ブドウの早期落葉に関する研究 X 葉脈黄変葉の発現に及ぼすCu溶液の影響--新梢切枝およびさし木幼木についての観察-香川大学学術情報リポジトリ

12 

Loading.... (view fulltext now)

Loading....

Loading....

Loading....

Loading....

全文

(1)

ブドウの早期落葉に関する研究 Ⅹ 葉脈爵変其の発現に及ぼす−Cu溶液の影響一新梢切枝

およびさし木幼木についての観察

樽 谷

勝 Ⅰ緒 口 香川県地方のCampbell’s EaTlyブドウ園の梅雨期における,結果枝基部薬の葉脈黄変薬の発生は,基部薬からの Pの移動にともをう菓内P含量の減少(18・14),または案内のPとCu合盈との相互関係によるCu含意の過剰(16)に よるものと推定される.この葉脈貴変薬は小林・許ら(10,11)がCampblell’s EaIlyにおいて,ボルトー液のCu書と しているものと同じものと思われる.本報ではこのようをことから,Cuが葉脈儲変菓の発現に及ぼす影響を究明す るために,新梢の切枝およびさし木幼木を用いて,CuSO4溶液で水耕を行をって観察した結果を報告する. 本報の実験に関して,ご懇篤篭るご教示を賜わった京都大学教授小林章博士ならびに香川大学教授葦沢正義博士に 対して,深甚の謝意を表する.なお本報の要旨は園芸学会昭和45年皮秋季大会において発表したものであり,さら に本報は京都大学審査学位論文の山部である. ⅠⅠ材料および方法 A 新栴切枝にこよる実験 (1)Cuによる葉脈の変色状態の観察 1969年9月10日にCampbell’s Earlyの新杓を切採り,それをOLr2%CuSO4・5H20液,0.4%KH2PO4液およ び水(イオン交換水)に挿し,2日後,4日後に葉脈の変色状態を観察した. (2)KH2PO4溶液を吸収させた後に,CuSO4溶液に挿した場合の,葉脈の変色状態の観察 前項と同様に切枝を採り,前処理として2日間,水(イオ・ン交換水)および04%KH2PO4液に挿したのち,後 処理としてそれぞれを0。2%CuSO。・5H20液に挿し,2日間Cuを吸収させて,葉脈の変色状態を比較観察した. (3)CuSO。溶披に挿し,薬面を湿潤状態にした場合の,葉脈の変色状態の観察 前と同様に採取した切枝を,0れ1%CuSO4・5H20液に挿し,尭面を朝・夕散水によって湿潤状態にした区と,室 内で自然放任の下において葉面を乾燥状態にした区を設け,2日間Cuを吸上げさせて,葉脈の変色状態を比較・ 観察した. (4)尭内のP含蓋および微蓋要素含並の分析 前(1),(2)の試料について,処理2日後と4日後に,菓内のP合農をバナドモリブデン此色法(1る),微虫要素 (Mn,Fe,Cu,Zn)食品を原子吸光法(18)によって分析した. (5)MnSO4溶液に挿した切枝との比較 1970年9月15日に新梢の切枝を採り,英数を6枚ずつとし,0・2%CuSO4・5H20 液を対照として,0.2% MnSO。・4H20液に挿し,3日間おいたのち,葉脈の変色状態を比較・観察した。 B さし木幼木による水耕実験 (1)CuSO4溶液の水耕法 1970年6月1日∼9日までの間,Campbell’sEarlyのさし木発根の幼木を用い,1L容のど・−カーにて壁面および 上面を遮光し,第1表に示す各種池度のCuSO4・5H20溶液にて,連続通気によって水耕した.水耕の方法は第1図 のような装置で,室内で行をった・ (2)葉脈黄変輩の発現経過および根の状態観察 前項第1表に示す前処理および後処理において,毎朝・夕,水耕装置の調節を行をうとともに,薬脈黄変薬の発現

(2)

第1図 さし木幼木を用いたCuSO4溶液の水耕実験の方法 第1表 さし木蘭に対するCuSO2溶液水耕の試験区と水耕液のpH 試 験 区 水耕液のpH 前 処 理 後 処 理 CuSO4・5H20 2000ppm液にて通気水耕 70時間,水(イオ 〝 1000 〝 ン交換水)にて通 〝 500 〝 気水耕 〝 100 〝 〝 50 〝 水(イオン交換水) 〝 4 00 2 0 8 0 9 1 一隻 6 8 5 ・ヰ 5 5 ﹁P 5 1ト CuSO4・5H20 2000ppm液にて通気水耕 70時間,0.1%の 〝 1000 〝 KH2PO4液にて 〝 500 〝 通気水耕. 〝 100 〝 〝 50 〝 0い1%KH2PO4液 ” 00 5 3 0 1 1 3 4 7 1 3 7 4︻ 4 4 呂“5叫・4 注:pHの測定は束唖電波工業KK・製の携帯用ガラス電極pH計DM−IA塑によって 行なった. 経過,発現葉数ならびに根の状態を観察した・ (3)DiphenylCarbazide溶液による斐柄と葉脈内のCuの定性的観察 後処理のCuSO。・5H201000ppm区における葉脈黄変尭について,♯柄(中央部付近)と葉脈(中央主脈の基部 付近)の横断切片を,DiphenylCarbazide溶液(1%アルコール溶液10:水10)で,約30分間染色し,蒸溜水1 :グリセリン1液にてプレパラ1−・トをつくり,救微鏡下でCuの存在を定性的に観察し(絢,対照として水(イオ■ン 交換水)だけで水耕した区のものと比較した“ (4)茎葉内のCu含蓋の分析 各区の試料について,後処理水耕の5日後に,茎葉内のCu倉見を原子吸光法によって分析し,それぞれを比敬 した。

(3)

ⅠⅠⅠ実 験 結 果 A 新輪切枝による実験 (1)Cし1による秦脈の変色状態 新棉切枝を0い2%CuSO4・5H20液に挿したものは,2日後,4日後ともに第2図のように,各井の葉脈が褐色ま たは紫褐色に変色し,とくに基部紫では葉身が暗褐色を呈し,萎凋・枯死したい これに対して,水(イオン交換水) に挿したものと,0.4%KH2pO4液に挿したものでは,まったく異状を認めをかった‖ (2)KH2PO。溶液を吸収させた後に,CuSO4溶液に挿した場合の,葉脈の変色状態 前処理として,0・4%KH2PO4液に挿したものと,単に水(イオ・ン交換水)のみに挿したものを,それぞれ後処 理として0い2%CuSO4・5H之0液に挿したところ,水→CuSO4・5H20液の場合には,前項(1)の場合と同様に2日 日には葉脈が変色しはじめ,基部菓ではとくに英身がはをはだしく変色した. しかし,KH2PO。液→CuSO4・5H20液の場合には,第3図のように2日目ではまだをんらの変化も現われず,4 日日ごろになっで基部薬がわずかに変色した程度であった. 第2図 CaSO4液に挿した切枝の葉脈の変色と基部 第3図 KH2PO4溶液→CuSO4溶液に挿した場 其の状態 合の葉脈の変色状態 (3)CuSO4溶液に挿し,莫面を湿潤にした場合の,葵脈の変色状態 0・1%CuSO。・5H20液に切枝を挿し,葉面を乾燥状態に保ったものと,朝・夕に薬面散水して基面を濡らした状 態にしたものの,両者における糞脈の変色状態を比較すると,葉面を湿潤状態にしたものでは,恭面がつねに乾いた 状態にお小たものにくらべて,尭脈の変色がヤヤ早く現われ,その程度もより進んだことが認められた,. (4)案内のP含量および微意要素含盈 前(1)の実験試料について,案内のP含患および微塵要素含量を分析した結果は,第2表のとおりである.

(4)

第2表 水耕の処理日数と葉内のPお・よび微嵐要素合鼠 (乾物乗当り) P Mn Fe Cu Zn % ppm ppm 水 0.297 64

ppm ppm 254 95

90 0…4%KH㌔04液 0,.459 96 285 73 98 0.2%CuSO4・5H20液 0.230 85 295 785 93 2日間 処 理 水 0.319 71 250 170 123

04%KH2pO4液

0674 79 235 108 91 02%CuSO4・5H20披 0.275 110 245 2040 103 4日間 処 理 すなわち,04%KH2PO4液に挿したものでは,薬内のP含嵐が高く,Cu含歳が少をかった・これに対して0い2% CuSO4・5H20液に挿したものでは,Cu含羞がいちじるしく高かった・ つぎに,前(2)の実験試料について,燕内のP合理・と微嵐要素含蒐を分析した結果は,第3表のとおりである・ 第3表 処理液の変更と葉l句のPおよび徹さ遣要素含嵐 (乾物恵当り) P Mn Fe Cu Zn % ppm ppm ppm ppm 水→0.2%CuSO。・5H20液 0け253 69 240 1080 120 0=4%KH2PO4液→0.2%CuSO。・5H20液 OL.576 83 215 955 115 すなわち,前処理として0.4%KH2PO。液に挿し,Pを先行吸収させておいたものを,後処理として0い2% CuSO。・5H20液に挿したものでは,葉内のP含羞は高くをるが,Cu含嵐は多くならないことが認められたい (5)MnSO4溶液に挿した切枝との比較 0.2%CuSO。・5H20液と0.2%MnSO4・4H20液に,それぞれ切枝を押し葉脈の変色状態を比較したところ,第4 図に示すとおりであった・すなわち,CuSO4溶液に挿したものでは,明らかに前(1)の実験と同様な葉脈の変色が 認められた.これに対してMnSO。溶液に挿したものでは,まったく共に異状を認めなかった− 第4図 CuSO.溶液およびMnSO。溶液に挿した切枝の葉脈変色状態の比較(1970年9月)

(5)

B さし木幼木による水耕実験 (1)葉脈黄変薬の発現経過と根の状態 前処理として70時間,水(イオ■ン交換水)および0・1%KH2PO4放で通気水耕を行なったが,この期間には各 区とも異状をみることをく経過したい しかし,後処理においてはCuSO4溶液の濃度の違いによって,斐脈黄変葉の 発現靂過とその程度が異なった すなわち,水→CuSO4。5H202000ppm区では,2日削こは基部菓から順次葉脈の変色がみられ,4日目には薬の 枯死が始まり,その後次第に上位蔑が黄変,枯死した・また,水→CuSO4・5H20100ppm以上の濃度の各区では, 4日目には基部其の葉脈黄変がみられ,5日目には水→CuSO4・5H2050ppm以上のすべての各区において,葉脈の 黄変がみとめられた これに対して,前処理として0・・1%KH2PO4液で水耕し,後処理のCuSO4溶液に移したものでは,CuSO4・5H20 100ppm以上の各区で黄変繋が発現した・しかし,これらの黄変薬はかならずしも水→CuSO4溶液で水耕した場合 のように,葉脈の黄変によるものばかりではをかった・ 後処理開始後5日冒における,各処理区の讃変柴の発現状態ならびに根の状態は,第4蓋および第5,6図のとお りである、 第4表 さし水鶏に対する CuSO4溶液水耕による哉変薬の発現状態 (5日間処理.) 枯死・黄変薬 の発現割合 試 験 区 枯葉 死数 黄葉 変数 前 処 理 後 処 理 CuSO。・5H20 2000ppm液 1 1 2 3 9 9 7 7 7 6 4 4 2 0 58 3 46い1 44 4 44.4 28‖5 0 70時間,水(イ 〝 オ■ン交換水)に 〝 で通気水耕い 〝 ′′ 1000 〝 500 〝 100 〝 50 〝 水(イオン交換水) CuSO4・5H20 2000ppm液 1 0 8 8 0 2 9 1 1 4 3 3 1 0 0 4 3 3 1 0 0 4 3 3 1 ︵u 7︰7 人u 0 5 5 0 0 0 70時間,0..1% 〝 KH2PO4液に 〝 て通気水耕・ 〝 〝 1000 〝 500 〝 100 〝 50 〝 0い1%KH2PO4液 すなわち,水→CuSO4・5H20液では,50ppm以上の各区で尭脈粛変薬お・よび枯死葉がみられ,CuSO4溶液の池 度が高いものほど,それらの発現割合が高いことが認められたぃ 前処理としてKH2PO4溶液で水耕し,後処理とし てCuSO4溶液に移したものでは,CuSO。・5H20100ppm以上の各区において費変葉が発現した。しかし,水→ CuSO4・5H20彼の場合にくらべると,式変葉の発現割合は低かった. ついで,これらの水耕実験における根の状態を観察したところ,前処理期間は各区とも差異がなく,白色の正常根 であった1後処理においては(第5図参照),水のみで水耕を続けた区と0・1%KH2PO。液で水耕を続けた区では, 正常な新根の発生と伸長が認められたが,CuSO4溶液の各区の細根は,日時の経過とともに,黒変・枯死し,次第 に太い根も褐変した. (2)DiphenylCarbazidc溶液の染色による,葉柄・尭脈内のCuの観察 水→CuSO4・5H201000ppm区および水→水区における葉柄と葉脈の横断切片を,DiphenylCarbazide溶液に よって染色・検鏡したところ,第7,8図に示すように,水→CuSO4・5H801000ppm区の葉脈黄変葉(第6図参 照)では,維管束の部分に赤紫色の染色部分があり,Cuの存在を認めた・これに対して,水→水区ではCuの存 在を認めることはできをかった.

(6)

第5図 さし木幼木に対するCuSO4溶液水耕による黄変葉の発現と根の状態 上図水からCuSO4溶液に移した区 下図01%KH2PO4溶液からCuSO。溶液に移した区 ( ゝ 二 )

(7)

第6図 水→CuSO。・5H201000ppm区における葉脈黄変菓の 発現状態 (3)茎葉内のCu含盈 後処理としての水耕開始5日後における各区の,茎柴内のCu含羞を分析した結果は,第5真のとおりである. すなわち,前(1)めように水→CuSO4・5H20液の場合は50ppm以上の各区において,また,0・1%KH2PO4液 →CuSO。・5H20液の場合には100ppm以上の各区において,それぞれ葉脈の黄変奏の発現がみられた.これらの 黄変薬の発現と茎尭内のCu含意との関係をみると,本実験の場合には,茎葉内のCuがおかむね40ppm以上の 含有が認められた.また,水耕液のCu此度との関係においては,その温度が高くなるに伴なって茎尭内のCu食 通も高くなっているが,CuSO4・5H202000ppm区のように,薬が枯死するほど高濃度の場合には,意外にも茎葉内 のCu含通が少をかった.これは細根が早くに侵され,Cuの吸収が急速に失なわれたものと思われる. 第5表 CuSO4溶液水耕後における茎紫内のCu含蒐 (乾物垂当り) 試 験 区 試 験 区 処 理 一↑−一一一 C厄含羞 Cu含羞 前 処 理 後 前 処 理 後 処 理 m p p5 0 3 0 4 4 1 3 2 ︵0 2 1 2 1 04 p▲ ,

蛸耕

朋m 70 01液水 m p p5 5 5 3 0 9 4 6 6 只︶ ■4 1 3 1 液 CuSO4・5H202000ppm液 〝 1000 〝 〝 500 〝 〝 100 〝 〝 50 〝 0.1%KH2PO4液 CuSO4・5H202000ppm 〝 1000 〝 〝 500 〝 〝 100 〝 ′′ 50 ′′ 水(イオン交換水) 70時間,水 (イオ・ン交 換水)にて 通気水掛・

(8)

(維管東部に赤紫色の染色部が認められる) 第7図 葉脈黄変葉の葉柄・葉脈内のCuの有無検鋭

(9)

(Cuによる染色部が認められない) 第8図 正常薬の葉柄・葉脈内のCuの有無検鏡 水→水区;上葉柄,下斐脈 ⅠⅤ 考 察 Cuは植物の生育に必要を必須元素(8,9′19・28・34)とされており,植物体内の酸化・還元をつかさどる酵素の相成 分(8,28,28・84)となっている.また,Cuが植物に有事であるということは,CuSO。・5HBOが除草剤ヤ殺藻剤(1,絢 と して使用されていることヤ,銅鉱山付近の鉱毒地土壌のCu過剰症(2,19r20)があげられる.さらに,Cuが農梁上重 要なことは,ボルドー・液をはじめCuを臆料とした多くの殺菌剤(1′29・抑として使用されていることである.しかし, 近時,果樹栽培においてCuの欠乏症(4,26・町81),過剰症(2,5)をはじめ,ボルドー彼のCu書眈11′21・22,24)などに ついて再認識され注目されつつある. ボルドー液および銅製剤などのCuは,水に不溶性の形である(1・82,29)が,植物体上では植物の分泌するCO2,有 機酸,空中のCO2,降雨・水滴などによって,可溶性のCuを遊離し,それが組織・細胞中に浸透して薬書を生ず る(10・21,22,別,25・27,83) .をお,これらの報告や記述によると,ボルドー液の散布された菜や,新杓に現われるCu審 の徴候は(19・22,25,27),果樹の種類,発育状態(とくに葉齢),被零の程度によって異覆る.すなわち,葉面では葉脈

(10)

問に黒色の斑点を生ずるもの(カキ,ブドウ),紫褐色または紫斑を生ずるもの(モ・モ,ナシ),また,葉脈が黒褐す るもの(ナシ)などがあげられている.筆者がビニ・−ル被覆栽培のブドウ囲で観察したもの(12)で軋葉面に紫褐色 の不正形な斑点であったが,本実吸において,ブドウの新杓切枝をCuSO4・5H20溶液に挿した場合に,尭脈が紫褐 色ないし黒褐色に変色したことば,島村(25)が観察Lたナ・シのCu審における葉脈の黒褐変と類似するものと思われ る・また,新梢切枝をCuSO4溶液に挿し某面を湿潤状態にした場合に,葉脈の変色が早くその程度が進んだこと は,斐面蒸散を促進して枝の切口より多量のCuSO4液を葉内に吸収した結果であろうと思われる. KH2PO4溶液を先きに吸収させた後に,CuSO4溶液に挿した切枝において,尭脈の変色状態がはなはだ軽微であ ったことは,前報(16トで述べたように,菜内のP含量とCu含盈との相対的関係からみて,PがCuの吸収を抑制し たためであると考えられる.この点は,前田(川が述べているように,Cuの吸収を悪くする要素としてCa,N,Fe, Pなどがあげられ,Cuの吸収ヤ体内移動を助けている要素としてK,Mn,Znなどがあげられていることからして 推察にかたくない.さらに本実験のうち,新杓切枝の供試料について,後処理の実験後に案内のPと微塵要素含量を 分析した結果よりみても,たしかにKH2PO4液に挿Lたものでは,いずれも葉内のP食塩が高く,Cu含量が低か ったことからも証明づけられる. 新棉切枝をMnSO4溶液に挿した実験は,前報(1る)の実験において,湛水処理区における基部案内のMn含意が 高くなったこと,をらびにMn過剰が温州ミカンの異常落葉の原因である(る,5,6・7・18,32〉 とされていることに対する Cuとの比較である.この実験において,MnSO4溶液に挿したものでは,薬になんらの異状変化を認めなかったの は,Mnの濃度が低すぎたのか,Mnが切枝に吸収され孜かったのか,種々の疑問が考えられるにしても,CuSO4 溶液と MnSO4溶液との対比において行なった実験であり,おそらく Mnは葉脈の変色を起こさせるものではない という見解が正しいものと思われる. つぎに,さし木幼木をCuSO。溶液で水耕した場合に,その基部葉に英脈の黄変をみたことは,はなはだ興味ある 結果である.すなわち,小林・計ら(10)が,ボルドー液のCu書として認めた葉脈費変薬と同じ徴候であるが,これ が切枝による観察の場合と同様に,Cu溶液が枝部を経て,いわゆる地下部から吸収・移動した状態にお小ては,・一・ 般にボルド・−・液散布による薬害徴候とされているものとは異なった後備としての葉脈の変色(黄変)がみられたこと である. さし木幼木による実験では,切枝による実験とは異なり,ほとんどが根から吸収したCuが葉に移行したもので あって,根においてCuが吸収されてから体内を移行し,葉脈の変色が発現するまでの間に,植物体内の有機・無 機の各種成分あるいは酵素などが,直接・間接に相互関与し,または緩衝的作用もあって,切枝による実験の場合の ように,短時間に強烈な変色徴候を示さなかったものと思われる. Cuによって葉脈が黄変することについては,小林・許ら(10・11)が述べているように,薬内に浸入したCuが,そ の集敬の比較的多いとみなされる葉脈の部分において,タンパク貿合成酵素の活性を低下させ,斐内に入ったCuと 稟内のSH基との結合によって過剰酸化が行われ,葉緑素の脱色を促進するためであると考えられる. 果樹の薬ヤ新将に現われるCu蕃の徴候ヤ程度は,種々の条件によって異なり,Cuが植生を著する池度は,作物 の種類,Cuの供給状態によって異なる.水稲におVr{(19・M)水耕ではCu5ppmでも生育を阻著するが,土壌中に おいてはCu75ppmまではほとんど著作用がをいことが認められている.本実験の場合には,水→CuSO4・5H20 液において50ppm以上の各区で,また0・1%KH2PO。液→CuSO.・5H20液の場合には100ppm以上の各区 で,葉脈黄変尭が発現した.この場合に,これらの茎葉内Cu含量の分析結果ならびに前報(16)の某脈変奏の業内要 素の分析結果が示すように,葉脈黄変数では薬内のCu含丑が,およそ350ppmを超えたことなどからして,葉脈 の黄変には秦内のCu食塩が約40ppm以上になるものとみられる.しかし,すでに前報(16)で述べ,また本実験の 0り1%KH8PO4→CuSO4・5H20液の場合のように,葉脈の黄変には単に薬内のCu含量のみならず,案内のP含丑 が相対的に関係することを無視することはできない. 本実験によって,Cu溶液が枝を経て,彼の切口または根から吸収された場合には,薬面からCuが浸入した場合 とは異をって,柴脈黄変の薬害徴候を示すことが確認された..なお,Pが先行吸収されたときには,尭脈黄変薬の発 現が抑制されることが明らかに認められたことは,さきに報告した(15)Pを含む葵面面散布斉けの利用とあわせて,は なはだ興味ある現象であり,葉脈黄変薬の発現防止の対策を示唆するものであると考えられる.

(11)

Ⅴ 摘 要 Campbell’s Earlyの新梢切枝とさし木幼木を用い,硫酸銅(CuSO4・5H20)溶液で水耕し,Cuの吸収による葉脈 の変色状態と葉脈黄変葉の発現状態を観察した. 1.新梢切枝を0い2%CuSOl・5H20液に挿したものでは,斐脈が紫褐色または黒褐色に変わり,基部菓は暗褐色 を呈し,萎凋・枯死した. 2.さし木幼木をCuSO4・5H20の50∼2000ppm溶液で水耕した場合に,各区に葉脈貴変菓が明瞭に現われた. 3.切枝およびさし木幼木を,あらかじめリン酸一・カリ(KH2PO。)液を先行吸収させたものでは,黄変菓の発現 が少なく,葉脈の黄変は不明隙であった. 4.葉脈黄変葉の葉柄と葉脈の切片を,DiphenYICarbazide溶液で染色L,検鏡L・たところ,維管束部にCuの 存在を認めた. 5.共脈が黄変した茎葉内にはCuが40ppm以上存在した.そうして根から吸収したCuによって,井脈黄変 英が発現することが確められた. 文 (1)福永一夫:農薬ハンドブック,96,日本植物防 疫協会(1968)・ (2)藤沼善亮:微盈要素の施用とその過剰審,農及 園,44(8),1201∼1204(1969)∩ (3)浜口克巳:ミカンの異常落葉の原因と対策,腿 及園,38(3),483−484(1963). (4)石原正義,山田峻−・,佐藤公一・,下迫勇助,柳 瀬 胎,渋谷久治,寺岡裁一・ :カンキツの銅欠 乏に関する研究(第1報),銅欠乏診断法につい て,園芸学会研究発表要旨(春季),68−69(1970)・ (5)石原正義,横磯 久,長谷嘉臣,金野三治,佐 藤公一・:温州ミカンの異常落莫に関する研究, Ⅰ 温州ミカン異常落葉周の実態調査ならびに 葉および細根分析,園試敵A川,55”98(1970)u (6)岩本数人‥温州ミカンの異常落葉症について, 虚及園,36(12),1971”1972(1961)い (7)神富久速,欠島邦康,浜口克巳:温州ミカン異 常落葉園の現地調査,園学雑,さ7(1),51∼56 (1968). (8)小林 章:果樹園芸経論,環境・結実・栄養編… 315”325,東京,養賢堂(1954)・ (9)小林 章:果樹の栄養生野,46”53,東京,朝 倉書店(1958)。 (10)小林 章,許 唱鞄,兼松信夫,浜田恵山;ブ ドウ 〃キャンベル・アーリーー”葉におけるボル ドーー・液の薬害に関する研究(第1報),英奮発生 と銅固着盈,溶解盈におよぼす降雨ならびに葉 内成分の時期的変化,園芸学会研究発表要旨(秋 季),70”71(1969). (11)小林 章,許 唱範,兼松信夫,浜田憲一・:ブ ドウ 〃キャンベル・ア・−リー”葉におけるボル ドー液の薬審に関する研究(第2報),薬審発生 と菓内SH基との関係,園学会研究発表要旨(秋 季),72−73(1969). 献 (12)樽谷 勝:ブドウの早期落葉に関する研究,Ⅰ キャンベルス・アーリー一種の早期落葉の実態, 香川大農学報,18(1),103−108(1964). (13)樽谷 勝:ブドウの早期落莫に関する研究,Ⅵ 新栴基部薬の黄変・落葉に及ぼす案内要素含盈 の変化,香川大農学報,22(2),123”134(1971). (14)柏谷 勝:ブドウの早期落葉に関する研究,Ⅶ 新柏基部薬からの32Pの吸収・移行について, 香川大農学報,22(2),135”141(1971)■ (15)柏谷 勝:ブドウの早期落莫に関する研究,Ⅷ 集面散布剤による梅雨期落葉の抑制効果につい て,香川大鹿学報,23(2),241−245(1972)・ (16)樽谷 勝:ブドウの早期落葉に関する研究,Ⅸ 梅雨期における莫脈黄変糞の菓内要素成分につ いて,香川大農学報,24(1),97・一103(1972)・ (17)前田正男:原色作物の要素欠乏・過剰症一診断 と対策,束京,農山漁村文化協会(1969)・ (18)森本拓也,西場静雄,石崎博一:温州ミカンの 微盈金属元素の過剰に関する研究,園芸学会研 究表発要旨(秋季),84′・■85(1970)・ (19)三井進午,今泉吉良:原色図解作物の要素欠乏 一診断と対策,東京,博友杜(195句. (20)三井進午:植物栄餐と肥料の研究(三井進午博 士論文選集),東京,養賢堂(1970)・ (21)中沢雅典:石灰ボルドー液の散布時刻と薬書の 発生(予報),戯及園,15(句,1752”1753(1940) (22)大崎 守,松尾 平,飯田 実;葡萄キャンベ ル,アー・り一−・に対する石灰ボルドウ液の英審に 関する研究(第1報),園学雑,24(3),149− 154(1955). (23)尾崎 滑:植物の栄沓と診断,74−122,束京, 高陽書院(1962). (24)島村和夫:ナ・シの葉におけるボルドー液の銅書 発生機構に関する研究,岡山大農付属農場,

(12)

1∼61(1969). (25)島村和夫,逸見浩昭:ナシの葉におけるボルド 一波の銅審発生機構に関する研究(第1報),銅 審の発生と葉の外部形態ならびに被審部の顕微 鏡的観察,園芸学会研究発表要旨(秋季),68” 69(1969). (26)下迫勇助:温州ミカンの銅欠乏,果実日本,24 (8),44′−46(1969)い (27)鰍_L値儀:ボルドー合剤散布による薬剤と降雨 との関係について(予報),関学雑,川(3),226” 279(1939). (28)高橋英一・,谷田沢道彦,大平率次,原田登五郎, 山田芳雄,田中 明:作物栄養学,100〝140, 180∼186,束京,朝倉書店(1969). (29)田中彰一:農薬精義,37”76,東京,養賢堂 (1957). (30)上野武夫,辻本敬†,柳瀬 騰,渋谷久治:温 州ミカンの銅欠乏症に関する研究,園芸学会研 究発表要旨(秋季),82”83(1970).. (31)渡辺登志彦:ハツサクの銅欠乏症とその対策, 果実日本,24(9),60”62(1969). (32)山田正純:香川県におけるミカンの異常落葉に 関する研究,農業技術,20(5),238∼240(1965). (33)山本 亮:新農薬研究法,549∼566,東京,南江 堂(1958).. (34)山崎 伝:微塵要素と多量要素,土壌・作物の 診断・対策,東京,博友杜(1966).

STUDIES ON THE DEFOLIATION OF GRAPE VINES IN THE SUMMER SEASON

X The Efftct ofCu SolutionupontheAppearanceoftheLeaves

OftheTurnlng−yellowVein,−anObservationontheCurr・entShoot

andtheRootedCutting

Masar・u KuRETANI

SⅦmmaγy

BoththeabsorbedamountofCuandthecolorl・ChangeOfveinwereexaminedbyputting・both

the curTent Shoot and the rooted cuttlng Ofthe Campbell,s Earlygrapeintothesolutionof

CuSO4・5H20

1・ByputtingthecurrentshootintoO…2%solutionofCuSO4・5H20,thecoloroftheveinwas Changedintoeitherpurple−brownorblack−brownandthebasalleaveswerewitheredwithdark−

browncolor,andthendied

2・By culturlng the rooted cuttlng With each solution of50−2000ppm concentrate of CuSO4・5H20)theye1lowlngOfveinwasappearedclearlyineverysectionexamined.

3・Inthecase ofabsorbing thesolutionofKH2PO4befbrehandinto both thecurrentshoot

andtherootedcuttlng,theleavesofyellowedveinwasappearedftw)andtheyellowlngOfvein was not distinct

4・Bydyeingthepiecesofpetioleandtheveinof−theleavesoftheturnlng−ye1lowveinwith

thesolution ofDiphenylcarbazide,thedyedsampleswereexamined microscopically”The

CuPperWaSfbundinthevascularbundleof.thesamples

5uItwasfbundthatthecontentofCuintheshootofyellowedveinwas4Oppmormore

Andalsoitwasrecognizedthattheappearanceoftheleavesoftheturnlng一yellow veinwas

CauSedbythecupperabsorbedfiOmrOOt

Updating...

参照

Updating...

関連した話題 : GLUT4 発現に及ぼす影響