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「構造改革」とは何か。小泉政権はそもそも政策の何たるかをよく理解していないのではないか。(<特集>小泉構造改革を採点する)

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(1)

「構 造 改 革」とは何 か。小 泉 政 権

はそ もそ も政 策 の何 たるかをよく

理解 して い ない ので はないか。

姥 名

保 彦

(新潟経営大学教授)

●論ずべき

3

つの点

3つの論 点 とは、 (イ) 「構造改革」とはそもそ も何 か (ロ) 「小泉構造改革」は果た して政策の名 に 値す るのか (ハ)-構造改革論 の限界 について である。

構造改革」とは何か

「小泉構造改革」論 は、そもそも改革のタイムスパ ンが不 明確 である。短期改革論 であるならば、そ の中心 は金融 ・為替 ・景気 など専 ら当面の景気動 向 に関わる問題 をどうす るのかという点 に焦点が 絞 られることになる。その場合、最大の課題 は、い うまで もな く不 良債権処理 問題 であろう。 中期論 の場合 には問題 はそう単純ではない。日 本経済の停滞の原 因を明確 にしなければならない か らだ。その点については、2つのアプローチがあ る。一つ はディマ ンドサ イド・アプローチである。 停 滞の原 因を需要不足 に求めるのだから、当然需 要拡大 こそが 日本経済再生のカギだとい うことに 6 なる。いわゆるケインジアンの主張である。これに 対 してサ プライサ イダーの立場 に立 てば、停滞原 因は供給力不足 にあると観 るわけだから、処方篭 も当然供給力強化 に求められるべ きだとい うこと になり、需要拡大 は無意味であるのみならず供給 力 を脆弱化 させ るので逆 に有害だということにす らなる。そこで両者 は構造政策 に関 して見解 を異 にするのみならず当面の景気政策についても相対 立 するスタンスを採 ることになる。 い うまで もなくケインジアンは、あらゆる手 だて を講 じて景気刺激 を行 うべ Lとす るの対 して、サ プライサ イダーはそ うした景気刺激策に真 っ向か ら反対 するだけでなく、景気後退は産業 ・企業再 編成 を加速 させ、む しろ日本経済再生 にプラスだ とさえ密か に考 えている。だが、日本経 済停滞 の 主 因は投資停滞、す なわち投資機会不足 にあると する見解 にたてば、両者の議論 の不毛 さが明らか となる。投 資機 会不 足 は明 らかにサ プライサ イド の問題 であるが、乗数効果論が教 えるように投資 は同時 に最 も重要な需要要因でもあるか らだ。し たがってこの場合 には、中期論の最大 の課題 は投 資政策 にあるということになるが、「構造改革」に おけるこの点に関する論点整理の不充分 さも小泉 構造改革論 の迷走 に繋がっているといえよう。 長期論の観点に立てば、日本の経済社 会の展望 とあ り方論抜 きには経済構造改革などはそもそ も 意味がないということになる。少子高齢 化社 会へ の対応一つ考 えても、それは単 に経済 だけではな く社会のあ り方にも深 く関わっている問題 であ り、 したがってそれは社会改革を伴 わない単 なる経済 構造改革論 では到底対応 できないからだ。 以上 から明らかなように、レト泉構造改 革」混迷 の根 因は、小泉版 「構造改革」におけるタイムスパン が暖味であり、したがってそこで唱えられている「構 造改革」とは一体何 を指 しているのかがそもそも不 明確であること、その結果 「構造改革」の下 で取 り上 げられる個 々の政策の位置づけや意味 づ けもまた 不 明確 とならざるをえないこと、にあるといえよう。

(2)

構造改革」は果たして政策なのか

構造改革論 云々は別 にしても、政策論 において も「小 泉構 造改革」はいかがわ しさを払拭 で きな い。周知 のようにグローバ リゼーションは

IT

化 を 伴 いつつ市場競争 を激化 させている。こうした市 場競争 の激化 は産業再編成 や企業再編成 を加速 させてお り、そ うしたなかで企業改革が迫 られて いる。その意味では、構造改革は既 に市場 メカニ ズムの下で否応 なく進展 しているのであって、こ の場合、政策 とはむ しろこうした企業改革 を軟着 陸 させ ることにあるはずだ。 それに対 して 「小泉構造改革」の下での 「政策

は逆行 しているといわなければならない。それは、 む しろそうした市場競争の激化 を促進 し企業の整 理 ・淘汰 を加速する役割 をす ら果 たしていると国 氏- とくにそうした整理 ・淘汰の対象企業が多 く 立地 している地域 の人たち- の目には映る。どう してこうした倒錯 が生 じるのか。それは小泉政権 が そもそも政策の何 たるかをよく理解 していない か らだ。 ここで い う政策 とは、そもそもグローバ リゼー ションと国民経済 との間の緊張関係 を調整するこ とを指 している。そ うだとすれば小 泉 政権 の 「政 策」といえども、それが曲が りなりにも政策 と銘打 つ以上最低 限そうした役割は果たすべ きである。 したがってその重点は、産業再編成 ・企業再編成 の促進や企業の整理 ・淘汰ではなく、再編成 や企 業改革に対応 しきれない中小企業や零細企 業-今 なお国民経済の主体 はこうした企業であ りしか もそれ らの多 くが産 業集積 地域 に依拠 している - の軟着陸に対する誘導政策に置かれなければ ならない。

●一国構造改革論の限界

小泉政権 におけるこうした政策認識の欠如 は、 同政権が グローバ リゼーションと国民経済 との関 係 について明確 な認識 を持 ち合わせ てはいないと い うことに起 因 しているが、そ うした認識不足 は 単 に小 泉政権 ばか りではない。それは 日本 の与野 党 を通 じて共通 に観 られる現象だ。正 に 日本 政治 の積年 の病弊 というべ きであろう。そこで、グロー バ リゼーションの下での国民経 済のあ り方 につい て考 えることは、日本経済の再生のみならず政治 の再生 にとっても不可欠である。紙数の制約 もあ るので、その点 に関する私見 を以下で簡単 に述べ てお く。 それは、アジアとの 「共生」とりわけ地域 におけ るアジアとの 「共生」に立脚 した経 済構 造改 革論 を改 め て提 起 す ることで あ る。そ の場 合 、⑦ グ ローバ リゼーションの下での 日本経済の 自律 的発 展 を目指すこと、㊥ そのために国民経済 としての 「深化」を如何 に計 るのか- すなわち内包 的発展 と外延的発展 を如何 に融合 させるのか- という視 点 を重視すること、0 同時 にその深化 はアジアと の 「共生」を不可欠 としていること、㊤ アジアとの 共生 を 日本 の新 産業形成及 びそれ を通 じての 中 期投資機会創 出- とりわけ産業集積地城 における 新産業形成 ・投資機 会創 出一 に結 びつけること、 ㊥ 中期投資機会創 出のための誘導政策 とりわけ 積極 的地域産業政策 (注)を推進 す ること、などが 必 要であろう。 (注) 因みに積極的地域産業政策 とは、(D地域 におけ る新産業 ・新事業創 出、(参上記のための地方 レベ ルでの産学官プロジェクト、③海外 における知的資 源 との提携 による地域研究開発力強化 、④ 海外企 業誘致による地域就業機会確保、⑤ 地域 における ベ ンチャー資本形成 とベ ンチャー企業育 成、⑥IT などのインフラ整備 と割高で非効率なインフラの改 善、⑦ 地域高等教育政策の確立、などで あろう。 7

参照

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