九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
多環式芳香族化合物の代謝に関与する真菌シトクロ ムP450の機能ゲノミクス
ノマテンバ, ロイス, チグ
https://doi.org/10.15017/1932018
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(農学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
氏 名 ノマテンバ ロイス チグ
論 文 名 Functional Genomics of Fungal Cytochrome P450s Involved in the Metabolism of Polycyclic Aromatic Hydrocarbons
(多環式芳香族化合物の代謝に関与する真菌シトクロム P450の機能 ゲノミクス)
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 近藤 哲男 副 査 九州大学 教授 古屋 茂樹 副 査 九州大学 教授 北岡 卓也
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は、リグニン分解性担子菌 Phanerochaete chrysosporiumの生物機能を活用した環境浄化を 志向したものであり、難分解性環境汚染物質の微生物変換経路を決定するとともに、汚染物質分解 を可能とする酵素および遺伝子の同定に成功している。
はじめに、P. chrysosporiumによる多環式芳香族化合物(アントラセン、ベンゾ[a]ピレン等)の代 謝変換を追跡し、P. chrysosporium細胞への取り込み挙動や、シトクロムP450阻害剤の影響を受け る変換経路を同定することにより、シトクロムP450型反応を介した新規代謝経路を決定している。
つづいて、アントラセンの変換に関与する P. chrysosporium由来P450 (PcCYP)の同定に向け、120
種のPcCYPを形質転換した酵母によるアントラセンの変換解析を行っている。自然界においては極
めて分解性の低い多環式芳香族化合物であるにも関わらず、P. chrysosporium 由来PcCYPを形質転 換した酵母において、有意に変換反応が進行することを明らかにしている。この網羅的機能探索に より、アントラセン変換活性を示す14種のPcCYPを新規に同定している。さらに、PcCYPのcDNA マイクロアレイを作成して、PcCYPの網羅的転写産物解析を試みており、アントラセン添加に応答
するPcCYPを追跡することで、12種のPcCYPが化合物添加を受けて誘導的に発現することを証明
している。一連の研究により、アントラセンの変換活性を示す 14 分子種のうち、5種の PcCYP が 基質添加応答的に転写されることを明らかにしており、P. chrysosporiumのアントラセン変換能を直 接的あるいは生理学的に支えている分子種の決定に至っている。
以上要するに、本論文は、P. chrysosporiumの有する高い物質変換能が、極めて難分解性の多環式 芳香族化合物に対しても有効であり、P. chrysosporium由来のシトクロムP450酵素を利用した環境 浄化の可能性を見出している。また、本研究で提案した「網羅的転写産物解析法」および「網羅的 機能探索法」は、種々の化合物の変換反応の探索に応用可能であり、担子菌の芳香族化合物代謝能 を支える P450 の同定ツールとしてのさらなる利用が期待される。一連の研究成果は、バイオマテ リアルデザイン科学および生物産業創成学の発展に寄与する価値ある業績と認める。
よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。