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2 田村糸子 山崎晴雄 中村洋介 はじめに富山積成盆地 ( 坂本ほか,1959) は, 富山湾に面し, 背後には飛騨山脈から両白山地をひかえている地域で, 中新世の日本海開裂以降に堆積した北陸層群以降の地層に厚く埋めら いするぎ れている. この盆地内には呉羽山断層や石動断層などの逆断 層が北東 南

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© The Geological Society of Japan 2010

富山積成盆地,北陸層群の広域テフラと第四紀テクトニクス

The wide-spread tephra in the Hokuriku Group and the Quaternary tectonics of the Toyama Basin,

Japan

田村糸子

1

 山崎晴雄

1

中村洋介

2

Itoko Tamura

1

,

Haruo Yamazaki

1

and Yosuke Nakamura

2

受付:2010年 4 月15日 受理:2010年 6 月30日 * 日本地質学会第117年学術大会(2010年・富山)見 学旅行(A班)案内書 1 .首都大学東京都市環境科学研究科地理環境科学 専攻

Department of Geography, Graduate School of Urban Environmental Sciences, Tokyo Metro-politan University, Minami-ohsawa 1-1, Hachioji Tokyo 192-0397, Japan

2 .産業技術総合研究所地質情報研究部門

Institute of Geology and Geoinformation, GSJ, AIST, 1-1-1 Higashi, Tsukuba, 305-8567, Japan Corresponding author: I. Tamura

E-mail: [email protected] 概 要  本巡検では,富山積成盆地西縁の小矢部地域から中央部の呉羽山丘陵を経 て東縁地域の魚津まで移動し,堆積盆地を構成する上部音川層や大桑層,呉 羽山礫層などの北陸層群中に見出された鮮新⊖更新世の広域テフラ層を観察 する.かつて,飛騨山地の隆起・形成にかかわる呉羽山礫層の堆積年代,す なわち飛騨山脈の隆起時期には様々な議論があった.しかし,挟在されてい るテフラの対比から,東縁部では2.65~1.65 Ma,中央部の呉羽山丘陵では 0.6 Maという 2 つの層準があることが明らかとなった.このように広域テフ ラ対比が,富山湾側が沈降し,山地が上昇するという本地域のテクトニクス の時間軸の高精度化をもたらしていることを確認する.また,沖積面の変形 や段丘面の撓曲などの地形面の変形から,呉羽山・魚津両断層の活動を論じ, 富山平野を形成した第四紀の断層運動を確認する. Key Words 富山積成盆地,北陸層群,鮮新⊖更新世,広域テフラ,テクトニクス,呉羽山 断層,魚津断層

Toyama Basin, Hokuriku Group, Plio-Pleistocene, Wide-spread tephta, Tectonics, Kurehayama fault, Uozu fault

地形図 1:25,000  「 倶 利 伽 羅 」 「 宮 森 新 」 「 速 星 」 「 富 山 」 「 上 市 」 「 五 百 石 」 「越中大浦」 見学コース 9:00富山駅→小矢部→婦中→呉羽山(昼食)→上市→滑川→17:00富山駅解散 見学地点 Stop 1  (36°38′28″N,136°48′22″E) 北陸層群,高窪層・大桑層の主要テフラ Stop 2  (36°38′13″N,137°7′9″E)  呉羽山断層による変位地形 Stop 3  (36°39′48″N,137°8′0″E)  呉羽山断層の活動に伴う沖積面の変形 Stop 4  (36°40′57″N,137°9′29″E)  呉羽山断層の活動を示す段丘面 Stop 5⊖1(36°42′06″N,137°10′39″E) 呉羽山丘陵,西富山砂層中の寺町テフラ Stop 5⊖2(36°42′36″N,137°11′19″E) 長慶寺砂層中の長慶寺火山灰層 Stop 5⊖3(36°42′32″N,137°11′08″E) 呉羽山礫層の模式地 Stop 6⊖1(36°39′01″N,137°21′37″E) 富山県東部呉羽山礫層中の谷口テフラ Stop 6⊖2(36°40′13″N,137°21′14″E) 柴山テフラ Stop 7  (36°43′54″N,137°24′13″E) 魚津断層による段丘面の撓曲

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 2 はじめに  富山積成盆地(坂本ほか,1959)は,富山湾に面し,背後 には飛騨山脈から両白山地をひかえている地域で,中新世の 日本海開裂以降に堆積した北陸層群以降の地層に厚く埋めら れている.この盆地内には呉羽山断層や石いするぎ動断層などの逆断 層が北東⊖南西走向で走り,これらの活動によって呉羽山丘 陵を境に,東側にある富山平野や飛騨山脈の山麓沿いに発達 する,黒部,魚津などの合流扇状地からなる呉ご東とう地域(飛騨 山脈山麓の合流扇状地性平野)と,呉羽山の西側にある砺と波なみ 平野や射水平野からなる呉ご西せい地域に分けられている(Fig. 1).  北陸層群を構成する鮮新⊖更新統の大お ん ま桑層や音川層,およ びそれらの相当層は,日本を代表する海成層として古くから 古生物学的研究が行なわれてきたが,鍵テフラ層のような積 成盆地全体をつなぐ共通の時間軸が報告されていなかった. そのため,東西に分離した堆積盆間の精密な層序対比や大阪 層群や東海層群など他地域の鮮新⊖更新統との対比・検討が十 分に論じられていなかった.  また,大桑層相当層や音川層を不整合に覆う呉羽山礫層 は,富山平野を取り巻いて断続的に分布する扇状地礫層であ る(坂本・野沢,1960).本礫層は背後の山脈を構成する花崗 岩類の巨礫を含むことから,飛騨山脈の隆起を反映したもの であり,その堆積年代に関して古くから注目されてきた.呉 羽山丘陵に分布している本礫層中に挟在される桃色凝灰岩の 年代測定値(宇井ほか,1987;竹内,1990など)をもとに, 呉羽山礫層の堆積年代,すなわち飛騨山脈の隆起時期は,中 期更新世と考えられた(絈野ほか,1992).しかし,飛騨山脈 の隆起時期については,前期更新世という他地域における研究 (竹内,1999;原山,1999など)とのくい違いが生じていた.  一方,広域に分布する火山灰⊖広域テフラは,噴出後,地 質学的に瞬間的な時間面を示すことから,日本各地の地層を つなぐ有効な鍵層となっている.1990年代に入り,新たな機 器・分析手法の開発や各地のテフラ記載データが蓄積され, これらを基に,4 Ma を遡る前期鮮新世までの広域テフラ層の 編年や各堆積盆地間の鮮新⊖更新世テフラ対比が進められて いる. 第 1 図 富山平野の地形概観図(a)と東西断面概念図(b).(日本の地質 「中部地方Ⅱ」 編集委員会編(1988)を町田ほか(2006)により 補訂).

Fig. 1 Topographic Map of Toyama Basin and east and west section (after Edit committee “Geology of Japan, Chubu Area II” (1988), with supplement and revision by Machida et al., 2006).

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 田村・山崎(2004)は,上記テフロクロノロジーに基づい て北陸層群に共通の時間面を挿入するため,北陸地域の個々 の地層に挟在されるテフラの特性・層序の記載を行い,北陸 内や広域テフラとの対比を検討した.その結果,北陸層群中 に 9 層の広域テフラ層を見出し,これらのテフラ対比に基 づいて,北陸層群の高窪層や音川層上部,大桑層下部,呉 羽山礫層の堆積年代を明確にした(Fig. 2).本見学コース の Stop 1, 5, 6では,富山積成盆地西縁地域の小矢部,中央 部の呉羽山,東縁地域の上市にかけての北陸層群で発見さ れた 8 層準の広域テフラ―釣部1⊖Ya4(Trb1:4.15 Ma),坂 井(Sakai:4.1 Ma),小こ す が や鈴谷(Kosugaya:4 Ma),Znp⊖大田 (Znp⊖Oht:3.75⊖3.9 Ma),谷口⊖Tsp(Tng:2.2⊖2.3 Ma),坂東 2⊖O1(Bnd2:2.1 Ma),恵比須峠⊖福田(Ebs⊖Fkd:1.75 Ma), 大峰(Omn:1.65 Ma)―の各テフラ層を観察する.積成盆地 内の鮮新⊖更新世テフラ対比が,富山湾側が沈降し,山地が上 昇するという富山積成盆地を形成したテクトニクスの時間軸 の精密化に大きく貢献していることを実感していただくこと が,本コースの主な目的である.  富山積成盆地は呉羽山断層や石動断層等の活断層による変 位を受け,前述のように呉羽山丘陵を境に 2 つの平野に分か れている.西側隆起の逆断層であるこれらの活断層は半地溝 (断層角盆地)を形成し,それを埋める更新統によって現在の 平野群が形成されている(Fig. 1).呉羽山丘陵は呉羽山断層 の活動に伴う上盤側の隆起により形成されたものである.し かし,これらの活断層の運動が富山積成盆地の形成とどのよ うに係わっているのか,すなわち,積成盆地形成に係わった 中新世以来の断層運動が現在まで活動を続けているのか,あ るいは最近の地質時代になってからこれらの断層が古傷を利 用して活動を始めたのかは,断層活動史の詳細が不明なため 未解決のまま残されている.  Stop 2, 3, 4, 7では,呉羽山断層,魚津断層の活動による沖 積面の変形や段丘面の撓曲など地形面の変形を観察し,富山 平野を形成した第四紀の断層運動を確認する.  なお,北陸層群と広域テフラおよび Stop 1, 5, 6については 田村・山崎が,呉東・呉西地域の河成段丘,呉羽山断層,魚 津断層と Stop 2, 3, 4, 7については中村が,それぞれ分担して 記載した.  また引用した図表中に記されている文献については引用文 献のリストからは省略したので,図表の原著論文を参照され たい,  なお,新第三紀/第四紀の境界が,2009年 6 月にジェラシ アン期の基底(2.58 Ma)に改訂された.本見学案内書では, 引用も含めて新しい年代層序⊖ISC Chart 2009に読み替えて 記載する. 地質概説  本地域の北陸層群の地質層序は,研究者により若干の違い があるが,大筋は,1959年~1973年にかけて報告された 5 万 分の 1 地質図幅を踏襲している(Table 1).  呉西平野の西縁丘陵部に分布する鮮新⊖更新統は,下位よ り高窪層,大桑層,埴はにゅう生層である.高窪層は塊状無層理の暗 灰色~青灰色砂質泥岩からなり,模式地の福光町における層 第 2 図 北陸層群のテフラ対比図(田村・山崎,2004).

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 4

厚は約200 m である(絈野,1993).珪藻化石層序から堆積 年代として5.5~3.9⊖3.5 Ma が得られている(伊東,1986; Yanagisawa and Akiba, 1998).大桑層は海成砂岩層を主体と し,模式地の金沢市大桑における層厚は約210 m である(北 村・近藤,1990).寒冷な海中気候下で生息していた軟体動物 群,「大桑⊖万願寺動物群」 の代表的産地として知られている. 模式地における微化石層序(高山ほか,1988),古地磁気層 序および鍵層である O2火山灰の FT 年代(大村ほか,1989) などから堆積年代として1.7⊖1.6 Ma~0.8 Ma と考えられた (Kitamura et al., 2001).田村・山崎(2004)は,テフラ対比 に基づき大桑層の堆積年代を検討し,下部の年代が2.5 Ma よ り古くなるとした.埴生層は金沢地域の卯辰山層に相当し, 礫岩・砂岩・泥岩よりなる層相変化の激しい地層である.  呉羽山丘陵に分布する鮮新⊖更新統は,下位より西富山砂 岩層,安養坊砂泥互層,長慶寺砂層,呉羽山礫層で,岩相・ 層準や産出する貝化石などから西富山砂岩層は音川層上部 に,安養坊砂泥互層と長慶寺砂層は大桑層にそれぞれ対比さ れている(坂本,1963).呉羽山丘陵の呉羽山礫層について 表 1  北陸層群の層序(田村・山崎,2004).

Table 1 General stratigraphy in the Hokuriku area (Tamura and Yamazaki, 2004). area

age Kanazawa Oyabe Yatsuo Kurehayama Uozu Middle

Pleistocene Udatsuyama F. Hanyu F. Kurehayama gravel bed

pt tuff: (4) TL : 0.3-0.5 Ma, (5) ESR : 0.68-0.72 Ma) Kurehayama g.l b. Kurehayama gravel bed Early

Pleistocene (1) O2 tuff:FT 1.4±0.2MaOmma F. Omma/Himi F. Mita F.

Chokeiji Sand M.

Muroda F. Anyobo ss ms alt.m.

Pliocene Takakubo F. (2) Diatom fossil : 5.5-3.9 MaTakakubo F. (3) OT3 tuff FT 5.2±0.5 MaOtogawa F. Nishi-Toyama s.s m. Otogawa F. References: Imai (1959), Inoue and Mizuno (1964), Kano et al (1999), Nozawa and Sakamoto (1960), Sakamoto (1963), Sakamoto and Nozawa (1960). Sumi and Nozawa (1973) ; (1) Omura et al. (1989), (2) Itoh (1986), (3) Kadoi (1986), (4) Ui et al. (1987), (5) Takeuchi (1990)

表 2  中央日本の鮮新⊖更新世主要テフラのリスト(Tamura et al., 2008).

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は,礫層上部に挟在される桃色凝灰岩が上宝テフラ(KMT: 0.6 Ma)と対比されることが報告されている(田村・山崎, 2004).  呉東平野周縁丘陵部に分布する鮮新⊖更新統は,下位より 音川層,室田層,呉羽山礫層である.本地域の音川層は泥質 の細粒砂岩からなり,層厚は300 m から全層が欠如するまで 著しく変化し,本地域では連続性が悪い(角・野沢,1973).  室田層は主として凝灰質砂層からなり層厚は10~300 m ま で変化する.これらの地層を覆う本地域の呉羽山礫層は花崗 岩や石英斑岩礫に富み,層厚は100~300 m に達する.同礫層 の中部層準に層厚10~20 m の谷口凝灰岩が挟在される(野 沢・坂本,1960).谷口凝灰岩は,対比されるテフラが新潟 や関東など各地で見出され(谷口テフラ:Tng,町田ほか, 2001;Tamura et al.,2008),2.2⊖2.3 Ma という噴出年代であ ることが明らかとなった.さらに Tng の下位の礫層下部層準 に UN⊖MD 2 テフラ(2.65 Ma:Kurokawa and Tomita,2000) に対比するテフラが発見され,呉羽山礫層の堆積開始時期, すなわち飛騨山脈の本格的な隆起が始まったのは,3.5 Ma と 2.6⊖2.7 Ma の間であることが明らかになった(田村,2005). 従って,魚津地域の地層の年代(Table 1)は大きく様変わり することとなった. 日本列島における鮮新-更新世広域テフラの層序および分布  Tamura et al.(2008)は,研究が蓄積されている中央日本 の鮮新⊖更新統中のテフラ層を層位や記載岩石学的性質,火 山ガラスの主成分・微量成分化学組成等の特徴を基に,対比 を整理・検討した.その結果,およそ4.15~1.65 Ma 層準に 14層の広域テフラを識別した(Table 2).さらに Tamura and Yamazaki(2010)は2.5~2.15 Ma の層準に新たに 3 層の広 域テフラを識別し,これらを加えて中央日本の鮮新⊖更新世 の堆積盆のテフラ層序をまとめた(Fig. 3).巡検で観察する 釣 部 1⊖Ya4(Trb1:4.15 Ma),Znp⊖大 田(Znp⊖Oht:3.75⊖ 3.9 Ma),谷口⊖Tsp(Tng:2.2⊖2.3 Ma)の各テフラの分布域 を示す(Fig. 4).その他のテフラ層の分布域や分析値等の詳 細な記載は上記論文を参照されたい.

第 3 図 中央日本における鮮新⊖更新世主要テフラの時空間分布.Tamura and Yamazaki(2010)に修正加筆.

Fig. 3 Plio-Pleistocene Groups in central Japan and time and space diagram of Plio-Pleistocene Marker tephras. modified from Tamura and Yamazaki (2010).

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 6 富山平野の河成段丘面の分類・対比 1 呉西地域:富山平野西部を流れる神通川,井田川,およ び山田川流域では,分布形態および発達過程を異にする河成 段丘面がよく発達している(Fig. 5).中村ほか(2003)は神 通川,井田川,および山田川流域に分布する河成段丘面を地 形面の開析形態,分布,現河床からの比高,標高および堆積 物の層相に基づき,高位よりⅠ面~Ⅹ面の10面に分類した. これらのうち山田川との合流点以北における井田川西岸の河 成段丘面では,Ⅴ面構成層直上のローム層から DKP が,同 じくⅧ面直上のローム層から AT が報告されている(Fig. 6). なお,中村ほか(2003)は段丘の離水期は風成ロームと水成 堆積物(いわゆる 「flood loam」),もしくは段丘礫との境界 付近であるとしつつ,本地域における河成段丘面(Figs. 5, 6) の形成時期を Table 3のように推定している.尚,各面の詳細 な記載ならびに他地域との対比は中村ほか(2003)ならびに Nakamura et al.(2008)を参照されたい. 2 呉東地域:富山平野東縁の河成段丘面群はⅠ面~Ⅸ面の 9 面に分類され(Fig. 7),段丘構成層および被覆土壌層中に 含まれる広域テフラ(Fig. 8)の同定をもとに,これらの段丘 面の離水年代が推定されている(中村,2005).尚,各面の詳 細な記載は中村(2005)ならびに Nakamura et al.(2008)を 参照されたい. 第 4 図 鮮新⊖更新世広域テフラの分布図 ⑴ 釣部1⊖Ya4テフ ラの分布,⑵ Znp⊖大田テフラの分布,⑶ 谷口テフラの分布. (Tamura et al., 2008).

Fig. 4 Distribution of the Plio-Pleistocene widespread tephras in central Japan. (1) Distribution of Tribe⊖Ya4 tephra, (2) Distribu-tion of Znp⊖Ohta tephra, (3) DistribuDistribu-tion of Taniguchi-Tsp tephra (Tamura et al., 2008).

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第 5 図 富山平野西縁における地形分類図.中村ほか(2003)を一部改変.

呉羽山断層の活動に伴う地形面の変形を示す断面の測定位置.

Fig. 5  Geomorphological Map of the western Margin of Toyama Plain. Modified from Nakamura et al. (2003). The profiles of deformed terraces across the Kurehayama fault.

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 8

第 6 図 富山平野西縁の河成段丘堆積物と被覆火山灰の柱状図. 試料採取位置は第 5 図を参照.中村ほか(2003)を一部改変.

※1…富山県(1997)より引用.

Fig. 6 Columnar sections of fluvial terrace deposits of the western Margin of Toyama Plain. Locations are shown in Fig. 5. Modified from Naka-mura et al. (2003).

第 7 図 富山平野東縁における地形分類図.中村(2005)を一部改変.

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呉羽山断層(富山平野西縁)の概要  富山平野と呉羽山丘陵との地形境界は,北北東⊖南南西走 向の直線的な比高50 m 以上の急崖によって画される(Fig. 1).呉羽山丘陵の東南縁には直線状の急崖地形が発達すると ともに,試錐調査によって呉羽山を境に扇状地礫層の上限深 度が西側より東側で深くなることから,呉羽山断層の存在が 地形・地質学的に推定されてきた(藤井・竹村,1979;Fujii and Yamamoto,1979;竹村,1983;活断層研究会,1991; 絈野ほか,1992).  平野西縁では西上がりの活断層である呉羽山断層の存在 が推定され(竹村,1983;藤井ほか,1990;活断層研究会, 1991),直線上に延びる急崖地形は断層の活動によるもので あると考えられていた.しかしその後,富山県(1997)が行っ た反射法地震探査の結果,断層は従来の研究で推定されてい た富山平野と呉羽山丘陵の地形境界付近には存在せず,これ よりも約1 km東側に存在することが判明した.富山県(1997) はこの結果を踏まえて,呉羽山断層の長さを富山市長沢から 鵯 ひよどり 島 じま に至る約12 km であると結論付けた(Fig. 5).  中村ほか(2003)は,空中写真判読および現地踏査を行い 次のような 3 点の特徴を得た(Fig. 9a).⑴ 神通川右岸にお いて連続的に西側の低地面(Ⅹ面)が高くなり,一部では地 形面が東側に撓み下がる.⑵ この一連の地形面の変形帯が想 定される呉羽山断層の北方延長に位置し,上下変位の向きも 一致する.⑶ 扇頂から同心円状に北に広がる常願寺川扇状地 がこの付近のみ逆傾斜をする.なお,富山市北部におけるⅩ 表 3  富山平野西縁における河成段丘面の対比(中村ほか,2003).

Table 3 Correlation with previous works (Nakamura et al., 2003).

第 8 図 富山平野東縁の河成段丘堆積物と被覆火山灰の柱状図. 中村(2005)を一部改変.試料採取位置は第 7 図を参照.

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 10 面の上下変位量は約3.5 m である(Fig. 9a:E-E’).また,東 富山駅北方の富山湾内では呉羽山断層の延長線上付近に微小 地震が発生しており(和田ほか,1990),呉羽山断層は陸域の みではなく海域への延長の可能性も示唆される.しかしなが ら,中村ほか(2003)で示されたデータはあくまで地形学的 手法に基づくものであるので,呉羽山断層の北方延長に関す る検討については,今後の反射法探査や群列ボーリング調査 等のデータの蓄積が望まれる.  本断層は南部で NNW⊖SSE,中~北部では NNE⊖SSW 走 向であり,延長距離が約20 km(海域に連続する場合はそれ 以上),活動度が B 級の活断層である.後期更新世における 上下平均変位速度は,南部で約0.16~0.32 m/1000年である (中村ほか,2003).また,大縮尺空中写真に基づく地形判読 および現地踏査の結果,富山市長沢~五福にかけての地域で 断層運動によって形成されたと考えられる河成段丘(比高2~ 3.5 m)の存在や沖積面の西上がりの変形(比高2~3 m)が認 められる(中村ほか,2003).これらの分布は富山県(1997) が行った反射法探査で推定される断層の位置とも調和的であ り,富山平野 3 西縁断層(呉羽山断層)の活動に伴って形成 されたと考えられる. 魚津断層(富山平野東縁)の概要  富山平野を含めた富山県の平野縁辺部には,北東⊖南西走 向の逆断層群が卓越し(Fig. 1),その良好な変位基準である 河成段丘の発達が非常に良い.なかでも富山平野東縁に位置 する魚津断層は,この地域に広く分布する河成段丘群に約 30 km の範囲にわたって累積的な上下変位(東側隆起)を与え ており,第四紀後期において活発に活動している活断層であ る(池田ほか,2002;中田・今泉編,2002;東郷ほか,2003; 今泉ほか,2003).走向は南部の広野から中南部の上野にかけ ては北北東⊖南南西であるが,断層中央部の江口付近で北東⊖ 南西方向に転ずる.また,全体的に西に凸面を向けた弧状を している(Fig. 7).  中村(2005)は,本地域に分布する河成段丘面(Fig. 7)の うち,Ⅰ面~Ⅴ面までの形成時期をそれぞれ,140~180 ka (Ⅰ面),105~115 ka(Ⅱ面),95~105 ka(Ⅲ面),60~70 ka (Ⅳ面),ならびに45~55 ka(Ⅴ面)であるとし,各段丘面の 形成年代と各断面における上下変位量から,魚津断層の平均 上下変位速度を求めた(Table 4).中村(2005)による魚津 断層の平面図ならびに断層の走向に沿った平均変位速度の分 第 9 図 富山平野西縁地域における断層活動に伴う河成面の変形を表す地形断面図.断面の位置は第 5 図,第13図,第14図を参照.中村ほ か(2003)を一部改変.

Fig. 9 Profiles of deformed terraces of the Kurehayama fault. Location of the profiles are shown in Fig. 5, Fig. 13 and Fig. 14. Modified from Nakamura et al. (2003).

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布を Fig. 10に示す.なお,平均変位速度分布は,断層が複数 のトレースに分かれる場合にも全て合算した場合(Fig. 10 B) と,最も平野側に位置する断層のみを扱った場合(Fig. 10 C) の双方を示した.  双方ともに全体的には断層の末端から断層の中央部に向 かって上下変位速度が大きくなる傾向がある.上下変位速度 が最も大きい位置は,断層が複数のトレースを合算した場合 には十二貫野付近(Fig. 11:M)であるのに対し,最も平野 側に位置する断層のみの場合には上野付近(Fig. 11:H)と なる.この原因として,魚津断層の主要な活動域が時代とと もに断層の走向方向に沿って変化しているという仮説が考え られる.ただし,Ⅰ面の形成時期が MIS6よりも古くなる場 合には,評価が変わってくる.現段階ではこの仮説を検証す るのに充分なだけの平均上下変位速度データが得られていな いことから,上述の仮説の検証は今後の課題としたい.  以上をまとめると,富山平野東縁の魚津断層はすでに認 められていた大浦断層ならびに不動堂断層を含めた全長約 30 km の活断層となる.本断層は,北北東~南南西走向で, 活動度が B 級であり,場所によっては複数条に並走する.後 期更新世における平均上下変位速度は,約0.2~0.9 mm/yr で あり(中村,2005),平均変位速度が場所によって大きく異な るが,これは断層上における地形断面の計測位置や断層の時 代毎の活動域の変遷が大きく関与していると考えられる. 表 4  魚津断層の活断層資料表(中村,2005)

Table 4 Summary of fault data (Uozu fault) (Nakamura, 2005).

第10図 魚津断層における平均変位速度の水平分布(中村,2005).A…魚津断層の平面トレース.B…断層が複数のトレースに分かれる場

合にも全て合算した場合.C…最も平野側に位置する断層のみを扱った場合.図中の矢印(↓)はⅠ面の平均変位速度が下方修正される可 能性があることを示す.

Fig. 10 Vertical average slip rate across the Uozu fault (Nakamura, 2005).

A…The surface traces of the Uozu fault. B…The total vertical average slip rate of several fault traces. C…The surface trace of the Uozu fault which locates the most western part of the Plain near the seaside. An arrow in the Fig. 10B(↓)indicates that the vertical average slip rate of Terrace Ⅰ is likely to revise more lowly slip rate.

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 12 見学地点案内 Stop 1  北陸層群,高窪層・大桑層の主要テフラ層 (小矢部市八はち伏ぶせ林道ルート) [地形図]1:25,000 「倶利伽羅」 [位 置]36°38′28″N,136°48′22″E ~36°38′22″N,      136°48′34″E [解 説]八伏集落から南東の林道沿いには,高窪層上部か ら大桑層中部層準の地層が連続的に露出する.これらの地層 には数多くのテフラ層が挟在されており, 7 層のテフラが広 域テフラ層として同定・対比された(田村・山崎,2004; Tamura et al., 2008).それらは下位より,釣部1テフラ(Trb1⊖ Ya4:4.15 Ma に対比),砂子谷1テフラ(Snk1⊖Sakai:4.1 Ma), 砂子谷2テフラ(Snk2⊖Ksg:4.0 Ma),谷口テフラ(Tng: 2.2⊖2.3 Ma),O1テ フ ラ(Bnd2⊖O1:2.1 Ma),O1.5テ フ ラ (Hotaka⊖Kd39:1.76 Ma),O2(Ebs⊖Fkd:1,75 Ma)であ る.田村・山崎(2004)の Fig. 3.1の Loc. 31⊖32に相当する ルートである(Fig. 12).志田ほか(1989)による大桑層のナ

第11図 富山平野東縁地域における断層活動に伴う河成面の変形を表す地形断面図.断面の位置は第 7 図,第16図を参照(中村,2005).

Fig. 11 Profiles of deformed terraces of the eastern Margin of Toyama Plain. Location of the profiles are shown in Fig. 7 and Fig. 16 (Naka-mura, 2005).

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ンノ化石層序研究の八講田地域のルートは本ルートの大桑層 部分に相当する.以下に本露頭におけるテフラの産状を下位 より記載する.なお,詳細な記載岩石学的特性は田村・山崎 (2004)を参照されたい. Trb1:植生のため下限は見えないが,層厚10 m に達するやや ベージュ味を帯びた白色軽石質テフラで,火砕流堆積物のリ ワークと推定される.5 mm 程度の発泡のよい軽石を含み,有 色鉱物は黒雲母を含む.顕著ではないが上方細粒化する.新 潟に分布する西山層の Ya⊖5 火山灰,房総半島に分布する安 野層の An51火山灰と対比された. Snk1:Trb1から50 cm 上位に位置する層厚20 cm の極細粒白 色火山灰層である.小矢部から金沢にかけて分布する高窪 層の多くの地点で Trb1⊖Snk1の 2 枚セットで分布する.有色 鉱物に乏しく極めて発泡の良い bw 型の火山ガラスを多く含 む.本テフラは火山ガラスの微量成分に特徴があり(Ba 値が 112⊖136 ppm と低く,Ba/La が4.9,La/Y が0.5⊖0.6と極めて 低い),東海層群の坂井火山灰,新潟の Ya⊖4火山灰,房総の An53火山灰など多くの鮮新⊖更新統中に見出された(田村ほ か,2005). Snk2:Trb1⊖Snk1より上位に泥岩と厚いテフラ層を 1 枚挟ん で位置する白色ガラス質テフラである.層厚は4 m に達し火 砕流堆積物のリワークと推定される.上限部分が滝のすぐ脇 である.有色鉱物は黒雲母を含む.東海層群の小鈴谷テフラ と対比された. Tng:滝から東へ泥岩と厚いテフラ層,うすい礫層を経て,大 桑層中に挟在される層厚約9 m の灰白色ガラス質テフラであ る.有色鉱物は黒雲母が目立つ. 火山ガラスの微量成分で La/Y が1.5とやや高く,谷口テフラ と判断された. O1:Tng からラミナの発達する層厚が厚いテフラや貝化石 が散在する暗灰色細粒砂層を挟んでおよそ20 m 上位にある 層厚15 cm の白色細粒火山灰層である.生物擾乱を著しく受 け,ブロック状になっている.斜方輝石や普通角閃石ととも に特徴的な青色鉱物が認められ,光学的性質から大隅石と鑑 定された.また林田ほか(2005)により古地磁気方位が測定 され,逆帯磁であることが報告されている.鉱物学的特性と 層準から東海層群の坂東2火山灰,古琵琶湖層群の原火山灰 と対比された. O1.5:O1から貝化石が散在する暗灰色細粒砂層を挟んで約 15 m 上位にある極細粒白色火山灰層である.層厚は10 cm で ブロック状になっている.斜方輝石・単斜輝石・角閃石が含 まれる.火山ガラスの化学組成分から中央日本に広く分布す 第12図 金沢~小矢部の北陸層群の柱状図(田村・山崎,2004).

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 14 る穂高⊖Kd39テフラに対比された(Tamura et al.,2008). O2:O1.5から暗灰色細粒砂層を挟んで約7 m 上位にあるガ ラス質火山灰である.下部の層厚30 cm は正級化し,上位 10 cm ほどの部分がアズキ色で有色鉱物に富み,その上部は 白色火山灰層となり砂層に漸移する.小断層が発達する.極 めて高い値を示す斜方輝石の屈折率(γ=1.750⊖1.758)や火山 ガラスの化学組成等の特性や特徴的なアズキ色の層があるこ となどから,Ebs⊖Fkd と対比された. Stop 2  呉羽山断層の過去の活動を示す断層変位地形 (富山市丘の夢牧場) [地形図]1:25,000「宮森新」 [位 置]36°38′13″N,137°7′9″E [解 説]呉羽山断層は,富山平野西縁地域において複数条 に併走して分布するが,丘陵側を走る呉羽山断層は富山市富 崎ではⅠ面が逆向き(西落ち)の低崖を伴いながら,大きく 東に低下している(Figs. 13).富崎の北方に位置する射水丘 陵東部では,丘陵の一部を構成する地形面(Ⅴ面)の変形が 連続的に現れる.すなわち,富山市蓮花寺,および長沢~境 の新にかけての区間では東へ下がる地形面の傾きが,富山市 平岡~古沢にかけての区間では西へ下がる地形面の撓みが, それぞれ認められる(Figs. 5, 13).この緩傾斜上の掘削地点 ⑨,⑩,⑫露頭,および富山県(1997)によって報告されて いる⑪露頭ともに,同様の火山灰層序(DKP が褐色ローム層 第13図 富山平野西縁中南部における地形分類図および断層活動に伴う河成面の変形を表す地形 断面図(中村ほか,2003).

Fig. 13 Geomorphological Map and profiles of deformed terraces of the southern-central part of the western Margin of Toyama Plain (Nakamura et al., 2003).

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最下部に挟在する)を示すことから(Fig. 6),この「地形面 の傾き」は浸食によって形成されたものではなく,断層運動 によって形成されたものと考えられる.  富山市の丘の夢牧場では産業技術総合研究所によって呉羽 山断層の古地震活動を明らかにするためのトレンチ・ピット 調査が実施されている(吉岡ほか,2007).同調査では,ト レンチ掘削( 1 ヶ所)ならびにピット掘削( 2 ヶ所)が実施 され,全ての掘削地点において明瞭な断層が現れた(吉岡ほ か,2007).これらのトレンチ・ピット調査ならびに後述する 安田城址地点における群列ボーリング調査の結果,呉羽山断 層における最新活動度期は,約3,500年前以後,約2,400年前ま でであると推定されている(吉岡ほか,2007).今回の見学旅 行では,トレンチ調査跡地におけるトレンチの概要の説明な らびに周辺の地形の観察を行う. Stop 3  呉羽山断層の活動に伴う沖積面の変形 (富山市長沢) [地形図]1:25,000「速星」 [位 置]36°39′48″N,137°8′0″E [解 説]山田川以北では NNE 走向のⅨ面の高度差が明瞭 に認められることから,断層はその伏在部分(富崎付近)で 走向を南北から北北東に変え,山田川を越えて富山市長沢方 面に連続していくと推定される(Fig. 13).富山市長沢~小長 沢にかけての区間は,富山平野西縁において最も沖積面の西 上がりの変形が顕著な地域である.富山市古里にはⅨ面を開 析する NNE 走向の小さな谷が存在する.この地域は山田川 の流域に面しており,最大流下方向は ENE である.しかしこ の谷は,この地域の最大流下方向に斜交する不自然な谷であ り,およびこの谷の両側には表面の浸食の程度から見て同じ Ⅸ面と判断される段丘が2.2 m の高度差を示すことから(Fig.

9-a: A’-A”),この谷の形成には断層活動が関与していると考

えられる.同様に,古里北方の富山市小長沢においても同じ 地形面に高度差が認められ,Ⅸ面が約1 km の区間に渡って東 側に傾き下がり,変位量は約2.0 m と測定された(Fig. 9-a: B’- B”). Stop 4  呉羽山断層の活動に伴って形成された段丘面など (富山市安田) [地形図]1:25,000「富山」 [位 置]36°40′57″N,137°9′29″E [解 説]本地域では富山県(1997)によって富山市分田~栃 谷に至る約6.6 km の区間で反射法探査が行われ,富山市小泉 付近に断層が推定されている(Fig. 5).富山県(1997)は富 山市安田において反射法探査で推定される呉羽山断層を挟む 第14図 富山平野西縁中部における地形分類図および断層活動に伴う河成面の変形を表す地形断面図(中村ほか,2003).

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 16 位置でボーリング調査を行っている.約7,000年前の地層が 最大約2.5 m 上下方向にずれていることから,呉羽山断層は 約7,000年前以降に活動があった可能性が高いと報告してい る.本論においてこれまで報告してきた地形面の変形地点お よび井田川左岸の特異な地形から推定した呉羽山断層の位置 は,この反射法探査の結果とも非常に調和的である.  平野側を走る呉羽山断層に沿っては,富山市小長沢以北で は断層の上盤側,言い換えれば井田川の左岸で連続的に現れ る下に述べる特徴的な地形面の分布形態やⅨ面の僅かな変形 によってその位置が推定される(Fig. 14).すなわち,富山平 野内における井田川の両岸を比較すると,⑴ Ⅷ面の分布は左 岸にのみ限られる,⑵ Ⅸ面と氾濫原との比高は右岸では概ね 1 m 以下に対し,左岸では2 m を越える場所が何ヶ所かある, という特徴が見出される.中村ほか(2003)は,この現象は 呉羽山断層の活動に伴う井田川左岸の隆起によってもたらさ れるものと考え,断面測量によって氾濫原との正確な比高を 測定した.その結果,富山市友坂におけるⅨ面と氾濫原との 比高は約2.3 m(Fig. 9-a:C-C’),同町安田におけるⅧ面と氾 濫原との比高は約3.0 m(Fig. 9-a:D-D’)という値が得られ ている. Stop 5  呉羽山丘陵の広域テフラ層  模式柱状図を Fig. 15に示す. Stop 5-1  大田-Znp テフラ(3.7-3.9 Ma)に対比された寺町 テフラ(富山市寺町) [地形図]1:25,000 「富山」 [位 置]36°42′06″N, 137°10′39″E [解 説]呉羽山丘陵の南西側,JR 西富山駅の北東500 m に位 置する富山市寺町けやき台公園.本テフラは西富山砂層上部 に挟在する白色テフラで,中央日本に広く分布する大田⊖Znp テフラ(Oht:3.7⊖3.9 Ma, Kurokawa and Tomita,1998)に 対比された(田村・山崎,2004).下部50 cm は細粒で,上部 は中~粗粒になり,径1 cm 程度の白色軽石を含む.層厚は4⊖ 5 m に達するが,上部はラミナが発達し,径1⊖2 cm の細粒の 角礫が密集する層や層厚数 cm の細粒砂層などが含まれる. 有色鉱物は黒雲母を含み,微量の普通角閃石や斜方輝石を含 む.西富山砂層の上部層準であることや岩相が軽石質凝灰岩 (t1:坂本,1963)と類似し,富山県(1997)では t1と記載さ れたが,火山ガラスの形態が特徴的なバブルジャンクション 型(Kurokawa and Tomita,1998)を含むこと,火山ガラス の主成分・微量成分化学組成値の特性で,FeO が1.1%と t1よ り高いことや,Ba 値,La/Y などの相違から,異なるテフラ と判断された(田村・山崎,2004). Stop 5-2  谷口テフラ(2.2-2.3 Ma)に対比された長慶寺火 山灰層(富山市呉羽山) [地形図]1:25,000 「富山」 [位 置]36°42′36″N, 137°11′19″E [解 説]安養坊から北西に50 m の呉羽山老人福祉センター へ向かう道路沿い.本火山灰層は長慶寺砂層中に挟在する白 色粗粒ガラス質火山灰層で,富山から新潟,長野にかけて分 布する谷口テフラ(町田ほか,2001)に対比された(田村・山 崎,2004).層厚は約1 m であるが,ラミナがあり初生的な層 厚は不明である.黒雲母やβ石英に富み,極微量に含まれて いる斜方輝石の屈折率がγ=1.745⊖1.748と高い値を示す.従 来は,長慶寺砂層を不整合に覆う呉羽山礫層の上部に位置す る桃色凝灰岩(pt:坂本,1963)が,町田(1992)が呉羽山 に存在すると指摘した Tng 相当と信じられてきた.しかし, 古地磁気層序で,Tng が逆帯磁であるのに対して pt が正帯 磁であること,報告されている pt のジルコン FT 年代が0.5⊖ 0.7 Ma であることなどから Tng と pt の対比に疑問が投げか けられていた(富山県,1997).また富山市千里の三田砂岩層 に挟在される MT2テフラ(早川・竹村,1987)も Tng,Chk に対比された(田村・山崎,2004). Stop 5-3  呉羽山礫層の模式地(富山市呉羽山) [地形図]1:25,000 「富山」 [位 置]36°42′32″N, 137°11′08″E [解 説]呉羽山老人福祉センターから尾根にいたる道路切 割り.呉羽山における本礫層は下位の長慶寺砂層を不整合に 覆い,上部には厚さ3 m の桃色凝灰岩(pt:坂本,1963)が挟 在される.層厚は最大で50 m(坂本・野沢,1960)で,礫径 は下部では30 cm を超えるものが多く見られ,上部では10 cm 程度のものが多くなる.礫は,安山岩,石英斑岩,花崗岩礫 に加え,手取層の礫などの円礫~亜円礫である.礫の配列に 方向性は見られず,雑然と堆積しており,マトリックスは泥 質の粗粒砂である.本礫層の上部にある pt の年代測定値が 前述のように中期更新世であることから,これを根拠に呉羽 山礫層の堆積年代,すなわち飛騨山地の隆起時期は中期更新 世と考えられた(絈野ほか,1992).しかし,Stop 6で訪れる 富山平野東部の呉羽山礫層は,礫層の中部から上部にかけて Tng(2.2⊖2.3 Ma)と大峰⊖Kd25 テフラ(Omn:1.65 Ma,長 橋ほか,2000)が挟在されているので,堆積年代が異なり, 2.2⊖2.3 Ma~1.65 Ma にかけての更新世前期に堆積したこと が明らかにされた(田村・山崎,2004).  なお,本露頭は日本地質学会第97年学術大会の見学旅行に おいても案内された露頭で(藤井ほか,1990),現在は解説板 も設置されている. Stop 6  富山平野東部,飛騨山脈の隆起・成立時期を示す呉 羽山礫層中のテフラ  模式柱状図を Fig. 15に示す. Stop 6-1 谷口テフラ(上市町白岩) [地形図]1:25,000 「五百石」 [位 置]36°39′01″N,137°21′37″E [解 説]模式地は上市町堤谷西方の丸山運動公園グランド 脇の崖(坂本・野沢,1960)であったが,この露頭が消滅し たため,模式地から南南西4.4 km の上市町白岩ムクロジ沢の 谷口テフラを観察する.本テフラは,富山県東部地域に分布 する呉羽山礫層の中部層準に挟在する.見学地の Tng はや や淡い紫色を帯びた灰白色の非溶結火砕流堆積物で,層厚約 8 m で上部3 m はやや細粒となる.ガラス質火山灰を主体と

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し,径2~3 cm の発泡のよい白色軽石を含む.最下部50 cm はやや白色となり,軽石が径0.5 cm と細かい.上下の礫層中 の礫は径30~50 cm が主体の円礫で,花崗岩,安山岩礫が目 立つ.本テフラの下位は礫層が約20 m にわたって観察でき る.Tng は黒雲母に富み,微量に含まれる斜方輝石の屈折率 がγ=1.745⊖1.752と高く,β石英に富む.  なお,現在は消滅して見ることができないが,Tng の模式 地では,Tng から礫層を挟んでおよそ40 m 下位層準に丸山2 テフラ(Mry2)さらに礫層を挟んで Mry2から6 m 下位に丸山 1テフラが報告された(田村,2005).Mry2はその鉱物学的特 性から,中央日本に広く分布する UN⊖MD2テフラ(2.65 Ma: Kurokawa and Tomita,2000)に対比され,本地域の呉羽山礫 層の堆積年代が,鮮新世後期まで遡れることが示された(田 村,2005). Stop 6-2 柴山テフラ(上市町柴山) [地形図]1:25,000 「上市」 [位 置]36°40′13″N,137°21′14″E) [解 説]立山町柴山から日中にかけての白岩川左岸沿い(田 村・山崎,2004).本テフラは,中央日本に広く分布する Omn⊖ SK110テフラ(1.65 Ma:長橋ほか,2000)に対比された(田 村・山崎,2004).本露頭において Sby の上部は段丘堆積物 に不整合に覆われるため初生的な層厚は不明であるが,観察 できる範囲で5 m に達する.ガラス質火山灰を主体とし,発 泡のよい扁平化した長径4⊖5 cm の白色軽石が散在する黄白 色,非溶結の火砕流堆積物である.Stop 6-1の Tng からおよそ 45 m 上位に位置する.黒雲母が目立つ岩相や火山ガラスの主 成分組成等の鉱物学的特性が下位の Tng と極めて類似してい るため,野沢・坂本(1960)では Tng と記載された.しかし, 火山ガラスの微量成分で Ba 値が500 ppm と Tng(600 ppm) と比べて少ないことや微量に含まれる斜方輝石の屈折率が γ=1.737⊖1.743であることから,Tng と異なるテフラである ことが明らかにされた(田村・山崎,2004).Sby が Omn⊖ SK110と対比されたことにより,富山県東部の呉羽山礫層の 年代が Omn⊖SK110(1.65 Ma)より下位であるという時間面 が入った. Stop 7  魚津断層によって変形を受けている幅数100 m に及 ぶ段丘面の撓曲(滑川市東福寺野) [地形図]1 : 25,000「越中大浦」 [位 置]36°43′54″N,137°24′13″E [解 説]上市町広野~滑川市大崎野にかけての地域には, 上市川ならびに早月川によって形成された河成段丘面群が南 北方向に連続的に分布する(Fig. 16).本地域には現河川の流 路方向(東西方向)に直交し,数 m~数10 m の比高をもって 西側に撓み下る 2 条の崖が存在する(中村・金,2004).これ らの崖は,1)複数の河成段丘において南北方向に連続的に認 められること,2)より高位の段丘面ほど崖の比高が大きいこ と,3)崖を挟んだ地点における段丘面の形成時期がほぼ同時 期であると考えられることなどから,河川の浸食によるもの ではなく,活断層によって形成されたと考えられている(中 村・金,2004).  本地域における断層変位地形は,幅数100 m におよぶ幅の 広い撓曲帯が併走して分布することによって特徴付けられ, このことは地下で断層が分岐して低角化しつつ平野側に向 かって前進していることを示唆する.中村・金(2004)による と,魚津断層の活動に伴う各段丘面の上下変位量ならびに同 変位速度は,Ⅰ面では70 m ならびに0.39~0.50 mm/yr(東福寺 野;Fig. 11:B-B’),Ⅱ面では42 m ならびに0.37~0.40 mm/yr (中野;Fig. 11:C-C’),Ⅳ面では22 m ならびに0.31~0.37 mm/ yr(大崎野;Fig. 11:D-D’),10 m ならびに0.14~0.17 mm/ yr(広野;Fig. 11:A-A’)の値が求められており,北から南 に向かって上下変位速度の値が小さくなる傾向が認められる (Fig. 11,Table 4). 第15図 呉羽山丘陵と魚津地域の模式柱状図(田村,2005).

Fig. 15 Stratigraphic columns of the tephras in Kurahayama and Uozu areas (Tamura, 2005).

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田村糸子・山崎晴雄・中村洋介 18 謝 辞  査読者の産業総合研究所の水野清秀主任研究員および中央 大学の大上隆史博士,見学案内書の編集担当の皆様には貴重 なご意見をいただいた.記して感謝いたします. 文 献

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第16図 富山平野東縁南部における地形分類図(中村,2005).

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Fig. 1  Topographic Map of Toyama Basin and east and west section (after Edit committee  “Geology of Japan, Chubu Area II” (1988), with  supplement and revision by Machida et al., 2006).
Fig. 2  Correlation chart among the Hokuriku Group and wide-spread tephras (Tamura and Yamazaki, 2004).
Table 1  General stratigraphy in the Hokuriku area (Tamura and Yamazaki, 2004).
Fig. 3  Plio-Pleistocene Groups in central Japan and time and space diagram of Plio-Pleistocene Marker tephras
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参照

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