ACOG educational bulletin.
Osteoporosis.
Number 246, April 1998
Background
骨粗鬆症・骨量減少症 -
約80%
は女性
(米国)
骨粗鬆症による骨折 -
50歳以上
の有病女性の
40%以上
- 骨折部位の
約15%
は股関節部
股関節部骨折後
-
約20%
は死亡
(1年以内に)
- 長期の治療・QOLの低下
骨粗鬆症によるその他の重大な合併症には、
椎体の圧迫骨折
、
歯槽の脆弱化による貧歯
などがある
骨粗鬆症
-骨量減少、骨組織の微細構造の破壊を
特徴とする全身性の骨疾患
骨の脆弱化、骨折の危険性が増加
Definition
以前まで、骨粗鬆症の診断は骨折が生じてから下されることが多かった
骨量測定法の進歩により、重篤な骨折が生じる前に骨粗鬆症の可能性を
診断できるようになった
WHO 基準
低骨密度・骨量減少
・・・ 骨密度が若年成人平均値( YAM )より
1~2.5 SD 低下した状態
骨粗鬆症
・・・ 骨密度が YAMより 2.5 SD 以上低下した状態
脊椎や股関節において、骨量が
1SD
減少すると
骨折の危険性がほぼ
2倍
に上昇
Pathophysiology
骨のリモデリング
・・・ 骨表面の骨芽細胞と破骨細胞の働きに
よる骨の形成と吸収
リモデリングを繰り返し、日々の活動などによって生じたダメージを修復
Remodeling cycle ( 4 phase )
① resting phase
② resorption phase
③ reversal phase
④ formation phase
2~3ヶ月Remodeling cycle
①
Resting phase
骨髄からの幹細胞が細胞表面に接着し、
破骨細胞に分化
②
Resorption phase
破骨細胞が酸と蛋白質分解酵素を
用いて骨を吸収
③
Reversal phase
間質幹細胞が骨の表面に接着し、
骨芽細胞に分化
④
Formation phase
骨芽細胞がオステオイド(蛋白基質)を
用い、新しい骨を形成し、石灰化
骨の成分
骨の構造
骨
無機成分
有機成分
Ⅰ型コラーゲン( 有機基質の90% ) 非コラーゲン蛋白( オステオカルシン、プロテオグリカン)骨の強靭さ
骨の弾力性
結晶成分(
ハイドロキシアパタイト
)
非結晶成分(
Ca
、
P
)
Calcium Homeostasis
Vit. D 皮膚で合成、肝、腎で代謝、活性化
小腸からの Ca 吸収を促進
urine
kidney
bone plasma intestine
Ca2+ Ca2+ Ca2+ 吸収 分泌 石灰化 骨吸収 分泌 再吸収 PTH Vit. D PTH & Vit. D PTH 骨からの Ca 放出を促進 腎尿細管からの Ca 再吸収を促進 血清 Ca 低 PTH 分泌促進 PTH 分泌抑制 ・OC 分泌促進 血清 Ca 高 カルシトニン ( CT ) 甲状腺傍濾胞 C 細胞より分泌 破骨細胞に作用し、骨吸収を抑制 CT
皮質骨と海綿骨
皮質骨
骨の外郭を形成、緻密な構造をもつ 全骨量の 75% を占める海綿骨
小さな柱のように分散し、その間のスペースが骨髄になる 柱状の構造物は骨梁と呼ばれる 全骨量の 25% を占める 椎体や骨盤、長管骨の末端に多く分布する 疎な多孔質構造のため、骨の表面積のほとんどが海綿骨であるリモデリングの回転率は皮質骨より海綿骨の方が高い
骨量
骨量のピーク ・・・ 男女ともほぼ 30歳、 ピーク後、年間 0.4%の骨を喪失
女性は、閉経後 5~8 年以内に
皮質骨の 2%、海綿骨の 5% を失う
Aging
破骨細胞と骨芽細胞のバランスが破綻 骨の損失過剰Menopause
破骨細胞による骨の吸収が亢進 骨の損失過剰Postmenopause
骨芽細胞の活動が抑制 骨の形成低下骨粗鬆症の要因
さらにこれに加え、
Factors Affecting Bone Mass
骨量に影響する因子 ・・・ ホルモン・生活様式・習慣・栄養・薬剤・骨代謝疾患など ① ホルモン エストラジオール、テストステロン、プロゲステロン、コルチゾール、 甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インスリン などエストロゲンの骨保護作用
PTH の骨に対する感受性を抑制 骨吸収を抑制 腎での活性型 Vit. D の合成を促進 腎からの Ca 再吸収促進 腸管での Ca 吸収を促進 血中 Ca 濃度上昇 骨吸収性サイトカイン( IL- 1、IL- 6 )産生を抑制 骨芽細胞からの TGF- β、IGF- 1 分泌を促進 破骨細胞のアポトーシスを促進 骨吸収抑制作用 骨形成作用 (閉経と骨代謝 産婦人科治療 vol.84 no.4-2002/4)② 生活様式と習慣 喫煙 ・ アルコール ・ 過度のカフェイン摂取 骨量減少 股関節部骨折の危険性上昇 ③ カルシウム摂取 小児期、思春期、老年期における骨量の維持に重要 (特に、成人の股関節部) 低エストロゲン状態の女性は 腸管からのカルシウム吸収が低下 カルシウムバランスを維持するため よりカルシウム摂取が必要 ④ ビタミン D カルシウム代謝とミネラルバランスの維持に重要 食事からの摂取不足、日光に当たる時間の不足 ビタミン D不足
⑤ 薬剤 骨に直接作用し、骨形成を阻害 腸管からの Ca 吸収を抑制 腎での Ca 分泌を促進 高用量のステロイド投与により 治療初年で 10%の骨量減少 骨量を減少させ、骨粗鬆症を引き起こす (甲状腺機能亢進症においても骨量は減少、治癒後も数年間骨量の減少は続く) 長期に渡るヘパリンの投与で、治療を受けている女性の 1/3 に 骨量の減少が見られる
ステロイド
チロキシン
( T
4)
ヘパリン
⑥ 代謝性骨疾患
骨Paget 病
腎不全
甲状腺機能亢進症
骨軟化症
骨粗鬆症
ALP
血清 P
血清Ca
多くの代謝性骨疾患で骨量の減少が見られる <代表的骨疾患のLaboratory data>⑦ 続発性骨粗鬆症 内分泌疾患・血液疾患・消化器疾患・結合組織疾患に 骨粗鬆症が続発することがある 内分泌疾患 Cushing 病、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、 糖尿病 など 血液疾患 リンパ腫、多発性骨髄腫 など 消化器疾患 ビタミン Dの作用の障害、カルシウム吸収の減少 全身性疾患や胃腸の外科的切除による 吸収不良症候群 が主な原因
Screening
現在はまだ骨密度測定におけるガイドラインは統一化されていない APGO の示すガイドラインにおいて、HRT を続けていない女性は、骨粗鬆症のリスクを持っている場合
骨量を測定したほうがよい
* HRT を受けている閉経後の女性は骨量を常に測定する必要はない
と推奨されている 現在のところ、骨量測定
は、骨粗鬆症の進展の危険性を個人単位で
スクリーニングする最高の手段
更年期女性 HRTを始めた女性 HRTを受けていない女性 HRTを続けた女性 HRTを中止した女性 骨粗鬆症の検索 予防的治療を継続する 危険因子+ 危険因子- 骨密度測定 経過観察 骨密度正常 骨密度基準値以下 (骨粗鬆症) 経過観察 ビスフォスフォネート やカルシトニンを用い 治療を開始 骨粗鬆症のスクリーニング アルゴリズムの一例
Diagnosis
・
DXA
(dual-energy X-ray absorptiometry)
・ Bone mass test (Z- score, T- score)
・ Bone density instrument
・ Biochemical markers
DXA
利点
・ 現在最も推奨されている骨量測定法
・ 検査が2~5分ででき、放射線への曝露も短時間で済む
・ スクリーニングとして、骨折の危険性の検索に適している
・ 上腕骨のような末梢側での骨量測定が可能
欠点
・ 骨棘や大動脈の石灰化、関節炎などにおいて骨密度が
誤って高値になる場合がある
骨量測定の評価法 ( Bone mass test )
①
絶対骨量
: g/cm
3中に換算した骨量
②
Z- score
: 性別や年齢の平均値と比較した相対骨量
③
T- score
: 平均最大骨量 と比較した相対骨量
(T- score of -2 : 骨量が平均最大骨量と比較し -2SD であることを示す)T- score of -2
骨折の危険性 ほぼ
4倍
骨密度測定 ( Bone density test )
WHO の基準を用い、骨密度は評価される
最近は骨密度測定に加えて、身長も測定したほうがよいと言われている
成人時の最大身長より
骨代謝マーカー
骨の代謝回転を見るのに有効
骨形成マーカー
血清 : 骨型アルカリフォスファターゼ ( B-ALP )
オステオカルシン ( OC )
Ⅰ型プロコラーゲンC末端ペプチド ( PICP )
Ⅰ型プロコラーゲンN末端ペプチド ( PINP )
骨吸収マーカー
血清 : 酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ ( TRAP )
尿 : デオキシピリシノリン ( Dpy )
Ⅱ型コラーゲンN末端ペプチド ( NTx )
Ⅰ型コラーゲンC末端テロペプチド ( CTx )
骨粗鬆症の予防で最も大事なことは
・ 最大骨量 (PBM) を維持するよう努力すること
・ 閉経期においての骨量減少を最低限にとどめること
代表的な予防法
① カルシウム製剤
② ライフスタイルの改善
③
SERM
(選択的エストロゲン受容体作動薬)
Prevention
カルシウム摂取による骨粗鬆症の予防
・ カルシウムサプリメントは
最大骨量を維持するために重要
・ カルシウム摂取が不十分だと、
加齢による骨の喪失が加速
・ 炭酸カルシウムよりも
クエン酸 カルシウムの方が吸収
が良く、効果的
1500
成人女性(閉経後ま たは低エストロゲン状 態 HRT 未施行)1000
成人女性(閉経後ま たは低エストロゲン状 態 HRT 治療中)1000
成人女性(閉経前)1200~1500
青年期800~1200
小児 6~10 歳800
小児 1~5 歳Ca必要最低量 (mg/day)
ライフスタイルによる骨粗鬆症の予防
Weight - bearing exercise
骨芽細胞を刺激
新しい骨形成
筋量の増加
骨量増加
閉経期の女性
22ヶ月間の weight - bearing exercise
骨密度 6.1%上昇
・ 転倒を避ける
・ 喫煙を控える
・ アルコール摂取量を減らす
・ カフェイン摂取量を減らす
その他、
骨折の危険性 低下
SERM による骨粗鬆症の予防
Selective estrogen receptor modulator
選択的エストロゲン受容体作動薬
Raloxifene
・・・
エストロゲンのアゴニストとして
骨
破骨細胞の機能を抑制
肝
LDL - コレステロールを減少
Raloxifene は
子宮内膜に対して、エストロゲンアゴニスト
としての作用を持たない
Raloxifene は HRT の副作用である子宮よりの不正出血、
そして癌化を引き起こす可能性が低い
SERM
Treatment
・ Calcium
・ Vitamin D
・ HRT ( estrogen )
・ Bisphosphonates ( alendronate,
etidronate
)
・ Calcitonin
・ SERM ( raloxifene,
tamoxifene
)
・ progestin,
fluoride
,
parathyroid hormone
* etidronate ・・・ 骨粗鬆症の治療の目的では FDA によって未承認
* tamoxifene ・・・ 骨粗鬆症の予防という目的の薬剤として推奨されていない * fluoride ・・・ USAにおいて使用が推奨されていない