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調査目的本稿は、LINEの方言・ご当地スタンプで、どのような語の出現頻度が高いかを明ら かにすることを目的とする。林直樹(2018)では「作成主体が何なのか」「当該地域を外 部に周知することを目的としているスタンプか」を観点として挙げている。これを参考 にして、説明文などに公式性が示されているスタンプについても語彙がどのようになっ ているかを分析する。
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調査概要本稿では、図1のように、トーク画面に送信されるイラストひとつひとつをスタンプ と呼ぶ。また、図2のようにスタンプを収録した商品単位としてのスタンプ(一般名称) を、便宜上ユニットと呼ぶことにする。ただし、かえって意味が通じにくい場合はスタ ンプ(ユニットの意)などと表す。
図
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送信されるイラスト図
2
スタンプを収録しているものLINE スタンプの 方言 の 語彙 の 特徴
―13道府県のスタンプと公式性のあるスタンプにかんして―
伊豫田 里 沙
〈学生レポート〉
LINE 方言 語彙 特徴
LINEスタンプ(ユニットの意)をアーカイブしているサイトであるスタリコに掲載さ
れているユニットとスタンプを調査の対象とする。「方言・ご当地」と分類されたユニッ トから林直樹(2018)を参考として都道府県を指定し、絞り込みを行う。
林直樹(2018)において、「出現点数」が20以上の北海道、宮城県、山形県、静岡県、 愛知県、大阪府、広島県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県の13 道府県を調査対象とする。それぞれで表示された上位20ユニットを調査する。調査対 象のスタンプは2019年7月15日から7月22日にかけて取得した。
これらのスタンプにある語をExcelに文字起こしした。スタンプを文字起こしする際 に以下のような操作を施した。
・ 「…。」「!!」など、記号でしか書かれていないものや文字データを含まないものを
「-」と記入する。
・ 「ガーン」や「もー」などの擬音語・擬声語をすべて全角カナに置き換えて記入する。
なお、静岡の「やいそー」のように特徴的だと思われるものはこの操作を行わない。
・ 「なぁ」「なあ」「なー」のように長母音を示すものは「なー」で統一する。
・ 1ユニットには最大スタンプ40個のスタンプを収録できる。スタンプの数が40以 下のものは、40との差異分を「×」と記入する。
複数の道府県に重複しているユニットもあるが、指定した道府県の語として集計した。
次に、スタンプの公式性については以下の規定を設けた。
・ ユニットのタイトルや説明文に地域や名産のPRキャラクターであることが記載さ れている。
・ ユニットのタイトルや説明文で企業のキャラクターであることが説明されている。
・ 芸能人とコラボレーションしたもの。
以上の3つの条件のいずれかに当てはまるユニットに収録されているスタンプを、公 式性のあるスタンプとして分析の対象とする。
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調査結果取得したスタンプの数をまとめたものが表1である。総数は調査対象のスタンプの数 を表している。1ユニット当たり最大40個のスタンプが収録されており、各道府県でユ ニット20点分調査したので、総数の最大値は800である。個数はスタンプの総数から「-」 で表記されるスタンプを除いた数を表している。
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表
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文字起こししたスタンプの数道府県 総数 個数 道府県 総数 個数 道府県 総数 個数
北海道 784 628 大阪 776 652 熊本 800 777 宮城 800 752 広島 792 781 鹿児島 800 783 山形 800 700 福岡 800 760 沖縄 800 640
静岡 800 679 佐賀 800 741 合計 10352 9386
愛知 800 790 長崎 800 703
各道府県で特徴的だと思われる任意の語をExcelで計上した。以下の表は各道府県の 任意の語のうち出現頻度の上位15語である。頻度が同じものも併記したため15語を前 後する道府県もある。北海道の「なし/て」のようにスラッシュの入っているものは「な して」「なした」などのデータがあったために、ボールド体の「なし」で抽出、計上した ことを示している。また山形の「めんこい・めんごい」は「めんこい」と「めんごい」の 両方を抽出語とし、その和を示している。表の語は最も代表的と思われる形に統一した。
表
2
各道府県の高頻度語北海道
語 頻度 語 頻度 語 頻度
なまら 31 かい 15 いず/い 10
っしょ 27 しばれ/る 15 こわ/い 10
なし/て 21 めんこ/い 13 はんか/くさい 10
わや 19 なんま 12 おばん 9
だべ 18 ゆる/く 11 しょや 9
したっけ 16
宮城
んだ 114 おしょ/すい 13 しゃね 10
んで 35 やんだ 13 むつ/ける 10
だべ 25 い/がった 12 めんこ/い 9
っぺ 21 おばん 12 ごしゃ/ぐ 9
けろ 14 おだ/つ 11 なじょ/した 9
山形
んだ 115 どさ 12 おもしゃい 5
けろ 29 やん 11 たまげ/た 5
だべ 22 ごしゃ/ぐ 9 さすけ/ない 5
わが/る 15 めんこい・めんごい 9 ほだな 4
しゃね 15 がんす 7 ちゃっちゃ 4
LINE 方言 語彙 特徴
いぐ 14
静岡
だら 43 しょん 16 だか 6
ばか 32 じゃん 14 てこ 5
うち/っち 24 えらい 11 かんだる/い 5
だに 23 やいやい 10 ぶしょった/い 5
だ/もんで 18 ずら 7
愛知
かん 69 まった・まう 14 まんだ 11
がね 47 りん 14 鍵/かった 11
でら 47 だ/もんで 14 あらすか 8
がや 47 はよ 12 えりゃー 8
えらい 16 わや・ワヤ 11 けった・ケッタ 8
大阪
なん 40 ほな 13 どや・ドヤ 7
せや 38 おおき/に 12 まいど 7
ちゃう・ちゃい 22 アホ・あほ 11 せん 6
へん 22 なんでやねん 11 かまへん・かめへん 6
めっちゃ・めっさ 16 えらい 8 おもろ/い 6
広島
ぶち・ブチ 44 たいぎ/い 16 しょー 8
さい・ちゃい 38 ほい 14 たちまち 7
なん 37 はぶて/る 14 さえん 7
けん 27 ほう・ほー 12 しもーた・しもうた 6
わや・ワヤ 17 ばり 8
福岡
よか・良か 59 なん/しよ 25 せからし/い 16
バリ・ばり 49 けん 20 とっと/っと 6
ばい・バイ 32 よかろ/う 18 くらす 4
すい/とー 32 しゃれと/んしゃ 18 すーす/ーす 4
ど/げん・ど/ぎゃん 27 いっちょん 17 はがい/い 4
佐賀
よか 56 すい・好い 13 ど/げん 8
ばい 52 たい 13 いっちょん 8
けん 26 さい・しゃい 11 ばってん 8
ばり・バリ 20 そいぎ/い 10 はらか/く 7
45
がばい 16 しょん 9 せから/しい 7 長崎
よか 55 ばり 16 なん/しよ 11
ばい 52 たい 14 とっと/っと 10
けん 26 しょん 12 こつ 6
ど/がん・ど/ぎゃん 19 いっちょん 11 やぜ/か 6 すい・好い 19 ど/げん 11 きば/る・ぎば/る 6 熊本
ばい 64 しょん/なか 11 たいぎゃ 9
よか 63 なん/しよ 11 すい・好い 8
ど/ぎゃん・ど/がん 34 せから/しい 10 して/はい 8
たい 27 ほんな 10 がまだ/す 7
こつ・ごつ 21 たまが/る 9 むしゃん 7
ばっ 14
鹿児島
よか 45 きば/る・キバ/ル 13 さげも/す 9 もす・もし・モス 34 おやっと/さ 12 だ/からよ 9 ど/げん 19 ぐら/しい 12 おじゃ/った 9
わっぜ 14 じゃっど 11 やっせん 9
てげ 13 しもた 10
沖縄
でーじ 20 さびら 11 だから/よ 9
やさ 14 なんくる 10 あげ・あが 9
わじ・ワジ 13 ちば/りよ 10 だー 9
ぬー 13 ゆたし/い 10 まかちょ/け 8
にふぇ・にへ 12 しに・シニ 10 はいさい・ハイサイ 8
この表から、ほとんどの道府県で上位の語は語尾につく語と強調の語であることが分 かる。九州では5県いずれも「良い」+語尾の「か」の形である「よか」が1番か2番になっ ている。また、この語以外にも県をまたいで同じ語が散見される。九州は複数県でユニッ トの重複があったのでその影響が考えられる。
「語尾」や「強調」から頻度が大幅に減少するものの、いわゆる「俚言」である語が頻 度15以上の語に含まれている。これらは大阪の「なんでやねん」のように一般化してい る語、東北の「めんこい」のように聞き覚えのある語、「しゃね」のように聞き覚えはな いが意味の想像しやすいもの、熊本の「ぐらしい」のようにあまり聞き覚えのないもの 等のように様々な種類がある。
LINE 方言 語彙 特徴
北海道の「さ」や広島の「じゃ」など、方言(特に語尾)には1モーラのものも多い。
任意の1モーラのひらがなを13道府県それぞれで計上し比較することで、各道府県の特 徴を調査した。その結果が表3である。色が反転しているのは出現頻度の上位2件であ る。二重線を境界にして、前半が主に「語尾」などに使用されるひらがな、後半が主に「発 音を文字で表す」ためのひらがなを項目とした。
北海道 宮城 山形 静岡 愛知 大阪 広島 福岡 佐賀 長崎 熊本 鹿児島 沖縄 さ 56 34 49 16 31 40 50 29 20 24 30 49 132 ど 8 38 43 59 43 50 41 40 50 43 45 80 32 け 32 62 84 36 37 24 75 43 49 43 48 53 22 ちょ 15 8 5 13 27 8 9 29 25 27 22 31 15 か 78 53 36 100 160 83 56 256 275 291 232 169 77 じゃ 1 4 2 29 11 1 139 6 9 14 11 46 10 と 28 23 20 46 113 32 75 198 91 100 107 70 27 ね 40 120 97 35 72 47 52 59 65 61 72 52 19 か 78 53 36 100 160 83 56 256 275 291 232 169 77 ん 126 233 211 130 264 241 249 305 268 233 272 238 145 ば 41 41 24 45 16 15 15 82 105 108 108 22 35 ちゃ 28 34 14 18 21 48 21 56 20 21 19 7 12 や 43 70 36 56 113 180 66 51 51 41 42 63 75 よ 32 32 26 32 55 28 103 132 108 114 119 99 56 の 13 31 35 20 26 11 62 9 12 7 18 25 2 わ 48 36 36 30 97 62 48 31 19 22 29 44 37 で 40 67 53 53 122 78 45 74 31 35 36 41 69 ま 87 42 50 54 119 64 55 64 45 63 77 54 61 ら 51 56 44 171 124 46 33 107 71 63 76 81 56
しぇ 0 8 11 1 0 0 0 3 1 0 0 0 1
ぎ 4 13 11 3 5 3 14 2 21 11 37 10 19 ぐ 3 35 46 0 3 0 0 3 6 4 4 16 12 げ 13 33 27 3 4 3 11 35 18 21 13 52 13 ご 12 46 33 11 20 14 16 23 32 30 38 48 18 だ 54 204 204 123 97 4 6 20 19 15 54 46 30 ぢ・じ 6 17 14 12 21 5 4 3 4 8 8 24 68 づ・ず 25 45 43 11 3 9 0 8 2 3 2 5 4
つぁ 0 0 0 0 0 0 0 2 2 2 2 4 0
ろぁ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0
つぉ 0 0 3 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0
りゃ 1 1 0 1 29 0 8 0 3 1 2 0 0
でゃ 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0
てゃ 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0
たゃ 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0
きゃ 0 1 1 1 12 1 2 0 1 2 1 0 0
でゅ 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
にぇ 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
にゃ 0 0 3 7 3 1 17 2 12 9 20 10 0 表
3
各道府県の1
モーラの頻度43
北海道と沖縄の「さ」、静岡の「ら」、中部関西の「や」「わ」、広島の「じゃ」「け」九州 の「か」など、語尾の特徴が反映されている。愛知では「ま」の頻度が高いが、これは口 語でよく使用される「まー○○だわ」という言い方が影響していると考えられる。また、
九州は語尾「ばい」の分も含まれるが、助詞としての「ば」の使用があるので出現頻度が 高い傾向になる。
次に、発音の表し方について、東北では「ガ行」「ダ行」が多くなった。「ズーズー弁」 の詰まった音の感じを表すためだと考えられる。出現頻度一位ではないものも多いが、
全体的に出現頻度は高くなっている。また、愛知では、「りゃ」「きゃ」が多く、「たゃ」
などでは文字に発音を表す工夫がみられる。これらは他の道府県では見られない特徴と なっている。
表2の語とは別に、愛知、大阪、広島などの京阪に近い府県によくみられる任意の数 語を「関西」として計上したものが表4である。これらの語は、一部の圏で共通化され ていて、これらを含めるとかえってその道府県の特徴が見えづらくなるため、表2で計 上していない。共通語の「いい」と関西の「ええ」「えー」を比較ができるので共通語は「い い」だけ掲載した(網掛け部分)。反転させているのは出現頻度の上位3件である。
いわゆる「関西弁」の発音や語彙は、京阪のみに見られるものではなく、東海地方や 中国地方、九州地方に影響している実態がスタンプに反映されているといえるだろう。
表1から表4より、その地方特有の「強調」の語や「語尾」が方言スタンプに特に採用 されやすいといえる。一方で、いわゆる「俚言」は採用されやすい語に明らかな傾向は 見られない。また、表3の東北地方のガ行音とダ行音の多さや、「たゃ」などの表記、表 4の「関西弁」の反映から、実際の発音の特徴を表す工夫が施されていることも指摘で きる。
次に、スタンプの公式性を見る。調査概要で挙げた条件に当てはまったユニットとそ こに収録されているスタンプ(公式性のあるスタンプとみなすもの)を、表5にまとめた。
語 北海道 宮城 山形 静岡 愛知 大阪 広島 福岡 佐賀 長崎 熊本 鹿児島 沖縄 いい 共通語 22 15 6 39 16 5 3 15 4 4 6 6 6 ええ・えー 0 2 0 2 15 30 52 1 3 2 3 1 3 とる・とった 0 0 0 2 33 2 23 10 4 6 12 0 0
おる・おった 1 8 3 0 3 0 5 3 4 3 2 0 0
ほんま・ホンマ 0 0 0 0 0 22 14 0 0 0 0 0 0
3 5 2 4 5 う
よ 6 10 15 3 5 2 1 2
5 1 2 2 1 1
?
ん 21 35 24 17 13 9 5 1
関西
表
4
共通化している関西の語LINE 方言 語彙 特徴 総数、個数などは表1と同様である。
表
5
公式性のあるスタンプNo. ユニット名 総数 個数 No. ユニット名 総数 個数
1 KAZUMOちゃん(北海道
留萌市キャラクター) 40 23 11 しずな〜び静岡弁 40 40 2 北海道観光PRキャラクター
キュンちゃん 24 20 12 中村美律子の大阪弁
スタンプvol.1 16 16
3 ジンギスカンのジンくん 40 5 13 大阪北摂のセブンちゃん 40 16 4 そらりす 40 22 14 神埼こ助のキャラスタンプ 40 23 5 ずーしーほっきー
(北斗市公式キャラクター) 40 24 15 島原こーにゃん 40 13 6 もんすけ(HBC北海道放送) 40 13 16 ながさき犬ちゃんLINE
スタンプ一弾!! 40 30 7 山形県朝日町PRキ ャ ラ ク
ター「桃色ウサヒ」 40 0 17 くまモンの日常会話 40 36 8 静岡大学キャラクター
「しずっぴー」 40 35 18 くまモンのスタンプ
(日本語) 40 31 9 しずな〜び 40 11 19 くまモンのスタンプ
(熊本弁編) 40 40 10 静岡LOVE!
ウサギのらびこ 40 25 20 沖縄タイムス公式ストア 40 40
1ユニット当たりの最大値である40より個数が少ないものが多い。このうち、1・2・
3・4・7・14・15・17・18は文字データを含んでいないか、共通語にキャラ語尾が付与 されたものであり、当該地方の方言を宣伝する役割はないと思われる。そのほかは、標 準語がまじっているものと、すべて方言で書かれているものとがある。このことについ て、公式性のあるスタンプのうち、方言形を含むスタンプの出現数を「方言形」として まとめたものが以下の表6である。総数、個数は表1に準じる。個数と方言形を比較して、
方言形の出現が半数以下を網掛け、半数以上を反転で示している。
No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
総数 40 24 40 40 40 40 40 40 40 40 個数 23 20 5 22 24 13 0 35 11 25
方言形 0 0 0 0 7 6 0 3 0 8
No. 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
総数 40 16 40 40 40 40 40 40 40 40 個数 40 16 16 23 13 30 36 31 40 40 方言形 38 16 1 0 0 22 0 0 40 40
表
6
公式性のあるスタンプの方言形の出現個数41
網掛けに該当する5・6・8・10・13の方言形は意味が浸透しているものが多い。反転 に該当する11・16は「強調」や「語尾」の多用が見られる。12・19・20は「俚言」が多く、
採用されている語彙が豊富である。
4
先行研究を踏まえた調査結果の解釈方言スタンプには「語尾」や「俚言」以外に、とくに「強調」する語にフィーチャーさ れやすいことが分かった。「語尾」と同じく、使用が容易で簡単に「○○方言」を表出で きるからだと考えられる。スタンプの中には、実際の発音上の特徴を出すために「でゃ」
というひらがなで表すなどの工夫が見られた。従来の書きことばの規則に従わない要素 のある「打ちことば」と「方言」の相性の良さは、スタンプの文字にも表れているといえ るだろう。各道府県ではありがとうを意味する語など実用的なものもあれば、非実用的 なものもあった。共通語のセリフスタンプの語の分布と比較する分析を行う必要がある だろう。
また、公式性のあるスタンプの調査では、ユニット単位で見ると、方言形が出現しな いユニットが半数だった。これらは方言を周知するというよりは、地域が存在すること をスタンプ(ユニットの意)の作成を通じてPRしているといえるだろう。方言が採用さ れているユニットでも、方言形を含むスタンプの出現数や採用語はそれぞれ異なる。公 式性のあるスタンプを収録しているユニットは、方言を採用しない「地域PR型」、方言 をアクセント程度に用いる「準地域PR型」、方言を多く採用するが「強調」や「語尾」を 多用する「方言コスプレ型」、方言のバリエーションの豊富な「方言PR型」の4通りに概 ね分類できるといえるだろう。
5
おわりに作成主体にかかわらず、方言が多く採用されているユニットは「方言コスプレ型」と
「方言PR型」に分けることができるだろう。挨拶のような使いやすい語は比較的選ばれ やすいようだが、例えば「さようなら」を意味する「俚言」が必ずどの道府県でも見られ るかというとそうでもない。逆に、北海道の「手でもぐ」や鹿児島の「ラーフルプレイ 中」など使いどころの不明な語が採用されていることもある。「俚言」にかんしては、一 定の法則性があるとは言い難い。スタンプ及びユニット製作者の意図のほかに、スタン プのキャラクターとの親和性などからも考えることができるかもしれない。
【付記】
本稿は、2019年度前期開講の「現代日本語学1」(担当教員:田中ゆかり)で提出した最終課題 に加筆・修正を加えたものである。
【文献一覧】
LINE 方言 語彙 特徴
・ 田中ゆかり(2016)『方言萌え!?―ヴァーチャル方言を読み解く』岩波書店 pp.76-78,102- 103,106-109
・ 林 直樹(2018)「方言スタンプからみる方言コンテンツの全国分布」『語文』第百六十輯 pp.51-58 日本大学国文学会
(いよだ りさ,本学国文学科3年生)
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