第5章 ライデマイスター移動
平面上の図形の同値変形とは
(復習)結び目が同値とは?
第1章では、
「空間の中で動かして同じ形にできる結び目」を同値な結び目 第2章では、
結び目の同値変形
( )結び目を切らない動かす
( )拡大・縮小 と定義しました。
この第1章、第2章で定義されたか結び目の同値は空間の中で移せるかどうかというものでした。
ここでは、平面上での同値変形を考えてみます。このとき、結び目の射影図として現れるような図形のみを 扱います。ただし、交点は本当に交わっているものとします。すると、結び目の射影図は交点をもった閉じ た曲線になります。
次の問題でどのようなものがこの条件をみたすかを考えてみましょう。
(a) (b) (c)
(d) (e)
上の図の(a)〜(e)のうち結び目の射影図として現れているものはどれでしょう。
A.(b),(c)
このような条件を満たした,交点をもった閉じた曲線の同値変形を「平面上で伸縮自在に動かす」と定め ます。
(注意)このとき、もともとある交点以外の交わりを作らないようにします。
つまり、平面上で伸縮自在に動かすことによって移りあえるものは同値であるといえます。
この同値変形を使うと、次のような交点のない閉じた曲線はすべて同値になります。
(注意)折れ線も曲線だと思うことにする。
この同値変形の不変量として交点の数というものが考えられます。上の説明では、交点のない閉じた曲線、つ まり交点の数が0の図形はすべて同値になりました。
それでは、交点が等しい図形はすべて同値になるのでしょうか。
いくつか例を挙げてみましょう。
例
この2つの図形は同値でしょうか。
(a) (b)
a
b
c
e
d f
この図形(a),(b)は同値ではありません。
伸縮自在に動かしてみても平面上では移りあうことができません。
このように交点数が同じでも交点のつながり方が違っていると平面上では同値になれません。
空間内の同値変形(ライデマイスター移動)を平面上で表そう
では平面上での同値変形を定義しました。しかし、平面上で同値でないから結び目(空間内で)も同値 でないといえるのでしょうか。
例えば であげた同値でない例を考えてみましょう。このとき、平面上では交点の上下を考えていないで適 当に上下関係をつけることにします。
2
(a’) (b’)
すると、この(a’)(b’)の射影図はほどける結び目になります。つまり、平面上で同値でなくても空間内は同 値になることがある。
このように、結び目を平面上の図形としてあらわしたままだと本当に同値かどうか判定することはできませ ん。判定するには空間の中で考える必要があつようです。
第1章では同値な結び目であるといった結び目の射影図を考えて見ましょう。
に変形する過程を考えます。
結び目の射影図にならない図形を除いてもどう変化したかは理解できそうなので、考えないものとして、結 び目の射影図になっているもののみを書き出してみましょう。
書き出してみた変形をみてみると、平面上の図形としての同値変形ではありませんが、空間の同値変形とし ての同値変形であるような変形には、ある一定のパターンがあることがわかります。その、パターンが「ライ デマイスター移動」です。
ライデマイスター移動は、3パターンあります。
・ライデマイスター移動
・ライデマイスター移動
・ライデマイスター移動
このように3つの変形になり、それぞれライデマイスター , , と呼びます。
この3つの変形と平面上の同値変形の組み合わせにより、空間内の同値は変形を表すことができます。
4
つまり、
結び目の空間内の同値変形⇔結び目の射影の平面上の同値変形+ライデマイスター移動