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1242 Fig. 2 Schematic illustration of vessel models. Model A: Cylinder model (ø 5 mm) Model B: The stenosis model has a narrow region (ø 2.5 mm) in th

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500, 1030

Tackling Hemodynamic Analysis of the Carotid Artery Using

Open-source Software and Computational Fluid Dynamics

Tatsunori Saho,1, 2* Hideo Onishi,1 Toshihiko Sugihara,3 Yoshitaka Nakamura,2 and Itsuo Yuda2

1Program in Health and Welfare, Graduate on School of Comprehensive Scientific Research, Prefectural University of

Hiroshima

2Department of Radiological Technologist, Kokura Memorial Hospital 3SystemCRAFT Co., Ltd.

Received May 13, 2013; Revision accepted September 17, 2013 Code Nos. 261, 500, 1030

Summary

Purpose: The aim of this study was to evaluate the impact of wall share stress (WSS) in the carotid artery using a computed fluid dynamics analysis system and adopting open-source software. Methods: The depen-dence of element number (computation time and analytical accuracy) were considered with simple vessel models. We evaluated WSS and flow velocity using a carotid artery model that was based on the outcome of simple vessel models. Results: When the number of elements was 105 or more, the flow velocity error of the

outlet decreased to 0.5% or below when using simple vessel models. The carotid bifurcation model showed a whirlpool and a decrease in flow velocity in the carotid bulb part. Conclusion: An analysis system was built using open source software. The results from the carotid bifurcation model suggested that hemodynamics contributes to the development of carotid stenosis.

Key words: computational fluid dynamics, open-source software, magnetic resonance angiography, wall share

stress *Proceeding author 有限会社システムクラフト 緒 言  現在,本邦において血管疾患による死亡率は死亡原 因全体の 25.4%を占め,血管疾患の中でも特に動脈硬 化性疾患は血管の壁面剪断応力(wall shear stress: WSS) が関連していることが報告されている1∼4).WSS は数値 流体力学(computational fluid dynamics: CFD)によって 算出される物理パラメータであり,血流動態の血行力 学的な解析は WSS の正確な評価が求められている5) また CFD 解析によって得られた情報は血流の軌跡を可 視化することが可能で,血流動態の把握に更なる貢献 が期待される.CFD を用いたシミュレーションは医学 分野で応用される以前から,工学分野では盛んに研究 が行われてきた.CFD シミュレーションは建築物の空 力計算,管内の流速などの計算に多く用いられる.近 年,医工連携による新しい医療技術の発展が著しく, ステントグラフトや,人工心臓が医学と工学の協同に よって開発された.同様に CFD 解析による流れのシ ミュレーションや有限要素法を用いた強度計算も,医学 分野で応用されている6∼8).しかしながらこれらのシ ミュレーションツールは非常に高価である.また,大き な対象における構造計算はスーパーコンピュータを必要 とし,臨床において CFD 解析がハード面でもソフト面 においても一般的に困難視されてきた.近年,コン ピュータハードウェアは著しい発展を見せ,われわれが

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比較的高性能なコンピュータを入手しやすい環境になっ ている.ソフト面に関して,現在さまざまな無償で入手 できるオープンソースソフトウェアが,数多く存在して いる.その中には CFD 解析ソフトや三次元画像処理ソ フトがあり,自由に使用することが可能となっている.  CFD 解析を用いた血流動態に関する多くの報告は, WSSが血管壁に与える影響を示したものである9, 10).こ れ ら の 報 告 は, 磁 気 共 鳴 画 像(magnetic resonance image: MRI)の 収 集 シーケンスの 一 つで ある phase contrast MR angiography(PC-MRA)を用いて血管を抽出 し,解析モデルを作成している.PC-MRA は撮像画像 から流速が測定可能であり,測定された流速は,CFD 解析の流速入力部の設定値として利用されている.多 くの場合,これらの報告における解析の確度は基礎研 究などによって裏付けがなされているが,システム自体 の高額な導入コストが大きな問題となる.このような背 景の中で,われわれはオープンソースソフトウェアを用 いた汎用性のある CFD 解析環境の構築を試みた.  本研究においてわれわれはオープンソースソフトウェ アを用いた解析環境を構築し,既知のジオメトリをもつ 模擬血管モデルを用い,解析モデル作成について計算 要素数の時間依存性と計算処理の確度について検討を 行った.さらに模擬血管モデルの結果に基づいて頸動 脈分岐部 MRA 画像によるモデル作成を行い,ベクトル 表示,流速,流体の軌跡について可視化を試み,評価 を行った. 1.方 法 1-1 CFD 解析環境の構築

 CFD 解析環境は MacBookPro(Apple Inc., California, USA)上に構築した.また,オープンソース CFD 解析ソ フトウェアである OpenFOAM(Open CFD Ltd., Bracknell, UK)は Linux で動作するため,Mac OS 上に仮想環境 で Linux システムを構築した.CFD 解析のプリプロ セッサである OpenFOAM はコマンドライン上で動作 し,CFD 解析に必要な設定ファイルの編集は非常に煩 雑 で あ る.そ の た め, 本 研 究 で は OpenFOAM が graphical user interface(GUI)で 動 作 す る Helyx OS (Engys Ltd., London, UK)を使用した.また,解析結果 は Paraview(Kitware Inc., New York, USA)を用いて可 視化を試みた.Fig. 1 に OpenFOAM 解析フローチャー トを示す. 1-2 解析モデルの作成  CFD 解析における基礎的な検討を行うために,単純 かつ既知のジオメトリをもつ模擬血管モデルを three-dimensional(3D)モ デ リン グ ソフトで あ る Blender (Blender Foundation, Amsterdam, Netherlands)を用いて 作成した.OpenFOAM における解析条件の入力は煩雑 である.われわれは既知のジオメトリをもつ模擬血管モ デルで基礎的な検討を行った.作成した 2 種類の模 擬血管モデルを Fig. 2 に示す.模擬血管(A)は直径 5 mm,長さ 50 mm の円柱状の構造とした.模擬血管 (B)は直径 5 mm,長さ 50 mm の円柱構造の中央部に 直径 2.5 mm,長さ 15 mm の狭窄部位を設定した.   頸 動 脈 モデ ルの 作 成は Osirix(Osirix Foundation, California, USA)および Blender を用いて行った.Osirix (www.osirix-viewer.com)にある MRA のサンプルデータ Fig. 1 Flowchart of CFD analysis.

Import analysis model: STL-formatted; mesh generated using OpenFOAM; boundary conditions determined using Helyx OS; analysis model: SimpleFoam, results visualized using Paraview.

Fig. 2 Schematic illustration of vessel models. Model A: Cylinder model (ø 5 mm)

Model B: The stenosis model has a narrow region (ø 2.5 mm) in the center

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から頸動脈分岐部のみを抽出した.抽出した画像はサー フェイスレンダリング処理を行い,stereolithography (STL)ファイル形式で出力した.作成した頸動脈分岐部 血管モデル(頸動脈モデル)を Fig. 3 に示す.作成した 頸動脈モデルの体軸方向の長さは 50 mm,血管直径は 流入面(common carotid artery: CCA),流出面 1(internal carotid artery: ICA),流出面 2(external carotid artery: ECA)でそれぞれ 8 mm,6 mm,5 mm に設定した. 1-3 CFD 解析の境界条件  本研究における境界条件を Table 1 に示す.流入面 での血流は定常流とし,以前に報告11)されている動脈 の積分平均された流速値(u=0.5 m/s)を用いた.壁面は 滑りなし条件,剛体壁とした.今回の頸動脈モデルは 流出面が複数あるが,本研究は流出面の境界条件設定 を無限遠端での圧力 p=0 m2/s2とし12),流体組成は血 液と仮定した.なお,血液は非圧縮性,ニュートン流 体とし,流体の物性値は,密度 ρ=1050 kg/m3,粘度 η=4.0×10−3 Pa·sに設定した13).この流体のレイノルズ数 は約 600 である.管内流れにおいて,乱流に移行する 限界レイノルズ数は 2300∼400014)と言われている.本 研究で設定した流体は限界レイノルズ数に満たないの で層流として計算を行った.  使用する計算ソルバは SimpleFoam であり,その計 算法は流速と圧力の方程式を解くための反復法である semi implicit method for pressure-linked equations (SIMPLE)アルゴリズムを採用した15) 1-4 CFD 解析における計算要素作成 1-4-1 計算要素数  計算要素数は,解析領域の離散化の程度のことを示 す用語である.一般に,同一の解析対象では計算要素 数が多い程,より小さい領域に分割され,解析の確度 が高くなる.模擬血管(A)は計算要素数を変化させて解 析 モ デ ル を 作 成 し た[Fig. 4(a)1050,(b)8000,(c) 63200,(d)504000,(e)1104000].模擬血管(A)の(a)∼ (e)の境界層は 1 層とし,単純に計算要素数を増加さ せ,(f)は(a)のモデルの境界壁面を 5 層の密な境界層 で作成した(境界 5 層モデル:計算要素数 4386).模 擬血管(B)も同様に計算要素数を変化させて解析モデ ル を 作 成し た[Fig. 5(a)5560,(b)43496,(c)146384, Fig. 3 An illustration of the

carotid bifurcation model used for MRA imaging.

The model has a single inlet (ø 8 mm) and two outlets (ø 5 mm, ø 6 mm); total length is 50 mm.

Fig. 4 Comparison of local flow velocity estimated from simple vessels in Figure 2 as a function of number of elements [(a) 1050, (b) 8000, (c) 63200, (d) 504000, (e) 1104000, and (f) 4386 and five added layers].

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(d)357121,(e)754138]. 1-4-2 計算要素作成時間  計算要素はより細分化すれば計算要素作成にかかる 時間が長くなる.そこで,計算要素作成にかかる時間を 前項の模擬血管 A(a)∼(f),模擬血管 B(a)∼(e)につい てそれぞれ計測した.ここで,計算要素作成時間は Fig. 1における generate mesh にかかる時間である. 1-5 CFD 解析結果の計算要素数特性 1-5-1 壁面近傍の計算確度  作成したモデルを用いて,摩擦力の影響による流速 変化の大きい壁面近傍の計算確度向上の検討を行っ た.壁面の流速低下についての検討は,速度分布図の 表示によって行った.また,模擬血管(A)については流 入面より 25 mm 位置の管軸方向に垂直な断面における 速度プロファイルを作成した. 1-5-2 流出面の流量測定  各モデルの流出面での流量を算出し,計算要素数が 流量における CFD 解析結果に与える影響を評価した. 血管モデル(A)における流出面の流量は,シミュレー ション結果と理論値の比較を行った.ここで流量の理 論値はモデルの流出面の面積と流入面の流速の関係か ら 9.82×10−6 m3/sと算出された. 1-6 頸動脈モデルの CFD 解析  頸動脈モデルの CFD 解析は,挿入した境界層を 5層,計算要素数を 659922 要素に設定した.解析した 血管モデルは流線の表示と流速及び圧力のベクトル表 示を行った.頸動脈モデルは五つのセグメント(inner ICA,outer ICA,inner ECA,outer ECA,divider wall) に分割し,流速について評価を行った.頸動脈モデル のセグメントを Fig. 6 に示す.ICA,ECA それぞれの中 心軸を通る面の分岐部側を inner,反対側を outer,分 岐部周辺を divider wall と表現する. 2.結 果 2-1 計算要素作成時間  Fig. 7 に本研究で構築した CFD システムで作成した 模擬血管(A)の解析モデル outlet 面付近の断面を示 す.(c)(d)(e)のモデルで計算要素配列に一部不均一な 領域を認めた(矢印).Fig. 8 に作成した模擬血管(B)の 計算要素数の増加に対する解析モデル作成時間を示 す.モデル形状によらず,単純に計算要素数の増加に 伴って計算要素作成時間が累乗関数的に増加した. 2-2 CFD 解析の計算要素数依存性  Fig. 9 に計算要素数に対する CFD 解析時間を示す. 計算要素数の増加に伴って計算時間は直線的に増加し た.Fig. 4,5 に解析した模擬血管モデル(A),(B)の速 度分布を示す.壁面近傍では流体が壁面から受ける摩 擦力のため,流速が低下した.Fig. 4 ではモデル中心部 の流速の変化および境界壁近傍の流速低下が計算要素 数の違いによって生じた.模擬血管モデル(A)はモデル 中心部付近から outlet 面において inlet 面付近よりもグ レースケール上白く表示された.Inlet 面で与えた流れ Fig. 5 Comparison of local flow velocity estimated from

steno-sis vessels in Figure 2 as a function of number of elements [(a) 5560, (b) 43496, (c) 146384, (d) 357121, (e) 745138)].

a b c d e

Fig. 6 Scheme of wall segmentations (inner wall of the external carotid artery: inner ECA, outer wall of the external carotid artery: outer ECA, inner wall of the ICA: inner ICA, outer wall of the ICA: outer ICA, and divider wall) for the carotid bifurcation model studied in Figure 3.

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a b c d e f Fig. 7 Mesh generation estimated from simple vessels in Fig. 2 as a function of number of

elements [(a) 1050, (b) 8000, (c) 63200, (d) 504000, (e) 1104000, and (f) 4386 and five added layers].

Fig. 8 Mesh generation time as a function of number of elements.

Increasing the number of elements increases mesh generation time, as with involution.

Fig. 9 Plot of model solving time as a function of number of elements.

Solving time and number of elements were approxi-mated using a linear function.

が発達し,流速が速くなっていることが示された16).ま た,滑りなし条件で解析を行う場合は,壁面における流 速が 0 m/s と仮定される.つまり壁面近傍はグレース ケール上,黒で表示されていなければならない.また, 流入面より 25 mm の管軸方向に垂直な断面で作成した 速度プロファイルと,ハーゲン・ポアズイユの法則から 求めた流速分布の理論値を Fig. 10 に示す.計算要素の 少ない(a)のモデルでは壁面近傍の流速 0 m/s が検出で きなかった.境界 5 層モデル(f)は(a)のモデルと比較し て,壁面近傍の流速低下が顕著に検出された.Fig. 5 でも同様に,血管モデル(B)の計算要素数の少ない(a) のモデルは壁面近傍の流速低下が検出されなかった. また,計算要素数が 105を超える(c)(d)(e)のモデルは 流路が拡大した領域での流速の揺らぎを検出した.  Table 2 に流出面における流量を示す.理論値との相 対誤差は計算要素数が多くなるに従って減少した.境 界 5 層モデルは計算要素数が増加したにもかかわら ず,流出面での相対誤差は明らかに減少しなかった. 2-3 頸動脈モデルの CFD 解析  Fig. 11 に頸動脈モデル解析結果の圧力ベクトル表 示,流線と,血管の中心軸を通る断面における流速分 布を示す.頸動脈モデルの CFD 解析時間は 377 s で あった.(a)のベクトル表示では divider wall 部分で特 に流速の速い領域が認められた.(b)の流線表示では, 分岐部領域で渦流の形成が認められた.(c)の流速分布

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Fig. 10 Flow velocity profile and theoretical value.

The 1050-element model did not detect flow velocity of 0 m/s near the surface of wall. The flow velocity of the central part in each model increased under the boundary condition of >0.5 m/s in the inlet plane.

Table 2 Accuracy of flow volume at outlet plane

Number of elements Flow volume (m3/s) Relative error (%)

1050 9.28×10−6 5.45 8000 9.69×10−6 1.27 63200 9.77×10−6 0.52 504000 9.78×10−6 0.35 1104000 9.80×10−6 0.18 Add layer 4386 9.28×10−6 5.45 (Theoretical value 9.82×10−6 m3/s) a b c

Fig. 11 Pressure vector (a), velocity stream line (b), and velocity distribution (c) predicted by CFD for the carotid bifur-cation model.

Very high pressure is applied to the divider wall, whirlpool flow is found at the bifurcation, and low velocity was observed at the ICA and ECA outer walls.

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れは本研究においてオープンソースソフトウェアで CFD解析システムを構築し,模擬血管モデルおよび頸 動脈モデルを用いて種々の物理データを検証した.  CFD 解析の計算要素数は,解析モデルの離散化によ る計算結果への影響が非常に大きいとされている.し かしながら,計算要素数の増加による計算時間の増加 はハードウェアの性能が向上した昨今においても大きな 障害となっている.そのため模擬血管モデルを用いて 適切な計算要素数を検証することは有意義である.特 に,CFD 解析における計算要素は,解析結果の確度に 大きく関与していると考える.岩瀬ら5)は血管モデルか らの計算要素作成ソフトウェアを作成し,計算要素作 成と計算効率の向上を図っている.また,石田17)は計算 要素数について最低でも 106以上が必要であると報告 した.しかしながら,自作で計算要素作成ソフトウェア を作成することは専門的な知識を必要とし,非常に煩雑 である.われわれが用いた OpenFOAM は BlockMesh と SnappyHexMesh の二つの計算要素作成ツールが標 準で実装されている.前者で解析領域を六面体要素に 分割し,後者を用いて解析モデルの形状を作成するこ とが可能である.この 2 種類の処理過程を併用するこ とで,脳血管モデルのような比較的複雑な形状を有す るモデルにも適用することが可能となる.また,計算要 素が 106を超える計算を行うためには,専門の高性能な システムが必要となる.CFD 解析は,コンピュータの 性能が向上すれば可能な限り計算要素数を多くし,モ デルの離散化を密にすることが望ましい.Table 2 の結 果からも,最小の誤差は最も計算要素数が多いモデル で 0.18%と減少し,計算要素数が多いほど理論値に近 づく結果となった.しかし,計算要素数が増加すると (Fig. 8),計算要素作成にかかる時間は累乗的に増加 し,さらに CFD 計算処理にかかる時間も増加する. BlockMesh,SnappyHexMesh は計算モデルの大きさにか かわらず,計算要素数に処理時間が依存する.スーパー コンピュータ18)によるペタバイト級の計算が可能であれ ば計算要素数を限りなく多く設定することが可能である. 近傍の流速 0 m/s が検出された.境界面 5 層モデルは 計算要素数が 4386 にもかかわらず,63200 の解析モデ ルと同程度の壁面近傍の流速低下が検出できている. 今回,境界 5 層モデル Fig. 4(f)のモデルは,壁面の速 度低下を検出できた計算要素数の最も少ないモデルで ある Fig. 4(c)のモデルに対して,計算要素作成時間, 解析時間を合わせ,59.5 s(89.7%)処理時間が減少し た.Fig. 4(f)の解析モデルは計算要素数を抑えながら, 壁面近傍の流速低下の検出という点で有効な手法であ ると考える.スーパーコンピュータのように高性能なシ ステムを用いた場合は全体を密に離散化し,計算を行 うことが可能である.本研究のようにシステムのスペッ クに制限がある場合は,境界層の配置で計算要素数を 抑えることがシステムへの負荷を低減する.しかしな がら,Fig. 7 にあるように outlet 面の離散化の程度は 粗であり,結果として流量についての確度は得られな かった.  Fig. 5(d)(e)のように計算要素数が 105を超えている モデルは,流路が拡大した部分で流れの揺らぎが検出 された.通常拡大流路では剝離流が発生し,流れに揺 らぎが生じる.しかし,この揺らぎの観測は一般に特殊 な装置を必要とし,観測実験は困難である.過去の報 告において拡大流路における揺らぎのシミュレーション が行われている19, 20).本研究でも計算要素数が多いモ デルでその報告に近い結果が得られた.また,流出面 の流量においても計算要素数が 105を超えるモデルは 相対誤差が 0.5%以下と,理論値に非常に近い値が得ら れている.これらの結果から,作成する計算モデルは 少なくとも 105以上の計算要素数を有することが必要で ある.また,さらに境界層を設定することで,計算要素 の増加を抑えながら壁面近傍の計算確度を向上させる ことが可能であると示唆された.  頸動脈モデルの解析は,ECA と比較して ICA の流 線が多く,優位な流れであるという結果が得られた.本 研究は無限遠端の圧力を 0 m2/s2と設定しており,血管 モデル形状と実際の血管の長さの違いによる影響を排

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除している.流れは抵抗の小さい方へ流れていく12).本 研究のような分岐構造の場合は単純に血管径の大きい 方が圧力による抵抗が減少し優位な流れを呈する.し たがって ICA への優位な流れはその血管走行に依存せ ず,流出面の血管径の設定によって評価できた.また, divider wall領域で圧力が高く流速の速い領域が認めら れた[Fig. 11(a)].WSS は壁面近傍の流速勾配と流体粘 性係数の積である21).このことから流速が壁面近傍にお いて速い領域は WSS の値が大きく,流速の遅い領域は WSSの値が小さいことが推定される.つまり,流速の 速い divider wall 付近は高い WSS の領域であると予測 することが可能となる.Papathanasopoulou ら9)による報 告でも,われわれの結果と同様に,分岐部で高い WSS を検出している.また,Fig. 11(c)において outer ICA, outer ECAに流速の低下している領域を認め,Marshall ら10)によってこの領域の流速低下が報告されている.両 者の報告は共に商用のソルバを用いて解析を行ってお り,今回オープンソースソフトウェアを用いて同様の結 果が得られたことは,われわれの本研究におけるシ ミュレーション手法が正しいということを示している. Fig. 11(b)の流線の表示では,渦流が流速の低下した領 域で生じていることが可視化できている.本研究におけ るシミュレーション結果で,流速の低下を認める領域は 血流が停滞し,応力が低い箇所であることが示され た.特に,この領域は頸動脈球部と呼ばれ,一般に頸 動脈狭窄が生じやすい部位とされている.これらの結 果は,以前の報告3)と合わせて血流の挙動が頸動脈狭 窄症の発症に寄与していることを示唆している.  しかしながら,本研究では Fig. 7 に示す計算要素の 不均一性が計算確度に与える影響を加味していない. 本研究においては局所の物理パラメータを抽出して厳 密な評価を行わなかった.仮にそういったことを行う場 合,計算要素の不均一性が結果に何らかの影響を及ぼ すことは否定できない.今後は血液の非定常の拍動 流,計算要素不均一性および血管壁の性状などを考慮 して(流体−構造連成解析),さらに in vivo に近い条 件でシミュレーションを行う必要がある.計算要素に 関する検討と流体−構造連成解析は今後の重要な課題 である. 4.結 語  オープンソースソフトウェアを用いて CFD 解析環境 を構築した.構築した CFD 解析環境で模擬血管モデル を解析し,解析モデル作成における至適計算要素数を 求めた.流速変化の大きい壁面近傍のみ計算要素を密 に配置することで,計算要素数を抑えながら壁面近傍 における計算確度の向上が認められた.頸動脈分岐部 モデルの解析では,頸動脈狭窄症の発症頻度の高い頸 動脈球部において流速の低下した部位が認められ,血 流の挙動が頸動脈狭窄症の発症に寄与していることが 示唆された.今後は拍動流や血管壁の物性値を考慮し た流体−構造連成解析を行い,さらに in vivo に近い条 件でシミュレーションを行うことが課題である. 謝 辞  本稿を終えるにあたり,CFD 解析についてご助言を いただきました広島オープン CAE 勉強会(三原)の皆様 に,また研究方法論について丁寧なご指導をいただき ましたデジタル画像評価技術研究会の皆様に深く感謝 を申し上げます.

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Fig. 2  Schematic illustration of vessel models. Model A: Cylinder model (ø 5 mm)
Fig. 4  Comparison of local flow velocity estimated from  simple vessels in Figure 2 as a function of number of  elements [(a) 1050, (b) 8000, (c) 63200, (d) 504000,  (e) 1104000, and (f) 4386 and five added layers].
Fig. 6  Scheme of wall segmentations (inner wall of the external  carotid artery: inner ECA, outer wall of the external  carotid artery: outer ECA, inner wall of the ICA: inner  ICA, outer wall of the ICA: outer ICA, and divider wall)  for the carotid bifu
Fig. 8  Mesh generation time as a function of number of  elements.
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