コロナ禍における臨時休業と「令和の日本型学校教育」

Download (0)

Full text

(1)

本稿は,2020年から世界的な規模で広がった新 型コロナウイルス感染症拡大の中で,学校教育を どのように維持する対策をとってきたのか,文部 科学省の対応と中央教育審議会議事録などを通し て,特に教育の保障の観点で考察するものである.

2020年1月31日に開催されたWHO緊急委員会 では,その当時,世界的に広がりを見せ始めてい た感染症について,「国際的に懸念される公衆衛 生上の緊急事態」に該当すると発表した.これが 今日に続く,新型コロナウイルス感染症に関して,

危機意識を高めることになるきっかけであり,日 本政府もこの後,感染症対策を進めていくことに なった.2月末には,内閣総理大臣の記者会見を 通じて,初等中等教育機関に対して,春休みまで の一斉休業が発表されることになり,教育機関に 危機意識を持たせることとなった.4月になる と,全国的に各都道府県に対して緊急事態宣言が 発出され,不要不急の外出が制限されることにな

り,どのような形で学校教育を維持していけるの か,学校,教育委員会,文部科学省それぞれの立 場で,対応がとられてきた.

いわゆるパンデミックにあっては,人の接触が 感染を拡大することとなるため,学校という人が 集団で活動する場は,その活動をこれまで通りの 形で維持していくことが困難となる.このため,

感染拡大の初期段階では,課題を家庭に配布して,

宿題のように行わせるとか,通信会議システムを 活用するとか,極力学校に登校しない形で,教育 活動を持続する形がとられることになった.この ように,学校の活動自体に対して変更を迫られた ことは,学校や教育そのものについて,その目的 や機能について,再検討することにつながった.

折しも,2019年4月に,文部科学大臣から中央 教育審議会に対して,「新しい時代の初等中等教 育の在り方について」が諮問されていたため,こ の会議の中で,学校における新型コロナウイルス 感染症対策とそうした中での教育の在り方が検討

コロナ禍における臨時休業と「令和の日本型学校教育」

-「学びの保障」の観点から

The Temporary Closures in the COVID-19 Calamity and “Japanese-type School Education in Reiwa Era”:

From a Point of View of “Ensuring Children’s Learning”

吉村日出東 帝京科学大学

Hidetou YOSHIMURA Teikyo University of Science

要約: 新型コロナウイルス感染症が拡大していく中で,日本の学校教育について,その機能や 役割などの再検討がなされることになった.それは,感染症という人を介在して病の流行する社 会にあって,学校という集団活動を主とした機関を,維持していくことの意義について考える きっかけとなった.

 本稿で取り上げた中央審議会の「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」は,2030年に 向けた日本の初等中等教育の在り方を審議する場であったが,折しもの,新型コロナウイルス感 染症に対応するため,どうしていくかという問題に,会議の内容が変化していくことになった.

特に学校の臨時休業に伴い,子供の「学びの保障」ということが,目前の課題として浮上したし たことは,学習形態やその方法を考えるきっかけともなった.

 このことによって,教育活動の意義として,授業に出席し,対面で行い,集団的,協働的活動 することの重要性が再認識されることとなった.これが「日本型学校教育」と呼ばれる知・徳・

体を総合的に形成していく教育に注目することに繋がったのである.

(2)

されていった.

本稿では,この諮問に対する会議・部会での会 議内容を検討することから,学校の目的・機能に ついての再検討につながったものは何か,特に,

学校で学べない状況にあって,児童・生徒の教育 を受ける権利は,どのように保障しようとしたの か,考察していく.

Ⅰ.一斉休業のもたらした意味

2021年1月5日,新年最初の萩生田光一文部 科学大臣記者会見が行われた.この時期は,前年 11月から新型コロナウイルス感染症の拡大が続 いていた時期であり,いわゆる第3波と呼ばれ,

この記者会見の2日後の7日の東京都の新規感染 者数は,2848人となり,2千人を超えたことが ニュースとして駆け巡った1)

この大臣記者会見で緊急事態宣言が発出された 状況での学校教育の在り方について,「地域一斉 の臨時休業は,学校における新型コロナウイルス 感染症のこれまでの感染状況や特性を考慮すれ ば,当該地域の社会経済活動全体を停止するよう な場合に採るべき措置であり,子供の健やかな学 びや子供たちの心身への影響の観点から避けるこ とが適切だと考えております」と述べ2),一斉休 業を否定している.

この文科大臣発言は,前年2月27日に首相官 邸で開催された第15回新型コロナウイルス感染 症対策本部において,安倍晋三内閣総理大臣が

「全国の全ての小学校,中学校,高等学校,特別 支援学校について,来週3月2日から春休みま で,臨時休業を行うよう要請します」と述べ,全 国の学校が一斉休業にはいったことを念頭に置い ている.その当時,新型コロナウイルス感染が増 加傾向にあったとは言え,学齢児童・生徒の感染 は,北海道以外で確認されておらず,その状況 で,学年末の大切な時期に休校措置をとることに は批判も多くみられた.実際,対策本部での発表 後に日を改められて行われた記者会見では,「子 供たちにとって3月は学年の最後,卒業前,進学 前の大切な時期です.学年を共に過ごした友達と の思い出をつくるこの時期に,学校を休みとする 措置を講じるのは断腸の思いです」と述べ3),や むを得ない措置であったことを強調している.

新型コロナウイルス感染症対策には,加藤厚生 大臣,梶山経済産業大臣,赤羽国土交通大臣が中 心となり,経済団体に対して,リモートワークの推

進や臨時休暇の取得の促進を求めてきたこともあ り,それに引きずられた政策であったといえる4). 一方で,文部科学省側としては,経済活動と教育 活動を同等の措置をとるものとみておらず,安易 な休業措置は考えておらず,それは後の政策にも 明確に示されている.2021年1月の萩生田文科 大臣が,一斉休校に対して否定的な見解を示した のには,こうした意味があったといえる.

Ⅱ.2010年代の教育と2030年を見据えた教育 2020年代以降の新しい時代の教育を見通した 教育の在り方を諮問したのが,2019年4月に中 央教育審議会に諮問された「新しい時代の初等中 等教育の在り方について」である.この諮問につ いては,中教審の中に「新しい時代の初等中等教 育の在り方特別部会」を設置し,19回の会議を 経て,2021年1月26日,「「令和の日本型学校教 育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性 を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの 実現~(答申)」が示された.

この諮問が行われる直近の2010年代の教育政 策について整理してみると,次の通りとなる.①

「いじめ防止対策推進法」(2013年9月28日),②

「義務教育の段階における普通教育に相当する教 育の機会の確保等に関する法律」(2016年12月14 日),③「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及 び特別支援学校の学習指導要領の改善及び必要な 方策等について(答申)」(2016年12月21日)な どがあげられる.

①に関しては,大津市いじめ事件をきっかけと して作成された法律であり,その第一条で目的を 次のように記載している.

この法律は,いじめは,いじめを受けた児童 等の教育を受ける権利を著しく侵害し,その 心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影 響を与えるのみならず,その生命又は身体に 重大な危険を生じさせる恐れがあるものであ ることに鑑み,児童等の尊厳を保持するた め,いじめの防止等(いじめの防止,いじめ の早期発見及びいじめへの対策をいう.以下 同じ.)のための対策に関し,基本理念を定 め,国及び地方公共団体等の責務を明らかに し,並びにいじめの防止等のための対策に関 する基本的な方針の策定について定めるとと もに,いじめの防止等のための対策の基本と なる事項を定めることにより,いじめ防止等

(3)

のための対策を総合的かつ効果的に推進する ことを目的とする.

②については,法律の第一条で,その目的を

「教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び 児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の 趣旨にのっとり,教育機会の確保等に関する施策 に関し,基本理念を定め,並びに国及び地方公共 団体の責務を明らかにする」ことが示されてい る.これを受けて,第三条で基本理念を次のよう に定めている.

教育機会の確保等に関する施策は,次に掲げ る事項を基本理念として行われなければなら ない.

一 すべての児童生徒が豊かに学校生活を送 り,安心して教育を受けられるよう,学校に おける環境の確保が図られるようにすること.

二 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の 実情を踏まえ,個々の不登校児童生徒の状況 に応じた必要な支援が行われるようにするこ と.

三 不登校児童生徒が安心して教育を十分に 受けられるよう,学校における環境の整備が 図られるようにすること.

四 義務教育の段階における普通教育に相当 する教育を十分に受けていない者の意思を十 分に尊重しつつ,その年齢又は国籍その他の 置かれている事情にかかわりなく,その能力 に応じた教育を開ける機会が確保されるよう にするとともに,その者が,その教育を通じ て,社会において自立的に生きる基礎を培 い,豊かな人生を送ることができるよう,そ の教育水準の維持向上が図られるようにする こと.

五 国,地方公共団体,教育機会の確保等に 関する活動を行う民間の団体その他の関係者 の相互の密接な連携の下に行われるようにす ること.

この①②に関しては,子供の教育を受ける権利 を保障する画期的な法律として制定された.①の いじめ防止対策推進法では,いじめ自体を社会的 に許容できるものとは認めず,その第四条で「児 童等は,いじめを行ってはならない」と明確に禁 止している.このことによって,いじめを受ける ことによって教育を受ける権利が侵害されること を排除しようとしている.②の義務教育の段階に おける普通教育に相当する教育の機会の確保等に

関する法律では,上記に示した第三条の基本理念 からも明らかなように,すべての児童生徒につい て普通教育の機会を確保させるものとして立法さ れている.また,現代的教育課題となっている不 登校児童生徒についても学校での学習機会の確保 と同時に多様な学習機会の提供に関しても言及し ており,いかにして教育機会の保障を行うべきな のか,国に対しても,この法律の第四条で「教育 機会の確保等に関する施策」の実施と責務を明確 にしている.

こうした基本的人権としての教育を保障してい こうという意識の向上を背景として,2020年代 の学習指導要領に関する方針として示されたのが

③である.ここでは,2015年に日本とOECDと の間で実施された政策対話に基づく「2030年の 教育の在り方」について検討課題となったことに より,現代的な教育課題として,教育課程の検討 がなされ,次世代の学校や社会との連携・協働,

主体的・対話的で深い学びなどの新しい観点での 学習指導要領改訂がなされていくこととなった.

そして,こうした教育改革の流れから,2030 年を見据えた新しい時代の教育が検討課題として 明確となり,それによって「新しい時代の初等中 等教育の在り方について」が諮問され,そこから

「令和の日本型学校教育」という概念が登場して くることになる.

Ⅲ.新しい時代の初等中等教育の在り方部会の審 議と新型コロナウイルス感染症の拡大 新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会 が,2019年12月に論点とりまとめを行い,2020 年代の学校教育の姿として「多様な子供たちを誰 一人取り残すことのない個別最適な学びの実現 や,その学びを支えるための質の高い教育活動を 実施可能とする環境の整備の必要性」が示され た.2020年を迎え,その方向で議論を進めてい く時期に,新型コロナウイルス感染症という未知 のパンデミックに見舞われることになった.この 会議は2019年11月21日の第5回会議で「これま での審議を踏まえた論点整理(案)について」が 審議され,第6回の開催は2020年2月21日に開 催されている.この後,首相による学校の一斉休 業の発表が2月27日に行われ,一部の学校では,

一時的に機能停止となった.こうした状況を踏ま えて,4月27日に開催された第7回会議では,

「全国の学校教育関係者の皆さんへのメッセージ

(4)

(案)について」が審議され,これが「全国の学 校関係者の皆さんへ」という新型コロナウイルス 感染症の拡大の中で臨時休業などによって学校に 登校できない子供たちに対する支援と学校再開後 の在り方について,提言を行った.

(1)「全国の学校関係者のみなさんへ」

2020年4月30日に示された「全国の学校関係 者のみなさんへ」は,新型コロナウイルス感染症 拡大の中で,全国の学校関係者が対応に苦慮する 中,子供たちの学びを保障するために,中央教育 審議会の初等中等教育分科会と新しい時代の初等 中等教育の在り方特別部会の合同で発表された提 言である.そこでは,学校の臨時休業についての 危機意識が明確に示されており,論点を三つにし て次のように述べている.

①「多様な手段による子供の状況把握,学びの保 障,心のケアなどの対応」

これは,学校に関して「社会のセーフティー ネット」としての役割・機能を持つことを重視し て,臨時休業下にあっても「電子メール,ホーム ページ等のICTや電話,郵便等のあらゆる手段 を活用して,できる限り子供たちや保護者とつな がることを意識する」よう求めたものである.こ こでは,学校が児童生徒の学習の場という狭い理 解から,地域社会とつながり,心のケアや心身の 健康保持についての機能も持ち,福祉的役割も期 待される存在であることを意識したものとなって いる.

②「文科省による教育現場への徹底した支援」

新型コロナウイルス感染症拡大という状況が,

これまでに前例のない事態であるという認識を示 し,それに対する文部科学省の支援を求めたもの となっている.具体的には,「子供たちが学びを 継続でき,それぞれ着実に進級・卒業と次のス テップに進むことができるよう,入試の在り方も 含め,学校現場の声を聴き,そのニーズをしっか り受け止め,子供や保護者,教職員に寄り添っ た」支援を挙げている.特に「制度の柔軟な運 用・改訂や必要十分な財政措置」といったことを 求めたものとなっている.

③「子供たちの学びあう場の確保」

学校の臨時休業がもたらした子供が登校できな い状況においては,ICTの活用が有効な手段とし て「GIGAスクール構想」の加速を提言している.

その一方で,ICT教育が整備されたとしても,

「学校は学びの場であるとともに,人と安全・安

心につながることができる居場所」であり,「学 校とは単に授業により知識を学ぶだけではなく,

学校という場や地域社会で様々な集団活動を行 い,多様な他者と関わるとともに文化や社会と対 話することを通じて人を育てる営み」だという認 識を示している.そして,感染症の収束後も学校 教育において「不登校や特別な支援必要とする子 供を含め,多様な子供たちを誰一人取り残さない 個別最適化された学びの実現」を進めていくこと を提言している.

このように,この提言では,新型コロナウイル ス感染症の拡大によって,臨時休業となり学校に 登校できない児童生徒に対しての支援について,

中央教育審議会としての方向性を示すものとなっ たといえる.

(2)第8回特別部会とコロナ禍での学び

第7回特別部会に引き続き,5月26日に開催 された第8回特別部会でも議題に「新型コロナウ イルス感染症対策に係る対応等について」が提示 され,会議の開催方法もウェッブ会議方式によっ て行われ,感染症の拡大の中での会議であること を伺わせるものとなっている.

この会議では,議題にある通り,感染症対策に 対応する教育の在り方が議論されている.会議の 初めには,その議論の論点を明確にするため,事 務局(板倉教育課程企画室長)から,直近5月 15日に発出された初等中等教育局長通知「新型 コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育 活動等の実施における『学びの保障』の方向性に ついて」の説明が行われている.この通知は,

「感染症対策を講じながら最大限子供たちの健や かな学びを保障することを目指して,取組みの方 向性を示すもの」とされ,そのためには「学校・

家庭・地域が連携し,あらゆる手段で子供たちを 誰一人取り残すことなく,最大限に学びを保障す るという観点に立って対応していくことが大切」

だと述べられており,4月30日の「全国の学校 関係者のみなさんへ」を受けて具体化させたもの といえる.会議での事務局説明では「感染拡大防 止に十分配慮しながら,学校における指導を充実 させていく必要があります.具体的には,学校の 空き教室等も活用しながら.小6・中3・高3を 優先させつつ分散登校すること,長期休業期間や 土曜日の活用,1コマ40分・45分に短縮しての 1日当たりのコマ数の増加などの工夫が考えられ ます」とあり5),学校での教育活動の充実を挙げ

(5)

ている.

こうした説明ののち,特別部会委員による議論 では,分散登校とオンライン授業についての実際 上の課題などが指摘されている.特に学校が出席 至上主義であることについての疑問が示され,全 国町村教育長会の吉田(信)委員からは「オンラ インがしっかりと整備されてきたときに,いわゆ る出席至上主義みたいなものですね,学校に行か なくてはならないというものについては,見直し ていくべきではないかということを私は感じてい るところでございます」という意見も出されてい る6).一方で,富士見ヶ丘中学高校校長の吉田晋 委員は,「私は高校以下の中等教育,初等教育とい うのは,やはり人と人が会うことによって,多数 者教育によって実践されている部分,効果のある 部分というのは大きいと思っています」と述べ7), 立場によって異なる見方が示されている.

これについて千葉大学の貞広委員は「この出席 至上主義,対面至上主義というものをなかなか我々,

払拭できないで来たわけですけれども,実際に やってみると,条件さえ整えば何とかなる部分も あるということがわかりました.もちろん,二見 委員がおっしゃったように,非常にそれは自治体 によっても格差のあるものですし,吉田(晋)委 員がおっしゃったように全て非対面でいいという わけではなく,やはり社会的機能という学校が 持っている機能を維持するという面では,何らか の形の他者とのかかわりが必要ですけれども,結 構,思ったより何とかなるというところなんだと 思うんですね」と述べている8)

ここで分かるように,授業面では,オンライン によって登校しないという選択も可能であること が示されているものの,社会的機能面では,対面 による必要性を指摘したものとなっている.この ことは,現状について,加治佐部会長代理が「今 村委員からこの間のコロナにより休業している子 供たちに様々な支援がなされたことによって,積 極的な不登校の保護者,子供が増える兆しがある というエビデンスが示された」として9),この会 議で,就学義務のむずかしさが指摘されている.

(3)第9回特別部会における「新型コロナウイル ス感染症を踏まえた,初等中等教育における これからの遠隔・オンライン教育等の在り方 について」

第九回特別部会は,6月11日にウェッブ会議に て開催された.この回の議題は,「新型コロナウ

イルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の 在り方等について」と「いじめ・不登校・児童虐 待への対応策の充実について」というものであ り,今回も,新型コロナウイルス感染症が学校教 育に与えている影響の大きさが読み取れるものと なっている.

会議の初めに事務局から論点整理のため提示さ れた資料が,「新型コロナウイルス感染症を踏ま えた,初等中等教育におけるこれからの遠隔・オ ンライン教育等の在り方について」というもので ある.そこでは,初等中等教育の本質的な役割と して,特に学校教育について,①学習機会の保障 する役割,②全人的な発達・成長を保障する役 割,③安全安心な居場所・セーフティーネットと しての役割が示され,新型コロナウイルス感染症 に伴う臨時休業により,その重要性の再認識がな されたとしている.また,学校が集団活動を行う ことに注目し,諮問文に記載されていた「知・

徳・体を一体ではぐくむ「日本型学校教育」とい う文言から,ここでは「国際的にも高く評価され ている「日本型学校教育」」に留意することが示 されている.さらに,Society5.0時代の教育とし てICT教育を活用しながら対話的・協働的な学 習の実現を示している.

以上のような役割について明確にし,初等中等 教育の特質として協働的な学び合いの中で行われ ることを明確にしている.そして,臨時休業の行 われている段階においての「非常時の対応として,

遠隔・オンライン教育やICT等を活用した家庭 学習,地域社会の専門的機関等との連携など,あ らゆる手段を引き続き講じる」としている.

事務局の説明では,このほか分散登校にも触 れ,「学校の臨時休業を行う場合でも,登校日を 設けて,分散登校を行う.学校教育活動を継続す ることが重要」だとしている10).また,臨時休業 の判断は,「学びの保障」を図るためには,慎重 に行っていくことにも言及している.

会議の議論の中で,委員からの意見として,日 本型学校教育について次のような意見があった.

それは,臨時休業等で授業時間数の消化をめぐる 中で,「ひたすら7時間授業ですとか,全部教科 の授業で埋めて,そして,それで消化すれば役を 果たしたということよりも,やはり私は学校の日 数,学校という日常の生活,その中に,授業もあ れば生活もあるということが重要であって,そう したときに,この国の教育課程の一つの特徴とい

(6)

うのは,教科と教科外の2領域で構成されている という,このことが国際的にも評価されている一 つの観点(略)こういう事態であっても,教科と 教科外のというふうな,その調和のとれた学校の 日常を確保していこうという,こういうスタンス をやっぱり持ってほしいと思います」というもの である11)

このように,学校での生活について重視する姿 勢が認められるものであった.

結語 

 臨時休業による学校教育に関する理解の変化 2020年2月から顕在化してきた新型コロナウ イルス感染症を受けて,新しい時代の初等中等教 育の在り方特別部会では,2020年4月の第7回 会議以降,コロナ禍での学校教育の在り方が中心 課題となっている.では,そこでの課題はどう いったことを知り上げていのであろうか.実は,

コロナ禍での教育の最大の課題が,臨時休業につ いてであった.新型コロナウイルス感染症対策本 部の方針によって,一斉休業が導入されることと なったが,それは感染拡大を抑えるためのもので あり,経済団体等に要請したリモートワークの推 進と休暇等の積極的な活用と同様の扱いで進めら れたものであった.

しかしながら,教育は人類普遍の基本的人権で あることを想起すれば,学校の機能停止となるよ うな臨時休業が本来認められるべきものではな い.そのため,文科省は,3月の臨時休業を踏ま えて,4月の全国都道府県に発出された緊急事態 宣言下において,いかに学校機能を維持するかと いうことを施策として進めている.これが「学び の保障」として特別部会でも課題の中心を占めて いくこととなった.

今一度整理してみると,2019年11月21日の新 しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の第5 回会合でまとめられた「これまでの審議を踏まえ た論点取りまとめ(素案)」には,「学びの保障」

に関する記載は見当たらない.あくまで,個別的 な課題として,ICT,教科担任制,教育課程,教 師の在り方,高等学校教育,幼児教育,外国人児 童生徒,特別支援教育などが取り上げられている ものであった.それが,2020年4月の「全国の 学校関係者のみなさんへ」では,臨時休業に対す る危機意識から,子供の学びの継続についてどう するかが課題となっている.この後の特別部会で

の教育に関する観点は,「教育の保障」であり,

いかにそれを確保するかに問題意識がシフトして きている.そして,ここでいう教育の保障は,単 に学力形成のための教科指導を中心とした学習面 を指すのではなく,道徳や特別活動など教科外指 導も含めたものを指し,それが,知・徳・体の総 合的形成を目指す「日本型学校教育」として,整 理されてきたのである.

中教審に諮問した際には,明治維新から150年 の教育を指す言葉として,「日本型学校教育」が 使用されていたものが,コロナ禍において学校に 登校できない状況の中で,子供の総合的成長をど うして保障するかという課題が示され,それをよ り明確にするための概念として「日本型学校教 育」が使用されていくようになった.

1) 「東京都新型コロナ2447人感染確認2日連続 で 過 去 最 多 更 新 」『NHK NEWSWEB』

(2021年1月7日23時11分)

(https://www.3.nhk.or.jp/news/html/

20210107/k10012801261000.html)

2) 「萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和 3年1月5日)」『文部科学省ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/

detail/mext_00125.html)

3) 「令和2年2月29日安倍内閣総理大臣記者会 見」『首相官邸ホームページ』

(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/

statement/2020/0229kaiken.html)

4) 新型コロナウイルス感染症対策本部で決定さ れた「新型コロナウイルス感染症対策の基本 方針」とそれに基づき,召集された官邸開催 会議に引きずられていった.

5) 「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部 会(第8回)議事録」5頁.

6) 前掲議事録 17頁.

7) 前掲議事録 19~20頁.

8) 前掲議事録 20頁.

9) 前掲議事録 18頁.

10) 「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部 会(第9回)議事録」3頁.

11) 前掲議事録 14頁.

参考文献

新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第

(7)

4回)議事録」『文部科学省ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo3/083/siryo/1422565_00005.

htm)

新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第 5回)議事録」『文部科学省ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo3/083/siryo/1422565_00006.

htm)

新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第 6回)議事録」『文部科学省ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo3/083/siryo/1422565_00009.

htm)

新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第 7回)議事録」『文部科学省ホームページ』

(https:// www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo3/083/siryo/1422565_00012.

htm)

新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第 8回)議事録」『文部科学省ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo3/083/siryo/1422565_00013.

htm)

新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第 9回)議事録」『文部科学省ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo3/083/siryo/1422565_00014.

htm)

「新しい時代の初等中等教育の在り方について」

(31文科初第49号)『文部科学省ホームペー ジ』

(https://www.mext.go.jp/component/b_

menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfi le/2019/04/18/1415875_1_1.pdf)

「これまでの審議を踏まえた論点取りまとめ(素 案)」『文部科学省ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/content/20200227- mxt syoto02-000002887_02.pdf)

「全国の学校関係者のみなさんへ」『文部科学省 ホームページ』

(https://www.mext.go.jp/content/20200526- mext_syoto02-000007441_9.pdf)

「新型コロナウイルス感染症を踏まえた,初等中 等教育におけるこれからの遠隔・オンライン 教育等の在り方について」『文部科学省ホー

ムページ』

(https://www.mext.go.jp/content/20200611- mext_syoto02-000007828_4.pdf)

「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支 援学校の学習指導要領の改善及び必要な方策 等について(答申)」『文部科学省ホームペー ジ』

(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/

chukyo/chukyo0/toushin/__iscFiles/

afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf)

(8)

Figure

Updating...

References

Related subjects :