• 検索結果がありません。

日本語教育の現状と問題点の考察--香川大学の場合---香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本語教育の現状と問題点の考察--香川大学の場合---香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
25
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本語教育の現状と問題点の考察

一香川大学の場合−

友 沢 昭 江 1 はじめに 昭和62年4月から,香川大学において外国人留学生を対象とした日本語講座 が開講された。近年,日本国内のみならず,海外においても日本語教育に対す る関心の高まりは目を見張るものがある。 「国際化」の流れの中で,留学生の数ほ着実に増加している。「21世紀へ・の留 学生政策懇談会」の提言によれば,来世紀の初頭において10万人の留学生の受 入れを想定し,そのためのガイドライン及び学生の増大に対応して講ずべき基 本的な方策を検討するとある。10万人という数字がどのような根拠に基づくも のであるのかについてほあきらかではない。またそれが果たして実現可能かど うかについてほ,これまで日本語教育の現場で働いてきた老としては,悲観的 にならざるをえない。 しかし政府は「留学生政策は,文教政策,対外政策の中心に据えてしかるべ (1) き重要国策の−・つである」として自らの最大限の努力とともに,大学を初め, 関係機関に対しても,効率的且つ迅速な留学生の受入れ体制の整備を期待して いる。また,留学生の6割が関東地区に集中している現在,今後は大都市集中 を少なくし,各地域に拡散させるとの意向もあり,香川大学の任も益々大きく なることは必至である。 (2) 日本語学習熱の高まりと共に,「日本語教員の養成と確保ほ緊急の課題」と なった。これに関連して,昭和63年1月末には,第一・回目の日本語教育能力試 験が行われることになっている。これを機に,専門職としての日本語教員を認 定し,専門性を確立すると同時に,待遇の改善や,その社会的地位の向上を促

(2)

友 沢 昭 江 188 そうとの動きがある。 また国立大学に日本語教員養成のための課程の設置が可能になり,これまで に筑波大学や東京外国語大学など八つの大学で学科の新設(主専攻課程)や講 (3) 座の増設(副専攻課程)が行われた。香川大学の教育学部でも,昭和64年度か らの副専攻課程の開講に向けての準備が始まっている。 大学のカリキュラムの中に日本語教師養成課程の組み入れがなされるという ことほ,日本語教育が専門分野として正式に認められたというだけでほない。 日本語教育が新しい視点で日本語を見ることの必要性を説き,そこから日本語 学が生まれたように,今後は外国語教育の一分野として,ここでの教育実践の 成果が,語学教育全般に.わたる教授法や分析理論の発展につながる可能性を含 んでいる。 こうした一・連の動きを概観しただけでも,日本語教育を取り巻く状況が大き く変化していることが分かる。 本論では,このような状況を踏まえながら,香川大学における外国人留学生 を対象とする日本語教育の現状を考える。主な論点ほ,1)留学生の受入れの 現状と今後の見通しについて考察する,2)アンケート調査の結果を踏まえな がら,日本語教育の現場でみられるいくつかの問題点を掘り起こし,それに対 する方策を考察する,の2点である。

2 留学生の現状と今後

2−1日本における留学生の受入れ状況と今後の見通し 文部省留学生課の統計によると,1986年5月現在,日本の大学,短大,高専 および専修学校に在学している外国人留学生の総数ほ,18,631人である。この 数は毎年増加の一・途をたどっており,特にここ5年間の上昇率にはめざましい ものがある。(図1参照) しかし,この数も主要国のそれと比較すると,極めて少ないことが分かる(図 2)。また,高等教育機関在学者に対する比率でみると,アメリカ合衆国2.9%,

(3)

52 53 54 55 56 5L7 58 59 60 61(卑)

(注) 外圧】政府派遣留学巷は、中匝】政胤 マレイシア政府及びインドネシア政府派遣留学生で ある。

(4)

友 沢 昭 江 190 ア イ 西 フ 日 メ ギ ド ラ ! 、 − (注1)諸外国の留学生数(国費による留学生数を含む。)は、文部省調べである。 図2 我が国の留学生交流の現状 外国人留学生の受入れ 主要先進国との留学生数の比較 イギリス115%,西ドイツ6い2%,フランス10。2%であるのに対し,日本のそ (4) れは0.4%にすぎない。 筆者も自ら経験したことであるが,欧米の大学にはそれこそ世界各国からの 留学生が、、うようよ、、いて,大学側の対応も手慣れたもので,特別視されるこ とほない。それに比べて日本の大学でほ,留学生は今でもやはりもの珍しい存 在であり,良くも悪くもお客なのである。

(5)

経済大国の面目に賭けても,留学生の数を増やし,先進国の仲間入りを目指 す政府の意向を反映して,2000年における10万人の受入れ計画ほ次のように なっている。それによると,毎年車均14.2%の増加を目標とし,我が国の18歳

人口が増加する1992年までを前期,減少傾向に転ずる1993∼2000年を後期と

する。前期においてほ,受入れ態勢,基盤の整備に重点を置き,着実な増加を 目指し,後期には,前期の基礎の上に立って,大幅な受入れ数の増加を見込む, とある。尚,後期についてほ,18歳人口の減少が,大学による留学生の受入れ を比較的容易に,且つスムーズに行える要田と捉えられている。日本人学生の 入学減を,留学生でうめようとの意図なのである。そうなると,留学生は特別 な一L時的滞在者としでではなく,恒常的な存在として考えられねはならない。 外国人留学生の種類は大別すると三つある。国費外国人留学生(以下,国費 生),外国政府派遣留学生(同,派遣生),私費外国人留学生(同,私費生)で ある。しかし,文部省や大学等の教育機関に.おい七は,日本政府からの奨学金 を受けているものを国費生とし,それ以外を私費生として区別している。 国費生と私費生(外国政府派遣留学生を含む)の割合についてみると,留学 生全体に占める前表の割合ほ,日本16小5%,アメリカ合衆国2%,イギリス5 6%,西ドイツ4。2%,フランス8.9%であり,日本は欧米諸国に比べて,国費 (5) 留学生の率が高いことが特徴といえる。国費生と私費生の質については即断は できないが,日本の場合,留学生数の少なさと国費生の占める割合の高さから 考えるに,自腹をきってまで私費で日本への留学を望む学生が他の国に比べて (6) 少ないといえる。 今後の方向としては,国費生と私費生の割合はト9程襲が望ましいとされ, 国費生は私費留学生の受入れの牽引力としての役割を担うものと考えられてい る。この意味するところは,現在私費生の大半を占めるアジアからの留学生の 益々の増加であり(図3・4),アジア諸国をはじめ,他の地域からの学生にとっ ても,日本の大学への留学が魅力あるものとなり,同時に日本の社会を彼らに とって開かれたものとする責務を我々は負っているということなのである。 次に,在学段階別の点からみてみよう。1986年の統計(図5)によれば,留 学生全体に占める大学院レベル在籍者の率は36.7%であるが,国費留学生に占

(6)

友 沢 昭 江 192 図3 留学生数の現状(昭和61年5月1日現在) 出身地域別留学生数 めるその割合はく“んと上がって86.6%である。しかし近い将来,私費留学生の 割合が高くなるにつれ,大学院段階の者の率は低下し,より長期間日本に滞在 し,日本人学生と机を並べて学ぶ学部段階の学生や,実学指向の強い途上国か らの学生を受け入れる高専・専修学校において学生が増加すると考えられる。 2−2 香川大学における留学生の現状 香川大学における留学生について考える前に,短期間ではあるが,筆者が留 学生教育に携わった二つの大学について簡単に述べてみたい。 筆者は,これまで大阪外国語大学と京都大学で留学生の日本語教育に携わっ た。今でこそ国費研究留学生の日本語予備教育は,日本全国の大学に分散して (7) 実施されているが,大阪外大は過去30年にわたり毎年100名から200名の留 学生の教育にあたってきた。六か月(実際は四か月足らず)の集中教育方式に

(7)

図4 出身国(地域)別留学生数

ほ成果があまり見られないとの批判も出ている。だが,長年の経験を積んだ大

勢のスタッフを抱え,短期促成教育を実施するシステムを持つという点では,

評価に値するといえよう。対象となるのは,全国の大学で様々な分野の研究を

行うことを目的として来日した,ありとあらゆる種類の学生である。浮世絵の

春画を研究する女性もいれば,囲碁に関する著書を二冊もものしたフランスの

数学者もいる。そうかと思えば,最先端のコンビュ、一夕グラフィックスやロボッ

トの研究を目的とする者も,といった具合である。

一方,留学生数では,全国一・,ニをあらそう京都大学には,現在600名を越

える留学生が在学する。その総ての学生の名前のみならず,家族構成,専門分

野などを把握し,気軽に相談にのったり,てきぱきと作業を進める留学生掛の

職員の人たちには,いつも頭の下がる思いがした。学生の多くは,大学院に正

(8)

友 沢 昭 江 194 図5 在学段階別留学生数 規生として所属し,自然科学系のみならず,人文・社会系でも,学会発表や修 士論文などを日本語で書くことを当然と考えており,そのために日本語講座の 充実は留学生の切なる希望となっている。だが,残念ながら,今のところ専任 の日本語担当教官は配属されておらず,日本語は正規の科目(代替科目)とし てではなく(学部生の一・部を対象としたものを除く),補習の形をとっている。 補習授業の一・講師としては,かれらの熱意に感心させられるとともに,対応の

遅れを遺憾に思った。海外にも知名度の高い京大には,アジアからの私費留学

生も非常に多く,勉学と生活を両立させることの難しさも教えられた。(後述す るが,私費留学生が正規学生として日本の大学に入学するにはかなりの困難を 克服しなければならない。また,円高,物価高の日本では国からの仕送りだけ では生計を維持するのは至難の技である。) これら二つの大学と比較すると,香川大学は際立つ特徴をもっているといえ

(9)

る。 留学生の少なさと農学部への学生の集中である。数について見れば,1000人 を越す留学生をもつ東大や先の京大を初めとして,国立大学のうち,100名以上 の留学生を抱える大学は20校を下らない。−L方,在籍数が留学生関係の概算要 求のできる最低ラインと考えられている30名にも満たない大学も20校ほどあ る。数の多いことが良く,少ないことは悪いなどという単純な判断は,こと留 学生に関しては当たらない。 日本人学生と同様に,いや,さらに熱心に勉学に励み,留学の成果を目に見 える形で手にしようとする外国からの学生を指導し,時には,生活上の様々な 問題の相談相手にもなってやらねはならないのである。当の大学の事務担当者 や指導教官,日本語教師にとってほ,やほり大きな負担であろう。 学生にとっても,規模の大きな大学ほ,知名度や施設の充実度といった面で 利点ほ.あるにしても,きめ細かい指導や親しい人間関係が得にくい,といった 不満を筆名自身何度も耳にした。 大学の規模や受け入れる留学生数の多少にかかわらず,重要なことは一・つし かない。日本語教育や専門分野での指導,教育に対し,教官,事務官など大学 側が最大限の努力を払う用意があるかどうかということである。 過去7年間の香川大学の外国人留学生の数とその推移を見てみると,以下 の如くである(表1)。多少の増減はあるにしても,総数は着実に伸びており, 特に今年度の伸び率ほ80%を越え,釆たる昭和63年度にほ,30名を突破する ものと期待されている。 30名という数は,留学生関係の予算請求もー瓜可俄になり,大学側の対応も 本格的にならざるを得ない数である。専任の留学生担当の事務官や日本語教師 を配することもできるであろうし,留学生会館など,施設面での充実も具体化 することになる。 今後も,留学生数は増加するものと考えられる。2−1でみた受入数の急増見 通しに照らしてみると,留学生10万人は高等教育機関在籍茎数の5%にあた る。現在の香川大学の学生総数を約4,000名とし,単純計算するとここ十数年 の間に留学生総数は200名になる。現在の8倍もの留学生を受け入れなければ

(10)

寸 一 ∽ 一 コ N N N

一 寸 ヨ ー ー か ヨ寸¢ 哩 卜、 せ・ ト ヽ ヽ く.⊂〉 ゝ 一・吋 てり 匝 」 」ユ 鮮 1好 瞥 \− ゝ ヽ ヤ 1・\ l卜 朴 朴 箭 モ忘 朴 詰 凶 糎 拡 朴 朴 班 朴 通■齢‖l馴 私 卜 ヽ 卜 せ 矢 卜 ト 轟 髄 朝 堪 髄 鞘 凪 感 度

I・・・■ ぐつ − ナ・■ くX〉 I・・・」 N ぐ/つ I・・・■ 【、 0〇ぐつぐ/つ

髄 卜、 議: 掛 R ヽ ヽ 魯く 窓 哺

く.D ヽ

せ て山 遜1 岬 芯 咲 ▼・・・」 」 =\ 朴 朴 吊 朴 詰 瞥 ユ 、「 ヽ て 仲 基 朴 拡 朴 琳軌鰻 K 軋 ヽ 卜・昔− 覇 髄 司堪 咄 重昭 凪 感 度 「■ N N r■ Ln ▼・・■ ▼・・■ N L【つ ▼・・■ ぐつ 亡、Nぐ/つ 咄 卜 荘 ゝ 吋 風 穴

廿 R

」・ =\ やP 群 落 J好 朴 朴 範 朴 医 I・・・」 妄 ヽ } ヽ− ヽ ヽ 脚 班 朴 悠 朴 晰枇ザ酉 ヽ K 粗 十 一計 卜 稲 城 重唱 拙 宅堪 証 感 濫 「■ 「■ 勺1 の N ▼・・・■ ▼・・■ ▼・■ ▼−1 r−イ m [、 ヨN−→ 哩 卜 ヽ ミ ′降 臨Ⅰ盈 H やF 亜− 岬 n 在 I・・・」 」 堪l卜 朴 転 朴 範 詰 瞥 賠 ぺ 押 掛 拡 朴 朴 ;=岳…▲:=岳‖■馴 ヽ K 尽 十 甘・※ 十 轟 奥 地 喝 塾 随 感 監

し(つ N I・・・■ I→ の 勺1 く.⊂〉I・・・」†・・・■

咄 卜 せ 00 ヽ 岬 玄 魯く 岬 uつ 最 吋 瑠1 00 巳 ロ 瞥 ヽ・′ \ 朴 朴 朴 畏……=滴■■躇 私 十 せ・ ・ :■ :: 凪 感 覚 ト I−■ I・−■ 「■ 「■ ▼・・・■ しっ F− ーー 咄 卜 せ ヽ ミ ヤ 哺 哺

Lr)

せ 遜1凪 H 卜 I・・・} l卜 も 瞥 十 \ 賠 ぺミ 朴 朴 重唱 塾 献鰍瑚 軋 十 ‡く せ・十ト 阻 感 濫 ⊂ヽつ †・} †・−」 †・−」 ▼・・・■ ▼・・・■ ▼・・・」 ▼・・・■ 寸 てr くj⊃▼・・■N 也 せ q⊃ 岬 田 昭 田 遮■■・岳■■−:■ ミ ヤ 慈: t_rつ Ⅰ盈 凪 H ミ ト b 詰 瞥 壁++ Ⅲピ =\?\も 朴 爺 医 十 溶 射 Kl卜ミ 僻 朴 朴 軋 +く 甘・甘 十 りト ト 覇 重唱 覗 風 韻 監 凪 壮 宗 お 朴吊・忘群誌届 お 鮮琶宗 樽謡皿l町コ廿Nり幕臣 始発Q慮朝朴⑳Y阻喪朴︽≡脚Q盤玉髄掛誤岸瞥 t梢

(11)

ならないとすれば,一・種のパニック状態になることは必至である。 200名という数字が現実的なものかどうかほ別にしても,留学生の受入れか ら始まり,専門教育,生活指導へと連なる−L達の作業がスムーズに機能するよ うなシステムの確立に向けて,全学を挙げて準備に取り組む時期に香川大学も 釆ているといえる。 農学部への集中という点については,無理からぬことである。26名の留学生 のうち,7割を越える19名が農学部に在籍している。全国的にみても,理科系 を専攻分野とする老ほ留学生全体でほ4割近く,国費生においては7割近くを 占める(図6)。香川大学唯一・の理系学部であり,博士課程を備える農学部に学 生が集中するのも当然のことといえる。 図6 専攻分野別留学生数

(12)

友 沢 昭 江 198 しかし人文・社会を専攻とする学生は,現在でも留学生全体の約半数を占め ており,戦後日本の驚異的な発展を可能にした経済,法律,教育制度等を専攻 とする学生が今後も増えることほ間違いない。また,台湾,タイ,マレ、−・シア 等の国ほ自国の前途ある青年を,共通する文化を持ち,同じアジアの隣国であ る日本に学部段階から留学させるとの意向を表明している。現に,香大でも経 済学部では学生が除々に増えてきており,法学部や教育学部にも各1名が在籍 している。今後,農学部集中から他学部への留学生の分散がなされることは確 実である。 その際,受け入れる立場にある我々が共通の認識として持たなければならな いのは,「何のために留学生を受け入れるのか」ということである。 国立大学は国民の税金により運営されているから,本来の教育の対象となる のは日本人学生である。文部省の意向であるから,しかたなく国費生を受け入 れる。指導に当たる教官ほ学生が日本に滞在する間,何とか無事に過ごせれば 責任を果たしたことになる。留学生を引き受ける教官にとっては,負担増だが, 引き受けずにすむ教官にとっては,全く対岸の出来事である。豊かな日本とし ては先進国の一・貞として,発展途上国の著者を受け入れるべきだ等々。このよ うな考えは,とかく留学生問題を義務,責任,恩恵付与といった偏狭な意識で のみ捉える危険性をはらんでいる。 留学生の受入れは,彼らのためになることはもちろん,大学や日本人学生に とっても,自らの意識に刺激を与え,変革の必要性を感じさせてくれる対等の 「国際交流」の場があたえられることを意味するのである。願ってもない好機 だと考えるべきで呼ないだろうか。 入試(選抜)方法の検討,単位認定の柔軟な措置,比較的日本語の使用率の 低い理科系の学生を対象とした英語による授業,正規入学を目指す学生のため の集中日本語授業,私費生のための奨学金制度の設立など様々な試みが,既に 多くの大学で行われている。 外国人だからとの特別な阿りや,甘やかし,逆に日本人学生との完全な「平 等」な取り扱いを主張するのも困る。必要なのは,彼らの置かれた立場を理解 し,配慮することである。今の日本の大学教育が多くの問題を学んでいること

(13)

は,誰の目にも明らかである。それらを解決しないまま,現行制度を押し付け ることで「平等」だというのほ,許されないことであろう。大学関係竜一\人一 人が,自分の持ち場について検討し,今後の変化に対応できるよう改善を行う ことが先決である。日本語教育を担当する筆名は,開講されて間もない日本語 講座について検討し,考察する務めがある。

3 香川大学における日本語教育の現状と今後の課題

3−1 日本語講座の位置付け 日本語講座は,他の初修外国語と同じ一・般教育科目の一つとして,今年4月 に開設された。履修対象となるのは,学則第68条第1項に定める外国人留学生 であり,履修手続きをへて,外国語の単位として認められる。 また,外国人で,聴講生として日本語科目の受講を希望する者も,書類審査 と面接を経て,聴講を許可される。さらに,香川大学の学部研究生,専攻科ま たほ大学院(連合大学院を含む)の学生または研究生,研修員として受け入れ ている外国人が聴講を希望すれば,所属の学部長またほ研究科長の依顔により, 所定の手続きを経て,聴講が許可される。(この場合,単位を修得することはで きない。) 一L般教育科目の初修外国語科目として,授業科目も,日本語第一・(初級),日 本語第二(中級),日本語第三(上級)となっており,特別に日本事情(講義) も設けられている。初級クラスは週2回,中級クラスは週1回開設されている が,上級と日本事情ほ,現時点でほ開設されていない。 3−2 受講者の構成とクラス編成 3−1で述べたように,日本語科目の主たる対象は正規学部留学生であるが,現 実にはこれに該当する学生は,1名しかいない。しかもこの学生は中国政府派 遣の留学生であり,すでに卒業年次にある。中国政府派遣の学生は厳しい日本 語予備教育を受けてきており(1979年に日中政府間の協定により,予備教育セ

(14)

友 沢 昭 江 200 ソクー・が開設され,日本から日本語教育の専門家が中国へ出向き教育にあたっ ている),来日時には,日本人の大学生と机を並べて勉弓重しても,なんの遜色も ないほどに日本語ほ鍛えられている。 単位の修得のみを目的とするならば,この学生が日本語科目を履修すること ほある せるレベルの授業ほ開設されておらず,教官数も不足している。 でほ,どのような学生が日本語科目を受講しているのだろうか。香川大学の 留学生全体の構成ほ,表1の如くである。総数26名のうち,日本語科目の受講

者は,18名で,内訳ほ,大学院生・研究生7名,学部研究生11名,国別では,

タイ4,インドネシア3,中国3,アメリカ2,ブラジル2,ガーナ2,マレ、−

シア1,フィリピソ1である。 留学生全体では圧倒的多数を占める中国の留学生が,日本語科月の受講者と なると激減する。その理由として,1)彼らの多くほ来日前に,日本語の予備 教育を何らかの形で受けてきていること,2)日本文学や日本史など狭義の日 本学以外の分野,特に理科系の専門分野で用いられる日本語の文体は漢語やカ タカナ表記の用語を多く含むものの,文それ自体の構造は余り複雑ではなく, 漢字文化圏の中国人学生にとっては,それはど大きな障害とはならないこと, 3)現在開設されている授業のレベルほ彼らの求めるものと合致せず,受講す

るメリットがないこと,などが理由として考えられる。このようなわけで,−

一般科目として受講する者はおらず,上記の18名と聴講生3名(アメリカ2,フィ リビン1),そしてこれは他の大学でも行われていることだが,特例として留学

生の配偶者等5名(アメリカ3,インドネシア1,中国1)を含む合計26名が

1987年11月現在の日本語受講者の総数である。 クラスの編成は10月より三段階になった。日本語ⅠⅠは4月に開始した初級ク ラスである。受講者は13名。国別でみると,タイ3,アメリカ3,ブラジル2, フィリピソ2,マレー・シア,ガ、−ナ,中国各1である。 日本語ⅠⅤは同じく4月に開始した中級クラスである。受講者は16名。中国4,

インドネシア4,アメリカ4,タイ2,ブラジル,フィリピソ各1となってい

る。

(15)

10月に10名の学生が新たに,香川大学に入学したが,既に日本語学習の経験 がある者は,能力に応じて既設の初級,中級へと編入した。その中で,日本語 が全く初めての学生のために急遮,日本語Ⅰが新たに開設された。受講者は4 名。タイ,フィリピソ,ブラジル,ガーナ各1名である。 三クラスの受講学生数の総合計(33名)が,先に.述べた登録学生数(26名) を上回るのは,日本語ⅠとⅠⅠ,日本語ⅠⅠとⅠⅤというふうに,ニクラスにまたがっ て受講している学生がいるからである。 3−3 問題点の考察 日本語教育の場合,専門的研究分野の一・つとして,ようやく確立したはかり である。最近,日本や海外においても構造主義言語学,変形生成文法など,最 新の言語理論による日本語の新たな視点からの分析がなされるようになった。 また,これらの研究の成果を導入した教授法や教材の開発も盛んに.行われてい る。 しかし,こと教育の現場においてほ,様々な問題が依然として山積みされて おり,その解決にほかなりの時間と担当者の努力が必要とされる。これらの問 題は,それぞれ独立してあるのではなく,みな有機的に関係しており,一山つの 問題を解決するには,別の問題の解決が前提となってくる。 ここでは,便宜上問題を項目立てて述べるが,それらほ他の問題とも当然絡 まってあることはいうまでもない。 3−3−1日本語学習者の多様性 留学生が最終的に日本の大学に入学するまでの経路にはいくつかの種類があ る。その概略を示したものが図7である。留学生は,来日する経路も異なれば, 出身国,母語の種類,専門分野も非常に多岐にわたり,日本語以外の外国語修 得の/くタ・−ソも,大学入学までの日本語学習歴も様々である。 その多様性の実態を把握し,教育面での参考にするために,香大の日本語受 講者に対し簡単なアンケートを行った。(受講者総数は26名,回収したのは24 名。このなかには,聴講生も含まれている。) 出身地域別では,アジアが全体の6割を占め,北アメリカ州3割,中南米,

(16)

202

限蛍埜軒G鉢彗柊エG茎札ノ.Y

(17)

アフリカがそれぞれ1割弱である。このうち,漢字文化圏の出身者(香大の場

合,中国からの留学生)および漢字文化を受け継いだ家庭環境に育ったもの

(日系ブラジル人および中国系マレーシア人)は全体の2割に過ぎない。また,

タイ,フィリピソの2国を除いた全部の学生が多民族国家出身である(全体の

8割。タイとフィリピソが民族構成上単一億を持つかどうかについては,筆者

ほ意見を異にするが,ここでほあくまで学生の回答を尊重した。以後の回答結

果についても同じ)。

学生の言語面での背景を調べると非常に興味深い。ブラジルとタイを除く8

割の学生が多言語文化を持つ国の出身であり,複数の公用語を有する国もあ、る。

個人のレベルでみると,家族や親しい友人との対話に複数の言語を用いる老(厳

密な意味でほ少し異なるが,以後,便宜上「母語」という言葉を用いる)が54%,

2つ以上の言語で中等教育を受けた暑が13%である。受講生の母語を並記する

と,英語,中国語,タイ語,ピリピノ語,ジャワ語,インドネシア語,スンダ

語,マレー語,チャモロ語,ポルトガル語,エウニ語,アカソ語である。

これまで学習した外国語を含め,運用能力があると思われる言語を3つ以上

持つ者が9割を越え,4つ以上持つ者が半数に上る。6つ以上もの言語を操る

老も3割を越す。日本語が自分にとって何番目の言語にあたるか,との問いに

は,2番目とする暑が7名(中国の学生で日本語の到達度の高い者に多い),3

番目が6名,4番目が4名,5番目以上は6名いる。

これまでに学習した外国語の種類も多いが,英語を第一外国語とする老が極

めて多く,全体の四分の三を占め,スペイン語,フランス語とつづく。日本語

を第一外国語として学んだ老ほ1名のみである。

このような多様な背景を持つ学習者が一つの教室で日本語を学ぶのである。

授業の効率を高めるための母語別クラスの編成の必要性が繰り返し説かれる所

以である。だが,それは現実には非常に困難であり,せいぜい漢字圏と非漢字

圏の学生をわけるなり,プレースメソト・テストを実施して学習者の日本語到

(8)

達度でクラス分けを厳密にするなどの工夫がなされていれば良いはうである。

また,学生の母語にかかわらず日本語のみを用いる直接法による授業を行っ

ているところもある。しかし,帰国子女や中学生などの年少の学習者ならまだ

(18)

友 沢 昭 汀 204 しも,彼らは大学(院)生で,外国語学習についてもベテランである。しかも 専門の研究に追われ,日本語学習に充てる時間も限られている。特に初級レベ ルでほ,直接法一・本やりではどうしても限界があり,効率的に授業を進めるた めには学生に最も共通する英語を媒介言語として用いることになる。 筆者の教える学生も,その多くが英語を第一外国語として学んでいるが,そ の運用能力についてはかなりの差があり,教師が英語で文法や用法を説明して も理解できない老がいる(教え.る側の英語能力が不足していることももちろん であるが,それについてほ教師の努力以外に.解決法はない)。そのため,学生の 理解度にばらつきが生じ,学生に精神的に余分な負担を負わせることになる。 日本語を学ぶために,まず英語を習わねばならないとすれば,これは甚だしき 矛盾である。 4月開始以来,すでに6か月が過ぎ,初級クラスも400ペ・−ジの教科書の半 ばまでようやく辿りついた。中級クラスでは,授業の殆どを日本語で行ってき たが,初級についても,説明を既習の文型・語彙を用いることで,日本語でも なんとか可能なところにまできたといえる。 日本語を教室内の唯一・の使用言語とするか,英語など他の言語を媒介言語と して用いるか,その度合いをどれ位にするかほ,日本国内で複数の母語を持つ 学習者を教える日本語教師に課せられた今後の大きなテー・マである(外国で日 本語を学ぶ場合,一・般的には学習老の母語は同一・と考えられる。その集中日本 語教育で非常に高い評価を受けているコーネル大学では,英語を母語とする学 生の中に,中国語を母語とし,英語が少し劣る学生を−・名入れたために,全体 の学生の達成度が著しく低くなったため,その後はきびしく学生の母語の統一 を行っているという例をコース担当教授から筆者は直接聞いたことがある)。 3−3−2 クラス編成と時間数 3−2で述べたように,現在,初級クラスは日本語Ⅰ,ⅠⅠの二つが開設されてい る。 4月から開始された日本語ⅠⅠの受講生は13名である。うち,日本語Ⅰとまた がって受講する暑が2名,日本語ⅠⅤと併せて受講する暑が5名いる。受講者の

(19)

日本語学習歴ほ開講時の4月の時点でみると,学習歴が全く無い者から,長い

者は2年,平均すると約5か月である

。5か月とはいえ,独学をした期間,高 松市内の語学学校で週に1時間程度学んだ期間を合わせたものの平均に過ぎな い。学習歴にこれだけの幅があることほ,初級クラスとしては問題である。 初級クラスの最大の問題は開設時間数の少なさである。4月の時点で開設さ れたのは,初級(2コマ)と中級(1コマ)のみで,全てのクラスを受講した

としても3コマにしかならない。初級のみの受講であれば,1コマ100分を2

時間としても1年に最大120時間しか受講できない計算になる。これを初・中・ 上級の大体の目安とされている日本語能力試験の認定基準(表2)と比較して みるといかに少ないかがわかる。今の時間数でいけば初級レベルの課題を全て 終了するには,3年かかることになる。 クラス分けは日本語科目担当の教官である筆者が行ったインタビュ・−と学生 の自己申告に基づいてなされた。その際,中級レベルに達しているかどうかを 基準とし,少し無理だと思われる老を初級に振りわけた。しかし,中級に入っ 表2 日本語能力試験認定基準 定 基 準 級 学習時間・レベル 文 法 漢 字 語 粂 能 力 ・150時間程度 初歩的な 100字 800語 簡単な会話ができ,平易 4 ・初級日本語コース 文 法 程 度 程 度 な文,又は短い文書が読 前半修了 を習得 み書きできる。 ・300時間程度 基本的な 300字 1,500語 日常生活に役立つ会話が 3 ・初級日本語コース 文 一法 程 度 程 度 でき,簡単な文書が読み 修了 を習得 書きできる。 ・600時間程度 やや高度の 1,000字 6,000語 ーL般的なことがらについ 2 ・中級日本語コース 文 法 程 度 程 度 て会話ができ,読み書き 修了 を習得 できる。 ・900時間程度 高度の 2,000字 10,000語 社会生活をする上で必要 文 法 程度 を習得 おける学習・研究の基礎 としても役立つような総 合的な日本語能力。

(20)

友 沢 昭 江 206 たものの,週に1回の授業では足りないとする学生の希望もあり,初級と併せ て受講することを認めた。また,10月から開講した日本語Ⅰの学生のなかにも, −・日も早く日本語をマスタ1−したいと,ⅠⅠの受講希望を申し出た老がおりこれ も一‥部許可した。 日本語能力別に厳しくクラス分けを行っているところからみれば,いい加減 な対応と見えるかもしれない。しかし,かれらの多くは,忙しい研究,実験の 合間をぬって,わざわざ遠く離れた農学部のキャンパスから時間を割いて出向 いてくるのである。一・コマだけでは効率が良くない。続き時間にあるならば, 少しでも多くの授業を受けたいと望むのも尤もだと筆者は考えたのである。 週に2コマ,4時間の授業で初級レベルを一・通り学習するためには,かなり 進度を速めねばならない。いきおい,100分の大半を新しい文型の導入や,文法 説明に費やし,口頭練習や,練習問題,前回の復習等に充てる時間が少なくな る。毎回,短い文を書かせる宿題を出したり,小テストを行うが,13名の学生 全員にきめ細かいチェックや個人指導を行う余裕はない。1クラス50名以上が 普通とされる大学の語学の授業に比べればずっとましだといえるかもしれな い。しかし,日本語教育の場合,日本語修得の必要性の高さもあって,1クラ スの人数についてほ非常に厳密で,7∼8名が理想,多くて10名という線を守 ることが普通とされている。 安易な比較は避けなければならないが,一例として,広島大学の状況を述べ てみたい。広大は中国・四国地区の大学で学ぶ国費留学生の日本語予備教育を 1985年10月から担当するとともに,広大に在籍する留学生のための一・般日本 語科目(香大の日本語科目はこれにあたる)も同時に開いている。後者につい

てみると,初級週4コマ,中級4コマ,上級3コマ,日本事情2コマ,中級特

講(教員研修留学生対象)4コマ(いずれも1コマ100分。数字は1985年のも

の)が開設されている。広大全体の留学生の総数ほ178名,うち日本語科目受

講者は51名,日本語担当教官は専任3名,兼任・非常勤講師11名である。初

級のあるクラスは受講者2名,中級は1クラス7名,上級は登録数19名,実質

(8) 13名とある。

毎日集中して授業を行う予備教育の場合,その進度ほ非常にゆとりのあるも

(21)

ので,第一・週に「ひらがな」,第二遡「カタカナ」,三通目にようやく漢字が導 入される。アスペクトを表す「−ている」の用法,「∼てある」,「−てみる」, 「−ておく」,「∼てしまう」のような日本語らしい表現が出てくるのは,なん (9) と9週目からである。この時点で,すでに学習時問は240時間に達している。香 大においては,同じ内容を夏期休暇以前に.済ませている(その時点での学習時 間は40時間程度である)。 中級についての最大の問題も上記のことと関連している。現在,中級を受講 している学生の日本語学習歴,運用能力は初級以上に様々である。ここでは, 学習者にとって最大の難問である漢字が大量に導入される。そのため,進度を 遅くしてほしいとの要望と,専門分野別の読解を含む,より高度な内容を望む 声とが併存している。しかも,来年度には,初級を終えた学生が中級へと進む ことが当然考え.られるが,年間最大120時間の初級レベルを終えただけの学生 に対しては,本当の意味での中級の授業は行えない。今後は,より高度な授業 を求める学生を対象とした上級クラスか,専門別(少なくとも社.会科学系と自 然科学系を分ける)の読解を中心とするクラスを開くことで,高い水準にある 学生を満足させると同時に,中級のレベルを現在よりも少し低めて,学生の実 態にあったものにすることが必要である。 10月から始まった日本語Ⅰは,日本語の学習歴が全くのゼロか,ひらがなが なんとか読める程度の学生のために設けられた。今のところ日本語科目の担当 教官が筆者一人であるため,このクラスは,週に1コマのみである。語学学習 において,そして特に,学習の初期段階において週に1回,2時間の授業とい うのは望ましいものではない。4月に始まった初級クラス(日本語ⅠⅠ)に組み 入れることができれば良いのだが,10月の段階では,その能力の差があまりに 開き過ぎている。こちらのクラスも,できる限り早く週2回に増やすことが望 ましい。 3−3−3 入学の時期と受入れ態勢 留学生は日本人学生とは異なり,一・般に4月と10月の年2回,大学に入学す る(その間,一\人,二人と五月雨式に来日することも珍しくない)。今のところ,

(22)

友 沢 昭 江 208 日本語科目ほ一・般教育の科目として,4月開講を基本にしているが,このよう な事情を考慮して,後期にも初級クラスをスタ・−トさせることを定着させる方 向で検討する必要がある。 各大学に入学する時点での留学生の日本語学習歴について見ると,国費研究 留学生の場合,図7でみた大使館推薦の学生は6か月の予備教育を受けてくる ことが多い(香川大学に振り分けられる学生の場合,大阪外大か,広大で)。中 国など外国政府派遣の留学生も,現地での予備教育をうけてくることが通例で ある。また,私費生が正規入学(学部レベル)を希望する場合,大学や学部に ょり異なるが,日本人学生と同じ共通−・次試験はもちろん,外国人留学生統一

試験,日本語能力試験(1,2,3,4級とあるが,学部入学に必要とされる

のは,最もレベルの高い1級とされる),面接等,幾多の難関を突破しなければ qO) ならない。 しかし,同じ国費研究留学生でも,大学推薦の学生の場合は上記?予備教育 を受けることができない。大学推薦の受入れ条件としては日本語の能力ほ問わ れていないし,日本語の学習の必要がないことが前提となっているからである。 理科系の場合,最新の文献の多くは英文であり,研究の際の日本語の必要性は 余り高くないと考えられている。しかし,実際日本に来てみると,毎日の生活 ほもちろん,研究の場でもコミュニケ、−ショソの手段としての日本語は必要不 可欠であり,学生も指導教官も急遽,日本語学習を求めるようになる。 香川大学においては,国費留学生16名のうち,11名が大学推薦である。この 方式は,学生が留学の目的に合った大学に入れ,大学側も要求に合った学生を 迎え得るため,今後も重視される方向にある。しかし,彼らに対する日本語教 育は,受入れ大学に−・任されており,現在のように,週1回,多くても2回の 授業ではあまりに,不十分である。 受入れ側の大学が,十分な日本語教育が施せないからといって,来日前の日 本語学習を義務付けることは難しい。英語のような主要外国語と違い,いかに 日本語ブームとはいえ,日本に留学する学生の予備教育を自前で行える国は多 くない。また,アリアンス・フランセーズやゲ・−テ・イソステイチュートのよ うに,海外で自国語普及活動を一・貫して実施する故関を日本は未だにもたない

(23)

からである。

少なくとも,大学や大学院への入学を前提として来日する留学生を対象とす

る,専門研究を行うために必要な日本語学習の場ほ,大学自身の責任と努力で

提供されるべきであろう。(専門研究において,日本語の必要性を認めない考え

方もあるが,英語やフランス語と同様,日本語もそれのみで,森羅万象すべて

の概念を統括,分析し得る言語であり,日本の風土が産みだす研究成果は日本

語によって最も明確に,かつ美しく表現されると考える筆者ほ,その意見に同

意しない。)

日本語教育担当の教官数が限られている時,時間数をむやみに増やすことほ

難しい。しかし,それ以外にも,日本語を教育する方法は,いくつか考えられ

る。

現に,指導教官によっては,専門書の購読の際,内容よりもむしろ日本語の

用語説明に重きをおいたり,作文を書かせて添削をしている例がある。また,

日本人の院生に,専門用語の読み方,意味等の指導にあたらせている例もある。

日本にいる間ほ,24時間が日本語の勉強であるともいえる。だが,留学生が日

本人とじっくり話ができる機会ほ限られており,指導教官による専門分野の読

解を中心とした,広い意味での日本語指導などは,何ものにも代え難い貴重な

ものである。日本語担当の教師側も,分野別の文体研究,それに基づく教材の

開発などの面で協力することができれば,一層の相乗効果が期待できる。

また,日本人学生が身近な「異文化」としての留学生の存在を積極前に受け

入れることが出来れは,さらに望ましい。生活面やレクリェーショソ等の場を

利用して,交流を兼ねて相談相手になったり,友人関係を築くことができれば,

生きた語学の学習の場として,お互いにとってすばらしいものとなる。

留学生10万人計画という大きな動きとともに,香川大学における留学生を取

り巻く状況は新たな方向へと転換を遂げつつある。将来の構想を描く際の手掛

かりとして,日本語教育を中心に現状と当面の問題点の考察を行った。予算,

人員の不足,カリキュラムや施設面での整備の遅れ等,多くの問題がある。そ

の改善には,大学側の努力のみではいかんともしがたい点も多い。

しかし,留学生の受入れという,大学にとってほ責任負担の加重となる課題

(24)

友 沢 昭 江 210 に対し柔軟に対応し,併せて自らを変革,改善していくことは,ひいては大学 全体の脱皮をも可能にするものと思われる。 (注) (1)「21世紀への留学生政策の展開について」(留学生問題・研究に関する協力者会議 昭和 59年6月29日) (2)同上 (3)田原昭之「日本語教員の義成について」(『日本語教育』63号,1987年10月) (4)高等教育依閑在学実数については,1979年調べ。(但し,イギリスは1977年,日本ほ1981 年現在の数字。)「教育指標の国際比較(57年版)」また,留学生数は1979年現在のユネスコ 統計年鑑による(1982年)。日本の数字は1982年5月現在。 (5)各国による国費留学生の種類は以下の通りである。 国 名 時 点 国 費 に よ る 留 学 生 の 種煩 アメリカ ヘルス(NIH)奨学金留学生,ナショナル・サイエソス・ファウソデー ショソ(NSF)奨学金留学生等 イギリス 西ドイツ 1985 ドイツ学術交流会(DAAD)奨学金留学生 フラニ/ス 1984 フランス政府奨学金留学生 日 本 1986 国費外国人留学生 (6)このことは必ずしも,日本の研究レベルが低いということを意味しない。アジアの国ぐに は,旧宗主国であるイギリスやフランスへの留学の長い歴史をもち,多くの留学生を送って いる。また,日本における留学生の受け入れ態勢が他の主要国に比べて遅れていること,文 科系は特に学位取得が困難であること,日本語という新たな言語を学習しなければならな いこと,近年の物価高,円高などが障害となっていることが考えられる。 (7)北海道大学,東北大学,筑波大学,東京大学,名古屋大学,大阪外国語大学,広島大学, 九州大学の8大学。 (8)浮田三郎「日本における日本語教育の現状と問題点の考察一現場からの一考察」(『広島大 学教育学部紀要』第2部第34号,1986年3月) (9)金本節子「短期集中日本語教育における学習目標設定上の問題点」(『広島大学教育学部紀 要』第2部第35号,1986年12月) (10)香川大学が現在,私費留学生(学部レベル)で正規入学を希望する学生に課している試験 等は次の表の通りである。

(25)

私費外国人留学生の選扱方法 教 育 法 経 済 農 共通第1次学力試験 × × × 〉く 日 本語能力試験 ○ △ ○ ○ 外国人留学生統一・試験 △ △ ○ ○ (理科系) 面 接 ○ △ ○ ○ (備 考) ○…川 課する × …… 課さない △・・…参考にする 表・図解説 図1 留学生の推移(「21世紀への留学生政策」参考資料,昭和62年4月 文部省学術国際局 留学生課) 図2 我が国の留学生交流の現状 主要先進国との比較(同上) 図3 留学生の現状 出身地域別留学生数(同上) 図4 留学生の現状 出身国別留学生数(同上) 図5 留学生の現状 在学段階別留学生数(同上) 図6 留学生の現状 専攻分野別留学生数(同上) 表1 昭和56年度以降の香川大学外国人留学生数の推移 昭和62年11月1日現在 香川大学学生部資料 図7 外国人留学生の種類と日本語教育散開(『日本語教育および日本語普及活動の現状と課 題』NIRA−OUTPUT,総合研究開発機構 昭和60年7月) 表2 日本語能力試験認定基準(同上) ◎ この小論を書くにあたり,資料および文献の提供を心よく了承下さった香川大学学生部 の方々にお礼を申しあげる。

参照

関連したドキュメント

大学設置基準の大綱化以来,大学における教育 研究水準の維持向上のため,各大学の自己点検評

ところが,ろう教育の大きな目標は,聴覚口話

大学は職能人の育成と知の創成を責務とし ている。即ち,教育と研究が大学の両輪であ

このうち, 「地域貢献コーディネー ターの設置」,「金沢学への招待」及

②立正大学所蔵本のうち、現状で未比定のパーリ語(?)文献については先述の『請来資料目録』に 掲載されているが

200 インチのハイビジョンシステムを備えたハ イビジョン映像シアターやイベントホール,会 議室など用途に合わせて様々に活用できる施設

市民社会セクターの可能性 110年ぶりの大改革の成果と課題 岡本仁宏法学部教授共編著 関西学院大学出版会

ダブルディグリー留学とは、関西学院大学国際学部(SIS)に在籍しながら、海外の大学に留学し、それぞれの大学で修得し