価格の高騰やレア アースの供給が不安定になると、国民生活や産業に大き な影響を及ぼす。  日本では、限りある資源を有効活用するため、省エネ ルギーに関する取り組みも進んでいるが、当面は、効率 的で環境にやさしい持続可能なエネルギーの利用方法を 探る必要がある。  そこで、11月号では「エネルギー・資源」をテーマと し、まず、概説として京都大学手塚哲央教授に、エネル ギー・資源問題の考え方を伺った。多様なトピックスの 中から「太陽光発電」「海底鉱物資源」「核融合」の3つ について、その概要や研究内容を伺った。また「教育」 として、資源開発の専門家を文理融合教育で育成する秋 田大学国際資源学部の取り組みを紹介する。

エネルギー・

資源

Kawaijuku Guideline 2017.11 59

(2)

君たちが決める

日本の「エネルギー・資源」の将来

 日本は化石燃料や金属などの資源の非常に少ない、しかも海に囲まれた 工業化国である。このような国は世界中探しても他には存在しない。そし て日本では2011年の東日本大震災以降、原子力と再生可能エネルギーの 利用が大きな問題となっている。このエネルギー・資源問題の考え方につ いて、京都大学大学院エネルギー科学研究科 手塚哲央 教授に話を伺った。

手塚

哲央

教授

「人はどう生きるべきか」が問われる

エネルギー・資源分野の研究

 産業革命以降、人類は石炭や石油といった化石燃料、そ して核エネルギー(原子力)を活用することにより、国に よってその差はあるものの経済発展を果たした。しかし、 そのエネルギーの使い方は、生物の体内でのエネルギー の利用方法とは大きく異なる。生物内では、体温程度の 低い温度でエネルギーが使われるのに対して、例えば火 力発電では数百度以上の高温が作られる。まだまだエネ ルギーの利用方法については研究の余地があるが、当面 はより効率的で環境にやさしい持続可能な利用方法を探 る必要がある。  そのような状況の下での現在のエネルギー・資源に関 する研究の重要課題の一つは、地熱、風力、太陽光など の再生可能エネルギーへの移行である。しかし、再生可 能エネルギーは、エネルギー密度が低いため、簡便かつ 安価に利用することが困難である。そのため国では、2012 年に固定価格買取制度(FIT)を導入するなど、再生可能エ ネルギーの拡大を図っている。一方、まだ利用されていな い化石燃料や、今ある化石燃料を有効に使うための研究 も行われている。もし、新しい化石燃料の開発が成功し、 そちらの利用が進むような政策や人々の行動がとられるな ら、再生可能エネルギーの研究開発が停滞することもあ り得る。つまり、エネルギー・資源の研究は、工学的な問 題だけではなく、政治や政策に関わる人間の判断が影響 を与えるテーマでもある。  「工学としては、エネルギー・資源をうまく使う技術を 創り出せばいいのですが、そこには『人間としてどう生き るべきか』という問題も横たわっています。化石燃料とい う過去の太陽エネルギーの蓄えで生きていればいいのか、 それとも今、太陽から降り注いでいるエネルギーのみを利 用して生きようとするのか? もっとわかりやすい例えで いうと、親の残した財産で生きるのか自分の稼ぎだけで生 きるのかという問いです。ただ、今すぐには再生可能エネ ルギーのみに頼るのは難しいため、それをいつまでにどの 程度利用するのかを決めることが大きな課題になっていま す。決定を下すのは私たち自身ですから、エネルギー・資 源の問題は、自分たちがどう生きたいのかを自分で決める という問題につながっているのです」(手塚教授)

民生、運輸、産業で異なる課題

 我々のエネルギー消費は、大きく「民生」「運輸」「産 業」の3つの部門に分けられる。「民生」は家庭やオフィ スビルなど、「運輸」は自動車や船舶、航空機など、「産 業」は種々の製造業のことを指す。私たちは、普段、原 油、石炭、天然ガス等のエネルギー資源を、熱エネルギ ーや運動エネルギー、電気エネルギーなどに変換して 種々の目的に利用している。  民生部門での利用は電気エネルギーが重要である。現 在、民生部門での注目されているトピックは「電力の自由 化」と「再生可能エネルギーの貯蔵」の2つである。電 力の自由化については、制度・政策・政治の関与が大き い。それに関連して「スマートエネルギーシステム」(地 域で電力などのエネルギーをうまく利用するシステム)と いう概念が注目されており、保存の難しい電気エネルギ ーを賢く(=スマートに)利用する方法が模索されている。 これも人々のエネルギー利用(ライフスタイル)の在り方 にも関わっており、研究は端緒についたばかりだ。  「再生可能エネルギーの利用では、エネルギーを貯蔵し て運ぶ『エネルギーキャリア』の選択が問題になります。 太陽電池を家庭で使う場合、例えば、発電する時間帯と、

概説

京都大学 大学院エネルギー科学研究科

(3)

電気を使う時間帯が異なるため、何らかの形で太陽光の エネルギーを蓄積しなければなりません。また自動車の場 合には、エネルギーを自動車に積む必要があります。その ためにバッテリーを使うのか、水素を使うのか、アンモニ ア(NH3)に変換して利用するのか、それ以外にも実にさ まざまなアイデアがあります。しかし新しいエネルギーキ ャリアの利用には新しいインフラの整備が必要であり、こ れも政策で決定すべき問題です」(手塚教授)  また、自動車に関しては、化石燃料を使う内燃機関(注 1)か、電気モーターかの大きな岐路に立っている。内燃 機関のエネルギー効率(注2)は、一定の回転数を維持でき れば40 ~ 50%に達するが、自動車のエンジンの場合は 加減速があるので平均で10%強しかない。ガソリンエン ジンと電気モーターなど複数の動力源を搭載しているハ イブリッド車は、回転数の変化を抑えてエネルギー効率 を上げるシステムを採用したが、動力源である内燃機関と 電気モーターを両方積むのでは過渡的な技術といえる。  「一方の電気自動車も、大容量バッテリーを搭載するの か、電力を無線で飛ばして供給するのか、あるいは架線 方式を導入するのか、さまざまな方策があります。それぞ れにさまざまな技術的な課題があります。燃料電池車の 研究も盛んに行われていますが、コスト面も含めて技術的 なハードルが高く、うまくいっているとはいえません」(手 塚教授)  産業部門では、資源のリサイクル問題にも関心が集ま っている。日本には金属資源はほとんどないが、現在は安 価に輸入できるため、アルミや銅などの一部の金属を除 いてほとんどリサイクルされていない。「最新技術に利用 されるレアメタルも供給が不安定ですが、『都市鉱山』と 呼ばれる携帯電話などの廃棄家電から金属をリサイクル する方法も、コストが問題になって、なかなか進展してい ません」(手塚教授)  日本はエネルギー・金属資源のほとんどない国である。 では、どのような発展の方向があるのか。「海に囲まれた 資源のない唯一の先進国である日本では、もっと海の活 用を考えるべきでしょう。メタンハイドレートは利用可能 なエネルギー資源ですし、海底火山からはさまざまな金属 が湧き出しています。海洋エネルギーを使った潮ちょう汐せき発電 も可能性があります。こうした新しい分野に挑戦していく ことは、もちろん、利用の困難さの問題もありますが、日 本の未来の生き方を模索するうえで極めて重要なことだと 考えています。もう1つ、エネルギー・資源の研究で忘れ てならないのが核エネルギー(原子力)の研究です。突 き詰めれば、自然界のエネルギーは核エネルギーと重力 から生まれています。原子力発電所の運転の可否の議論 とは別に、核エネルギーを含めてエネルギーに関わる多様 な基礎研究を続けていくことは重要です。将来のエネル ギー利用技術として何が新しく生まれるかは全く想像でき ないからです」(手塚教授)

理学部と工学部で本質的な差はない

研究室・研究者に注目を

 エネルギー・資源の問題は、自然科学、社会科学、人 文学のあらゆる学問分野からアプローチできるため、どの 学部・学科に進んでも関連した学びはできる<図>。人 文学との関連について、手塚教授は「エネルギー・資源 は、環境問題と極めて密接に結びついているほか、倫理 学とも関係が深く『環境倫理』という分野もあります。そ のため、理工系であっても倫理学や哲学は決して無縁で はありません」と指摘する。  また、大学や学部・学科選択にあたっては、資源開発、 再生可能エネルギーなど、具体的な事柄に関心があれば、 その事柄が学べる学部・学科を選択すればいい。  「学士課程では理学部も工学部もそう大きな違いはあり ません。ただ、大学院からは大きく方向が異なるため、大 学院進学の際には注意が必要です。私が一番よいと思う のは、自分で興味深いと感じる研究を行っている研究者 がいれば、その学部・学科、大学院を選ぶことです。ま た、単に授業を受けるだけでなく、個人的に質問するなど 研究者と直接話せるのが大学の醍醐味であり、そうすれ ば、きっと授業だけでは得られない魅力を感じることがで きるはずです」(手塚教授) <図>エネルギーに関わる3つの世界(学問分野) (手塚 哲央 教授) (注1)内燃機関…シリンダーの中でガソリン・重油などの燃料を燃焼させ、爆発させること(内燃)によって得た熱エネルギーを、機械的エネルギーに変える装置。 (注2)エネルギー効率…狭い意味では、燃焼したり、反応したりさせるエネルギーのうち、どれだけのエネルギーが回収できるかという比率。 Kawaijuku Guideline 2017.11 61

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日本の一次エネルギー自給率は7%

 <図表1>は、日本の「一次エネルギー」(詳細は後述) の自給率の推移を示している。2015年度の日本のエネルギ ー自給率は7.0%であり、2010年度の自給率19.9%に比べ るとかなり低くなっている(注1)  <図表2>は一次エネルギー国内供給の推移をまとめた グラフである。石油の割合は、第一次石油ショック時の 1973年度の75.5%から徐々に減少し、石炭、天然ガス、原 子力の割合が増加していたが、2011年の東日本大震災とそ れによる原子力発電所の停止により、原子力による供給が ほとんどなくなった。そのため、2011年度以降、化石燃料 の割合が増加し、図表1に示すように一次エネルギーの自 給率が下がっている。  ところで、エネルギーは生産されてからエネルギー消費 者に使用されるまでにいろいろな段階を経ている。一般的 に、原油、石炭、天然ガスなどにより各種エネルギーが供 給され、発電所や石油精製工場などの発電・転換部門で電 気や石油製品などになり、消費者が最終的に消費する流れ になっている。発電ロス、輸送中に生じるロス、発電・転 換部門で使用する分も含めた、日本で必要とする全てのエ ネルギー量を「一次エネルギー供給」といい、私たち消費 者が最終的に使用するエネルギーのことを「最終エネルギ ー消費」という。例えば、「最終エネルギー消費」は、電気 だけではなく都市ガス、熱、ガソリン・灯油・重油といっ た石油製品なども含まれる。「最終エネルギー消費」は「一 次エネルギー供給」の7割程度に留まっている。  一次エネルギーの種類別に見ると、原子力や再生可能エ (注1)エネルギー自給率…生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち自国内で確保できる比率。

Column

日本のエネルギー・資源の現状

 学部・学科や研究内容を見る前に、その前提として、経済産業省資源エネルギー庁が発行している「エネル ギー白書2017」などを参考に、日本のエネルギー・資源の現状を見ておこう。 12.42 14.38 15.92 16.47 19.69 22.04 22.74 22.86 22.16 19.81 0 5 10 15 20 25 ■新エネルギー・地熱等 ■水力 ■原子力 ■天然ガス ■石炭 ■石油 (1018J) 3.6% 4.9% 15.00 非化石エ ネルギー 化石エネ ルギー 1965 1970 19731975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015(年度) (*1)「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値について算出方法が変更されている。 (*2)「新エネルギー・地熱等」とは、太陽光、風力、バイオマス、地熱などのこと。 出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成 41.0% 25.9% 24.3% 46.8% 20.8% 14.8% 11.6% 49.1% 18.5% 13.8% 12.6% 53.6% 16.5% 11.5% 12.2% 55.9% 16.8% 10.7% 9.6% 19.6% 9.7% 9.1% 55.4% 64.7% 17.6% 71.6% 17.4% 69.9% 21.3% 55.9% 29.3% 75.5% 16.9% 39.8% 22.5% 19.2% 11.1% 6.38 6.38 (「エネルギー白書2017」(経済産業省資源エネルギー庁)P.140) (「エネルギー白書2017」(経済産業省資源エネルギー庁)P.138) <図表1>日本の一次エネルギー自給率の推移 ■地熱・新エネルギー等 ■水力 ■原子力 ■天然ガス ■石炭 ■石油 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 1960 1970 1973 1980 1990 2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014 2015(年度) 年度 1960 1970 1973 1980 1990 2000 2005 2010 2011 2012 2013 2014 2015 エネルギー自給率(%) 58.1 15.3 9.2 12.6 17.0 20.2 19.1 19.9 11.1 6.2 6.1 6.0 7.0 (*1)IEAは原子力を国産エネルギーとしている。 (*2)エネルギー自給率(%)=国内産出/一次エネルギー供給×100。

(*3)2015年はIEAによる推計値である。 出典:IEA「World Energy Balances 2016 Edition」を基に作成

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(注2)排他的経済水域(Exclusive Economic Zone)…沿岸から200カイリ(約370キロ)までの範囲(「海洋法に関する国際連合条約」による)で、沿岸国が 水産資源や海底鉱物資源などの探査・開発・保全・保護などに関して主権的権利を持つ水域のこと。 (注3)メタンハイドレート…メタンは天然ガスの主成分であり、ハイドレート(hydrate)は「水和物」の意味。メタン分子の周りを、複数の水分子が取り囲ん だ包接水和物である。「燃える氷」といわれることもある。 ネルギーの多くは電力に転換され、消費されているが、石 油は電力への転換割合が比較的少なく、ガソリン・軽油な どの輸送用燃料、灯油や重油などの石油製品として消費さ れ、石炭は電力への転換や製鉄に必要な原料としての使用 が大きな割合を占めている。

エネルギー供給の安定を図りつつ

中長期的な政策と技術開発を推進

 エネルギー自給率の低い日本は、安定したエネルギー供 給のために、さまざまな工夫を行っている。  一次エネルギーは、ほぼ全てを海外からの輸入に頼って いるため、安定供給のためには、輸入先を多角化して、国 際紛争などで供給が止まるリスクを減らす必要がある。原 油に関しては産油国の多い中東への依存は高いものの、そ の中でも国を分散させている<図表3>。LNG(天然ガス) はオーストラリアや南アジア諸国、中東、ロシアなどに分 散させている。また、資源の探査や採掘などに関わる日本 の優れた技術を資源国に提供するなど、資源国との関係強 化への努力も行っている。  これらの取り組みとともに、一次エネルギーに占める化 石燃料の割合を下げ、再生可能エネルギーの割合を高める 試みがなされているが、現在、普及が進んでいる風力発電 や太陽光発電は、風や日射といった自然現象に依存するた め、安定的に発電することが難しい。そのため、さまざま な電源と組み合わせたり、蓄電池や電気エネルギーを燃料 に転換して貯蔵したりするなどの工夫が必要になる。技術 開発と同時に、電気事業者に再生可能エネルギーを一定割 合以上利用することを義務づける制度(RPS法)や、再生 可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT法)などの政策 的な後押しを行っている。

日本の産業発展に欠かせない鉱物資源

海底鉱床などの海洋資源にも注目

 石油や石炭などのエネルギー資源以外の鉱物資源につい ても注意を払う必要がある。建材をはじめ、ありとあらゆる 製品の構造部材などに使われている鉄をはじめとして、ベー スメタルと呼ばれる銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなどの非鉄 金属は、合金の材料としてさまざまな素材に使われている。  加えて、高性能な電子部品製造に欠かせないのが、「レア アース」と呼ばれる稀少鉱物資源だ。産出国が偏在してい るため<図表4>、高い税率をかけたり、輸出を規制したり する「資源ナショナリズム」に結びつきやすい。  国内でレアアースがほとんど産出されない日本では、外 交的な努力と同時に、海洋資源の開発にも力を入れている。 領海とEEZ(排他的経済水域(注2))を合わせた日本の海は 世界6位の面積があり、近年になって、レアアースの海底 熱水鉱床が確認され、開発も始まった。また、「メタンハイ ドレート(注3)」と呼ばれる燃料も日本近海で埋蔵が確認さ れており、新しいエネルギー資源という点でも期待が寄せ られている。

(「MINERAL COMMODITY SUMMARIES 2017」より)

(「日本のエネルギー 2016年度版」(経済産業省資源エネルギー庁)P.3) <図表3>2015 年 日本の化石燃料輸入先 <図表4>レアメタルの偏在性 資源の上位産出国(2016 年) 上位3カ国の合計シェア レアアース ①中国 83% ②オーストラリア 11% ③ロシア 2% 97% タングステン ①中国 82% ②ベトナム 7% ③ロシア 3% 92% 白金族 ①南アフリカ 51% ②ロシア 28% ③カナダ 8% 87% リチウム ①オーストラリア 41% ②チリ 34% ③アルゼンチン 16% 91% タンタル ①コンゴ民主共和国 41% ②ルワンダ 27% ③ブラジル 10% 79% コバルト ①コンゴ民主共和国 54% ②中国 6% ③カナダ 6% 66% マンガン ①南アフリカ 29% ②中国 19% ③オーストラリア 16% 64% 原油(総輸入量12.3億バレル) LNG(天然ガス)(総輸入量8,505万トン) 石炭(総輸入量1億9,048万トン) サウジアラビア 33% UAE 25% ロシア 9% カタール 8% クウェート 8% イラン 5% インドネシア 2% イラク 2%メキシコ 1% エクアドル1 % その他 6% オーストラリア 22% マレーシア 18% カタール 17% ロシア 9% インドネシア 7% UAE 6% ナイジェリア 5% ブルネイ 5% パプアニューギニア 5% オマーン 3% その他 3% インドネシア 17.3% オーストラリア65.1% ロシア 8.7% カナダ 4.2% 米国 3.2%中国 0.9%その他 0.7% Kawaijuku Guideline 2017.11 63

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志願者・倍率は減少傾向

 <図表1>は「材料・物質・資源」の志願者数と倍率 (志願者数÷合格者数)の推移を示したものだ。国公立大 では志願者数は緩やかに減少しており、倍率もこの5年間 で2.6倍→2.3倍へダウンした。一方、私立大では、志願 者は隔年現象を繰り返しているものの、倍率で見るとダウ ン傾向にある。なお、2016年度入試では、前年より志願 者数が4千人ほど増加しているが、これは千葉工業大の志 願者増による影響が大きい。千葉工業大はこの年に1回の 出願で複数学科併願可能な制度を導入し、延べ志願者数が 大きく増加した。この年の志願者増は学部系統の人気とは 相関が低い。

国公立大のセンター試験は7科目理型

2次試験は3教科4科目が基本

 次に入試科目の特徴を見ていこう。  国公立大前期日程のセンター試験科目では、すべての募 集区分で「7科目理型」を課している。理科については大 学により科目設定が異なる。約9割の大学で理科②2科目

入試情報

<図表1>材料・物質・資源  志願者数・倍率の推移  エネルギー・資源に関する学問は主に工学部や理工学部に設置されているエネルギーや環境、資源といっ た名称を持つ学科で学べるが、その数は多くない。今回は、河合塾の分類で、エネルギー・資源を含む「材 料・物質・資源」に分類される学科を中心に、入試情報を見ていく。 <図表3>材料・物質・資源  私立大 一般方式・センター利用方式(1期) 教科パターン ●一般方式 教科数 教科パターン 占有率 3教科【英、数、理】【英、数、理2】 67%9% 2教科 【数、理、他】 2% 【数、理】 4% (英、数、理→2) 2% 【数、理2】 2% (英、数、国→2) 2% (英、数、国、理2→2) 2% 【数】(英、理→1) 7% (英、理→1)(数、国→1) 2% ●センター利用方式 教科数 教科パターン 占有率 5教科【英、数2、国、理2、地公】【英、数2、国、理、地公】 3%6% 4教科 (英、数、国、理、地、公→4) 3% 【英、数2、理2】(国、地公→1) 3% 【英、数2、国、理】 6% 3教科 (英、数、国、理、地公→3) 3% (英、数、国、理→3) 6% (英、数、国、理、地、公→3) 6% 【数2】(英、国、理、地公→2) 6% 【数】(英、理2→2) 3% 【英、数2、理2】 11% 【英、数2、理】 11% 【英、国、理】 3% 【英、数、理】 3% 2教科 (英、国→1)(数、理→1) 3% (英、数2、国、理2→2) 3% (数2、理2→3) 3% 【数2、理2】 6% 【数2、理】 3% 【英、国】 3% 【理】(英、数→1) 3% 1教科(数、理→1) 6% (英、国、地公→1) 3% 教科数 教科パターン 占有率 4教科 【英、数、国、理2】 2% 3教科 【英、数、理、小、面】 2% 【英、数、理】 16% 【英、数、理2】 39% 2教科 【数、理、調】 2% 【数、理】 29% 【数、理2】 2% 【数、理、面】 2% 1教科 (数、理→1)【理】 2%2% 課さない 2% <図表2>材料・物質・資源  国公立大 前期日程2次試験教科パターン を指定しており、理科①を 選択できるのは、弘前大、秋 田大、愛媛大、琉球大の4 大学のみである。なお、理 科②2科目を指定している 大学のうち、科目を指定して いないのは4割弱にとどまる。 物理・化学必須は4割、物 理か化学を必須とするのは 3割弱である。このため、理 科は理科②の「物理」「化 学」で準備させるのがよい だろう。  続いて2次試験科目につ いて見ていこう。京都大で は4教科5科目を課すが、 他は2教科を課す大学が3 割強、3教科を課す大学が 6割弱と、2~3教科が基 本となっている<図表2>。 英語・数学・理科のいずれ かを課す大学が多く、教科 選択パターンを見ると、4 割が英語・数学・理科2科 目の3教科4科目を課し、 数学・理科の2教科2科目 を課す大学が3割を占める。 数学についてはいずれの大 学も数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学 ※河合塾調べ 国公立大は前期日程、私立大は一般入試 (一般方式+センター方式)で集計 ※倍率は志願者数÷合格者数 17,125 18,303 16,496 20,498 19,681 8,000 6,000 4,000 (人) 0 2,000 2013 '14 '15 '16 '17(年度) 2013 '14 '15 '16 '17(年度) (倍) (人) (倍) 2.6 2.6 2.5 2.4 2.3 6,435 6,410 5,800 5,590 5,507 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 20,000 25,000 15,000 10,000 0 5,000 3.1 2.9 2.6 2.8 2.6 私立大 国公立大 ※科目パターンが複数ある場合は、それぞれで集計 ※河合塾調べ 2018 年度入試(2017 年 10 月現在)の募 集区分で集計 ※1募集区分に科目パターンが複数ある場合は、それぞれで集 計 ※河合塾調べ 2018 年度入試(2017 年 10 月現在)の募集区分 で集計

(7)

Ⅲ・数学A・数学Bを出題範囲としている。また、物理を 必須とする区分が全区分の半数を占める。学部系統の内容 からも物理重視の姿勢がうかがえる。志望者には物理の準 備をしっかりさせたい。  なお、名古屋工業大(工-創造-材料・エネルギー)で は英語・数学・理科のほかに小論文・面接、滋賀県立大 (工-材料科学)では数学・理科のほかに面接を課す。教 科以外の対策が必要な大学に注意させたい。

私立大は一般・センター利用方式とも

2~3教科が主流

 ここからは私立大の入試の特徴を見ていこう<図表3>。 私立大の一般方式(1期)では英語・数学・理科の3教科 が基本である。そのうち理科は1科目で受験できる教科選 択パターンが7割近くを占め、理科2科目が必要な大学が 多い国公立大とは異なる。なお、私立大でも早稲田大と関 西大(学部理科2科目)などは理科2科目が必要である。 ただし、関西大は他に理科1科目で受験できる方式がある。 理科2科目を準備しないと受験できない大学は私立大では ごく一部にとどまる。  2教科で受験できる大学は全体の4分の1程度である。 数学または理科のいずれかを課すパターンが主流だが、な かには英語や国語など別の教科で受験できる区分もある。 私立大ではアラカルト方式を採用し、このような科目設定 をしている大学もあるが募集人員は少ない。  センター利用方式(1期)では、2教科型が2割、3教 科型が5割を占める。東京都市大(工-原子力安全工、エ ネルギー化学)5教科型は5教科6科目、関西学院大(理 工-先進エネルギーナノ工)1月7科目は7科目理型とな っており、科目負担が重い。ただし、どちらの大学も他に 少ない教科・科目数で受験できる方式もあり、必ずしも5 教科の準備は必要ない。センター利用方式では英語、数学、 理科をベースに国語、地歴・公民などが選択できる教科パ ターンが多い。

入試難易度

国公立大・私立大とも幅広く分布

 最後に入試難易度について見てみよう。<図表4>は国 公立大前期日程合格者の大学別平均成績を表したものだ。 縦軸にセンター試験の平均得点率を、横軸に2次試験の平 均成績を取り、右上に行くほど入試難易度が高くなる。セ ンター試験の平均得点率は50 ~ 85%、2次試験の平均偏 差値は40.0 ~ 65.0と幅広く分布しており、難易度に差が あることがわかる。  <図表5>は私立大一般入試の合格者平均偏差値の分 布である。国公立大と同様、偏差値35.0 ~ 62.5の間に幅 広く分布している。もっとも難易度が高いのは早稲田大 (創造理工-環境資源工)の63.8である。 <図表4>材料・物質・資源 国公立大 大学別合格者平均成績 <図表5>材料・物質・資源  私立大一般入試 合格者平均偏差値一覧 ※河合塾「2017年度入試結果調査データ」より ※一般入試合格者を対象に集計 偏差値帯 大学名 62.5 〜 早稲田 60.0 〜 62.4 57.5 〜 59.9 上智、同志社 55.0 〜 57.4 東京理科 52.5 〜 54.9 50.0 〜 52.4 日本、関西 47.5 〜 49.9 芝浦工業、名城、関西学院 45.0 〜 47.4 42.5 〜 44.9 千葉工業、龍谷 40.0 〜 42.4 東京都市 37.5 〜 39.9 35.0 〜 37.4 東北工業、東海、福井工業 ※河合塾「2017年度入試結果調査データ」より ※前期日程合格者を対象に集計 60% 65% 70% 80% 75% 85% 90% 55% 2次試験 合格者平均偏差値 センター試験 合格者平均得点率︵ % ) 名古屋 37.5 40.0 42.5 45.0 47.5 50.0 52.5 55.0 57.5 60.0 62.5 65.0 67.5 50% Kawaijuku Guideline 2017.11 65

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太陽光発電

福島大学 共生システム理工学類 再生可能エネルギー寄附講座(太陽光)

太陽光は

発電機不要の発電システム

 再生可能エネルギーとは、「有限で いずれ枯渇する化石燃料やウラン燃料 などとは異なり、自然界から絶え間な い再生供給によって半永久的に得ら れ、継続して利用できるエネルギー」 ということになります。化石燃料は、枯 渇するだけでなく、CO2の放出により 地球温暖化を誘発しますし、原子力発 電に使われるウラン燃料は、発電設備 の安全性や廃棄物処理に大きな課題 があります。こうしたさまざまなリスク を回避し、持続可能な社会を実現する には再生可能エネルギーの開発が不 可欠です。  再生可能エネルギーにはいろいろ な種類がありますが、主なものは、風 力、水力、地熱、バイオマス、太陽光 の5種類です。このうち風力と地熱、 太陽光はほぼ無尽蔵ですし、水力も地 球の水蒸気循環が続く限り河川など を通して安定的に得られます。バイオ マスはバイオエタノールなどの燃料利 用の他、火力発電と同様の発電を行う ことができますが、燃料に植物由来の 有機物を利用するため、植林などで植 物の総量を変えない限り、原理的には 地球全体のCO2を増加させることはあ りません。  これらは、いずれも電力を取り出す ことが主目的ですが、バイオマス、太 陽光は熱として利用する場合もありま す(注1)。バイオマスの燃焼熱は地域暖 房などに使われ、太陽光は屋根で温水 を作る太陽熱温水器などに使われてい ます。なお、太陽光の熱利用の場合、 巨大な鏡で太陽光を1点に集めて加熱 し高温高圧にした水蒸気でタービンを 回して発電する場合もありますが、こ れは「太陽熱発電」と呼び太陽光発 電と区別しています。  これらの再生可能エネルギーから電 力を取り出す際に風力と水力は発電機 が必要ですし、地熱とバイオマスは、 得られる熱で高温の水蒸気を作り(注2) その高温の気体の力で回すタービンと ワーコンディショナーを購入すれば電 力が得られます。この手軽さと政府の 普及政策も相まって、住宅の屋根から 大型の発電所まで、日本で新規に導入 された再生可能エネルギーによる発電 量のほぼ8割が太陽光発電によるもの になっているのです。

高い変換効率と

製造コストの軽減が

太陽光発電のさらなる普及を促進

 太陽光発電の仕組みは、n型半導体 とp型半導体を接合させたものに光が 当たると、接合面から見てn型半導体 に電子が、p型半導体に正孔(電子が 不足して相対的に+の電荷を持ったも の)が移動する性質を利用しています。 それぞれ半導体に電極をつなげば電流 が流れて、電池のような働きをするわ けです。  この2種類の半導体を組み合わせ、 電極を取り付けたものが太陽電池パネ ルです。太陽電池パネルの材料は、シ リコンや化合物半導体などのほか、酸 化金属(色素増感)や、有機などがあ ります<図1>。太陽電池パネルの性 能は、太陽光エネルギーを電気エネル ギーに変換できる割合を示す変換効率 で決まりますが、1つの接合(単接合) で得られる電力は理論的に30%が限

持続可能な社会に必要な再生可能エネルギー

安価で高効率をめざす太陽光発電に期待

 現在、人類が消費するエネルギーの大半は石油や石炭などの化石燃料に頼 っている。だがこれらのエネルギー資源は環境に与える影響が大きい。そこ で注目されているのが再生可能エネルギーだ。自然条件によって安定的な発 電が難しいなどデメリットもあるが、持続可能な社会を実現するには欠かせ ないエネルギーである。とりわけ、太陽光だけで電気を作り出す太陽光発電 は、安価で手軽な発電システムとして期待されている。

齊藤

公彦

特任教授 (注1)ちなみに温泉の熱源は地熱のため、見方によってはこれも熱利用である。 (注2)バイオマスの場合はガス化した燃料の場合もある。 発電機が必要です。ところが、太陽光 発電には発電機は必要ありません。光 が当たると電気が発生する半導体の光 電効果を利用しているため、太陽光を 当てるだけで電力が得られます。つまり 太陽光発電は発電機そのものなのです。  太陽光以外の再生可能エネルギー は、発電機などの設備や大規模な施設 が必要なため、個人で電力を得ること はほぼ不可能ですが、太陽光発電なら、 近年電気量販店でも販売されている太 陽電池パネル(ソーラーパネル)とパ

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界とされています。現在、最も高効率 を誇る材料は、ガリウム(Ga)とヒ素 (As)を使った化合物半導体で、単接合 で約28%です。この化合物半導体の 接合を複数重ねることで変換効率を向 上することができ、集光技術と組み合 わせることで、実験レベルでは46%の 効率も得られていますが、発電システ ムが複雑になるなど利用場所は限られ ます。 なお、「 ペ ロ ブ ス カ イ ト 」 (NH3CH3PbI3)を使った太陽電池は、 開発から数年で20%を超えており、現 在、有望な材料として盛んに研究開発 が行われています。  とはいえ、市販の太陽電池パネルの 材料は、単結晶、多結晶を問わず結晶 シリコンを使ったものがほとんどです。 半導体産業の発達でシリコン材料が 安価に入手できるほか、シリコンの主 原料であるケイ素(Si)も、地球上で 酸素の次に多い元素のため、枯渇の心 配もありません。太陽光発電をさらに 普及させるには、結晶シリコン太陽電 池の変換効率を限界まで高めることと、 製造コストを下げることが重要で、そ のための研究開発が世界中で行われて います。

太陽光のエネルギーを

有効に使うため

ヘテロ接合や

タンデム化の技術を開発

 結晶シリコン太陽電池の変換効率 は実用ウェハーサイズで、一般に流 通している汎用型で15%程度ですが、 表裏両面に保護膜を使った改良型で は20%を超すものもあります。また、 保護膜にアモルファスシリコンを使 ったヘテロ接合にすると25.1%になり ます。さらに最近では、太陽光を遮る 電極をすべて裏側に配置した裏面電 極型ヘテロ接合が登場し、単接合の シリコンとしては世界最高の26.7% が報告されています<図2>。この段 階ですでに単接合の理論限界値に近 いため、現在は吸収する太陽光スペク トルが異なる他の太陽電池をこの単 接合シリコンに重ねる方法(タンデム 化)で、効率的に太陽光を利用する技 術開発に力が注がれています。  私は、主に高効率・薄型結晶シリコ ン太陽電池の研究に力を入れていま す。太陽電池の課題として高効率化、 低コスト化、長寿命化や新規用途の 拡大等が挙げられますが、主流の結晶 シリコン太陽電池についてのこれらの 追及は増々重要になっています。特 に薄型化することにより、ウェハーコ ストを削減できる他、IoT(注3)に用い る各種センサー電源等に用いることが できたり、また屈曲性が得られるよう になることから、例えば、高いデザイ ン性が要求される建築物や電気自動 車などへの応用を広げることができま す。結晶シリコン太陽電池のシリコ ン層が薄くなると出力電流が減少する ため、高効率を得るためには、入射光 を遮る表面電極の無い裏面電極型ヘ テロ接合構造の採用が必須であり、 高デザイン用途に向けても見栄えが 良く望ましいですが、裏面側の電極構 造が複雑であり、その配線には高価な 写真製版(フォトリソグラフィー)技 術が必要でした。私共のグループで は、それをインクジェット技術に代替 させることに成功し、割れやすい薄い 基板にも適用でき、かつ、工程数が削 減できて簡便で安価に作製できる可 能性を見出すことができました。また、 ヘテロ接合をつくるためには、アモル ファスシリコン膜を危険なガスを用 いる真空プロセスで形成する必要が あるため、現在は、さらなるプロセス 簡略化、低コスト化を図るために、ア モルファスシリコンに代わる、簡便に 形成可能な新しいヘテロ接合材料の 探索も行っています。  この他にも、私は、小規模な太陽光 発電装置について、太陽電池パネル の故障や微妙な出力低下を伴う劣化 などを、簡便に検出できる装置の開発 も行っています。太陽光発電を、従来 のように電力系統に接続するのではな く、データサーバーへの電力供給用 独立電源として地産地消型の利用を し、このようなシステムをインターネ ットで複数接続することによって、日 射量(発電量)の多い地点のデータサ ーバーで優先的にデータ処理を実施 するような仕事分散処理システムの 開発も手がけるなど、太陽光発電を利 用したシステム応用研究にも挑戦し ています。 (注3)IoT…Internet of Thingsの略。あらゆるモノをインターネットにつなげる技術のこと。 <図1>太陽電池パネルの種類 <図2>主な結晶シリコン太陽電池の構造 (図1・2とも齊藤 公彦 特任教授) Kawaijuku Guideline 2017.11 67

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日本近海でも4種類の

海底鉱物資源を確認

 海底鉱物資源の中で、最初に発見 されたのは「マンガン団塊」です。 19世紀後半に世界中に分布している ことが判明しました。以後、さまざ まな調査により「海底熱水鉱床」「マ ンガンクラスト」「レアアース泥」が 次々と発見され、現在は、この4種 類の海底鉱物資源の存在が知られて います。  マンガン団塊は、マンガン、ニッ ケル、コバルト、銅などを含む球状 の塊で、大きさはさまざまですが、直 経数cmから十数cmのものが、水深 4,000 ~ 6,000mの大洋底と呼ばれる 場所で多く見つかっています。  海水熱水鉱床は海底の温泉が作る 資源です。地上の温泉で温泉水に溶 けている硫黄などの成分が湯の花と して沈殿するのを見たことのある人 も多いと思います。海底では圧力が 高いために、温泉水は300 ~ 400℃ もの高温となり、多量の金属が溶け ています(熱水と呼ばれます)。この 熱水が海底に出てきたとたん、2℃ 程度の海水に触れることで一気に金 属が沈殿します。沈殿した金属はチ ムニーと呼ばれる煙突状の構造物や、 それが崩れて積み上がったマウンド と呼ばれる山を形成します。マウン ドは、大きなものでは直径数百m、高 さ数十m、鉱量数百万tもの規模にな ります。  マンガンクラストは、海山と呼ば れる海底に存在する山の斜面に、モ ルタルを吹き付けたような形で存在 するマンガンの酸化物です。海山は、 深海底の平均水深4,000 ~ 5,000m からそびえ立つ富士山のような大き な山で、頂上付近の水深1,000mく らいから山肌に沿って金属が幅広く 分布しています。成分はマンガン団 塊に似ていますが、コバルトの含有 量が特に高いものが見つかっており、 それらは「コバルトリッチクラスト」 と呼ばれ、資源として有望視されて います。  レアアース泥は、水深4,000 ~ 6,000mの大洋底に広がる高濃度に レアアースが含まれている泥で、 2011年に私たちの研究グループが発 見した新しい資源です。広大な海の 底に莫大な量が存在し、さらに開発 の障害となる有害な元素を含まない など、陸上の鉱床と比べて利点も多 いことから、新しい資源として開発 が期待されています。  近年、これら4種類すべての海底 鉱物資源が、日本のEEZ(排他的経 済水域)内に存在することがわかっ てきました<図>。通常、マンガン 団塊やレアアース泥は、陸地から遠 く離れた大洋の真ん中でしかできま せんが、太平洋プレートが移動する ことで日本の近海へと運ばれます。 さらに大陸に近づくと、普通は陸か ら降ってくる砂や泥がその上を覆う のですが、南鳥島付近は海流の影響 によって、資源が埋もれることなく 海底に直に露出しており、すぐにで も採取できる状態で存在しているこ とが、私たちの調査でわかってきま した。

海底の資源は、場所の特定や

埋蔵量の推定に技術的課題

 海底資源の存在がわかっても、そ れを資源として開発するには大きな 課題があります。それは、探査の方 法が確立されていないことです。資 源として利用するには、採掘できる 場所(範囲)を特定し、そこに存在 する資源の正確な量を明らかにする ことが不可欠です。資源の量が少な ければ、わざわざ苦労して開発する 意味はないからです。ところが、海 底の様子を知る手段は限られており、 範囲と資源量の特定は困難です。  地上では、電磁波を使えば何百km 離れた宇宙からでも地表の正確な地 形がわかりますし、波長を分析する

深海底に存在する金属資源の利用をめざし

海域の絞り込みや探査技術の開発が進む

 現在の日本は資源の乏しい国と言われるが、四方を取り囲む海洋に目を転 じれば、銅や亜鉛、レアアース等を含む海底熱水鉱床をはじめとする金属資 源や、メタンハイドレートなどのエネルギー資源が豊富に眠っており、開発 に向けたプロジェクトも始まっている。海底鉱物資源の調査をめざす政府主 導の「海のジパング計画」も始動し、さまざまな技術開発が行われている。

中村

謙太郎

准教授

海底鉱物資源

東京大学 大学院工学系研究科 システム創成学専攻

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ことでそこに含まれている元素を知 ることさえできます。しかし、海中で は電磁波は使えません。光も深海で はせいぜい10m程度しか届きません。 そこで、海中では主に音波を使いま す。しかし、音波の届く距離も限ら れており、さらに高い周波数を使っ て高い解像度を得ようとすれば音波 の到達距離は短くなり、低い周波数 で到達距離を伸ばせば解像度が低く なります。そのため、調査の解像度 を上げるためには、船だけでなく潜 水船を使って海底に近づくなど高度 な調査技術が必要となります。さら に、資源量を正確に推定するために はサンプル採取が必須です。しかし、 船の上から数kmも離れた海底の試 料をピンポイントで採取するには、 多くの時間と手間がかかり、どうし ても効率が低くなってしまうのです。

海底資源探査の

効率を高める成因研究

絞り込み手法のさまざまな

組み合わせが鍵

 こうした課題を解決するために、さ まざまな努力が行われています。内 閣府が進める「戦略的イノベーショ ン創造プログラム」の一環である 「次世代海洋資源調査技術」(海のジ パング計画)もその1つであり、探 査技術の確立をめざしたさまざまな 研究・開発が行われています。  この計画ではAUV(注1)やROV(注2) の開発、音波や磁力を使った探査技 術の開発、海洋資源の成因から資源 の存在する海域を絞り込む手法の開 発を行っています。  例えば、直径数百mの海底熱水鉱 床を広大なEEZの中から闇雲に探す ことは、あまりに無謀といえます。し かし、海底熱水鉱床は海底の火山活 動でできるも のという成因 がわかれば、 まず海底に活 火山の分布し ている海域に 絞り込むこと が可能です。 これにより、 探すべき範囲 は EEZ の 約 10%まで絞り 込むことがで きます。  火山の場所 がわかったら、 いよいよ熱水 活動の兆候を 探します。海 日本近海でもレアアース泥が存在す ること、さらにはその位置までも推 定できるのです。  海底鉱物資源の研究は、将来的な 資源確保に資するだけではありませ ん。海底熱水鉱床付近には、太陽光 の届かない深海であるにも関わらず、 多様な生物が高密度で生息していま す。これらは、熱水に溶けている水 素、硫化水素、重金属などの酸化還 元反応によってエネルギーを得る化 学合成細菌を基盤とする生態系なの です。こうした熱水噴出孔の環境は、 初期地球や水が存在する地球外天体 に似ていると推測されており、海底 熱水鉱床付近にいる生物を調べるこ とで生命の起源や生物の進化、さら には地球外生命の探索にもつながる と期待されています。海底資源の研 究は地球や生命の進化の過程をより 詳細に解き明かす夢のある分野でも あるのです。 <図>日本のEEZ内の主な海底鉱物資源 底熱水鉱床からはさまざまな金属や それらが析出した黒い煙のような熱 水が噴出しているため、船から降ろ したセンサーなどを使ってそれらの 成分を検出することで、その近くに 海底熱水鉱床があるということがわ かります。こうして数km四方くらい まで範囲を絞り込むことができれば、 そこにAUVなどの潜水船を下ろして、 より詳しく調査します。その際も、音 波探査や磁気探査といった探査の解 像度が異なる複数の技術を上手に組 み合わせることが重要です。こうし て、広い海から海底熱水鉱床の場所 を特定できるのです。  一方、レアアース泥はこれまでの 研究によって陸地から遠く離れた大 洋底で生成されることがわかってい ます。また、太平洋の海底はプレー ト運動によって日本に向かってゆっ くりと移動していることも知られてい ます。このプレートの動きとレアア ース泥の成因を組み合わせることで、 (注1)AUV…自律型無人潜水機 (注2)ROV…遠隔操作型無人潜水機 (中村 謙太郎 准教授) Kawaijuku Guideline 2017.11 69

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核融合

京都大学 エネルギー理工学研究所

2億℃以上のプラズマ状態を

1秒以上持続させ

水素からエネルギーを

取り出す核融合

 地球上で利用可能なエネルギーの 1つに核エネルギーがあります。核 エネルギーには核分裂によるものと、 核融合によるものの2種類がありま す。核分裂は、重い元素の原子核が 分裂して軽い元素になるときに出る エネルギーを利用し、核融合は、軽 い元素の原子核が融合して重い元素 になるときに出るエネルギーを利用 します。核分裂は原子力発電に利用 されていますが、核融合のエネルギ ー利用はまだ実現できていません。  核融合は、2つの水素の原子核が 融合して、1つのヘリウム原子核を 生成する際に、莫大なエネルギーを 出す反応です。太陽は同じ原理で燃 えており、既に数十億年もの間、地 球にエネルギーを供給し続けていま すが、その仕組みを地上で実現する のは極めて困難です。なぜなら非常 に難しい制御技術が必要だからです。  核融合の燃料は、水素の同位体で ある重水素(陽子1中性子1)と三 重水素(陽子1中性子2)で、これ らの原子を高速で衝突させることで、 ヘリウム(陽子2中性子2)と、中 性子1つが生成されます。一般に、 物質の温度が高くなると原子の動き が活発になり、固体から液体、気体 へと変化しますが、1万℃を超える ような超高温になると、電子と原子 核がそれぞれバラバラに飛び回るプ ラズマ状態になります。核融合反応 には、2億℃以上のプラズマ状態を 1秒以上持続させる必要があります。  現在、ITERが進行中で、フランス で核融合発電のための実験炉の建設 が進められています。日本も建設に 参加しており、私もプロジェクトメ ンバーです。ITERで建設中の核融合 炉では、強力な磁力線を使ってドー ナツ状の容器の中に高温の水素プラ ズマを閉じ込めることで核融合を起 こさせます。生成されたヘリウム原 子核はプラスの電荷を持つため、プ ラズマ状態で炉内に閉じ込められま すが、電荷を持たない中性子は自由 に飛び去り、核融合炉の壁にぶつか ります。すると運動エネルギーが熱 エネルギーに変わり、壁が高温にな ります。この熱で水蒸気を作って発 電機を回し発電しようというのが核 融合発電です。

燃料はほぼ無尽蔵で

暴走の危険もなく

廃棄物の維持管理が可能な

持続可能エネルギー

 核融合発電の燃料である重水素や 三重水素のもととなるリチウムは、 海水中にほぼ無尽蔵にあります。水 から重水素を作る技術は既に確立し ていますし、三重水素は炉内にリチ ウムを入れておけば、プラズマが燃 焼するときに、自動的に生成されま す。リチウムは、現在、携帯電話や スマートフォンの蓄電池に使われて おり、埋蔵量は膨大です。海水中か らも取り出せるなど、リチウムが枯 渇する心配はほぼありません。また、 核融合の生成物であるヘリウムは無 害で、環境に負荷を与える影響は無 視できます。  一方、核融合は放射能と無縁では ありません。例えば、燃料の三重水 素は放射性物質です。しかし、炉内 で生成後すぐ燃やされてヘリウムに 変化するため、放射能を心配する必 要はありません。また、熱を作り出 す中性子はそれ自体が放射線で、ぶ つかった炉壁を放射性物質に変えて しまいます。しかし、壁の材質を工

実現が待たれる夢のエネルギー「核融合」

発電だけでなく燃焼生産にも利用できる

 「地上の太陽」とも呼ばれる核融合は、安全に核エネルギーを利用できる 方法として、1950年代から研究が始まった。現在、国際プロジェクトITER(注) が動き出しており、フランスに実用規模の世界初の核融合実験炉を建設し、 今世紀半ばまでに実験炉を稼働させる計画が進んでいる。もし実現すれば、 燃料はほぼ無尽蔵、高レベルの放射性廃棄物も出ないという夢のエネルギー となる。核融合は発電だけでなく、バイオマスを使った燃料生産にも利用で き、持続可能な発展に大きく貢献する。

小西

哲之

教授 (注)次段階の核融合研究開発として、国際熱核融合実験炉(ITER =イーター ) 計画が進行中。EU、日本、ロシア、アメリカ、韓国、中国、インドが共同 で取り組んでいる。ITER は、実用規模のエネルギーを発生する最初の核融合実験炉であり、立地場所であるフランスのサン・ポール・レ・デュラン スには、研究者約 300 名が集まる。実験研究を行う客員の研究者や運転支援者を含めると 1,000 名程度になる大規模なプロジェクト。

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夫することで、300年ほどで放射能 を無害化したりリサイクルもできま す。10万年もの半減期を持つ高線量 の放射性廃棄物を出し続ける原子力 発電と比べれば、廃棄物処理や管理 の負担もかなり低いはずです。  しかも、核融合炉は原子力発電の 原子炉と異なり、暴走することは原 理的にあり得ません。原子炉は炉内 の燃料棒の制御が不能になれば燃料 にたまったエネルギーを放出する危 険性がありますが、核融合炉は、た だでさえ高温プラズマ状態を維持す るのが難しい上に、燃料は炉内に1 秒分しかないため、不具合が生じれ ば火が消えてしまいます。  核融合のこうした特徴、すなわち 燃料が無尽蔵で入手しやすいこと、 環境に負荷を与えず、放射性廃棄物 の維持管理が可能なことなどは、持 続可能な社会を作るためのエネルギ ー源として有効であることを意味し ています。水力や風力、太陽光など の再生可能エネルギーは、発電施設 の立地場所が限られる上、定常的な 電力供給が難しいだけでなく、需要 に応じた給電も難しいのが現状です。 しかし、核融合であれば、再生可能 エネルギーに比べて立地場所を選び ませんし、常にエネルギーを作り出 せます。しかも、その発電量は、再 生可能エネルギーはもちろん、石油、 石炭、天然ガスなどの化石燃料に比 べて莫大です。  現在、先進国はエネルギーを大量 に消費していますが、今後それよりは るかに多く使う発展途上国が経済開 発を進めようとしても、地球環境の面 からCO2を排出する化石燃料の使用 は推奨されませんし、原子力発電も 核兵器への転用の可能な燃料と放射 性廃棄物の懸念から推進が難しい状

バイオマス・核融合

ハイブリッドシステムで

燃料電池による

個別発電社会を実現

 現在も将来もエネルギー消費は、 電力としてよりも燃料として使われ ることの方が多くなっています。電 力は再生可能エネルギーでも作れま すが、燃料はCO2を排出する化石燃 料に頼っているのが現状です。そこ で、私は、核融合炉を使ったバイオ マス・核融合ハイブリッドシステム を研究しています。  バイオマスとは、一般的に再生可 能な生物由来の有機性資源のことで 化石資源を除いたものを指します。 バイオマスの中には、企業や家庭な どから出る「燃えるゴミ」や農産物 や森林の廃棄物があり、これらの大 半はセルロースなど炭素、水素、酸 素の化合物です。このゴミに900℃ の高温水蒸気を加えると、水素と一 酸化炭素ができ、実験室レベルでは 乾燥重量1kgのセルロースから、 0.5リットルの軽油相当のガス化に 成功し、バイオマスの持っている化 学エネルギーの97%を変換するこ とができました。さらにこのガスか ら、よく知られた反応で軽油を製造 することもできます。900℃の熱を 作る熱源は何でもかまいませんが、 化石燃料を使えばCO2が出ますの で、熱源として核融合を使おうとい うのが私の研究です。廃棄物は先進 国でも発展途上国でも出ますし、日 本も産油国になれるのです。  今後は、太陽電池や家庭用燃料電 池、電気自動車の蓄電池(バッテリ ー)などが普及し、晴天の日の昼間 は太陽電池で作った電気を使い、夜 間や曇天の日は、蓄電池に蓄えた電 気や、燃料電池で作った電気を使う といった、必要なときに必要なだけ の電力を各自が生産し、使う社会に なってきます。そうなると、各家庭・ 事業者が必要なときに、必要なだけ 電気を作れるように、燃料や水素の 形でエネルギー源を提供した方が効 率的になるはずです。燃料としてバ イオマスから製造した燃料を使用す れば、植物を植え続けている限り、 大気中のCO2の総量を増やすことは ありませんし、砂漠を緑化したり森 林を作れば減らすこともできます。 核融合炉は余った熱で海水淡水化を して緑を増やすことにも使えます。  核融合は、このように原料の制約 なしに電力を作れるだけでなく、ゴ ミをリサイクルしてエネルギーに転 換し、人類の持続可能な開発という 問題を解決できる可能性を秘めてい るのです。 <図>バイオマス-核融合炉エネルギーシステム 況です。その点、 核融合発電は、ど んな場所にも設置 でき、燃料も核物 質の制約がないこ とから、発展途上 国の人々も豊かに しながら持続可能 な世界を作ってい くのに最適なエネ ルギー源なのです。 (小西 哲之 教授) Kawaijuku Guideline 2017.11 71

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教育

秋田大学 国際資源学部

グローバルな視点で

資源を捉えられる

資源開発の専門家育成こそが重要

 「炭鉱の閉山やエネルギー自給率 の低下に伴って、日本ではエネルギ ー・資源の開発に関わる学部が少な くなり、技術者も減少していきまし た。しかし、石油価格が高騰したり、 スマートフォンやパソコン、自動車 などに不可欠なレアアースの供給が 不安定になったりすると、国内産業 や国民生活に大打撃を与えます。で すから、エネルギー・資源開発に関 わる技術者を育成し、各国とのネッ トワークを強化することで、エネル ギー・資源の安定確保につなげる必 要が出てきたのです」と、佐藤学部 長は、人材育成の重要性を強調する。  秋田大学国際資源学部は、明治時 代に設立された旧制の秋田鉱山専門 学校が源流の鉱山学部において、鉱 山技術者などを育成してきた歴史を 持つ。そこで、国やエネルギー・資 源の業界団体からの要請や支援を受 けて、2014年に工学資源学部を改 組し、国際資源学部を設置した。  「本学部では、『資源は人類全体の 財産』という認識に立ち、現地の人 たちと一緒に技術開発を行い、その 技術を根付かせ、わが国を含む供給 ルートを切り開くといった、日本の エネルギー・資源確保に貢献できる 人材を育成したいと考えています」 (佐藤学部長)

エネルギー・資源の

開発技術だけでなく

法律や国際協力なども含む

文理融合教育

 国際資源学部は、「資源政策」「資 源地球科学」「資源開発環境」の3 コース制をとる。カリキュラムの全 体像は<図>の通りである。  資源政策コースは、いわゆる文系 の学びが中心になる。資源国・地域 の歴史・文化の理解や、資源探査・ 開発に必要な法律や経済の知識、国 際協力を進めるのに必要な条件など について学び、人文・社会科学的な 素養を備えて資源開発を進められる 人材を育成する。  「日本の企業が海外展開を行う場 合、現地の歴史・文化の理解が不可 欠ですし、国際協力の現場には技術 だけでは解決できない問題もたくさ んあります。実際、リベラルアーツ をベースに技術もわかる人材が求め られており、それに応えるコースと いえます」(佐藤学部長)  資源地球科学コースは、地学を中 心とする理学系のコースだ。地球が どのように誕生し、どのような経緯 を経て現在の姿になったのか、その 歴史的変化が資源の形成にどのよう に影響したのかを理解する。すなわ ち石油などのエネルギー資源、金や レアメタルなどの金属資源、ダイア モンドなどの鉱物資源が、「どこに」 「なぜ」「どのようにして」生成され るのかを学び、対象とする資源を見 つけるための探査技術なども学ぶ。  資源開発環境コースは、資源の利 用方法を学ぶ工学系だ。探査の結果 見つかった鉱物が、資源として利用 できる価値があるのか、そのために はどのような生産方法をとるのか、 その過程で排出される廃棄物や副産 物はどのように処理すればいいのか など、資源開発技術だけでなく、環 境保全に関する知識や技術までも含 んでいる。  このように文系、理学系、工学系 のコースに分かれているが、互いの 専門分野を相互に履修できる仕組み になっており、文理融合カリキュラ ムを通して、資源開発に貢献できる 人材を育成している。なお、同学部 では、2年次からの専門教育科目は、 すべて英語で行われている。  「日本にはほとんど資源がなく、資 源開発が行われるのはほとんどが海 外です。本来は現地語を習得すれば

「資源は人類全体の財産」との認識を持ち

各国と共同で資源開発を行うことができる人材を育成

 日本は現在、エネルギー・資源のほとんどを輸入に頼っている。 今後、資源国と共同で資源開発を行うことで、日本に資源を輸入 するルートを構築する必要がある。今回は、日本の大学では数が 少なくなった、エネルギー・資源開発に必要な知識やスキルに関 する体系的な教育・研究を行っている秋田大学国際資源学部の教 育内容について、国際資源学部長・副学長(国際戦略担当)の佐 藤時幸教授に話を伺った。

佐藤

時幸

学部長 海外資源フィールドワークの実習先を示す世界地図を背景に

参照

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