『リズムで学ぶ 日本語発音あいうえお』の開発

全文

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『リズムで学ぶ 日本語発音あいうえお』の開発

松 岡裕 見 子 0 小 西 光 子 ・後 藤 寛 樹 0 要 門 美 規

要 旨

富 山大学留学生 セ ンター 日本語研修 コースで は, コース期 間 中,毎 朝,そ の 日の 口な らしと して 1限 目の授業 の 始 めの 5分 〜10分を発音練習 にあててい る。 コースが開設 された当初 は,既 製 の教材 を使用 して いたが, も っと楽 し く元気 に授業 を開始 で きる,ウ ォー ミングア ップ とな るよ うな教材 を開発 しよ うとい うことにな った。教材 は毎 日の 口な らしで あ ると同時 に, 日本語 の発音 の基礎 を学 び, 日本語 らしい リズムを習得 させ ることを 目標 と してお り, これ までに 2回 の改訂 を経て,現 在使用 してい る ものに至 ってい る。本稿 はその教材開発 につ いて報告す る も のであ る。

キーワー ド】発音, リズム,日 本語らしさ,教 材開発

1 教 材 開発 の経緯

富山大学留学生セ ンターでは,1999年 10月か ら大学院入学前予備教育 として 日本語研修 コースを開講 している。 コースでは,毎 朝 1限 目の授業の最初の 5〜 10分を,日 な らしとして発音の練習 にあててい るが,第 1期 の授業では既製の教科書か ら発音練習部分を抜 き出 した り,言 葉遊び歌の中か ら拾い出 し た りして,無 意味音節や単語,文 の流れの中で,主 に拍感覚を養成 してきた。 しか し,拍 の等時性を理 解 は して も日本語 らしさが出てこない。そこで,筆 者 らが教材開発プロジェク トを立 ち上げて検討 した 結果,次 の 3点 の問題点が浮かび上がった。

(1)日 本語の リズムは,単 音ではな くもっと長い句か文節を使 って音声をひとつのまとま りとして捉 えなければ出てこないのではないか

け)無 意味音節が続 く発音練習は無味乾燥であ り, もっと楽 しく練習できないか G)発 音 しに くい音は, 1度 ではな く何度で も環境を変えて提出 した らどうか

これ らの問題点を改善できるような教材を開発す ることが,発 音教材開発プロジェク ト立 ち上げの主 旨 である。

プロジェク トでは,ま ず,全 体の流れを 4つ に分割 し,そ れぞれの部分 ごとに担当者を決めて, 日本 語研修 コース第 2期 の授業開始に間に合 うように少 しずつ教材を作成 してい くことに した。できあが っ た ものを全員でチェックして問題点は修正 し,『 リズムで学ぶ 日本語発音あいうえお』試作版 1を 完成 させた。

2 試 作 版 1の 概 要 2.1 全 体構成

試作版 1は 大 きく分 けて,発 音の基本練習および リズムを取 り上げた部分 とイ ン トネーションを取 り 上げた部分の二つか ら成 り立 っている。 また,教 材開発の意図や教材全体 について簡単に説明 した解説 書をつけた。

教科書全体の特徴 としては,以 下の 5点 があげられ,「発音の基本練習 とリズム」 はその特徴がよ く 表れているところであ り, この教材の主たる部分で もある。

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(1)拍 の等時性 を守 りつつ,個 々の音 を習得 で きるよ うにスパイラルに練習 させ る

(2)日 本語 の リズム感 を養成す るため単音 のみな らず 2拍 , 4拍 に区切れ る歯切 れのいい練習文 を用 意す る

(鋤 発 音 しに くい音 の提示方法 を変 えて繰 り返 し練習 させ る (4)飽 きさせない

(5)ア クセ ン トやイ ン トネー シ ョンを意識化 させ る

最初 のスパ イラル に練習す るとい うの は,個 々の音 をパー ト1〜 30で 3回 にわた って繰 り返 し取 り 上 げるとい うことである。

次 に, 日本語 の リズム としては, 2拍 を 1単 位 とした拍感覚を養 いつつ,更 に大 きな単位 で練習す る。

別宮 (1983)や 田中 (1999)に よると, 日本語 は俳句 をは じめ として, 4拍 でひとまとま りのテ ンプ レー トを リズムの基本 に して いるとい う②。 そ こで,発 音練習用 の文 は,俳 句 や標語, こ とわ ざな どか ら 4 拍のテ ンプ レー トに合 うものを探すか,な ければ作成 した。

(3)の音 の提示方法 を変 え る とい うの は,パ ー ト1で 単音 を取 り上 げ,パ ー ト2お よび 3で 間違 えや すい ものを対比 させ,さ らにパ ー ト3で は音 の出現位置 に変化 を もたせ る (ターゲ ッ トにな る音が語頭, 語 中,語 末 にあ る単語 をそれぞれ選 んだ)と い うことである。

(4)につ いては, ど うも発音教材 は,理 論 が勝 ると面 白み に欠 けるき らいが あ る。 そ こで, ど うすれ ば楽 しく関心 を もって発音 の練習がで きるか とい うことを考え,練 習文 を電話番号,助 数詞 や,九 九 な ど,身 近 な ものか ら集 めた り,挿 絵 を多用 し,楽 しくな るよう配慮 した。 また無意味語 や難解 な語彙 で 練習 させ るのではな く, 日本語学習 の過程 で身 に付 けた基本的な語彙 で練習 で きるように した。

(5)のア クセ ン ト,イ ン トネー シ ョンの意識化 につ いては,ま ず,本 人 が意識化 (認知)し て,そ の あ とで矯正 してい くのだ ろ うか ら,そ の第一歩 と してアクセ ン トやイ ン トネニ シ ョンが意識 できること を 目指す こととした。

2.2 教 科書本 体 につ いて

パー ト1か ら, 2拍 をひとまとまりとす る拍感覚を養 う

ため,図 1の ように音 として現れない拍は○で表記 し, こ  だ ぢ づ れを意識できるように した。 また,同 様 に, 2拍 や 4拍 で  ⌒  ⌒ ひとまとま りになるということを明白にす るため,音 楽記  だ ぢ づで 号のスラーのような ものを採用 した。練習文選びにあたっ  編

ては,自 作 した ものは リズムを中心 に考えたが,適 当な練 習文が思いつかない場合は,永 保 (1987)を 参考 に した。

で   ど

数や助数詞 を取 り上 げたのは, 日本語教育 で学習者 がつ まず きやす い箇所 を もう一度発音教材で取 り上 げよ うとのね らい もあ った。

次 に,パ ー ト2で は,パ ー ト1で も取 り上 げた ものの, 1度 では習得で きないよ うな音,ま たは,例 えば 「ス,ツ 」 な ど間違 えやす い音 を敢 えて対比 させて取 り上 げた。パ ー ト2は ,毎 回,A・ B2つ の パ ー トか らな り,Aで は同拍で同型 ア クセ ン トの ミニマルペ ア0を 6ペ ア示 し, Bで はパ ー ト1に 出て きた, 4拍 でひ とまとま りの練習文 を再登場 させた。 同 じ文 を何度 も唱え るうちに,自 然 と暗誦で きる ようにな り, 日本語 の リズムが身 につ くのではないか と期待 したか らである6

パ ー ト3で は,研 修 コースの留学生0が発音 しに くい音 を中心 に選んだ。 Aは 語, Bは 文 レベルでの 練習 とし, Cで 俳句 や格言 を取 り上 げた。格言 には英訳 を,俳 句 には挿絵 を加 えた。

パ ー ト4は ,田 中 ・窪薗 (1999)を参考 に し,ア クセ ン トと同様 に意識化できるようにな ることをね

︵Ю  ﹂ Ю だ ぢ づ で 1(liキ

図 1

‑ 3 1 ‑

(3)

らいとして取 り上 げた。具体的 には,ア クセ ン トとイ ン トネーシ ョンの違 い,統 語構造がイ ン トネー シ ョ ンにどう影響す るかな どを数 回に分 けて提示 してある。

試作版 1で 取 り上 げた内容項 目をま とめてお こう。

表 1 試 作版 1で 取 り上げた項 目

五十音 (ア行〜 夕行)

2

五十音 (ナ行〜 ン)

3

ア 0 カ 行

4

サ ・夕行

5 / . l:.',Si 6

マ ・ヤ行

7

ラ ・ワ行

8

ガ ・ガ行 (鼻濁音)

9

ザ ・ダ行

10

z l . z { f J

長 音

12

促 音

13 拗音1

14

拗音2

15

拗長音

16

撥 音 数 1

18

数 2

19

助数詞

20

母 音

21

長母音 1

22

長母音2

23

無声化母音

24 )f'fr & rrf] 25

夕行 とダ行

26

力行 とガ行

27

サ行 とザ行

28 「シ」 と 「ヒ」 29 「ス」 と 「ツ」 30 「チ」 と 「ツ」

31

ラ行 とダ行

32

力行 とガ行鼻濁音

33

拗 音

34

撥音 「ン」

35

促音 「ッ」

36

撥音 と促音

37 ア行 。力行 (「ウ」を中心に) 38 サ行 ( 「シ」 を中心 に)

39

ザ」 と 「ジャ」

40

夕行 (「チ」「ツ」を中心に)

41

ナ行 とガ行鼻濁音

42

ハ行 (「ヒ」「フ」を中心 に)

43 ラ行

44

パ行 とバ行

45

ダ行 とラ行

46

ガ行 とガ行鼻濁音 撥音 「ン」 48 促音 「ッ」

49

拗音 とヤ行

50

アクセ ン トとイ ン トネーション1

51

アクセ ン トとイ ン トネーション2

52

列挙 とイ ン トネ ー シ ョン

53

2要素間のイ ン トネー シ ョンの型

54 フォーカスとイ ン トネーション 55 対比 の 「は」 とイ ン トネー シ ョン

56 tOpicの 「は」 とイン トネーション

57

疑 問詞 とイ ン トネー シ ョン1

58

疑 問詞 とイ ン トネー シ ョン2

3 発 音教 材 改訂 の経過

1節 , 2節 で見たように,筆 者 らは,第 2期 日本語研修 コースの授業にあわせて,発 音教材試作版 1 を作成 した。 この教材は同時期に開講 された富山大学の日本語課外補講の一部の授業で も試用 して もらっ た。第 2期 日本語研修 コースが終わると同時に,教 材を使 って実際に授業をした教員にアンケー トをとっ たが,そ の中で得 られた意見を もとに して,改 訂すべき点を検討 し,試 作版 2の 作成にとりかかった。

試作版 2は 第 3期 日本語研修 コースの授業で試用 し,再 び中身を検討 して現在の教材 (2001年版)の 完 成 に至 った。以下,3.1で教材を使 った教員か らのア ンケー ト結果を紹介 し,3.2で試作版 1か ら2へ の 改訂,3.3で試作版 2か ら2001年版への改訂について詳 しく見た上で,3.4で2001年版に対す る学生の評 価結果を提示する。

‑32‑一

(4)

3.1 教 材 を使 つた 教 員 に対 す る ア ンケ ー ト結 果

発音教材試作版 1に つ いて,実 際 に授業で この教材 を使 った教員 8名 に, コース終了後,評 価票 を渡 して意見 ・感想,改 訂すべ き点 を書 いて もらった。

総 じて,「楽 しい練習 であ る」 「ウ ォー ミングア ップにな った」 「リズムがつかめた と思 う」等 の評価 を得 たが,「練習 の ときはで きて もそれ以外 での効果が見 え に くい」等,改 訂すべ き点 もた くさんあげ

られた。 ア ンケー ト結果 を表 2に ま とめてお こう。

表 2 教 材 を使 った教員 に対す るア ンケー ト結果

教師用解説書 につ いて    わ か りやす い(2)  ふ う う(5)  少 しわか りに くい(1) 教材作成 の意 図       わ か りやす い(8)

4つのパ ー トの順序      今 の ままで よい(8) 個 々のパ ー トの量       ち ょうどよい(8)

教材 で使用 している記号   わ か りやす い(4)  わ か りに くい部分 もある(4)

学生 の反応         始 業 時 に発音練習 す るのは とて もいい と思 う, 日 を開かせ るウ ォー ミングア ップにな った,楽 しんで練習 して くれた

・ 早 い うちか らリズムの感覚をつかめた と思 う

 自 分 の弱 い ところ,苦 手 な ところがわか つた と思 う

。 練習 の ときは意識 しているが,練 習を離れると意識 させ るのは難 しいと感 じた

 リ ズムに慣れて くると,モ デルを示 さな くて もで きるようにな ったが,発 音練習時以外 の効果が 見え に くい

【内容に関す る意見】

・ 発音の仕方のイラス トもあるといい

 リ ズムが とりに くい,言 いに くい文を変更 した方がいい

。 パー ト2の ミニマルペアによる提示はわか りやす くてよかった

・ パー ト4で,フ ォーカスの位置をはじめは提示 して も,後 は自分で考え られるような練習をつけ てはどうか

。 パー ト4に,普 通体の会話のイン トネーションの練習を入れたらよい

表記に関す る意見】

0イ ン トネーションの矢印の書き方がわか りにくい

 ア クセ ン ト記号を理解 していない学生 もいるので説明をつける

。 俳旬の意味がわかるような挿絵を入れる

・ 訳語がついてないものがあるので追加すべき

【提示方法に関する意見】

・ 原稿を拡大コピーして学生に提示 していたが,見 えにくかったようだ

・ 教材をほしがる学生 もいた

これ らのア ンケー ト結果,ま た,筆 者 ら自身で使用 してみての反省点 を3、まえ,試 作版 2へ の改訂作 業 に と りかか った。

3.2 試 作 版 1か ら 2へ の 改 訂

試作版 2へ の改訂時の変更点 は大 き く分 けて,(1)学生 への提示方法,(2)発音 に関す るコラムの挿入, (3)項目の追加,(4)パー ト4の 内容再検討,(5)「教師用指導 の手 引き」 の作成 の 5つ であ る。 以下,順

に見 てい く。

―‑33‑―

(5)

3.2。1 学 生へ の提示方 法

試作版 1は 原稿をA3サ イズに拡大 コピー した ものを提示 して練習 していた。 これは,学 生が前を向 き,な るべ く文字情報 に頼 らずに教師の発音をまねて練習できるようにと配慮 したためであったが,実 際に使用 して,学 生か ら冊子 として手元にもっておきたいという声があが り,ま た拡大 した もの も文字 の大 きさが十分ではな く見づ らそうだという声 もあったので,試 作版 2か らは冊子体 に して学生に配布 す ることになった。実際には,改 訂点の検討が遅れたため,パ ー トごとの配布 とな ったが,印 刷 した も のを配布 したという点で試作版 1と 大 き く異なる。

3.2.2 発 音 に関 す る コ ラ ム の 挿 入 教材 を冊子体 にす るのに伴 って,発 音 に関 して最低 限押 さえておかなけれ ばな らない項 目を コラム化 して,教 材 の適 当な箇所 に載せ ることにな った。

た とえば,パ ー ト2の 前 に入れた単語 のアクセ ン ト型 についての コラム (図 2)な どが これにあた る。試作版 1で も,数 詞 に関す る補助説 明を これ に類 す る形で取 り上 げていたが,教 材 を学 生が手元において見ることができなか っ たため,教 師が時間の余裕 を見て補助 的に説明を加えるという程度 にとどまっ ていた。 コラムは初級 の学習者 で もわ

か りやす いように平易な 日本語 で記述 し,学 習者 が音声 につ いての理解 を深 め られ るように配慮 してい る。 また,俳 句 や言葉遊 びを練習 に用 いた箇所 では,そ れ らについて も簡単 に説明 した コラムを入れた。

3.2.3 項 目の 追 加

ミニマルペアを使 った個 々の音の練習がパー ト2で 取 り上 げ られているが,学 生が苦手 とす る項 目で, 追加 した方がいい と思 われ る項 目を検討 し,新 たに 「シ」 と 「チ」 の練習を加え ることにな った。 これ

は特 にタイ語 を母語 とす る学生 のために加 えた項 目である。

3.2.4 パ ー ト4の 内容 再 検 討

試作版 1を 実際の授業 で使用 して,練 習 の中心 が個 々の音 や リズムにあるパー ト3ま で とイ ン トネー シ ョン,プ ロ ミネ ンスを中心 としたパ ー ト4の 間で,練 習の量 に大 きな違 いがあ り,練 習 の難易度 に も 開 きがあることがわか った。試作版 1で は,表 1に 示 したように, 4回 にわた って疑 問や応答 のイ ン ト ネー シ ョンを取 り上 げ,ア クセ ン トが語 レベルでの音 の高 さの変化であるのに対 し,イ ン トネー シ ョン は文 レベルでの高 さの変化 であることを示 した。 そのあ とで名詞 を列挙す る際のイ ン トネー シ ョン, 2 要素 間のイ ン トネー シ ョンの型 を練習 し, フ ォーカスや助詞 の 「は」,疑 問詞 な どとイ ン トネー シ ョン の関係を取 り上 げていた。 しか し,試 作版 2で はパ ー ト4で 取 り上 げる項 目を再検討 し,ア クセ ン ト, イ ン トネー シ ョン,プ ロ ミネ ンスに関 して必要最低限の項 目のみを取 り上 げることに した。具体的 には, まず 3回 にわた ってアクセ ン トの練習 を入れた上で,イ ン トネー シ ョンの練習 を 4回 分設 けた。 これは, アクセ ン トとイ ン トネーシ ョンの違 いを理解 させ ることをね らった ものである。そ して,後 半では,フ ォー カス と対比の 「は」がイ ン トネー シ ョンにどう影響す るかを認識す るための練習 を取 り入 れた。 また,

コラム   「 アクセ ント」

☆1猫めと2籍めは瞥さがちがぃます。     Xは つおん  × セフター

☆ひとつのことばの寧で、」養やがった     × はワぉん  XlぞンフL

音 、  上 が  せ ん。      Oは つおん  Oマ   ー

☆繊議がっぃたとき

弱議がっぃたとき、ぷ議の齢で讐が十がる  が コGttD  ヵ瘍灘ぁらう

のと、下がらないものがあります。     力覇     かぉ難あらう 鮨より前で讐が下がっているときは、   下た     がた1難あらう

そのままです。

図 2

‑34‑

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最後にはことば遊びも取 り入れた。

3.2.5 「教 師用 指導 の手引 き」 の作 成

試作版 1の 使用にあたって,各 授業の担当者 には,事 前 に教材の主 旨と使い方を説明 したが, 1回 の 説明だけでは作成者の意図が十分に伝わ らなか った。 また,教 材で用いている記号の意味や,練 習文の モデル提示の仕方でわか りに くい部分があるといった意見がア ンケー トの中で出てお り,「教師用指導 の手引き」を作成す る必要があると感 じられた。検討の結果,全 体的 e抽象的な解説 よりも,各 回ごと の解説があった方が教師側 には受け入れ られやす く,ま た,曜 日ごとに担当者が変わるので,担 当す る 部分で何に注意すればよいかがわか りやすいのではないか ということにな り,各 回 ごとに押 さえてお く べきポイン トを挙げる形にした。

3.3 試 作版 2か ら2001年版 へ の改訂

試作版 2か ら2001年版への改訂時の主な変更点は,(1)提示順序の見直 し,(2)項目の再検討,(3)パ ト2, 3の 構成見直 しと練習語彙 ・文の再検討,(4)コラムの充実化の 4点 である。以下,順 に見てい く。

3.3.1 提示 順序 の見 直 し

試作版 1お よび 2で は,ま ず五十音をアか ら順 に提示 し,後 半で濁音,拗 音,長 音,撥 音,促 音な ど を扱 っていた。 これは特 に初級の学習者 にとっては五十音を正確 に習得す る上で も有効な提示順序だと 考え られるが,む しろ,個 々の音の調音点を理解 させるためには,調 音点が類似 しているものをひとま とめに して提示する方がより効果的だと考え,提 示順序を国内の前の方が調音点 となる音か ら国内の う しろの方が調音点 となる音へ というように改めた。 これによって学習者が 自分の苦手な音をより明確 に 認識できると考え られる。

3。3.2 項 目の再検討

試作版 1か ら試作版 2へ の改訂 と同様 に,学 生が苦手 とす る項 目を吟味 し,パ ー ト2に ハ行の音/h/

を練習す る回を設 けた。 これは中国語母語話者の中に/h/をすべて声門音 として発音 している学生がお り, 日本語の/h/は あとに続 く母音が[i]の場合 には日蓋化 し,[u]の場合 には両唇で調音 され るとい う ことを理解できるようにというのがね らいである6ま た,試 作版 2ま では母音の無声化を練習する回を 設 けていたが,学 生は自然に無声化 した発音を身につけてお り,む しろ無声化の有無は意味の違いに影 響 しないということを理解す る程度で十分だと考え られるので,2001年 版では母音の無声化については

コラムで取 り上 げるのみになった。

:‑35‑―

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3.3.3 パ ー ト2, 3の 構 成見 直 しと練 習語彙 ・文 の再検 討 試作版 2ま でのパー ト2は ,図 3の よう  第 24面サTとザT

に,Aで 当該音を含んだ ミニマルペアを用  AOい ユーショー(帥 "0ヮ    ト チョしショQ緩 姉鴫"ュ

い て 音 の 違 い を 認 識 し ,   B で そ の 音 を 含 む       b ュ ̲ ジ ョー 郷 り ' L n h P       b チ ョL ジ ョ 帽 れ H 馘 三S t r

短 い文で リズム とともに発音練習 をす ると      ぃ ■ ① Ⅲ. m 融        ぃ ぃ シセア棚脱 e い う構成 だ った。 しか し, こ の構成 では り      b 聾 ②  e l e p h       b シ 」ン( 自榊 … e ズムを もとにす るとい うよ りも, 個 々の音       c ヽ ガ ー⑩ …k       ⑥ a セ涵 銑日) と。憶d り の違 いが強調 されてい るだけであ り,パ ー    bジ 聾 o‐ │ ゼ ンジッ (前日)じ pHedmg d呼

卜1か ら 2へ , 2か ら 3へ の流れ もスムー  B。 )蛛 すし 掛 し しせさそす ズではなか った。 そ こで,パ ー ト2の 構成    ② ひじ ひざずきずき ざけぜぞ を考え直 し,図 4の よ うに,Aで ミニマル

図 3

ペアによる語彙 レベルの練習, Bで ミニマ   発 20固サ雷とザ雷

ルペアに近い形の句 レベルの練習, Cで そ A(1)さ んねん ∈ 年)L"r壼        (4)せ い の hily une ざん乱 QttD"8't plty       戻 ゝヽoЮ ほ

の音を含む文 レベルの練習 というように 3 (2)あ7 ① L8.島d        (5)そ うlfll μ鮨t mOよ

段階の構成 に改 めた。

また, 試 作版 2 ま でではパー ト2 で アク      き ず0 " 颯 …t

セント型と拍数が一致するようなミニマル  ① 臆 鼻

ペアを練習語彙 として用いていたために,   (aoキ が し 初級 レベルでは扱われないような語彙 も一     ° 傷ないたい

部あったが,初 級の教科書で用いられる語   C=称 碑ζず∫∬乳ぞ 彙を中心に して語彙の選定を行い,ア クセ

       図 4 ン ト型 は異 な っていて も拍数 が同 じであれ  鶴 48舞翡rrン』

ば ミニマルペアに準ず る もの として,練 習  A,も '機‐k懇,     み 卜回 語彙 に取 り上 げることにな った。        り おFあさん̀お母さん)

パー ト2の 構成が改め られたのに伴 って,    Fiん (五縛i     こ んたちは パ ー ト3の 構成 も見直す ことにな った。tt  B・ おとうさん¨ まんιんでんじゃで 勲・けます 作版 2ま ででは,図 5の よ うに,Aで :     °

けんさのけつかは もんだいなし

語レ       :?鷲 書 ビ8 ° でoが 1,―

ベルの練習 を したあ とで, Bで 文 レベルの      か ぞくは みんな0 あ んじんだ 練習 を し,   C で タト句や早 口言葉, 語 呂合わ    C ・ 熟わ焚賞によが機。ための絲

せ, 標 語な どの リズムのいい文 を使 っ`        6 ° 警r m tol ll■"9ple)ty tte"Ⅲle、fり, 1:ヽc"o91c.

て落束      穆 ti鞍彎i聡ほどの 警かき      1誓 習 をす るとい う構成 だ つたが,実 際の練習 :l瞥

では語か ら文へ と急 に練習語彙が長 くなる ので, 学 生 に と って も負 担 で あ った。 そ こ 図 5

第 46回 晨音 「ン」

で, パ ー ト2 が 語 ・句 ・文 の 3 段 階 にな っ

A.(1)○ かじを み ていた

たのにあわせ, 図 6 の よ うに, パ ー ト3 は

かんじを み ていた

句 ・文 ・俳句や早 口言葉 な どとい う 3 段 階       ( 2 ) ○ かりる ねだんは やちん

○はこぶ ねだんは う んちん

に変更することになった。 また,試 作版 2

B.(1)け んさの け っ力ヽま も んだいなし

までのC で はい くつか リズムがいいとは言       ( 2 ) お とうさm O O ま んいんでんじゃで で力ります

(3)げ んかんを○○○ ○ でたら で んわが リ ーンリン

えない標語なども混 じってお り,教 師がモ

☆(4)こ んやも あ んぜん う んてんで000

デルを示す際 に も困難 を伴 っていたので,       か ぞくは みんな○ あんしんだ

C. 梅 ■輪 ■輪ほどの 暖 かさ   1賠 聰 雪

リズムのいい ものだけを選定す ることに し た 。 図 6

あじ ω むt e (3)キス 嵐

マぅ②  e b p 嵐

(3)あ そこに ■ とO 子 象が  い るぞ

曇颯

‑36‑―

(8)

3.3.4 コ ラムの充 実化

2001年版作成の際に,新 たに母音無声化についての項 目をコラムとして掲載することになったのにあ わせて,他 にも擬音語 0擬態語や方言のアクセン トについてのコラムを追加することに した。 これは音 声が もつことばの面白さを伝え,学 生が音に対 して興味を持ちなが ら自分の発音を客観的にとらえるきっ かけを作 ろうと意図 した ものである。

学生による教材評価の結果 については次節で詳 しく述べるが, コラムについては 「役 に立 った」 とい う回答が多 く得 られたことか らも, コラムの挿入が有益であったと考え られる。

以上,3.2お よび3.3で見てきたように,発 音教材の試作版は 2度 の改訂を経て2001年版の完成に至 っ たわけであるが, ここで,試 作版 1で 取 り上げた項 目に 2度 の改訂でどのような変化があったかを見る ために,2001年 版で取 り上げた項 目の内容を表に示 しておこう (表1も あわせて参照 されたい)。

表 3 2001年 版 で取 り上 げた項 目

ア行 ・ヤ行 ワ行 :マ 行

l S ' f r . / l f l

4

サ行 ・ザ行 5 夕行 ・ダ行 6 ラ行 ・ナ行

力行 ・ガ行 (鼻濁音)

8

力行 0ハ 行

9

長 音

10

促 音 拗音1 拗音2

13

拗長音

14

撥 音

15

数 1

16

数 2

17

助数詞

18

母 音

19 ,S'fr L tf't], 20

サ行 とザ行 夕行 とダ行

22

ダ行 とラ行

23

力行 とガ行

24

力行 とガ行(鼻濁音)

25

ハ↑予

26

「シ」 と 「ヒ」

27

「シ」 と 「チ」

28

「ス」 と 「ツ」

29

「チ」 と 「ッ」

30

拗 音

長音 1 長音2

33

促 音

34

撥 音 35 促音 と撥音

36 母 音 37

lS'fr & rtfi

38 サ 行

39

ザ行 とジャ行

40

夕行 ダ行 とラ行

42

ラ行

43

ナ行 とガ行 (鼻濁音)

44

ガ行 とガ行 (鼻濁音)

45

ハ↑子

46

撥 音

48

促 音

48

拗 音

49 アクセ ン ト1 50 アクセ ン ト2

51

ア クセ ン ト3

52

イン トネーション1

53

イ ン トネー シ ョン2

54

イ ン トネー シ ョン3

55

イ ン トネー シ ョン4

56

フ ォー カ ス 1

57

フ ォー カ ス2

58

対比 の 「は」 とイ ン トネー シ ョン

59

こ とばj嵯び1

60

ことば遊 び2

‑37‑

(9)

3.4 学 生 に対 す る ア ンケ ー ト結 果

第 5期 日本語研修 コースの終了時 に,発 音教材2001年版 を使 った学生 に対 して,教 材 につ いてのア ン ケー ト調査 を実施 した。 同様 のア ンケー ト調査 を,同 時期 に開講 された2001年度後学期 日本語課外補講 Aク ラス (初級 レベル)の 受講生 に も実施 した。 回答が得 られた13名の内訳 は次 の通 りである。

初級   8名 (日本語研修 コース 4名 , 日本語課外補講 4名 ) 中国 ・ス リランカ ・フィ リピン ・中国 (カザ フ) 中級   5名 (日本語研修 コース)

中国 ・韓 国

表 4は ア ンケー ト結果 をま とめた ものである。 この結果か ら,自 分 の苦手な音が認識 で きた とい う学 生 が多 い ことがわか った。 その認識 が苦手 な音克服へ の第一歩 とな り,「(自宅で練習す るために)テー プを作 ってほ しい」 「発音 の個人授業 があればいい」等:発 音 の向上 に対す る積極的な意見 に結 びつ い た もの と考 え られ る。更 に同ア ンケー トによると,客 観 的な効果測定 を行 っていない ものの,発 音が良 くな った と感 じて いる学生 が大勢 を 占めていた。 これ は,(1)提出順序 や各パー トの構成の工夫,(2)単

表 4 学 生 に対す るア ンケー ト結果

1回の量 について ち ょうどいい(11)  少 ない(2)

練習 の文 につ いて 簡単(4)  ち ょうどいい(7)  難 しい(2)

3

発音 が上手 にな った と思 うか 上手 にな った(6)  ま あまあ(3)  わ か らない(4)

4

自分のできないところがわかっ たか

よ くわかった( 6 )     少 しわか った( 6 ) あまりわか らなか った( 1 )

5

発音で きない音 につ いて 聞 けばわか る(13)・

6 4 0 4 0 4 の リズムがで きるよ うになったか

で きるようにな った( 5 )   少 しで きるようにな った( 4 ) で きない( 1 )       無 回答( 1 )

7

授業以外で練習 したか よ く練習 した(1)    時 々練習 した(9) 全然練習 しなか った(3)

8

コラムは役 に立 ったか とて も役 に立 った( 6 )     少 し役 に立 った( 6 ) あま り役 に立 たなか った( 1 )

9

この教材 は楽 しいか 楽 しい( 1 1 ) ま あまあ( 2 )

10

発音 の練習 は必要 だ と思 うか 必要だ(13) この教材や発音 の練習 につ い

ての感想 な ど

【教材 の効果 に関す る意見】

・ 私たちの 日本語 の発音 が,だ んだんきれいにな ってきた 0発 音の練習 はとて もお もしろか った

0絵 や俳句 もあるので,お もしろい

教材 その ものや発音練習 に対す る意見】

0 も うち ょっと時間を長 くした方がいい

。 習 った発音 を運用す るために, も っと例が必要だ と思 う

。 テープを作 ってほ しい ・ 個人 によって難 しいと思 うところ が違 うか ら,発 音の個人指導 があればいい と思 う

・ 先生 によって発音 と,特 にアクセ ン トが違 ったので,ち ょっ と残念 だ った

‑38‑

(10)

音 か ら文へ発展 させ る際のステ ップの細分化,(3)用 い る語彙 ・句 ・文等 の選定,(4)リ ズムの重視,(5) コラムの充実,を 主 に改訂を進 めた成果ではないか と思われ る。

3.1で紹介 した教員 か らのア ンケー ト結果 や本節 で見 た学生 か らの意見 を見 ると,本 教材 の開発 の 目 標の一つであ った 「楽 しく元気 に授業 を開始 できる,ウ ォー ミングア ップ」用教材 と しての機能 は果 た してい ると言 え よ う。 また,筆 者 らが こだわ った 「楽 しく」 「飽 きさせない」 とい う点 につ いては,他 の機 関で音声教育 に携 わ る方 々か らも 「絵 や コラムがた くさんあ って飽 きさせない内容 にな ってい る」

言葉 の リズムを生か した日慣 らし的 ・言葉遊 び的な練習文 は面 白 く楽 しめます。」等の評価 があ った。

4 次 回 の 改 訂 点

検討 を重 ね大幅 に改訂 した2001年版 ではあ ったが, 2期 に渡 って使用 しているうちに,更 に改訂すべ き点が出て きた。 また2001年版完成直後 に,他 の機関で 日本語教育や音声教育 に携 わる方 々にお見せ し, 多数 の貴重 な ご意見,ご 指摘 をいただいていた こともあ り,こ れ らを踏 まえ再度改訂す ることにな った。

改訂点 は大 き く分 けて,(1)ガ行鼻濁音 の扱 い方,(2)コラムの新規追加,既 存 コラムヘの補足,(3)パ ト4の ア クセ ン ト練習 に関す る追加,(4)学習者 が必要 とす る内容 の追加,の 4つ であ る。以下,順 に 見てい く。

4.1 ガ 行 鼻 濁 音 の 扱 い方

ガ行鼻濁音 を どう扱 うかは,改 訂 の度 に検討事項 と してあが っていた。北陸地方 の方言 にこの音 が見 られ ることか ら,本 教材では当初,ガ 行鼻濁音 を他 の音 と同 じ大 きさで扱 い,教 材全体 を通 して 4回 の 練習 を設 けていた。 しか し,地 域差 はあ る ものの全国的 にガ行鼻濁音 が衰退 しつつ あ り,音 の違 いが意 味の違 いに関与 しない ことか ら,果 た して各パ ー トで繰 り返 し練習す る必要性 があるのか,発 音 できる ようにな らな くて もいいのではないか とい う疑間が高 ま り,今 回その扱 いの見直 しをす ることにな った。

全国的に衰退 しつつあるとはいえ,富 山大学 内では 日常的に耳 にす る音 である。少 な くとも音を提示 し, 音の違 いが意味の違 いに影響 しない ことを説明す る必要がある。 そのため,パ ー ト2に これ らの説明を 含 めたガ行鼻濁音 の コラムを入 れ,パ ー ト1で 音 の提示,パ ー ト2で 力行 とガ行 (鼻濁音 と非鼻濁音 を 区別 しない)の 対比練習,パ ー ト3で ナ行 とガ行鼻濁音 の対比練習 の全 3回 を行 いぅパー ト3に あ った 鼻濁音 と非鼻濁音 の対比練習 の回は削除す ることに した。

4.2 コ ラ ム の 新 規 追 加 ,既 存 コ ラ ム ヘ の 補 足

上記 の とお リガ行鼻濁音 の コラムを加 え ることと した。 その他,例 えば 「やかたぶね」 のよ うに,形 態素 (「やかた ・ぶね」)と リズム (「やか 。たぶ ・ね○」)が 合 わない語 につ いて違和感 を覚え る学習者 がいると思 われ ることか ら,そ れを コラムで説明す ることに した。 また前 回の改訂 で加えた母音無声化 の コラムに,無 声化 が起 こる優先順位,無 声化 とア クセ ン トの関係 についての補足 を加え る。

4.3 パ ー ト4の ア クセ ン ト練 習 に関 す る追 加

試作版 2以 降,パ ー ト4の 初 めの 3回 をア クセ ン トの練習 にあててい る。今 までは取 り上 げた語 を視 覚的 に明確 に し,ア クセ ン トを意識化す るため,そ の語 にのみアクセ ン ト記号 をつ けていたが,他 の語 のア クセ ン トも意識化で きるよ うに,該 当の回で は全ての語 にアクセ ン ト記号 をつ けることに した。 こ れは教師 にとって も指導 の際の助 けにな ると思われ る。

アクセ ン ト練習の初回には,同 音で,ア クセ ン トの違 いが意味の区別を成す 2拍 の語 を提示 している。

2001年版 までは 「箸 が(●○▽)⑥」 と 「橋 が(○●▽)」の よ うに,一 つの音 に対 して 2種 の型 しかあげて いなか ったが,更 に もう一種 「端が(〇●▼)」を加え, 2拍 の語 の全 てのア クセ ン ト型 を示す ことに し

‑39‑―

(11)

た。それに伴 って,ア クセ ン ト型がついている語の発音練習 は助詞をつけて行 うこととし,そ の指示を

教師用指導の手引き」にも加えることになった。:

4.4 学 習者 が必要 とす る内容 の追加 これに該当す るのは以下の 3つ である。

パ ー ト1の 撥音の練習の回に,「 きんえん」「げんいん」 のよ うな 「撥音 十母音」 の形 を取 る語 を 入れ る。

パ ー ト2の ミニマルペアに,「 してん(支店)。しでん(市電)」のような,特 に中国人学習者 が苦手 とす る語 中の夕行 とダ行 の区別 を加えたい。

普通体 の疑 問文 のイ ン トネー シ ョンを苦手 とす る学習者 は多 いが,特 に,「ベ ン?」 「き ょう?」

のように,語 末が特殊拍 でその前 にアクセ ン ト核が くる語 の場合,最 後があが りき らなか った り, また逆 にあが りす ぎるとい うケースが よ く見 られ る。 そのため,問 題 とな る語 を用 いた練習文 を 加え る。

5 問 題 と今後 の課題

先 に述べたとお り,本 教材は授業前のウォー ミングア ップという開発の主 目的はほぼ達成 しているも のの, 日本語の発音の基礎を学ぶ, 日本語 らしい リズムを習得するという点ではまだ改善の余地がある。

まず,パ ー ト1か ら3ま でのね らい ,構成 と,パ ー ト4の それ とがあまりに異なっているため,せ っ か くリズムが身に付いてきたところで流れが寸断 され, リズム習得上非効率的であることが挙げられる。

時間の制約等問題はあるが,ア クセ ン ト,イ ン トネーションの一部 に リズムを取 り入れた方が効果的で はないかという考え もあ り,今 後の検討を要する。一方,本 教材は リズムを重視 してはいるが,使 用対 象者に日本語カゼロの入門者 も含まれるため,第 1回 か らリズムの練習に入 るのは学生の負担が大 きす ぎたという反省がある。最初 に日本語の音全体を見渡 し:耳 慣 らしを し,一 つ一つの音を じっくり練習 する時間が必要であると考える。

次に指導す る側の問題 について述べる。授業のデモス トレーシ ョンや 「教師用指導の手引き」の充実 等を通 して,教 師が変わって も,で きるだけ学生に対 して均一の発音指導が提供できるよう配慮 したが, やはり作成者の意図が伝わ りに くい場合があった。学生アンケー トを見 ると 「先生によって発音 と,特 にアクセ ン トが違 った」 という声 もあ り,こ れ らは依然問題 として残 っている。

4節 で述べた改訂点を検討 した後,学 生へのアンケー トを行 った (詳しくは3.4)。その結果,効 果を 感 じているという回答がある一方で,「発音が上手 になったと思 うか」 という質問に 「わか らない」 と 答えた学生が 4人 ,「 自分のできないところがわか ったか」 という質問に 「あま りわか らなか った」 と 答えた学生が 1人 お り,今 後は学習者が効果を実感できる形の ものを作 ってい く方が現実 に即 していよ

う。

学生へのアンケー トは今回が初めてだったが,予 想以上に具体的な意見 ・要望が多 く,学 生が何を望 んでいるのかが見えてきた。 このアンケー トは今後 も続 けることとし,そ こで得た結果,意 見 0要望を 本教材 に反映 してい く努力を続 けたい。

鬱)

ほ)

‑40‑―

(12)

本教材の開発 にあた り,永 保澄雄氏,窪 薗晴夫氏,田 中真一氏,中 道真木男氏,河 野俊之氏およびアルク日本語 事業部か ら貴重なご意見をいただいた。特 に,永 保氏にはパー ト1の 作成にあた り 『は じめて外国人 に教える人の 日本語直接教授法』を参考 にすることを,田 中 ・窪薗両氏にはパー ト4の 作成 にあた り 『日本語の発音教室』を参 考 にす ることを,快 く了承いただいた。 ここに記 して感謝の意を述べたい。 また,教 材を使用 したあとのア ンケー トに回答 して くださった富山大学留学生セ ンターの先生方,教 材の評価に回答 して くれた第 5期 日本語研修 コース の学生,2001年 度後期 日本語課外補講 Aク ラスの受講生 にもご協力に感謝 したい。

試作版 1で は教材 の各部分 を 「1巡 目, 2巡 目…」 と呼んでいたが,試 作版 2か らは 「パ ー ト1,パ ー ト2… 」 と名称 を改 めたので,本 稿では試作版 1に つ いて も 「パー ト1,パ ー ト2… 」 とい う名称 を用 いることにす る。

田中 (1999)に よると,川 柳 や プロ野球 の声援 な どに も 4拍 のテ ンプ レー トを基本 に した リズムが見 られ ると い う。

侶)母 音無声化 の回 は ミニマルペ アでは提示 していない。 また,拗 音 の回で は 「じゅう (十)」 「じゆ う (自 由)」

の ような拍数 の異 な るペア も提示 している。

これ まで に 日本語研修 コースに在籍 したのは,中 国,タ イ,韓 国,イ ン ドネ シア,フ ィ リピン,ロ シア,ス リ ラ ンカ,ア メ リカ,マ レー シア,ブ ータ ン, コンゴ,モ ンゴル,メ キ シコ,モ ル ドヴ ァか らの学生 である。

○ 。● は名詞 の拍, ▽ ・▼ は助詞 の拍 を示 し, 〇 ・▽ はア クセ ン トが低 い部分,● ・▼ はアクセ ン トが高 い部 分 を示す。

参 考 文 献

(1)小 西光子 ・後藤寛樹 ・松 岡裕見子 ・要 門美規 (2001)『リズムで学ぶ 日本語発音 あい うえお』 (独自開発教材) (2)田 中真一 (1999)「日本語 の音節 と 4拍 の テ ンプ レー ト」 音声文法研究会編 『文法 と音 声II』 くろ しお出版,

pp.261‑290

暢) 田 中真一 ・窪薗晴夫( 1 9 9 9 ) 『日本語 の発音教室 理 論 と練習』 くろ しお出版 に) 永 保澄雄(1987)『は じめて外国人 に教 え る人 の 日本語直接教授法』創拓社

幅) 別 宮貞徳(1983)「日本語 の リズム と間」南博編 『間の研究  日 本人 の美 的表現』講談社

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参照

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