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動植物と細菌のカチオン輸送系の接点

中村辰之介 ・魚住信之

細菌のカチオン輸送系は構成遺伝子がほぼすべて確定し,それらの遺伝子をノックアウ

トした変異株も構築された. これらの遺伝子と変異株を組み合わせることで,カチオン輸

送系の構造と機能の関係を調べることができる.また,細菌と動植物のカチオン輸送系の

構造に類似性が見いだされ,互いの種をこえた発現/

クロス トークが報告されたことから,

細菌のカチオン輸送系の研究が動植物のカチオン輸送系の理解に寄与できることが明らか

となった.

カチ オ ン輸送 系 】 【

構 造 と機能 】 【

種 を こ えた発現 】

は じめ に 動 植 物 と細 菌 は, 個 体 /細 胞 内 と外 界 /細 胞 外 空 間 を隔 て る膜 を通 して , カチ オ ン (H+,Na+ ,K+ , Ca2+ な ど)の 摂 取 と排 出 を行 な っ て い る (図1). た と え ば , 細 菌 や , 動 植 物 細 胞 内 の ミ トコ ン ドリアで は, 電 子 伝 達 系 に よ り膜 を 隔 て たH+ の 電 気 化 学 的 勾 配 (H+ 駆 動 力 )が 形 成 さ れ , こ れ を利 用 して ,F1F0一ATPase に よ り生 命 活 動 の 基 本 通 貨 で あ るATPが つ くられ る . 動 物 細 胞 の 種 々 の 膜 系 に存 在 す るATPaseはATPを 消 費 してNa+ な どの 電 気 化 学 的 勾 配 を形 成 し, この勾 配 は カ チ オ ン と基 質 の 共 輸 送 系 (シ ン ポ ー タ ー ) に よ り基 質 の 取 込 み に利 用 さ れ る. ま た , カ チ オ ン チ ャ ネ ル に よ りカ チ オ ン濃 度 と電 位 の変 動 が ひ き起 こされ , こ れ が 神 経 伝 達 や 細 胞 内 情 報 伝 達 に利 用 さ れ る . この よ う に カ チ オ ン輸 送 系 は 生 物 の 生 命 維 持 に き わ め て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る. しか しな が ら, カ チ オ ン輸 送 系 の 活 性 測 定 は容 易 で は な い. 動 植 物 細 胞 の 場 合 に は , 動 物 培 養 細 胞 , ア ブ リカ ツ メ ガ エ ル の卵 母 細 胞 や 酵 母 で 特 定 の イ オ ン輸 送 系 を発 現 させ , 電 極 を 用 い て 測 定 さ れ る . しか し , こ こで用 い られ る電 極 で はイオ ンの 区別 はで きない し,Na+ とK+ が1:1で 電 気 的 に 中 性 (エ レ ク トロニ ュー トラ ル ) に 膜 を隔 て て 反 対 方 向 に 輸 送 (ア ン チ ポ ー ト) さ れ る よ う な 場 合 に は, イ オ ン電 流 を 測 定 す る こ とが で き な い . 複 数 の 細 胞 内 膜 系 が あ る動 植 物 細 胞 の 特 定 な 部 位 の イ オ ン濃 度 測 定 は , 蛍 光 試 薬 と蛍 光 顕 微 鏡 を利 用 す る 以 外 は, 可 能 で は な い . 細 菌 は 膜 系 が 細 胞 膜 の み で 真 核 細 胞 よ り も単 純 な た め に, 細 胞 内 イ オ ン量 を 原 子 吸 光 法 や 放 射 性 同 位 体 を 用 い て 測 定 し, 推 定 容 積 か ら, イ オ ン濃 度 の 経 時 変 化 を 追 う こ とが で き る. 動 植 物 の体 細 胞 と細 菌 の 膜 に は複 数 の 輸 送 系 が 発 現 して い るが , 細 菌 の場 合 に は 関 与 す る遺 伝 子 の 全 塩 基 配 列 が 決 定 され た こ と も あ り, ノ ッ ク ア ウ トの 作 製 が 容 易 で あ る. 生 育 に 必 須 な 遺 伝 子 で あ っ て も, 細 菌 の 場 合 は そ の遺 伝 子 を 発 現 制 御 可 能 な プ ラ ス ミ ドに乗 せ て 細

Tatsunosuke Nakamura, 千 葉 大 学 薬 学 部 (〒263−8522千 葉 市 稲 毛 区 弥 生 町1−33) [Faculty of PharmaceuticalSciences,Chiba

University,Yayoi-cho,Chiba263-8522,Japan]E-mail:tnakha@p.chiba-u.ac.jp

Nobuyuki Uozumi, 名 古 屋 大 学 生 物 分 子 応 答 研 究 セ ン タ ー (〒464−8601名 古 屋 市 千 種 区 不 老 町 ) [Bioscience Center,Nagoya

University,Nagoya464-8601,Japan]E-mail:uozumi@agr.nagoya-u.ac.jp

Current Topics of Cation Transporters in Animal,Plant and Bacteria

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動植物と細菌の カチオ ン輸送系の接点 47 図1動 物 細 胞 の イ オ ン 輸 送 系 の モ デ ル イ オ ン輸 送 性 のATPase, さ ま ざ ま な種 類 の チ ャ ネ ル, そ して ,Na+ /H+ア ンチ ポ ー ター が存 在 す る. ミ トコ ン ド リア で つ くら れ たATPを 消 費 して , イ オ ン輸 送 性ATPaseで イ オ ンの 勾配 と 細 胞 内 負の 膜 電 位 が 形 成 され , 形 成 さ れ た イ オ ン 勾配 と電 位 を利 用 して, チ ャ ネ ル とア ンチ ポ ー タ ーが イオ ン の通 過 を行 な う. チ ャ ネ ル と ア ン チ ポ ー タ ー を経 由 した イ オ ン の 動 きが , イ オ ン の 勾配 と電 位 の変 化 をひ き起 こ す . 動物 に は さま ざ ま な イ オ ン 内膜 系が 存 在 し, 次 に示 す細 菌 の膜 系 よ り も複 雑 で あ る . 動 物 細 胞 は (細 菌 と比較 して ) 大 き い た め に, 電極 を用 い た実 験 が で き る. 菌 に 導 入 す る こ とで 染 色 体 の 遺 伝 子 破 壊 株 が 得 られ る. 動 植 物 と細 菌 の カ チ オ ン輸 送 系 は , 複 数 回 膜 を 貫 通 す る ポ リ トピ ッ ク型 膜 蛋 白質 で あ る . 膜 蛋 白 質 の膜 へ の 組 込 み は , 動 物 , 植 物 , 細 菌 な ど の 異 な った 種 に共 通 す る性 質 と, そ れ に 関 与 す る相 同遺 伝 子 が 見 い だ され て い る. 実 際 , 注 意 深 く実 験 を行 な い , 運 が よ け れ ば , カ チ オ ン輸 送 系 は 種 を こ え た 機 能 的 発 現 が と ら え ら れ る . 本 稿 で は , 細 菌 の カ チ オ ン輸 送 系 研 究 の 現 状 を 述 べ (図2) , 動 植 物 と細 菌 の カ チ オ ン輸 送 系 の 接 点 を報 告 す る.

. 細菌のカチオ ン輸送系の現

図2細 菌 (お も に 大 腸 菌 ) の イ オ ン 輸 送 系 の モ デ ル 細 菌 細胞 膜 に は電 子 伝 達 系 が あ り,H+ (場 合 に よ りNa+ ) を細 胞 外 へ 放 出 し, そ の電 気 的 化 学 的 勾配 (H+駆 動 力 ) を形 成 す る .H+ 駆 動 力 を 利 用 して ,ATPaseでATPが つ くら れ ,Na+ /H+ ア ン チ ポ ー ター がNa+ 排 出 を,K+ 取 込 み系 がK+ 取 込 み を行 な っ てい る . 細 胞 内pH調 節 はK+ / H+ ア ン チ ポ ー タ ー が行 な っ て い る と推 定 さ れ る . 細 胞 に浸 透 圧 ダ ウ ン シ ョッ クが か か った 場 合 に は, 機 械 刺 激 受 容 チ ャ ネ ルMscLが 働 き, 細胞 内 か らK+ な どの 低 分 子 を 流 出 させ, 細 胞 内 圧 を減 少 させ る. 細 菌 の 細 胞 膜 は1つ で あ る た め に, も し, 動 植 物 の膜 蛋 白 質 が 機 能 を も っ て 発 現 で きる な らば, そ の 素 反 応 を検 討 す る 新 た な 手 段 と な り う る. 1.Na+ の 排 出 に 必 要 な Na+/H+ ア ン チ ポ ー タ ー 細 菌 の 細 胞 内 にNa+ が 蓄 積 さ れ る こ と は , 細 菌 の 生 育 に は 不 都 合 で あ る. このNa+ を 細 胞 内 か ら除 く仕 組 み の 最 も 普 遍 的 で 重 要 な 輸 送 系 は , Na+ とH+ を 交 換 す るNa+ / H+ ア ンチ ポ ー タ ーで あ る . 大 腸 菌 を例 に と る と,Na+ /H+ ア ン チ0タ ー 遺 伝 子nhaA が ク ロー ニ ン グ され1), 続 い て nhaB2) ,chaA3) 遺 伝 子 が 単 離 さ れ た . こ れ ら の遺 伝 子 を ノ ッ ク ア ウ トさ せ た 大 腸 菌 変 異 株TO114(ΔnhaA, Δ nhaB,ΔchaA) は細 胞 外 に Na+ を 加 え る と生 育 で き な く な る4). この よ うな変 異 を補 う 遺 伝 子 と して , 種 々 の 細 菌 か

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48 蛋 白質  核 酸  酵 素  Vol.44  No.13  (1999)

らNa+ /H+ア ンチ ポ ー タ ー遺 伝 子 が ク ロー ニ ング され , 海 洋 細 菌Vibrio alginolyticusか ら もnhaA5) ,nhaB6)

遺 伝 子 が 単 離 さ れ た .NhaAとNhaBは ア ミノ酸 配 列 に 相 同 性 が 見 い だ さ れ な い が ,Na+ /H+対 向 輸 送 (antiport) を もつ5,`6). NhaAが 精 製 さ れ , プ ロ テ オ リ ポ ソー ム に再 構 成 さ れ , 人 為 的 なH+ の 勾 配7)に よ り,Na+ 輸 送 が観 測 され た8). こ の よ う に し てNhaA単 独 で ,H+ と交 換 し て Na+ を排 出 す る活 性 が あ る こ とが 確 認 され た. 次 に, ど の よ う に し て この ア ン チ ポ ー タ ー はNa+ とH+ を 交 換 して い る の か と い う機構 が 問 題 と な っ た . この 疑 問 に 対 して , 筆 者 ら は , 膜 貫 通 領 域 に保 存 さ れ た 酸 性 ア ミ ノ酸 がNa+ とH+ の 結 合 部 位 に な っ て い る とい う仮 説 を立 て た . こ の 仮 説 を検 討 す る た め に は,NhaAの 膜 貫 通 領 域 の 予 測 を し な くて は な ら な い . イ オ ン輸 送 系 膜 蛋 白質 は複 数 の膜 貫 通 領 域 を もち , ポ リ トピ ッ ク (マ ル チ ス パ ン ) 型 膜 蛋 白質 とよ ば れ , 結 晶 化 は 困 難 で 成 功 例 は ま だ 少 な い . そ の た め ,X線 解 析 や 高 分 解 能 電 子 顕 微 鏡 に よ る構 造 解 析 を待 た ず , ア ミノ 酸 配 列 か ら, ど の部 分 で 何 回膜 を横 切 っ て い る か と い う構 造 (topo− logy) モ デ ル を , そ の ア ミノ 酸 近 傍 の 疎 水 性 親 水 性 度 (hydropathy) か ら 推 定 す る こ とが 行 な わ れ て い る. NhaAの 場 合 に は,12回 の膜 貫 通 領 域 の存 在 を推 定 し, 推 定 した 膜 貫 通 領 域 の な か に保 存 され た 酸 性 ア ミノ 酸 を部 位 特 異 的 に変 異 導 入 を行 な い, そのア ミノ酸 がNa+ の 排 出 に必 要 で あ る こ と を示 した9). い くつ か 立 て られ たNhaAの トポ ロ ジ ー モ デ ル の な か で12回 膜 貫 通 モ デ ル が 正 し い こ とが , 細 菌 の 膜 蛋 白 質 トポ ロ ジー を決 め る 方 法 と し て 広 く用 い ら れ て い るphoA融 合 法 で 示 さ れ10), 次 に2次 元 結 晶 解 析 で 確 認 さ れ た11). 一 般 的 に, 同 一 の 膜 に は , 同 じ イ オ ン を輸 送 す る複 数 の イ オ ン輸 送 系 が 存 在 す る .Na+ 排 出 を行 な う細 菌 の2種 類 の ア ンチ ポ ー タ ー ,NhaAとNhaBの 場 合 に は , ア ミ ノ酸 配 列 に相 同 性 が み つ け ら れ な い よ う に構 造 も異 な っ て い る12).NhaAは 偶 数 回 ,NhaBは 奇 数 回 の 膜 貫 通 領 域 を も つ .NhaAとNhaBは ,Na+ と H+ の 交 換 の比 率 が 異 な るが , 両 者 と もH+ との 交 換 で Na+ を 排 出 す る 輸 送 系 で あ る.NhaBの 場 合 に も, NhaBの 膜 貫 通 領 域 に保 存 され た 酸 性 ア ミ ノ 酸 が 存 在 す る. 部 位 特 異 的 変 異 導 入 を行 な い , この 部 位 が カ チ オ ンの 輸 送 に 必 須 で あ る こ と を確 認 した .NhaBで も, 膜 貫 通 領 域 の 酸 性 ア ミ ノ酸 が カ チ オ ン の輸 送 に重 要 な 役 割 を担 う と考 え られ る (未 発 表 ). これ らの結 果 は, カ チ オ ン の 交 換 輸 送 に, 膜 貫 通 領 域 の 酸 性 ア ミ ノ 酸 が カ チ オ ン結 合 部 位 と し て働 く こ と を示 唆 して い る . 2. 細 胞 内pHを 調 節 す るK+ /H+ア ン チ ポ ー タ ー H+ 濃 度 が す べ て の 酵 素 の 活 性 に直 接 影 響 す る こ とを 考 えれ ば, 動 植 物 , 細 菌 を問 わ ず細 胞 内pHの 調 節 が 生 物 の 生 育 に 重 要 な 役 割 を 担 う こ と は 明 らか で あ る . 動 物 細 胞 の場 合 に は, シグナ ル に 対 応 して細 胞 内pHを 変 化 さ せ る イ オ ン 輸 送 系 の 存 在 は知 ら れ て い る が , 緩 衝 液 に曝 され た細 胞 の 内 側 のH+ 濃 度 を積 極 的 に維 持 す る 仕 組 み は明 確 で は な い. 細 菌 は 広 い 範 囲 の細 胞 外H+ 濃 度 で生 育 す る こ とが で きるの で , 細 胞 内pH調 節 の機 購 に関 して, 動 植 物 細 胞 以 上 に興 味 が もた れ て い る13). まだ 多 くの疑 問 が 残 され て い る が , 海 洋 細 菌V.alginolyticusに お いて , この 問 題 に対 す る答 え が 最 も明 らか に示 され て い る. こ の 細 菌 を400mM程 度 のNa+ を 含 む 溶 液 に 懸 濁 させ る と, 酸 性 条 件 で は 細 胞 内pHも 酸 性 でpH調 節 は さ れ な い14). 細 胞 外 に数mM程 度 のK+ を加 え る と,K+ を取 り込 み ,K+ 流 入 が 細 胞 内 負 の 膜 電 位 (の 絶 対 値 )を 減 少 さ せ , 電 子 伝 達 系 に よ るH+ 排 出 を ひ き起 こす14・15). した が っ て, 細 胞 内 の ア ル カ リ化 に は,K+ 取 込 み と電 子 伝 達 系 の 役 割 が 大 きい. 細 胞 外pHが ア ル カ リの条 件 で は, この 細 菌 の細 胞 内H+ 濃 度 は よ り酸 性 に保 た れ て い る15,16). 細 胞 内 酸 性 化 は ,NhaAの よ う に起 電 的 な Na+ /H+ア ンチ ポー タ ーの 役 割 が 重 要 で あ るが, この 系 だ けで は細 胞 内pHが7.7∼7.8に 厳 密 に調 節 さ れ て い る こ との 説 明 が で き な い . ア ル カ リ条 件 で , 外 液 に膜 透 過 性 ア ミ ン を加 え る と, ア ミ ンが 中 性 の 形 で 細 胞 膜 を透 過 し, 細 胞 内 の ほ うが 濃 度 が 高 いH+ を消 費 し, プ ラ ス に 荷 電 した ア ミン とな り蓄 積 され る17). この よ うに , 膜 透 過 性 ア ミン添 加 に よ り, 細 胞 内 酸 性 のH+ 勾 配 を人 為 的 に な くす こ とが で き る. ア ミ ン添 加 後 , 細 胞 内 か らK+ が 流 出 し, そ れ に伴 い細 胞 内 のH+ が 増 加 す る . K+ 流 出 とH+ 増 加 は, 細 胞 内pHが7.7∼7.8に な る ま で 続 き , 止 ま る . この 結 果 は , 細 胞 内pHを 調 節 す る K+/H+ア ンチ ポ ー タ ー が 存 在 す る と仮 定 す る と最 も 自 然 に 説 明 で き る15).V.alginolyticusと 同 じ現 象 が 他 の 細 菌 (大 腸 菌17),Nitrosomonas/Nitrosobactor18) , 根 粒 細 菌Rhizobium meliloti19))ばか りで は な く, 緑 藻20) に も観 測 され , 広 く生 物 界 で 同 じ系 が細 胞 内pH調 節 に

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働 い て い る可 能 性 が あ る . 細 胞 内pHを 調 節 す るK+ /H+ア ン チ ポ ー タ ー の実 体 は, そ の 変 異 株 も遺 伝 子 も取 られ て い な か っ た の で 長 い 間 不 明 で あ っ た . 最 近 , 根 粒 細 菌R.melilotiか ら候 補 遺 伝 子 を取 る こ とが で きた19). 根 粒 を形 成 で きないR. melilotiの 変 異 株 の な か に , 細 胞 外 で は 生 育 で き るが植 物 細 胞 内 で は生 育 で きな い 株 が あ っ た . この 株 は, ア ル カ リ環 境 下 でK+ が お も な外 部 カチ オ ン で あ る と生 育 す る こ とが で き な い の で ,pH調 節 (2旦adaptation) に 関 与 す る遺 伝 子 に 変 異 が あ る と考 え,pha-と 名 付 け た .pha一 を 補 うDNA断 片 を選 択 し, 塩 基 配 列 を決 定 し,7種 類 の 膜 蛋 白 質 の 遺 伝 情 報 (phaABCDEFG) を み つ けた .pha一 変 異 株 は, ア ル カ リ条 件 で膜 透 過 性 ア ミ ン を加 え て も, 細 胞 内 か らK+ の流 出 が起 きな い. こ の こ と は,Phaシ ス テ ム (PhaABCDEFG) が ,K+ /H+ ア ンチ ポ ー タ ー 活 性 を もつ こ とを示 唆 してい る .pha遺 伝 子 と相 同 性 が あ る 遺 伝 子 が 黄 色 ブ ド ウ 球 菌Sta-phylococcus aureus21) と, 枯 草 菌22・23)か ら も見 い だ され た . 細 菌 の 細 胞 内pH調 節 の 主 要 戦 略 は ,K+ 取 込 み 系 , 電 子 伝 達 系 ,Na+ /H+ア ン チ ポ ー タ ー の助 け を 得 て, 最 終 的 に は細 胞 内pHで 活 性 が 制 御 され たK+ /H+ ア ン チ ポ ー タ ー で な さ れ る と推 定 して い る. 3. 細 胞 内 膨 圧 上 昇 に 必 須 なK+ の 取 込 み 系 細 菌 のK+ 取 込 み 系 の 研 究 は ,Epsteinに よ り大 腸 菌 で 始 め られ た24). 彼 は多 くのK+ 取 込 み 系 の 変 異 株 を単 離 し, 染 色 体 上 に8カ 所 の 遺 伝 子 座 を決 め た . 次 に , BoothとBakkerが 加 わ り, そ れ ら の8カ 所 が どの よ う な遺 伝 情 報 を もっ て い る の か を明 らか に した25). 大 腸 菌 はKdp系 ,Kup系 ,Trk系 とい う3種 類 のK+ 取 込 み 系 を もつ.Kdp系 は, 最 も親 和 性 が 高 いK+ の取 込 み 系 で あ り,KdpABCと い う3種 類 の膜 蛋 白質 か ら構 成 され るPタ イ プ のATPaseで あ る.Kup系 は, 推 定12 回 の膜 貫 通 領 域 を もつ 膜 蛋 白 質 (Kup)の ひ とつ で ,K+ 輸 送 系 を構 成 す る.Trk系 は,TrkH( また はTrkG) と い う膜 蛋 白 質 と, 親 水 性 蛋 白質TrkAとSapDか ら な るK+輸 送 系 で あ る . この よ う に3種 類 のK+ 取 込 み 系 は構 成 蛋 白質 を ま っ た く異 に す る. K+ 取 込 み 系 の 研 究 は 海 洋 細 菌V.alginolyticusで も 進 め られ て い る. こ の 菌 か ら3種 類 のK+ 取 込 み系 の遺 伝 子 (fkuAB,trkAHsupD,ktrAB) が 単 離 さ れ た26-30). そ の うち の 最 も親 和 性 が低 いFku系 の遺 伝 子 動植物と細菌の カチオ ン輸送系の接点 49 (fkuAB) と相 同 性 が あ る遺 伝 子 が 大 腸 菌 の 染 色 体 に も み られ る28). 筆 者 ら は, これ を 大 腸 菌 で 未 同 定 のK+ 取 込 み 系 で あ る と予 想 して い るが , まだ 確 認 して い な い . Fku系 以 外 に , この 菌 は大 腸 菌 と同 じTrk系 (trkAH とsupD) を も つ が27・29),Ktr系 の 遺 伝 子 (ktyAB) は 大 腸 菌 にな く, 新 た なK+ 取 込 み 系 で あ る30).Ktr系 を 構 成 す るKtrBは 膜 蛋 白 質 で ,KtrAは 親 水 性 蛋 白 質 で あ る .KtrBは , 腸 内 連 鎖 球 菌Enterococcus hiraeの Na+ 一ATPaseを 構 成 す るNtpオ ペ ロ ン の 下 流 に あ る NtpJ31) と相 同 性 が あ る.ntpJは ,E.hiraeのNa+ 輸 送 蛋 白 質 の 遺 伝 子 で は な くて ,K+ 取 込 み系 の一 部 を構 成 す る遺 伝 子 で あ るの で ,ktrBと 呼 び 方 を変 更 す る こ とを筆 者 ら は提 案 した30).全 塩 基 配 列 が 報 告 され て い る 細 菌 の う ち約2/3の 種 類 で,ktyAとktrBが 同 時 にみ つ か っ た . また , どち らか1つ だ け もつ 細 菌 は な い . し た が ってKtrAとKtrBは2つ で1つ のK+ 取 込 み 系 を 構 成 して い る と考 え られ る . K+ 取 込 み 系 の 遺 伝 子 は 明 らか とな った が, まだ,K+ 取 込 み の 機 構 は 不 明 で あ る. 最 近 ,K+ 取 込 み 系 の膜 蛋 白 質TrkH/KtrB, お よび 酵 母 や高 等 植 物 のK+ 取 込 み 系 に も, 細 菌 のK+ チ ャネ ル (KcsA)32)のK+ 選 択 透 過 孔33)と類 似 し た 構 造 が 見 い だ され た34). これ に 関 して は ,Ⅱ −1項 で も う少 し詳 し く説 明 す る. 推 定 さ れ る KtrB選 択 透 過 孔 の ア ミノ酸 に部 位 特 異 的 に変 位 を導 入 す る と, 予 想 どお り活 性 変 異 が み られ た35). 細 菌 の す べ て のK+ チ ャ ネ ル のC末 端 と,K+ 取 込 み 系 の 親 水 性 サ ブ ユニ ッ トKtrA/TrkA30・36) に 共 通 す る ア ミノ酸 配 列 が 保 存 さ れ て い て34), さ らに, 動 物 の 電 位 依 存K+ チ ャネ ル の 親 水 性 蛋 白質 (β サ ブ ユ ニ ッ ト)37)との 間 に も関 連 が 示 唆 さ れ た . この よ うに,K+ 輸 送 を め ぐる細 菌 と動 植 物 の チ ャ ネ ル と トラ ン ス ポ ー タ ー の構 造 と機 能 の 相 関 に注 意 が 注 が れ て い る. 4. 浸 透 圧 ダ ウ ン シ ョ ッ ク に 働 く機 械 刺 激 受 容 チ ャ ネ ル 機 械 刺 激 受 容 チ ャ ネ ル と は , 膜 に か か る膨 圧 や 引 張 り力 に よ り制 御 さ れ る チ ャ ネ ル の 総 称 で あ る. 細 菌 ば か りで は な く動 物 細 胞 で も, 電 極 を 用 い た 研 究 か ら そ の よ うな チ ャ ネ ル が 存 在 す る こ とが わ か っ て い る . こ の 分 類 に入 る最 初 の チ ャ ネ ル 遺 伝 子mscL(mechano− sensitive channel large conductance) が ,Kungの グ

ル ー プ に よ っ て 大 腸 菌 か ら取 られ た38).MscLのX線

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50 蛋 白質  核 酸  酵 素  Vol.44  No.13  (1999) 表1細 菌 と 動 植 物 で 相 同 性 が あ る チ ャ ネ ル と ト ラ ン ス ポ ー タ ー 細 菌 のチ ャ ネ ル と トラ ンス ポ ー タ ー と して そ の 役 割 が 言 及 され て い る場 合 は , 文 献43∼47を 引 用 した . 推 定 され るア ミノ酸 配 列 の相 同 性 をGenetyx-Mac(Software Development) で 比較 し, 全 体 で 何 % の ア ミノ 酸 が 一 致 す る か を表 示 した . 結 晶 構 造 解 析 も, 昨 年 末 のScience誌 に 報 告 さ れ た39). 細 菌 細 胞 が 低 張 液 に 曝 さ れ て , 細 胞 内 に水 が 流 入 し細 胞 膜 に膨 圧 が か か る とMscLが 開 き, 細 胞 内 の物 質 を 細 胞 外 に 出 せ る よ う に す る こ とで , 細 胞 が 壊 れ る こ と を防 ぐ生 理 的 役 割 がMscLに あ る と考 え られ て い た. し か しなが ら, 第 二 の機 械 刺 激 受 容 チ ャネルmscS遺 伝 子 の た め か ,mscLを 欠 失 さ せ たamscL大 腸 菌 は浸 透 圧 シ ョ ック に対 して 弱 くな らなか った40).MscLの 生 理 的 役 割 は,mscL遺 伝 子 をV.alginolyticusに 導 入 す る こ とで 初 め て 示 さ れ た41).V.alginolyticusは , 低 張 液 に 曝 さ れ る と溶 菌 しや す い .mscLは この 菌 を浸 透 圧 ダ ウ ン シ ョ ック に対 して抵 抗 性 に した . 最 近 ,mscS遺 伝 子 もク ロ ーニ ン グ され42),MscLとMscSは ア ミノ酸 配 列 に相 同 性 が 見 い だ さ れ な い こ とが 明 ら か と な っ た . 以 上 , 筆 者 らの 研 究 を 中 心 に し て , 細 菌 の カ チ オ ン 輸 送 系 の現 状 を 解 説 した . 次 に , 動 植 物 の カ チ オ ン輸 送 系 と の 関 連 と今 後 の 方 向 を述 べ る .

. 動植物と細菌のカチオン輸送系の接点

1. 細 菌 と 動 植 物 の カ チ オ ン 輸 送 系 の 相 同 性 動 植 物 と細 菌 の 数 多 くの チ ャ ネ ル と トラ ン ス ポ ー タ ー の 間 に, 種 を こ え て ア ミ ノ酸 配 列 上 に相 同 性 が 見 い だ せ る. 例 を表1に 示 す . 以 下 に,K+ 輸 送 体 に焦 点 を 絞 っ て 説 明 す る . A.Kch 細 菌 のKch45) は, 動 物 の 神 経 , 心 臓 細 胞 で 活 発 に 機 能 し て お り, 最 も機 能 解 析 が 進 ん で い るShaker型K+ チ ャ ネ ル (6回膜 貫 通 型 )の ホ モ ロ グ で あ る . 植 物 で も す で に 数 種 類 ホ モ ロ グ 遺 伝 子 が ク ロ ー ン化 さ れ て い る. K+ チ ャネ ル は種 を こ え てK+ 透 過 部 位 の 孔 の ア ミノ 酸 配 列 が 高 度 に保 存 され て い る特 徴 が あ る. 酵 母 , 動 物 , 植 物 に は この ほか に ,2回 ,4回 ,8回 の 膜 貫 通 型 が 見 い だ さ れ て い る が , す べ てK+ 透 過 部 位 の 孔 の ア ミノ酸 配 列 は保 存 さ れ て お り, ス ー パ ー フ ァ ミ リー を 形 成 し て い る. 細 菌 のK+ チ ャネ ルKcsAは , 動 物 の 内 向 き整 流 チ ャ ネ ル の ホ モ ロ グで32),2回 の膜 貫 通 領 域 と, その 間 に挟 まれ たPル ー プ か らな る (M1-P-M2) . 昨 年 , こ の チ ャ ネ ル のX線 に よ る3次 元 構 造 解 析 結 果 が 報 告 さ れ た33).KcsA4個 で1つ の チ ャ ネ ル を構 成 し,K+ 透 過 孔 の 実 体 も明 ら か に さ れ た . B.Trk/Ktr K+ トラ ン ス ポ ー タ ーKtrABの 膜 蛋 白質 サ ブ ユ ニ ッ トで あ るKtrBは ,KcsA様M1−P−M2構 造 が 分 子 内 で4回 くり返 され た チ ャネ ル 構 造 を とる と推 定 された34). KtrBと 同 様 な 構 造 を, 大 腸 菌TrkH, 酵 母 のK+ 取 込 み 系Trk1,Trk2, 高 等 植 物 のK+ 取 込 み 系HKT1に も見 い だ せ る34).Trk/Ktr系 のK+ トラ ンス ポ ー ター に は チ ャ ネ ル 構 造 が 存 在 し, 基 本 的 な 構 造 に 類 似 点 が あ る こ とが わ か り, チ ャ ネ ル と トラ ン ス ポ ー タ ー の 関 係 と し て 興 味 あ る今 後 の課 題 とい え る.KtrBがK+ 取 込 み ト ラ ン ス ポ ー タ ー と し て 機 能 す る に は親 水 性 サ ブ ユ ニ ッ トKtrAが 必 要 で あ る30). 動 物 の 電 位 依 存 性K+ チ ャ ネ ル に も膜 蛋 白 質 α サ ブユ ニ ッ トに 親 水 性 の β サ ブ ユ ニ ッ トが 結 合 し て い る37). しか し, 酵 母 (Trk1,2) や 植 物 (HKT1) のK+ トラ ン ス ポ ー タ ー に 親 水 性 蛋 白 質 が 必 要 で あ る とい う報 告 は され て い な い. また ,Kdp 系 とKupの な か に は,Trk/Ktr系 に み られ るK+ 透 過 孔 構 造 が まだ 見 っ か っ て い ない (Guy:私 信 ).Trk/Ktr 系 の 構 造 が 推 定 さ れ た こ とで , こ の トラ ン ス ポ ー タ ー のK+ 輸 送 機 構 の解 明 が 進 む と期 待 で き る.

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動植物 と細菌のカチオ ン輸送系の接点 51 C.Kup 大 腸 菌 のKupの ホ モ ロ グが 糸 状 菌48}や 高 等 植 物49,50) か ら 見 い だ さ れ て い る. これ らの トラ ン ス ポ ー タ ー は 細 胞 外 か ら内 へK+ を輸 送 す る . さ らに , こ の ホモ ログ の 遺 伝 子 が ヒ トの 遺 伝 子 に も見 い だ せ る と報 告 され て い る50). 2. 大 腸 菌 に お け る 植 物K+ トラ ン スポ ー ター の活 性 発 現 と ス ク リー ニ ン グ 系 の 開 発 原 核 細 胞 由 来 の 膜 蛋 白質 を活 性 発 現 させ る の な ら大 腸 菌 , 真 核 細 胞 由 来 の膜 蛋 白質 を活 性 発 現 さ せ る の な ら酵 母 また は 動 物 細 胞 と い う の が い ま まで の 常 識 で あ る . な か で も, 動 植 物 細 胞 の カ チ オ ン トラ ン ス ポ ー タ ー の 機 能 解 析 に は, 突 然 変 異 体 の 作 製 が 可 能 で バ ッ ク グ ラ ン ド (内 在 性 ) 活 性 の低 い発 現 系 が 構 築 可 能 な 酵 母 は 有 効 な遺 伝 子 発 現 系 で あ る . 実 際 にK+ 取 込 み 系 が 欠 損 した 酵 母 の 突 然 変 異 体 を用 いて , 植 物 のK+ トラ ン ス ポ ー タ ー のKATI51) ,AKTI52) やHKT153) 遺 伝 子 が 単 離 され,KAT54) やHKT153) の 機 能 解 析 も行 なわ れ た . 動 物 細 胞 を 用 い て 行 な わ れ る 電 気 生 理 学 測 定 を 補 完 す る 発 現 系 と し て, ①1次 ス ク リ ー ニ ン グ 系 と し て便 利 , ② 長 期 にお け る生 理 条 件 で の 細 胞 へ の 影 響 を 調 べ ら れ る, 点 で 有 効 で あ る. 大 腸 菌 に お け る真 核 細 胞 由 来 の膜 蛋 白 質 の 活 性 発 現 に つ い て は成 功 例 は 限 られ て い た . こ れ は, 大 腸 菌 と真 核 生 物 の 膜 組 成 , 膜 へ の 輸 送 機 構 , 折 りた た み機 構 な ど が 異 な る こ と や , 大 腸 菌 で の 糖 鎖 修 飾 な ど の機 能 欠 損 が 予 想 さ れ , 実 際 の検 討 が 多 くな され な か っ た た め と想 像 され る . しか し 1993年 , 種 々 の抗 が ん 剤 に対 し て耐 性 を ひ き起 こす 機 能 を も っ たMDR1/P糖 蛋 白 質 が 糖 鎖 非 修 飾 で 機 能 を も っ て 大 腸 菌 で 発 現 し た55). 前 述 した よ う に, 細 菌 と動 植 物 の イ オ ン輸 送 系 の 間 に は 基 本 構 造 に 相 同 性 が み え る . こ の こ と は, も し, マ ル チ ス パ ン型 膜 蛋 白質 が 細 菌 膜 へ 正 規 の 状 態 で組 み 込 まれ る こ とが あ れ ば, 動 植 物 の イ オ ン輸 送 系 が 細 菌 で 機 能 を も っ て 発 現 す る 可 能 性 を 示 唆 し て い る . カ チ オ ン トラ ン ス ポ ー タ ー に つ い て は, 大 腸 菌 に お け る機 能 発 現 の 報 告 は1998年 以 前 は な か っ た . 筆 者 らは , 植 物 のShaker型K+ チ ャネル (KAT1, AKT2)51,56) が 大 腸 菌 のK+ 取 込 み 変 異 を相 補 す る こ と を 見 いだ した57).Ⅱ −1項 に 記 した とお り, 大 腸 菌 の3種 類 の 主 要 なK+ 取 込 み 系 (Kdp,Kup,Trk) と植 物 の K+ トラ ン ス ポ ー タ ーKAT1やAKT2と は相 同 性 は な く, 構 造 の 点 か ら は ま っ た く別 の イ オ ン トラ ン ス ポ ー タ ー で あ る. 大 腸 菌 の こ の3種 類 の トラ ンス ポ ー タ ー の変 異 株 は低 い濃 度 のK+ 培 地 で は増 殖 で きな い . とこ ろ が ,KAT1,AKT2を 発 現 させ る と, 低 いK+ 濃 度 の 培 地 で増 殖 した (図3) . ま た, 植 物 のAtKupト ラ ンス ポ ー タ ー に つ い て も大 腸 菌 のKup変 異 を 含 む3種 類 の 変 異 株 の 活 性 を相 補 した49). 植 物 のK+ トラ ンス ポー タ ー が 細 菌 で も機 能 発 現 す る こ とは 正 規 の コ ン フ ォ メ ー シ ョン を大 腸 菌 膜 で 保 持 して い る こ と を強 く示 唆 して い る. そ こで , そ れ ま で 実 験 的 に証 明 され て い な か っ た ,Shaker型K+ チ ャ ネ ル の トポ ロ ジ ー を大 腸 菌 の発 図3植 物K+ チ ャ ネ ル とK+ トラ ン ス ポ ー タ ー は 細 菌 細 胞 膜 に 機 能 を も っ て 発 現 す る 大 腸 菌 に は2種 類 の膜 系 (外 膜 と 内膜 )が あ る. 外 膜 に はK+ が 自由 に通 過 で き る孔 が あ る. 内 膜 は カ チ オ ン な ど の透 過 の 障 壁 に な る . 内 膜 に は さ ま ざ ま な 物 質 を透 過 させ る トラ ン ス ポ ー タ ー が 存 在 し,K+ 透 過 の た め に はTrk,Kdp,Kup系 が あ る. こ れ ら,3種 のK+ 輸 送 系遺 伝 子 に 変 異 を導 入 し た変 異 株 は, 外 部 に100mMのNaCIを 含 む 培 地 で は30mMのK+ がな い と生 育 で きな い . 植 物 のK+ トラ ンス ポ ー タ ー 遺伝 子 を導 入 す る と,10mNのK+ 濃 度 で も生 育 で きる よ うに なる .植 物 のK+ トラ ンスポ ー タ ーが 細 菌 細 胞 膜 に正 しく組 み込 まれ てい る と示 唆 され る49,57).

(7)

52 蛋 白質  核 酸  酵 素  Vol.44  No.13  (1999) 現 系 で 決 定 した . 疎 水 性 プ ロ ッ トか らは8カ 所 の膜 貫 通 推 定 部 位 が 予 想 され た が , 実 際 は6回 膜 貫 通 で , い ま まで 推 定 さ れ て い た トポ ロ ジ ー で あ る こ と を確 認 し た57). 真 核 細 胞 由 来 の 膜 蛋 白 質 の構 造 解 析 に も原 核 細 胞 の 大 腸 菌 を 用 い る こ とが 可 能 で あ る こ とが 示 され た . お わ り に 細 菌 の イ オ ン輸 送 系 と動 植 物 の イ オ ン輸 送 系 の 間 に は , 機 能 だ け で な く構 造 的 に も共 通 性 が 見 い だ さ れ る. 大 腸 菌 に お け る 動 植 物 の カ チ オ ン トラ ンス ポ ー タ ー の機 能 的 相 補 が報 告 さ れ た . これ らの 結 果 は, 以 下 の よ うな 期 待 と課 題 を 生 み 出 し た . ① 動 植 物 の イ オ ン輸 送 系 の 構 造 と機 能 解 析 系 , 大 量 発 現 系 と して , 細 菌 を 用 い る. ② 植 物 の 生 育 環 境 適 応 域 を広 げ る (耐 塩 ・耐 乾 植 物 を創 造 す る ) 目 的 で , 細 菌 の イ オ ン輸 送 系 を植 物 に 導 入 す る . ③ 動 物 の マ ル チ ス パ ン型 膜 蛋 白 質 の小 胞 体 膜 へ の 組 込 み 機 構 解 明 の た め に, モ デ ル 系 と して 細 菌 の マ ル チ ス パ ン型 膜 蛋 白 質 の細 胞 膜 へ の組 込 み機 構 を研 究 す る. こ の3種 の テ ー マ は, そ れ ぞ れ か な り重 要 な 内 容 を 含 ん で い る . 今 後 , 種 を こ え た カ チ オ ン トラ ン ス ポ ー タ ー の 研 究 成 果 が 導 き 出 さ れ る こ とを期 待 し て い る . 筆者 らの研究 をサポー トして くれ た多 くの研究者 に, ここに感 謝 の意 を表します. 文 献 (文献 番 号 を 太 字 に した もの は と く に重 要 で あ る こ とを示 す )

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大 阪 府 立母 子 保 健 総 合 医療 セ ン タ ー研 究 所 免 疫 部 門

ボ ス ドク ・流 動 研 究 員 ・大 学 院 生 若 干 名

研 究 内容 :ケ モ カ イ ン と造 血 , 免疫 系 形成 / ケモ カ イ ン と血 管 形成 / ケ モ カ イ ン に よる細 胞 内 シ グナ ル伝 達 / 発生 , 免 疫 系 に お け る新 しい ケ モ カイ ンの機 能/ ほか 参 考文 献 :Nature,382,635(1996) ;Nature,393,591 (1998);PNAS,96,5663(1999) ;実 験 医 学,17,727, 1082(1999) 応 募資 格 :研 究 に意 欲 を もつ 理 系大 学 学部 卒 , お よ び大 学 院 修 士 ・博 士 課 程 修 了 者 勤務 地 :層大 阪府 和 泉 市 室 堂 町 身分 :ボス ドク (博 士 課 程 修 了 者) また は これ と同等 と 認 めた 人 は 日本 学 術 振 興 会研 究員 を称 す る こ とが で き る. あ るい は 当部 門 流 動 研究 員 . 大学 院 生 は大 阪 大 学 大 学 院 医学 研 究 科 院 生 (本部 門 は大 阪大 学 連携 大 学 院 ). 提 出 書 類 :ボ ス ドク ・流 動 研 究 員 :履 歴 書 (写 真 添 付 ), 簡 単 な 研 究 歴 と業 績 リ ス ト. 習 得 し て い る 実 験 技 術 も 簡 単 に お 書 き 添 え くだ さ い . 大 学 院 生 :下 記 ま で 連 絡 くだ さ い . (出 願 :平 成11年12月 ) 採 用 期 間 :ボ ス ドク ・流 動 研 究 員 は 年 度 ご との 契 約 で , 最 長 で 平 成16年3月 ま で . 問 合 せ 先 :〒594-1101大 阪 府 和 泉 市 室 堂 町840 大 阪 府 立 母 子 保 健 総 合 医 療 セ ン タ ー 研 究 所 免 疫 部 門 長 澤 丘 司 Te1.0725-56-1220ext.5301FAX0725-57-3021 E-mail:immunol@osk.3web.ne.jp

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