は 次 の 式 で 示 す よ うな機 構 で テ ロメ リゼー シ ョンが 進 行 す る もの と考 え て い る 。 こ こ で(3)式 お よび(4)式 は 競 争 反 応 で,(3)式 が 優勢 に 起 こ って い る もの と考 え られ る。 完 全 な2官 能 性 に な らない 理 由は(4)お よび(7)式 の 反 応 の 結 果 で あ ろ う。 ま た,ホ ル ム ア ル デ ヒ ドの 代 わ りに ア セ トアル デ ヒ ドを用 い る と,1官 能 性 の もの の みが 得 られ る。 これ は 生 じたCH3-CH-OHがCH2-OH よ り安 定 な ため に,よ り活性 が 小 さ く(4)式 の 反 応 が 主 と して起 こ るた め で あ ろ う。 反 応(6)式 と反 応(7)式 も 競 争反 応 で あ るが,主 と して反 応(6)式 が 起 こっ て い る よ うで この アセ テ ー トは非 常 に 安 定 で あ る。 な お,最 終 生 成 物 は エ ス テル と して 得 られ,エ ス テル 化 が 開始 反 応 時 に 起 こ る か,あ るい は反 応 の後 期 に 起 こる か は十 分 明 らか で ない が,反 応 開 始 直 後 の反 応 生 成 物 が す で に大 部 分 エ ス テ ル化 され て い る こ と,お よび 若 干 のOH基 を 含 む こ とか ら 開 始 末 端 が(3)式 の ご と くOH基 を 含 む もの の他 に エ ス テ ル と して 開始 され る場 合 も含 ま れ る よ うで あ る。 こ の場 合 反 応 系 に無 水 酢 酸 が 存 在 しな いの で エ ステ ル化 の速 度 は遅 い(第2報 参 照)。 文 献
1) D. D. Coffman, E. E. Jenner : JACS, 76, 2685
(1954)
2)
A. Weissberger et al.:"
Organic Solvent", 390
(1955)
3) 土屋 知 太 郎, 小 川 美 之 吉 ら: 吉 原 製 油編,「 油脂 実 験 法 」(1947)
4)
L. F. Fieser:"
Experiments
in Organic Chemi.
stry ", 21 (1955)
5) W. R. Sorenson, T. W. Campbell: 星 野 敏 雄, 依 田直 也訳 「高 分 子 合 成 実 験 法 」, 118 (1962)
Study on Ionic Telomerization
I. Synthesis of Glycol of Polystyrene by Ionic Telomerization and Reaction of the Glycol with Diisocyanates
By Junji Furukawa*, Shinzo Yamashita* and Tetsuo Sato**
Cationic telomerization of styrene was carried out by using both acetic acid and paraform-aldehyde. The measurement of IR spectra, molecular weight given in the Rust method, and saponification equivalent of the telomers obtained show clearly that these telomers are mostly diacetate which contains one to five units of styrene. These diacetates were saponified with alcoholic potassium hydroxide to afford glycol. The reaction of these glycols with 2,4-toluene diisocyanate or hexamethylene diisocyanate gave brittle resinous polyurethanes. The intrinsic viscosity of these polyurethanes in toluene was 0.04 to 0.13 at 30•Ž. The result supports the view that these styrene telomers obtained have bifunctional hydroxy groups approximately.
第2報 イ ソ プ レ ン の イ オ ン テ ロ メ リ ゼ ー シ ョ ン に よ る グ リ コ ー ル の 合 成 と グ リ コ ー ル と ジ イ ソ シ ア ネ ー ト の 反 応 (1964年10月15日 受理) 古 川 淳 二***・ 山 下 晋 三***・ 佐 藤 哲 雄**** 要 旨 イ ソ プ レ ンを 酢酸 お よび パ ラホ ル ム ア ル デ ヒ ドを用 い て テ ロ メ リゼ ー シ ョ ン を行 な い,1∼10 数 個 のイ ソプ レン単 位 を含 む ジ アセ テ ー トを得 た。 ま た,反 応 系 に 無 水 酢酸 が存 在 す る と きの 効果 を検 討 し, さ ら に テ ロゲ ン量 お よび 触 媒 量 を 変化 させ て 高 分子 量 の ジ ア セテ ー トを得 る た め の反 応 条 件 を追 求 す る とと も に,こ の 反 応機 構 に少 しく考 察 を加 えた 。 これ ら の ジ ア セテ ー トを ケ ン化 して 得 られ る グ リコ ール は ジイ ソシ ア ネ ー トと容 易 に 反応 し,い ず れ も樹 脂 状 の ポ リ ウ レタ ン を与 え た 。 ま た得 られ たポ リイ ソ プ レン の グ リ コー *Department of Synthetic Chemistry, Faculty of Engineering
, Kyoto University (Yoshida, Sakyo-ku, Kyoto) **Sakai Chemical Industry Co . (Terada, Suma-ku, Kobe)
***京 都大学工学部合成化学教室(京都 市左京区吉田本町) ****坂 井化学工業株式 会社(神戸市須磨区寺田町)
イ オ ン テ ロ メ リ ゼ ー シ ョ ン 〔367〕 ル の存 在 下 で,ポ リテ トラ メチ レ ング リコ ール とジ イ ソシ ア ネー トを反応 させ る こ とに よ ってイ ソプ レ ン単 位 を もつ ポ リ ウ レタ ン ゴム を合 成 し,イ オ ウ,お よび 加 硫 促 進 剤 に よ っ て加 硫 す る こ とが で き るポ リウ レタ ンゴ ム を得,さ らに加 硫 ゴム の 物理 性 質 を測 定 した。 1. 緒 言 スチ レンの イ オ ンテ ロ メ リゼ ー シ ョンに よる ジア セ テ ー トの合 成 につ い て は す で に報 告が あ る1),2)。イ ソプ レ ンお よび ブ タジ エ ンに つ い ては モ ノ ア セ テー トの 得 られ た報告 は ある8)が,ジ ア セ テ ー トに つ い て は ま だ報 告 が 見当 らない 。筆 者 らは イ ソプ レン を スチ レ ン と類 似 の 系 で反 応 させ て ジ ア セ テー トの合 成 を試 み た 。 テ ロ メ リゼ ーシ ョンに よって で きる だ け分 子 量 が 高 く,2官 能 性 に 近 いアセ テー トを得 る た め,モ ノ マ ー量 に 対 す るテ ロゲ ン量 お よび 触 媒量 を 変 量 させ た結 果,平 均 分 子 量1020 程度の ジア セテ ー トを得 る こ とが で きた 。 ま た,反 応 系 に無水酢 酸 を添 加 す る と酢 酸 お よび 無 水 酢 酸 の いず れ も がこの反 応 に 関与 す る こ とが 明 らか と な った 。 さ らに パ ラホル ムアル デ ヒ ドは 単 に テ ロゲ ン と して 作 用 す る だ け でな く,側 鎖 ビニル 基や 活 性 メ チ レン基 に 副 反 応 的 に作 用 し,2官 能性 以 上 の 官能 基 を有 す る ア セ テ ー トの 得 ら れるこ とが わか った 。 また,ジ ア セ テ ー トを ケ ン化 す る ことによ って得 られ る ポ リイ ソプ レンの グ リコー ル と二 三 のジイ ソシ アネ ー トを反 応 させ,新 規 な ポ リウ レ タ ン を合成 した。 さ らに ポ リイ ソプ レンの グ リコー ル の 存在 下,ポ リテ トラ メチ レ ン グ リ コー ル と ジ イ ソ シ アネ ー ト を反応 させ る こ とに よ って,イ ソ プ レン単 位 を もつ ポ リ ウレタ ンゴム を得,イ オ ウお よび 加 硫 促 進 剤 を用 い て加 硫 を行 ない,加 硫 ゴ ムの物 理 性 質 を測 定 した 。 2. 実 験 2.1 原 料 供 試 イ ソ プ レ ン はPhillips社 製 品 を 蒸 留 し て 用 い た (bp33∼34℃)。 酢 酸 は 市 販 の 特 級 品 を 精 製 し4)て 使 用 した 。 無 水 酢 酸 は 市 販 の 特 級 品 に 金 属 ナ ト リ ウ ム を 加 え て 減 圧 蒸 留 し た も の5)を 用 い た 。 パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ドは 市 販 の 粉 末 を 五 酸 化 リ ン で72時 間 乾 燥 さ せ た 。 三 フ ッ化 ホ ウ素 工 一 テ ル コ ン プ レ ッ ク ス は 市 販 品 を 蒸 留 (bp108℃)し て 用 い た 。 ト リ レ ンー2,4一ジ イ ソ シ ア ネ ー ト(TDI)は 市 販 品 を 減 圧 蒸 留(bp118℃/2mm)し た も の を 用 い,ヘ キ サ メ チ レ ン ジ イ ソ シ ア ネ ー ト(HDI)は 合 成6)し た も の を 減 圧 蒸 留(bp132℃/4mm)し て 用 い た 。 3,3ノージ メ チ ル ジ フ ェ ニ ル メ タ ン ー4,4仁 ジ イ ソ シ ア ネ ー ト (DMMDI)は 市 販 品 を そ の ま ま 用 い た 。 ジ フ ェ ニ ル メ タ ン ー4,4ノージ イ ソ シ ア ネ ー ト(DMDI)は 市 販 品 を 融 解 後, ロ 過 し た も の を 用 い た 。 ポ リテ トラ メ チ レ ン グ リ コー ル (PTMG)は100℃/2mmに お い て5時 間 減 圧 乾 燥 し た も の を 用 い た 。 2.2 ジ ア セ テ ー トの 合 成 合 成 法 は 前 報 に 準 じ た2》。Table1に テ ロ ズ リ ゼ ー シ ョ ン の 配 合 を 示 す 。 反 応 は す べ て 温 度 計 お よ び か き ま ぜ 機 の つ い た 四 ッ ロ フ ラ ス コ を 用 い,精 製 窒 素 ガ ス 気 流 中
Table 1. Recipe (mol).
a) ethylene oxide was used in the place of the aldehyde. b) after reaction for 24 hr, 0.75 mol of paraformaldehyde was added. c) after reaction for 24 hr, 1.66 mol of acetic acid was added. d) after reaction for 24 hr, 3.0 mol of paraformaldohyde was added. e) after reaction for 24 hr and 48 hr, 0.025 mol of BF3 etherate was added respectively.
で 行 な った 。 触 媒 と して 用 い る 三 フ ヅ化 ホ ウ素 工 一 テ ル コ ン プ レ ックス は,一 時 に 加 え る と爆 発 的 に反 応 す るの で,テ ・ゲ ンと して 用い る酢 酸 の 一部 で希 釈 して反 応 温 度 を0∼10℃ に 保 ちつ つ 少 しず つ 加 え た。24時 間 の 反 応 で モ ノ マ ー反 応 率 は80∼90%に 達 し,72時 間 で ほ ぼ100%に 達 したが,さ らに 完 全 を期 す るた め反 応 時 間 を96時 間 と した。 反 応 終 了 後,反 応 液 に トル ェ ン を加 え,減 圧 下 で酢 酸 を留 去 した の ち反 応 液 を分 液 漏 斗 に 移 し,ト ル ェ ン層 を飽 和 食 塩 水 で 中 性 に な る まで 洗 い,最 後 に 蒸 留 水 で3回 洗 って か ら減 圧 蒸留 に よ り トル ェ ン を 留 去 した 。 得 られ た反 応 物 は 淡 黄 色 な い し褐 色 透 明 の 粘 稠 な液 体,ま た は半 固体 で 水 以 外 の ほ と ん どの 溶 剤 に 可 溶 で あ る 。 ジア セ テ ー トは 常 法?)に よ りケ ン化 当量 を測 定 し,分 子量 を ラス ト法 で 測 定 した。 2.3 グ リコ ー ルの 合 成 ジ アセ テ ー トの1ケ ン化 当量 に対 し2当 量 の カセ イ カ リを含 む飽 和 水溶 液 と過 剰 の1級 エ タ ノー ル を冷 却 器 っ きの 三 ツ ロ フラ ス コに入 れ,4時 間 加 熱 の も と,か きま ぜ な が らエ タノ ー ル を還 流 させ た 。反 応 液 に 適 量 の 特 級 トル エ ン を加 え て減 圧 下 に エ タ ノ ー ル を留 去 す れ ば,グ リ コール の トル エ ン溶 液 が 得 られ た。 こ れ を飽 和食 塩 水 で 中性 に な る まで 洗 浄 し,さ らに蒸 留 水 で3回 洗 っ て減 圧 下 に トル エ ン を留 去 す れ ば,淡 黄 色 な い し淡 か っ色 の ね ば い ポ リイ ソ プ レ ンの グ リコ ー ルが 得 ら れ た 。 グ リコ ール の ヒ ドロキ シル 当 量 を常 法9)に よ り測 定 した 。 2.4 ポ リウ レタ ン の合 成 ポ リイ ソ プ レ ンの グ リ コー ル1当 量 に 対 し0.96当 量 の ジイ ソ シア ネ ー トを加 え,窒 素気 流 中 で か き まぜ な が ら塊 状重 合 ま た は溶 液重 合(溶 剤 と して キ シ レンま た は ピ リジ ンを使 用)を 行 な っ て,ポ リウ レ タ ン を合 成 した。 ト リレ ン-2,4一ジイ ソシ ア ネ ー ト と ポ リイ ソ プ レ ンの グ リコー ル と の反 応 生 成 物 は融 点 が高 い た め塊 状 重 合 す る
Table 2. Preparation and characterization of Telomers.
a) saponification equivalent, b) molecular weight of diacetate by means of the Rust method, c) hydroxyl equivalent of glycol, d) molecular weight of glycol by means of the Rust method, e) AcOH-Acetic acid, HCHO-formaldehyde.
イ オ ン テ ロ メ リゼ ー シ ョ ン 〔369〕 とす ぐ硬 化 す る が 、 トル エ ン 溶 液 に お け る 【η]は あ ま り 上 昇 し な か っ た 。 ま た,ヘ キ サ メ チ レ ン ジ イ ソ シ ア ネ ー トと ポ リ イ ソ プ レ ン の グ リ コ ー ル と の 反 応 速 度 は 低 い こ と が わ か っ た 。3,3な ジ メ チ ル ジ フ ェ ニ ル メ タ ンー4,4'-ジ イ ソ シ ア ネ ー トは 常 温 で 固 体 で あ る た め,ピ リジ ン溶 液 中 で 重 合 を 行 な っ た 。 2.5 ゴ ム 状 ポ リ ウ レ タ ン の 合 成 次 の よ うな 方 法 で イ ソ プ レ ン 単 位 を 有 す る ゴ ム 状 ポ リ ゥ レ タ ン を 合 成 し た 。 ま ず,分 子 量 約1300の ポ リ テ ト ラ メ チ レ ン グ リ コ ー ル(PTMG)1molに 対 し て1,1∼ 1.4molの ジ フ ェ ニ ル メ タ ンー4,4な ジ イ ソ シ ア ネ ー ト (DMDI)を 加 え,窒 素 中 で80℃ に お い て1∼2時 間 か き ま ぜ,粘 稠 液 な い し 半 固 体 の プ レ ポ リ マ ー を 得 た 。 っ い で プ レポ リ マ ー に 使 用 し た イ ソ シ ア ネ ー トの 当 量 数 に 応 じ て0.1∼0.4molの ポ リイ ソ プ レ ン の グ リ コ ー ル を 加 え,窒 素 気 流 中 で120℃ に お い て2∼3時 間 か き ま ぜ る と淡 黄 色 の 弾 力 あ る ポ リ ウ レ タ ン ゴ ム が 得 られ た 、 一 方,PTMG lmolに 対 し て1molのDMDIを 加 え て 同 様 な 条 件 で 反 応 さ せ る と,無 色 の 弾 力 あ る ポ リ ウ レ タ ン ゴ ム が 得 ら れ た 。 3. 結 果 お よ び 考 察 3.1 ジ アセ テ ー トお よ び グ リ コー ル の構 造 Table1に お け る実 験 番 号IEは エ チ レン オ キサ イ ド をテ ・ゲ ン と して 用い た 配 合 で あ る が,こ の 場 合 は1分 子 あた りの平 均 官能 基 数 が1以 下 とな り,エ チ レ ン オキ サイ ドは テ ロゲ ン と して 作 用 しに くい こ とが わ か っ た。 Table2に テ ロメ リゼ ー シ ョンの反 応 条件 と得 られ た テ ロマーの 分析 結 果 を示 す 。 反 応 温 度 が0℃ 以 下 で は 氷酢 酸 が 固体 とな り、20℃ 以 上 に な る と モ ノ マ ーが 気化 し や す くなるの で10℃ 近 辺 で 反 応 を行 な っ た。0∼20。C の温 度範 囲 では 重合 速 度 お よび 得 られ た ポ リマ ーの 分子 量 や化 学構造 に大差 は 認 め られ な か っ た。24時 間 の反 応 で モ ノマー反 応率 が80∼90%に 達 し,72時 間 で ほ ぼ 100%に 達 した が,い ず れ も完 全 に反 応 を行 なわ せ る た め72時 間以 上 の反 応 を 行 な っ た。Table2中 のf値 は1分 子 あ た りの官 能 基 数 を示 す値 で あ るが,配 合 に よ って0.50∼3.67の 広 範 囲 な 値 を 示 した。f<2の 場 合 は 開始 反 応で ホル ム アル デ ヒ ドが テ ロゲ ン と して 作 用せ ず,プ ロ トンに よ って 開 始 され る か,ま たは 停 止 反 応 で 連鎖 移 動 に よっ て 不 飽 和 基 を 生 じた 結 果 と 説 明 で きる が,f>2の 場 合 には この 考 え で は説 明 で き ない 。 ジ ァセ テ ー トのIRを 観 察 す る と1110cm-1に エ ー テル 結合 に よる と思 わ れ るC-O-Cの 吸 収 が 認 め られ (Fig.1,2),ま た,パ ラホ ル ム ァ ル デ ヒ ド非 存 在 下 で テ ロメ リゼ ー シ ョン を 行 な い,24時 間 反 応 後 パ ラ ホル ム アル デ ヒ ドを加 え る と,そ の 後J値 が 増 加 す る と と もに 分子量 が 増大 し(Table2中 実 験 番 号IM,Fig.3)、 初
Wave number (cm')
Fig. 1. IR spectrum of the diacetate of
poly-isoprene (IA-2).
Wave number (cm')•\ : Addition of paraformaldehyde ---: No addition
Fig. 2. Effect of addition of paraformaldehyde.
め に 存 在 し な か っ たO-Hの 吸 収 お よ び エ ー テ ル のC-O-Cの 吸 収 が 現 わ れ る こ と な ど か ら,パ ラ ホ ル ム ア ル デ ヒ ドが テ ロ マ ー に 作 用 して 分 子 を エ ー テ ル 橋 か け す る と と も に,側 鎖 ビ ニ ル 基 に プ リ ン ス 反 応 に 見 られ る よ うな 付 加 反 応 を す る 結 果 で あ ろ う と考 え ら れ る 。Fig.1は ポ リ イ ソ プ レ ン ジ ァ セ テ ー トの 赤 外 線 吸 収 ス ペ ク トル で あ る が,ポ リイ ソ プ レ ン の 吸 収 以 外 に1730cm-1に νc=o の 吸 収,1240cm-1,お よ び1035cm-1に エ ス テ ル の 吸
a) Molecular weight/Saponification equivalent, b) Molecular weight (Method of Rust), c) Reacted for 24 hr, not added paraformaldehyde, d) React-ed for 24 hr, addReact-ed paraformaldehyde
収,3400cm-1付 近 にO-Hの 吸 収,1105cm-1に エ ー テ ル のC-O-Cの 吸 収 が 認 め られ る 。 ま た 、 不 飽 和 基 の 吸 収 は1650cm-1付 近 の 特 性 吸 収 の 他 に980cm-1 , 895cm-1お よ び840cm-1付 近 に 認 め ら れ,こ れ は そ れ ぞ れ ト ラ ン ス-1,4,ビ ニ ル,シ ス-1,4の 二 重 結 合 の δc-Hに よ る 吸 収 で あ る こ とが グ ッ タ ・ペ ル カ ,ポ リ ブ タ ジ エ ン お よ び 天 然 ゴ ム の 例 か ら推 定 さ れ る(Fig.4)。 Wave number (cm-1)
Fig. 4. Unsaturated groups of telomer .
Wave number (cm-1)
Fig. 5. IR spectrum of glycol of polyisoprene
(IA'-2).
こ れ らの 事 実 か ら こ こで 得 られ た ポ リイ ソプ レ ンの ア セ テ ー トは,両 末 端 あ る い は 側鎖 の 一 部 に アセ テ ー ト基 を有 し,ま た末 端 の一 部 あ るい は 側 鎖 の一 部 に 一〇Hを 有 し,ビ ニル,ト ラ ン ス-1,4お よび シス-1,4二 重 結 合 を含 む よ うな ポ リイ ソ プ レンで あ る と推 定 され る。 また これ をケ ン化 して得 られ る グ リコー ル は ア セ テー ト基 が ヒ ドロキ シル基 に 変化 し,そ の 他 の化 学 構 造 は ジァ セ テ ー トと全 く同 一 の 化 合 物 で あ る こ とがFig .5よ り認 め られ る。 3.2 テ ℃ メ リゼ ー シ ョン の機 構 前 項3.1で 述 べ た よ うに パ ラ ホル ムア ル デ ヒ ドを加 え ず に反 応 させ た場 合,ポ リイ ソプ レ ンの ア セ テ ー トは ヒ ドロ キ シル基 お よび エ ー テル結 合 を含 ま ない(Fig.2)。 しか るに 反 応 の途 中 で,反 応 系 に パ ラホ ル ム アル デ ヒ ド(BF3 etherate/Isoprene) mol ratio (1), (2), (3) and (4) show sample No. IB, IF, I J and IM-2, respectively.
Fig. 6. Effect of the amount of paraformaldehyde added.
(Paraformaldehyde/Isoprene) mol ratio (1), (2), (3) and (4) show sample No. ID, IA, IN and IK, respectively.
Fig. 7. Effect of the amount of BF3 etherate added. を加 え て 反 応 を 続 け る と,ヒ ドロキ シ ル基 お よび エ ー テル結 合 が 生 じ(Fig。2),分 子 量,f値 な ど も増 大 す る (Table2, Fig.3)。 パ ラホ ル ム ア ル デ ヒ ド量 の 変化 に よ る分 子 量 お よびf 値 へ の影 響 をFig.6に 示 す 。 パ ラホ ル ム アル デ ヒ ド量 が 増 加す る に従 い,f値 は 増 加 す るが,分 子 量 との 相関 関係 は ない 。 こ れ は パ ラ ホル ム アル デ ヒ ドが 単 に テ ロゲ ン と して 開始 反 応 で作 用 す るの み な らず ,副 反 応 的 に作 用 して テ ロマ ー を エ ー テル 橋 か け させ た り,側 鎖 ビニル 基 に付 加 した りす る結 果 で あ ろ う。 Fig.7は 触 媒 量 の 変化 の 影響 を示 す 。 触 媒量 が増 加
イ オ ン テ ロ メ リ ゼ ー シ ョ ン 〔371) するに従 っ て 分 子 量 は増 加す るが,f値 との相 関 関係 は ない よ うで あ る。 これ は触 媒 量 の 増 加 と とも に ホ ル ム ァ ルデ ヒ ドに よる 開始 反 応,ま た は 副反 応 が起 こ りや す く なる こと を示 して い る。 す な わ ち,触 媒 濃度 の増 加 と と もに分子 量の 増 加 す るの は パ ラ ホル ムア ル デ ヒ ドの 副 反 応の影響 で あろ う。 Fig.8に 反 応 時 間 の 影 響 を示 す 。 反 応 時 間 の 進 行 と
Fig. 8. Effect of reaction time.
Fig. 9. Effect of the amount of acids added.
ンの機 構 を推 定 す る と次 式 の よ うに な る。 パ ラホル ム アル デ ヒ ドの 存 在 しない と きは(1)∼(4)式 の ご と く反 応 が進 行 す る。 反 応 は こ こに 示 され た よ うに 1,2重 合 の 形式 で起 こ りや す い が,こ の 他 に3,4重 合 お よび1,4重 合 も起 こ って お り,1,4重 合 の場 合 は シ ス型 お よび トラ ンス型 の 両 型式 を含 んで い る。(3)式 お
(1)
(2)
(3)
(4)
ともにf値 お よび 分 子 量 が 同 時 に 増 加 し,72時 間 で は す でに反応 の 終了 して い る こ とが わ か る。 Fig.9は 酢 酸-無 水 酢 酸 の 使 用 モ ル比 の 変 化 の 影響 を 示 してい る。 無 水 酢 酸-パ ラホ ル ム アル デ ヒ ド系 で は反 応せ ず,酢 酸-パ ラ ホル ム アル デ ヒ ド系 で は テ ロ メ リゼ ー シ ョンが進 行 す る こ とか ら,酢 酸 が 反 応 に 関与 す る こ とは 明 らか で ある 。 ま た,Fig.9お よびTable2か ら 反応系に 無水 酢 酸 を 添加 す る と,f値 お よ び 分子 量 が 増 大す るこ とが わ か る。 したが って この反 応 に は酢 酸 お よび無水酢 酸 の両 者 が 関 与 し,し か も無 水 酢 酸 に 対 す る 酢 酸の比 が 小 さ くな るほ どf値 お よび 分 子 量 の 増 大 し てい る ことが わ か る。 以 上 の 事 実 か らテ ロメ リゼ ー シ ヨ よび(4)式 は 停 止反 応 で あ るが,(3)式 に よ るア セ テ ー トの 生成 が 優 勢 に起 こ り,プ ロ トンの移 動 に よる連 鎖 の 停 止 は 比較 的 少 な い よ うで あ る。(5)
(6)
(5)式 お よび(6)式 は反 応 系 に酢 酸 お よび パ ラ ホル ム ア ル デ ヒ ドの両 者 を含 む 場 合 の 開始 機 構 で あ る。(5)式 お よび(6)式 と(1)式 とは 競 争 反 応 で あ るが,こ こで は (5)式 お よ び(6)式 が 優 勢 に 起 こ る。 特 に(6)式 は 反 応 系 に 無 水酢 酸 を 添加 す る と起 こ りや す くな る。 生 長 お よ び 停 止 反 応 は(2),(3)式 お よび(4)式 に 準 じて進 行 す る 。
(7)
(8)
(9)
(10)
反 応 系 に パ ラ ホル ム アル デ ヒ ドの 存 在 す る と きは (7)∼(10)式 の 副 反 応 が 含 まれ る。 た と えば イ ソプ レン の ビニル 重 合 に よ っ て 生 じた側 鎖 ビニ ル基 に酸 の 存在下 で,パ ラホ ル ム ア ル デ ヒ ドが 付 加 す れ ば(7)お よび(8) 式 に よ って エ ス テ ル結 合 が 生 じるで あ ろ う。 この こ とは 1分 子 あ た りに2個 以上 の ア セ テ ー ト結 合 が 生 じる事実 を説 明 し うる 。 ま た,三 フ ッ化 ホ ウ素 の 存在 下 で ホル ム アル デ ヒ ドが 活 性 メチ レン基 に付 加 す れ ば,(9)お よび (10)式 の経 過 を経 て エ ー テ ル結 合 が 生 じるで あろ う。実 際,反 応 生 成物 の赤 外線 吸収 ス ペ ク トル は1120cm-1の エー テ ル結 合 に 基 因す る と見 られ る吸 収 を示 してい る。 3.3 ポ リウ レタ ン に つ い て 1) ポ リイ ソプ レ ン の グ リコー ル と ジイ ソ シ アネー ト の 反 応 生 成物:グ リコー ル を 二 三 の ジ イ ソシ アネー ト と塊 状,あ る い は 溶 液 重 合 を行 な っ た 結 果 をTable3に 示 す 。 得 られ た ポ リマ ー は粉 末 状 ま た は 樹 脂 状 でTDI との反 応 物 が 最 も硬 く,HDI,DMMDIの 順 に柔 軟性 をTable 3. Preparation and characterization of polyurethanes.
a) melting point of the product: 150•Ž, b) melting point of the product: 80•Ž, c) after reaction the reactant was
イ オ ン テ ロ メ リ ゼ ー シ ョ ン 〔373〕
Table4. Preparation and characterization of urethane rubber.
a) glycol of polyisoprene: MW (the Rust method) 820, b) polytetramethyleneglycol: MW(the Rust method) 1296, c) diphenylmethanediisocyanate, d) PTMG and DMDI were mixed and reacted during 2 hr at 80•Ž, after that IK' was added and the reaction was continued during 3 hr at 120•Ž, e) in acetone, at 30•Ž, f) Blank polymer, not contained isoprene unit, g) gel portion was seperated.
帯び る。原 料 グ リコー ルの トル エ ン溶 液 に お け る[η]が 0.01程 度 で あ るが,こ れ が 反 応 の結 果0.05∼0.22程 度 にまで上 昇 す るの で グ リコー ル は か な り2官 能 性 に近 いものがで きてい る もの と考 え られ る.ま た,塊 状 重 合 よ り溶液重 合 の 方が[η1は 上 昇 しや すい 。 2) ポ リイ ソプ レンの グ リコー ル単 位 を含 む ポ リテ ト ラメチ レング リコー ル と ジ イ ソ シ アネ ー トの 反 応 生 成 物:Table4に イ ソプ レ ン単 位 を含 む ポ リ ウ レ タン ゴ ムの合成 条件 とア セ トン溶 液 に お け る 固 有 粘度 を示 す 。 生 じた ポ リマ ーは い ず れ も淡 黄 色 の 弾 力 あ る ゴム状 物 質 である。 生 成 物 をTable5の 配 合 に 従 っ て 加 硫 ゴム と した ときの 物 理 強度 をTable6に 示 す 。 この場 合 イ ソ プ レン単位 を含 まな いTable5中 のPBの 配 合 ゴムは イオ ウ橋 か け がで きず,切 断 強度 も小 さい が,イ ソプ レ ン単位 を含 む配 合 番 号2∼5は イ オ ウに よ って橋 か けが 可能なば か りで な く,そ の切 断 強度 もPBの 橋 か け ゴ ム
Table 5. Recipe of polyurethane rubber.
a) cf. Table 4, b) tetramethylthiuramdisulfide.
Table 6. Physical properties of the vulcanizates of polyurethane rubber.
に比べて か な り大 き い こ とがわ か る。
文
献
1) D. D. Coffman, E. L. Jenner:
J. Am. Chem.
Soc., 76, 2685 (1954)
2)古 川 淳 二, 山 下 晋 三, 佐 藤 哲 雄: 高 化, 22, 363 (1965)
3) E. L. Jenner, R. S. Schreiber:
J. Am. Chem.
Soc., 73, 4348 (1951)
4)
A. Weissberger
編: "Organic Solvent" , 390(1955)
5)
A. Weissberger
編: "Organic Solvent" , 394(1955)
6)「 有 機 化 学 ハ ン ドブ ッ ク 」, 1000, 技 報 堂 7) 土 屋, 小 川 ら: 吉 原 製 油 編 「油 脂 実 験 法 」(1947)
II.
Synthesis
of Glycol
of Polyisoprene
by Ionic
Telomerization
of
Isoprene
and Reaction
of the Glycol
with
Diisocyanates
By Junji Furukawa*,
Shinzo Yamashita*
and Tetsuo Sato**
Cationic telomerization of isoprene was investigated with the catalytic system consisting of paraformaldehyde, acetic acid and BF3 etherate. The telomers obtained possessed 1 to 15 units of isoprene, 0.5•`3.7 units of acetate group and others. Both the number of acetate group per mole and average molecular weight of the telomer were found to be increased by using acetic anhydride. The best condition for the telomerization reaction to obtain the telomer having the structure of diacetate with high molecular weight were studied, and some mechanisms of the telomerization were postulated on the base of the experimental results. Glycol of poly-isoprene was able to obtain by saponification of the diacetate and was found to react easily with diisocyanate to give resinous polyurethane. The addition polymer of diisocyanate, poly-tetramethyleneglycol and glycol of polyisoprene has been found to show good vulcanization properties for conventional sulfur vulcanization.
*Department of Synthetic Chemistry
, Faculty of Engineering, Kyoto University (Yoshida, Sakyo-ku, Kyoto) **Sakai Chemical Industrial Co . (Terada-cho, Suma-ku, Kobe)