触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応を 基軸としたフロログルシン類の全合成研究
Synthetic Studies on Phloroglucinols Based on the Catalytic Asymmetirc
Intramolecular Cyclopropanation
2010 年 2 月
早稲田大学大学院 先進理工学研究科 化学・生命化学専攻 化学合成法研究室
阿部 正人
序文
自然界には想像をはるかに超えた構造、生物活性、作用メカニズムを有する化合物が 存在する。有機化学者は人類が発展させた化学を検証し、また発展させるべく、こうし た天然物の全合成に挑戦し続けてきた。そして、有機合成化学の発展とともに、今や複 雑な天然物の化学合成による大量供給も可能になるとさえ思えるようになった。しかし、
taxol のように、有用な生物活性を示すものの、炭素骨格さえも合成困難な有機化合物
が依然として自然界には存在する。したがって、有機合成化学者に課された使命のひと つは、複雑な天然物の不斉全合成を自然界における産生効率を上回る効率性で達成する ことである。
複雑な天然物の効率的全合成においては、不斉中心の構築は解決不可欠な問題である が、有用な光学活性合成中間体を不斉合成により創製できれば、不斉全合成の効率が高 まるので、天然物の合成研究のみならず、合成研究に基づく学際領域研究への波及効 果・貢献も極めて大きいといえる。例えば多くの不斉反応は両鏡像異性体の作りわけを 可能としており、天然物の絶対立体配置の決定、薬剤設計に知見を与える鏡像異性体の 創出に有効である。また、光学活性中間体を与える不斉反応を触媒化できれば、効率も 高く理想的である。さらに不斉触媒反応は、触媒量の不斉源からキラリティーを増殖で きることから、省資源かつ経済的であり、まさに資源の有効利用という時代の要請に対 応できる反応と言えよう。
このような観点から、不斉触媒反応によって効率的に光学活性な合成中間体を供給で きる可能性があり、これまでに不斉全合成が検討されておらず、構造が複雑で有用な生 物活性を示す化合物群として、ビシクロ[3.3.1]ノナン骨格を有する PPAP(Polycyclic polyprenylated acylphrologlucinol)類に注目した。PPAP類には、抗鬱活性を示すhyperforin、 抗アルツハイマー活性を示すgarsubellin A、抗腫瘍活性を示すnemorosoneなどが含まれ る。これらのPPAP類はわずかな側鎖置換基のパターンのみが構造的な差異になってい るにも関わらず、各々の類縁体が、上述した魅力的な生物活性を示すことから、PPAP 類に共通するビシクロ[3.3.1]ノナン骨格は、多様な生物活性を示す医薬品リード化合物 の中心骨格として大きな可能性を秘めていると思われる。したがってこの中心骨格を絶 対立体構造まで含めて効率よく構築することができれば、様々なPPAP類の作りわけが 可能になるとともに、医薬品候補化合物の探索研究にも大きく貢献することができる。
本研究は汎用性の高い中心骨格構築法の確立と、これら類縁体の全合成を目的として、
最初の合成ターゲットを nemorosoneに定め、研究を開始した。ここで得られた知見が PPAP類の網羅的な化学全合成につながり、さらには化学全合成の大きな強みである、
天然から誘導不可能な、高活性誘導体創出につながることを期待している。
略語表
AIBN : 2,2’-azobisisobutyronitrile
Bn : benzyl
BOM : benzyloxymethyl
CAIMCP : catalytic asymmetric intramolecular cyclopropanation cat. : catalytic amount
CDI : carbonyldiimidazole
conv. : conversion
DBU : 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene
(DHQD)2PHAL : bis(dihydroquinidino)phthalazine
DIBAL : diisobutylaluminiumhydride
DMAP : 4-dimethylaminopyridine
DMF : N,N-dimethylformamide DMP : Dess-Martin periodinane
DMSO : dimethylsulfoxide
ee : enantiomeric excess
equiv : equivalent
Et : ethyl
FAB : fast atom bombardment
HMPA : hexamethylphosphoramide
HRMS : high resolution mass spectrometry
ICy : 1,3-dicyclohexylimidazolium
IMCP : intramolecular cyclopropanation KPB : potassium phosphate buffer
LAH : lithiumaluminumhydride
LDA : lithiumdiisopropylamide
LHMDS : lithiumhexamethyldisilazide
Me : methyl
MOM : methoxymethyl
mCPBA : m-chloroperbenzoic acid
mp : melting point
MMPP : magnesium monoperoxyphthalate
NBS : N-bromosuccinimide
NHMDS : sodiumhexamethyldisilazide NOE : nuclear Overhauser effect
NOESY : nuclear Overhauser effect spectroscopy
Ph : phenyl
pinB : pinacol borane
PPTS : pyridinium p-toluenesulfonate
Pr : propyl
PTLC : preparative thin-layer chromatography PTSA : p-toluenesulfonic acid
quant. : quantitative
Rf : retention factor
rt : room temperature
Rh2(5R-MEPY)4 : dirhodium(Ⅱ)tetrakis(methyl 2-pyrrolidone-5(R)-carboxylate)
TBDPS : t-butyldiphenylsilyl
TBAF : tetrabutylammoniumfluoride
TBAI : tetrabutylammoniumiodide
TBHP : t-butylhydroperoxide
TBS : t-butyldimethylsilyl
TCDI : thiocarbonyldiimidazole
temp : temperature
TEA : triethylamine
TES : triethylsilyl
Tf : trifluoromethanesulfonyl
THF : tetrahydrofurane
TMS : trimethylsilyl
Triton B : benzyltrimethylammonium hydroxide Ts : p-toluenesulfonyl
目次
第1章 序論
第1節 PPAP (Polycyclic polyprenylated acylphrologlucinol)類・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第2節 合成計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
第2章 ビシクロ[3.3.1]ノナン中心骨格構築法
第1節 逆合成解析(1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 第2節 ベンジルカーボネートを用いたシクロプロパン環の位置選択的
な開環反応による中心骨格の構築・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第3節 逆合成解析(2)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 第4節 メトキシ基を置換したシクロプロパン環の位置選択的開環反応
による中心骨格の構築・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第5節 C8位4級炭素を含むビシクロ[3.3.1]ノナン中心骨格構築・・・・・・・・・・ 24 第6節 触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応を用いた光学活性な合
成中間体の調製・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
第3章 C7位β置換基の立体選択的導入
第1節 ラジカル反応を用いたC7位β置換基導入の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 第2節 C7位formyl基導入の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 第3節 Birch還元、エピメリ化を組み合わせたC7位不斉炭素の構築・・・・・・ 40
第4章 α、β‐不飽和ケトンを経由したC7位酸素官能基導入の検討
第1節 シリルエノールエーテルの酸化、α‐置換ケトンの脱離反応によ るα、β‐不飽和ケトンの構築の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 第2節 ラジカル的条件を用いたα、β‐不飽和ケトン構築と酸素ユニッ
トのMichael付加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
第5章 総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
第6章 実験項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50
第1節 ビシクロ[3.3.1]ノナン中心骨格構築法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 第2節 C7位β置換基の立体選択的導入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 86 第3節 α、β‐不飽和ケトンを経由した
C7位酸素官能基導入の検討・・・・・・・・・・・ 98
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103
謝辞
研究業績
第1章 序論
第1節 PPAP (Polycyclic polyprenylated acylphrologlucinol)類
PPAP(Polycyclic polyprenylated acylphrologlucinol)類には110を超える多くの類縁体 が存在し、代表的なものとしてFigure 1.に示すgarsubellin A、hyperforin、nemorosoneなど
がある 1)。garsubellin Aは1997年フクギ属の常緑樹であるフクギより単離構造決定
され 1i)、hyperforinは1971年オトギリ属のセイヨウオトギリソウより 2)、nemorosone は1996年クルシア属の常緑樹であるクルシアロゼアより3,1ru)それぞれ単離されてい るが、それぞれの植物はいずれも同じオトギリソウ科に属している。これらはそれぞれ 同様な生合成経路を経て生成することがCuesta-Rubioらによって提唱されている 1a)。
Figure 1. Polycyclic polyprenylated acylphrologlucinols (PPAPs).
一方、これらの化合物の構造的差異はC1位置換基、C8位置換基、フラン環の有無等 し
フクギ セイヨウオトギリソウ クルシアロゼア
O O
HO O O
O
O O
OH
O O
HO O
hyperforin
garsubellin A nemorosone
bicyclo[3.3.1]
nonane core
2 3
4 5
6 7
8 9 8 1
1 8
8 1 1
7 7 7
2 3 4 2
3 4 2
3 4
かないことが容易に分かるが、それにも関わらずそれぞれが異なった多彩な生物活性 を示すことが知られている。garsubellin Aはアセチルコリンの合成酵素であるコリンア セチルトランスフェラーゼ誘起作用を示すため、新たな抗アルツハイマー剤として期待 されている 1i)。hyperforinは抗鬱作用を有する天然ハーブの主成分として古くから利用 されるとともに2)、抗菌作用4)、in vivoにおける乳癌細胞MT-450に対するtaxolと同程度 の強い活性を含む抗腫瘍性 1c, 5)や、血管新生阻害活性が報告された 6)。また、nemorosone に関しても4つの癌細胞群に対する抗腫瘍活性(IC50=3.3〜7.2μM)や抗HIV活性 (EC50=0.8μM)を示すことが報告されており 7, 1ogk)、PPAP類はこれらの魅力的な生物活 性によって多くの注目を集めている8, 9, 10。ここで特筆すべきはその中心骨格にビシクロ
[3.3.1]ノナン骨格が共通していることである(Figure 1.)。言い換えれば、この中心骨格は
様々な生物活性を示す化学構造のプロトタイプになっているということであり、その絶 対立体構造まで含めた構築は有用な生物活性を有する化合物を派生的に創出する糸口 になりえるということである。
これらの天然物に対する構造的特徴としては、主として
官能基化されたビシクロ
② 位エノン
3級炭素
などが挙げ 点となっている。また、このビシク
の
2節 合成計画
現在までに報告されているhyperforin、garsubellin A、nemorosoneにおける合成例を以
る(±)−garsubellin Aの合成
① 2つ及び3つのプレニル基が置換した高度に酸素 [3.3.1]ノナン骨格
反応性の高いC2-4
③ 2つの橋頭位不斉4級炭素
④ C7位のネオペンチル位不斉
⑤ hyperforinにおけるC8位不斉4級炭素 られ、これらの構築全てが合成上の問題
ロ[3.3.1]ノナン骨格は、橋架けされた8員環とも考えることができるが、構成炭素原子
8つの内3つが4級炭素、且つ4つがネオペンチル位に位置し、その大きな立体障害か ら環構築、置換基の導入及び官能基変換において非常に挑戦的であることが予想される。
したがって、現在までのところ、国内外を問わず活発に合成研究が行われている 11)も の、上述3つの天然物に対して絶対立体構造までを含めた中心骨格の構築及び不斉全 合成はhyperforinについて一例のみ、ラセミ体での合成例はgarsubellin A、nemorosoneに ついて三例の報告例があるのみである 12)。これらの合成については第2節で合成計画 と合わせて述べる。
第
下に列挙する(Scheme 1.)。
① 2005年の柴崎らによ
② 2010年の柴崎らによる(−)−hyperforinの合成
③ 2005年、2007年のDanishefskyらによる(±)−garsubellin A、(±)−nemorosone 合
④ 7年のSimpkinsらによる(±)−garsubellin A(形式全合成)
hy
くが低収率に留まって い
cheme 1. Other group’s construction of the bicycle[3.3.1]nonane core.
考えられる。した
その中心骨格に は
の 成 200
perforinの合成例以外はいずれもラセミ体での合成である。
鍵となるビシクロ[3.3.1]ノナン骨格構築のステップはその多
る。柴崎らの報告した閉環メタセシスはgarsubellin Aの全合成において高収率を収め たが、この手法はhyperforinの骨格構築において適用できないことがその後報告され 13)、 別法による骨格構築を行っている。Danishefsky、Simpkinsらの手法もhyperforinにおける C8位不斉4級炭素の構築が困難であることが容易に予想されるため、hyperforinの合成 には適用可能でないと考えられる。すなわち、これらのPPAP類を網羅的に合成可能
(±)−garsubellin A Ring closing
metathesis Grubbs cat.
92 % M. Shibasaki (2005,2010)
S. J. Danishefsky (2005,2007)
(±)−nemorosone (±)−garsubellin A Iodocarbocyclization
32% (nemorosone) 85% (garsubellin A)
N. S. Simpkins (2007) (formal total synthesis)
Effenburger cyclization
Cl Cl
O 1) O
2) BnEt3NCl, KOH
35%
(±)−garsubellin A O
O
O O O
O I
R2 I
O H
H R1O
O O
O
O O O
O
HO O
O R1O
R2
OTBS
O
R2 R1O
O
I I2, KI,
KHCO3
TBSO O
O Cl Cl
MOMO MOMO
≡
MOMO
O O
O O O
(−)−hyperforin Intramolecular a)
aldol 1) NaOEt 2) DMP
≡
OMOM O
O CHO O
O
MOMO
CHO
O O
MOMO O 86%
(2 steps)
S
な、絶対立体構造まで含めた骨格構築法は未だに確立されていないと
がってこの現状を打破する、汎用性の高い骨格構築法の確立と、これら類縁体の全合成 を目的とし、最初の標的をnemorosoneに定め、研究に着手した。
PPAP 類の中心骨格を注意深く分析すると、興味深い事実に気付く。
C7位及びC8位の置換基を環構築後に導入するものとし、さらにC6-C5位結合の開 裂を考えると、分子内に対称性が存在していることが分かる。この対称性に着目し、合
成に適用することを考えた(Figure 2.)。
Figure 2.
一方、PPAP類中心骨格構築において最難関であると考えられるのは、2つの橋頭位 不
Scheme 2. Catalytic asymmetric intramolecular cyclopropanation.
2.におけるシクロヘキサ ジ
Symmetry of the core skeleton.
斉4級炭素の構築であり、この問題を解決するために、当研究室で開発した触媒的不 斉分子内シクロプロパン化反応(CAIMCP反応)に着目した。本反応では、分子内に対 称面を有するシクロヘキサジエン誘導体からその非対称化を行い、光学活性なトリシク ロ[4.3.0.057]ノネン骨格を効率的に得ることに成功している(Scheme 2.) 14)。
O HO
hyperforin O
garsubellin A
O HO O
nemorosone HO
O O O O O
O R1 HO
R1
R4 R3
R2
core skeleton
O O
C-C bond formation
O
O OO
R2 R1
R1
7 7
8 8
plane of symmetry σv
7 8
7 8
O MesO2S
OTBDPS N2
∗
∗
∗
∗ O MesO2S
H
OTBDPS Bn
O N
(10 mol%) Bn
N O
iPr iPr
toluene, rt→50 oC, 1 h→27 h 61 %, 93 % ee
H Cu
OTf H
H H
H
H H O
R1 HO
R1
R4 R3
R2
core skeleton
O O
したがってPPAP類の中心骨格に内在する対称性とScheme
エン誘導体の有する対称性を勘案すると、この反応を本系に適用し、さらにscheme 3.
に示すようにシクロプロパン体のC6−C9結合を位置選択的に開裂することができれば、
PPAP類の2つの橋頭位不斉4級炭素を一挙に構築し、且つ不斉合成に必要な光学活性 体を能率的に供給することが可能であると考えた。しかしながら、本反応はシクロヘキ サジエン上に置換基を持たないごく単純な系で検討されているのみであり、アルケン周
辺の環境が直接不斉収率に影響を及ぼすことが容易に想像できることから、シクロヘキ サジエン部位に置換基を有する本系への適用は非常に挑戦的である。
R2 R1
R1
R4R3 O
OP R2
R1
R1
R4R3 O
OP R2
Z R2
R1
R1
O OP R2
Z R2
R1
O OP
Z R2 R1
N2
(a) Catalytic asymmetric intramolecular cyclopropanation
(CAIMCP)
(b) Dialkylaion at C8 position
(c) Regioselective ring-opening
8 8 Z 8
1 2 3 4
9 6
5 5
6 9
O
Scheme 3. Synthetic plan.
また、C8位4級炭素に関してはシクロプロパン体2においてケトンのα位であるC8 位
2章 ビシクロ[3.3.1]ノナン中心骨格構築法
1節 逆合成解析(1)
構築の際に最も大きな問題になるものの一つとして、シクロプロパン環をどのよう をジアルキル化すれば、その構築が可能である。加えて6‐5‐3に縮環したシクロプ ロパン体2は、かご状の分子構造を有しおり、生じるエノラートと反応する求電子剤は
convex面から接近することが予想され、求電子剤を順次加えることでC8 位の不斉4級
炭素を立体選択的に構築することも可能である。hyperforinにおいてはR3=ホモプレニル R4=メチル、garsubellin AとnemorosoneにおいてはR3=R4=メチルであり、それぞれの置換 パターンを共通の中間体である2から派生的に作り分けることが可能である。以上の観 点からシクロプロパン体2を経由し、この段階でC8 位不斉4級炭素を構築することは 合理的である。したがって本研究では(a) α−ジアゾ−β−ケト化合物1の触媒的不斉 分子内シクロプロパン化(CAIMCP)、(b) シクロプロピルケトン 2のC8 位ジアルキル 化、(c) シクロプロパン体3の位置選択的なシクロプロパン環の開環によって中心骨格 を構築することを計画し、汎用性の高い骨格構築を目指した。
第
第 環
な基質及び条件で開裂させるか?という問題がある。なぜならばシクロプロパン環開裂 の位置選択性の制御が必要だからである。
本系ではシクロプロパン環の C6-C9 結合を選択的に開裂させる必要があり、この問
クロ プ
き
においてはC9位に酸素官能基を導入できることからも効率的である。
cheme 4. Strategy for the ring-opening
この考察と合成計画に基づき、nemorosoneの逆合成解析を行った(Scheme 5)。 題を解決するためにベンジルカーボネートの分子内攻撃による開環を計画した。
すなわち、シクロプロパン体のケトン部位にルイス酸を配位させ、活性化したシ ロパン環に対して側鎖に結合したベンジルカーボネート酸素原子を分子内攻撃させ て開環を進行させるという戦略を立てた(Scheme 4.)。本基質3において開裂する可能 性のある結合はC6-C9間の結合とC6-C5間の結合で二種類考えられる。分子モデリング の結果から、本基質3の求核試薬による開環反応においては、C6-C5結合のσ結合とカ ルボニル基のπ*軌道がC6-C9 結合に比べて良好な重なりを示すため、軌道論的な見解 では、求核剤の分子間反応においてC6-C5結合の開裂が優先することが示唆される 15)。 しかし、分子内に求核剤であるベンジルカーボネート酸素原子を調製し、空間的に届 うるC9位を選択的に分子内攻撃することでその選択性が発現できるのではないかと 予想した。
また本手法
R1
R1
O
O H
EtO2C 9 6 5
O
OBn
acid
R1
OH O
EtO2C R1
O O
R1 R1
O
O O
OH EtO2C
desired
undesired 9 5
6 R1
OH O
EtO2C R1
O OBn
R1 R1
O O OBn
EtO2C OH 9 5
6
6 5 9
6 5 9
S .
O O
HO O
nemorosone
O O O
OH CO2Et
O O H
EtO2C 9 6 5
O OBn
O
EtO2C O
O
9 5
6 OH
O
OTBDPS H
EtO2C
O
OTBDPS H
EtO2C
≡
8 8
O
OTBDPS
EtO2C N2 (a) CAIMCP
(b) Dialkylaion at C8 position
(c) Regioselective ring-opening
5 5 6
7 8 9
3
8
3
8
3 5
1 6
8
4 3 2
4 2
Scheme 5. Retrosynthetic analysis of nemorosone.
nemorosoneにおいて、酸化・酸性条件に脆弱な3置換オレフィン、反応性の高いβ−
ヒドロキシエノン部位(C2〜C4 位)を合成終盤で導入するものとして、5 を中間体と した。5は6のシクロプロパン体から側鎖に導入したカーボネート酸素原子の分子内攻 撃によるシクロプロパン環の位置選択的な開環反応によって得られるものとした。カー ボネート体6はシクロプロパン体7の側鎖の水酸基にカーボネートを結合して得られる ものとした。C8位4級炭素は 8のケトンのα位をジアルキル化することによって得ら れるものとし、シクロプロパン体8はα−ジアゾ−β−ケト化合物9の触媒的不斉分子 内シクロプロパン化反応によって、その光学活性体が得られると考えた。
まず始めに、懸案事項である6→5の鍵反応を検討するにあたり、より容易に調製で きる、C3、C5、C8位に置換基がない基質10を合成して検討することにした(Scheme 6)。
cheme 6. Structure of model compound.
2節 ベンジルカーボネートを用いたシクロプロパン環の位置選択的な開環反応に
O O H
EtO2C 9 6 5
O OBn
O
EtO2C O
O
9 5
6 OH (c) Regioselective
ring-opening
6 5
3
8 3
8
H
O O H
EtO2C 9 6 5
O H OBn
H O
EtO2C H
O O
9 5
6 OH (c) Regioselective
ring-opening
10 11
3
8 3
8 model
S
第
よる中心骨格の構築
モデル化合物10は、既知のベンジルエーテル12 16)より合成を開始した。12のBn基 を
ト
cheme 7. Synthesis of the precursor of the ring-opening reaction. Reagents and conditions: (a) Li, q.NH3, -33 oC, 40 min; (b) TBDPSCl, imidazole, CH2Cl2, 0 oC, 10 h, 80% (2 steps); (c) DMSO, (COCl)2,
開環 応の検討を行った。
除去してジオール13を得、水酸基の一方を保護して14とした後、もう一方の水酸基
はSwern酸化によってアルデヒド 15 へと誘導した。15に対してメトキシメチリデンフ
ォスフォランを用いたWittig反応、続く酸処理を行い一炭素増炭したアルデヒド体16と した。このアルデヒド16に対して酢酸エチルエノラートを求核付加させ17とし、生じ た水酸基を酸化してβ−ケトエステル18を得た。18の活性メチレン部位をジアゾ化し、
環化前駆体であるα−ジアゾ−β−ケトエステル19へと変換した。この19に対し、触 媒量の一価の銅トリフラートとアキラルなビスオキサゾリンリガンド22を用いて分子 内シクロプロパン化反応(IMCP)反応を行い、所望のシクロプロパン体20を高収率で 得ることに成功した。得られた 20 に対して側鎖のTBDPS基をTBAFを用いて除去して 21とし、ベンジルオキシカーボネー へ変換して開環前駆体10へと誘導した(Scheme 8)。
OH BnO
12
OH HO
OTBDPS HO
OTBDPS OHC
OTBDPS OHC
OTBDPS
O EtO2C
N2 H
H
N O
N O
OTBDPS
O EtO2C
H
OTBDPS H
OH EtO2C
H
H
H
O O H
EtO2C O H OBn
H
O OH H
EtO2C H
H
O
OTBDPS H
EtO2C H
13 14 15 16
17 18 19
20 21 10
e f g
h i j
22 IMCP
a b c d
S li
TEA, CH2Cl2, -78 oC to rt, 15 min to 2 h, 94%; (d) [Ph3PCH2OMe]Cl, NHMDS, THF, 0 oC to rt, 5 min to 15 min, then 2N-HClaq, rt, 22 h, 93%; (e) LDA, AcOEt, THF, -78 oC, 20 min; (f) DMP, CH2Cl2, rt, 2 h;
(g) TsN3, TEA, CH3CN, rt, 12 h, 83% (3 steps); (h) (CuOTf)2・PhMe (0.05 equiv), ligand 22 (0.15 equiv), toluene, 80 oC, 3 h, 88%; (i) TBAF, THF, rt, 3 h, 94%; (j) ClCO2Bn, DMAP, CH2Cl2, rt, 12 h, 98%
開環前駆体 10が得られたので、鍵反応であるシクロプロパン環の位置選択的な 反
CH2Cl2中Lewis酸を添加して反応を検討し、所望の開環体 11 を与えるLewis酸は、
TESOTfとBF3・Et2Oであることを見出した (Table 1.)。Lewis酸としてTESOTf (1.0 equiv) )
とから、開裂する結合の位置選択性は狙い通りに制御できたと考えられる。ま た
g-opening reaction.
を用いると所望の開環体11が33% (at 50% conv)得られた(entry 1。しかし変換率が低い ため、ルイス酸の等量数を 3.0 equivまで増加させたが変換率に改善は見られなかった
(entry 2)。さらに反応時間を長くして反応を試みたが、やはり原料は消失しない結果と
なった(entry 3)。一方、Lewis酸としてBF3・Et2O (1.0 equiv)を用いると変換率は低いなが らも、収率良く11を与えることが判明した(entry 4)。そこで等量数を6.0 equivまで増加 させると変換率に改善が見られ(entry 5)、長時間反応させると原料の消失を確認でき、
所望の開環体11を93%という高収率で得ることに成功した(entry 6)。開環体11におけ るC7 位ケトンは 100%エノール形で存在することを各種スペクトルデータで確認して いる。
全ての反応条件において、望みでないC6-C5結合が開裂した生成物11’は観測されな かったこ
、シクロプロパン環をカーボネートで開環する反応は今までのところ報告例がなく、
有機合成上興味深い。
Table 1. Regioselective rin
H
O O H
EtO2C O H OBn
10
entry Lewis acid (equiv.) temp (oC) time (h) yield of 11 (%)a
1 2 3 4 5 6
TESOTf (1.0) TESOTf (3.0) TESOTf (3.0)
-78, -78 to -10 -78, -60, -60 to -20
-78, -20 -78, -78 to -10
-78, -50, -20 -78, -20
4, 11.5 0.75, 1, 13
0.2, 36 4, 11.5 0.2, 1.5, 6.5
0.2, 47
33b 44c 73d quante
61f 93
H O
EtO2C H
O O
9 5
6 OH 11
H H
O
O O
EtO2C OH 6 5 9 O
H H
O O
OH CO2Et 5 9
6 H
≡
11 11'
Lewis acid CH2Cl2 9
6 5
aIsolated yields.
bAt 50% conversion.
cAt 14% conversion.
dAt 29% conversion.
eAt 34% conversion.
fAt 84% conversion.
BF3•OEt2 (1.0) BF3•OEt2 (6.0) BF3•OEt2 (6.0)
7
7
モデル化合物10から11への位置選択的な開環反応に成功したので、次に、C3 5位にアリル基を有する実際の基質23を調製して反応を検討することにした(Scheme 8)
位と C
。
H
O O H
EtO2C O H OBn
10
H O
EtO2C H
O O
9 5
6 OH 11
O
H H
O O
OH CO2Et 5 9
6 H
≡
11 9
6
5 BF3・Et2O
(6.0 equiv) CH2Cl2, -78 oC to -20 oC,
0.2 h to 47 h, 93 %
O O O
OH CO2Et O
O H
EtO2C 9 6 5
O OBn
O
EtO2C O
O
9 5
6 OH
≡
24 24 23
3 3
3 5
9 6
Scheme 8
me 9)。25 水酸基をメチルエーテル化した後、エステルを加水分解し、カルボン酸 26を得た。
Bi
. Application of the regioselective ring-opening reaction to compound 23.
実際の基質23は、既知のフェノール誘導体25 17)より合成を開始した(Sche の
rch還元の検討において、まず26のメチルエステル体における反応を検討したが、エ ステル部位が還元されてベンジルアルコール体が得られてくることが分かった。そこで より還元を受けにくいカルボン酸26において同条件を試みたところ、所望の 1,4-還元 体27を得ることができた。エステルのp位に置換しているメトキシ基は本反応中、脱離 させることができた。得られた 1,4-還元体27 のカルボキシル基をメチルエステル化し て 28 とした後、28のエステルのα位にベンジルオキシメチルクロリドを用いてC1 ユ ニットを導入し四級炭素を構築した。29 のエステル部位をLAH還元してアルコール体 へと変換し、さらにベンジル基を除去してジオール体30を得た。注意深くTBDPSClを 反応させることで、二つの水酸基のうち一方のみを保護して31とした後、もう一方の
水酸基はSwern酸化によってアルデヒドへと誘導して32 を得た。32 のアルデヒド体に
対してメトキシメチリデンフォスフォランを用いたWittig反応、続く酸処理を行い一炭 素増炭したアルデヒド体33とした。ここで33に対して酢酸エチルのエノラートを求核 付加させ、生じた水酸基をDMPによって酸化してβ−ケトエステル34を得た。34の活 性メチレン部位をジアゾ化し、環化前駆体であるα−ジアゾ−β−ケトエステル35へ と変換した。この35に対し、触媒量の一価の銅トリフラートとアキラルなビスオキサ ゾリンリガンド22 を用いてIMCP反応を行い、所望のシクロプロパン体36を低収率な がら得ることに成功した。得られた 36 に対して側鎖のTBDPS基をTBAFによって除去 し、生じた水酸基をベンジルオキシカーボネートとして開環前駆体 23 へと誘導した (Scheme 9)。
O
OTBDPS H
EtO2C 36 25
CO2Me HO
26 CO2H MeO
27 CO2H H
28 CO2Me H
29 CO2Me BnO
30 31
HO OH
32
HO
OTBDPS
OHC
OTBDPS
33
OTBDPS OHC
a, b c d
OTBDPS
O EtO2C
34
OTBDPS
O EtO2C
N2
35
O O H
EtO2C
O OBn
23 f, g
k, l m
e h i
j
n o, p
N O
N O
22 IMCP
Scheme 9. Synthesis of the precursor of the ring-opening reaction. Reagents and conditions: (a)
2CO3, MeI, acetone, rt, 3 h, 99%; (b) KOH, MeOH/H2O(3/1), 50 oC, 3 h; (c)Li, liq.NH3, -78 oC, 40 min;
あるシクロプロパン環の位置選択的な開 反応の検討を行った。モデル化合物10における11への変換に成功している条件を実 際
K
(d) K2CO3, MeI, acetone, rt, 12h, 89% (3 steps); (e) LDA, HMPA, BOMCl, THF, -20 oC, 1.5 h, 92%; (f) LAH, Et2O, 0 oC, 20min; (g) Li, liq.NH3, -33 oC, 2 h, 90% (2 steps); (h) TBDPSCl, imidazole, CH2Cl2, 0
oC, 10 h, 90%; (i) DMP, CH2Cl2, rt, 1 h, 79%; (j) [Ph3PCH2OMe]Cl, NHMDS, THF, 0 oC to rt, 5 min to 11 h, then 2N-HCl, rt, 48 h, 91%, (k) LDA, AcOEt, THF, -78 oC, 50 min; (l) DMP, CH2Cl2, rt, 16 h; (m) TsN3, TEA, CH3CN, rt, 2.5 h, 85% (3 steps); (n) (CuOTf)2・PhMe (0.05 equiv), ligand 22 (0.15 equiv), toluene, rt to 50 oC to 80 oC, 50 min to 70 min to 60 min, 36%; (o) TBAF, THF, rt, 3 h, quant; (p) ClCO2Bn, DMAP, CH2Cl2, 0 oC to rt, ovn, 90%.
開環前駆体 23が得られたので、懸案事項で 環
の基質23に適用したところ、予想に反して所望の開環体24が全く得られず、複雑な
混合物が生成する結果になった(Scheme 10)。
Scheme 10
をより電子求引性の強 スルホニル基へ変換した基質、カーボネート酸素原子の求核性を向上させるために酸
cheme 11.
ことから、狙ったよう ベンジルカーボネートの分子内攻撃は全く起こっていないことが示唆された。C5 位 に
3節 逆合成解析(2)
換基を有するシクロプロパン体 23の開環反応は望み通りに進 . Studies on the regioselective ring-opening reaction of 23.
また、反応促進を期待し、C6 位に置換しているエステル部位 い
素原子を硫黄原子に変換した基質を調製して反応を検討したが、望みの開環反応は進行 せず、複雑な混合物が得られるのみであった(Scheme 11)。
BF3・Et2O
O O O
OH CO2Et O
O H
EtO2C 9 6 5
O OBn
O
EtO2C O
O
9 5
6 OH
≡
24 24 23
3 3
3 5
1 CH2Cl2 6
variety of conditions
X O O
OH Z O
O H
Z 9 6 5
X Y
O
Z X
O
9 5
6 OH
≡
38 38 37
3 3
3 5
9 6
Z = CO2Et, SO2Ph X = O, S ; Y = SBn, NMe2
Z = CO2Et, SO2Ph X = O, S
S Studies on the regioselective ring-opening reaction of 37.
反応の生成物を解析するとベンジルカーボネートが残っている な
置換基がない基質10における開環反応が狙い通り進行するものの、C5位に置換基を 導入した基質23で反応が進行しないことを勘案すると、ベンジルカーボネートの分子 内攻撃の前に、C6-C5結合が開裂してC5位に比較的安定な3級カチオンが生じている ことなどが推測される。
第
C3 位およびC5位に置
行しなかった。モデル化合物10に対して反応が進行するにも関わらず、実際の基質23 に
chem
じるC5位の3級カチオ
の方が、C6-C9結合が開裂して生じるC9位の2級カチオンより、安定であるという
対して反応が進行しなかった原因として考えられるのは、C5 位に置換基を導入した ことで、C5 位のカチオン性が向上し、酸でケトンを活性化した段階で、C6-C5 結合が 開裂してC5 位 3 級カチオンが生じ、様々な副反応が起きているということである
(Scheme 12)。モデル化合物10においては、同様なC6-C5結合の開裂が起きた場合であ
っても、C6位に生じるのは2oカチオンであり、40の3oカチオンに比べて安定性は低く、
この副反応が起こらないことが予想される。
S e 12. Comparison of the regioselective ring-opening reaction.
以上を作業仮説として考える場合、C6-C5結合が開裂して生 ン
考察に展開 で き る
(Scheme 13)。
13
H
O O H
EtO2C O H OBn
10
11
9 6 5
O O
EtO2C 9 6 5
O OBn
O
EtO2C
O O
9 5
6 OH 24
23
3
3
BF3
complex mixture H
O O
EtO2C 9 6 5
O H OBn 3
BF3 BF3・Et2O
No byproduct
39
H
OH O
EtO2C H
O O
9 5
6 H
O O
EtO2C H
O OBn
9 5
6 BF3 3
3 3
O O
EtO2C 9 6 5
O OBn 3
BF3 BF3・Et2O
40 O
O
EtO2C O
OBn
9 5
6 BF3 3
O OP H
EtO2C 9 6 5
BF3 5 OP
O OP
EtO2C 9 6 5
BF3 C6-C9
cleavage
C6-C5
cleavage more stable
less stable C9 cation
Scheme 13. C5 cation vs C9 cation.
こで導き出せる次なるアイデアは、
もしもC9 位にカチオン安定化効果の高い置換基を導入してC9 位に生じる カ
ということである。
そこで、C9 位にカチオン安定化効果の高いメトキシ基の置 シシ
e 14)。
性の高いβ−
ヒ こ
チオンを、C5 位に生じるカチオンより安定化することができるならば、開 裂する可能性のある二つの結合のうち、C6-C5結合のみを選択的に開裂させる ことができるのではないか?
換を着想し、メトキ クロプロパンの位置選択的な開環反応を検討することにした。C9 位にメトキシ基が置 換したシクロプロパン体の開環反応は、C5 位に置換基が存在してもメトキシ基のカチ オン安定化効果により位置選択的に進行するものと予想した。
そこで逆合成解析及び合成計画は以下のように修正した(Schem
nemorosoneにおいて、酸化・酸性条件に脆弱な3置換オレフィン、反応
ドロキシエノン部位(C2〜C4位)を合成終盤で導入するものとして、41を中間体と した 18)。C7 位β置換基はC7 位ケトンを足がかりとして立体選択的に導入できるもの として41はジケトン42より導けるものとした。ジケトン42はメトキシシクロプロパ ン 43の位置選択的な開環とエステル基等の電子求引性基置換基Zの除去によって得ら れるものとした。C8位4級炭素は44のケトンのα位をジアルキル化することによって 得られるものとし、シクロプロパン体44はα−ジアゾ−β−ケト化合物45のCAIMCP 反応によって、その光学活性体が得られると考えた。
OMe OTBDPS O
O nemorosone
O O
HO O
O OTBDPS MeO
O
≡
OMe OTBDPS
O Z
N2 MeO OMe
OTBDPS
O MeO
Z 8
MeO H O O
H
7 7
OMe OTBDPS
O MeO
Z (d) removal of 8
the Z group
(a) CAIMCP (b) Dialkylaion
at C8 position (c) Regioselective
ring-opening
41 42 42
43 44 45
Scheme 14. Modified retrosynthetic analysis.
まず始めに、懸案事項であるメトキシシクロプロパン体の開環反応を検討するにあた り、より容易に調製できる、C3、C5、C8 位に置換基がないモデル化合物 48 を合成し て検討することにした(Scheme 15)。基質43、44、45における置換基Zはこれまで検討 してきた基質10及び23と同様Z = CO2Etを選択した。
(c) Regioselective ring-opening
model
OMe H
H OTBDPS
O OH OMe
H
H OTBDPS
O MeO EtO2C
8
49 48
EtO2C 9
5
6 3
5 9
6
3 O OTBDPS
H MeO
H 49 9
≡ 5 6
CO2Et OH OMe
OTBDPS
O MeO EtO2C
8
OMe OTBDPS O
OH EtO2C
5 9
6 3
O OTBDPS MeO
9
≡ 5 6
CO2Et OH
46 47 47
(c) Regioselective ring-opening
Scheme 15. Structure of model compound.