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インターネット通販市場の成長と物流施設利用の方向性(1)~インターネット通販市場の成長可能性

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1――はじめに 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によれば、2017 年の企業と消費者間の電子商取引市 場(EC 市場)規模は、約 16.5 兆円に達した(図表 1)。スマートフォンの普及により、場所・時間 を問わず商品の注文が可能になったことや、インターネット通販で扱われる商品の裾野が急速に広 がったこと等により、EC 市場は、順調に拡大している。 EC 市場規模の内訳をみると、物販系分野の占める割合(52%)が最も大きく、次いで、サービ ス系分野1(36%)、デジタル系分野2(12%)となっている(図表 2)。 市場規模の拡大とともにEC 化率3も上昇している(図表3)。物販系分野の平均 EC 化率は、5.8% に留まっているが、商品別にみると、既にEC 化率が 10%以上の商品(生活家電、衣類、雑貨、等) もみられる(図表4)。 図表-1 EC 市場規模の推移 図表-2 EC 市場規模の内訳(2017 年) 1 チケット販売、金融サービス、旅行サービス、等。 2 電子書籍、有料音楽・動画配信、オンラインゲーム、等。 3 すべての商取引額(商取引市場規模)に対する電子商取引額の割合。 6.1 6.7 7.8 8.5 9.5 11.2 12.8 13.8 15.1 16.5 13.9% 10.0% 16.3% 8.6% 12.5% 17.4% 14.6% 7.6% 9.9% 9.0% 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 16% 18% 20% 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 BtoC-EC市場規模 年間増加率 (兆円) 物販系, 8.6兆円, 52% サービ ス系, 6.0兆円, 36% デジタ ル系, 1.9兆円, 12% 合計 16.5兆円 ニッセイ基礎研究所 2018 年 7 月 20 日

インターネット通販市場の成長と

物流施設利用の方向性(1)

~インターネット通販市場の成長可能性

金融研究部 准主任研究員 吉田 資 (03)3512-1861 e-mail : [email protected] (出所)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」をもとに ニッセイ基礎研究所作成 (出所)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」をもとに ニッセイ基礎研究所作成

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図表-3 物販系 EC 市場規模の推移 図表 4 商品別 EC 市場規模および EC 化率 いまや即日・当日配送が常識となっている物販系 EC(インターネット通販)の貨物を扱う物流 施設(配送センター等)では、大量の商品を迅速に入出荷することが求められている。そのため、 不動産投資家(REIT 等)が投資対象とする高機能な大規模物流施設が利用されることが多い。世 界主要都市で事業展開している大手不動産会社のJLL の調査によれば、2010 年から 2014 年にかけ て首都圏で新規供給された先進的物流施設では、インターネット通販のテナントが約2 割を占めた (延床面積ベース)。物流施設投資の見通しを立てるにあたり、インターネット通販の現状を把握す ることは必須といえる。 本稿では2 回に分けて、インターネット通販市場の成長が物流施設利用に与える影響について考 察する。第1 回は、インターネット通販市場の成長可能性、等について概観する。そして、第 2 回 では、第1 回で概観した通販市場の状況を踏まえて、物流施設利用の方向性について考察する。 2――インターネット通販市場の成長可能性 本章では、インターネット市場の成長可能性を、①年代別にみたネットショッピングの利用状況 ②ラストワンマイルにおける人手不足、③シェアリングエコノミーの拡大の3 つの観点で考察する。 1|年代別にみたネットショッピングの利用状況 総務省「家計消費状況調査」によれば、年代別にみたネットショッピングの利用率は、「39 歳以下」 の年代(45%)が最も高く、年齢が上がるにつれて低下する傾向にある(図表 5)。 一方、ネットショッピング支出額は、「50~59 歳」の年代(年間 41 万円)が最も多く、次いで「60 ~69 歳」(年間 40 万円)、「70 歳以上」(年間 39 万円)の世代が多い(図表 6)。ネットショッピング を利用している層に限定してみると、ミドル・シニア層(50 代以上)の方が、若年層と比べてネット ショッピングの支出額が多い傾向にある。 総務省の調査によれば、ネットショッピングを利用する理由に関して、「24 時間いつでも買物がで きるから」や「実店舗に出向かなくても買物はできるから」との理由の回答割合は、年代による差が 小さい。一方、「買いたいものが検索機能等ですぐに探し出すことができ、時間の節約になるから」や 「自宅に持ち帰るのが大変な重いものが手軽に買えるから」といった理由を挙げる人の割合は、年代 が上がるにつれて上昇する傾向がみられる(図表7)。一般的に、徒歩での買い物が可能な範囲は自宅 から半径400~500mと言われている。比較的経済力があるミドル・シニア層は、実店舗で買い物をす 2.9 3.4 4.0 4.5 5.0 6.0 6.8 7.2 8.0 8.6 1.8% 2.1% 2.8% 3.2% 3.4% 3.9% 4.4% 4.8% 5.4% 5.8% 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 0 2 4 6 8 10 12 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 (EC化) 物販系EC市場規模 EC化率 (兆円) 0 4,000 8,000 12,000 16,000 20,000 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 事 務 用 品・ 文 房 具 生 活 家 電・AV 機 器・PC ・ 周 辺 機 器 等 書 籍・ 映 像 ・ 音 楽 ソ フ ト 雑 貨・ 家 具・ イ ン テ リ ア 衣 類 ・ 服 装 雑 貨 等 化 粧 品・ 医 薬 品 自 動 車・ 自 動 二 輪 車・ パ ー ツ 等 食 品・ 飲 料・ 酒 類 そ の 他 (EC市場規模・億円) (EC化率) EC市場規模 EC化率 (出所)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」をもとに ニッセイ基礎研究所作成 (出所)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」をもとに ニッセイ基礎研究所作成

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る労力や手間を省くために、ネットショッピングでの購入が多いと考えられる。 前述の通り、若い年代ほど、IT リテラシーが高く、ネットショッピングを利用する人は多い。例え ば、現時点で「50~59 歳」の世帯のネットショッピングの利用率よりも、10 年後の「50~59 歳」(現 在の「40~49 歳」)のネットショッピングの利用率は高いことから、ネットショッピングの利用率は 今後、ますます上昇すると見込まれる。 また、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によれば、総世帯数 は2023 年まで増加し続け(図表 8)、世帯構成は、ネットショッピング支出額が多い 50 代以上の割合 が高まる見通しである(図表9)。今後、ネットショッピング支出の多いミドル・シニア層は現時点よ り拡大すると見込まれる。 以上の状況を踏まえると、ネットショッピングの利用率の上昇と、ネットショッピング支出の多い ミドル・シニア層の拡大に支えられ、インターネット通販市場の成長は継続すると思われる。 図表-5 ネットショッピングを利用した世帯の割合(年代別) 図表-6 ネットショッピングを利用した年間支出総額(年代別) 図表-7 ネットショッピングを利用する理由(年代別) 図表-8 世帯数の推移(2015 年~2025 年) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 平均 ~39歳 40歳~49歳 50歳~59歳 60歳~69歳 70歳~ (ネットショッピングを利用した世帯割合) (世帯主の年齢) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 平均 ~39歳 40歳~49歳 50歳~59歳 60歳~69歳 70歳~ (年間支出額・万円) (世帯主の年齢) 70% 63% 30% 28% 76% 67% 32% 30% 74% 69% 44% 34% 72% 69% 44% 39% 76% 66% 54% 45% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 実店舗に出向かなくても買物ができるから 24時間いつでも買物ができるから 買いたいものが検索機能等ですぐに探し出 すことができ、時間の節約になるから 自宅に持ち帰るのが大変な重いものが手軽 に買えるから 60代以上(n=290) 50代(n=313) 40代(n=298) 30代(n=274) 20代以下(n=269) 53,000 53,500 54,000 54,500 (千世帯) (出所)総務省統計局「家計消費状況調査結果」をもとに ニッセイ基礎研究 所作成 注 1) 世帯主の年齢階級別 注 2) 二人以上の世帯が対象 (出所)総務省統計局「家計消費状況調査結果」をもとに ニッセイ基礎研究所作成 注 1) 世帯主の年齢階級別 注 2) ネットショッピングを利用した二人以上の世帯が対象 (出所)総務省「社会課題解決のための新たな ICT サービス・技術への人々の 意識に関する調査研究」(平成 27 年)をもとにニッセイ基礎研究所作成 注) ネットショッピング利用者が対象 (出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯 数の将来推計(全国推計)」(2018 年推計)をもと にニッセイ基礎研究所作成

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図表-9 総世帯数(全国)における年齢別割合の推移 (出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2018 年推計)をもとにニッセイ基礎研究所作成 注) 世帯主の年齢構成別割合 2|ラストワンマイルにおける人手不足 (1)人手不足の現状 インターネット通販は、「モール型」と「直販型」のビジネスモデルに大別される4(図表10)。「モ ール型」のビジネスモデルは、ネット上にモールを開設し、複数のネットショップを誘致して、出 店料や売上手数料等を収益源とする。自社による仕入れおよび在庫リスクがなく、多くの商品を取 り揃えることができる。一方、「直販型」のビジネスモデルは、自社で仕入れを行うため、大きな利 益を期待できる半面、多くの在庫を抱えることはできないことから、商品を豊富に取り揃えるは難 しくなる。 図表11 は、各社のインターネット通販市場の売上高を示したものである。国内でのインターネッ ト通販事業の売上高が2,000 億円を超える企業は、アマゾン(約 1.3 兆円)、ヤフー(約 6,000 億円)、 楽天(約4,000 億円)、アスクル(約 3,000 億円)である。 これまで、アマゾンとアスクルは直販型、ヤフーと楽天はモール型の代表格とされてきた。しか し、最近では、アマゾンの売上高に占めるモール型(「Amazon マーケットプレイス5)の割合が増 加している。モール型の割合を増加することで、商品の品揃えを増やし、利用者の利便性向上を目 指していると考えられる。一方、モール型の代表格であるヤフーや楽天では、直販を強化している。 即時配送が求められる中で、配送を柔軟にコントロールしやすい直販の利点を重視しはじめたと推 察される。このように、大手インターネット通販事業者は、「モール型」と「直販型」を融合したビ ジネスモデルに向かっている。 4 林克彦・根本敏則『ネット通販と宅配便における物流革新』国際交通安全学会誌 VoL41No.1、平成 28 年 6 月 5 各企業がネットショップを出店するのではなく、商品を出品するビジネスモデルのモール型 EC。商品のデータ管理はアマゾンを行っている。 22.1% 21.6% 21.2% 20.9% 20.5% 20.3% 20.1% 19.8% 19.6% 19.4% 19.2% 17.2% 17.5% 17.5% 17.4% 17.2% 17.0% 16.6% 16.2% 15.8% 15.3% 14.9% 15.8% 15.6% 15.9% 16.2% 16.4% 16.8% 17.2% 17.6% 18.1% 18.5% 18.7% 19.7% 19.7% 18.9% 18.0% 17.2% 16.6% 16.2% 16.0% 15.9% 15.9% 16.1% 25.3% 25.5% 26.5% 27.6% 28.6% 29.3% 29.9% 30.4% 30.7% 30.9% 31.1% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 70歳~ 60歳~69歳 50歳~59歳 40歳~49歳 ~39歳

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図表-10 直販型とモール型の流通経路 (出所)ニッセイ基礎研究所 図表-11 インターネット通販事業の売上高(2017 年) (出所)各社公表資料および新聞・雑誌記事、等をもとにニッセイ基礎研究所作成 インターネット通販の物流は、「モール型」、「直販型」いずれのビジネスモデルにおいても、消費者 への配達部分(ラストワンマイル)は宅配便事業者に依存している。そのため、宅配便取扱個数は、イ ンターネット通販市場の拡大とともに、大幅に増加しており、2016 年度は約 40.2 億個に達した(図 表12)。宅配便取扱個数の事業者別割合をみると、上位 3 社(ヤマト運輸㈱・佐川急便㈱・郵便事業㈱) の寡占化が進んでいる。日本郵便「ゆうパック」と日本通運「ペリカン便」が統合した 2010 年以降 は、3 社で 9 割以上のシェアを占めており、2016 年度は 93.4%に達した(図表 13)。 大手3 社とも通販市場拡大に伴う需要増大に伴い、宅配便ネットワーク体制の整備を進めてきた。 ヤマト運輸は、集荷した荷物を夜間にまとめて幹線輸送していたが、東名阪にゲートウェイターミナ ルを設置し、日中からゲートウェイ間を多頻度運行することで納品時間を短縮した。佐川急便は、ロ ーソンと合弁会社「SG ローソン」を 2015 年に設立し、ローソン店舗を起点とした配送および御用聞 きサービスを開始している。日本郵便は、総額1800 億円を投じ、2018 年度までに全国 20 カ所に大 規模物流拠点「メガ物流局」を整備する予定である。 ネット通販 事業者 自社 物流施設 宅配便 事業者 消費者 消費者 ネット通販 事業者 ネットショップ ネットショップ ネットショップ モール 物流施設 物流事業者 物流施設 自社 物流施設 宅配便事業者 宅配便事業者 宅配便事業者 消費者 消費者 消費者 直販型 直販型 モール型モール型 自家配送 自家配送 発注 発注 発注 発注 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 ア マ ゾ ン( 日 本 事 業 ) ヤ フ ー ( コ マ ー ス 事 業 ) 楽 天( 国 内EC 事 業 ) ア ス ク ル ベ ル ー ナ 千 趣 会 ス タ ー ト ト ゥ デ イ ス ク ロ ー ル オ イ シ ッ ク ス ド ッ ト 大 地 シ ュ ッ ピ ン フ ェ リ シ モ (億円)

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図表-12 宅配便等取扱個数の推移 図表-13 宅配便取扱個数(トラック)の事業者別割合 前述の通り、宅配便ネットワーク体制の整備は進んでいる。一方、労働需給が極めて逼迫している中 で、宅配便の現場では、取扱個数の急増も相まって深刻な人手不足となっている。人手不足の影響を受 けて、2017 年は、宅配事業者によるインターネット通販事業者に対する配送料金の値上げ要請や荷受け 量の総量規制、時間帯指定配達の見直し等が行われた。「宅配便」の輸送指数(日本銀行「企業向けサー ビス価格指数」)は、企業物流の中心である「貸切貨物」や「積合せ6貨物」の輸送指数と比較して、大 幅に上昇している(図表14)。 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト調査」によれば、物流サービスが極め て重要な通販企業の売上高物流コスト比率は12%程度と、全業種平均(約 5%)に比べて高い水準に ある(図表 15)。ラストワンマイルを担う宅配便の配送料値上げは、通販企業の業績を悪化させるこ とになる。 また、消費者がインターネット通販を利用する理由として、実店舗で購入するよりも安いという理 由は上位に挙がる。配送料の値上げは消費者の負担増につながり、市場拡大の阻害要因として働くと 考えられる。 図表-14 輸送指数の推移 図表-15 売上高物流コスト比率の推移 6 一台の車両に複数の荷主の貨物を積合せて輸送すること。 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 1992年 1994年 1996年 1998年 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 2016年 (百万個) 宅配便取扱個数(合計) 宅配便取扱個数(トラック) 38.2% 38.7% 40.6% 42.2% 42.3% 42.7% 46.3% 45.4% 46.7% 46.9% 33.4% 33.4% 36.2% 37.4% 38.6% 38.9% 33.9% 33.5% 32.3% 30.6% 8.4% 8.7% 8.5% 10.9% 11.4% 11.0% 11.9% 13.6% 13.8% 15.9% 19.9% 19.2% 14.7% 9.5% 7.6% 7.4% 7.8% 7.5% 7.1% 6.5% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 宅急便[ヤマト運輸㈱] 飛脚宅配便[佐川急便㈱] ゆうパック[郵政事業㈱] その他 95 100 105 110 115 120 125 130 (2010年平均=100) 貸切貨物 積合せ貨物 宅配便 総平均 0.0% 3.0% 6.0% 9.0% 12.0% 15.0% 全平均 通販 (出所)日本銀行「企業向けサービス価格指数」をもとに ニッセイ基礎研究所作成 (出所)公益社団法人「日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト 調査」をもとにニッセイ基礎研究所作成 (出所)国土交通省「宅配便取扱実績」をもとにニッセイ基礎研究所作成 (出所)国土交通省「宅配便取扱実績」をもとにニッセイ基礎研究所作成

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(2)人手不足対策 宅配便の取扱個数が急増する中、不在のために持ち帰る「再配達」が、宅配便事業者の更なる負担増 を招いている。国土交通省は、「総合物流施策推進プログラム」(2018 年 1 月)において、宅配便の再配 達率を、16%程度(2017 年度)から 13%程度(2020 年度)まで削減することを目標としている。また、 国土交通省HP 上では「再配達削減のために活用をお願いしたい 3 つの方法」が掲載されている。具体 的には、①「時間帯指定の活用」、②「各事業者の提供しているコミュニケーション・ツール等(メール・ アプリ等)の活用」、③「コンビニ受取や駅の宅配ロッカーなど、自宅以外での受取方法の活用」を掲げ ている。 大手宅配便事業者も再配達削減の取組みを開始している。ヤマト運輸は、宅配ロッカーサービスを展 開するフランス企業のネオポストグループと、複数の事業者が共同で利用できるオープン型宅配ロッカ ーネットワークを構築し、運用するための合弁会社「Packcity Japan 株式会社」を 2016 年 5 月に設立 し、宅配ロッカー事業を開始している。 しかし、内閣府政府広報室が2017 年 12 月に実施した「再配達に関する世論調査」によれば、回答者 の7 割弱が、宅配ボックスやコンビニでの受取等、いずれも利用したことがないと回答しており、イン ターネット通販利用者の認知度はまだ低い状況にある(図表16)。 国土交通省「宅配便再配達率」によれば、2018 年 4 月期の宅配便再配達率は、前回調査(2017 年 10 月期)からやや低下したものの、15%と高い水準にある。特に、単身世帯が多い都市部で高い傾向がみ られる(図表17)。 図表-16 宅配便を受け取るために利用した方法 図表-17 宅配便再配達率 ラストワンマイルの人手不足を解消する新技術として、無人飛行機(ドローン)を使った宅配サービ スが期待されている。千葉市では2016 年 1 月にドローンの活用に進める国家戦略特区の指定を受け、 幕張地区でドローンを使った宅配便配送の実証実験をスタートさせており、2019 年度までに実用化した いとしている。具体的には、ドローンで東京湾岸部の物流施設から幕張新都心内の集積所へ輸送し、そ の上で高層マンションの各住戸へ宅配するサービスを想定している。 14.5% 11.4% 7.3% 7.0% 0.7% 68.1% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 宅配事業者や通販事業者のWEB、アプリ 等を活用した配達日時や受取場所の指 定・変更 コンビ二等での受付 自宅用の宅配ボックスへの配達 職場等での受取 鉄道駅等の公共スペースに設置された、 誰でも利用可能な宅配ロッカーへの配達 いずれも利用したことがない 15.5% 17.1% 14.7% 13.5% 15.0% 16.4% 14.3% 12.6% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 総 計 都市 部 都 市 部 近 郊 地 方 2017年10月期 2018年4月期 (出所)内閣府政府広報室「再配達に関する世論調査」をもとに ニッセイ基礎研究所作成 (出所)国土交通省「宅配便再配達率」をもとに ニッセイ基礎研究所作成

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幕張新都心の立地優位性 ①(比較的距離が近い)東京湾岸臨海部に物流施設が多く立地している。 ②配送ルートの大半が海上と一級河川(花見川)の上空である。 ③幕張ベイタウンと隣接する若葉住宅地区(今後開発予定)と合わせて、約 3 万 6 千人の居住人口。若葉住宅地区では、 設計段階から、ドローン宅配を視野にいれた検討も可能。 ④電線が地中化されている 図表-18 ドローンの飛行ルート (出所)東京圏国家戦略特別区域会議「千葉市ドローン宅配等分科会」資料より抜粋。 実証実験が行われた幕張新都心は、上記のドローンによる配送ビジネスが成立しうる環境が整ってい る 。一方、「配送ルートの大半が海上と河川」や「電線が地中化している」地域は限られている。全国 でドローンを使った宅配サービスを本格的に実用化するためには、まだ課題が多いと思われる。 このように、再配達削減の取組みやトラック輸送に代わる新技術の開発が行われているものの、ラス トワンマイルにおける人手不足が早期に解決することは難しいと考えられる。 3|シェアリングエコノミーの拡大 新たな経済活動の動きとして、シェアリングエコノミー7が注目されている。インターネット通販に関 連するシェアリングエコノミーとして、ネットオークションとフリマアプリ8を挙げられる。ジャストシ ステム「E コマース&アプリコマース月次定点調査」(2018 年 5 月度)によれば、「個人間商取引(CtoC サービス)を利用したことがある」との回答が約3 割を占めており、CtoC サービスの利用が一定程度進 んでいる状況が窺える。(図表19)。また、現在利用している CtoC サービスとしては、「メルカリ」(フ リマアプリ)と「ヤフオク!」(ネットオークション)が上位となっている(図表20)。 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によれば、2017 年のネットオークション(個人間取引) の推定市場規模は約3,569 億円(前年比 3.2%増)、フリマアプリの推定市場規模は約 4,835 億円(前年 比58.4%増)と拡大が続いている。 7 場所・乗り物・モノ・人・お金等の遊休資産をインターネット上のプラットフォームを介して個人間で賃借や売買、交換することでシェアしていく新し い経済の動き。 8 インターネット上の仮想のフリーマーケット内で個人同士が衣料品や雑貨等を自由に売買可能なスマートフォン専用のアプリ(もしくは、仮想のフ リーマーケット取引市場の総称)

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シェアリングエコノミーが更に進展するためには、消費者の不安解消および法規制の再整備が必要と の指摘がある9。これに対しては、「シェアリングエコノミー推進プログラム10」の開始や「シェアリング エコノミー促進室」の設置(2017 年 1 月)等、シェアエコノミーの認知度向上等に寄与する取組みが始 まっている。 上記の取組み等に後押しされ、今後もシェアリングエコノミー市場の拡大は継続すると見込まれる。 総務省「平成30 年版 情報通信白書」では、「シェアリングエコノミーの進展による新市場の創出に伴 い、既存市場への負の影響も生じる可能性がある。シェアリングエコノミーが拡大すると新品の購入が 減る可能性がある」と指摘されている。インターネットショッピング等に与える影響を懸念される一方 で、フリマアプリ等を通じた商品の二次流通が新品の購入意欲を刺激するとの見方もある。現時点では、 シェアリングエコノミーの拡大が、インターネット通販市場成長の推進もしくは阻害要因とは断言でき ない。 ただし、個人から個人へ商品を送るシェアリングエコノミーでは、インターネット通販と同様に荷物 の配送が重要となる。上記のメルカリは、ヤマト運輸と提携した出品した荷物の発送サービス「らくら くメルカリ便」を、2018 年 5 月から全国のセブンイレブンの店舗での受付を開始している。シェアリン グエコノミーの拡大が宅配便取扱個数をさらに押し上げ、前項に示したラストワンマイルにおける人手 不足に拍車をかけることは懸念される。 図表-19 個人間商取引(CtoC サービス)の利用状況 図表-20 各種 CtoC サービスの利用状況

9 中美尋『シェアリングエコノミーが日本産業に与える影響』みずほ銀行産業調査部、Mizuho Industry Focus、2018 年 6 月 21 日

10 ①自主的ルールによる安全性・信頼性の確保、②グレーゾーン解消に向けた取組等、③シェアリングシティー構想の推進、④シェアリングエコノ ミーの普及・啓発を行う。 43.8% 39.4% 18.8% 10.9% 9.1% 8.4% 6.6% 41.6% 8.4% 8.8% 11.2% 7.2% 11.2% 5.6% 12.5% 49.7% 44.1% 32.5% 20.9% 57.5% 16.2% 2.2% 2.5% 28.4% 45.3% 62.5% 22.8% 71.6% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

ヤフオク! メルカリ ラクマ minne(ミンネ) Creema(クリーマ) モバオク tetote(テトテ)

このサービスは知らない このサービスを知っているが利用したことはない このサービスは利用していたが、ここ1年は利用していない このサービスは現在利用している 29.1% 18.7% 24.4% 27.8% 個人間商取引(CtoCサービス)を利用したことがある。 個人間商取引(CtoCサービス)を知っているが、利用したことはない。 個人間商取引(CtoCサービス)のことは知らない。 よくわからない。 (出所)ジャストシステム「E コマース&アプリコマース月次定点調査」 (2018 年 5 月度)をもとにニッセイ基礎研究所作成 注) 回答数は 330 (出所)ジャストシステム「E コマース&アプリコマース月次定点調査」 (2018 年 5 月度)をもとにニッセイ基礎研究所作成 注) 回答数は 1,100

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