2018 年度 事業報告書

全文

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2018 年度 事業報告書

一般財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団

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内容

目次

... - 1 -

はじめに ... - 2 -

1 組織

... - 3 -

会員状況

... - 3 -

役員

... - 3 -

2 各事業報告

... - 4 -

トラスト活動

... - 4 -

森林保全・育成活動 ... - 5 -

自然環境調査

... - 11 -

人材育成事業

... - 20 -

心の再生事業

... - 23 -

震災復興プロジェクト

... - 26 -

国際交流事業

... - 38 -

普及交流事業

... - 38 -

ホースプロジェクト

... - 42 -

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- 2 -

はじめに

アファンの森財団の活動は、荒廃した日本の森を再生することを目的に、現理事長である C・W ニコルが 1986 年 より飯綱山麓に位置する放置された里山(長野県上水内郡信濃町)を少しずつ買い足し、手入れをはじめたことが 始まりでした。2002 年 5 月に財団法人が設立され、すべての活動が引き継がれ現在に至っています。これまでの活 動が評価され、2016 年 6 月には天皇・皇后両陛下にご来訪いただきました。

森林整備は、暗くなった森に手を入れて明るい森に転換するという森づくりを続けてきましたが、整備開始から 30 年以上経過し、木々が成長して樹冠が閉鎖してきたことから大径木林へ向けた段階へと進んでいます。

ホースプロジェクトでは、2 頭の馬たちが働く馬としてのトレーニングを続けてきましたが、馬搬、馬耕、マウ ンテンサファリ、セラピープログラムなど様々な活動をスタートさせ、少しずつレベルアップさせています。

震災復興プロジェクトでは、東松島市野蒜ケ丘に完成した日本初の公立の「森の学校」宮野森小学校で今年度も 担任の先生と協力しながら授業支援をおこなっています。また、洲崎沼のウェットランド整備に向けた様々な調査 を開始し、鳥類や水生生物などのデータ収集をおこないました。

5センスプロジェクトでは、開始して 3 年目を迎えた「福島キッズ森もりプロジェクト」は福島県いわき市、南 相馬市、広野町の子ども達を全 9 回の開催で 273 名招くことができました。3 年間で 863 名になりました。また、

今年度新たにアースキッズ株式会社に通う発達障害を持つ子供 5 名と保護者 4 名を森に招いて活動をおこないまし た。

この報告書は、2018 年 4 月 1 日から 2019 年 3 月 31 日までの活動についての概況をまとめ、お伝えするものです。

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会員状況

20184月1日~2019331日)

会員種別 口数 金額

賛助会員 224 11,200,000

アファン会員 916 4,581,000

役員

理事・監事・評議員(敬称略・順不同)

理事長 C・W ニコル 作家

専務理事 森田 いづみ C・Wニコルオフィス 代表取締役社長 常務理事 松木 信義 林業家

理 事 稲本 正 オークヴィレッジ株式会社 会長

大槻 幸一郎 特定非営利活動法人やまぼうし自然学校 顧問 狩野 土 株式会社黒姫和漢薬研究所 代表取締役社長 加藤 茂夫 株式会社リコー サステナビリティ推進本部長 野口 理佐子 人と自然の研究所 代表

評議員 大熊 孝 NPO法人新潟水辺の会 顧問 加藤 正人 信州大学教授

金子 与止男 元岩手県立大学教授

高力 一浩 信濃町森林メディカルトレーナー

高槻 成紀 元麻布大学教授 アファンの森生きもの調べ室室長 竹内 典之 京都大学名誉教授

古谷 誠章 早稲田大学教授

監 事 畠田 洋平 公認会計士 吉田 寛 公会計研究所 公認会計士

0 500 1000 1500 2000 2500

0 200 400 600 800 1000 1200

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

会員と会費の推移

会費合計 アファン会員 賛助会員

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2 各事業報告

トラスト活動

北エリアと南エリアを繋げるため

今年度、トラスト活動により取得した山林はありませんでした。

アファンの森の面積は、343,639㎡(103,951坪)です。

アファンの森全域図

:トラスト取得地 :南エリア :北エリア 2018 年 3 月 31 日現在 アファンの森総面積:343,639 ㎡(103,951 坪))

:国有林協定箇所(社会貢献の森):273,600 ㎡(82,764 坪)

国有林

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森林保全・育成活動

※経団連自然保護基金助成事業 森林整備の主な活動内容

2018年度の森林整備内容は、木の成長に伴い枝の張り出しや樹冠の閉鎖等によって暗くなりつつある林内の環境 改善を意識して、支障木及び形質不良木の伐採・枝打ち・支障枝の除去をおこないました。夏場は植栽地の下草刈 りが主な作業となり、秋は伐採と伐採木の利用に向けた作業をおこないました。

施業内容 主な位置 作業内容

施行時期(月)

4 5 6 7 8 9 10 11 12 支障木・枯死木

伐採

北エリア全域 S-1 S-2

有用木の支障になっている樹木及び枯死 した樹木の伐採と片付けを行った。

高枝切り N-4 有用木の支障になっている枝の除去を

行った

オオハンゴンソウ

駆除 N-8 N-12 特定外来生物「オオハンゴンソウ」の駆除

作業を行なった。

ヤブ・ササ刈り N-20 S-14 S-15

低木及び笹が優先してきた場所を中心 に、刈り払い作業を行なった。

下草刈り

北エリア 全域 S-1 S-2 S-4 S-17

植栽木及び稚樹の生長を助け、形質劣化

を防ぐため下草刈りを行った。

チップ敷き 北エリア 踏圧から土壌を保護するため、散策路に

チップを敷いた。

枝打ち N-1 N-4

N-8 成長した植栽木の枝打ちを行なった。

整理伐・間伐 N-5 N-11 劣勢木・形質不良木の伐採を行った。

受光伐 N-14 N-15 樹冠が閉鎖したコナラ林の伐採を行った。

搬出 N-5 N-11 N-14 N-15

伐採した材の搬出を行った。N-14 の一部

とN-15 で伐採した材は、馬搬で行なった。

炭焼き 伐採した材の一部で炭焼きを行った。

薪作り N-14、N-15 で伐採したコナラを販売用と

して薪に加工した。

コマ打ち キノコのコマ打ちを行なった

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2 各事業報告

北エリア

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南エリア

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- 8 -

2 各事業報告

高枝切り

植栽木及び有用木の上部に張り出し成長の妨げになっている枝の除去作業をおこないました。高所での作業のた め、ロープクライミングの技術を用いておこないました。

高枝切り前 高枝切り後

オオハンゴンソウ駆除

特定外来生物「オオハンゴンソウ」の駆除作業をおこないました。

地下茎で増殖を行い繁殖力がとても強いため、移植ゴテを使って根を残 さないように丁寧な抜き取り作業が必要になります。

駆除作業を始めて7年目になりますが、6年目より株数が大きく減少し た印象があり、今年はそれよりさらに減少したように思われます。

作業は当団体会員にご協力いただきました。

ヤブ・ササ刈り

林内の林床も放置しておくとササやヤブが繁茂し、林床まで光が届かなくなります。そのため、定期的な管理が 必要です。ヤブやササが大きく伸び、密集した場所を中心に刈り払い作業を行いました。

ササ刈り前 ササ刈り後

駆除作業

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チップ敷き

踏圧からの土壌の保護を目的に森内の作業道(歩道)にチップを敷きました。運搬は軽トラックで行ないますが、

チップの積込み及び敷いてならすのは人力で行ないました。作業はエコツアー参加者並びに当団体会員にご協力い ただきました。

支障木伐採

将来の有用木の成長の妨げになっている樹木の伐採をおこないました。アファンの森は、ただ大きい木を育てれ ば良いということではなく、人も利用できる素性の良い大径木として育てていくことを考え基本は単木管理をおこ なっています。そのため成長した樹木でも有用木の支障になっている樹木は伐採することがあります。写真は、大 きく傾いてオオヤマザクラの支障になっているシラカンバを伐採したものです。芯は腐朽し空洞になっていました。

伐採前 伐採後 腐朽したシラカンバ

馬搬

伐採したコナラの搬出を、馬でおこないました。

馬搬は、馬を使って木材を運び出す伝統的な手法のことをいいます。林 業機械が発達していなかった昭和の中ごろまでは、日本のいたるところ でおこなわれていました。

馬搬は林道の整備も必要なく、森に大きな負担をかける重機も不要です。

環境に負荷を極力与えることなく地形が急峻な森でも実施できます。日 本のような小規模林業に適した、自然環境にも配慮した技術です。

木材の搬出が無い時期も普段よりトレーニングをおこなってきたため、

今年はこれまでより体力、集中力も長く持ち、馬も人も進歩が感じられ ました。

積込み作業 敷きならし作業

馬搬

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2 各事業報告

炭焼き

長年使っていなかった炭窯でしたが、状態を把握するためもあり、炭焼きをおこないました。

窯が空の状態から中で火を焚き温度を上げ、湿気をある程度飛ばしてから窯内に木を立てて詰め、中の木に火が 付くまで入口で火を焚き続けます。火が付いて二日後が窯出しになります。

炭にはなりましたが窯の状態は悪く、炭焼きをおこなっていくには窯の作り直しが必要と判断しました。

窯出し 炭

薪作り

伐採したコナラの利用方法として、販売用の薪作りをおこないました。伐 採したコナラは形質不良のものが多く、他には使い道があまりありませんが、

コナラは火力が強く火持ちも良いので、薪ストーブを使用している人にはと ても重宝がられています。良い炭にもなるので、今後も販売用として薪・炭 の制作を検討及び継続していければと考えています。

販売用薪

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自然環境調査

※ 経団連自然保護基金助成事業 (別紙資料①)

2018 年 4 月から 2019 年 3 月末までのアファンの森及び隣接地で実施している調査および作業項目を一覧に示 します。

2018 年度 生物調査項目

分類 調査項目 実施 概要

動物

鳥類ラインセンサス調査

(南北エリア、国有林、アファン外)

通年 鳥類種を記録し、リストアップ。森の施業との関連を 鳥の生息状況から確認。

一般鳥類巣箱調査

(北エリア、国有林)

11 月、12 月 常設している巣箱の利用状況を確認。

フクロウ営巣調査

(北エリア)

3 月~5 月 フクロウの営巣状況の調査。

ノスリ繁殖調査

(南北エリア)

5 月、9 月 ノスリの繁殖状況の調査。

水生動物生息状況調査

(北エリア)

8 月、1 月、

3 月

生物の減少が懸念される水路の環境改善のため、

泥上げや植物の間引きなどの管理作業をおこなっ て攪乱を与え、その前後の水生動物を比較。

哺乳類調査 5 月、11 月 自動撮影カ メ ラ は 通 年 月

小型哺乳類用巣箱を設置し、利用の痕跡から生息 を推測するとともに、自動撮影カメラによる記録を おこなう。

チョウ類調査

(北エリア)

4 月~11 月 チョウ類相を把握する調査。

フクロウの食性調査 6 月 巣の残存物を分析することでアファンの森のフクロ ウの雛の食性と、生物のつながりを明らかする。

タヌキの食性調査

(北エリア、国有林)

4 月~11 月 糞を調べることで季節ごとの食性を明らかにすると ともに、種子散布者としての役割を明らかにする。

鳥の巣箱で確認されたヤマネ 巣立ち直後のフクロウの幼鳥

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2 各事業報告

鳥類

鳥類相ラインセンサス調査

ラインセンサス法を用いて 信濃町アファンの森とその周辺の森(計5か所)の鳥類の生息状況を調査し、再生 施業による影響、森林環境による違い、10年間の変化などについて検証をおこないました。

・調査場所

北エリア 南エリア

国有林 スギ林

放置林

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【北エリアについて】

・水辺環境の整備や、間伐による明るい環境の創出によって、生息鳥類種数が増加した

北エリアの方が、南エリアより 10 年間の確認種類数が多い(北エリア-範囲内 74 種、範囲外 10 種、合計 84 種。

南エリア-範囲内 61 種、範囲外 12 種、合計 73 種)。

北エリアだけで確認された種は、主に比較的開けた環境を好んで生息する鳥類(キジ、ジョウビタキ、ムクドリ、

コムクドリ)や、水辺に生息する鳥類(カイツブリ、アオサギ、コガモ、マガモ、カルガモ、トモエガモ)が占め ていました。これは、森林再生施業で明るい環境がつくられたことと、弥生池など水辺環境を整備した効果が表れ ているためと考えられます。

・今後、木々の成長によって、より多くの鳥類に利用される森になるだろう

植生の異なる 5 地点での調査において、樹木の枝葉採餌タイプの個体数が、北エリアは国有林、南エリア、放置 林より少なかった。これは北エリアでは木が伐採されて立木密度が減少していることが原因だと思われます。また、

全 5 地点とも、樹木の枝葉採餌タイプ鳥類の割合が一番大きくなっていることから、森を利用する鳥類としては、

このタイプのものが一番個体数は多いと思われます。したがって、今後、北エリアでは植樹した木々が成長するこ とで、樹木の枝葉タイプの鳥類個体数が増加し、北エリアの個体数全体が大きく増加する可能性が高いと予想され ます。

・今後、低木層の成長によって、下層採餌タイプ鳥類が減少するだろう

北エリアでは 11 年、12 年と個体数が多かったカシラダカが、減少しています。これは、カシラダカが主に利用 していた松木小屋裏の植樹地の苗木が成長しつつあり、そのために林床の植生に変化が生じ、草地が減少している ためだと考えられます。今後、カシラダカだけに限らず、林内環境が暗くなることで、下層採餌タイプ鳥類の個体 数が減少することが予想されます。

北エリアは里と山の境界に位置しており、ある程度の草地を維持することも意義あることとも考えられるので、

例えば、弥生池より流れる水路の周辺などを草地のまま維持することも、森の生物多様性にとって大きな効果が得 られると思われます。

ホオジロやクロツグミの個体数が減っていますが、これは観察路にウッドチップをまいたため、彼らの採餌場所 である地表面が露出している場所が減少した可能性も考えられます。

また、ウグイスやアオジなどの個体数が少ないのは、再生施業のために下層植生として草本類は増加しましたが、

薮を形成するササや低木類が少ないためであると考えられます。ササや低木類なども繁茂できる環境を整えると、

多くの下層採餌タイプの鳥類の個体数が増加すると思われます。

・今後、高木層の木々の成長によって、林空間採餌タイプの鳥類の個体数も増加するだろう

林空間採餌タイプの鳥が少なかったことから、現在の北エリアは、林空間採餌タイプにとって採餌しづらい状況 にあると考えられます。今回の調査からは直接はわかりませんが、おそらく間伐によって木々の間が広くなったこ とで、林空間が広くなりすぎてしまったのではないだろうか。また、林空間採餌タイプは樹洞営巣のものが多いの で、北エリアは樹洞の数自体が少ないことも考えられます。今後、植樹した木々が成長することで、林空間採餌タ イプの鳥類の個体数は増加すると予想されます。

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2 各事業報告

【南エリアについて】

・水辺環境や開けた環境がないため、鳥類の生息種数が少ない

南エリアの方が北エリアより9年間の総確認種類数が少なくなっています(南エリアは73種。北エリアは84種)。 これは、開けた環境を好む種が少ないことと、水辺に生息する種がほとんど見られていないためで、それらの環境 がないために、北エリアよりも種数が限られていると考えられます。

・2011 年に実施された再生施業が鳥類相に影響を与えていた

南エリアは 11 年~12 年にかけて大きく出現個体数が減少しましたが、12 年以降はほぼ横ばいの状態が続いてい ました。これは、11 年に行われた伐採の影響のために、個体数が大きく減少していたと考えられます。

南エリアの留鳥と夏鳥は、12 年に大きく減少し、その数年後に最低個体数となった後、少しずつ個体数に増加傾 向がみられます。また、12 年以降減少した留鳥や夏鳥とは異なり、冬鳥が 12、13 年に個体数が増加していたため

(主にカシラダカ)、12 年の総個体数の減少が目立たなくなっていました。

・今後の施業の際、ある程度の立枯れ木の保存が、樹幹採餌タイプ鳥類の生息のために効果的

他地点と比べると、南エリアは、樹幹採餌タイプの鳥類の個体数が多く確認され、その理由として南エリアは、

木が密に生えているため、立ち枯れた木が多く、そこをすみかとする昆虫が多くなり、樹幹採餌タイプの鳥類にと って、エサが多い環境であるためと推測されます。今後、南エリアにおいての施業を行う際には、安全を確保した うえでの立枯れ木の保存も、樹幹採餌タイプの鳥類の個体数維持には必要だと思われます。

・苗木の成長で、樹木の枝葉採餌タイプ鳥類の増加が予想される

南エリアに樹木の枝葉採餌タイプの鳥類が少ないのは、間伐のために樹木の本数が大きく減少したためと考えら れます。今後、植樹した苗木が成長し林を形成することで、これらのタイプの鳥類が増加することが予想されます。

・再生施業で増加していた下層採餌タイプ鳥類の個体数が減少した

2011 年に行われた再生施業で、南エリアには 2 か所、高木層が少なく草原環境になった場所ができていました。

主にその場所で、12~13 年にかけて下層採餌タイプの鳥類(カシラダカ)の利用が多く確認されていましたが、14 年以降その個体数は激減しています。それは植樹した苗木が成長することで草原環境が変化したためと思われます。

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【国有林エリアについて】

・鳥類の生息種数が少ない

国有林を利用する鳥類は北エリアより 19 種、南エリアより 7 種少なく(範囲外も含めて)、これは南北エリアと くらべて国有林は植林されたスギがほとんどを占め、植生が単調であったためだと考えられる。一方で、スギ林よ りは 11 種多かったですが、これは国有林には落葉広葉樹も混生しているため、スギしか生えていないスギ林より は、多い結果になったと思われます。

・確認個体数が 2 番目に多かった

主にスギが生えている国有林は、調査開始前は、鳥類の個体数は少ないと予想されていました。しかし、調査を 7 年間おこなった結果、5 タイプの林の中でも 2 番目に多い個体数となり、最も多い南エリアとほぼ同じで、北エリ アよりも多い個体数が記録されました。国有林はスギだけでなく広葉樹も混生しているため、スギの純林よりは多 様性があること、主に広葉樹が生える北エリアに隣接していること、などが、鳥類の生息に適していると推測され ます。

・特定の種類が突出して多かった

国有林は上位 4 種(ヒガラ、キクイタダキ、マヒワ、ヒヨドリ)が抜き出て多く、特に 1 位のヒガラの個体数が はっきりと多い結果となりました。順位が下がるにつれて個体数の減少は激しく、上位の鳥類に個体数が偏ってい きました。広葉樹が主体の南北エリアや放置林とくらべると、個体数は多いものの、特定の鳥類だけが利用する林 となっていたことになります。

・下層採餌鳥類による利用がほとんどない

南北エリアと比較して、国有林では下層採餌タイプ鳥類による利用ははっきりと少なかった。これは、スギが密 生して林床にほとんど日光が届かず、下層植生がほとんど見られないためだと推測されます。

・樹幹採餌鳥類による利用が少ない

南北エリアと比較して、国有林では樹幹採餌タイプ鳥類による利用が少なかった。これは、樹皮に潜む昆虫など の生息数が少なく、樹幹採餌タイプ鳥類にとってはエサが少ない状態であることから、一番出現個体数が少ない結 果となっていると推測されます。

・スギだけでなく、広葉樹も交じることが、利用鳥類個体数を増加させている可能性がある

一見、同じような植生に見えるスギ林と国有林ですが、国有林の方が確認種数も個体数もかなり多い結果となっ たことから、国有林の方が鳥たちの生息に適した環境であると推測されます。スギだけでなく落葉広葉樹も交じる ことと、湿った環境がわずかでもあることが生息環境を向上させている可能性が考えられます。

本調査により「多様な環境が生物の多様性につながっている」こと、「施業と樹木の生長が鳥類相に影響してい る」ことなどをあらためて確認することができました。

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2 各事業報告

猛禽類営巣・繁殖調査

生態系の中で高次消費者に位置するワシ・タカ・フクロウなどの猛禽類はその地域の自然環境を知るうえでとて も重要な指標になる生物です。特にこれら猛禽類が繁殖している環境は、餌となる爬虫類小型の哺乳類(ネズミ類 など)、鳥類などが安定して生息していることの証といえます。さらに、大型の巣を作ることができる大きな樹木 や洞、休息できる安全な森林があることがうかがえます。

・3 羽のフクロウの巣立ちを確認

今年度、フクロウは 1 ペアが巣箱で繁殖し、4 羽が孵化、3 羽の雛の巣立ちが確認できました。2002 年の調査開 始から 16 年で、計 34 羽のヒナが巣立ったことになります。このことから、アファンの森が安定的に繁殖に適した 環境にあることがうかがえます。

・ノスリの繁殖は確認できず

今年度はノスリの繁殖は確認できませんでした。

フクロウの巣の残存物解析

フクロウの人工巣から巣材を回収してネズミ類の骨を取り出し、解析をおこないました。

その結果、アカネズミとハタネズミの下顎骨の数をグラフにすると下図ようになりました。これを見ると、

アカネズミは比較的安定しているのに対して、ハタネズミはそれよりやや少ないことが多いのですが、2016 年は飛び抜けて多くなっています。同じようなことは 2002 年にも記録されました。詳細はわかりませんが、

ハタネズミが何らかの理由で急に多くなることがあるようです。アファンの森にはアカネズミ系のネズミが 多いのですが、周りに畑や牧場があり、ハタネズミはそういう場所にいるので、フクロウは、ハタネズミが 増えた年には少し遠出をしてハタネズミを捕獲するものと思われます。

アファンの森のフクロウの巣に残されたアカネズミとハタネズミの下顎骨の数の推移

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哺乳類

哺乳類調査

ヤマネやモモンガなどの小型哺乳類は、直接観察やフィールドサインが確認しにくい。そこで生息を確認する目 的で、繁殖や休息場所として利用した巣箱の痕跡から推測をおこなうとともに、鳥類用の巣箱においても、小型哺 乳類の痕跡を調査しました。

調査結果

鳥類巣箱調査中に No.32 の巣箱内にヤマネを確認

5月にはイノシシの死体周辺で自動撮影カメラでの調査をおこないました。

キツネ、タヌキ、ネズミ類が撮影され、鳥類ではクロツグミ、コサメビタキなどが撮影されました。クロ ツグミとハシブトガラスがエサをとりに、コサメビタキとシジュウカラが巣材となる獣毛をとりに来ている ものと思われます。

3 少量のコケ・枯葉 ヒメネズミ コナラ

22 枯葉 ヒメネズミ コナラ

23 枯葉 ヒメネズミ オニグルミ

25 枯葉 ヒメネズミ スギ

26 枯葉・コケ ヤマネ? コナラ

31 コケ少量・ドングリ70個 ネズミ類? コナラ 32 コケ少量・枯葉 ヒメネズミ ヤマネ確認 イタヤカエデ

41 枯葉 ヒメネズミ繁殖中を確認 スギ

42 枯葉・ヒメネズミ スギ

50 コケ・スギ皮少量 ヤマネ スギ

51 コケ カラ類 のち枯葉 ヒメネズミ確認 スギ

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2 各事業報告

撮影された哺乳類

今後、アファンの森の整備状況と動物たちの行動の変化などを、さまざまな手法で記録、観察ができれば、動物 たちにとって良い環境かどうかの検証に役立つことになると考えます。

タヌキの食性調査

アファンの森で回収したタヌキの 糞を分析した結果、冬のサンプルで は農作物、支持組織、哺乳類が 20-30%

を占めました。農作物は全て米の籾 であり、タヌキがアファンの森の外 でコメを食べていることを示してい ます。

5 月のサンプルでは哺乳類とその 他の動物が多く、タヌキがネズミな どの死体を食べているようです。6 月に なると哺乳類は減り、昆虫が増えまし

た。9 月・10 月は 6 月までの動物質中心が大きく変化し、果実、キノコなど植物質主体になりました。ヤマボウシ の果肉と種子が多く確認されました。12 月は 10, 11 月のものも含むと思われ、秋の食性を反映していると言えま す。種子が 28.5%で、その他は果皮、植物の葉、キノコ、農作物(コメとソバ)など 10%程度のものがあり多様で した。

冬は動物の死体や農作物などを食べており、植物の支持組織も多かったことから察すると、果実がなくなり、食 物が乏しい状況で、限られた食物を探して食べているようです。初夏になると哺乳類や昆虫が増え、果実はほとん ど食べていないようです。秋になると果実が豊富になり、昆虫はほとんど食べなくなりました。このように、春か ら初夏にかけてほぼ動物食になるのは他の場所ではあまりないことで、アファンのタヌキに特徴的なことかもしれ ません。いずれにせよ、季節ごとに食物内容が大きく変化していました。

冬、6 月、12 月の糞からコメ、ソバが検出されており、野生植物だけでなく農作物も食べていることがわかりま した。ただしポリ袋などの人工物は冬に微量検出されたに過ぎません。したがって、アファンの森のタヌキは森林 の動植物を主体としながら、必要に応じて農作物も利用するという食性を持つということが特徴であろうと思われ ます。

キツネ 死体撤去後に匂いを嗅いでいる タヌキ 毛皮なども齧っている

アファンの森のタヌキの糞組成(%)の季節変化

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水生動物類

水生生物調査

これまでアファンの森の水辺を継続して調査をおこなってきたところ、年度ごとに確認種が減少してきているこ とが明らかになりました。これは、植生等の遷移や開放水面の減少等により、徐々に環境が単一化されてきたこと が要因であると考えられたことから、2014 年度より多様な環境の創出や種間関係のリセットなどの観点から、遷移 の進んだ水路の泥上げと水生植物の間引きなどの管理作業をおこなうことで大きな撹乱を与え、単一化してきた水 生生物相を再び多様にするための手法を試みてきました。その結果、管理作業によって構成する種は大きく変化し ており、管理作業による撹乱は生物相に多大な影響を与えていることがわかりました。

このような管理作業を 5 年間行ってきた結果アファンの森全体がどう変化してきたのか確認するため、2013 年に おこなった調査と同地点で水生生物相調査を実施しました。

採捕作業風景 2018/8/14 ソーティング作業風景 2018/8/14

・調査結果

今年度の調査結果として、全5地点合計で 17 目 48 科 77 種が確認されました。

過去に行われたアファンの森内全域の水路を対象にした調査では、2007~2010 年度の調査において 23 目 87 科 192 種が、2013 年度の調査には 16 目 58 科 123 種が確認されています。

2007~2010 年度の調査に関しては4年間で確認された合計種数の為、種数が多いことも言えますが、2013 年度調 査時の比較においても目・科・種数のそれぞれ減少していることが考えられており、今回調査においても調査回数 が過去の調査より少ないことが確認種数に影響していることは考えられますが、それを考慮しても目・科・種数が 更に著しく減少している結果となっています。

その原因として考えられることとしては、水路等が造成された直後はニッチが空いていたことで、似たような生 態・生息条件を持った種も同所的に見られていましたが、その後、種間の相互関係(捕食被捕食関係、縄張り争い、

餌の取りあい等の競合関係など)により、ある決まった種に出現状況が偏ってしまっている可能性が考えられます。

また、水路等が造成されてから徐々に植生をはじめとした生息環境・条件の遷移が進み、水生植物群落や周囲の 林床植物に覆われて開放水面が減少したり、底泥が堆積することで流速や水深に変化がなくなったりすることで、

徐々に環境が単一化し、水生動物相も限定されてきたことが考えられます。

多様な環境を創出するために、種間関係をリセットする強管理の実施(水路・池)が必要と考えます。

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2 各事業報告

人材育成事業

よみがえった森での研修プログラム

スポンサー企業等を対象に、作業・散策・講演・ワークショップ等々、それぞれのご要望を取り入れたプログラ ム内容を企画し、研修をおこないました。

主なプログラム内容を、以下に記します。

株式会社オカムラ ACORN 研修

【主なプログラム】

○ 講義

○ 森の散策・レクチャー

〇 間伐体験・枝条処理・

片付け

○ 馬搬デモンストレーション 見学

実 施 日:5 月 10 日 参加人数:29 名

東京環境工科専門学校授業 【主なプログラム】

○ 講義

○ 森の散策・レクチャー 実 施 日:6 月 19 日 7 月 5 日

参加人数:6 月 48 名 7 月 46 名

WoodLandWoodWork

【主なプログラム】

〇 講義

○ 森の散策・レクチャー

○ 製材レクチャー・体験 ○ 木工ワークショップ 実 施 日: 7 月 30~31 日

9 月 19~20 日

参加人数: 7 月 19 名 9 月 16 名

間伐体験 屋外での講義

講義

講義 木工ワークショップ

(22)

ラボキャンプ 【主なプログラム】

○ 講義(森・英語)

○ 森の散策・レクチャー 実 施 日: 8 月 1 日・4 日 12 月 27 日

3 月 26 日・29 日

参加人数:8 月 1 日 20 名 8 月 4 日 14 名 12 月 27 日 16 名 3 月 26 日 23 名 3 月 29 日 16 名

その他の研修プログラム

○ 麻布大学インターン(8 月 18~21 日、1 名)

○ 遠賀川水辺館(8 月 27 日、5 名)

○ 筑波大学付属板戸高等学校高校生(8 月 29 日、36 名)

将来の人材を担う 地元ならではの環境教育

地元信濃小学生の活動

信濃町立信濃小中学校の 4~6 年生でおこなわれている信濃小中学校探検倶楽部の活動で、アファンの森で「森 の生きもの観察」をおこないました。アファンの森の水辺にどんな生きものがいるのか実際に採集して観察しまし た。自分たちの住んでいる地域には多種多様な生きものが暮らしていて、多様な生きものが暮らすには多様な環境 が必要だということを学ぶ場としました。

○ 実施日:6 月 18 日 参加人数:16 名(4~6 学年児童)

英語の講義 森の散策

生きもの探し 生きもの観察 様々な環境をしらべる

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- 22 -

2 各事業報告

地元中学生の職場体験

信濃町立信濃小中学校でおこなわれている8年生(中学2年生)の職場体験の受け入れをおこないました。

初日は森の視察と森林整備体験、2 日目は生きもの調査と外来種駆除体験をおこない、3 日目はホースロッジで 馬と馬房の管理体験をおこないました。3 日間の活動を通してアファンの森の森づくりとは、森を守るとはどうい うことなのか、生物多様性の意義、森づくりと馬のかかわり、人と馬のコミュニケーションの大切さなどを学ぶ機 会としました。

○ 実施日:7月3日~5日 参加人数:3

森林整備体験 生物調査体験 馬の管理体験

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心の再生事業

福島キッズ「森もりプロジェクト」~ 被災地の子どもをアファンの森へ ~

福島県では震災以降子どもたちの外遊びや自然体験の不足が案じられています。また、故郷を離れた暮らしを余 儀なくされている子どもたちもおり、精神的なケアが必要とされています。福島キッズ森もりプロジェクトは、こ れまでおこなってきた5センスプロジェクトや東松島市のご家族をお招きした経験を活かし、福島県いわき市、南 相馬市、広野町の子どもたちをアファンの森に招いて豊かな森の中で心と身体を開放する機会を提供しました。

【実施日・参加人数】

1回: 6 8日(金)~ 10日(日) 23 30人 いわき市から参加 アファンの森で自然体験活動

2回: 714日(土)~ 16日(月・祝) 23 31人 いわき市から参加 アファンの森・修行の滝で自然体験活動

3回: 810日(金)~ 12日(日) 2330人 南相馬市から参加 アファンの森・野尻湖・修行の滝で自然体験活動

4回: 8 22日(水)~ 24日(金) 23 40人 広野町・いわき市から参加 アファンの森・野尻湖・修行の滝で自然体験活動

5回: 915日(土)~ 17日(月・祝) 23 26人 いわき市から参加 アファンの森・野尻湖・鳥居川で自然体験活動

6回: 106日(土)~ 8日(月・祝) 23 31人 いわき市から参加 アファンの森・野尻湖で自然体験活動

7回: 11 2日(金)~ 4日(日) 23 31人 いわき市から参加 アファンの森で自然体験活動

8回: 3 1日(金)~ 3日(日) 2330人 いわき市から参加 雪のアファンの森で自然体験活動

9回: 315日(金)~ 17日(日) 2328人 いわき市から参加 雪のアファンの森で自然体験活動

合計277

ようこそアファンの森へ 集合写真 お別れセレモニー

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2 各事業報告

【活動の様子】

活動の中心は自然の中で思いっきり遊ぶこと。アファンの森はもちろん野尻湖や鳥居川、苗名滝などアファンの 森周辺の自然も最大限活かして活動しました。森の中では木に登り、たき火をし、生きものを捕まえて観察し、ま た、木の実を食べたり、木にロープのブランコをかけたり、ハンモックを吊ってのんびりしたりと、子どもたちの やりたいことを全部かなえてあげます。夏に人気なのは水遊びで、森の水路や近くの川、野尻湖に行って泳いだり、

生きものを捕まえたりしました。また「修行の滝」と呼ばれる滝を目指して沢を登り、子どもも大人も滝に打たれ ました。他にも秋のキノコ狩りや、冬のスノーシューハイクにイグルー作り、そりすべりなど、その季節ならでは のアクティビティで思いっきり遊びました。

アファンの森 木登り 森のブランコ

野尻湖 鳥居川 修行の滝

焚き火 イグルー作り スノーシューハイク

参加した子どもたちは、地元の森や川ではまだ遊べないエリアも多いということで、運動不足や自然体験の減少 が懸念されています。福島キッズ森もりプロジェクトは、そんな日頃の制約を取り払ってやりたいことを何でもや る。そして身も心も開放して元気になる。参加した子どもたちの笑顔と大きな笑い声から、心も体も解放されてい ると感じられました。

主 催 : 公益財団法人イオンワンパーセントクラブ 共 催 : 一般財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団

後 援 : 福島県いわき市教育委員会・南相馬市教育委員会・広野町教育委員会

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発達障害児のための自然活動体験の研究

これまでも児童養護施設の子どもたちや障害を持った子どもたちを受け入れ、森で心と体を解放させる活動を実 施してきて、森の中での活動によって子どもたちの様子に変化が現れることは実感していました。発達障害を持っ た子どもたちに対しても、有効ではないかと考え、発達障害の子どもたちに発達支援療育をおこなっているスタジ オそら(株式会社アースキッズ:事業別スポンサー)とアファンの森財団と共同で発達障害の子ども達と森(自然)

での療育の研修とその可能性を探る研究を始めました。

【実施日・内容】

・9月8日(土) スタジオそら、アファンの森財団 スタッフ研修

日常生活でトラブルを避け、見通しをもって安心して過ごせるように発達支援療育をするスタジオそらの活動と森 の中で心も体も開放させるアファンの森の活動では、子どもたちに与える影響も違います。

発達障害を持つ子どもに対して、森の中の活動ではどのような対応が必要なのか、室内と森を使ってお互いの団 体の持つ知識を共有し意見交換を行いました。

・9月9日(日) 参加者モニター受け入れ 参加者 子ども5人 大人4人

前日でのスタッフ研修の意見交換も活かしながら、森での活動を実施しました。

子どもと大人は別々に行動しました。

子どもたちの一人ひとりの個性を見極めながら、活動的な子には色々な刺激を与えたり、おとなしい子には優しく 声掛けしたりと個々に対応しながら、キノコ採集、昆虫さがし、笹舟流し、と森の中を散策しながら1日を過ごし ました。普段とは違う森の中だからこそ見られた行動があったように思います。

大人は森林メディカルトレーナーのガイドの元、深呼吸や森と一体になるセルフカウンセリングで心と体をリフ レッシュしてもらいました。日常的に子どもたちと常に接している親御さんにとって、子どもと離れてゆっくり自 分だけの時間を過ごすことはとても大事な事だと考えています。

2日間を通して、一口に発達障害と言っても色々な特徴を持った子どもたちがいるという事がわかりました。

どんな影響があるのか、今後も継続的に続けていきたいと考えています。

たき火でマシュマロ焼き 川でカニ探し

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2 各事業報告

(6)震災復興プロジェクト

東松島の生物調査 ※経団連自然保護基金助成事業 (別紙資料②)

東松島市で生物調査を行いました。調査結果は多様な生きものの生息環境を保全・再生するための計画、ウェッ トランド整備計画及び森の学校プログラム作りの基礎資料とします。

①猛禽類調査

【活動期間】 通年

【活動場所】 東松島市野蒜ケ丘 復興の森 及び 宮戸周辺

【内 容】 オオタカ(環境省準絶滅危惧(NT))の営巣を復興の森内で確認。オオタカの繁殖を妨げないよう森 の一部に立ち入り制限を実施しました。5 月に抱卵中と思われるオオタカを確認しましたが、7 月 下旬に付近の林内を飛翔するオオタカを確認したものの、巣立ちした幼鳥かは確認できませんでし た。

フクロウ用の巣箱ですが、今年度も繁殖期には利用されませんでした。しかし、

5

月 に復興の森でフクロウの巣立ち雛を確認しました。繁殖巣は付近にあると思われます が、巣の特定には至りませんでした。

ノスリの繁殖は確認できませんでした。過去に復興の森で確認されていた

巣に、新しい巣材など の確認はできませんでした。

抱卵中のオオタカ 復興の森のオオタカ フクロウの巣立ち雛

②一般鳥類調査

【活動期間】 通年

【活動場所】 東松島市野蒜ケ丘 復興の森 及び 宮戸周辺

【内 容】 ラインセンサス法を用いて 野蒜地区と宮戸地区の鳥類の生息状況を調査しました。

野蒜地区は冬鳥のアトリが年間での優占種となりました。アトリは大きな群れで移動するため、出 現すれば一度に多くの個体が見られます。アトリを除いての解析では、留鳥で見られるエナガが 26%

となり、地域での安定的な優占種と考えられます。

宮戸地区はヒヨドリが優占種となりました。ヒヨドリは里山を代表する鳥で、雑食性だが非繁殖期 は主に植物食が多くなり、花の蜜も好みます。

両地区とも留鳥のヒヨドリ、コゲラが年間を通して多くみられ、一般的な環境が保たれている印象 です。

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③水鳥調査

【活動期間】 8 月~3 月

【活動場所】 東松島市の海岸地域・鳴瀬川河口・野蒜海岸・洲崎沼周辺

【内 容】 ウェットランドを利用する鳥類を調べることで湿地整備の指標とするため、現湿地および周辺の水 辺における鳥類の利用の調査をおこないました。

・ガン・カモ類調査

海岸沿いの大規模な堤防の工事が進行中ですが、周辺で工事が行われている洲崎沼でも、多くの 水鳥が休息しているのが確認できました。

10111212

洲崎沼 436 1579 666 1083 114

河口・運河 258 1094 1745 411 586

総数 694 2673 2411 1494 700

・シギ・チドリ類調査

東松島市の海岸地域・鳴瀬川河口・野蒜海岸・洲崎沼周辺の調査に加え、比較のために仙台市 東部の七北田川河口の左岸に位置する蒲生干潟の調査もおこないました。

825日 秋期の渡り初旬

東松島市野蒜地区 17羽 トウネン 7羽(野蒜海岸)

仙台市蒲生干潟 3種 約35

キアシシギ 4羽 ハマシギ 約30羽 キョウジョシギ 1

910日 秋期の渡り中旬 東松島市野蒜地区 319

シロチドリ 1羽 トウネン 17羽 ソリハシシギ 1羽 仙台市蒲生干潟 916

キアシシギ 4羽 オバシギ 2羽 ソリハシシギ 2羽 メダイチドリ 1羽 アオアシシギ 2羽 ホウロクシギ 1羽 ダイゼン 1羽 ハマシギ 2羽 エリマキシギ 1

1011日 秋期の渡り下旬 東松島市野蒜 429

シロチドリ 25羽 トウネン 2羽 オグロシギ 1羽(鳴瀬川河口) キアシシギ1羽(洲 崎沼)

仙台市蒲生干潟 624

シロチドリ 17羽 メダイチドリ 1羽 キアシシギ 2羽 アオアシシギ 1羽 ハマシギ 2羽 オグロシギ 1

(29)

- 28 -

2 各事業報告

11月から2月の冬期において、洲崎沼周辺で確認されたシギ・チドリ類 ミユビシギ、ハマシギ、タシギ、シロチドリ、イソシギ、クサシギ

東北地方の太平洋側の湿地はガン・カモ・ハクチョウ類 シギ・チドリ類の渡り鳥にとって世界的にも重要な 位置にあり、現在残っている湿地、水面、葦原などをいかし 周辺の水田などの農耕地との関係も取り入れてよ り良いウェットランドとしていきたい。

④哺乳類調査

【活動期間】 7 月~3 月

【活動場所】 東松島市野蒜ケ丘 復興の森 及び 宮戸周辺

【内 容】 地域に暮らす生物相を把握し、生物やその生息環境の保全に生かすとともに、地域の環境学習のた めのデータベース作りのため、哺乳類調査を実施しました。センサーで感知して自動撮影するカメ ラを野蒜地区復興の森、宮戸地区に設置し調査をおこないました。

・調査結果

復興の森(東松島) 宮戸地区(東松島)

アナグマ(東松島・復興の森) リス(東松島・宮戸)

これらの動物は、糞や足跡などのフィールドサインで生息は確認できていましたが、姿が確認できた ことは、個体数や生活様式を知るうえで貴重な記録となりました。

撮影種 撮影件数

ノウサギ 16

リス 1

イタチ 2

ハクビシン 19

タヌキ 33

キツネ 5

アナグマ 7

ネコ 7

その他 フクロウ カケス ヤマドリ

撮影種 撮影件数

ネズミ類 28

イタチ 8

ノウサギ 6

リス 1

ハクビシン 2

タヌキ 20

キツネ 2

その他 ヤマシギ カラス ツグミ類

(30)

⑤魚類・底生生物調査

【活動期間】10 月、2 月

【活動場所】東松島市野蒜地区の洲崎沼ウェットランド計画地

【内 容】自然環境の現状を把握し適切な管理に活用されることを考慮し、湿地及びその周辺における魚類・底 生動物の生息状況を把握することを目的として実施しました。

現地調査結果として、東西の水域を合わせて、23科4種の魚類、391315種の底生動 物が確認されました。確認種の詳細は次の表の通りです。

魚類相

ミナミメダカ、スズキ、ビリンゴ、チチブの4種が確認されました。スズキに関しては海岸近くや河 川に生息する大型の肉食魚であり、埋め立て後に移動してきた可能性が高く、海との境界部の構造から 往来はないと考えられます。また、スズキ以外の3種は稚魚が確認されており、本湿地内で繁殖してい るものと考えられます。

底生動物相

3綱9目1315種が確認されました。開放水面と周辺に避難場所となる水生植物帯が必要であるア メンボ類のほか、産卵に岸際の水生植物の確保が重要であるイトトンボ科やギンヤンマなどが確認され ており、多様な環境が確保されていることがわかりました。また、アメンボやトンボ目の昆虫は昆虫類 を食べるため、水域周辺の環境が保たれ、多くの昆虫類が生息していなければならない種であり、本湿 地の環境が良好であることがうかがえます。

これら調査により、調査地周辺の生物相が明らかになり、ウェットランド再生計画など自然環境の保全・再 生の指標となるデータを得ることができました。またそれらは人材育成や環境学習の教材として有効なものと なっています。

N o. 綱名 目名 科名 種名 学名 10月 2月 環境省R L

(2019)

宮城県R L

(2016) 外来種

1 腹足綱 - - 腹足綱の一種 G astrop od a sp .

2 軟甲綱 ヨコエビ目 - ヨコエビ目の一種 A m p h ip od a sp . 3 ワラジムシ目 ミズムシ科(甲) ミズムシ科の一種 A sellid ae sp . 4 コツブムシ科 コツブムシ科の一種 S p h aerom atid ae sp .

5 アミ目 アミ科 イサザアミ属の一種 N eom ysis sp .

6 エビ目 テナガエビ科 イソスジエビ P alaem on p acificu s

7 アメリカザリガニ科 アメリカザリガニ P rocam b aru s clarkii 緊急対策外来種

8 昆虫綱 トンボ目(蜻蛉目) イトトンボ科 アジアイトトンボ Isch n u ra asiatica 9 セスジイトトンボ P aracercion h ieroglyp h icu m

- イトトンボ科の一種 C oen agrion id ae sp .

10 ヤンマ科 ギンヤンマ A n ax p arth en op e ju liu s 11 カメムシ目(半翅目) アメンボ科 アメンボ A q u ariu s p alu d u m p alu d u m

12 ヒメアメンボ G erris latiab d om in is

- アメンボ科の一種 G errid ae sp .

13 ミズムシ科(昆) チビミズムシ属の一種 M icron ecta sp .

14 ハエ目(双翅目) ユスリカ科 ユスリカ科の一種 C h iron om id ae sp . 15 コウチュウ目(鞘翅目) ゲンゴロウ科 ヒメゲンゴロウ R h an tu s su tu ralis

16 硬骨魚綱 ダツ目 メダカ科 ミナミメダカ O ryzias latip es 絶滅危惧Ⅱ類 準絶滅危惧

17 スズキ目 スズキ科 スズキ L ateolab rax jap on icu s

18 ハゼ科 ビリンゴ G ym n ogob iu s b reu n igii

19 チチブ T rid en tiger ob scu ru s

- 4綱 11目 16科 19種 16種 7種 1 1 1

(31)

- 30 -

2 各事業報告

⑥水生昆虫調査

【活動期間】8 月

【活動場所】東松島市 宮野森小学校の通学区の水辺

【内 容】宮城県東松島市内の水生動物相を調査し、地域にどのような水辺の環境があるかを把握するとともに、

生息環境の保全や地域で実施する各種プログラムに生かすことを目的として実施しました。調査の結 果、ゲンゴロウやコオイムシなどの絶滅危惧種を含む合計 33 科 50 種が確認されました。2015 年度か らの累計では 9 綱 24 目 45 科 72 種が確認されたことになります。

調査地 採捕作業

③絶滅危惧植物調査

【活動期間】 8 月

【活動場所】 東松島市 宮野森小学校の通学区

【内 容】 東松島市の地域に残る多様な生物が生息する環境を保全・再生することを目的として継続して実施 しています。調査地点 64p.のうち工事により確認できない 8p.を除き、環境改善 0p、現状維持 9p、

生育確認も状況悪化 11p、消失 36p(新たに消失が 6p)という結果でした。昨年に比べ、悪化・消 失が7種多くなっており、年を追うごとに環境が悪化している状況です。また、ミズオオバコにつ いては複数個所で保護しています。

調査風景 保護しているミズオオバコ

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絶滅危惧種保全 ※経団連自然保護基金助成事業 東松島市で見つかった絶滅危惧種の保全活動を実施しました。

【活動期間】 通年

【活動場所】 東松島市 野蒜地区、宮戸地区

【内 容】 高台造成工事や防潮堤工事によって、絶滅の恐れのある植物の生息環境がなくなり、地域から失わ れてしまう恐れがあったため、2014 年度より保全作業を実施しています。

昨年度採取したハマサジの種子を東松島復興の森のツリーハウス前湿地に播種しました。これま でに植え付けたエリアのハマサジについては生育状況の確認調査を行い、そのうちの復興工事が 始まった生育地からハマサジの株を掘り取り、ツリーハウス前湿地に移植しました。

また、防潮堤工事により生育地が縮小しているハマナスについても、長野県黒姫に持ち帰った種 子から発芽・生長した株を東松島復興の森のツリーハウス前に移植しました。

栽培したハマナス ハマナスの植え付け(7 月) ハマナスの活着(9 月)

ハマサジを播種した湿地(4 月) 本葉展葉したハマサジ(7 月) ハマサジの生長(9 月)

ハマサジの掘り取り(10 月) ハマサジの植え付け(10 月) 生育地の工事状況(9 月)

(33)

- 32 -

2 各事業報告

復興のための森づくり

東松島市の森の学校づくりに向けて、地域の森の生態系を回復するべく“復興のための森づくり”を 2012 年よ り開始しました。地域の方とともに手入れ作業をおこない、地域との連携による森づくりから、地域の学校づくり について皆さんと考えていきます。

復興の森整備作業

今年度は、地域の皆様、企業の皆様と以下の日程で実施しました。

【活動場所】 宮城県東松島市野蒜が丘 復興の森 実施日 参加人数 活動内容

5月26日(土) 34人

【復興の森の整備】

参加者に対して整備作業の前に、復興の森についてと、どのような経緯で 整備をしているのかを説明し、そして、今の森の様子を案内しました。作業 は林床まで光が届かなくなってしまった谷戸の藪刈り作業と散策路の整備 を実施しました。先に経緯や森の様子を案内したことで、森を整備する必要 性を理解して作業ができました。

5月27日(日) 26人

谷戸の藪刈り作業 散策路の整備 参加者と集合写真

実施日 参加人数 活動内容

10月27日(日) 約70人

【森の整備活動 散策路へのウッドチップ敷き】

復興の森に隣接する宮野森小学校の PTA の皆さんと散策路にウッドチッ プを敷く作業を実施しました。林内の散策路約500mに敷くことができまし た。散策路にウッドチップを敷くことで、人が歩くことによって森に与える 踏圧を和らげ、地面を固めずに済み、生育する植物を守ることにつながりま す。

ウッドチップ敷き作業 チップ敷き 作業前 チップ敷き 作業後

(34)

森と海の恵まれた環境を活かし復興の森での森づくりプログラムや海のプログラムを実施し、森と海のつながり への理解を深めます。また宮野森小学校にて生きものの授業を実施しました。森の学校として地域の自然環境を活 かしたプログラムを展開し、今後も活動を通して学校、先生方との連携を深め、地域に根差した授業となるよう進 めていきます。

・森の学校

【活動場所】 東松島市野蒜大茂倉 復興の森

実施日 参加人数 活動内容

7月28日(土) 11人

【森を知り、森を楽しむ活動】

森を楽しみながら、森の保全について考える活動を実施しました。

森の整備に必要な間伐作業はどのように行われているのか、木の伐採の仕方 などを見学し、伐採した木の枝払い作業を参加者と実施しました。また、森 に親しみを持つため森遊びを実施。森の手入れを行うことで、森での楽しみ が増えることを実感してもらいました。

オープニング・森の説明 間伐体験 集合写真

実施日 参加人数 活動内容

1月27日(日) 11人

【森で過ごす1日 間伐体験、キノコのほだ木づくり等】

森に親しみを持ってもらうと同時に森を楽しむ活動を実施しました。森内 の木が込み入ったエリアで間伐し、キノコのほだ木にしました。切った木や、

枯れた木を集め火熾しし、昼食作りも実施しました。

間伐体験 キノコのコマ打ち 火熾し体験

(35)

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2 各事業報告

・宮野森小学校3年生 環境プログラム

総合学習の授業で外部講師を担当し授業運営、助言を行っています。

復興の森を利用したふるさとの自然を学ぶ生きもの授業

【実施日】

2018年 5月24日、7月11日、9月13日、11月15日、2019年 2月3日(発表会)、3月5日

【実施内容】

5月24日(木) 【活動の動機付けを図る導入プログラム‣田んぼ(水辺)の生き物観察】

1年間を通して授業を行うにあたり、考え方の基礎となる生きものの視点(他社の立場)に立つ方法を学ぶ授 業を実施しました。

教室では、身近な生きもの「メダカ」を例にして、身体のつくりや暮らし方から、メダカが生育するのに必要 な環境について考えました。教室での動機づけの後、屋外に出て、復興の森や田んぼ(水辺)に暮らす実際の 生きものを捕獲し、観察しました。触ったり、顕微鏡で良く観察し、それぞれの生きものにどんな違いや特徴 があるのかを調べ記録しました。

生き物の気持ちになる方法を学ぶ 復興の森、水辺の生きもの観察 捕まえた生きものを観察、記録

7月11日(水) 【復興の森に暮らす生きもの観察】

5月は水辺を中心に活動しましたが、7月は復興の森に棲む生きものも観察しました。

水辺とは異なる環境を利用する森の中の生きものや季節によって見られる生きものの違いについて観察しま した。

種がついた植物や木を動き回る昆虫、爬虫類のアオダイショウが見られました。

復興の森の生きもの観察 水辺の生き物観察 アオダイショウを観察

(36)

9月13日(木) 【調べた生き物のためのすみかづくり・生きものたちへの働きがけ】

復興の森で見られた生きものや、調べた生きものたちが、棲みやすくなるように、また、より観察しやすくな るようにはどうしたら良いか、子どもたちが考えたリフォームプロジェクトの発表を行い、その内容について 生きものの視点で考え時に、良い点と悪い点についてアドバイスを行いました。

その後、子どもたちの意見をもとにツリーハウス前の池をより生き物が棲みやすいように改善するために、植 物の移植作業を行いました。

リフォームプロジェクトの発表 移植する植物の掘り取り作業 掘り取った植物を水辺に移植

11月5日(木) 【森(木)と人の暮らしのつながりを考える】

ここまでの授業で森には多くの生きものが暮らしていることがわかりました。その森と自分達の暮らしにはど んなつながりがあるのか、そして森を守るにはどうしたらよいかを考えました。環境が悪くても自ら動けない 森の植物に注目し、今より良い環境にする方法を考え発表、共有しました。その結果から、木が混み合って生 長しづらくなっている場所の間伐を実施しました。切った木は輪切りにして名札を作り、日常の中でも色々な ところで木が利用されていることに気付いてもらい、森(木)と人との暮らしのつながりを感じてもらいまし た。

植物を守るためにできることを考える 環境を良くするための間伐作業体験 伐採木を輪切りにして名札に

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参照

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