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(1)

Ⅸ 神奈川大学学校 ボ ランテ ィアの展 開 ( 横浜 キ ャンパス)

1

学校 ボ ラ ンテ ィア派遣 の現状 と課題 (1)教育の中に取 り入 れ られたボ ランテ

ィア とその活動

(D時代背景 とボランテ ィア教育

近年 わが国においては,阪神 ・淡路大震災等 を契機 としてボランティアに対す る国民の関心 が高 ま り,ボランティア活動が活発化 し,その 形態 も,時間に余裕のある者が福祉活動 をす る といった ものばか りではな く,働 き盛 りの勤労 者 も参加 して,環境や国際協力,文化等幅広い 分野で行われるもの となっている

こうした状況 を踏 まえ,教育の分野 において もボランティア活動の振興への対応 を求める声 が強 まってお り,学校 におけるボランティア教 育 については,高齢化社会への対応や,生涯学 習の基礎整備の視点か らも,その必要性が指摘 されている

また,心豊かなた くま しく生 きる人間の育成 を図るとい う観点か らボランティア教育 を充実 してい こうとい う方向性 も生 まれている。

②小 ・中 ・高等学校におけるボランティア教育 と大学生のボランテ ィア活動

文部科学省 は 「福祉 の重要性や,高齢者,障 害者 に対す る認識や理解 を深めること,他の人 への思いや り,公共のために尽 くす心 を養 うこ と,体験 を通 じて勤労の尊 さ,社会 に奉仕す る

入 江 直 子 岩 揮 啓 子 古屋喜美代

精神 を養 うこと」 な どをあげ,2002年度 の学 習指導要領 に明示 した。 これによ り,ボランテ ィア活動 は小学校か ら高校 まで必修 となってい る。最近では高校入試 において も,ボランティ ア活動の成果 を評価す る傾向が強 まっている。

この延長上 にある大学 も,インター ンシ ップや 教員人材育成 を目的 とす る学校 ボランティアの 導入 に取 り組 んでいる。

(2)他都市 の先 行事例 と神奈川大学 の学 校ボランテ ィアの現状

①教員人材育成 を目指 す大阪府の取 り組み 大 阪府 は,平成15年度か ら3年計画で府教 委事業 として大学生の小 ・中学校 でのボランテ ィア活動 による児童生徒 の学力向上並 びに教員 の大量採用時代 に備 える教員人材の育成 を目的 に,学生のボランティア活動 を積極 的に推進 し た。

17年度の実績 として,協力大学87校,参加 学生1176人,受 け入れ校514校が報告 された。

この事業 は,18年度か ら各市 町村 委員会 に移 行 し,継続 した事業 を展 開 している

(ヨインターンシップを導入 している大学事例 教育実習 に出る前 に,何 らかの形で学校現場 に関わ りを持 つ こ とに努 めて,1・2年 次の学 生 はス クールボ ラ ンテ ィア,3・4年次 はイ ン ター ンシ ップと内容 を区別 して学校 に関わって いる

(2)

(3)教職 を履修 す る学生 の学校 ボ ラ ンテ ィアの意義 と課題

①学校ボランティアの意義 a 教育職への 目覚め

・学校現場 を知 ることによ り,教育実習‑の イメージ形成

・教員の活動 に接触 し,教育者 としての心構 えの認識向上

・児童生徒の実態 を知 ることに伴 う声がけ等, 対応の実践体験

b 豊かな人間性 の育成

・成人 (一人の大人) としての 自主的な活動 をとお し,社会性や責任感の滴養

・多 くの人々との関わ りによる,協調性の向 上

(∋実施 するに当たっての課題

a 教職課程への位置づけの明確化

現在,小 ・中学校 の教員免許状授与 に係 る

「教育職員免許法の特例」 において,障害者, 高齢者等 に対す る介護 ・介助 ・交流等の体験 が定め られ,一定の要件の下 に単位 として認 定 される。 しか しなが ら,学校 ボランテ ィア やインター ンシップには明確 な位置づけがな いので,学生の意欲や積極性の振作,大学の 組織的な取組等 に課題 を残 している。

b 安全の確保や事故等の防止

学生が活動中に他人 に怪我等 をさせ た場合 や, 自分が怪我 をした場合 に備 えた 「賠償責 任保 険制度

「傷害保険制度」 と,個 人では

な く組織 として条件整備す る必要がある

C 受け入れ校 の確保や体制づ くりの構築 活動 を積極 的に推進す るには,活動 を理解 し協力 して くれる学校 の確保が必要である

そのためには,大阪府の事例の ように本学 に あって も活動の推進やその体制の構築等 につ いて教育委員会 (県 ・市等) との連携事業 と

しての取組が求め られる。

(岩 滞 啓 子)

2

神奈川 大学 にお ける学校 ボ ラ ンテ ィアの取 り組 み

(1)学校ボ ランテ ィアの始 まり

神奈川大学教職課程が教職 を希望す る学生の 学校 ボランティア活動 に取 り組み始めたのは, 2004年度か らであ る とい える。 それ まで は, 特別活動論や道徳教育論の非常勤講師 をお願い

していた元横浜市立 中学校長の高橋耕文民か ら, 小 中学校 の宿泊体験学習のボランティア等 を授 業で紹介 され,単発で関わっていた学生 はいた。

そ して2003年度 には,工学部 4年生 で横 浜市 の中学の数学教員 を希望す る学生が,学校 ボラ ンテ ィアを紹介 してほ しい と申 し出て,松本中 学校 の個別支援学級 のボランテ ィアに週1‑ 2

日通い続 けた。彼 は,教員採用試験 に合格 し, 横浜市立の中学校の教員 になることがで きた。

この ように,学校 ボランティアに対す る学校 か らの要望 と学生の関心が広が りつつあったが, 2004年度 には,す で に神奈川大学 を退職 され ていた高橋耕文氏が,浅間台小学校 に赴任 され た両角英之校長か らの学生 ボランティアに対す る要望 を伝 えに来学 され,希望す る学生 を探す ことか ら取 り組みが始 まったのである。3人ほ どの学生がボランテ ィアを希望 し,週1‑ 2日 通 うことになった。

学生たちは,朝の始業前か ら学校 に行 って, 教師の手伝 いを した り,子 どもたちと遊んだ り, 落 ち着かない子 どもの対応 を した り, と慣れな い ことを一 日やって,初 めはかな り疲れるよう である。 しか し,慣 れて くると,子 どもの よう す などをうれ しそ うに報告 して くれる。そこで, 学校 での経験 を記録 してお くように促 した。浅 間台小学校 では,金曜 日に教 師たちが校 内で授 業 を見合 って,放課後 に授業研究会が行 われて いるようで,金曜 日にボランテ ィアに行 く学生 は,授業研究会 にも参加 させて もらっていた。

校 長が学生 ボランテ ィアを要望 したのは

,

「学 校 を開 く」 ことに向けて とい うことで,継続的

‑ 112‑

(3)

に通 っている学生 ボランテ ィアは,その うちス タッフの一人 として位置づけていただいていた ようであ り,AT (アシス タン ト ・テ ィーチ ヤ I) と呼ばれていた。 したが って学生 にとって は,子 どもとの関わ りを学べ るとて も貴重 な機 会 となった。

浅間台小学校 には,2004年度か ら始 まって, その後 も毎年,3‑4人の学生が週1‑ 2日, 年 間継続 してボランティアに通 っている。そ し て毎年,その中の1‑ 2人が小学校 の教員採用 試験 に合格 している。神奈川大学 には小学校数 貞養成課程 はないので,小学校の教員免許は, 卒業 してか ら他大学の通信課程等で取得する者 が多いが,小学校 のボランティアには,そ うし た卒業生が多 く関わるようになった。

2005年度 には,浅間台小学校か ら紹介 されて, 寺尾小 学校 に も3人 の学生 が AT と して ボ ラ

ンティアに行 くようになった。その中の1人は, 4月・5月 に子 どもたち と関わった経験が,6 月の教育実習 と7月の採用試験の力 になった と 言 っている。彼 は,現役で出身県の中学校社会 科 の教員採用試験 に合格 し,卒業 までボランテ

ィア活動 を続けて学 んでいた。寺尾小学校 では, 特別支援教育の研究指定校 として,特別支援教 育 を教 師の連携 によって取 り組 んでいた ようで,

ボランティアに行 った学生は,その点で非常 に 勉 強になった とい う。

2006年度 になる と,学生が ボラ ンテ ィアに 行 く小学校が もう1校増 え, また中学校 も増 え た。浅間台小学校 ・寺尾小学校 に加 えて,寺尾 小学校 か ら紹介 されて,大 口台小学校 に も 1名 行 くようになった。中学校 は,近隣の栗田谷 中 学校,そ して松本中学校 に行 くようになった。

中学校では,英語や数学 など教科 の学習 との関 わ りで, まず授業 を参観 した り,それか ら授業 の中で個別に支援が必要 な生徒 に関わった りす ることが多い ようである。 また後期 になって, 高橋耕文民の紹介で戸塚中学校か ら要望があ り,

2人の学生が 「保健室登校」の生徒 たちの学習 支援 に関わることになった。

神奈川大学学校 ボランテ ィアの展開 (横浜キャンパス)

以上が,学校 ボランティア活動の始 ま りか ら 2006年度 までの活動の概略であるが, この間, 教 職課程 と して 「学校 ボ ラ ンテ ィア通信 」 を 2005年度 にNo.1(2006.3.7),2006年度 にNo.2

(2006.7.ll),No.3(2006.9.26),No.4(2007.2.24) と発行 した。教職課程指導室でアルバ イ トを し なが ら学校 ボランテ ィアに行 っている卒業生が 中心 になって編集 しているが,学校 ボランティ ア活動の記録 として,そ して,ボランティア活 動 を している学生 には自分の活動 をふ り返 る機 会 になるように作成 した。

(2)2007年度の取 り組 み

2006年度 まで は,学校 か ら要望が あ った場 合 に学生 に情報 を提供 し,関心がある学生がボ ランティア活動 を経験す るとい う動 きで, こう した動 きに関わっているの も一部の教員 とい う 状況であった。 しか し,ボランテ ィア活動 に関 わる学生の成長 に接 した教員たちは,学生が子 どもとの関わ り等の経験 を し,そこか ら学ぶ こ とで, よ り実践的な力 を獲得で きる機会 として, 学校 ボ ラ ンテ ィアの意義 を実感 し,2007年度 か ら教職課程 として, よ り積極 的に取 り組 んで い くこととした。

まず,学生 にとって長 くて貴重 な春休み (2 月 ・3月) を有効 に使 うことがで きるように, 1月中に神奈川 区内の中学校 数枚 に 「ご相談 と お願い」 (ボランテ ィアの 「御用聞 き

」 )

に複数 の教員で回って情報収集 を し,1月末 に希望す る学生 に説 明会 を した。2006年度 に学校 ボ ラ ンテ ィアに行 っていた学生 も参加 して 自分の経 験や学校か らの要望 を話 し,教員が集めた新 た な情報 も説明 して, 自分の都合や希望が合 った 学生数人が,先輩が行 っていた学校や新 たなボ

ランティア先 にきっそ く行 くことになった。

新年度 (2007年度) になって,改 めて説 明 会 を開いた。30名 以上 の学生が参加 し,学校

ボランティアに対す る関心の広が りを感 じたが, 平 日の半 日くらい を継続的にボランテ ィアに行

くために確保す るとい う時間的な都合がつかな

(4)

い学生が多 く,結局,その うち数人が,新 たに ボ ラ ンテ ィア活動 を始 めた。 なかで も

,

「保健 室登校」の生徒 に関わる活動 に対 す る関心 は高 く,前年度か ら継続 してい る2名 を含 めて,5 名の学生が戸壕 中学校 に通 った。 また戸塚 中学 校 で は,年 度 途 中か ら, 地域 の人 が運 営 す る

「土曜学校」 (中学生の補習)の取 り組みが始 ま り,そのボランテ ィアに も関わるようになった。

こ う して,2007年 度 には,前年 度 か ら続 け ている学生 と新 たに始 めた学生 を合 わせ て,約 20名 の学生 が,継 続 的 な学校 ボ ラ ンテ ィア に 関わった。そ こで,学校 での貴重 な経験 をふ り 返 って,お互いに報告 しあい,そ こか ら学ぶ機 会 を何 とか持 ちたい と思い,1ケ月 に 1回集 ま ることを目標 に 「学校 ボランテ ィア報告会」 を 計画 した。具体 的 には,学生 と教職課程 の教員 が共通 に集 まれ る可能性があ る 日程 として,金 曜 日6限 を設定 し,前期 は5月25日,6月29

日,7月20日に行 い,後期 は10月5日,12月 21日,1月30日に行 った。 この うち,7月20

日は,学生 の ボ ラ ンテ ィア先 の校 長等教 員 の 方 々に参加 いただ き,学生のボランテ ィア体験 のふ り返 りを通 して,学校 と大学が情報交流 を め ざす とい う 「学校 ボランテ ィア情報交流会

と して行 った。 また,1月30日は,2008年度 に活動 をつ ないでい くために,後輩等‑ の説明 会 もかねて行 った。

こうした報告会 を通 しての学習 をつ な ぎ, ま た活動 をふ り返 っての記録 としての 「学校 ボラ ン テ ィ ア 通 信」は,No.5(2007.6.20),No.6 (2007.6.20),No.7(2008.1.29)を発行 した。 や は り,教職課程指導室で アルバ イ トを しなが ら 学校 ボランティアに行 ってい る卒業生が, 自分

も書 きなが ら編集 している,それぞれ貴重 なふ り返 りの機会 になっているようである

こ う して取 り組 んだ2007年度 の学校 ボ ラ ン ティアの受入校 と参加学生数 は,以下の とお り である

(小学校)

横浜市立浅 間台小学校 (西 区) 6名 横浜市立寺尾小学校 (鶴見 区) 2名 横浜市立下末吉小学校 (鶴見 区) 1名 横浜市立大 口台小学校 (神奈川 区)‑ 1名 (中学校)

横浜市立戸坂 中学校 (戸塚 区) 5名 横 浜市立松本 中学校 (神奈川 区) 5名 横浜市立栗 田谷 中学校 (神奈川 区)‑ 2名

以上 が,2007年度 の学校 ボ ラ ンテ ィアの取 り組みの概要である。学生が ボランテ ィア活動 を通 して学ぶ ことがで きるためには,活動 の中 で経験 した ことをふ り返 ることが重要 であるが, 2007年度 に取 り組 んでみて,その機会 (時間) をつ くる こ とが か な り難 しか った。 そ こで, 2008年度 には授 業 と して位 置づ け,学生 も教 員 もそれ を日常 的な取 り組 み として臨んでいか れる ように したい と考 えてい る

( 3)2008

年度の取 り組 み

2008年度 は,2007年度 までの蓄積 とその反 省 に立 って,以下 の点 をポイ ン トに取 り組 んだ。

まず,学校 ボ ラ ンテ ィア をめ ぐる取 り組 み を

「授業」 として位 置づ けた。授業科 目は,「総合 演習」 とし, Ⅰ (前期) とⅡ (後期) を金曜 日 6限に開講 し,教職課程 の教員5名 (新任教員 1名含 む)が 関わった。正規 に登録 した学生 は 数名であったが,すでに 「総合演習」履修済み の学生 も参加 した。学生 たちは,おのおの年 間 を通 して週 に1日,小学校 や 中学校 で活動 して いるが,月 1回金曜 日6限に,教員 と学生全員 が参加す るかたちで,それぞれが学校 で経験 し てい ることを報告 し合 い,学 び合 うこととした。

そ して,その他 に も,同 じ学校 に行 ってい る者 な どのグループで集 まって,情報 を共有 した り, 困った ことについて共 に考 えた りす る取 り組み をす るように呼 びか けた。

全 員 が集 まって報 告 し合 う授 業 は,(∋4月 11日 (オ リエ ンテー シ ョン),(95月7日,(杏

‑‑‑111‑一

(5)

5月23日,④6月25日,6)6月27日,⑥7 月16日 (活動先 の先生 たちの参加 を得 ての情 報 交 流 会 ),⑦10月10日,⑧ 11月7日,⑨ 12月5日,⑲ 1月14日 (来年度 に向けて学校 ボランテ ィアを希望す る学生 に対 してボランテ ィア活 動 の経験 を話 す説 明会 ),⑪1月30日 (春季休業 中及 び来年度の活動 に関す る相談会) と,年 間11回持つ こ とが で きた。 ボ ラ ンテ ィ アに行 っている学生全員が正規 に履修 してい る わけではない こともあ って,参加人数 はその時 に よって違 ったが,少 ない時 は,教員 も含 めて 全員 で経験 を聴 き合 うことを した。多 い時は, 簡単 な報告 を した後,小学校 グループ と中学校 グループ (戸塚 中グループ 十松本 中を中心 とす るその他 の中学校 グループ) とい うように,2

‑ 3のグループに分かれて話 し合いを した。

そ こで, よ り具体 的なことを話題 に してふ り 返 ってみ ると,特 に同 じ学校 に行 っている場合

には,同 じ悩み を持 っていた り,困った りして いることが分か り,問題 を共有 して,学校 で誰 に どう相談 してい くことがで きるか を考 えてみ ようとす る ようになった。た とえば,1校 に5 人行 っていて も,1日に行 ってい るのは 1人 と い うことにな り,先生 たちは忙 しそ うに してい るので,何 か聞 くこともで きないのである。 し か し,せ っか く経験 をさせ ていただいてい るの であるか ら,その経験か ら問題 を発見 し,その 問題 を考 えることによって学校 を理解 し, よ り

よい教育活動 をめ ざ していかれる力 の形成 につ なが るようなボランテ ィア活動 に しなければな らない と考 え,前期 の終 りに開催 した 「情報交 流会」の折 に活動先 の先生 に相談す る機会 を持 つ な どの取 り組み を した。

以上の ようなことか ら,経験 をふ り返 ること によって経験す る場での 自分のあ り方 を学ぶ こ とがで きる とい う点で,ボランテ ィア活動のふ り返 りのための場 としての授業 の意味 を再確 認 し,2009年度 に向 けて さ らに検討 をすすめた。

そ して,学生の経験 をよ り意味のある ものに し てい くために,活動先 の先生 との連携 の必要性

神奈川大学学校 ボランテ ィアの展 開 (横浜 キャンパス)

を教員が認識す るようにな り,学生 をボラ ンテ ィア として派遣す る際 に,活動先 の学校 とこの 点 についての相談 を してい くことの重要性 を考 えるようになった。

こうして,学生が学校現場 を経験 す ることを 通 して実践的な力 をつ けることがで きる活動 と して,継続的なボランテ ィア活動 とそのふ り返 りの場 としての授業 とい う取 り組 み を中心 に, 2008年度 は 「学校 ボ ラ ンテ ィア」 の取 り組 み をすす めたが, もう一つ,新 たな取 り組 み とし て, メー リング ・リス ト (ML) の活用 が あ る。

これは,新任 の教員が提案 し,立 ち上 げ,運営 してい る ものであ るが,情報の伝達 に威力 を発 揮 して い る。一 方, このMLの立 ち上 げ にあ たっては,学校 に行 った らその 日の うちに簡単 な記録や感想 を書 いて投稿す ることで,学生 の 間で情報交流 や学 び合 いがで きるのではないか, とい う願 いがあ ったが,その点 はい ま一つ展 開 しなか った。情 報 交 流 したい とい う 「仲 間意 識」 をつ くり出せ ていない ことが背景 にある と 思われ るが,相互 に関係す ることなので,小 グ ル ー プのMLをつ くるな ど, い ろい ろ工 夫 し なが らいい展 開にな らないか と,教員 の間で検 討 してい る

以上 の よ うに

,

「授 業 」 と

「 ML

」 を軸 に,

「学校 ボ ラ ンテ ィア」 の取 り組 み をすす め,約 30名の学生が継続 的に週 に1‑ 2回,小学校 ・ 中学校 に行 き, さ ま ざ まな経 験 を した。2008 年度の受入校 と参加学生数及 びボランテ ィア活 動 の概要 は,以下の とお りであ る。

(小学校) (特別支援学級や普通学級 でのアシス タン ト ・テ ィーチ ヤー)

横浜市立浅 間台小学校 (西 区) 2名 横浜市立寺尾小学校 (鶴見 区) 2名 横浜市立下末書小学校 (鶴見 区) 2名 横浜市立大 口台小学校 (神奈川 区)‑ 3名 横浜市立西寺尾小学校 (神奈川 区)‑ 1名 横浜市立太尾小学校 (港北 区) 1名

(6)

(中学校 )

横浜市立戸塚 中学校 (戸坂 区) 5名 (月〜金 は特別支援 な どの補助,土曜 は土曜 学校 「実 り隊」で補習担当)

横浜市立松本 中学校 (神奈川 区) 12名 (アシス タン ト ・テ ィーチ ヤー,部活動 の指 導補助 な ど)

横浜市立栗 田谷 中学校 (神奈川 区)‑ 3名 (アシス タン ト ・テ ィーチ ヤー,特別支援学 級 の補助 な ど)

横浜市立老松 中学校 (西 区)

(国際教室 の外 国籍生徒 の放課後サ ポー トな ど)

なお,学生が 自らの活動 をふ り返 った記録 と しての 「学校 ボランテ ィア通信」 は,夏休 み前 の 「情報交流会」 に向けて,2008年 7月 16日 にNo.8 (小 学校 特集),No.9 (戸塚 中特集),No, 10 (松 本 中 ・栗 田谷 中 ・老松 中編),年度末 に は,No.11を発行 した。

(4)2009年度 の取 り組 み

以上 が,2008年度 「学校 ボ ラ ンテ ィア」 の 教職課程 としての取 り組みの概要であるが,学 生が教員 になってい くにあたって必要 とされ る

「実践力」 の形成 に,学校 での経験 とそのふ り 返 りは必須 であ る と位置づ け,2009年度 には,

さらに月1回の授業 とその一環 としての 「情報 交流会」 (活動先 の先生 たちに参加 していただ いて7月に開催) も充実 させ て,各学生が継続 的 な学校 ボ ラ ンテ ィア活 動 を展 開 した。2009 年度の受入校 と参加学生数及 びボランテ ィア活 動 の概要 は,以下の とお りである

・小学校 (特別支援学級 や普通学級 でのアシス タン ト ・テ ィーチ ヤー)

横浜市立浅間台小学校 (西 区) 2名 横浜市立大 口台小学校 (神奈川 区)‑ 4名 横浜市立太尾小学校 (港北 区) 2名 横浜市立西寺尾小学校 (神奈川 区)‑ 1名

横 浜市立 白幡小学校 (神奈川区) 10名

(

「土曜塾」)

・中学校

横 浜市立松 本 中学校 (神奈川 区) 7名 (アシス タ ン ト ・テ ィーチ ヤー,部活動 の指 導補助 な ど)

横 浜市立栗 田谷 中学校 (神奈川 区)‑ 3名 (アシス タン ト ・テ ィーチ ヤー,特別支援学 級 ・外 国籍生徒 の補助)

横浜市立六角橋 中学校 (神奈川 区)‑ 2名 (「国際教室」 の補助)

横浜市立神奈川 中学校 (神奈川 区)‑ 3名 (外 国籍生徒 の補助,部活動の指導補助) 横 浜市立戸塚 中学校 (戸塚 区) 3名

(特別支援 な どの補助,土曜学校 「実 り隊」) 横 浜市立老松 中学校 (西 区)

(特別支援学級 の補助)

「つ るみ学習支援教室

(外 国籍児童 ・生徒 の学習支援)

また

,

「学校 ボ ラ ンテ ィア通信 」 は,7月の

「情報交流会」 に向けて,No,12 (戸塚 中 ・六角 橋 中編),No.13 (松 本 中特 別号),No.14 (大 口 台小 ・太尾小 ・白幡小バ ージ ョン) を発行 した。

なお,春休 み及 び来年度のボランテ ィア活動 を新規の学生 に も呼 びかけるため,後期定期試 験終了時 に 「学校 ボランテ ィア相談会」 を計画 してい るが,今年度 は,学生が 自主的に計画 を 進め るようになって きてい る。ボランテ ィア活 動 は, 自主性 ・積極性 を生み出す ことに大 きな 意義があるので,学生が どの ように成長 してい

くか期待 され る。

(入 江 直 子)

‑ 116‑

(7)

3

学校 ボ ラ ンテ ィア学習会 を通 して の学 び

〜主 と して小学校 ボ ラ ンテ ィア学 習会 の 分析 か ら〜

[問題 と目的]

各地で,大学 と地域の学校 とが連携 した,敬 育現場への学生のボランティア派遣が実施 され て きている。神奈川大学 において も, これまで に数年 間の近隣小 中学校‑の派遣の試みを行 っ て きた。そのなかで, この ような体験 を通 して 学生が何 をどの ように学び,成長 したか,ある いは何 につ まず きやすいか といった点 を明 らか にす ることが課題 となっている。本学ではここ 三年間 (2007,2008,2009)で派遣す る学校数 が増 え,教職課程教員全員が関わ り,報告 ・学 習会 を定期的に実施す るようになった。

本稿 では2007年度 に焦点 をあて,学生 同士 の学習会一年間の討論分析 をおこなう。 これを 通 してボランティアに関わる学生の学 びが どの ように成立 したかを明 らかに し, より深い学 び を支 えるための課題 を見出す ことを巨用勺とす る。

学生がボランティア として小学校 に参加す る場 令,学習,行動面での個別の支援 を必要 とす る 子 どもたちの援助 にかかわることが多い。 この 時学生が直面す る問題 には大 まかに見て二点あ る。第一 に学級 における 「個 と集 団の関係」, 第二 に 「子 どもの姿 をどう理解す るか」である。

学生 は子 ども理解や児童生徒指導の基本 は学 ん でいて も,現実の子 どもの姿 を目の前 に した児 童生徒理解 ・指導 は初 めての経験である。現実 か ら生 まれる問題意識 をどう発展 させ,課題 を 自覚 し, 自分 自身の関わ りの質を高 めてい くか が,学生の成長のカギ となる。学生が抱 く問題 意識 について,同様の活動者が相互の見方 を出 し合い相互交渉す ることによって,学生の学 び を深めることが可能 となるであろう。 さらに第 三 として,学生の子 ども理解の深 ま りを支 える 要因を総括的に取 り出 して検討す る。

Ⅸ 神奈川大学学校 ボランテ ィアの展 開 (横浜キ ャンパス)

[方法]

1 参加学生数

2007年度 には小 中学校 にボ ラ ンテ ィア と し て参加 した本学学生 を対象 に年6回,前期3回 (5,6,7月),後期3回 (10,12,1月) の学 習会 を開催 した。第1,2回は小学校 参加者 と 中学校参加者 に別れてグループ学習 を行い,そ の うちの筆者 らが参加 した小学校 グループを分 析対象 とした。第3回か ら6回は小 中学校合同 で学習会 を実施 してお り, これ を対象 とした。

分析対象 とした学習会 の参加学生数は各 回6人, 5人,14人,13人 6人 19人 (最 終 回 は新 年度か らボランテ ィアを希望す る者 を含む)で ある。昨年か ら継続 してボランテ ィアを行 う卒 業生1名 (体験2年 目)は,全 回を通 して参加 した。学習会の うち 1回は,小学校校長1名 も 加 わった学習会であった。

2 学習会形態

学習会の形態は,大学教員が フアシリテ一 夕

‑ として参加 し,参加学生のボランティア状況 を出 し合いなが ら,課題 を拾い上 げ,互いに意 見交換 を図る ものであった。第二著者が司会進 行 を担当 し,第一著者がメモ をとり,毎 回の学 習会記録 を作成 した。

3 分析の視点

学習会記録 をもとに,学生が直面す る問題 と して 「個 と集 団の関係

「子 どもの姿 をどう理 解す るか」の二点 を,具体事例 を引用 しなが ら 検討す る

[学習会 の分析 と考察]

1 学習会の討論の構造

学習会 の構 造 は図Aに示す ように,一人の 学生 か ら見 て,対 等 なボ ラ ンテ ィア学生仲 間 (参加学校や対象児童生徒 は異 なる),経験ある 先輩学生 (含 む卒業生) とい う関係性 の支 え (横 の関係 ・斜 めの関係) をもつ。大学教貞 は,

(8)

学生相互の結 びつ きを生 む きっかけ作 りを行 い それぞれの悩みや疑問の交流, ときには課題解 決 に向けて後押 しを してい くこともある。 しか しあ くまで フアシ リテ一 夕‑ としての役割 を担 う。学生 に とって,同等 あるいは 自分 よ り多少 の経験 を積 んだ者 の存在が,学 びあいの核 に存 在す る

2 学生の問題意識 と討論の展開

図Bに示 す ように,学習会 での最初 の問題 提起 は,学生が現在直面す る悩みか ら 「どうす れば よいか」 とい う対処法 を求め,探 る もので あることが多い。 しか し,討論 の進行 ,会 を重 ねる過程 で,徐 々に学生 の 目は子 ども理解 その

ものに向か うようになる

図B 討論 の展 開

2‑1個 と集団の関係 について

ボランテ ィア として小学校 のクラス に参加す る学生 は,個別の子 どもの支援 に関わ りなが ら 他児 の甘 えをどう受 け止め対応 してい くべ きか に課題 を感 じることが多い。学生 の こうした問 題意識が子 ども理解 の深 ま り,学級経営 の力量

形成 につ なが るためには,学生 と学級担任教諭 との相互交流が重要 な役割 を果た している

学習会 において,学生 は各 自が体験 した課題 場面 を描写 しなが ら, 自らの関係作 りの悩み と 対応 の試行 を省 みてい く。 さらに,担任教諭が どの ような介入 的対応 を したか,あるいはそ う した状況 を生み出さないために どの ような学級 経営 を しているか に思い当たってい く。具体 的

な事例 を挙 げてみ よう

(1)学生 ボ ランテ ィア としての 自分 の存在が, 集団の落 ち着 きな さを助長す ることの悩み 卒業2年 目のAさん (男 性 ) は小 学校 高学 年 クラス に参加 してす ぐにおか しなあだ名 をつ け られた。親愛 の印 として受 け流 してい るうち に,‑子 どもたちの方 はふ ざけをエスカ レー トさ せ て しまい,学級 の収拾がつか ない状況が生 じ て きた。子 どもの甘 えの受容 と教 師一生徒 関係 の秩序作 りとの間で, どう関係性 を修正 してい けるか,悩み なが らの子 どもとのかかわ りが続 いた とい う。そんななかで,担任教諭 はホーム ルーム等 の時間 を使 いなが ら,子 どもたちの何 気 ない言葉が相手の気持 ち を傷つ ける とい うこ とをテーマ に取 り上 げてい った。「大 人 に対 す る甘 え」の事実 を切 り口に,子 どもが他者 の視 点 に立つ ことを学ぶ機会 としていったのであ る

子 どもたち との関係 を振 り返 りなが ら,最初 の 向 き合 い方のあい まい さが,関係 を築 く上での 教室 ルール を提示 で きず,ルールが ないなかで の甘 えの助長,混乱 を引 き起 こ した ことに気 づ いてい く

Aさんの よ うな先輩 ボ ラ ンテ ィアの存在 に 触発 されなが ら,新参 ボランテ ィアの迷い も開 示 されてい く。徐 々に学級 に慣 れて くる中で, 特 に高学年 の子 どもたちの口が悪 くなって きて いること,今後の関係作 りが課題である との 自 覚が語 られ る。Bさん (女性) は落 ち着 きのな い子 をサポー トしているが,他児が甘 えて くる ことに対 して, どう対応 していけば よいか悩 む。

特 に校外遠足 の時 は対象児 に付 きっ切 りなので

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他児 との関わ り方が難 しい。 こうした悩みに対 して,先輩 ボ ラ ンテ ィアAさんの 目か ら見 た 子 ども理解が伝 えられる。普段の学校 の中では, 必ず しも対象児本人が 「大人のつ きっきり」 を 望 まないこともある。そ ういう時は対象児 に対 して距離 を置 きなが ら,む しろ他児 とも関わ り なが ら対象児 を見守 ってい くことが必要 なので はないか。経験 を通 して,子 ども側か らの視点 が語 られてい く。

(2)個別 に対応 していると全体の収拾がつかな いことの悩み

子 どもたち全般に甘 えが強 く,落 ち着かない 傾向のある低学年 クラスでの対応上の迷いが話 題 とされる。 トラブルを調整するときなど,チ どもたちが様 々に言 うこと (それぞれ違 ってい た りす る) に振 り回され,判断で きなかった り す る。個別 に指導 していると他の子 どもたちが

「ぼ くもや った」 とわ ざと甘 えに きて収拾つか な くなることもある。全体 と個別の指導で迷 う ことが多い。「叱 る」 とい った対応 では,そ こ に二者 間の信頼関係が不可欠で, まだ学生 ボラ ンテ ィアでは不十分 と感 じる。 この学級では, そんな時はむ しろ個別対応 を担任教師,全体 を ボランティアが見 る, とスイッチ させてい くこ とに しているとい う。担任教師が学生ボランテ ィアの関わ り方 を支援 して くれているのだ。

この ような状況 に対 して,Cさん (男性)か らボランティアとしてのクラスへの入 り方 と学 級運営 ・教室 ルールの存在が指摘 される。ボラ ンティアに とって,週 1回特定 クラスに入 る形 だ と,継続性があ り子 どもたち との関係 ほ とり やすい。当然 なが ら子 ども一人ひとりの個性が 把握で きると,集団全体への対応 もしやす くな る。一人に対応 していると,他児が関係 を求め て騒が しくなって しまうとい う点 については, すでに達成 した子 どもが小先生 になって,他の 子 どもに教 える相互援助 を日常的に取 り込んで いるクラスでは,「大人の と りあい」の ような 雑然 さは生 じに くい と指摘す る。個人的問題 と

Ⅸ 神奈川大学学校 ボランテ ィアの展 開 (横 浜 キ ャンパ ス)

してではな く,学級経営全体の問題 として見て い く必要性‑ と,学生の視点は広がっていった。

(3)対症療法ではな く,子 ども理解‑

上記 の問題 は,小学校校長の参加時に校長‑

の問い として も学生か ら出された。学生 ボラン ティアが特定の子 に付 き添 うと,他児か ら「○

○ くんだけ, どうしていいの ?」 といった疑問 がでて きて しまう。その子 どもに寄 り添 う, と い うが,それが周 囲の子 どもの不満 につ なが る ことがある。 これは どう対応 していけばよいの だろうか。

校長か らは,子 どもたちの不満の裏 にある真 の思いに気づけるか とい うことが語 られた。周 囲の子が 「ず るい」 と感 じて しまうのは,その 子 どもたち自身が満た されていないか らであろ う。大人が信 じられると思 えば,子 どもは育つ ものである。真撃 に自分 に向 き合 って くれる大 人がいることで,子 どもは救われる。表面的に は感謝 してこな くとも,大人 になった ときに思 い起 こされ る大人

,

「あの時あの先生 にす くわ れたなあ」 といった思いが人 としての成長に大 きな意味 をもつ。同様 に,短時間のかかわ りの 学生 ボランティア も子 どもにとってはそ うした 存在 とな りうるのである。

こうした現場サ イ ドか らの指摘 は, ともす る とその場での対症療法 を求めがちな学生 に対 し て,子 どもの思い をきちんと理解 し受け止め ら れる大人であることの重要性‑の気づ さを促す

ことになる。「支援対象 の子 どもと,それ以外 の子 ども」 とい う見方ではな く,周 囲の子 ども たち一人ひ とりが十分受け止め られていると感 じているか どうか を考 えてみるとい う,異 なる 次元での問題の捉 え直 しである。学生が は じめ に立 っている次元 と異 なる次元か らの捉 え直 し がで きると,そ こか ら,た とえば周囲の子 ども たちが本当に満足す るような遊びをとお した集 団作 りや,受け止め られた と感 じられる生活 を 作 り出す ことが課題 として浮かび上が って くる

ことも多いのではなかろうか。

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学習会での最初の問題提起 は,現在直面す る 悩みか ら 「どうすればよいか」 を探 るものであ ることが多い。 しか し学生 は他校 での経験や 自 分 の経験 を出 し合 うなかで,対処法 を問題 にす るよりも,子 どもを見 る視点や学級 に存在す る 暗黙のルー)I,に気づいてい く。話 し合 いを通 し て, 目先 の問題か ら, よ り本質的な関係性 の理 解へ と学生の視点が進展 してい くといえる。

2‑2子 ども理解 について

学生 は,個別対応す る中で子 どもの姿 をどう 理解すべ きか, どう対応すればよいのか とい う 課題 にぶつかる。 こうした切実な課題 は学習会 で繰 り返 し話題 とされ,小学校校長が学習会 に 参加 した折 には,校長 に対す る質問 として出さ れた。「子 ども理解」 とい う切実 な問題 に対 し て,学生 ボランティアとして ともに考 える仲 間 を必要 とし,受け入れ側の学校 の意図を把捉 し たい とい う願いがあるのである。学生 自身,単 に悩 むだけでな く,その中か ら自分 な りの子 ど も理解 を深めている。その 自分の理解 のあ りよ うを仲間 と交流す ることを通 して,再確認,再 検討, さらには新 たな視点 を得 る機会 を必要 と

している

(1)全 く学習 に集中 しない子 どもに対 して, ど う対応す るか ?

学生 は自分が関わって きた子 どもの姿 を思い 起 こ しなが ら,語 りを通 して改めて子 ども理解 の整理 をしてい く。同時に自分の関わ り方の根 幹 にあるものを言語化 し, 自覚化 してい くこと になる。具体的には,次のような語 りがなされ てい く。

a)子 どもには,「自分 を見てほ しい,認 めて ほ しい」 とい う気持 ちがあるのだ と思 う。そ の気持 ちを一旦 は受け止め,それか ら 「今何 をすべ きか」 を伝 えてい くように している。

b)発達障害 をもつ子 どもの場合 など,勝手に や っている行動 はその子 どもの数少 ない得意 とす る行動であると捉 えたい。 もちろん子 ど

もの好 き勝手 にや らせ る とい うことではない。

「得意 なこと」 と肯定的 まなざ しを与 えた上 で,行動切 り替 えを促す ことが大切 だ と考 え る

C)子 どもをよく知 る先生 との対話 を深める努 力 を している。す ると先生の見方,方針がわ かって くる。先生方か ら,非常 にボランティ アを大事 に していただ き,そ うした機会 を作 っていただいている。

こうした対話 を通 して,学生 は自らの子 ども 理解 を確認 しなが ら, 自らの まなざしの特徴 を 自覚 してい く。長所発見的観点 に立 ち,子 ども の 「得意」 は他 の場面での適応 を促進す る素材 にな りうることに気づいてい く。 また, 自分 だ けの独 断視点ではな く,担任教 師の視点か ら学 びなが ら理解 を深める姿勢 を持つ必要性 にも気 づ く。ボランテ ィアメンバーのなかには,職員 室 に自分の椅子 とマイカ ップを用意 して,教 師 との交流 を積極 的に作 り出 してい く人 もいた。

そ うした例 を出 しあいなが ら,ボランティア自 ら対話の機会 をとらえてい く積極 的姿勢の意味 に気づいてい くこととなった。

(2)現場の教員視点か らの学び

上記の問題 「落ち着かない子,暴 れて しまう 子 に対 しては どう対応 した らよいか」 は,直接 小学校校長 に向けて も問題提起 された。校長の 子 ども理解 の視点が語 られることを通 して,学 生 ボランティアの語 りに も同様の子 ども理解の 視点が存在す ることがわかる。 こうした対話 に よる交流 を通 して,学生 は自らの子 ども理解 を 概念 レベルで整理で きるようになってい く。そ れは,ボランテ ィア として子 どもと向 き合 う上 での 自信 ともなってい くであろう。

a)校長の子 ども理解 :や ってはいけない こと を した とい うことは,当の子 どもはよ くわか っている。問題行動その ものを話題 にされて も,子 ども自身は受け入 れに くい ことが多い。

私 は,子 ども自身の 「や って しまった」 とい う思いに寄 り添いなが ら,子 どもの心の状態

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(11)

(荒 れて興奮 した‑) を別の方向‑ シフ トさ せ てやる手助けを したい と思っている。何 で もいい,そこに落 ちている石 ころ一つ を話題 に しなが ら,子 ども自身が気持ちをシフ トさ せ る (立ち直 らせ る)手助けを したい。

b)ある学生 ボランテ ィアは,いつ も外 に飛 び 出す子 どもを追いかけ,教室 に連れ戻す繰 り 返 しを していた。そんななか 「いったい これ で意味があるのか ?」 と疑問を感 じた。ある とき,す ぐに教室 に連れ戻すのではな く, し ば らく子 どもと一緒 に遊んでみた。すると,

‑遊び した後,子 どもが 自ら教室 に目を向け, 自ら教室 に戻 る姿 を見 ることになった。おそ らく,子 どもを受け入れて一緒 に遊ぶなかで, 受け入れ られた子 ども自身が 自分 の気持 ちを 立て直す余裕がで きたのではないだろうか。

もちろん,いつ もそれで うま くい く, とい う 簡単 なことではないけれ ども。

教員視点の語 りによって,学生 自らの子 ども 理解 を語 る言葉が与 え られ,漠 とした子 ども理 解 のあ りようが明確化 してい く。語 りを通 して, 経験 を概念化, 自覚化 してい くことがで きた と

き,学生 ボランティア自身の成長 につなが る。

3 子 ども理解の深 まりを支 えるもの

学生の語 りを通 して浮かび上が る 「子 ども理 解」 を支 える要因を整理す る。

(1)現場教員 との連携

学校 ボランティア活動 は,現場のニーズに即 して活動内容が多様 である。 このため,現場教 員が学生 ボランティアに対 して何 を求めている のか,関わる子 どもの状況や課題 をどう把握 し ているのか, といった基礎 的な情報が活動 には 不可欠である。改 まった話 し合いの機会 として だけではな く, 日常的なち ょっとした対話 の機 会が,学生 にとっては大 きな学 びの機会 となる。

しか しなが ら, この 日常的な現場教員 との対話 の機会 とい うものを作 り出す ことが,非常 に困 難 な場合が多い。

神奈川大学学校 ボランティアの展開 (横浜キャンパス)

(2)共 に考 える仲 間 (ピアサポー ト)

学生 は,個別対応す るなかで子 どもの姿 をど う理解すべ きか, どう対応すれば よいのか とい う課題 にぶつかる。 自分の理解のあ りようを仲 間 と交流することを通 して,再確認,再検討, さらには新たな視点 をうる機会 を必要 としてい る。特 に経験者の学生の存在 によって, ヴイゴ ツキーのい う最近接の発達領域 にいる者 との交 流,相手の認識 を揺 さぶるような質の高い相互 作用が生 じうると考 えられる

(3)つ ぎはぎではない子 ども支援

学生 ボランティアは参加で きる時間に限 りが あ り, ひとりの子 ども支援 に複数のボランティ アが関わるといったことは当然生 じる。 ところ がボランテ ィア同士の横 のつなが りが ない まま に関わっていることが多い。子 どもの視点に立 てば,つ ぎはぎのかかわ りが もた らす弊害は大 きい。学生 にとって も, 自分以外の他者 との関 係 の中で見 える子 どもの姿 を知 った上で関係 を 形成 したい とい う思いがある。一貫 しないかか わ りが,不要 な不安 を子 どもに もた らすのでは ないか とい う危倶 もある。

子 ども支援 に関与 しなが ら気づいた課題 を放 置せず, どう現実の手立てに結 び付 けてい くか。

ボランティア側か ら教育現場への積極 的な提案 や記録 の活用 といった具体的な工夫 を考 える必 要がある。学習会の存在 は,学生のこうした気 づ さを気づ きのままに終わ らせ るのではな く, 具体化 に向けての後押 しをす る役割 を果たす も ので もある

(4)記録 をとることの意味〜長期的展望へ 実践記録 をとることは,場面場面での気づ き を形 に し,その経過 と変容 を反省的に追いなが ら,徐 々に統合的に子 ども理解 を深める手立て となる

ある卒業生 は,ボランティア としての初期 に はすべてが新鮮 で,楽 しくわ くわ くす ることば か りであった こと,その うち,ただ子 どもをか

(12)

わいい と思 うだけではやっていけないことに気 づいてい くことが語 られた。初めて叱 らざるを えな くなった とき, どの程度, どこまで叱 るべ きなのか,迷いつつ,心の痛み を感 じつつ叱 っ た。後で叱った 自分 自身がひとり泣いて しまっ た とい う。 こうした体験 も,時がたつ ことでそ の意味が見 えて くる。子 ども‑の働 きかけの効 果は,その場限 りの ものではな く,長期展望で 捉 えることこそが必要 になって くる。す ると, 子 どもの姿 と自らの働 きかけの具体 的な姿 を記 録 に残 して振 り返 る意味が出て くる。逆 に, こ の話の ように,子 どもに実勢に向 き合 う初心の 大切 さを忘れない とい う意義 もあるだろう。

学生が, 自らの子 ども理解 を深める一歩 を進 めるためにも,ボランティアに行 きっぱな し, や りっぱな しとならないために も,実践の場 に 踏み とどま り,気づ きを記録 として形 に し,千 ども理解 を言語化,概念化す る努力が重要であ る。そのために も,記録 を活用 しつつ,仲 間 と の学習会 といった課題の相互交流 ・対話の場が, 学生の成長 を支 えることになる

4 学生ボランテ ィアの継続性 に関する課題 仲 間同士の学習会 を通 して,学生 はボランテ ィアへの取 り組み姿勢その もの を振 り返 り,学 ぶ とい う意義が生 じる。教育現場‑の関わ り方 は多様であ り,長期休みなどが一つの壁 となっ て学校か ら足が遠の くようなこともある。そ も そ も学生 ボランティアのニーズが広がるなか, ボランティアとしての学生 をどう支援す るか と い う視点は教育現場で も送 り出す大学側で も十 分 とはいえない現実がある。学習会のなかでは, 活動の仕方その ものの検討が話題 として取 り上 げ られた。

(1)なぜ継続で きたのか,中断 して しまうのか, について考 える

学校 により,学生 ボランティアをどう活用 し てい くか,ボランテ ィア受け入れ態勢の違いが 存在す る。そこで どうふるまいなが ら,溶け込

んでい くかに戸惑 う学生 は多い。学習会は,そ こで 自分の関わ り方のス タンス を明 らかに しな が ら, これか ら自分 自身が どう関わろうとして いるかを客観 的に捉 え直す機会 となった と考 え られる。具体的な関わ り方 をあげてみ よう。

a)ボランティアがやるべ きことが事前 に決 ま っているわけではない。学生 自ら動いていけ ば,学習支援 をは じめ様 々なことをや らせて くれる。ス ライ ド式授業時間割であるため, 固定的にある先生のあるクラスに入 るといっ た形 にはな らない。

b)早朝 と昼休み,そ して授業後 に先生 と一緒 に職員室へ戻 る時間に,で きるだけ先生 と話 をす る。授業で感 じた疑問や感想 をすか さず フィー ドバ ック して交流す る。三人の数学担 当教員 と交流 を深めた。 (aと同 じ学校) C)ある中学校では,活動内容 を先生か ら指示

されない こともあって,学生 は動 き方 に戸惑 い,継続で きない者が出やすい ようである。

反面bでの学生 の ように, 自 らの動 き方 を 意識的に構成 していければ,多様 な体験が し やす く,学 び も深 くなる

d)特別支援級では子 どもと一緒 に作業,交流 を中心 に体験す る。

e)学生 ボランテ ィア担当の先生の指示でいろ い ろなクラス に参加 (小学校)。主 として軽 度発達障害児のいる2年生 クラスが多い。取 り出 し授業で子 どもの学習支援 を行 う学校 も ある。

f)保健室登校 の子 どもたちの学習援助,話 し 相手 になる

g)土曜 日寺子屋 (補習授業)で,学習が遅れ 気 味 な子 どもたち10名程度の学習援助 をお こなう。学習援助 と同時に,子 どもたちの学 校生活に関す る思い を聞 くなどの機会 となっ ている

h)小 学校 英語 の導入 に関 し,指導 案作 り, ALT (外 国人補助教 員) との連携 のむず か しさなどを垣 間見ている。 ボランティア とし てその連携 に関わっている

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(13)

学生 ボランテ ィアが どの ような関わ り方 をと るかは,受け入れる学校側の姿勢 と学生 自身の 能動性 によって変化す る。関わ り方 についての 意見交換のなかで,学生 ボランティア継続 中の 卒業生か らは,次の ようなことが語 られた。

「一番大事 だ と思 うのが教員 との連携である。

た とえば,取 り出 し授業の中で子 どもの課題 を 把捉 し, 目標 を立て,学級の進行状況 を押 さえ なが ら‑ といった総合的な知見 を持つ努力 をす る必要があると思 う。そのためにも,待 ってい るのではな く,学生 ボランティア自ら先生 に話 を してい くことが必要である。連携がいかに大 事かを痛感 しつつ,教員が多忙であるとい う現 実 もあって,連携の難 しさもまた実感 している

また,複数の学生 ボランテ ィアが同 じ子 どもに 関わる場合 は,ボランティア間の情報交換 も不 可欠である。 しか し現実 にはボランティア同士 は顔 を合 わす ことがほとん どないので,連携 は 十分ではない

。 」

教育現場 において,担任教員 による学生 ボラ ンティアのコーデ ィネーシ ョンが求め られてい る。一方学生 ボランテ ィア としては,一人で悩 まず, 自ら周囲に聞いてい くことが状況 を変化 させてい くといえる。学生 自身が他者 に 「聞 く 力」 をもつ ことが,継続‑の もう一つの鍵 とな ると思われる。

(2)学生ボランテ ィアに対するサポー ト 学生 ボランティアを受け入れる側のあ り方 に ついて も,様 々な提起がなされるが,実際には それぞれの学校事情 に応 じた,柔軟 な対応 を試 行錯誤せ ざるをえない。高野 (2006)は,① ボ ランテ ィアの最初の学校参加 をスムーズに し, その役割 を周知す ること,(参ボランティアの居 場所作 り,(事担任教員 と話す時間の確保,④事 前研修,事例検討, まとめの機会,G)学校 とボ ランティアをつな ぐコーディネーターの配置 を 挙 げている。で きるところか ら少 しずつサポー トを広 げてい くことで,教育現場 と学生双方に とって有効 な継続的かかわ りを実現 しやす くな

神奈川大学学校 ボランテ ィアの展 開 (横浜 キ ャンパス)

るであろう。

本学学生か らの報告 によれば,② は多 くの学 校で配慮 されている。⑤ のコーデ ィネーター と して校長 自らが動 き, また毎 回のボランティア の 日誌記録 にコーデ ィネーターがア ドバ イスす るといった手厚いサポー トがなされる学校 もあ る。2008年度 により明瞭 になった課題 としては,

③ の担任教員 との連携の問題がある。 コーデ ィ ネーター として動 く教員 と担任教員の学生 ボラ ンテ ィアに対す る意識の落差,実質的に担任教 員 と連携す るための時間を作 り出せ ない といっ た問題がある。 これは特 に中学校 の特別支援教 育 に関す るボランテ ィアとして入 った際に,大 きなネ ックとなっていた。サポー ト体制 自体 は 学校諸事情 に左右 されるが,現実の様 々なサポ ー トの取 り組み情報 を学校 間で共有す る機会 を 通 して,ボランテ ィアをうま く受け入れ支 える 土壌が育 まれることを期待 したい。

最後 に,学生 を送 り出す側の大学 にで きるサ ポー トとは どの ような ものであろうか。すでに 学生の問題意識 として検討 して きたように,学 生 ボランティアは悩みや気づ きを互いに話 し合 う機会 を必要 としている。 こうした機会その も のが,学生が活動 を振 り返 り,そ こか ら自らの かかわ りと子 ども理解,学校理解 を深めてい く ことになる。悩み を不安や孤立感 に しないため に,安心 して悩 むことで成長す るために,背後 に ピア ・カウンセ リング的仲 間の存在 をもっ こ とは重要である。そ こでの大学教員 は リーダー ではな く, フアシリテ一夕‑ として参加者の交 流 を促進す る者 として関与 してい くことが必要 である。 また上記(事に関連 して,担任教員 と学 生 ボランティア とが連携 しやすい教育現場 に学 生 を送 り出 していけるような調整 を してい くこ とが今後の課題である

引用文献 :

高野久美子 2006支援する人を支援する (その 2)そだちの科学NO.6,pp.116‑121

(14)

参考文献 :

古屋喜美代 ・入江直子 2008 学校 ボランティア 体験 を通 しての学生の学 びと成長 日本教育心 理学会第50回大会論文集

松木健一 2002 臨床的視点か ら見た教育研究 と 教師教育の再構築 教育学研究第69巻,NO.3, pp.24‑36

宮下孝広 ,西一夫 2008 シ ンポジ ウム 発達お よび発達支援の視点か ら学生の活動の意義 (対 子 ども,対教師,対学校および教育) を考 える 日本発達心理学会第 19回大会発表論文集pp.164‑

165

田島悪 ・前川あさ美 2008 発達障害児が在籍す る通常学級 にボランティア ・支援員が介入する ことの意義 と問題点 日本発達心理学会第 19 回大会発表論文集p.470

(古屋喜美代 ・入 江 直 子)

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参照

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