Fermat の最終定理
alg-d
http://alg-d.com/math/ac/
2013 年 11 月 10 日
目次
1 導入 1
2 使用する事実について 2
3 Fermatの最終定理 3
4 Herbrandの定理 5
5 Fermatの最終定理 2 9
1 導入
Fermatの最終定理. n≥3のとき,xn+yn =zn,xyz ̸= 0は有理整数解を持たない.
Fermatの最終定理がスキームだかなんだか難しい概念を駆使して証明されたことは良
く知られていて,私もその証明は全く分からないけれども,ある程度特殊な場合であれば それなりの知識で証明ができる.ここではそれを紹介する.
Fermatの最終定理はn = p ≥ 5が素数の場合のみ示せば十分である.(n = 3,4の場 合の証明はよく知られている.) このときp/ xyz| とp |xyz の二つの場合に分けられる が,前者を1st case,後者を2nd caseという.このPDFでは1st caseのみを扱う.(2nd caseについては[1]のChapter 9を参照.)
2 使用する事実について
定義. ζn:= exp (2π√
−1 n
)
. 定義. Q(ζn)+ :=Q(ζn+ζn−1).
命題 1 ([1]Prop. 1.5.). Q(ζp)の単数εに対して,Q(ζp)+ の単数ε1とm∈Zが存在し てε=ζpmε1 と書ける.
命題 2 ([1]Lem. 1.9.). α :=a0+a1ζp +· · ·+ap−1ζpp−1 ∈Z[ζp]として,少なくとも一 つのaiが0であるとする.このときn|αならば各iについてn|aiとなる.
命題 3 ([1]Thm. 4.14.). 自然な写像ClQ(ζn)+ −→ClQ(ζn)は単射である.
定義. Bn を Taylor 展開 x ex−1 =
∑∞ n=0
Bnxn
n! により定義する.Bn をBernoulli数と いう.
Bernoulli数は有理数になることが知られている.
−x
e−x−1 = x
1−e−x = xex
ex−1 = xex−x+x
ex−1 =x+ x ex−1
により n > 0 に対して B2n+1 = 0となることが分かる.B0 = 1, B1 = −12, B2 =
1
6, B4 =−301 , B6 = 421 , B8 =−301 , B10 = 665 , B12 =−2730691 , . . . となることが知られ ている.
命題 4 ([1]Thm. 4.2.). ζ(s)をRiemannゼータ関数とするとき,任意の正整数nに対し てζ(1−n) =−Bn
n .
pを奇素数とする.χ: (Z/pZ)× −→C× を準同型とする.Taylor展開
p−1∑
a=1
χ(a)xeax epx−1 =
∑∞ n=0
Bn,χxn n!
により Bn,χ を定める.χ = 1 とすれば,n ̸= 1 のとき Bn,1 = Bn である.また B1,1 = 1/2,B1 =−1/2.
命題 5 ([1]Prop. 4.1.). B1,χ = 1 p
p−1
∑χ(a)a.
a ∈Zがp/ a| を満たすとする.このとき1のp−1乗根ω(a) ∈Zp が一意に存在して a ≡ ω(a) (mod p)となる.これにより準同型ω: (Z/pZ)× −→ Zp が定まる.ω の像は 代数的だから,ω: (Z/pZ)× −→C×とみなせる.(埋め込みQ−→Cp を一つ固定してお く.) ωをTeichm¨uller指標という.
命題 6 ([1]Cor. 5.15.). nが奇数でn̸≡ −1 (mod p−1)ならばB1,ωn ≡ Bn+1
n+ 1 (mod p) で,またこれらはp進整数である.
3 Fermat の最終定理
まず,Kummerが証明した次の定理を証明する.
定理 7. 素数p≥5がp/ h| Q(ζp)を満たすとき,xp +yp =zp, p/ xyz| は有理整数解を持 たない.
証明. 有理整数解が存在すると仮定する.即ちx, y, z ∈Zが存在してとしてxp+yp =zp, p/ xyz| となる.ζ := ζp としてZ[ζ]で考えると
p∏−1
i=0
(x+ζiy) = zp と分解できる.故に
イデアルの式として
p∏−1
i=0
(x+ζiy) = (z)p が成り立つ.i̸=j に対してイデアル(x+ζiy) と(x+ζjy)は互いに素であることが分かる.故に素イデアル分解の一意性から,あるイ デアルaを使って(x+ζy) = ap と書ける.今p/ h| Q(ζ)であるから,α ∈Z[ζ]が存在し てa = (α)と書ける.従って(x+ζy) = (α)p = (αp).故にあるε ∈ EQ(ζ) が存在して x+ζy =εαp となる.命題1により,あるε1 ∈Q(ζ)+ とr∈Zが存在してε =ζrε1 と 書ける.よってx+ζy =ζrε1αp である.α =a0+a1ζ+· · ·+ap−1ζp−1 (ai ∈Z)と 書けばmod pで
αp ≡ap0+ap1ζpp+· · ·+app−1ζpp(p−1)=ap0+· · ·+app−1 =:a.
故にx+ζy=ζrε1αp ≡ζrε1aである.一方複素共役を考えるとx+ζ−1y =ζ−rε1αp ≡ ζ−rε1aだから
ζ−r(x+ζy)≡ζr(x+ζ−1y) 即ち
x+ζy−ζ2rx−ζ2r−1y≡0.
今,1, ζ, ζ2r−1, ζ2r が互いに異なると仮定する.つまりこれらはQ 上一次独立である.
x+ζy−ζ2rx−ζ2r−1y=pβ (β ∈Z[ζ])と書く.β =b0+b1ζ+· · ·+bp−1ζp−1 (bi ∈Z) とすればx+ζy−ζ2rx−ζ2r−1y = pb0 +· · ·+pbp−1ζp−1 である.表現の一意性から p|xとなりp/ xyz| に矛盾.
故に同じになるペアがある.明らかに 1 ̸= ζ, ζ2r−1 ̸= ζ2r だから起こるのは次の三 通り.
(i) 1 =ζ2r のとき.
x+ζy−x−ζ−1y ≡0 (mod p)だからζy−ζp−1y ≡0 (mod p)である.よって先と同 様にしてp|yが導かれ矛盾する.
(ii) ζ =ζ2r−1のとき.
x+ζy−ζ2x−ζy ≡ 0 (mod p)だからx−ζ2x ≡0 (mod p)である.よって先と同様 にしてp|xが導かれ矛盾する.
(iii) 1 =ζ2r−1 (このときζ =ζ2r)のとき.
x+ζy−ζx−y ≡ 0 (mod p)だから(x−y) +ζ(y−x) ≡ 0 (mod p)である.よって 先と同様にしてx≡y (mod p)を得る.xp+ (−z)p = (−y)pとして同様の議論を行うと x ≡ −z (mod p)を得る.よってxp +yp = zp からxp +xp ≡ −xp (mod p),よって 3xp ≡0 (mod p)を得る.今p≥5だからp|xとなり,矛盾.
定義. p/ h| Q(ζp)となる素数pを正則素数という.
つまり,Kummerは「正則素数pについてはFermatの最終定理が成立する」ことを示 したことになる.更に,Kummerは素数pが正則になる為の必要十分条件を与えている.
定理 8. pが正則素数⇐⇒n= 2,4,· · · , p−3に対してp/ B| n.
例えば,691| B12 であるから691は非正則素数である.非正則素数は小さいほうから 順に37,59,67,101,103,131,149,157,233,· · ·.
Fermatの最終定理が正則素数の場合に解決したので,次は非正則素数について取り組
みたいわけであるが,非正則素数についてもある程度は解決できる.前定理による正則素 数の性質から,素数の《非正則度》を次のように定めるのは自然であろう.
定義. i(p) := #{0< n < p−1|nは偶数,p|Bn}をpのindex of irregularityという.
このとき,《非正則度》i(p)が十分小さい素数については,Fermatの最終定理(の1st case)が証明できるのである(定理15).この証明にはHerbrandの定理(定理13)を使う ので,まずそれを示す.
4 Herbrand の定理
M/Q を有限次アーベル拡大とする.Kronecker-Weber の定理により,ある m ∈ N が存在して M ⊂ Q(ζm) となる.このような m のうち最小のものを取っておく.
G := Gal(M/Q) は (Z/mZ)× の剰余群とみなせる.x ∈ R の小数部分を {x} で表 す.M の Stickelberger 元を θ = θ(M) := ∑
a∈(Z/mZ)×
{a m
}
σa−1 ∈ Q[G] で定める.
I(M) :=Z[G]∩θZ[G]をStickelbergerイデアルと呼ぶ.
例. M = Q(ζm)の場合,J ⊂ Z[G]を{c−σc | (c, m) = 1}で生成されるイデアルとす ればI(Q(ζm)) =θJ である.
x = ∑
σ∈G
xσσ ∈Z[G]のイデアル類群ClM への作用をAx := ∏
σ∈G
(Aσ)xσ で定める.
定理 9 (Stickelbergerの定理,[1]Thm. 6.10.). M のStickelbergerイデアルはM のイ デアル類群を消す.即ち,M の任意の分数イデアルa⊂M とβθ ∈I(M) (β ∈Z[G])に 対してaβθは単項イデアルとなる.
この定理を認めて,Herbrandの定理を証明する.
G を 有 限 ア ー ベ ル 群 と し ,Gb := hom(G,C×) と 置 く .χ ∈ Gb に 対 し て εχ :=
1
|G|
∑
σ∈G
χ(σ)σ−1 ∈Q[G]と定める.
命題 10. (1) εχεψ =
{ εχ (χ=ψのとき) 0 (χ̸=ψのとき) (2) 1 = ∑
χ∈Gb
εχ
(3) εχσ =χ(σ)εχ
証明. (1) ∑
σ∈G
χ(σ) =
{ |G| (χ= 1のとき)
0 (χ̸= 1のとき) である.
...
) χ ̸= 1,即ちχ(τ)̸= 1なるτ ∈Gが存在すれば χ(τ)∑
σ∈G
χ(σ) = ∑
σ∈G
χ(τ σ) = ∑
σ∈G
χ(σ)
により(χ(τ)−1)∑
σ∈G
χ(σ) = 0,よって ∑
σ∈G
χ(σ) = 0である.
故に
εχεψ = (
1
|G|
∑
σ∈G
χ(σ)σ−1 ) (
1
|G|
∑
σ∈G
ψ(σ)σ−1 )
= 1
|G|2
∑
σ,τ∈G
χ(σ)ψ(τ)σ−1τ−1
= 1
|G|2
∑
ρ,τ∈G
χ(ρτ−1)ψ(τ)ρ−1
= 1
|G|2
∑
ρ,τ∈G
χ(ρ)χ(τ)−1ψ(τ)ρ−1
= 1
|G|2
∑
ρ∈G
χ(ρ)ρ−1 ∑
σ∈G
χ−1ψ(τ)
= 1
|G|εχ
∑
σ∈G
χ−1ψ(τ)
=
{ εχ (χ=ψのとき) 0 (χ̸=ψのとき) .
(2) ∑
χ∈Gb
χ(σ) =
{ |G| (σ =eのとき)
0 (σ ̸=eのとき) である.
...
) σ ̸=eのときψ(σ)̸= 1なるψ ∈Gbを取れば ψ(σ)∑
χ∈Gb
χ(σ) = ∑
χ∈Gb
ψχ(σ) = ∑
χ∈Gb
χ(σ)
により(ψ(σ)−1)∑
χ∈Gb
χ(σ) = 0,よって ∑
χ∈Gb
χ(σ) = 0である.
よって
∑
χ∈Gb
εχ = 1
|G|
∑
χ∈Gb
∑
σ∈G
χ(σ)σ−1
= 1
|G|
∑
σ∈G
(
σ−1 ∑
χ∈Gb
χ(σ) )
= 1.
(3) εχσ= 1
|G|
∑
τ∈G
χ(τ)τ−1σ = 1
|G|
∑
ρ∈G
χ(σρ)ρ =χ(σ)εχである.
命題 11. Rを{χ(σ)|χ∈G, σb ∈G} ∪ {1/|G|} ⊂Rとなる可換環,M をR[G]加群と する.χ∈Gbに対してMχ :=εχM と置けばM = ⊕
χ∈Gb
Mχ.
証明. 命題10の2より明らかにM = ∑
χ∈Gb
Mχである.mχ ∈Mχが ∑
χ∈Gb
mχ = 0を満た したとする.mχ =εχaχとなるaχが存在する.このとき ∑
χ∈Gb
εχaχ = 0だから,任意の ψ∈Gbを取ると
0 =εψ0
= ∑
χ∈Gb
εψεχaχ
=εψaψ
となりaψ = 0である,即ち各ψ ∈Gbに対してmψ = 0である.
pを奇素数とする.G:= Gal(Q(ζp)/Q)= (∼ Z/pZ)×としてωをTeichm¨uller指標とす ればGb ={ωi |0≤i≤p−2}となる.εi :=εωi ∈Zp[G]と書く.また
ε− :=∑
2/i|
εi = 1 2 − 1
2σ−1, ε+ :=∑
2|i
εi = 1 2 + 1
2σ−1
と定める.これを使えばM =M−⊕M+と分解する.
θ =
p−1
∑
a=1
a
pσa−1 ∈Q[G]をStickelberger元とすれば,命題5を使って
εiθ =
p−1
∑
a=1
a
pεiσ−1a = 1 p
p−1
∑
a=1
aω−i(a)εi =B1,ω−iεi
となる.よって(c−σc)θ∈I(Q(ζp)) ((c, p) = 1)に対して εi(c−σc)θ = (c−ωi(c))B1,ω−iεi
である.A:=「Q(ζp)のイデアル類群のp-Sylow部分群」とする.今Aの演算を加法で 表せば,十分大きいnに対してpnA = 0 であるから,∑
n
xnpn ∈ Zp とa ∈ Aに対し
て (∑∞
n=0
xnpn )
a :=
∑∞ n=0
(xnpna)が定義できる.このZp の作用とGの作用により A は
Zp[G]加群となる.よって前命題によりAi :=εiAとしてA=
p−2
⊕
i=0
Aiと分解する.
Stickelbergerの定理によれば(c−σc)θA= 0,よって各iについて(c−σc)θAi = 0で ある.今,εi(c−σc)θ = (c−ωi(c))B1,ω−iεi だったから,任意のεia∈Aiに対して
(c−ωi(c))B1,ω−i(εia) =εi(c−σc)θa =εi0 = 0.
故に(c−ωi(c))B1,ω−i はAi を消す.
i ̸= 0でi が偶数ならば,B1,ω−i = 0 であるからこれは自明である.i = 0 のとき,
B1,1 = 1/2だから(c−1)/2がA0を消す,即ちA0 = 0が分かる.(これはε0の定義か らも明らか.) 次にiが奇数の場合.まずi= 1とする.c= 1 +pと取ればmod pで
(c−ω(c))B1,ω−1 =pB1,ω−1 =
p−1
∑
a=1
aω−1(a)≡p−1̸≡0.
A1 はp群だったから,A1 = 0が分かった.奇数i ̸= 1のとき,cとして pの原始根で c̸≡ci ≡ωi(c) (mod p)となるものを取れば次の定理が得られる.
命題 12. i= 3,5, . . . , p−2に対してB1,ω−i はAiを消す.
これにより次の定理が分かる.
定理 13 (Herbrandの定理). i= 3,5, . . . , p−2に対して,Ai ̸= 0 =⇒p|Bp−i.
証明. Ai ̸= 0とすれば,Ai はp群だからp|B1,ω−i でなければならない.命題6により B1,ω−i ≡ Bp−i
p−i (mod p)だから,p|Bp−i である.
※ 実は逆も成り立つことが知られている.
定理 14 (Ribetの定理). i= 3,5, . . . , p−2に対して,p|Bp−i =⇒Ai ̸= 0.
この定理によりp-rank(ClQ(ζp))≥i(p)が分かる.
5 Fermat の最終定理 2
いよいよ次の定理が証明できる.
定理 15. 素数pがi(p)<√
p−2を満たすならばxp+yp =zp, p/ xyz| は有理整数解を 持たない.
証明. xp +yp = zp とする.ζ := ζp と書く.i = 0,1, . . . , p−1に対してQ(ζ)のイデ アルai が存在して(x+ζiy) = api と書ける.C ⊂ClQ(ζ)を[a1], . . . ,[ap−1]で生成され る部分群とする.C はZp[G]加群である.σia1 = ai としてよい.よってC はZp[G]上 [a1]で生成される.C =⊕
iεiC と分解するから,εia1 で生成される部分群を⟨εia1⟩と 書けばC =⊕
i⟨εia1⟩である.またC− =⊕
2/i| ⟨εia1⟩である.
p- rank(C−) = #{1≤i≤p−1|2/ i, ε| ia1 ̸= 0}
≤#{1≤i≤p−1|2/ i, A| i ̸= 0}
であるから,定理の仮定とHerbrandの定理によりp- rank(C−)≤i(p)<√
p−2となる.
r := [√
p]−1(> √
p−2)としてab11· · ·abrr (0≤bi < p)を考える.pr > pp- rank(C−) =
|C−|だから,Dirichletの抽斗論法により,異なる組(b1, . . . , br),(c1, . . . , cr)が存在し てab11· · ·abrr とac11· · ·acrr のC−成分が一致するようにできる.このときai :=bi−ci と すれば[aa11· · ·aarr]∈C+ である.よってあるρ∈Q(ζ)とイデアルbが存在して
aa11· · ·arar =ρb, bσ−1 =b
とできる.各aiはpと互いに素だから,ρとbもpと互いに素としてよい.両辺をp乗
して ∏r
i=1
(x+ζiy)ai =ρpbp
となる.故にQ(ζ)の中でbpは単項イデアルである.命題3により,Q(ζ)+の中でbp が 単項イデアルとなることが分かる.bp = (α),α∈Q(ζ)+ と書く.
∏r
i=1
(x+ζiy)ai = (ρpα)
であるが,Q(ζ)の単数はζmε (m∈Z, εは実単数)と書ける(命題1)ので
∏r
i=1
(x+ζiy)ai =ζmερpα
と書ける.複素共役を取れば
∏r
i=1
(x+ζ−iy)ai =ζ−mερ¯pα
となる.mod pでρp ≡ρ¯p だから
∏r
i=1
( x+ζiy x+ζ−iy
)ai
≡ζ2m (mod p) で,またv≥0をv ≡2m−∑r
i=1iai (mod p)となるように取れば
∏r
i=1
(x+ζiy y+ζix
)ai
≡ζv (mod p)
となる.
xi :=
{ y (ai <0)
x (ai ≥0) , yi :=
{ x (ai <0) y (ai ≥0) としてF(T) := ∏
(xi+Tiyi)|ai|,G(T) := ∏
(yi +Tixi)|ai| と置く.F(ζ) ≡ ζvG(ζ) (mod p) となる.即ち,あるK(T) ∈ Z[T] が存在して F(ζ) = ζvG(ζ) +pK(ζ) とな る.よってあるH(T) ∈ Z[T]が存在してF(T) = TvG(T) +pK(T) + (1 +T +· · ·+ Tp−1)H(T)と書ける.両辺に1−T を掛けてT で微分し,T にζ を代入し,mod pを 取れば
(1−ζ)F′(ζ)−F(ζ)≡(1−ζ)ζvG′(ζ)−ζvG(ζ) +v(1−ζ)ζv−1G(ζ)
となる.F(ζ)≡ζvG(ζ)だったから (1−ζ)F′(ζ)
F(ζ) −1≡(1−ζ)G′(ζ)
G(ζ) −1 +v(1−ζ)ζ−1 が分かる.これを計算すると
(1−ζ)
∑r
i=1
iaiζi
( y
x+ζiy − x y+ζix
)
≡v(1−ζ) が分かる.ai ̸= 0となる最小の番号iをi0 とする.両辺に∏r
i=1(x+ζiy)(y+ζix)を掛 けて分母を払う.左辺はζ について1 +i0+r(r+ 1)−2i0 = 1 +r(r+ 1)−i0 次の多
項式で,最高次係数はi0ai0(x2−y2)xryr である.一方右辺は1 +r(r+ 1)次で最高次係 数は−xryrvである.ここでrの取り方から1 +r(r+ 1)<1 + (√p−1)√p < p−1で ある.よって命題2によりv ≡ 0 (mod p)が分かる.即ち右辺は(mod pで) 0になる.
よって左辺も0である.故にx2 ≡y2,即ちx≡ ±yが分かった.
y とz を入れ替えて以上の議論を行えばx ≡ ±z が分かる.故にxp ±xp ≡ ±xp とな るが,これはp >3では矛盾する.
ところで,このi(p)<√
p−2という条件はどのくらいの素数が満たすのだろうか.コ ンピュータによる計算に依れば,12×106 以下の素数について,i(p) = 0,1,2, . . . となる 素数pの個数が以下のようになることが知られている([2]).
i(p) pの個数 0 477616 1 239483 2 59710
3 9824
4 1282
5 127
6 13
7 4
これを見ると,殆どの素数はi(p)<√
p−2を満たしそうに感じられる.
またここで,p| Bj となるのは1/pの確率であると仮定してみる.するとi(p) = k と なる確率は
p−3 k Ck
( 1− 1
p
)p−23−k( 1 p
)k
となるから,p → ∞とすれば 1 2k
e−1/2
k! である.よって素数pがi(p) > √
p−2を満た
す確率は ∑
k>√p−2
1 2k
e−1/2 k!
となり,これは 1 2N
1
N! (N := [√p]−1)で抑えられる.Fermatの最終定理の1st caseは p <6×109 では成り立つことが知られているから,Fermatの最終定理の 1st caseが成 り立たない素数pの割合は高々
∑
p>6×109
1 2N
1 N!
程度だと考えることができて,これは10−300000 以下である.
参考文献
[1] L. C. Washington, Introduction to Cyclotomic Fields, GTM 83, Springer, 1997 [2] J. Buhler, R. Crandall, R. Ernvall, T. Mets¨ankyl¨a, M. A. Shokrollahi, Irreg-
ular Primes and Cyclotomic Invariants to 12 Million, J. Symbolic Computa- tion (2001) 31, 89–96, http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/
S0747717199910118