<第 7 回 ITS シンポジウム 2008>
医療情報デジタル伝送システム導入のための
アンテナ設置方策の検討~石川県加賀地域を事例として~
高山 純一*1 中山 晶一朗*2 福田 正輝*3 岩井 慎太郎*4 金沢大学理工研究域環境デザイン学系*1 金沢大学理工研究域環境デザイン学系*2 金沢大学大学院自然科学研究科*3 富山県富山土木センター*4 救急救命活動は,迅速で的確な対応が求められており,患者を医療機関へ早急に搬送するだけではなく, 初期の救命処置活動も効率的に行うことが必要である.最近では,医療分野における情報通信技術の導入が 試みられており,救急車から患者に関するデータや動画を医療機関へ伝送する医療情報デジタル伝送システ ム導入のための実証実験が行われている.そこで,本研究では,医療情報デジタル伝送システムを導入する ためのアンテナ基地局設置場所の最適化方策を提案するとともに,石川県加賀地域においての導入計画につ いて検討し考察する.The examination of the antenna setting plan for medical
information digital transmission system
A case study of the antenna setting plan for Kaga,Ishikawa
Jun-ichi Takayama *1 Shoichiro Nakayama *2 Masaki Fukuda *3 Shintaro Iwai*4
Science and Technology Study Field of Environmental Design Engineering,Kanazawa University *1
Science and Technology Study Field of Environmental Design Engineering,Kanazawa University *2
Graduate School of Natural Science & Technology,Kanazawa University *3
Toyama Civil Engineering Center,Toyama Prefecture *4
The emergency lifesaving activity demands precise correspondence with swiftness. Therefore it is important that we transport it immediately to a medical institution.Besides,it is necessary to perform early lifesaving measures activity effectively. Recently, information and communication technology is going to be introduced in a medical field.For example,a proof experiment for medical information digital transmission system that transmits data of a patient and an animation to a medical institution from an ambulance is performed. Therefore, in this study, I suggest the optimization plan for the setting place of the antenna base station to introduce a medical information digital transmission system. And I examine and consider the introduction plan for Kaga, Ishikawa .
Keyword: Emergency medical care, prehospital care, medical information digital transmission system
1.はじめに 1-1 研究の背景 現在,救急医療は慢性的な医師不足や救急患者の 受け入れ拒否など,多くの問題を抱えており,救急 医療体制の整備・充実は重要な課題である.特に高 齢化が急速に進んでいる過疎地域では,医療機関の 数が少なく,遠方の医療機関まで行かなければ診療 を受けることができないケースが多いため,深刻化 している. また,地方の都道府県における三次救急医療機関 は,県庁所在地などの主要都市に立地していること が多く,三次救急医療機関への搬送時間の地域間格 差が指摘されており,三次救急活動の充実が全国的 に求められている. 重篤救急患者を中心に扱う三次救急医療において, 救命率を向上させるためには,患者を迅速に搬送す るのみならず,プレホスピタルケア(病院前救護) の充実を図ることが重要である.現在,救急救命士 は,特定行為と呼ばれる心肺停止傷病者への処置行 為である除細動,気管挿管,薬剤投与が医師の具体 的な指示に基づいて行うことが可能であり,救急救 命士の処置行為に関する法整備が整えられている.
プレホスピタルケアの中心的役割は救急救命士が担 うため,救急救命士自身の医療知識や技術を向上さ せていくことの重要性が認識されるとともに,搬送 中の重症患者の容態など医療情報の伝送が重要であ り,救急救命士と医師がいかに綿密な連携を図るこ とができるかが救命率向上の鍵になる. 1-2 救急医療分野における ITS 技術の利用 近年,ITS技術の発達は目覚しく,道路交通問題に おけるさまざまな分野において導入されている.国 土交通省道路局ITS推進室が示している 9 つの開発 分野1)において,救急医療に関係するITSの利用分 野として「緊急車両の運転支援」がある.緊急車両 経路誘導と救援活動支援に関する既存研究として, 折田ら2)は, ITSの導入を図ることが肝要であると 考え,救急医療活動における搬送状況を把握すると ともに一般道路および高速道路の問題点を整理し, 救急医療活動支援のためのITS整備について検討し ている.分析では問題解決のための9 種類のITSを提 案し,これらを,救急隊員を被験者としたヒアリン グ調査を行うことにより,その有用性,有効性を検 証している.また,救急活動における諸問題を構造 化,明確化し,提案したITSの整備優先順位について 言及している.小池ら3)は,緊急自動車が走行する 上で阻害となる要因の一つとして赤現示や交差点付 近での信号待ち車両による渋滞を取り上げ,信号制 御導入の有用性やセンサーの設置位置について検討 している.その方法としては,信号交差点においけ る緊急自動車の挙動を把握するため,ビデオ撮影に よって観察し,それをもとにシミュレーションによ り再現し,優先信号制御のあり方について考察して いる.高山ら4)は,三次救急搬送業務を対象とした 救急ITS技術である情報提供による最適経路への誘 導システムの導入効果について,単純な仮想ネット ワークならびに金沢市の道路ネットワークを対象に, その有用性を検証している.検討方法としては,救 急拠点~事故現場~救急医療機関の間の旅行時間を 一つの指標として設定し,①人間の経験によって経 路選択を行った場合と,②情報提供によって最適経 路へ誘導した場合のそれぞれについて,一定期間, シミュレーションを行い,2 パターンの旅行時間を 比較することにより,その有用性を検討している. 1-3 医療情報デジタル伝送システムの概要 医療分野における IT 技術の新たな利用方法とし て,救急車を対象とした医療情報デジタル伝送シス テムの導入が検討されており,医療機関と消防機関 が連携して,実証実験が行われている. 現在,救急車と医療機関との間の通信手段として, 救急無線の他に携帯電話を用いた音声による通話が 一般的である.前述の通り,救急車における救急救 命活動においては,救急救命士と搬送先となる医療 機関の医師は,密にコミュニケーションを取らなけ ればならないが,患者の容態を正確に伝えるために 時間を要する場合がある.そこで,患者の心電図や 血圧などの詳細なモニターデータ(バイタルデータ) や救急車患者全体像が把握できるような静止画・動 画の画像データを医療機関に伝送し,医師は授受し たデータを参考にし,救急救命士に処置の指示・指 導を行う医療情報デジタル伝送システムが有用であ ると考えられている. 総務省関東総合通信局による調査研究5)によれば, 横浜市立大学医学部と野村総合研究所が,平成 15 年 12 月に全国の救急センターに対して実施した調 査によると,救急車から救命救急センターに画像が 送られてくることに対するニーズは高く,8 割近い 救急救命センターが画像情報を必要としていると報 告されており,救急車からの医療情報伝送に関して 注目していることが伺える. 1-4 VHF マルチホップ無線システムの利用 医療情報デジタル伝送システムを導入する際に利 用する無線システムとして,多様な無線システムが 候補として挙げられる.救急業務用高度医療情報伝 送システムに関する検討会報告書6)によると,携帯 電話や無線LAN,VHFマルチホップ無線システムな どの無線システムの利用が検討されている. 携帯電話等の公衆無線システムは,連続したゾー ンとして全国で利用されており,通信エリアも広く, コストも相当低減できると考えられる.一方,救急 業務用としての用途からは,災害時の輻輳の影響を 最小限にとどめる必要があり,専用回線システムと して構築することが望ましいと考えられる.このた め,動画像を中心とした多様な情報が伝送できるこ とに加えて,災害時にも十分な信頼性があり,1 基 地局当たりの通信可能エリアが比較的広く,基地局 設置の自由度も高い「VHF マルチホップ無線システ ム」を,救急車からの医療情報デジタル伝送システ ムに利用することが望ましいと考える. VHFマルチホップ無線システム7)は,将来の自営 系の無線システムとして,独立行政法人情報通信研 究機構が中心となり研究を進めてきたものである. このシステムは,IP技術を用いたデジタル通信シス テムであり,多量な情報の伝送を行う能力を持つと ともに,動画などの大容量の伝送を必要とするシス
テムにも適応可能な柔軟性を備えている.さらに, VHF帯を前提とした一つの無線区間で数km程度の 伝送も可能であり,基地局を用いた中継通信機能に 加えて,基地局を介さずに移動局同士でも中継通信 を実現する移動局間マルチホップ通信機能の実現が 可能であり,柔軟なネットワーク構成にも対応でき る.また,地震時などの災害時においては,直接通 信では通信不可能な状況に陥ることが予想されるが, 中継端末を介して通信リンクを確立することができ るため,応用範囲も広い通信システムである. 1-5 研究の目的 三次救急医療機関への搬送活動を効率的に実施し, 充実したプレホスピタルケアを可能にするためには, 医療情報デジタル伝送システムを導入する必要があ ると考えられる.また, 近年多発する自然災害やテ ロ災害に備えて,混乱の生じる可能性の高い既存の 通信システム(携帯電話や無線LAN)を用いるので はなく,公共用としての無線システムの新規確立が 必要であると考えられる. そこで,本研究では救急業務用の医療情報デジタ ル伝送システムを確立するために,VHF マルチホッ プ無線システムの利用を想定したアンテナ基地局を 効率的に配置する方策を検討するとともに,実際に 石川県加賀地域においての導入を検討することを目 的とする. 2.研究の流れ 2-1 研究の概要 重篤救急患者を扱う三次救急活動は,他の救急活 動の場合と異なり,搬送先の医療機関が限られてい るため,搬送するルートとして特定の幹線道路や高 速道路を選択しているという特徴を持つ. そこで,現場から三次救急医療機関までの救急車 の走行経路を把握し,よく利用している走行経路付 近を中心に,医療機関までの距離や現場からアンテ ナ基地局までの搬送時間を考慮して,アンテナ基地 局の設置場所を検討する. まず,救急車が現場から三次救急医療機関に搬送 する際に利用する走行経路を把握する方法から述べ る.救急車は,一般的に経路選択をする場合に,現 場から医療機関までを最短時間で到達できる経路を 選定する.しかし場合によっては,時間帯によって 渋滞をさけるために迂回路を選択することや,患者 の容態によっては路面状況を考慮して振動の起こり にくい経路を選定しているのが現状であり,救急車 の経路選択においては救急隊員の経験に頼る場合が 多いと考えられる.そこで,アンテナ基地局設置対 象エリアとする石川県白山市・小松市・加賀市の各 消防署の救急隊員を対象にアンケート調査を実施し, 各市における救急車の搬送経路を把握した. 次に,アンテナ基地局の設置場所の検討方法につ いて記述する.アンテナ基地局は,救急車がよく走 行する経路に設置することで,より多くの搬送事例 で画像伝送を行う事が可能となる.一般的に救急車 の走行経路は医療機関に近づくにつれて,枝分かれ していた経路が集約されていくことになり,医療機 関に近い経路ほど,利用頻度の高い経路であると想 定される.しかし,画像伝送のタイミングとしては, 現場に到着してからより速いタイミングにおいて行 うことが望ましく,特に三次救急患者における初期 治療は一分一秒を争う問題であり,早期において医 師からの適切な助言をもらう事が救命率の向上につ ながると考えられる.また,医療機関に近い場所に アンテナ基地局を設置しても,すぐに医療機関に到 着してしまうため,その効果は医療機関から遠い地 域にアンテナを設置する場合と比較すると,かなり 低いものになってしまう. そこで,単純に救急車がよく利用する走行経路付 近にアンテナを設置する検討を行うのではなく,各 種条件の下で救急要請場所からの搬送時間を考慮し た評価式を設定することにより,アンテナの配置場 所を検討する. 2-2 アンケート調査について 白山市,小松市,加賀市の各消防署・分署の救急 隊員を対象として,救急車の走行経路の決定要素と その決定要素の重要度,および救急車輌の走行経路 の実態を把握するために,アンケート調査を行った. アンケートの回収率と,調査項目を表2-1,表 2-2 に 示す.調査時期は,平成18 年 11 月である. 表 2-1 アンケートの回収率 白山市 小松市 加賀市 合計 配布枚数 125 18 52 195 回答枚数 65 15 27 107 回収率(%) 52.0 83.3 51.9 54.9 表 2-2 調査項目 調査項目 内容 ・高速・一般国道の平均及び最高走行速度 ・経路選択の決定要素 ・走行経路 三次救急活動に ・三次救急活動の評価・課題 対する意向・要望 ・今後求められる整備内容 ・性別 ・年齢 ・勤務地 ・救急救命士の資格の有無など 調査対象 ・白山市・小松市・加賀市の各消防署・分署の救急隊員 走行経路調査 個人属性
2-3 主要交差点立ち寄り回数の推定 アンケート調査結果をもとに,救急車の主要交差 点立ち寄り回数を集計し,各交差点への立ち寄り回 数を推計するモデルを構築する. アンケート調査において,対象地域の自治体ごと の管轄エリア内で8 パターンの発生場所を想定し, 発生場所ごとに救急隊員に搬送先の病院を指定して もらい,その搬送先の病院までの走行ルートを実際 に地図上に記入して頂き,走行経路を把握した.こ の調査結果を参考にして,よく利用する事が予想さ れる主要交差点を20 箇所ピックアップする.把握し た経路数は,白山市520 経路,小松市 120 経路,加 賀市216 経路であり,全経路において,主要交差点 に立ち寄る回数を,各発生場所の人口及び各自治体 内の年間の救急要請件数をもとに算出する. 算出した20 箇所における交差点の救急車の立ち寄 り回数をもとに,2-2 で示した走行経路の決定要素ア ンケートにより評価値が比較的高かった,「走行距 離」「路面状況」「道路幅員」「渋滞の度合い」を説明 変数として,各交差点での立ち寄り回数を算出する モデル式を構築する.パラメータの推定は線形回帰 式を用いて算出した.なお,説明変数として表 2-3 に示すデータを用いる.また,各市におけるパラメ ータ推定を行った結果を表2-4 に示す. 表 2-3 説明変数に用いるデータ 表 2-4 各市におけるパラメータ推定結果 パラメータ パラメータ パラメータ 平均距離 0.021 0.26 0.049 1.66 -0.445 -6.85 ** 路面状況 -1.536 -2.03 * -0.154 -0.60 0.499 1.57 車線数 1.346 1.07 -0.112 -0.39 1.378 5.99 ** 車線幅員 -0.974 -0.64 -0.612 -1.45 0.040 0.07 沿道状況 0.268 0.17 0.336 0.60 -0.437 -0.80 混雑度 -5.148 -1.90 -0.345 -0.48 -0.098 -0.12 交通量 0.000 3.00 ** 0.000 0.23 0.000 -0.74 人口 0.001 5.63 ** 0.001 10.09 ** 0.000 4.59 ** その他 0.181 0.98 -0.142 -2.54 * -0.326 -4.55 ** 決定係数R2 加賀市 0.818 t値 t値 t値 白山市 0.648 小松市 0.855 **1%有意 *5%有意 2-4 救命曲線の算出 現場からアンテナ基地局までの搬送時間を考慮す るために,カーラーの救命曲線に着目し,搬送時間 による生存曲線を算出する.この救命曲線は,日本 で行われている応急手当の講習会などでよく用いら れ て い る も の で あ り , フ ラ ン ス の 救 急 専 門 医 M.CARA が 1981 年に報告した,傷病してから応急 手当を施すまでの経過時間と死亡率を表したもので ある.これによると,心臓停止では3 分,呼吸停止 では10 分,多量出血では 30 分放置すると死亡率が 約50%に達するとされている. しかし,カーラーの救命曲線を表す関数式は,現 段階では詳細に求められていない.そこで,本研究 では次のような手順で救命曲線の関数式を算出した. まず,カーラーの救命曲線における各症状の経過時 間と死亡率の関係のグラフを用いて,目視で値を読 み取り,Excel で数表として再度表現する.そして, Excel 統計ソフトのツールである関数式の当てはめ を用いることで近似的に関数式を算出する方法を用 いた.さまざまな関数式に当てはめた結果,5 次式 が最も精度の高い関数式となったため,それを用い ることとした.そして,各症状において異なる生存 曲線も,症状ごとに分類されている状態では実用的 ではないため,日本人の過去5 年間における死亡要 因の割合をもとに,重み付けをして1 本の曲線とし て式(2.1)を算出した. また,生存曲線にアンテナ基地局の設置による導 入効果を考慮する必要があるが.画像伝送が搬送患 者に与える効果は現在のところ未知数である.そこ で,以下の二つの文献を参考にして,導入効果を設 定する.柳川らの研究8)では,医師が救急車に同乗 するドクターカーシステムの導入による効果を検証 しており,ドクターカーシステムの導入により患者 の生存率が約 10%向上したと報告している.また, 救急業務用高度医療情報伝送システムに関する検討 会報告書6)によると,医療機関へのヒアリング調査 では,画像伝送を行うタイミングとして,収容及び
最初の救急処置の終了後または処置中に実施するフ ァーストコールにあわせた時期,またはその場合が 困難であってもファーストコールに付随する情報と して収容から 10 分間程度の間に画像伝送を開始で きると有意義であるという見解が得られている.以 上より,アンテナ基地局の設置効果を,医療情報デ ジタル伝送効果(ここでは,ドクターカーを導入し た場合の救命率の向上効果と等しいとみなす)と, アンテナ設置場所が救急要請現場に限りなく近けれ ば生存率が10%向上し,救急要請場所からアンテナ 基地局の通信可能エリアに到達するまでの搬送時間 により,毎分 1%ごとに生存率が減少していくよう に設定するする.以下に,生存率の推定式(2.1)およ び,パラメータの推定結果を示す.
{
+ + + + +α
−β
}
− =1 ( 5 ) 5 4 4 3 3 2 2 1t a t a t a t a t b a r (2.1) 100 10−tij =β
(2.2)r
:生存率t
:搬送時間(分) 1a
~a
5,b
:パラメータα
:医療情報デジタル伝送による効果(α
=0.9)β
:通信開始時間を考慮したパラメータ ijt
:救急要請場所i
から主要交差点j
に到着するま での時間(分)(t
ij≤
10
) 表 2-5 パラメータ推定結果 係数 a1 13.2975 係数 a2 -0.6990 係数 a3 0.0185 係数 a4 -0.0002 係数 a5 0.0000 定数項 b -12.7727 2-5 アンテナ設置場所の評価式の定式化 アンテナの設置場所を検討する際,設置予定場所 にアンテナを設置したときの効果を表す必要がある. そこで,本研究では交差点通過時に何人の生存者と 通信可能であるのかを考えて,それを主要交差点の 評価指標として捉えて,最大化することを考える. 評価値を求める方法としては,主要交差点立寄り回 数と算出したカーラーの救命曲線から求める各主要 交差点での生存率を掛け合わせて,救急車が各主要 交差点を通過する際に生存している患者数を算出す る.さらに,アンテナ基地局の設置台数に応じて, 主要交差点の評価値を足し合わせて最大となる交差 点の組み合わせを最適なアンテナ設置場所の組み合 わせとする.また,制約条件としてアンテナの設置 台数とアンテナ基地局同士の距離を設定し,これら を0-1 整数計画問題として定式化する. 最大化: j j j jR
x
a
z
=
∑
(2.3) 制約条件:∑
=
j jp
x
(2.4)d
j≥
l
(2.5)x
j∈
{ }
0
,
1
(2.6)z
:アンテナ設置場所の評価値 ja
:主要交差点番号j
の立ち寄り回数 j R :主要交差点番号j
での生存率 j x :アンテナ設置場所の有無(0,1 変数)j
:主要交差点番号p
:アンテナの設置台数 j d :アンテナ基地局同士の距離l
:アンテナ基地局同士の制約条件 3.石川県加賀地域への適用 3-1 アンテナ基地局の設置場所 本研究で導入を考えている医療情報デジタル伝送 システムは,災害時の運用も期待されるため,災害 等により停電した場合でも一定の通信が確保できる ように,予備電源設備の整備も必要であり,予備電 源設備の整備も求められる.そのため,アンテナ基 地局の設置場所としては学校や市役所,図書館等の 各種公共施設を対象とすることにする. 3-2 アンテナ基地局の諸条件 本通信システムにおけるアンテナ基地局 1 施設当 たりの通信可能エリアは,アンテナ設置場所を中心 として半径約2km である.これより,救急車の平均 走行速度が45km/h であることから,1 基地局あたり の通信可能時間が約5 分と推測できる.これは,ア ンケート調査の質問要項の必要な通信可能時間の平 均 4.5 分を満たしているため,アンテナ基地局は 1 施設を配置することで画像伝送を行う時間を確保で きると考えられる. また,アンテナ基地局の配置を考える場合は,ア ンテナ基地局を効率的に配置するために基地局設置 場所となる公共施設が互いに隣接していないもの同 士を選択する必要がある.そこで,互いのアンテナ 基地局の通信可能エリアが重ならないように,今回 は基地局設置場所間の距離が4km 以上確保されてい ることを選定の条件とした.また,アンテナ基地局の設置台数を 3 施設として 設定し,最適な配置の検討を行った. 管轄エリア NO. 候補地点 1 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 2 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 3 30 31 32 33 34 35 4 5 6 7 8 9 図 3-1VHFマルチホップ無線システムのイメージ6) 3-3 アンテナ基地局設置場所の検証 3-3-1 作業の手順 対象地域の学校・役場・図書館等の公共施設をピ ックアップし,公共施設が隣接している施設同士は まとめてひとつの候補地点に絞って候補地点を抽出 する.次に,各候補地点から半径2km 以内の各交差 点評価値の平均をとり,それをその候補地点の評価 値とする.そして,その評価値が最も高くなる候補 地点の選択組み合わせを対象地域の最も効果的なア ンテナ基地局の配置場所とする. 3-3-2 小松市を対象としたアンテナ配置の検証 各候補地の評価値の組み合わせ計算を行い,全て の組み合わせの中から合計した評価値が高い上位 10 位までの組み合わせを表 3-1 に示す.また,アン テナの設置候補地点と配置図を表 3-2 と図 3-2 に示 す.紙面の都合上,小松市の計算結果のみを示す. 表 3-1 組み合わせ計算結果 順位 評価値 1 8 9 33 4 2 8 33 35 46.9 3 8 22 33 44.8 4 22 31 33 4 5 8 28 33 43 5 8 18 33 43 5 8 17 33 43 8 20 33 35 4 9 26 33 35 4 10 8 20 33 4 施設番号 8.1 3.8 2.1 2 2 表 3-2 アンテナ基地局設置候補地点 施設番号 施設名 救助可能人数(人/年)施設番号 施設名 救助可能人数(人/年) 1 小松市役所 14.9 19 西尾小学校 0.0 2 南支所 2.3 20 東陵小学校 6.2 3 芦城小学校 12.6 21 那谷小学校 0.8 4 波佐谷小学校 0.0 22 能美小学校 8.9 5 矢田野小学校 0.8 23 苗代小学校 3.9 6 金野小学校 0.0 24 蓮代寺小学校 1.2 7 向本折小学校 10.1 25 国府中学校 5.1 8 今江小学校 10.9 26 中海中学校 6.1 9 第一小学校 12.2 27 南部中学校 1.5 10 稚松小学校 12.8 28 板津中学校 7.1 11 日末小学校 1.8 29 御幸中学校 2.0 12 符津小学校 2.3 30 松東中学校 0.0 13 木場小学校 1.3 31 松陽中学校 10.1 14 粟津小学校 0.8 32 芦城中学校 14.6 15 串小学校 2.3 33 安宅中学校 24.9 16 月津小学校 0.5 34 丸内中学校 11.9 17 犬丸小学校 7.1 35 小松明峰高校 11.0 18 荒屋小学校 7.1 図 3-2 小松市におけるアンテナ基地局の最適配置 組み合わせ計算結果より,表 3-1 の 10 パターン中, 全パターンにおいて高速 IC に最も近い施設番号 33 を選択している.また,アンケート調査において, 利用頻度が比較的高かった国道 8 号線に近い施設番 号 8 が 7 パターン選択されている.この結果より, 主要幹線道路である国道 8 号線を中心に利用したり, 医療機関までの搬送時間を短縮するために高速道路 を利用している走行経路の傾向に合致しており,効 果的な配置結果であると考えられる. 謝辞:アンケート調査にご協力していただいた白山 石川広域消防本部,小松市消防本部,加賀市消防本 部の救急隊員の方々に感謝の意を表します. 参考文献 1)国土交通省道路局 ITS 推進室 2)折田仁典,今井信宏,中嶋雄介:「救急医療活動支援の ためのITS 整備に関する基礎的研究」,土木計画学研究・ 論文集No.18,pp. 877-886,2001 3)小池則満,深井俊英,平井文人,石川理恵,「緊急自動 車に対する優先信号制御に関する一考察」,土木学会年次 学術講演会講演概要集第4 部,pp.421-422,2002 4)高山純一,中山晶一朗,島崎翔子,「ITS による経路誘 導を活用した緊急車両の走行支援に関する研究」,土木学 会年次学術講演会講演概要集第4部pp.809-810,2004 5)総務省関東総合通信局,「医療現場におけるネットワー ク構築に関する調査研究報告書」,2004.3 6)総務省北陸総合通信局,「救急業務用高度医療伝送シス テム導入に関する検討会報告書」,2006.2 7)総務省北陸総合通信局,「北陸地域におけるデジタル防 災情報ネットワークに関する検討会報告書」2005.3 8)柳川洋一,高須朗,齋藤大蔵,金子直之,阪本敏久, 岡田芳明:「当施設におけるドクターカーによる頭部外傷 患者に対するプレホスピタルケアの検証」,日本救急医会 誌,2004