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Ⅰ. 野菜摂取の現状は? 図 1は 1 人 1 年当たりの野菜消費量の推移を示している 平成の初めに Kg あった野菜消費量が徐々に減少して 平成 20 年には 95Kg 前後でとこの 20 年で約 18% 減少している 同じ調査で果実類の消費量が横ばいであることを考えると 国民の野菜

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野菜類の活用による

健康長寿長野県および地域活性化の推進

(創り出そう!長寿世界一長野県の新しい野菜食〜質も量も〜) 健康長寿に効果のある 機能性成分豊かな品種の育成 新たな産地つくり 新しい加工食品の開発 健康長寿に効果のある 野菜食の提案 野菜花き試験場育種部 主任研究員 芹澤啓明 研究員 関 功介 技師 平賀正浩

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Ⅰ.野菜摂取の現状は? 図1は、1人1年当たりの野菜消費量の推移を示している。平成の初めに 110 〜105Kg あった野菜消費量が徐々に減少して、平成 20 年には 95Kg 前後でとこの 20 年で約 18%減少している。同じ調査で果実類の消費量が横ばいであることを 考えると、国民の野菜離れが進んでいるといえる。 図2は、世代別に見た野菜摂取量を示している。厚生労働省は成人の1日当 たりの野菜摂取目標量を 350g としているが、平成 20 年国民健康・栄養調査に よると、実際の摂取量は 300gに届かないのが現状である。また、世代間で比較 すると 20 代〜40 代の摂取量が少ないことがわかる。野菜をあまり摂取しない世 代が高齢になったときの生活習慣病患者、医療費の増加が容易に予想される。 帝京大学の石川は、「大学生の野菜の摂取状況」(帝京大学文学部教育学科紀 要 30:27-36)のなかで、「アメリカでは、乳製品と肉類の消費が縮小し、野菜、 果物、穀類の消費が上昇している。肉では、牛肉から脂肪分の少ない鶏肉の消 費が上昇している。イギリスでも同じような傾向を示している。日本では、肉 類、乳製品が増加し、穀類が減少している。野菜と果物も減少しており、健康 寿命を延ばそうとしている日本は、発展途上国と同様な現象が見られる」とし ている。また、この中で石川は、大学生の野菜の摂り方がサラダか炒め物に偏 っており、そのため購入する野菜自体にも偏りがあり緑黄色野菜の摂取が不足 していることを明らかにした。また、一般に健康維持や栄養補助として考えら れている野菜ジュースや各種サプリメント類の利用がほとんど無いことも明ら かにした。

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図1 野菜消費量の推移(1人1年当たり[消費量 Kg/年・人])

資料:「平成19年度食料需給表」(農林水産省)

図2 世代別に見た野菜摂取量(1人1日当たり)[g(グラム)]

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Ⅱ.野菜消費減少の要因は? 野菜の消費が減少してきた要因は、第一に「食生活の洋風化」が考えられる。 従来の日本型食生活から、肉や乳製品、脂肪分を多く摂取する欧米型の食生活 への移行は、野菜消費減少の大きな要因である。表1には、野菜の生産量の推 移を、図3には品目別1人当たりの野菜購入量の推移を示した。従来からの日 本型食生活で使われるハクサイ、ダイコンなどの生産量や消費量が大きく減少 しているが、洋風料理やサラダに使われるレタス、トマトなどの生産量や消費 量は増加している。 表2には、戦前から戦後にかけての肉類、油脂類の供給量の推移を示してい る。これによると肉類、油脂類ともに戦前に比較して 10 倍以上を摂取するよう になり、このことが日本人の平均寿命世界一に導いた要因の一つであり、生活 習慣病増加の要因でもある。 第二に「食の外部化」「食の簡便化」などの現象も要因として考えられる。 外食やコンビニ食品の利用やレトルト食品やカップ麺等の普及は、栄養バラン スの良いとされてきた日本型食生活を、脂肪分が多く野菜の少ない食生活へと 大きく変化させてきた(表2)。 前出の石川は、「従来の日本の食形態である一汁三菜と呼ばれるような献立の 概念が消失しつつあることによると考えられる。献立で栄養のバランスを考え るという従来の食のあり方とは異なり、戦後の食形態の変化は、核家族化、個 食、共働き夫婦の増大、このことによる食の外部化、また中食(副食を購入し て自宅で食事するという形態)の発達で、面倒である野菜の調理が敬遠された ことによると思われる。」としている。

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表1 野菜生産量の推移 図3 品目別1人当たりの野菜購入量の推移

2   野菜の消費を めぐ る 最近の状況

  我が国の1 人当たり 野菜消費量は、 最近10年間で約1 割減少し ており 、 平成16年度は92.9 kg と な っ て いま す。 野菜の消費動向を 緑黄色野菜と その他の野菜に分けてみる と 、 緑黄色野菜 が、 平成16年度には25.3 kgと こ こ 数年は安定し ている のに対し て、 その他の野菜は平成16年度 には67.6 kgと なっ ており 、 近年、 減少傾向で 推移し て いま す。   品目別に見る と 、 洋食メ ニュ ーの増加等によ り 、 サラ ダ等に用いら れる レ タ ス やト マ ト な ど の消費量は増加し て いる も のの、 煮物や漬物な ど に用いら れる だいこ んやはく さ いな どの重量 野菜の消費量は大き く 減少し て いま す。 ( 図3 ) 図3   品目別1 人当たり の野菜購入量の推移

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Ⅲ.栄養過多と栄養不足 太田明一は、「機能性食品今昔物語〜過去から未来に向けて〜」(FOOD STYLE21 2009 3 月号)の中で、大学生協東京事業連合が調査した「食品群別達成率」の 結果から、現在の食生活では油脂のような栄養成分を過剰に摂取している一方 で、ある栄養素については十分摂取できていない個人がいることを懸念してい る。このような状況を改善するために、「より多く摂取した方が良い成分を手軽 に補給する手段として機能性食品を利用することは賢明な選択」としている。 表2 肉類、油脂類等の食糧供給量の推移 農林水産省「食料需給表」経済安定本部「戦前戦後の食料事情」より 出所:機能性食品今昔物語 Ⅳ.日本人の寿命 日本人の平均寿命は、2012 年時点で男 79.94 歳(世界 5 位)、女 86.41 歳(世 界 1 位)になった。世界全体の平均寿命は 70 歳で、1990 年に比べて6年長くな った。これは、医療関連技術の進歩や食料事情の改善等が主な理由であると考 えられるが、日本はこの 100 年前後で寿命が2倍近く延びたことになる。 2000 年に WHO が健康寿命という新しい概念を示し、以降、健康で長生きでき る社会づくりが行政の大きな目標の一つとなっている。疾病予防や健康増進、 介護予防などにより健康寿命が長くなれば、個人の生活の質の低下を防ぐとと もに、医療費や介護費といった社会保障負担の軽減も期待できる。

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表3 日本人の平均寿命

出所:機能性食品今昔物語

図4 日本人の平均寿命の推移

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Ⅴ.生活習慣病とは? 生活習慣病の定義(厚生労働省) 「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関 与する疾患群」 具体的には、がん、糖尿病、脳卒中、心臓病、脂質異常症、高血圧、肥満(メ タボリックシンドローム)などが生活習慣病として挙げられる。昭和 30 年代に は「成人病」と言われていたが、成人病の多くについて「加齢すれば必ず罹患 しやすくなるのではなく、生活習慣の改善により予防し得る」という認識を広 めようと 1996 年に「生活習慣病」と改めた。 予防および対策として本提案に関連する点は、「野菜類の積極的な摂取」であ る。国内外の多くの研究から、生活習慣病予防に野菜の積極的な摂取が有効で あることが明らかにされている。 図5 日本人の平均寿命の推移 (出所 社会実情データ図録)         死因別死亡率の長期推移の図は、 克服すべき 病気の種類が過去から 大き く 変貌を 遂げている 状 況を 示し て いる ( 死亡率全体の推移は図録1553参照) 。   戦前の死亡原因と し て も っ と も 深刻だっ たのは、 肺炎や胃腸炎と いっ た感染症であっ た。 肺炎 と こ こ で はあら わし ていない気管支炎を 合計する と 1899年から 1922年ま で第1 位の死因であっ た。 特に1918年から 20年ま ではイ ン フ ルエ ン ザの世界的な流行( いわゆる スペイ ン 風邪) があ り 、 日本でも 高い死亡率を 示し た。 平凡社大百科事典よ れば「 世界中でこ のイ ン フ ルエ ン ザによ り 、 約2500万人の死者を 算し たと 推定さ れ、 細菌学的医学の勝利に冷水を あびせ、 大戦の死者を はる かにし のぐ 伝染病の猛威のま え に、 「 疫病の時代はま だ去っ ていない」 と 疫学者を し て 嘆じ さ せた。 日本で も 罹患者2500万、 死者38万余と いう こ れま でにない惨禍を も たら し た。 」 と さ れ る 。   感染症が猛威を 振る っ ていた時代における 大都市の平均寿命の低さ については図録7254参照。 戦前の食中毒死者数の多さ については図録1964参照。   1930年代から 戦後し ばら く は結核が死因第1 位と なっ た。 戦後、 結核に有効な化学療法が開発 さ れたのを 契機と し て、 BCG接種によ る 予防、 ツ ベルク リ ン 検査、 全国民一律の胸部 X 線検査に よ る 患者発見、 さ ら に化学療法によ る 治療を あわせてた対策によ り 結核事情は一変し た。 日本の 医療機器において X 線検査装置を はじ めと する 画像診断機器が世界的な競争力を 有し ている ( た だし 普及版において ) のも 当時の取り 組みが元である ( 図録5400参照) 。 ま た、 こ の時の成功体 験がかつて医療費問題のひと つと し て 大き く ク ロ ーズア ッ プ さ れた検査漬けにも 結びついた。   第2 次大戦後、 栄養状態の改善やサルフ ァ 剤、 抗生物質などの出現にと も ない感染性疾患が大 幅に減少し 、 結核対策も 進んだ結果、 こ れら に代わっ て 悪性新生物( がん) 、 脳血管疾患、 心臓 疾患など 老化と 結びついた疾患が増大し てき た。 1957年頃から こ れら は3 大成人病と 称さ れ、 主 たる 克服対象と なっ た。 その後、 1996年ご ろ から は、 3 大成人病を はじ めと し て糖尿病、 慢性肝 疾患など が、 永い年月を 経ての各個人の生活習慣と それら の疾患の発症と の間に深い関係がある こ と が明ら かになっ て き ている こ と から 、 成人病は新たに「 生活習慣病」 と 称さ れる よ う になっ た。   近年の特徴と し ては、 生活習慣病の中でも 脳血管疾患の死亡率が低下する 中で悪性新生物 ( 癌) と 心疾患の死亡率が傾向的に上昇し て いる 点、 高齢者が肺炎が死ぬこ と が多く なっ て いる サイ ト 内検索 検索 関連図録 1553 出生率と 死亡率の 長期推移 1955 イ ン フ ルエ ン ザに よ る 死亡数の推移 1962 熱中症死亡者数の 推移 1964 食中毒によ る 死者 数の推移 2050 寿命・ 健康ロスの 大き な病気・ 傷害 ( DALY値) 2070 死亡場所の推移と 各国比較 2100 死因別死亡率の推 移( 日米) 2120 心臓病( 虚血性心 疾患) 死亡率 ( OECD諸国) 2122 脳血管疾患死亡率 ( OECD諸国) 2158 がんの部位別死亡 者数・ 死亡率 2158aがんの部位別年齢 調整死亡率 2160 がんの治療成績の 推移 2230 肥満と 心臓病( 国 ご と の相関) 長野県の保 険の見直し や相談は www.nagano-hc.c… 相談でき る ・ 納得 で き る ・ 解決で き る ! あなたの街の 保険のホームド ク タ ーへ

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図6 主な疾病別一般診療医療費増加率の年次推移 (厚生労働省国民医療費より)、出所:中央大学保健センター「けんこう横町」 図6には、主な疾病別の一般診療費増加率の年次推移を示している。生活習慣 病の診療費は一般診療費の約3分の1を占めており、今後も糖尿病を中心に生 活習慣病そしてその診療費の増加が予想されている(図7)。 図7 栄養素等摂取量と糖尿病受療率の年次推移 (厚生労働省国民健康・栄養調査および厚生労働省患者調査より)、出所:中央大学保健センター「けんこう横町」

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Ⅵ.食品の機能性とは(機能性食品とは)? 中国の「薬食同源」やインドのアーユルヴェーダにみられるように、多くの 国、特に東洋では食べることが健康に深く関わるという考え方が古くから存在 していた。 (1)研究のながれ(日本) 1960 年代、日本は高度経済成長期となり食物や食品は生命の維持だけでなく、 味や香りを楽しむとともに美味しさを追求されるようになった。経済成長とと もに日本は飽食の時代へと突入し、食事の摂り過ぎ(表2)と運動不足による 生活習慣病発症への不安を抱える時代を迎えることになった。このような状況 の中、高齢化社会の到来(図5)と食品研究の進歩により、1980 年代には、肥 満、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病を予防する食品成分が注目さ れることとなった。東京大学農学部の荒井綜一博士らは、疾病リスクを軽減す る食品を機能性食品と名付け、1984 年に文部省重点領域「機能性食品」研究班 を立ち上げ、世界で初めて食品のもつ機能性に関する体系的な研究を行った。 荒井博士らは、機能性食品を「生活習慣病の一次予防のはたらきをもつ新食品」 と定義している。 厚生労働省は機能性食品を次のように定義している。 「(定義)食品成分のもつ生体防御、体調リズム調節、疾病の予防と回復等に係 る体調調節機能性を、生体に対し十分に発現できるよう設計し、加工された食 品であること。」 (2)研究のながれ(アメリカ) 植物性の食品成分によりがんや生活習慣病を予防するための研究に、アメリ カの国立がん研究所が行った「デザイナーフーズ計画」がある(図7)。この研 究により植物性食品数万種に含まれる化学物質のうち、約 600 種の化学物質に がん予防効果の可能性があると判断された。カテキンなどのポリフェノール群 や野菜、果物、海藻類に含まれるカロテノイド群、ハーブなどに含まれるテル ペンなどの揮発性成分などである。これらの予防効果が期待される食品および 食品成分のなかから約 40 種類を選び、作られたのが「デザイナーフーズ・ピラ ミッド」である。計画自体は中止されたが、この「デザイナー・ピラミッド」 はいまでも機能性食品関連でよく利用されている。

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表2 日本人の食事摂取基準(2010 年版)

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図 6 高齢者人口の推移 ※ 高齢化社会、高齢社会の定義 高齢化社会:人口構造が高齢化していく状態にある社会をいう。 総人口に占める高齢(65 歳以上)人口の割合で示す。 高齢社会:高齢化の進展がある程度に達し、ほぼ定常状態になる社会 を高齢社会という。

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図7 「デザイナーフーズ・ピラミッド」 メロン バジル タラゴン エンバケ ハッカ オレガノ キュウリ タイム アサツキ セージ ローズマリー ジャガイモ 大麦 ベリー類 タマネギ 茶 ターメリック 玄米 全粒小麦 オレンジ     レモン グレープフルーツ      

アブラナ科野菜(芽キャベツ・

   ブロッコリー・カリフラワー)

  

ナス科野菜(トマト・ピーマン

・ナス) ニンニク  

キャベツ

甘草 ダイズ ショウガ ニンジン

セルリ

パースニップ

デザイナーフーズ計画  (アメリカ国立がん研究所より) 

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Ⅶ.野菜の持つ生活習慣病予防、健康維持効果とは? 野菜をはじめ植物性食品には、ビタミン、ミネラル等の栄養成分だけでなく 抗酸化作用、発がん予防機能、抗炎症作用、抗アレルギー作用、血圧調節作用 などのヒトの健康維持や疾病予防に係る「生体調節機能」≒機能性を有する様々 な成分が含まれていることが明らかになってきた(表3、4、5、図8)。 (1)抗酸化作用 ヒトは酸素を利用しエネルギーを作り出す。その副作用として生成する活性 酸素の強い毒性にさらされる。活性酸素は免疫システムや肝臓等の中で重要な 役割を果たすが、一方でストレスや喫煙などにより過剰に生成される場合は問 題となる。様々な要因により蓄積された活性酸素による損傷は、老化の促進や 様々な生活習慣病の要因になることが明らかにされている。 一方、野菜類にはアスコルビン酸(ビタミン C)、ポリフェノール化合物、カ ロテノイド、トコフェロール(ビタミン E)など、活性酸素を取り除き酸化を抑 える作用=抗酸化作用を持つ成分が含まれている。活性酸素が引き起こす様々 な生活習慣病の予防に役立つものと期待されている(図8)。 (2)発がん予防作用 活性酸素は遺伝子を傷つけ突然変異を起こしたり発がん物質の攻撃を助長す るため、がんの発生に大きく関わっている。ゆえに活性酸素を除去する機能で ある抗酸化作用は発がん予防に重要であり抗酸化物質は発がん予防に有効であ るといえる。植物性食品の中には、抗酸化作用のほかに「免疫機能を高める作 用」や「発がん性物質解毒する作用」を有するものもあり、これらの機能も発 がん抑制に重要な役割を果たす(表5)。 (3)生体防御機構(免疫機能)の制御機能 生体防御機構は免疫機能と呼ばれ、病原体や毒素などの外来異物のみでなく、 自己の異常細胞(がん細胞や感染細胞)や老廃物を異物と認識して排除し、身 体を守るしくみである。免疫機能を担う物質は、身体を守る役割持つが過剰に 生産されるような状況では炎症やアレルギーを引き起こす原因となる。植物性 食品の中には、生体防御機構を活性化するものや抑制するものがあることがわ かっている。

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(4)抗血栓作用 血小板の凝集を抑制して血栓の形成を防ぐ作用であり、脳血栓や心筋梗塞な どに寄与する。 (5)血圧調節作用 高血圧症は動脈硬化の原因となり、心臓病や脳卒中を引き起こす。日本人の 死亡原因の 28%が心臓病(心臓疾患)と脳卒中(脳血管疾患)で、原因となる 高血圧症の予防は重要な課題である。 高血圧症は摂取する食品成分との関連が明らかになっており、血圧を上げる 最も影響のある成分は食塩である。逆に血圧を下げる成分はカリウム、カルシ ウムやマグネシウムで、これらを多く含む野菜や果物の摂取は血圧を下げ、心 臓疾患や脳血管疾患を減少させるものと考えられている。 野菜や果物に多く含まれるフラボノイドであるケルセチンやアントシアニン には、血圧降下作用が認められている。 (6)肥満・糖尿病予防機能 野菜はそれ自体が低カロリーであるため、肥満防止効果が期待できる。また 野菜などの植物性食品に含まれる食物繊維は、胃や腸での糖および脂肪分の吸 収を遅らせることで急激な血糖値上昇を抑制しインスリンの過剰な分泌を防ぐ 作用がある。

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表3 植物性食品に含まれる主要な機能性成分とその機能

(出所 野菜茶業研究所 研究資料第 9 号 2011(平成 23)年 10 月 「野菜の機能性研究の現状と今後の研究課題」)

表4 植物性食品に含まれる主要なフラボノイド

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図8 カロテノイド類とビタミンEの一重項酸素消去活性

(出所 野菜茶業研究所 研究資料第 9 号 2011(平成 23)年 10 月「野菜の機能性研究の現状と今後の研究課題」)

表5 発がん予防効果が期待されている植物成分

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Ⅷ.長野県野菜花き試験場における機能性育種 (1)アブラナ科野菜

長野県野菜花き試験場は前身である長野県園芸試験場時代にキャベツ類の育 種を開始し、これまでにキャベツ3品種「SE」、「YRSE」、「YRSE2 号」、ケール2 品種「ドリンクリーフ」、「ハイパール」を育成した。これまでは育種目標を病 害抵抗性や多収性としていたが、ハイパール育成に当たり機能性成分含有量を 育種目標とした成分育種を行った。 平成 22 年(2010)に長・野交 46 号を、機能性成分「グルコラファニン」高 含有を特徴とするケール新品種「ハイパール」として品種登録出願した。 平成 23〜25 年の 3 カ年の現地試験を経て、平成 26 年度 6 月から共同研究機 関ヤクルトヘルスフーズ株式会社が「ハイパール」を原料とする青汁を発売す る。 (2)加工用トマト 長野県野菜花き試験場は前身である長野県農業試験場桔梗ヶ原分場時代に始 まり、これまでに加工用(ジュース)トマト7品種「しゅほう」、「しょうほう」、 「なつのしゅん」、「らくゆたか」、「ホールファイン」、「リコボール」、「なつゆ たか」を育成した。 トマトの赤色は「リコペン」といわれるフラボノイド系色素で、機能性成分 として広く認知されている。平成 19 年(2007)には、機能性成分「リコペン」 を多く含む F1 系統を育成し、「リコボール」として品種登録出願した。

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Ⅸ.これまでのまとめ 1)野菜の消費が減少している。特に若者で顕著である。 2)野菜消費の減少は、「食生活の欧米化」や「食の外部化、簡便化」が要因 として考えられる。 3)カロリーの過剰摂取がある一方で、栄養分によっては不足する人もいる と考えられる。 4)野菜摂取の重要性を教育することは(食育)は重要であるが、長い時間 と根気が必要である。 4)日本人の平均寿命は世界最高となり、これからは健康寿命の延伸が課題 となっている。 5)栄養過剰摂取や高齢化等により、生活習慣病が増加し同時に医療費も 増加している。 6)古くから食と健康の関わりが知られており、野菜の積極的な摂取がおよ ぼす健康への良い影響が科学的に証明されている。 7)野菜花き試験場育種部では、野菜の機能性成分を高めた品種育成の能力 を有している。 Ⅹ.結論 したがって、野菜摂取、健康、長生き、医療費、地域振興等を鑑み、 「栄養面や疾病対策の面から有効な成分は天然の野菜から摂取するのが望ま しいし、野菜からの摂取では特定成分の過剰摂取の心配も少ないが、実際の摂 取を考えれば有効成分を機能性食品等の形で摂取することは十分メリットがあ る。また、栄養素や最近の科学的な知見から、より多く摂取した方が良い成分 を手軽に補給する手段として機能性食品を利用することは賢明な選択である」 と考える。さらに「新しい品種や製品の開発・普及は新たな需要を創り出す可 能性があり、地域振興や農業振興の面からも十分魅力的」であることから、「機 能性成分を豊富に含む野菜品種を育種し、それを利用した新しい野菜食を開発、 普及すること」は、国や長野県が進めている健康で長生きできる社会の創出に 貢献できるものである。

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Ⅺ.プロジェクト 1.何を提案するのか? 我々研究グループは、国や長野県が進めている健康で長生きできる社会の創 出に「機能性成分を豊富に含む野菜品種を育種し、それを利用した新しい野菜 食を開発、普及すること」で貢献する。 2.課題解決の流れと役割分担 1)機能性成分を高含有する新品種を育成する(長野県野菜花き試験場)。 2)対象とする野菜に含まれる機能性成分の種類と量を明らかにし、新たな 機能性成分を検索する(長野県工業技術総合センター食品技術部門)。 3)対象とする機能性成分および組み合わせによる複合的な機能性をヒトに おいて医学的に検証し、現実的で効果的な摂取方法を明らかにする(医学、 薬学系大学)。 3)食品として多くの人に利用される良食味のレシピを考案する(同上)。 4)複数の野菜を原料として複数の機能性成分を豊富に有するおいしくて簡 便な新しい野菜食(新鮮野菜、野菜加工食品等)を開発する(食品加工会 社、農業生産法人、農家等)。 5)新品種の栽培産地を育成し、新製品の原料供給を安定させる(農業改良 普及センター、園芸畜産課、JA、各自治体等)。 6)開発した製品等を、健康で長生きできる社会の創出に有効なツールであ ることを確認し、行政施策の中で長期的に活用する(健康長寿課、職員課、 各自治体等)。

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3.今何ができるのか? (1)野菜花き試験場 ・アブラナ科野菜の機能性成分高含有品種の育成 対象成分:グルコシノレート類、カロテノイド類、フラボノイド類 ・加工用トマトの機能性成分高含有品種の育成 対象成分:カロテノイド類 (2)工業技術総合センター食品技術部門 ・野菜類に含有される機能性成分の定性・定量分析によるデータベースの 構築 (3)大学 ・培養細胞、実験動物およびヒト介入試験による機能性成分の機能性等の 検証 ・原料の組み合わせや調理法による良食味レシピの開発 ・マーケティング調査による市場動向や消費者意識の把握 (4)食品加工会社・農家等 ・開発したレシピやマーケティング調査結果に基づく試作品の開発 ・開発製品による販売促進 (5)農業改良普及センター・園芸畜産課等 ・新品種に適した栽培方法や産地の育成 (6)健康長寿課・職員課 ・健康で長生きできる社会創出のための新品種・新製品の PR や利用促進 ・職員の健康診断およびそのデータの利用による、研究サポートおよび検 証への参加 ・県民、市民への啓蒙活動 (7)予算の裏付け 1)県費=県素材開発研究費 2)農林水産省の競争的資金獲得を目指す。 「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業」 [実用技術開発ステージ] <育種対応型 B タイプ> (8)協力したい組織 1)松本市(健康寿命延伸都市構想を表明)

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4.実現に向けて(平成 26 年の具体的な提案) 課題名 健康長寿に役立つ野菜新品種育成とそれを利用した野菜加工食品の開発と普及 応募事業 農林水産省・「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業」 予算規模 1千万円以内 研究期間 平成 14 年〜18 年(5年間) 研究リーダー 長野県野菜花き試験場育種部 主任研究員 芹澤啓明 共同研究機関 長野県工業技術総合センター食品技術部門 国立大学法人 お茶の水女子大学生活科学部 ゴールドパック株式会社 農業生産者

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提案課題の概要図 ● ● ! ! ! ! ! ) ) !

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研究グループの構成 研究グループの構成 - 機関名 主な役割 代表機関 長野県野菜花き試験場 全体総括、機能性成分高含有品種 の育成 共 同 研 究 機 関 お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 機能性成分の作用性の検証とヒト 介入試験の実施 長野県工業技術総合センター 食品技術部門 機能性成分に関するデータベース の構築 ゴールドパック株式会社 新製品の開発・普及 実需者 ゴールドパック株式会社 新品種の加工特性等の評価 生産者 〇〇〇〇 新品種の栽培試験補助 (アブラナ科) 〇〇〇〇 新品種の栽培試験補助 (加工トマト) ! ! ! ! ! ! ! !!!! ! ! ! ! !!!! ! ! ! !! ! ! !! ! ! ! !

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Ⅰ.本提案の必要性について (1)科学的・技術的観点からの研究目的 (機能性成分高含有品種・系統の作出について) 野菜類には生活習慣病を予防し、健康維持に役立つ複数の機能性成分が含ま れている。本課題で対象とするアブラナ科野菜には機能性成分として含硫化合 物であるグルコシノレート類(以降GSL)が含まれている。「この成分は、これ までに120種類以上が同定されているアブラナ科野菜独特な味や香りを特徴づ ける香辛成分で、抗炎症効果やピロリ菌感染抑制効果がヒトで確認されている。 最近では生活習慣病予防やがん予防についても報告され、GSLの一種であるグル コラファニン(以降GRA)の機能性研究やアブラナ科野菜における成分育種が欧 米で盛んに進められているが、ブロッコリースプラウト以外で含有量の高い品 種は育成されていない」。長野県野菜花き試験場では世界で初めてGRA含有量100 〜300mg/100g新鮮葉重(従来品種の30〜100倍)で有害成分とされるGSLのひと つであるプロゴイトリンの含有量の低いケール品種「ハイパール」を育成した。 また、これまで世界でも実用例のないダイコンとケールの交配種「ラファノブ ラシカ」を作出し、その成分構成が両親に固有の成分を併せ持つこと、同時に 量的にも増加することを発見し、実用化を検討している。 2つめの対象である加工用トマトは、機能性成分そして赤色色素として有名 な「リコペン」の摂取源として重要である。リコペンは、高い抗酸化力があり 生活習慣病やがん予防効果があるとして注目されている。長野県野菜花き試験 場では、これまでに高リコペン加工用トマト品種「リコボール」(リコペン含有 量17.8mg/100g新鮮重、従来品種の2〜3倍)と品質に優れるジュース用トマト 「なつゆたか」(リコペン含有量11.4mg/100g新鮮重)の2品種を育成した。こ の育成過程で、よりリコペン含有量の高い育種素材も見つかり新しい高リコペ ン系統の作出を進めている。 野菜の持つ生活習慣病予防や健康維持の効果は広く知られているにもかかわ らず、現実には厚生労働省の目標とする「1日350g以上の野菜摂取」は達成で きていない。このような状況の中で本研究グループは、野菜摂取不足を補う手 段として機能性成分高含有作物及び品種を育成し、それらを原料とする美味し くて健康長寿に役立つ野菜加工食品を開発、多くの消費者に提供する。

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(機能性の検証と新製品開発について) GRAとリコペンは、単独では疾病予防効果について多くの報告がなされている 有名な機能性成分ではあるが、両成分の組み合わせによる作用性や効果につい ての報告は少ない。また、GSLの供給源であるアブラナ科野菜のジュースは、青 汁として広く認知され、トマトはジュース原料として世界で最も使われている 野菜である。 本研究グループでは、これら認知度の高い2つの野菜を組み合わせた研究材 料を供試することで、GSLとリコペンそして他の含硫成分(ビタミンU等)や植 物色素(ルテイン等)の実験動物やヒトに対する作用性や機能性に関する基礎 的知見を蓄積し、より良い製品を開発する。 (2)社会的・国民的観点からの研究目的 毎日、口にする食品により病気を予防する。これは世界中の全ての人の望み である。それもできるだけ安価に簡単に。 多くの疫学調査からアブラナ科野菜やトマト類の摂取と疾病リスク軽減効果 が証明されている。キャベツ、ダイコン、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜 とトマト類は生産、加工現場だけでなく普段の食生活においても最も重要な野 菜である。本研究では、アブラナ科野菜に含まれる機能性成分「グルコラファ ニン」とトマト類に含まれる機能性成分「リコペン」を高含有する品種を原料 とした健康長寿に役立つ機能性食品を開発、提供することを目的とする。 (研究の背景) ①消費者は安全で機能性が確かめられている食品を欲している。 本研究グループが研究対象とする機能性成分「グルコラファニン」と「リコ ペン」は、それぞれが複数の疾病予防や生活習慣病予防が確認されている成分 で、「グルコラファニン」はブロッコリーで、「リコペン」はトマトに含まれる 機能性成分として広く一般に認知されている。 ②加工業者は他社と差別化を図ることのできる原料を探している。 機能性成分「グルコラファニン」の高含有を謳うケール品種は、長野県野菜 花き試験場が育成した「ハイパール」以外になく、本研究においては長野県野 菜花き試験場育成の「ハイパール」♀親系統を利用することで、新たなグルコ ラファニンリッチな新品種を開発することが可能である。また、加工用トマト では「リコボール」育成中に作出された高リコペン育種素材を利用することで、 高リコペンの固定系統作出が可能である。

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機能性が確かめられている成分を安価にかつ簡便に摂取できる商品を提供す ることは、他社との差別化だけでなく消費者への大きなアピールとなる。 ③農家は収益性が高く、省力的な作物の導入を望んでいる。 本研究で育成するアブラナ科野菜新品種と加工用トマト新品種は、高機能性 成分含有以外に多収・省力を育種目標としている。したがって、主に高齢化や 兼業化が進む中山間地域へ普及・定着する品種育成を目標とする。 (3)地域貢献的観点からの研究目的 中山間地域の農業は、農業者の高齢化、後継者不足、生産物の価格低迷さら には有害鳥獣による被害など、多くの問題を抱えている。こうした中で小規模 農家、兼業農家や高齢者、定年退職後の農業初心者にとって省力、高収益な付 加価値の高い生産物が加工原料としてその販路が確保される体制が整うことは、 農業生産・経営を行う上で極めて重要な視点である。 本研究では、省力で付加価値の高いアブラナ科野菜と加工用トマトの新品種 を核として、生産・流通・利用体制を構築・展開することで中山間地域におけ る農業振興を目的とする。 2.行政施策等との関係について (1)公募要領別紙5に示す「新品種・新技術の開発・保護・普及の方針」を 踏まえた「育種課題」との関係について 本課題では、アブラナ科野菜の「グルコラファニン」と加工用トマトの「リ コペン」という機能性成分を多く含有するアブラナ科野菜と加工用トマトの品 種開発を行うことを目的としており、育種課題の野菜【需要拡大が期待される 品種】「伝統野菜や機能性成分等に着目した品種開発」に合致している。 (2)公募要領別紙4に示す「行政施策推進上課題解決を早急に図る必要性の 高い課題(行政課題)」との関係について 本課題で対象としている「グルコラファニン」と「リコペン」は機能性成分 として広く認知されており、多くの研究結果から多くの疾病リスク軽減効 果が知られている。これらの成分を多く含む品種を開発し、それらを原料 とする加工食品を開発・普及することで食料産業局の行政課題「医食農連 携による健康維持・増進のための技術開発」や農林水産技術会議事務局の 「生活習慣病の予防に寄与する食品・飲料の開発及び海外展開」の課題解 決に貢献できる。 また、分析技術・加工技術や貯蔵技術を開発・改良しすでに知名度が高い青

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汁やトマトジュースに加工することで生産局の行政課題「食の多様化・簡便化 や健康志向に対応した国産野菜の需要開拓のための技術開発」、「地域作物の需 要拡大に資する品種・用途・加工法・貯蔵法等の開発」の課題解決に貢献でき る。 3.本研究における最終目標・成果 1)機能性成分高含有アブラナ科野菜新品種と高リコペン加工用トマトF1親系 統を4系統作出する。 2)育成に利用した育種素材に含まれる機能性成分及び類縁成分についての データベースを構築する。 3)機能性成分の複合的な作用性や機能性についての基礎的知見を蓄積し、 新品種作出や新製品の開発・普及に役立てる。 4)試作品の試験販売を目標とする。

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Ⅱ.本提案の効率性について(研究課題の構成、年次計画および予算額は除く) 1.研究計画・方法等 (1)研究課題及び研究項目ごとの研究内容 1.機能性成分高含有品種の作出 本中課題においては、「グルコラファニン」を主としたグルコシノレート類 の含有量を高めたアブラナ科野菜を2品種と高リコペン加工用トマトの F1親 系統の 10 系統を育成する。 (1) グルコシノレート類高含有育種素材および新品種の育成(長野県野菜花 き試験場) 本小課題においては、「ハイパール」の♀親系統である「長・野 49 号」を 交配親として用い、もう一方の交配親にダイコン雄性不稔育成系統およびア ブラナ科野菜育成系統を用いることで、機能性成分高含有アブラナ科野菜新 品種を育成する。 (2) 「リコペン」高含有系統の作出および育種素材の検索 本小課題においては、高リコペン加工用トマト「リコボール」育成過程で 作出した交配組み合わせ系統を育種素材として、リコペン含有量の向上とそ の他形質の揃いなど固定度向上をはかり、新しい F1品種親系統を育成する。 2.野菜類に含有される機能性成分に関するデータベースの構築 本中課題においては、対象とする野菜類に含有される機能性成分(主に含 硫化合物および植物色素)の質的、量的特性について分析し、データベース 化を目指す。 (1) アブラナ科野菜および加工用トマトに含有される機能性成分のデータベ ース構築(長野県工業技術総合センター) 本小課題においては、LCMS 等を用い対象とする野菜類に含有される機能性 成分の質的、量的特性について分析し、成分的特性のデータを収集する。 3.機能性の検証と効果的な摂取方法の開発 本中課題においては、育成中の系統から抽出した機能性成分と試作した 野菜ジュースを供試して培養細胞及び実験動物、ヒトでの機能性を検証す る。また、機能性成分の濃度や摂取量、原材料の混合比や食味等を検討し、 美味しくて効果的に機能性成分を摂取できるレシピを作る。 (1) 培養細胞および実験動物による機能性の検証 本小課題においては、育成中の系統から抽出した機能性成分と試作した

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野菜ジュースを供試して実験細胞および実験動物で機能性を検証する。 (2) ヒト介入試験による機能性の検証 本小課題においては、試作した野菜ジュースを供試して、ヒトで機能性 を定期健康診断データ等を利用して検証する。 (3) 効果的な摂取方法の開発 本小課題においては、機能性成分の濃度や摂取量、原材料の混合割合や 食味等を検討し、美味しくて効果的に機能性成分を摂取できるレシピを作 る。また、ゴールドパック(株)と共同して小規模なマーケティング調査 を実施する。 4.普及支援業務 本中課題においては、育成途中の育種系統を素材に試作品の製造を試みる。 また、品種や系統が育成できた段階で、品種等の栽培特性や成分特性に関す る現地実証試験やマーケティング調査を実施し、機能性成分豊かな野菜ジュ ース新製品を開発する。 (1) 現地実証試験と製品開発(ゴールドパック株式会社) 本小課題においては、育成した品種・系統を供試し栽培特性や成分特性 に関する現地実証試験を実施し、機能性成分豊かな野菜ジュース新製品を 開発する。 (2) 試作品製造と食育(長野県工業技術総合センター) 本小課題においては、育成途中の育種系統を素材に小規模製造装置によ り試作品を製造する。 (2)目標値設定の具体的な根拠 成果①:長野県野菜花き試験場はアブラナ科野菜、加工トマトともに 20 年以上の研究蓄積があり多くの育種素材を保有している。これ までの研究から本研究課題解決のための育種素材はすでに絞ら れている。 成果②:長野県工業技術総合センターは、食品の成分分析を業務として おり植物色素、含硫化合物に関する分析技術と分析経験を有し ている。また、機能性成分の分析に必要な LCMS 等分析装置を有 している。 成果③:お茶の水女子大学は、含硫化合物等の機能性成分を対象とした

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研究を行っている。培養細胞等での研究データはこれまでにも 得られている。ただし、最終試作品ができあがるタイミングは 研究期間後半になる。ヒトを対象とした試験は、分析に時間が かかることが予想される。 成果④:お茶の水女子大学では、多くの食品会社と加工食品の開発を手 がけた経験があり、美味しくて機能性成分を効率的に摂取可能 な野菜ジュースレシピを考案できる。 成果⑤:ゴールドパック株式会社は、トマトを主力とする野菜ジュース の製造販売会社である。これまでに多くの製品の開発製造を行 ってきた。 2.共同研究体制 (1)参画機関(代表機関及び共同研究機関)の役割分担 1)長野県野菜花き試験場は、機能性成分を高含有するアブラナ科野菜およ び加工用トマトの新品種・新系統を育成する。また、育成した品種・系統 を各共同機関に原材料として提供する。 2)長野県工業技術総合センターは、アブラナ科野菜および加工用トマトに 含有される機能性成分の質的・量的特性を明らかにし、育種系統に含まれ る機能性成分のデータベースを構築する。また、小規模な試作品製造も担 当し、製品開発後は製品を利用した食育活動を実施する。 3)お茶の水大学は、培養細胞、実験動物そしてヒトにおける新品種・新系 統および新製品の作用性や機能性を解明する。また、美味しくて効率的に 機能性成分を摂取できる新しい野菜ジュースのレシピを考案する。 4)ゴールドパック株式会社は、育成品種・系統の現地実証試験および新製 品の開発・販売を担当する。 長野県野菜花き試験場と長野県工業技術総合センターは、機能性成分の分 析等で現在も共同研究を実施している。お茶の水女子大学が参加することに より分析可能な対象成分が広がるとともに、医学的データの取得が可能にな る。これにより、新しく開発する機能性成分豊かな野菜ジュースの価値と信 頼性を高めることになる。 また、製品を開発・製造・販売するゴールドパック株式会社が参加するこ とで、すべての課題や目標が製品を作るためのレベルに設定され、各担当課 題において高いレベルの成果が期待できる。

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(2)実需者、生産者等の役割分担 1)実需者(ゴールドパック株式会社)は、育成品種・系統の現地実証試験 および新製品の開発・販売を担当する。ゴールドパック株式会社の参画に より、開発した製品の実用レベルでの製造販売そして普及が実現可能とな る。 2)生産者は、育成品種・系統の現地試験を実施し当該品種・系統について 評価、現場での問題点の指摘などを行う。これにより、より現場目線での 品種開発や栽培技術の開発が可能となる。 3.研究成果により期待されるマクロ的な経済効果 1)主に対象とする成分が「グルコラファニン」と「リコペン」であること、 原料がアブラナ科野菜とトマトであるなどから世界的に受け入れられる可能 性はある。 ①欧米ではグルコラファニン(スルフォラファン)サプリメントは広く知 られており、グルコラファニンを利用するための研究や育種が進められてい る。 ②中国や台湾では野草や薬草の青汁を飲用する習慣があり、本研究の成果 を広く普及できる可能性は高い。 ③トマトジュースは、世界で最もよく飲まれている飲料の一つである。 2)農業分野では、新しい作目・品種として新しい産地形成が期待される。 食品加工分野では、青汁、野菜ジュース、健康食品、トクホ等新たな製品 開発とともに新しい加工技術の開発も期待される。2006 年の時点で青汁の市 場規模は 620 億円、野菜ジュースは 1713 億円、健康食品は1兆 1350 億円、 特定保健用食品は 7100 億円ある。また、サプリメントはアメリカを中心に多 くの製品が存在し、日本だけでなく欧米およびアジア諸国を視野に入れ ると野菜ジュースとサプリメントを合わせて 100 億円単位での市場が期待で きる。 医療分野では、医薬品原料としての利用も十分考えられるが、最も現実的 なところではピロリ菌の増殖抑制や胃炎や胃潰瘍などに対する炎症抑制効果 のある食品としての利用が考えられる。

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4.地域施策との関連について (1)地域で推進すべき施策との整合性 長野県では、「第2期食と農業・農村振興計画」(平成25〜29年度)を策定 し、その中で「信州ブランドの確立とマーケットの創出」を掲げている。 本研究で取り上げる機能性成分高含有の野菜品種の開発とそれを利用した 製品開発はこれに合致している。 (2)研究課題について、研究グループとしての地域での活動状況 ◎アブラナ科野菜(ケール育成品種:ハイパール) 2011年は、長野県野菜花き試験場、JA全農長野と民間ジュースメーカー の三者で研究グループを結成し、2農業法人、1農家を対象に試験栽培を 実施した。 2011〜2013年の活動 1)先進地視察1回、取組検討会2回/年、栽培検討会4回/年 2)地区担当の農業改良普及センターと連携し、栽培指導、収穫調査等を 行った。 ◎加工用トマト(長野県育成品種:リコボール) 2013 年に、市町村、JA、長野県等で組織する「おいしい信州ふーど松本 地域活動協議会」に「リコボール産地形成事業」として参画し、農業生産・ 加工・流通・販売関係者から成る信州農商工連携研究会と共同で「リコボ ール」の生産、加工、販売を一貫して実施した。本年度はトマトの機能性 (リコペン)をアピールした高付加価値のジュース、ケチャップ等を開発、 販路開拓し、一定の販売実績を挙げた。次年度も継続実施する予定。

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Ⅲ.本提案の有効性について 1.目標とする成果により目指す効果及び普及の取組み (1)当該品種の現場への導入・普及・実用化・産地化により目指す効果 育成する機能性成分高含有アブラナ科野菜および加工用トマト品種等を、 長野県内レタス根腐病発生ほ場においてレタスの輪作作物として 20ha、 長野県内加工用トマト栽培面積 160ha に加え、集落営農組織等へ新品種 等を導入して 30ha の生産拡大をはかる。 根拠が明らかな機能性を有する加工食品が、多くの消費者から要望され ている。広く認知されている 2 つ以上の原料を組み合わせることや含有 される機能性成分の質的・量的な特性を解明することは、従来の類似製 品に比べさらなる付加価値をもたらす。 (2)当該技術の現場等への適応可能性を確認するための取組及び普及・実用 化に向けた体制 1)新品種等の栽培・成分特性等に関する現地実証試験 アブラナ科野菜は1a 規模を基本とし、加工用トマトは5a を基本に、 各品目3農家で試験を実施する。対象農家の選定・契約等はゴールドパ ック株式会社が行い、栽培指導、分析サンプル採取等は、農業改良普及 センター、地元 JA の協力を得ながら長野県野菜花き試験場、長野県工業 技術総合センター、お茶の水女子大学が実施する。 2)機能性成分高含有新品種等を利用した野菜ジュース新製品の普及 新製品の開発・製造元であるゴールドパック株式会社による販売促進活 動を中心に、長野県の展開する「信州おいしいふーど(風土)」での認定、 長野県工業技術総合センターが行う食育活動を通じて、新製品の普及拡 大を進める。 2.期待される効果 本研究により開発される新品種等や技術の普及面積や波及効果は、製品 の売れ行きに大きく依存するところであるが、過去に育成したケール「ド リンクリーフ」の普及地域である長野市、千曲市、飯山市周辺では、現 在でも加工用野菜への取り組みに意欲的であり、この地域を対象とした 新規作目として機能性成分「グルコラファニン」高含有ケールの 10ha 程 度の普及の可能性は高い。現時点でケール類の今後5年の栽培面積を 10ha と期待すると、機能性成分高含有ケール「ハイパール」の加工品製

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造に係わる産業で年間1〜4億円程度の経済効果が期待できる。グルコ ラファニンを含むグルコシノレート類は多くのアブラナ科野菜に存在す る成分で、本研究成果である分析技術等は、多くのアブラナ科野菜にお ける成分的な研究や味に関する研究の基盤技術になるものと考えられる。 また、長野県は加工用トマトの栽培が 160ha 程度あるが、近年高齢化な どにより毎年 10ha 規模で減少している。長野県内にはジュース用トマト を利用する国内主要加工メーカーが6社ある。健康飲料として広く認知 されているトマトジュースとキャベツ類を組み合わせることで、より機 能性の高い飲料の開発・普及とそれによる農業振興も期待できる。 3.国民生活への貢献 本研究の成果として作り出される機能性野菜や機能性食品により、花粉 症や胃炎と言った多くの国民が悩む疾病を毎日の食事により軽減するこ とが期待される。また、成分分析技術等の利用により新たな機能性野菜 や新品種が育成されることにより、野菜への関心や興味が増し、野菜の 消費拡大に貢献することができる。最も現実的なところではピロリ菌の 増殖抑制や胃炎や胃潰瘍などの炎症抑制効果のある食品としての利用が 考えられる。胃がんは毎年5万人が死亡する病気であるが、ピロリ菌が 主要因とする説もあり、ピロリ菌の感染抑制は胃がんの予防に繋がる可 能性がある。また胃炎や胃潰瘍の多くはストレスにより発症するが、ピ ロリ菌が原因となることも知られておりこれらの症状軽減に利用できる 可能性がある。これらの国民的な疾病を予防又は症状軽減することは、 国民の生活の質の向上のみならず増大する医療費の削減にも貢献するこ とができる。

参照

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