エダマメ新品種「秋農試 40 号」、「あきたほのか」の育成
佐藤
友博、檜森
靖則、椿
信一、佐野
広伸
抄 録 「秋農試 40 号」は、秋田県農業試験場において、県産エダマメの端境期である 9 月下旬に収穫でき、食 味が良い白毛品種を目標に、県内在来大豆の AG209 を種子親、AG306 を花粉親として 2001 年に交配し、そ の後代より育成したエダマメ品種である。収穫期は「錦秋」より遅く、「秘伝」より早い。毛じの色は白、 若莢の色は緑である。可販収量は「錦秋」よりやや少なく「あきた香り五葉」と同程度で、食味が優れる。 「あきたほのか」は、「錦秋」とほぼ同時期の 9 月中旬に収穫でき、食味が良い白毛品種を目標に、1999 年に秋田県生物資源総合開発利用センターにおいて、「秘伝」の再分化個体を養成し、2001 年から秋田県農 業試験場において、その後代より選抜、育成したエダマメ品種である。収穫期は「錦秋」より 7 日遅く、毛 じの色は白、若莢の色は緑である。大莢、多収の「錦秋」に比べ、莢の大きさは同程度で、可販収量はさら に多く、食味が優れる。 キーワード:あきたほのか、秋農試 40 号、エダマメ、大莢、可販収量、品種育成、食味、白毛、端境期 目 次 抄録‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 40 1 緒言‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 41 2 「秋農試 40 号」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 41 2-1 遺伝資源の収集と特性調査‥‥‥‥‥‥‥‥ 41 2-2 育成経過 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 42 2-3 主要特性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 42 2-3-1 形態的特性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 42 2-3-2 生育と収量性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 43 2-3-3 若莢の形態と食味‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 44 2-3-4 病害虫の抵抗性と発生程度‥‥‥‥‥‥‥ 45 2-4 適応地域及び栽培上の注意点‥‥‥‥‥‥ 45 2-4-1 普及見込み地域‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 45 2-4-2 栽培上の留意事項‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 45 2-5 普及性と市場性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 45 2-5-1 普及性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 45 2-5-2 市場性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 45 3 「あきたほのか」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 46 3-1 育成経過‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 46 3-2 主要特性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47 3-2-1 形態的特性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47 3-2-2 生育と収量性‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 47 3-2-3 若莢の形態と食味‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 49 3-2-4 病害虫の抵抗性と発生程度‥‥‥‥‥‥‥ 49 3-3 適応地域及び栽培上の注意点‥‥‥‥‥‥ 50 3-3-1 普及見込み地域‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 3-3-2 栽培上の留意事項‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 3-4 市場性・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 4 考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 4-1 「秋農試 40 号」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 50 4-2 「あきたほのか」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 51 4-3 最後に‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 52 5 謝辞‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 53 引用文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 53 Abstract ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥‥‥ 54 付記 (1)育成関係者‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 55 (2)種苗特性分類一覧‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 56 (3)写真‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 58 2015年3月31日受理 本研究の一部は、エダマメ研究会第 12 回研究集会、平成 26 年度秋田育種談話会で発表した。1 緒 言 エダマメは本県の主要野菜であり、水田転作が強化 される中で、水田転換畑を利用できる土地利用型作目 として重要である。収穫、調製作業に多くの労力がか かっていたが、収穫機、脱莢機を導入し、省力化に取 り組むことで、作付面積の拡大が進んでいる。本県の 作付面積は 639ha、出荷量は 1,975t、販売額は 1,011 百万円(2014 年、JA 全農あきた調べ)であり、ほと んどを県外に出荷している。 エダマメの品種は民間種苗会社育成のものが多い が、青森県や岩手県では県産品のブランド化を図るた め、県が独自品種を育成している(平井ら 1996、高 橋ら 2001)。近年では京都府、兵庫県が特徴のあるエ ダマメ品種を育成した(福嶋ら 2006、三村ら 2007)。 本県でも 1994 年から野菜・花き等園芸作物育種事 業を実施し、対象品目の一つとしてエダマメの育種に 取り組んでおり、2004 年に「あきた香り五葉」、2009 年に「あきたさやか」を育成した(檜森ら 2004、檜 森ら 2008、佐藤ら 2009、佐藤ら 2010)。 「あきた香り五葉」は、香りや食味が良好で、多粒 莢率が高い等の特徴から、市場や店頭で差別化できる 品種として普及が進み、県内の関係機関が一体となっ て生産振興、販売促進活動を行っている。 「あきた香り五葉」育成後の要望として、9 月上中 旬に収穫できる「錦秋」前後の端境期に収穫できて、 毛じが白で莢外観と食味の両方が優れた品種の育成が あげられた。このタイプのエダマメは市場でのレギュ ラー品なので、品種名やブランド名を表示せずに売ら れており、市場関係者からは“ 青豆 ” と呼ばれている。 秋田県は青豆の出荷割合が高く、2008 年度は 54 %を 占めていた(JA 全農あきた調べ)。 白毛で多収の中生種「あきたさやか」の育成により、8 月下旬から 9 月上旬に収穫でき、「錦秋」の前の端境 期を埋めることができたが、次の課題として、「錦秋」 の後の端境期を埋める晩生種の育成が残っていた。 2011 年、全農、各 JA、県の関係者で構成する “ え だまめ販売戦略会議” を立ち上げ、エダマメ振興に取 り組んだ。そこでの生産振興の柱の1 つに “ 青豆の長 期継続出荷” があげられ、ここでも「錦秋」の後の端 境期を埋める品種が要望された。 これらの要望にかなう品種として、「錦秋」より遅 い、9 月下旬の端境期に収穫できる晩生で白毛の新品 種「秋農試40 号」を育成した。 “ えだまめ販売戦略会議 ” からのもう 1 つの要望と して、「錦秋」と同時期に収穫できて、白毛で良食味 の品種があげられた。「錦秋」に置き換わる品種とい う位置付けで、これを「あきたさやか」、「秋農試 40 号」と組み合わせると、白毛の県オリジナル品種の継 続出荷が期待できる。 この要望にかなう品種として、9 月中旬に収穫でき る白毛で多収、大莢、良食味の新品種「あきたほのか」 を育成した。 「秋農試40 号」は 2012 年 1 月 17 日に、種苗法に 基づく品種登録に出願し、2014 年 5 月 16 日付けで品 種登録された(登録番号 第26669 号)。 「あきたほのか」は2012 年 12 月 27 日に、種苗法 に基づく品種登録に出願した(出願番号 第27755 号)。 ここでは、両品種の育成経過と主要特性について、 これまでの試験結果に基づいて報告し、普及及び今後 の品種育成の参考に供する。 2 秋農試 40 号 2-1 遺伝資源の収集と特性調査 1992 ~ 1998 年、秋田県内全域を対象に大豆遺伝資 源の収集を行い、356 系統を収集した。そのうち、351 系統について、エダマメとしての特性を中心に調査を 行った(第1 表)。 収集した大豆遺伝資源の主茎長、小葉数、種皮色等 の形態的特性、エダマメ収穫期等の生態的特性と食味 を調査した結果、多様な特性の系統があった(第2 表、 第3 表)。 これらを交配親として利用するため、エダマメとし ての収穫期、収量、食味を指標に選抜した。 第1表 大豆遺伝資源の収集と特性調査の実績 収集した 収集時期 収集対象 特性調査 特性調査時期 系統数 地域 した系統数 356 1992~2000年 秋田県内全域 351 1992~1998年 第2表 収集した大豆遺伝資源の形態的特性調査結果 主茎長 主茎節数 分枝数 花色 小葉 毛じ色 種皮色 数 長さ 幅 (cm) (節) (本) (枚) (mm) (mm) 13~136 6.4~21.3 0.5~9.3 紫、白 3、5 白、淡褐、褐 27.8~73.9 7.7~16.9 緑、黄、褐、黒等 注)Z二胚珠二粒莢調査 若莢の大きさz
第3表 収集した大豆遺伝資源の生態的特性と食味の調査結果 開花期 エダマメ 成熟期 多粒莢率z エダマメ 収穫期 食味y (月/日) (月/日) (月/日) (%) 7/17~8/17 8/12~10/11 9/10~11/20 0.8~65.3 1.0~5.0 注)z三粒以上の莢の比率 y不良(1)~良(5)までの5段階評価
年度
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
世代
F
1F
2F
3F
4F
5F
6F
7F
8F
9F
10生産力検定試験
現地試験
普及配布
市場調査
品種登録出願
(2012年1月)
第1図 「秋農試40号」の育成経過
秋農試
40号
AG306
2001
交配
AG209
秋試
1302-122-1
秋試13号
第4表 「秋農試40号」の両親の特性 (1998年 育成地) 主茎 主茎 分枝 開花 エダマメ 全莢 成熟 小葉 種皮 毛じ エダマメ 長 節数 数 期 収穫期 収量 期 数 色 長さ 幅 の色 食味y (cm)(節)(本)(月/日)(月/日)(kg/a)(月/日)(枚) (mm) (mm) AG209(母) 79 17.0 6.7 8/11 10/1 54 11/15 3 緑 60.6 16.1 白 4.5 AG306(父) 39 12.8 5.2 7/29 9/3 39 10/14 3 褐 45.9 13.0 褐 4.5 錦秋 (対照) 42 12.2 3.9 7/27 9/12 53 10/20 3 淡緑 62.5 15.3 白 3.0 秘伝 (参考) 60 15.1 5.8 8/11 10/1 59 11/15 3 緑 59.0 15.0 白 4.5 注)6月8日播種(直播)、うね幅90cm、株間20cm、2粒まき1本立て Z 二胚珠二粒莢調査 y「錦秋」を並(3)としたときの不良(1)~良(5)までの5段階評価 若莢の大きさz 品種・系統名 2-2 育成経過 「秋農試40 号」は、2001 年に秋田県農業試験場に おいて、AG209 を母に、AG306 を父として人工交配 を行い、以降選抜・固定を図ってきたものである(第1 図)。 両親とも県内で収集した大豆遺伝資源の中から、エ ダマメとしての特性で選抜した系統である。 母親のAG209 は、種皮色は緑、エダマメ収穫期は 10 月1 日、毛じ色は白で、莢が大きく、多収で食味が良 い。父親の AG306 は、種皮色は褐、エダマメ収穫期 は9 月 3 日、小葉数が 3、毛じ色は褐で、食味が良い (第4 表)。 2005 年の成績が優れていたことから、2006 年から 秋試 1302-122-1 の系統番号を付し、生産力検定試験 を実施した。その結果、有望と認められたので 2007 年から秋試 13 号として現地試験を行い、栽培適応性 を調査した。2012 年 1 月に「秋農試 40 号」の名称で 品種登録の出願を行った。品種登録出願時点での世代 は F10である。 2-3 主要特性 2-3-1 形態的特性 第5表 形態的特性 (2006~2011年、育成地) 種皮 花色 小葉 毛じ 品種名 の色 数 の色 (枚) 秋農試40号 緑 紫 3 白 錦秋(対照) 淡緑 白 3 白 秘伝(対照) 緑 紫 3 白 あきた香り五葉(参考) 黄 紫 5 淡褐種皮の色は緑、花色は紫、小葉の数は 3 枚、毛じの 色は白である(第5表)。 2-3-2 生育と収量性 (1) 育成地における成績 育成地における生産力検定試験6 カ年の成績を第 6 表及び第7 表に示し、それら試験の耕種概要を第 8 表 に示した。 「秋農試40 号」の開花期は 8 月 3 日で「錦秋」よ り8 日遅く、「秘伝」より 6 日早かった。エダマメ収 穫期は9 月 21 日で「錦秋」より 12 日遅く、「秘伝」 より9 日早かった。主茎長は 53cm、主茎節数は 13.8、 分枝数は 6.0 だった。「錦秋」と比較して主茎長は長 く、主茎節数、分枝数は多かった。「秘伝」と比較し て主茎長は短く、主茎節数は少なく、分枝数はやや少 なかった。 莢粒数別割合は三粒が6 %、二粒が 68 %、一粒が 26 %で、二粒莢の割合は「錦秋」に比べてやや低く、「秘 伝」と同程度だった。くず莢率は34 %で、「錦秋」よ りやや多く、「秘伝」よりやや少なかった。可販莢数 は230 個/㎡で「錦秋」よりやや少なく、「秘伝」と同 程度だった。一莢重は 2.9g で、「錦秋」、「秘伝」より やや軽く、「あきた香り五葉」と同程度だった。可販 収量は67kg/a で、「錦秋」、「秘伝」よりやや少なく、 「あきた香り五葉」と同程度だった。 第6表 生産力検定試験における生育 (2006~2011年、育成地、数値は6年間の平均値) 播種 開花 収穫 主茎 主茎 分枝 品種名 日 日 日 長 節数 数 (月/日) (月/日) (月/日) (cm) (節) (本) 秋農試40号 6/10 8/3 9/21 53 13.8 6.0 錦秋(対照) 6/10 7/26 9/9 45 12.1 4.4 秘伝(対照) 6/10 8/9 9/30 73 16.1 6.9 あきた香り五葉(参考) 6/10 7/26 9/9 41 10.9 3.7 注)「秋農試40号」の生産力検定試験における系統名は「秋試1302-122-1」 第7表 生産力検定試験における収量 (2006~2011年、育成地、数値は6年間の平均値) くず 品種名 三粒 二粒 一粒 莢率Z 莢数 一莢重 収量 (%) (%) (%) (%) (個/㎡) (g) (kg/a) 秋農試40号 6 68 26 34 230 2.9 67 錦秋(対照) 8 74 18 23 276 3.5 98 秘伝(対照) 5 65 30 47 220 3.8 82 あきた香り五葉(参考) 18 61 21 31 229 2.8 66 注)「秋農試40号」の生産力検定試験における系統名は「秋試1302-122-1」 Z 一粒莢と奇形、変色した莢の割合 y一莢内粒数が二粒以上の正常な莢 莢粒数別割合 可販莢y 第8表 「秋農試40号」の生産力検定試験の耕種概要 試験 試験場所 試験条件 栽培様式 播種日 うね幅 株間 中耕培土 年度 N P2O5 K2O (月日) (cm) (cm) (kg/a)(kg/a)(kg/a) (回) 2006 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/2 75 25 0.25 0.75 0.75 3 2007 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/14 75 25 0.25 0.75 0.75 3 2008 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/11 75 25 0.25 0.75 0.75 3 2009 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/10 80 25 0.25 0.75 0.75 3 2010 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/10 80 30 0.2 0.6 0.6 3 2011 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/9 80 30 0.2 0.6 0.6 3 注)試験場所:農業試験場本場、土質:非アロフェン質黒ボク土 施肥量
(2) 現地試験における成績 県内のエダマメ主産地である県南内陸平坦地域にお ける現地試験の成績を第9 表に示し、それら試験の耕 種概要を第 10 表に示した。現地試験を実施した場所 は水田転換畑である。 「秋農試40 号」のエダマメ収穫期は 9 月 20 日で「あ きた香り五葉」より9 日遅く、「秘伝」より 10 日早か った。主茎長は57cm、主茎節数は 13.8、分枝数は 6.3 だった。「秘伝」と比較して主茎長は短く、主茎節数 は少なく、分枝数は同程度だった。「あきた香り五葉」 と比較して主茎長は長く、主茎節数、分枝数は多かっ た。 莢粒数別割合は三粒が5 %、二粒が 64 %、一粒が 31 %で、いずれも「秘伝」と同程度だった。くず莢率は36 %で、「秘伝」よりやや少なかった。可販莢数は 267 個/㎡で「秘伝」よりやや多かった。一莢重は 2.9g で、 「秘伝」よりやや軽く、「あきた香り五葉」と同程度 だった。可販収量は78kg/a で、「秘伝」よりやや少な く、「あきた香り五葉」と同程度だった。 第9表 現地試験における生育と収量 (2007~2011年、数値は5年間の平均値) 収穫 主茎 主茎 分枝 くず 品種名 日 長 節数 数 三粒 二粒 一粒 莢率Z 莢数 一莢重 収量 (月/日) (cm) (節) (本) (%) (%) (%) (%) (個/㎡) (g) (kg/a) 秋農試40号 9/20 57 13.8 6.3 5 64 31 36 267 2.9 78 秘伝(対照) 9/30 87 16.8 6.8 3 67 30 44 258 3.4 87 あきた香り五葉(参考) 9/11 48 11.0 4.1 23 62 15 22 286 2.8 80 注)「秋農試40号」の現地試験における系統名は「秋試13号」.播種日は6月14日. Z一粒莢と奇形、変色した莢の割合 y一莢内粒数が二粒以上の正常な莢 莢粒数別割合 可販莢y
第10表 「秋農試40号」の現地試験の耕種概要
試験
試験場所
試験条件 栽培様式 播種日 うね幅
株間
年度
N
P
2O
5K
2O
(月/日)(cm) (cm) (kg/a)(kg/a)(kg/a)
2007
大仙市太田
転換畑
露地普通
6/12
80
25
0.20
0.80
0.40
2008
大仙市太田
転換畑
露地普通
6/13
80
25
0.20
0.80
0.40
2009
大仙市太田
転換畑
露地普通
6/15
80
25
0.20
0.80
0.40
2010
大仙市太田
転換畑
露地普通
6/15
90
30
0.20
0.80
0.40
2011
大仙市太田
転換畑
露地普通
6/15
80
30
0.20
0.80
0.40
注)土質:れき質褐色低地土施肥量
2-3-3 若莢の形態と食味 「秋農試40 号」の若莢の色は、「錦秋」、「秘伝」と 同じ緑、若莢の長さは 54.1mm で、「錦秋」、「秘伝」 よりやや短く、「あきた香り五葉」と同程度、幅は 15.2mm で、「錦秋」よりやや広く、「秘伝」と同程度 だった。湯煮後の色は「錦秋」、「秘伝」と同じ緑だ った。 香りは「錦秋」が無に対し、「秘伝」同様に有だっ た。食味は「錦秋」を対照(3)として、良(5)、やや良(4)、 並(3)、やや不良(2)、不良(1)の 5 段階で評価した。「秋 農試40 号」の食味評価は 3.6 で、「錦秋」よりやや高 かった(第11 表)。 第11表 若莢の形態と食味官能結果 (2006~2011年、育成地) 湯煮後 香り 食味 品種名 色 長さ 幅 の莢色 評価y (mm) (mm) 秋農試40号 緑(3307) 54.1 15.2 緑(3513) 有 3.6 錦秋(対照) 緑(3312) 60.3 14.3 緑(3513) 無 3.0 秘伝(対照) 緑(3307) 60.3 15.8 緑(3507) 有 3.7 あきた香り五葉(参考) 緑(3312) 53.9 13.4 濃緑(3711) 有 3.7 注)莢色( )内はJISカラーチャート.Z二胚珠二粒莢調査. y「錦秋」を並(3)としたときの不良(1)~良(5)までの5段階評価、パネラーは4人. 若莢のZ2-3-4 病害虫の抵抗性と発生程度 (1) ダイズモザイクウイルス 東北農業研究センター大豆育種研究東北サブチーム が実施したダイズモザイクウイルス抵抗性検定試験の 結果を第12 表に示した。A ~ E までの病原系統につ いて検定した結果、「秋農試 40 号」は A 系統~ E 系 統に感受性であった。 (2) ダイズシストセンチュウ 東北農業研究センター大豆育種研究東北サブチーム が実施したダイズシストセンチュウ抵抗性検定試験の 結果を第13 表に示した。検定の結果、「秋農試40 号」 の抵抗性の判定は弱であった。 (3) べと病、茎疫病 「秋農試 40 号」のべと病発生程度は「秘伝」と同 程度で、「錦秋」、「あきた香り五葉」より少なかった。 茎疫病発生程度は「秘伝」と同程度で、「錦秋」、‘「あ きた香り五葉」より少なかった(第14 表、第 15 表)。 第12表 ダイズモザイクウイルス検定試験 品種名 A系統 B系統 C系統 D系統 E系統 秋農試40号 S S S S S 注)2010年 東北農業研究センター大豆育種研究東北サブ チームで実施.R:抵抗性、S:感受性. 病原系統 第13表 ダイズシストセンチュウ検定試験 秋農試40号 弱 注)2010年 東北農業研究センター大豆育種研究 東北サブチームで実施. 品種名 判定 第14表 べと病、茎疫病発生程度(2006~2011年、育成地) 品種名 べと病 茎疫病 秋農試40号 微発 微発 錦秋(対照) 少発 少発 秘伝(対照) 微発 微発 あきた香り五葉(参考) 中発 中発 注)微発:~5%、少発:5~15%、中発15~30%、 多発:30~50%、激発:50%~. 2-4 適応地域及び栽培上の注意点 2-4-1 普及見込み地域 県南部の内陸盆地を中心に、県内の平坦部一円で栽 培が可能である。「錦秋」、「秘伝」と同規模に作付け されるとして、約50ha に普及見込みである。 2-4-2 栽培上の留意事項 ①播種期は6 月上旬から 6 月中旬とする。栽植密度、 施肥量は晩生種に準じる。 ②茎疫病、黒根腐病などの土壌病害の発生を極力おさ えるため、排水の良い圃場を選定する。排水不良地 では排水対策を十分に行う。 ③ダイズモザイクウイルスに感受性なので、健全な種 子を使用するとともに、特に採種の場合はアブラム シ防除と罹病株の抜き取りを徹底する。ダイズシス トセンチュウ抵抗性は弱なので、発生圃場への作付 けは避ける。 2-5 普及性と市場性 2 ー 5-1 普及性 県内各地の地域振興局農林部農業振興普及課を通じ て、生産者に「秋農試 40 号」の試作を依頼し、普及 性を調査した。その結果を第 16 表に示した。収穫期 は、ほぼ全試験地で9 月下旬であり、収量は主産地の 仙北、平鹿の平均収量が晩生品種の目標収量 60kg/a より高かった。総合評価はA(普及性が高い)~ B(普 及性がある)で、調査した全ての試験地で普及性の評 価は高かった。 2-5-2 市場性 市場性の評価を行った。その方法を第 17 表に、結 果を第18 表に示した。「秋農試 40 号」の莢外観、食 味評価は一般的な市場の青豆と同等以上であった。市 場関係者は、端境期を埋めて長期継続出荷できれば、 販売上、有利であると評価していた。 第15表 茎疫病発生割合 (2010年、育成地) 品種名 エダマメ収穫期 成熟期 (%) (%) 秋農試40号 1 5 秘伝(対照) 0 7 あきた香り五葉(参考) 28 32
第16表 「秋農試40号」の普及性調査結果 (2011年)
振興局
試験地
播種日
収穫日
収量
総合評価
(月/日)
(月/日)
(kg/a)
北秋田
大館市
6/18
9/24~26
38kg/a
B
秋田
井川町
6/1
9/26
57kg/a
A
仙北
大仙市太田
6/6~28
9/21~10/11
49~89kg/a
B
平鹿
横手市平鹿
6/12~14
9/21~23
60~70kg/a
B
横手市雄物川
6/5~29
9/22~27
60~76kg/a
A
雄勝
湯沢市
6/29
9/23
69kg/a
B
注)総合評価は3段階評価(A:普及性が高い、B:普及性がある、C:普及性がない)第17表 「秋農試40号」の市場調査の方法
日時
2011年9月27日 午後1時から
場所
東京都中央卸売市場 大田市場内会議室
評価者
東京荏原青果(株)、東京青果(株)
評価方法
「秋農試40号」の莢外観と食味を評価する
第18表 「秋農試40号」の市場調査での主な意見
項目
評価者
主な意見
莢外観
東京荏原青果
色はやや淡いが、見栄えはいい。莢も大きい。
東京青果
外観はきれいで色もいい。莢も大きい。
食味
東京荏原青果
青豆より良好で、香りもある。
東京青果
青豆と大きな差はないが、香りはある。
東京荏原青果
販売方法、
品種の効果 東京青果
青豆の継続出荷は必要で、特に秋田県には大事である。こ
の品種は、その品種リレーの中での販売が望まれる。
夏場から秋田産を買っている客が、この品種の利用等で端
境期を埋めることができたら、「秘伝」まで買い続ける。
3 あきたほのか 3-1 育成経過 1999 年に秋田県生物資源総合開発利用センターに お い て 、「 秘 伝 」 の 開 花 約 3 週 間 目 の 子 葉 片 を 2,4-D40mg/l 添加の MS 培地へ置床・誘導した不定胚 から再分化して得られた株を養成、採種した。2000 年に M1 世代の 39 個体を養成したが、早生化した個 体はなく、採種した。2001 年に秋田県農業試験場に おいて、M2世代の199 個体を供試して、元品種より 3 日以上開花が早い 14 個体を選抜した。以後、選抜・ 固定を進めた。選抜の指標として、早晩性、収量性、 莢の大ききと食味を重視した。 2007 年の成績が優れていたことから、2008 年から ‘ 秋試 H6-2-3-1 の系統番号を付し、生産力検定試験を 実施した。その結果、有望と認められたので 2009 年 から秋試 16 号として現地試験を行い、栽培適応性を 調査した。2012 年 12 月に「あきたほのか」の名称で 品種登録の出願を行った。品種登録出願時点での世代 はM1 3である(第2 図)。年度 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 世代 M1 M2 M3 M4 M5 M6 M7 M8 M9 M10 M11 M12 M13 再分化 生産力検定試験 現地試験 市場調査 品種登録出願 (2012年12月27日)
第2図 「あきたほのか」の育成経過
H6-2-3-1 あきた ほのか 秘伝 秋試16号 3-2 主要特性 3-2-1 形態的特性 種皮の色は緑、花色は白、小葉の数は3 枚、毛じの 色は白である(第19 表)。 3-2-2 生育と収量性 (1) 育成地における成績 育成地における生産力検定試験 5 カ年の成績を第 20 表及び第 21 表に示し、それら試験の耕種概要を第 22 表に示した。 第19表 形態的特性 (2008~2012年、育成地) 種皮 花色 小葉 毛じ 品種名 の色 数 の色 (枚) あきたほのか 緑 白 3 白 錦秋(対照) 淡緑 白 3 白 秘伝(参考) 緑 紫 3 白 あきた香り五葉(参考) 黄 紫 5 淡褐 「あきたほのか」の開花期は7 月 30 日で「錦秋」 より7 日遅く、「秘伝」より 10 日早かった。エダマメ 収穫期は9 月 16 日で「錦秋」より 7 日遅く、「秘伝」 より14 日早かった。主茎長は 54cm、主茎節数は 13.4、 分枝数は6.0 だった。「錦秋」’ と比較して主茎長は長 く、主茎節数、分枝数は多かった。「秘伝」と比較し て主茎長は短く、主茎節数は少なく、分枝数はやや少 なかった。 莢粒数別割合は三粒が7 %、二粒が 71 %、一粒が 22 %で、いずれも「錦秋」と同程度だった。「秘伝」に 比べ、三粒莢、二粒莢はやや多く、一粒莢は少なかっ た。くず莢率は36 %で、‘ 錦秋 ’ と同程度で、‘ 秘伝 ’ より少なかった。 可販莢数は343 個/㎡で「錦秋」よりやや多く、「伝 より多かった。一莢重は 3.5g で、「錦秋」と同程度、 「秘伝」よりやや軽かった。可販収量は132kg/a で、 「錦秋」、「秘伝」より多く、「錦秋」の130 %だった。第20表 生産力検定試験における生育 (2008~2012年、育成地、数値は5年間の平均値)
播種
開花
収穫
主茎
主茎
分枝
品種名
日
日
日
長
節数
数
(月/日) (月/日) (月/日)
(cm)
(節)
(本)
あきたほのか
6/15
7/30
9/16
54
13.4
6.0
錦秋(対照)
6/15
7/27
9/9
45
12.0
4.8
秘伝(参考)
6/15
8/9
9/30
73
15.5
6.7
あきた香り五葉(参考)
6/15
7/26
9/9
42
10.8
3.7
注)「あきたほのか」の生産力検定試験における系統名は 秋試H6-2-3-1第21表 生産力検定試験における収量 (2008~2012年、育成地、数値は5年間の平均値) くず 品種名 三粒 二粒 一粒 莢率Z 莢数 一莢重 収量 収量比 (%) (%) (%) (%) (個/㎡) (g) (kg/a) (%) あきたほのか 7 71 22 36 343 3.5 119 132 錦秋(対照) 8 70 22 38 263 3.4 90 100 秘伝(参考) 4 62 34 63 181 3.8 68 - あきた香り五葉(参考) 19 61 20 42 227 2.8 64 - 注)「あきたほのか」の生産力検定試験における系統名は 秋試H6-2-3-1 Z一粒莢と奇形、変色した莢の割合 y 一莢内粒数が二粒以上の正常な莢 莢粒数別割合 可販莢y 第22表 「あきたほのか」の生産力検定試験の耕種概要 試験 試験場所 試験条件 栽培様式 播種日 うね幅 株間 中耕培土 年度 N P2O5 K2O (月/日)(cm) (cm) (kg/a)(kg/a)(kg/a) (回) 2008 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/11 75 25 0.25 0.75 0.75 3 2009 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/10 80 25 0.25 0.75 0.75 3 2010 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/10 80 30 0.2 0.6 0.6 3 2011 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/9 80 30 0.2 0.6 0.6 3 2012 秋田市雄和 普通畑 露地普通 6/7 80 30 0.2 0.6 0.6 3 注)試験場所:農業試験場本場、土質:非アロフェン質黒ボク土 施肥量 (2) 現地試験における成績 県内のエダマメ主産地である県南内陸平坦地域にお ける現地試験の成績を第 23 表に示し、それら試験の 耕種概要を第 24 表に示した。現地試験を実施した圃 場は水田転換畑である。 「あきたほのか」のエダマメ収穫期は9 月 14 日で 「錦秋」より5 日遅く、「秘伝」より 14 日早かった。 主茎長は 72cm、主茎節数は 14.0、分枝数は 5.6 だっ た。「錦秋」と比較して主茎長は長く、主茎節数、分 枝数は多かった。「秘伝」と比較して主茎長は短く、 主茎節数、分枝数は少なかった。 莢粒数別割合は三粒が10 %、二粒が 71 %、一粒が 19 %で、「錦秋」に比べ、三粒莢はやや少なく、二粒 莢は同程度、一粒莢はやや多かった。「秘伝」に比べ、 三粒莢、二粒莢はやや多く、一粒莢は少なかった。く ず莢率は 33 %で、「錦秋」よりやや多く、「秘伝」よ りやや少なかった。 可販莢数は 395 個/㎡で「錦秋」、「秘伝」より多か った。一莢重は 3.4g で、「錦秋」、「秘伝」と同程度だ った。可販収量は 133kg/a で、「錦秋」より多く、「秘 伝」よりやや多かった。収量比は「錦秋」の 130 %だ った。 第23表 現地試験における生育と収量 (2009、2012年、数値は2年間の平均値) 収穫 主茎 主茎 分枝 くず 品種名 日 長 節数 数 三粒 二粒 一粒 莢率Z 莢数 一莢重 収量 収量比 (月/日)(cm) (節) (本) (%) (%) (%) (%) (個/㎡) (g) (kg/a) (%) あきたほのか 9/14 72 14.0 5.6 10 71 19 33 395 3.4 133 130 錦秋(対照) 9/9 56 12.7 4.4 14 71 14 24 307 3.3 102 100 秘伝(参考) 9/28 85 15.2 7.4 5 67 29 39 349 3.5 120 - あきた香り五葉(参考) 9/9 54 11.2 4.2 26 57 17 33 274 2.9 79 - 注)「あきたほのか」の現地試験における系統名は 秋試16号.播種日は6月15日. Z 一粒莢と奇形、変色した莢の割合 y一莢内粒数が二粒以上の正常な莢 莢粒数別割合 可販莢y
第24表 「あきたほのか」の現地試験の耕種概要
試験
試験場所
試験条件 栽培様式 播種日 うね幅
株間
年度
N
P
2O
5K
2O
(月/日)(cm) (cm) (kg/a)(kg/a)(kg/a)
2009
大仙市太田
転換畑
露地普通
6/15
80
25
0.20
0.80
0.40
2012
大仙市太田
転換畑
露地普通
6/14
90
30
0.20
0.80
0.40
注)土質:れき質褐色低地土施肥量
3-2-3 若莢の形態と食味 「あきたほのか」の若莢の色は、「錦秋」、「秘伝」 と同様に緑、若莢の長さは 61.6mm で、「錦秋」、「秘 伝」と同程度、幅は 14.9mm で、「錦秋」、「秘伝」と 同程度だった。湯煮後の色は「錦秋」、「秘伝」と同 じ緑だった。 香りは「錦秋」が無に対し、「秘伝」同様に有だっ た。食味は「錦秋」を対照(3)として、良(5)、やや良(4)、 並(3)、やや不良(2)、不良(1)の 5 段階で評価した。「あ きたほのか」の食味評価は 4.6 で、「錦秋」より高か った(第25 表)。 第25表 若莢の形態と食味官能結果 (2012年、育成地) 湯煮後 香り 食味 品種名 色 長さ 幅 の莢色 評価y (mm) (mm) あきたほのか 緑(3311) 61.6 14.9 緑(3507) 有 4.6 錦秋(対照) 緑(3312) 60.3 14.3 緑(3513) 無 3.0 秘伝(参考) 緑(3307) 60.3 15.3 緑(3507) 有 - あきた香り五葉(参考) 緑(3312) 53.9 13.4 濃緑(3711) 有 - 注)莢色( )内はJISカラーチャート.Z二胚珠二粒莢調査. y「錦秋」を並(3)としたときの不良(1)~良(5)までの5段階評価、パネラーは17人. 若莢のZ 3-2-4 病害虫の抵抗性と発生程度 (1) ダイズモザイクウイルス 東北農業研究センター大豆育種研究東北サブチーム が実施したダイズモザイクウイルス抵抗性検定試験の 結果を第26 表に示した。A ~ E までの病原系統につ いて検定した結果、「あきたほのか」’ は A 系統、B 系統、E 系統に抵抗性、D 系統に感受性であった。 (2) ダイズシストセンチュウ 東北農業研究センター大豆育種研究東北サブチーム が実施したダイズシストセンチュウ抵抗性検定試験の 結果を第27 表に示した。検定の結果、「あきたほのか」 の抵抗性の判定は弱であった。 第26表 ダイズモザイクウイルス検定試験 品種名 A系統 B系統 C系統 D系統 E系統 あきたほのか R R - S R 注)2010年 東北農業研究センター大豆育種研究東北サブ チームで実施.R:抵抗性、S:感受性、-:不明. 病原系統 (3) べと病、茎疫病 「あきたほのか」のべと病発生程度は「錦秋」と同 程度で、「秘伝」より多く、「あきた香り五葉」より 少なかった。茎疫病発生程度は「秘伝」と同程度で、 「錦秋」、「あきた香り五葉」より少なかった(第 28 表、第29 表)。 第27表 ダイズシストセンチュウ検定試験 あきたほのか 弱 注)2010年 東北農業研究センター大豆育種研究 東北サブチームで実施. 品種名 判定 第28表 べと病、茎疫病発生程度 (2008~2012年、育成地) 品種名 べと病 茎疫病 あきたほのか 少発 微発 錦秋(対照) 少発 少発 秘伝(対照) 微発 微発 あきた香り五葉(参考) 中発 中発 注)微発:~5%、少発:5~15%、中発15~30%、 多発:30~50%、激発:50%~.3-3 適応地域及び栽培上の注意点 3-3-1 普及見込み地域 県南部の内陸盆地を中心に、県内の平坦部一円で栽 培が可能である。「錦秋」と同規模に作付けされると して、約50ha に普及見込みである。 3-3-2 栽培上の留意事項 ①播種期は6 月上旬から 6 月下旬とする。栽植密度、 施肥量は晩生種に準じる。 第29表 茎疫病発生割合 (2010年、育成地) 品種名 エダマメ収穫期 成熟期 (%) (%) あきたほのか 1 13 秘伝(対照) 0 7 あきた香り五葉(参考) 28 32 ②茎疫病、黒根腐病などの土壌病害の発生を極力おさ えるため、排水の良い圃場を選定する。排水不良地 では排水対策を十分に行う。 ③ダイズシストセンチュウ抵抗性は弱なので、発生圃 場への作付けは避ける。 3-4 市場性 市場性の評価を行い、その方法を第 30 表に、結果 を第31 表に示した。「あきたほのか」は「錦秋」と比 較して、莢の色が良く、大きいため、莢外観は差がな いと評価された。食味評価は「錦秋」より、香りがあ りおいしいと評価された。市場関係者からは、莢外観 と食味の良さから “ 商品化を急いで欲しい ”、“ 特殊 売りの可能性もある” と意見があった。特殊売りとは、 包装袋にシールを貼る、専用の包装袋に入れる等、品 種名やブランド名を表示して売ることである。 第30表 「あきたのほか」の市場調査の方法 日時 2012年9月20日 午後2時から 場所 東京都中央卸売市場 大田市場内会議室 評価者 東京荏原青果(株)、東京青果(株) 「あきたほのか」の莢外観と食味を、「錦秋」と比較して 評価する. 評価方法 第31表 「あきたほのか」の市場調査での主な意見 項目 評価者 主な意見 莢外観 東京荏原青果 東京青果 大莢で、「錦秋」と比べても差はない。 食味 東京荏原青果 秋のエダマメ独特の甘さがあり、「錦秋」よりおいしい。 東京青果 東京荏原青果 販売 収穫時期が「あきた香り五葉」と「秘伝」の間であるこ とも評価できるので、商品化を急いで欲しい。 生の莢色、外観が良く、ゆで上がりも色がいい。莢も大 きいので、「錦秋」と比べても遜色ない。 口に入れた瞬間、香りがあり、「錦秋」より、甘み、風 味がとてもいい。 「あきたほのか」の食味の良さを訴求するなら、特殊売 り(包装袋にシールをはる等、品種名を表示して売るこ と)で単価が上がることも期待できる。 東京青果 4 考察 4-1 秋農試 40 号 秋田県農業試験場では 8 月下旬~ 10 月上旬に継続 して収穫できる県オリジナル品種シリーズの育成を目 標にエダマメ育種を進めている。「秋農試40 号」は「あ きた香り五葉」、「あきたさやか」に次いで3 番目に育 成したオリジナル品種である。 「秋農試40 号」の収穫期は、「錦秋」より遅く、「秘 伝」より早い。6 月上旬から 6 月中旬播種の場合、秋 田県の県南内陸平坦地域では県産エダマメ端境期にあ たる9 月下旬に収穫できる。 毛じは白、若莢の色は緑で「錦秋」と同様に莢の外
観が良く、莢の長さは「錦秋」よりやや短く、「あき た香り五葉」と同程度である。可販収量は「錦秋」よ りやや少なく、「あきた香り五葉」と同程度であるが、 「錦秋」より食味が優れる品種である。 県内には特徴のある在来種が多数存在しており、そ の中にはエダマメとして食味が優れ、育種素材として 利用できる系統が多く見い出されている(檜森 2000)。 「秋農試 40 号」を育成するにあたり、良食味形質と オリジナル性を付与する目的で、両親共にこれらの系 統を用いている。「あきた香り五葉」、「あきたさやか」 も、片親に在来種を用いているが、「秋農試40 号」は、 県内全域から収集した多様な特性を持つ351 系統を調 査、選抜して両親共に在来種を用いている点で、より オリジナル性が高い。今後も良食味でオリジナルな品 種の育成を進めていくためには、貴重で有用な在来種 の育種母本としての利用が有効と考えられるが、農業 上好ましくない形質を導入するリスクもあるので、総 合的に判断する必要がある。 2011 年、全農、各 JA、県の関係者で構成する “ え だまめ販売戦略会議” を立ち上げ、東京都中央卸売市 場への出荷量1 位を目標に、オール秋田でエダマメ振 興に取り組んだ。生産と販売、両面の取り組みだが、 生産振興の目標の1 つに “ 青豆の長期継続出荷 ”、具 体的には“100 日出荷 ” があげられた。その実現には、 マルチ栽培の普及による収穫期の前進化と共に、「錦 秋」の後に収穫できる品種育成が必要だった。「秋農 試 40 号」を育成したことにより、端境期を埋めるこ とができたため、長期継続出荷が可能になった。他の 生産振興対策として、農家の予冷庫や選別機等の機械 化促進、もみ殻補助暗渠等の排水対策実施、県育成品 種の普及があげられた。販売面も並行して振興を図っ た結果、東京都中央卸売市場への2011 年~ 2014 年の 出荷量は全国 2 位になった。また、2014 年には初め て、販売額10 億円を突破した(JA 全農あきた調べ)。 「秋農試 40 号」の普及性の評価は普及配布事業で 行った。収穫期、収量、総合評価は、品種の特性が十 分に発揮され、期待通りの結果であった。試験地から は、“ 端境期に収穫できる ”、“ 作付けを希望する ” 旨の意見が多かった。一部の試験地で収量がやや少な い等の課題が指摘されたため、今後は安定生産技術、 収穫適期判定技術の生産現場への普及定着が望まれ る。 市場関係者による市場性の評価で、「秋農試40 号」 は一般的な市場の青豆と比較して、莢外観、食味評価 が同等以上であり、端境期を埋めて長期継続出荷でき るため、販売上、有利な品種であると評価していた。 これは、「あきたさやか」の市場調査時と同様の結果 だった。 公設試の育種は差別化の面から、「あきた香り五葉」 のような特徴のある品種の育成が重要だが、出荷割合 の高い市場でのレギュラー品である青豆タイプのエダ マメについても、民間種苗会社と対抗して取り組む必 要があった。特に、秋田県で9 月下旬に収穫できる品 種は、県内ニーズがあって、民間品種が手薄な時期で あるため、「秋農試40 号」育成の成果は大きなもので あった。 4-2 あきたほのか 「あきたほのか」の収穫期は、「錦秋」よりやや遅 く、「秘伝」より早い。6 月上旬から 6 月下旬播種の 場合、秋田県の県南内陸平坦地域では9 月中旬に収穫 できる。毛じは白、若莢の色は緑で「錦秋」と同様に 莢の外観が良く、莢の長さは大莢の「錦秋」と同程度 である。多収の「錦秋」に比べ、可販収量はさらに多 く、食味が優れる品種である。 「あきたほのか」は突然変異を利用して育成した品 種で、「秘伝」が持つ多収、大莢、良食味の良い形質 をそのままに、晩生を中晩生に早生化した品種である。 一般に品種育成は交雑育種が主流であるが、突然変異 育種で育成した品種も少なくない。大豆でも国や県の 育成例があり、本県も放射線利用で元品種より主茎長 が短い「あきたみどり」を育成した(佐々木ら 2000)。 エダマメでは、青森県が「あおもり福丸」、「あお もり豊丸」、岩手県が「緑翆」、京都府が「紫ずきん」、‘ 「夏どり丹波黒2号」を育成した。いずれも放射線利 用で、元品種の早生化や主茎長を短くすること等によ り、品種化している(木内ら 1989、小林ら 1994、杉 本ら 2011)。 培養変異利用のエダマメ育種の例は無いが、本県で はカーネーションとフキ、他県ではイチゴやフキ等で 早生化や収量増、花色変異等の効果が認められ、品種 育成に至っている(新井 2002、佐藤 2001、江面ら 1998、大藪ら 2009)。 突然変異で育成されたこれまでのエダマメ品種は、 早生化すると元品種より主茎長が短く、収量が少なく なり、晩生化すると収量が多くなった。しかし、「あ きたほのか」は「秘伝」を早生化した品種で、元品種 より主茎長が短くなっているが、収量は多くなった。 この理由を以下のように推測した。 ①高温年でも不稔がほとんどない。 2010 年、夏期の高温により本県の水稲の作柄が低 下し、エダマメでも「秘伝」の不稔が多く、収量に大 きな影響を及ぼした(北野ら 2005)。「あきたほのか」 は、このような年でも平年と同程度の収量であり、多 収の一因となっている。したがって、安定した収量が 期待できる品種である。その理由として、開花期の気 温が「秘伝」と異なることが考えられる(第 3 図)。 ②一粒莢が少ない。 一粒莢は可販莢ではないため、一粒莢率が低いと可 販莢率が高くなり、可販収量は増える。「あきたほの
か」の一粒莢率は「錦秋」並みで、「秘伝」より少な くなった。これも可販収量が増えた一因と考えられる。 その理由として、開花期が早まり、気温の低い時期に 開花することにより、受精が効率的になったことなど が推定される。 ③アントシアン生成がない。 「秘伝」は収穫後期の低温でアントシアンを生成し、 莢色が変色することがある(羽田野 2003)。JA によ っては、それを利用して“ 紫秘伝 ” の名前で販売して いるところもあるが、基本的に、変色した莢はくず莢 である。つまり、アントシアンを生成すると、くず莢 率が高くなり、可販収量は低くなる。「あきたほのか」 はアントシアンを生成しない。これも多収の一因とな っているが、理由は収穫期が早くなったためと考えら れる。 ①~③とも、「秘伝」が本来持っていたポテンシャ ルを、早生化により、秋田県で十分に発揮できように した結果である。突然変異育種でエダマメの早生化と 高収量を両立できる場合があり、そのためには、育種 目標の設定、元品種の選定、選抜の正確さが大事であ ると考えられた。 普及性の評価については、普及展示圃で検討した。 2014 年に、山本、仙北、平鹿の各振興局で “ えだま め100 日安定出荷モデル展示圃 ” を設けたところ、収 穫期、収量、病害発生程度等は、試験場の生産力検定 試験、現地試験とほぼ同様で、期待通りの結果だった。 市場性の評価で、「あきたほのか」は「錦秋」と莢 外観に差はないと評価されたが、「錦秋」は市場で、“ 莢外観が良く大莢の品種” と認識されている品種であ る。それと同等の評価が得られたということは、高い 評価が得られたとみなされる。食味では「錦秋」より 香りがあり、おいしいと評価され、“ 商品化を急いで 欲しい ”、“ 特殊売りの可能性もある ” との意見であ ったことから、「あきたほのか」の市場性は高いと考 えられる。 2014 年、“ えだまめ販売戦略会議 ” で、首都圏の市 0 50 100 150 2009年 2010年 2011年 2012年 収量 (kg/a) 第3図 可販収量の変化(現地、太田) あきたほのか 秘伝 場関係 10 社を対象に、より大規模な市場調査を行っ たが、そこでも高い評価が得られた。それを受けて、 現在、差別化する等の販売方法を、“ えだまめ販売戦 略会議” で検討している。 民間種苗会社は交雑育種で高い技術と実績はある が、培養変異利用は、技術確立から始める必要があり、 前例、実績が少ないため、取り組みにくい。特にエダ マメの培養は困難であり、多大な労力がかかる。この ような技術の分野では、公設試の育種の役割は大きく、 民間種苗会社との技術的な棲み分けができると考えら れた。 4-3 最後に 今回は2品種とも、育成者が市場調査しているため、 そこでの経験、知識、人脈など、得たものは大きく、 育種課題へのフィードバックも期待できる。今後、マ ーケットイン型育種をさらに充実させるためにも、品 種登録出願前の市場調査は継続すべきと考えられる。 2014 年、“ えだまめ販売戦略会議 ” のマーケティン グ・リサーチ業務報告会で、秋田県産地の現状は、“ これまでの取り組みで、東京市場の取り扱い数量は圧 倒的 No.1 産地の県に迫るまでに拡大して、品質評価 も高くなっている ”、“ 秋田県産エダマメは数あるレ ギュラー産地のひとつから、秋田の代替産地はないと まで、市場、量販店の認識は変わってきている” であ り、今後は、“ 食味と価格のバランスのとれたエダマ メを、他産地が生産・出荷できないロットで安定的に 出荷することが必要である” と報告された。今回育成 した2 品種が、この提言に応えるための一助になるこ とを期待する。今後の育種においても、これらの報告 をふまえた目標の設定が必要である。 「秋農試 40 号」、「あきたほのか」の育成により、 県産エダマメの収穫期は第4 図の通りになった。白毛 品種の長期継続出荷の実現と充実に寄与できる成果と 考えられる。 今後、県オリジナル品種シリーズの完成に向け、‘ 秘伝’ と置き換わる品種の育成が重要である。この新 品種が育成されれば、8 月下旬から 10 月上旬の 1 カ 月半のほとんどの期間を、県育成品種でカバーできる ようになり、白毛品種の長期継続出荷のさらなる充実 が期待できる。 県育成品種の作付面積を第5 図に示す。普及が進む にしたがって、育成した品種への改良の要望が高くな ってきた。現在、「あきた香り五葉」の病害抵抗性の 改良等が要望されており、それについても育種を進め ていく必要がある。「あきた香り五葉」、「あきたさや か」、「秋農試 40 号」、「あきたほのか」と、次に続く 新品種で、作付け面積のさらなる拡大を期待する。
毛じ 月 旬 夕涼み あきたさやか(県育成) 白毛 錦秋 あきたほのか(県育成) 秋農試40号(県育成) 秘伝 淡褐毛 あきた香り五葉(県育成) 白毛:市場での青豆タイプ(レギュラー品なので年間を通じてニーズあり) 第4図 「秋農試40号」、「あきたほのか」導入後の県産エダマメ収穫期(8月下旬~) 8月 9月 10月 下 上 中 下 上 5 謝辞 「秋農試40 号」、「あきたほのか」の育成にあたり、 特性検定試験を東北農業研究センター大豆育種研究東 北サブチームに、現地試験では大仙市太田・清水川輝 雄氏、JA 秋田おばこ、仙北地域振興局農林部農業振 興普及課に、栽培試験と食味成分の分析では野菜・花 き部主任研究員本庄求氏、同篠田光江氏、研究員今野 かおり氏にそれぞれご協力をいただいた。関係諸氏に 深く感謝したい。また、農業試験場における育種の遂 行にあたっては、圃場管理業務の高橋善則、佐々木文 武、川井渉、関亘の諸氏に多大な労をお願いした。こ こに記して、謝意を表する。 引用文献 秋田県農林水産部/編.2007.あきたブランド野菜づくり の手引き.161-163.秋田県 秋田県農林水産部農畜産振興課/編,2009.あきたの枝豆 VOL.1.1-24.秋田県 新井正善.2002.カーネーションの新品種「ポーレッド」 及び「ユアレッド」の育成.平成 14 年度東北農業研 0 50 100 150 200 250 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (ha) (年度) 第5図 県育成品種の作付け面積 あきたほのか 秋農試40号 あきたさやか あきた香り五葉 究成果情報 江面浩ほか.1998.培養変異を利用したイチゴ新品種「ア ンテール」の育成.茨城県農業総合センター生物工 学研究所研究報告.2:75-81 福嶋昭ほか.2006.枝豆用大豆の新品種「黒っこ姫」及 び「茶っころ姫」.平成 17 年度近畿中国四国農業研 究成果情報.251-252 檜森靖則.2000.秋田県内で収集した在来ダイズのエダ マメ特性 第 2 報 多小葉在来ダイズの特性.東北農 業研究.53:191-192 檜森靖則ほか.2004.食味が良く三粒莢率の高いエダマ メ 新 品 種 ‘ 秋 試 1 号 ’ の 育 成 .東 北 農 業 研 究 .57:229-230 檜森靖則ほか.2008.エダマメ品種「あきた香り五葉」 の育成.秋田県農林水産技術センター農業試験場研 究報告.48:65-77 平井輝悦ほか.1996.エダマメ在来種「毛豆」の放射線 照射による早生化.東北農業研究 48:169-170 木内豊ほか.1989.エダマメ新品種「岩豆系 3」、「岩豆 系4」の特性.東北農業研究.42:277-278 北野待子ほか.2005.高温がダイズの開花・結莢におよ ぼす影響.日本作物学会記事.74:134-135 小林秀臣ほか.1994.えだまめ用黒大豆「紫ずきん」の 育成.平成6年度近畿中国四国農業研究成果情報.1-2 三村裕ほか.2007.丹波黒大豆系エダマメ品種「紫ずき ん2 号」の特性.平成 18 年度近畿中国四国農業研究 成果情報 大藪哲也ほか.2009.日持ち性の良いフキ新品種「愛経 2 号」の育成.愛知県農業総合試験場研究報告.41:55-60 佐々木和則ほか.2000.青大豆新品種「あきたみどり」 の育成と特性.秋田県農業試験場研究報告.41:1-16 佐藤友博.2001.培養変異によるフキの高品質・多収系 統K67-1 の育成.平成 13 年度東北農業研究成果情報 佐藤友博ほか.2009.良食味で収量性が高い中生エダマ
メ新品種「あきたさやか」.東北農業研究.62:191-192 佐藤友博ほか.2010.エダマメ新品種 “ あきたさやか ” の育成.秋田県農林水産技術センター農業試験場研 究報告.50:31-43 杉本充ほか.2011.夏季収穫可能な丹波黒大豆系エダマ メ新品種‘ 夏どり丹波黒 1 号'および ‘ 夏どり丹波黒 2 号'の育成.東北京都府農林センター研究報告.34:1-8 高橋拓也ほか.2001.良食味・中生エダマメ品種「滝系 C8」.東北農業研究.53:187-188 羽田野一栄.2003.ハーベスタ収穫に適した晩生エダマ メの草姿改善法.平成 15 年度関東東海北陸農業研究 成果情報
Abstract
Breeding of New Green Soybean Varieties
「
Akinoushi-40」and 「Akita-Honoka」
Tomohiro SATO, Yasunori HIMORI, Nobuichi TSUBAKI , Hirobubu SANO
「Akinoushi-40」 is a new variety developed by Akita Agricultural Experiment Station, for the purpose of breeding of a late maturing and good-taste green soybean.
It is a selection from the cross between AG209 and AG306 made in 2001, followed by line selection. AG209 and AG306 are selected from local varieties in Akita.
The agricultural characteristics of 「Akinoushi-40」 are as follows:
1. Maturing is earlier than that of ‘Kinshu’ and later than that of 「Hiden」, which belongs to the late maturing group. The period is the off-crop season of green soybean in Akita.
2. Appearance quality is good, because of white pubescences and green color of young pods, which is the same size as 「Akita-Kaori-Goyou」.
3. Yield potential is same as that of 「Akita-Kaori-Goyou」.
4. Taste of blanched young bean is good, which is better than that of 「Kinshu」.
「Akita-Honoka」 is a new variety developed by Akita Agricultural Experiment Station, for the purpose of breeding of a medium-late maturing, good-taste and well yielding green soybean.
It was selected among the plants regenerated from adventive embryo, which was induced from the cotyleden of variety 「Hiden」.
The agricultural characteristics of 「Akita-Honoka」 are as follows:
1. Maturing is earlier than that of 「Kinshu」 and later than that of 「Hiden」 which belongs to the medium-late maturing group.
2. Appearance quality is good, because of white pubescences and green color of young pods, which is the same size as 「Kinshu」.
3. Yield potential is higher than that of 「Kinshu」.
4. Taste of blanched young bean is good, which is better than that of 「Kinshu」.
Keywords:Akinoushi-40, Akita-Honoka,Breeding, Good-taste, Green soybean, Large young pods, Off-crop season, Well yielding, White pubescences
付記 (1)育成関係者
付表1 「秋農試40号」の育成従事者と担当場所
年次 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
世代 交配
F
1F
2F
3F
4F
5F
6F
7F
8F
9F
10 注)農業試験場:秋田県農業試験場○
○
○
○
○
○
○
農業試験場
○
○
○
○
氏名・場所名
佐藤 友博
○
○
檜森 靖則
○
○
○
○
○
○
○
椿 信一
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
付表2 「あきたほのか」の育成従事者と担当場所 年次 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 世代 再分化 M1 M2 M3 M4 M5 M6 M7 M8 M9 M10 M11 M12 M13 注)生物資源セ:秋田県生物資源総合開発利用センター、農業試験場:秋田県農業試験場 ○ ○ ○ 農業試験場 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 生物資源セ ○ ○ 椿 信一 氏名・ 場所名 佐藤 友博 ○ ○ ○ ○ ○ 佐野 広伸 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○(2)種苗特性分類一覧
付表3 「秋農試40号」の種苗特性一覧(2009~2011年、育成地)
階級
区分
階級
区分
階級
区分
植物体 伸育型
1
有限
1
有限
1
有限
分枝数
5
中
3
少
5
中
茎
胚軸のアントシアン着色
9
有
9
有
9
有
主茎長
3
短
3
短
5
中
主茎節数
5
中
3
少
7
多
最下着莢節位高
3
低
5
中
5
中
着莢密度(総莢/茎長)
5
中
7
密
5
中
葉
小葉の形
3
鋭先卵形
4
卵形
3
鋭先卵形
小葉の数
1
3枚葉
2
5枚葉
1
3枚葉
花
花色
2
紫
2
紫
2
紫
莢
若莢の色(枝豆用)
5
緑
5
緑
5
緑
若莢の長さ(枝豆用)
7
長
7
長
7
長
若莢の幅
7
広
5
中
7
広
熟莢の色
5
中
5
中
5
中
湯煮(ブランチング)後の莢色
2
緑
3
濃緑
2
緑
多粒莢率
3
低
5
中
3
低
一粒内莢数
5
中
5
中
5
中
莢数
5
中
5
中
5
中
毛じの多少
5
中
5
中
5
中
毛じの形
3
直
7
扁
3
直
毛じの色
1
白
2
褐
1
白
子実
種皮の単色、複色の別
1
単色
1
単色
1
単色
種皮の地色
4
緑
2
黄
4
緑
粒の子葉色
7
緑
3
黄
7
緑
粒形
2
扁球
1
球
2
扁球
粒の光沢
3
弱
3
弱
3
弱
臍の色
1
黄
1
黄
1
黄
粒の大小
9
極大
7
大
9
極大
生理・ 開花期
7
晩
5
中
9
極晩
形態的 成熟期
7
晩
5
中
9
極晩
特性
生態型
5
中間型
5
中間型
7
秋大豆型
倒伏抵抗性
5
中
7
強
5
中
子実収量
5
中
3
少
5
中
病害
ダイズモザイクウイルス抵抗性 A系統
1
感受性
-
-
抵抗性 ダイズモザイクウイルス抵抗性 B系統
1
感受性
-
-
ダイズモザイクウイルス抵抗性 C系統
1
感受性
-
-
ダイズモザイクウイルス抵抗性 D系統
1
感受性
-
-
ダイズモザイクウイルス抵抗性 E系統
1
感受性
-
-
虫害
抵抗性
形 質
育成品種
対照品種
対照品種
秋農試40号
あきた香り五葉
秘伝
ダイズシストセンチュウ抵抗性
3
弱
-
-
付表4 「あきたほのか」の種苗特性一覧(2009~2012年、育成地)
階級
区分
階級
区分
階級
区分
植物体 伸育型
1
有限
1
有限
1
有限
分枝数
7
中
3
少
7
中
茎
胚軸のアントシアン着色
1
無
9
有
9
有
主茎長
4
短-中
3
短
5
中
主茎節数
3
少
3
少
5
中
最下着莢節位高
5
中
5
中
5
中
着莢密度(総莢/茎長)
7
密
7
密
7
密
葉
小葉の形
3
鋭先卵形
4
卵形
3
鋭先卵形
小葉の数
1
3枚葉
2
5枚葉
1
3枚葉
花
花色
1
白
2
紫
2
紫
莢
若莢の色(枝豆用)
5
緑
5
緑
5
緑
若莢の長さ(枝豆用)
7
長
7
長
7
長
若莢の幅
7
広
5
中
7
広
熟莢の色
5
中
5
中
5
中
湯煮(ブランチング)後の莢色
2
緑
3
濃緑
2
緑
多粒莢率
3
低
5
中
3
低
一粒内莢数
5
中
5
中
4
少-中
莢数
7
多
5
中
5
中
毛じの多少
5
中
5
中
5
中
毛じの形
3
直
7
扁
3
直
毛じの色
1
白
2
褐
1
白
子実
種皮の単色、複色の別
1
単色
1
単色
1
単色
種皮の地色
4
緑
2
黄
4
緑
粒の子葉色
7
緑
3
黄
7
緑
粒形
2
扁球
1
球
2
扁球
粒の光沢
3
弱
3
弱
3
弱
臍の色
1
黄
1
黄
1
黄
粒の大小
9
極大
6
中-大
9
極大
生理・ 開花期
7
晩
5
中
9
極晩
形態的 成熟期
5
中
5
中
9
極晩
特性
生態型
5
中間型
5
中間型
7
秋大豆型
倒伏抵抗性
5
中
7
強
5
中
子実収量
5
中
3
少
5
中
病害
ダイズモザイクウイルス抵抗性 A系統
3
抵抗性
-
-
抵抗性 ダイズモザイクウイルス抵抗性 B系統
3
抵抗性
-
-
ダイズモザイクウイルス抵抗性 C系統
-
-
-
ダイズモザイクウイルス抵抗性 D系統
1
感受性
-
-
ダイズモザイクウイルス抵抗性 E系統
3
抵抗性
-
-
虫害
抵抗性
形 質
育成品種
対照品種
対照品種
あきたほのか
あきた香り五葉
秘伝
ダイズシストセンチュウ抵抗性
3
弱
-
-
(3)写真 第6図 「秋農試 40 号」の生育状況 第7図 「秋農試 40 号」の 若莢の形態 第9図 「秋農試 40 号」の 成熟期の草姿 第8図 エダマメ収穫期の草姿の比較 (左から、「秘伝」、「秋農試 40 号」、「あきた香り五葉」)
第 10 図 「あきたほのか」の生育状況 第 11 図 若莢の形態の比較 (左 2 列は「あきたほのか」、右 2 列は「錦秋」) 第 13 図 「あきたほのか」の 成熟期の草姿 第 12 図 エダマメ収穫期の草姿の比較 (左から、「あきたほのか」、「錦秋」)