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車両運動シミュレーションによる軌道狂いと走行安全性の関係分析

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Academic year: 2022

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(1)

表1  各種設定条件 ( )内はパターン数

形状等 正弦波

水準と通りの逆位相複合(波長、波数は同じ)

波長(5) 10m・20m・30m・40m・50m

連続波数(3) 単独1波・連続2波・連続3波(連続は同一波長)

軌道狂い条件

振幅 水準、通りをそれぞれ1㎜単位で変化

線形条件 直線区間

速度条件(2) 70km/h ・ 110km/h

車両運動シミュレーションによる軌道狂いと走行安全性の関係分析

        鉄道総研  正会員 ○元好 茂         鉄道総研  正会員  古川 敦         鉄道総研       宮本岳史

1.はじめに

 鉄道車両の走行安全性の指標として、脱線係数(横圧/輪重)、輪重減少率があり、いずれも走行安全性に 直接結びつくものである。一方、通常の軌道保守においては、軌道狂いの整備基準値をもとに走行安全性の判 定が行われている。しかし、現在の整備基準値は昭和 42 年の実在軌道狂いの最大値をもとに定められている ため、近年の車両や速度条件においては、整備基準値と走行安全性は必ずしも 1 対 1 には対応していない。以 上より、軌道狂いと走行安全性の関係を明らかにすることは、効果的な軌道保守を目指す上で重要である。

 これに対し本稿では、車両運動シミュレーションを用いて軌道狂いと輪重変動との関係を求めることにより、

走行安全性の検討を行った結果を報告する。なお、過去の複合狂いの検討過程1)において、走行安全性の指標 として輪重減少率が用いられており、本検討もこれに準ずる。動的輪重減少率の目安値は、一般的に用いられ ている 0.8(80%)とした。

2.車両運動シミュレーションによる輪重変動予測  車両に輪重変動のような応答をもたらすのは、ある点に おける軌道狂いだけでなく、その手前も含めた連続的な狂 いである。このような波形レベルでの軌道狂いに対する車 両の応答の予測手法として、本検討では時刻歴シミュレー ションを用いた。なお、車両は1車体、2台車、4輪軸の 計7要素について各6自由度、レールは車輪位置計8箇所 で上下・左右に変位する各2自由度の合計58自由度でモ デル化した一車両モデル2)を用いた。図1に車両モデル概 要図を示す。

 設定した軌道狂い、線形、速度条件を表1に示す。複合

狂いの検討過程において、同一波長の水準狂いと通り狂いが逆位相で複合した場合に走行安全性が低下するこ とや、軌道狂いの波長や連続波数の違いによって、同一の振幅であっても走行安全性が変化することがわかっ ている。従って、本検討で対象とする軌道狂いは水準、通りの2種とし、表のように波長や波数を設定した。

シミュレーションの車両諸元には、鉄道総研構 内脱線走行試験に用いた試験車両3)(在来線通 勤型)のものを用いた。この車両は、最大車体 幅を通常よりも300㎜程度大きくしているが、

車体長や台車中心間距離等の主要諸元は一般 的な通勤電車と同一であり、空気ばね式ボルス タレス台車を用いている。

 以上の各種条件ごとに、軌道狂い上を走行し たときの輪重変動をシミュレーションによっ

て求め、輪重減少率が0.8となる時の水準狂いと通り狂いの振幅量を算出した。

 キーワード 走行安全性,水準狂い,通り狂い,輪重減少,車両運動シミュレーション

 連絡先   185-8540 東京都国分寺市光町2-8-38 ()鉄道総合技術研究所 軌道管理研究室 TEL042-573-7278

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hB hB1

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2b0 2bw

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bLD2

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2ax ap1azp2

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x kwz kwx kwy 車体 車体

車体 車体側

車体側

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y

bLD1 bLD1 bLD2 2bw1

aya1 2bya x

2aLD

図1 車両モデル概要図 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-229- 4-115

(2)

3.シミュレーション結果の考察

 輪重減少率が目安値である0.8となる水準狂いと10m弦通り狂いの組み合わせを繋げた線(以下、目安線 と呼ぶ)を条件別にまとめたものを図2に示す。目安線より内側(振幅の小さい側)が安全側、外側が危険側 となる。条件別の考察を以下に述べる。

(1)水準と通りの組み合わせ 目安線は全てにおいて右下がりとなっており、水準と通りが逆位相で複合する 際は、両者の組み合わせを考慮して管理することが、各々単独に管理するよりも合理的であることがわかる。

(2)波長 図2(a)の縦軸を見ると、波長20mと30mが逆であるものの、全般的には波長が長いほど切片が小

さくなる。よって通り狂いは、振幅が同じであれば、波長が長くなるほど輪重変動を起しやすいことがわかる。

水準狂いに関しては、波長50mが厳しく、波長30mが緩くなり、それ以外には差が見られない。波長が長い 水準狂いはロール振動の原因となり、波長の短い水準狂いは平面性狂いが大きくなるために台車3点支持の原 因となることから、これらが重なり合って生じる輪重減少と水準狂い波長には明確な関係が見られないものと 思われる。

(3)波数 図2(b)より、軌道狂いの波数が増すと目安線は厳しくなる傾向にある。波長10、30mに関しては波

数による差が小さかったため図では省略した。このように、波長によって程度の差はあるものの、波数が増す ことによって輪重変動が大きくなっていくことがわかった。

(4)走行速度 図2(c)より、走行速度が高くなると目安線は厳しくなるが、その影響は通り狂いのほうが大き い。水準狂い側では、波長30m 以下では速度による差が無い。これは、固定軸距のように、幾何学的に定ま る距離の平面性狂いにより、走行速度に関係無く輪重減少が生じているためと考えられる。但し、ロール振動 による輪重減少は車両の固有振動数が関係することから、波長50m の水準狂いによって速度差が大きくなっ ているのは、110km/h・波長50mに対応する約0.6Hzが、今回検討した車両のローリング固有振動数に近い ところにあるものと推定できる。これは、図2(b)の波長50mにおいて水準の波数による差が顕著であること からもいえる。

4.おわりに

 水準狂い、通り狂いの波長、波数及び走行速度の違いが走行安全性に影響を及ぼし、その程度の差は水準と 通りによって異なることがわかった。また、水準と通りの組合せを考慮することは合理的であることがわかっ た。なお、これらを実際の軌道管理に適応するには、さまざまな車種での検討が必要なほか、軌道狂いの波長 や連続波数を評価する手法4)を結びつけた、総合的な管理方法の構築が必要である。

[参考文献]1)池守昌幸:軌道狂い波形の整備に関する研究、鉄道技術研究報告、No.1038、1977.3.

2)宮本、石田、松尾:地震時の鉄道車両の挙動解析(上下、左右に振動する軌道上の車両運動シミュレーション)、

日本機械学会論文集(C編)、1997.12.

3)急曲線における低速域での乗り上がり脱線等の防止に関する検討会報告書、2004.3.

4)元好,古川,神山:局所定常ARモデルを用いた周期的な軌道狂いの検出、土木学会第59回年次学術講演会、Ⅳ-021、

2004.9.

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

  波長-波数 10m-3波 20m-3波 30m-3波 40m-3波 50m-3波

水準狂い(㎜)

10m弦通り狂い(㎜)

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

  波長-波数 20m-1波 20m-3波 40m-1波 40m-3波 50m-1波 50m-3波

水準狂い(㎜)

10m弦通り狂い(㎜)

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

波長-波数   速度 10m-3波 110        70 30m-3波 110        70 50m-3波 110        70

水準狂い(㎜)

10m弦通り狂い(㎜)

   (a)波長別(速度 110km/h)    (b)波数別(速度 110km/h)       (c)走行速度別 図2 条件別の輪重減少率 0.8 に対応する水準狂いと通り狂いの組み合せ

土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-230- 4-115

参照

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