朝日大学包括支援歯科医療センター
(訪問口腔ケア
ステーション)
口腔ケア基本マニュアル
(在宅訪問編)
朝日大学歯学部
朝日大学包括支援歯科医療センター 口腔ケア基本マニュアルについて センター長 藤原 周 朝日大学包括支援歯科医療センターの設立は、大学の附属医療機関の枠を超えた連携 を基盤にして、地域医療や地域社会に貢献できる先鞭となる地域医療・保健の具現化を 目指し2016 年 4 月に開設されました。また、センターの口腔ケア部に 2017 年 4 月に訪 問口腔ケアステーションが開設されました。 包括支援歯科医療センター及び訪問口腔ケアステーションが目指す内容は、以下の 3 つを柱とします。 1.医療への貢献 朝日大学関連病院の病棟・外来のみならず在宅や福祉施設等で歯科治療、摂食嚥下リ ハビリテーション、口腔ケアが必要とされる患者様へ歯科医療サービスを提供します。 地域の医療・介護連携や包括ケアシステムにおいては、訪問歯科診療の患者様の口腔 ケア(器質的ケア、機能的ケア)の徹底や連携して関わる介護関連職種やご家族の口腔 ケアの質的向上を図り、誤嚥性肺炎や窒息事故等の発生を防止し、その後の在宅療養の 生活支援を円滑に行うことに貢献します。また、摂食嚥下障害や口臭・口乾などに対す る専門的な医療対応を歯科医療担当者以外の医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、PT, OT,ST等の医療連携スタッフの協力を得て行います。 2.教育への貢献 朝日大学歯学部への教育貢献として、将来、他領域との連携医療を担う歯学部学生の ための統合教科「地域社会と歯科医療」の教育の一端を担うと共に、朝日大学包括支援 歯科医療センターで、歯学部の臨床実習の学生及び臨床研修医等の研修・実習に資する ものとします。 3.地域医療への貢献 包括支援歯科医療センターが朝日大学地域連携協議会の核となり、地域の医療・福 祉・教育等の多領域の機関・施設と連携して地域包括ケアシステムの一翼を担い、支 援が必要な地域住民の皆さんのQOL の向上を目指す歯科医療サービスを行います。ま た、地域の関連する多職種の研修等を開催し、これらを通して地域に貢献します。 (地域医療において包括支援歯科医療センターの担う責務として、地域において在宅 訪問診療を行っている歯科診療所や医科診療所への支援、介護施設や居宅への訪問歯科 診療、障害者福祉施設への歯科健診や歯科治療、地域包括ケアシステムへの歯科専門職 としての参画などがある。今後これらの役割を効果的に果たすためには、地域の医療・ 福祉・教育等の施設や団体及び行政機関との情報交換や質の向上のための研修など密な 連携は不可欠で、当センターはその有効利用に資するものである)
目 次 ・本マニュアルの使用方法 Ⅰ.口腔ケアの基本的認識 1.専門的口腔ケア 1)口腔の器質的ケア 2)口腔の機能的ケア 3)訪問口腔ケアステーションにおける 口腔ケア Ⅱ.口腔の器質的ケア 1.口腔の器質評価 1)OHAT ・口唇・舌・歯肉・頬粘膜・唾液 ・残存歯・義歯・口腔清掃状態・歯痛 ・口腔ケアプロトコール・連携シート 2)プラークの評価 3)舌の評価 4)口腔・咽頭粘膜の評価 5)口臭 6)薬剤等の影響評価 2.器質的口腔ケアの方法 1)実施時の注意 2)口腔ケアの流れ 3)器質的口腔ケアの実際 (1)器質的口腔ケア例 (2)水を使わない口腔ケア (3)種々の疾患に対する口腔ケア (4)症状に対応した口腔ケア 3.口腔ケアの現場で困っている事 4.誤嚥性肺炎 1)誤嚥性肺炎の原因 2)誤嚥と細菌 3)ターゲットとする細菌 4)口腔内の洗浄の重要性 5.口腔ケア用具 1.基本セット 2.オプション用具 Ⅱ。口腔の機能的ケア 1.機能面の評価 1)口腔領域の過敏 (1)口唇 (2) 舌 2)顎の開口量 3)口唇の閉鎖能 4)舌の可動範囲 5)鼻呼吸の可否 6)安静時唾液(顎下腺、舌下腺)の分 泌程度 7)刺激に対する唾液の分泌程度 8)RSST 9)MWST(改正水のみテスト) 10) フードテスト 11)舌口唇運動機能:オーラルディアド コキネシス 12)舌圧:JMS 舌圧測定器、 13)咀嚼能率スコア法( 14)嚥下状態質問紙 2.機能的ケアの実際 (3)機能的ケアの用具・用品の選択 依頼表 依頼から実施までの流れ 地域連携
本マニュアルの特徴 このマニュアルは朝日大学附属病院、附属村上記念病院、PDI岐阜歯科診療所にお ける口腔ケアを行うにあたり、多職種に共通の基本的な認識やケア方法を標準化してお り、朝日大学包括支援歯科医療センターにおける口腔ケアの基本マニュアルとして口腔 ケアが行われるようまとめたものである。 口腔ケアの捉え方は、保健・医療・福祉の共通言語である「ケア」という用語によっ て、どの分野にも抵抗なく受け入れられ、それぞれの現場のニーズに合わせて使い分け られたという事情がある。各分野で使用されている口腔ケアは大きく 2 つに分けて捉え ることができる。一つは口腔疾患および気道感染・肺炎に対する予防を目的とする口腔清 掃や口腔保健指導を中心とするケアであり、他は口腔疾患および気道感染・肺炎に対する 予防のみならず、口腔領域の機能障害に対する予防とリハビリテ-ションをも含んだケ アである。 本マニュアルにおける口腔ケアはこの両方を含んだものを専門職の歯科衛生士が実施 する口腔ケア(専門的口腔ケア)としており、内容を明確に区別するために、口腔清掃 を中心とするケアを「器質的口腔ケア」、口腔機能障害の対応を中心とするケアを「機能 的口腔ケア」として記述している。 本口腔ケアマニュアル在宅訪問編は、朝日大学付属の包括支援歯科医療センターの口 腔ケア部にある訪問口腔ケアステーションにおける口腔ケアの基本マニュアルである。 在宅訪問口腔ケアの評価や実施が容易なようにしてある。また、在宅で可能な器質的ケ ア、機能的ケアを分けて記載している。アセスメント項目についても共通項目に付いて アセスメントできるように設定した。このようにすることで在宅訪問の領域において口 腔ケアの連携が容易となるよう配慮もしている。この口腔ケアマニュアルが包括支援時 に他領域の職種と共通に使用できるよう簡略さと明確さも目指した。 本マニュアルの姉妹編として「病棟編」があり、病棟の入院患者の口腔ケアを目的に して編集したものである。
Ⅰ.口腔ケアの基本的認識 1.専門的口腔ケア 種々の疾患により特包括的な支援を必要とする人は、原疾患のための服薬も多種 類にわたることが多く、唾液分泌の低下やケアの困難さから口腔内の乾燥、出血な どに加えて呼吸や嚥下機能の減退などにより歯科疾患や感染症罹患しやすい状態に ある。このような口腔環境の中で、歯科疾患や呼吸器感染を予防し機能減退への対 応を行うのが「専門的口腔ケア(Professional Oral Health Care)」とされてきた。 本口腔ケアセンターで行う口腔ケアは所謂この「専門的口腔ケア」を指している。 1)口腔の器質的ケア(口腔疾患および呼吸器感染の予防を目的とした口腔ケア) 特包括的な支援を必要とする人は、感染に対する抵抗力が落ちることが多く、種々 の感染症に罹患しやすくなる。歯垢や歯周疾患の原因菌である嫌気性菌の多くは肺 炎の起因菌としても知られており、肺炎等の呼吸器感染症の予防には口腔内の清掃 管理が必須となる。 このような疾病を予防して健康を維持管理するために専門的な用具・薬剤などを 用いて適切な口腔清掃を中心にした「口腔ケア」が器質的口腔ケアである。 2)口腔の機能的ケア(口腔機能の維持・回復を目的とした口腔ケア) 口腔領域の機能減退を早期から評価管理して、器質的口腔ケアとともに機能減退 を補う口腔の機能療法などにより機能の回復を目的にしたケアが機能的口腔ケアで ある。 機能的口腔ケアを行うことによって機能面の健康の維持管理を改善管理して誤嚥 と誤嚥性肺炎を予防し、安全安心の経口摂取を促すことも目的としている。 口腔ケアの効果 口腔ケア 器質的口腔ケア 機能的口腔ケア ① 感染予防 ・口腔疾患の予防(齲蝕、歯周病等) ・呼吸器感染症の予防(誤嚥性肺炎等) ② 口機能の維持・回復 ・摂食嚥下機能の改善 ・口腔感覚の向上に伴う味覚の増進 ・構音機能の改善(言語の明瞭化) ・唾液分泌の促進(口腔乾燥の予防) ・感情表現の表出 ③ 健康の維持・回復 ・口腔内の爽快感 ・口臭の改善 ・消化・吸収の改善
3.訪問口腔ケアセンターにおける口腔ケア 在宅の有病者等の口腔ケアを行なう際の手技の統一を図ることで均一なケアの提供と 危機管理を心がける。 1)口腔ケアの目的 (1)口腔疾患等の予防 A:器質的疾患の予防、進行の抑制 B:口臭の軽減 (2)口腔環境の改善 A:口腔内細菌数のコントロール B:自浄作用を促す (3)口腔機能の改善 A:誤嚥予防 (4)呼吸器系疾患の感染予防 (5)意識・覚醒を促す 2)口腔ケアの現場で対応が求められること (言葉の意味や対応内容を会得していくことが必要) ・口内乾燥:舌苔のケア、口腔乾燥の予防法、口腔粘膜湿潤の保持法 ・唾液の処理:流涎、嚥下、持続吸引 ・口腔感覚状態:過敏拒否、冷温覚、味覚 ・口 臭 :判定方法、対応法、 ・経口摂取を促すケア方法:経管栄養時の口腔機能訓練法 ・摂食機能を促す方法:摂食機能療法とリンク ・ケアの効率化:ターゲットの絞り方 ・義歯の管理と取扱いの方法:挿管期間の管理法、取扱い方 ・口腔ケアとコストのバランス ・ケアに使用する用具・薬剤の選択と使用法:標準化 ・ケアのアセスメント方法や頻度:標準化 ・経口挿管:口腔ケア時のチューブの扱い、口腔内乾燥への対応 ・口内炎 :予防、治療法がわかりにくい ・歯肉出血:歯ブラシを当てると出血するのが心配 ・開口障害:開口に応じない
Ⅱ.口腔の器質的ケア 1.口腔の器質評価
1)OHAT
口唇を良く観察し、必要があれば触れてみましょう。口角は、軽く開口させて観察しま しょう。口角の乾燥やひび割れを認めればスコア1(変化)潰瘍性の病変、それによる 出血を認めれば、直ちにスコア2(病的)舌を良く観察し、必要があれば触れてみましょう。
舌苔の付着をみとめれば、量、性状、色などに関わらずスコア1(変化) 潰瘍性の病変、それによる出血を認めれば、ただちにスコア2(病的)
歯肉・頬粘膜をよく観察しましょう。歯肉は咬み合わせた状態が、頬粘膜は舌圧子など の器具で軽く引っ張ると観察しやすいでしょう。
歯肉の腫脹・発赤は6歯分以下ならスコア1(変化)7歯分以上ならスコア2(病的) 歯の動揺、歯肉・粘膜とも潰瘍性の病変を認めれば、ただちにスコア2(病的)
ればスコア1(変化)、唾液がほぼなく干からびた状態であればスコア2(病的)意思疎 通が可能で問診ができるとき、少し口渇感があると答え場合はスコア1(変化)、口渇感 があると答え場場合はスコア2(病的) 残存歯がなく、上下の総義歯を使用していれば、スコア0(健全)、う蝕、歯の破折、残 根、咬耗が3本以下でスコア1(変化)、4本以上でスコア2(病的)、残存歯が 3 本以 下で義歯を使用してなければスコア2(病的)
義歯や人工歯の破折、破折が1 部位でスコア1(変化)、2部位以上でスコア2(病的) 破折などの異常がなくとも、1 日 1-2 時間しか使用できない場合はスコア1(変化)、急 搬送されて自宅に義歯がある場合は、義歯紛失と同じ扱いでスコア2(病的) 口の中全体を良く観察しましょう。 食渣、歯石、プラークが1-2 部位(ブロック)でスコア1(変化)、3 部位(ブロック) 以上でスコア2(病的)、口臭が若干あればスコア1(変化)、著しければスコア2(病 的)
(参考資料5):松尾浩一郎
2)プラークの評価 (1)歯および粘膜(口腔内模式図) 観察評価(記入) プラーク評価(PCR) 右上 左上 右下 左下 評価・指導記録簿(別紙へ記入) 3)舌の評価 (1)乾燥状態 0 度:正常 1 度:唾液の粘性が亢進している 2 度:唾液中に細かい唾液の泡がみられる 3 度:舌の上にほとんど唾液がなく乾燥状態 (柿木、2000) 評価・指導記録簿(別紙へ記入) (2)舌苔付着状態
4)口腔・咽頭粘膜の評価(痰、カンジダ、汚れ) (1)頬粘膜 (2)口腔前庭 (3)口蓋・咽頭粘膜 5)口 臭 (1)原因となる口腔内疾患:う蝕、歯周病、舌苔、その他( ) (2)他疾患との関連臭(消化器疾患、呼吸器疾患、糖尿病、血液疾患、他疾患( ) (3)義歯(デンチャープラーク) 義歯の使用 上顎 あり・なし 下 下顎 あり・なし 5)薬剤等の影響評価 (1)口腔ケアに使用する抗菌性薬剤 (2)服薬等の影響 ・抗菌薬 ( ) ・循環器 ( ) ・内分泌 ( ) ・向精神薬 ( ) ・消化器 ( ) ・呼吸器 ( ) ・その他 ( )
2.器質的口腔ケアの方法 1)実施時の注意 (1)患者情報の把握 (2)現在の禁忌事項の把握 (3)対象者の状態状況の把握 (4)患者本人の能力(コミュニケーション能力、可動状況)の把握 2)口腔ケアの流れ (1) 器質的ケアの準備 A:主たる清掃用具(歯ブラシ・スポンジブラシ等)は口腔の状況に合わせて選 択する(主たる清掃用具だけでは清掃困難な場合に補助用具を選択する) B:薬液を用いた清掃 ・口腔内清拭用薬:0.004%ベンゼトニウム塩化物水(ネオステリングリーン) (一般病棟において感染の危険が無い場合には水または滅菌水を使用する) ・口腔清掃剤:含嗽剤(刺激、着色があるので、使用には十分注意をする) :歯磨剤(流水において水洗を要する) (口腔清掃自立または一部介助者に適用) ・その他:保湿剤(塗布量に注意) C:その他 ・ガーゼ(通常は清潔ガーゼを使用、感染を危惧する場合には滅菌ガーゼを使用) ・紙コップ:消毒薬、清拭用滅菌水などを入れて使用(1回ごとに廃棄する) ・ゴミ袋:使用する材料は基本的にディスポを使用し廃棄が原則のため携帯する 3)器質的ケアの実際 (1)口腔内状況の把握 ①口腔状況の把握 ・歯の状態:残存歯数、残存部位 ・口腔粘膜の状態:歯肉の発赤、腫脹、出血、粘膜の発赤、出血等の異常 ・舌の状態:傷、乾燥、色(発赤、白色) ②義歯装着の有無 ③実施方法 (2)実施前の注意事項(依頼票にて確認できることは事前に行っておく) ①感染症等の把握 ・感染症が無くても汚染を媒介しない為に注意する ②病状の把握 ・実施可能な状態であるか確認後実施する (3)実際の方法 ①誤嚥を回避する為にHCU 等では吸引を行ってから実施する ②感染防止(スタンダードプリコ―ション) ・実施には、マスク、ゴーグル、グローブ、を必ず着用する。
・感染症の場合 実施(1名)ごとにナースステーションに戻り、汚物の廃棄、手指消毒を行う 記録等で1度外したグローブは同患者であっても再使用せず廃棄 ③口腔清掃 ・実施時の姿勢の確認、修正 ・口腔の観察(口唇を含む) 乾燥傾向の場合には実施前に保湿剤を塗布(口唇⇒口腔内) 痰や乾燥により粘液が固形化している部分にも同様に塗布 ・過敏等のある場合と操作性を考慮し下顎頬側から実施する ・基本操作は臼歯部から前歯部に向けて動かす ・歯ブラシで口腔清掃を行なった場合でもスポンジブラシを用い口腔内の余分な 水分を除去する(この際もあらかじめ湿らせて固く絞ったものを使用) ・口腔乾燥を防止する為に終了時にスポンジブラシで保湿剤を塗布 (4)スポンジブラシ使用の口腔清掃 ①スポンジブラシの使用方法 ・スポンジブラシは必ず湿らせ、よく水気を絞ってから使用する ・スポンジに付着した汚れは、1 回ごとに拭き取り使用する ・スポンジブラシは口唇に対して平行に口腔内に挿入する ・スポンジブラシは臼歯部から前歯部へ向けて操作する ②注意事項 ・スポンジブラシは乾燥したままでは使用しない 口唇に乾燥がある場合には、あらかじめ湿らせてから行う 操作時にスポンジブラシを噛み込んだ場合には、無理やり引き抜かない ・スポンジブラシ使用手順 義歯が装着されている場合は外してから行う 口腔の乾燥状況などを確認してから行う あらかじめ湿らせてから使用する(①の使用方法に準ずる) 4)器質的ケア口腔の例 (1)舌苔付着患者 ・使用薬剤:0.004%ベンゼトニウム塩化物水(ネオステリングリーン)、 :グリセリン・ソルビトール(口腔粘膜湿潤剤):バイオティーン ・使用器具:歯ブラシ(軟らかいもの)、スポンジブラシ、舌ブラシ :訪問診療(患者)背景・疾患名・バイタルチェックを確認する。 ↓ 口腔乾燥がある場合は口唇・口角に口腔粘膜湿潤剤を塗布する。 ↓ スポンジブラシにて粘膜を清拭し、歯ブラシにてブラッシングを行った後に 舌背面の清掃を行う。
↓ 舌が乾燥している場合は、グリセリン・ソルビトール(口腔粘膜湿潤剤)を 舌背面にまんべんなく塗布する。 ↓ スポンジブラシあるいは舌ブラシにて舌苔付着部位を奥から手前に清拭する。 ↓ 薬剤を使用した場合には、舌苔除去後に口腔粘膜湿潤剤を塗布する。 (2)出血傾向患者 ・使用器具:歯ブラシ(軟らかいもの)、スポンジブラシ、清潔なガーゼ ・使用薬剤:0.004%ベンゼトニウム塩化物水(ネオステリングリーン)、止血剤(サ ージセル)口腔粘膜湿潤剤 :訪問診療(患者)背景・疾患名・バイタルチェックを確認する。 ↓ 口唇・口角に出血部位がある場合は口腔粘膜湿潤剤を塗布する ↓ スポンジブラシにて口腔内を清拭し、出血部位を確認する ↓ 出血部位を避け、歯ブラシによるブラッシング・スポンジブラシによる粘膜 清拭を行う ↓ 口腔清掃後、出血部位に止血剤(サージセル)を貼付し、その上に口腔粘膜 湿潤剤を塗布する。 (3) 化学療法を受けている患者 使用器具:歯ブラシ(軟らかいもの)、スポンジブラシ、 使用薬剤:エレース、アズノール、キシロカイン :使用中の抗癌剤の確認をし、血液検査データの把握をする ↓ 口腔内の創部の有無、出血の有無の観察を行う ↓ 口内炎、出血部位を避け、スポンジブラシで口腔内を清拭する ↓ 出血が著しく止血されない場合は、5000 倍希釈ボスミンを綿球に浸し出血部 位を圧迫する ↓ 口内炎の痛みがある場合は、 (1)麻酔薬を含んだ洗口剤を使用して含嗽を行う、あるいは洗口剤を凍ら せて口に含ませる。 含嗽の場合は、1日 100cc を3~5回に分けて使用する
凍らせる場合は、1日あたり9個を3~4回に分けて口に含ませる(食 前に行うことが良いとされる) (2)クライオセラピー(冷却療法)を行う 口腔内へ氷片を含んだり、冷たいタオル(アイスノン)、市販の冷却シ ートなどを使用し皮膚側から頬粘膜・咽頭にかけて持続的に冷やす。 抗がん剤投与前から投与後 30 にかけて行うことが望ましい (4)水を使わない口腔ケア
5)各種疾患に対する口腔ケア (1)高血圧 口腔衛生管理(口腔のケア)を行う際に患者が感じる精神的緊張や器具・器材による 触圧覚刺激などは血圧の変動を助長するので注意する。 ・患者が理解しやすい説明をして不安感を感じさせないようにする。 ・口腔内への器具の挿入は鈍感な臼歯部頬側から言葉がけをしながら行う。 ・必要に応じてケア中に血圧測定を行う。 ・異常高血圧時には「頭が痛い」等を患者が訴えることがあるので患者の言動に注意す る。 (2)心疾患 虚血性心疾患で心筋梗塞回復期の患者は、ストレスに対して耐性が弱く再発作の可能 性が高いので口腔衛生管理(口腔のケア)を行う際に慎重な対応が必要。必要があれば モニタリング下でケアを行う。 ・ケア内容を説明して主治医のアドバイスを受ける。 ・ケアで出血が予測される患者では抗血小板薬の服薬内容を確認。 ・ワーファリン服用者では PT-INR を確認する。 ・心臓の Ope 後の患者は抗凝固療法(ワーファリンなど)の確認のほか、免疫能が低下 した状態になるため口内炎(アフタ)になりやすく、また治り難いので口腔のケアによ りできるだけ清潔な状態に保つ。 ・CPK(血液中の心筋逸脱酵素)値が上昇傾向にあるあいだは慎重にケアを行う。 ・歯痛を訴えるときは胸痛(狭心症の症状)からの関連痛として現れている可能性も考慮 して狭心症の発作に注意する。 ・口腔内に慢性化膿性の病巣や歯周病があると感染性心内膜炎・動脈硬化の原病巣とな っていることがあるので注意深く口腔内を観察する。 ・うがいの水が冷たすぎると血圧の変動をきたしやすく、心臓に負担をかけることもあ るため、ぬるめのお湯を使う。 (3)糖尿病 細菌感染に対する抵抗力が弱く、創傷の治癒も悪い。病棟カルテで空腹時血糖値、HbA1c 値、服用薬剤を確認する。 ・唾液の分泌が少なく口渇を訴える ・口腔粘膜が乾燥して自浄作用が低下するため、口角炎・歯肉炎・舌炎・口内炎などの 炎症が起こりやすい。 ・歯肉が腫脹して出血しやすく、感染を起こしやすくなる。 ・血糖コントロールが悪い患者では呼気は甘い匂い(ケトン臭)の口臭となる。 ・口腔衛生管理が食事療法を行ううえでも大切であること指導する。 ・口腔粘膜を傷つけないよう注意して口腔のケアを行う。 ・退院後は低血糖が生じると危険なので、ケアに時間を要する場合などの時にはケア時 に飴やジュースなどを準備して行うように指導する。
(4)腎臓病 腎疾患の入院患者の中でも注意したいのが血液透析患者で、肝炎ウイルスのキャリア が多いのでカルテ等で十分確認する必要がある。 ・易出血性であるためケア器具(ブラシ)の硬さとブラッシング方法に注意する。 ・腎移植後では免疫抑制剤(シクロスポリン・タクロリムスなど)が投与されており易 感染性のためケア器具・器材の清潔には特に注意する。 ・上記のため口腔のケアを行うことで院内感染(ウイルス汚染)を引き起こさないよう 十分に注意する。 (5)肝臓病 肝炎や肝硬変などの肝疾患患者では、肝炎ウイルスのキャリアである可能性が高い。 事前のカルテで感染症の有無を確認することが重要である。肝炎から肝硬変に移行し血 小板数や血液凝固因子(ビタミンK依存の凝固因子)が減少すると、歯肉からの出血や 粘膜下出血が生じやすくなるため、傷つけないよう口腔のケア器具の操作を慎重に行う 必要がある。肝機能が低下した患者では肝臓での炭水化物、脂質の代謝、ビタミンの貯 蔵、活性化が低下するため、免疫の低下、治癒遅延、易感染の状態にあることを常に注 意して口腔衛生管理を行う。 ・口腔のケア処置時に出血傾向を示すことがあるので注意が必要である。 ・歯ブラシのヘッドで粘膜を傷つけてしまう場合は小児用の歯ブラシを使用する。 ・歯性感染や歯周疾患が増悪しやすいので早期発見と予防のためのケアを十分行う。 ・口腔粘膜疾患になりやすいので常に粘膜を健康に保つ必要がある。 (6)呼吸器疾患 呼吸器疾患で口腔のケアを行う際に注意すべき疾患に「慢性気管支炎」「慢性閉塞性肺 疾患「肺気腫」などなどがある。口腔・咽頭部は上部消化器官の一部であるが呼吸器官 の一部であることも常に念頭に置いた口腔衛生管理が必要である。 ・咳反射時の喀出する力が弱い患者が多いのでケア中の唾液の誤嚥には十分注意する。 ・呼吸リハ等を行っている患者は理学療法士と連携して口腔リハをケアの中に組み入れ ると良い。 ・喘息ある患者では、喘息症状が安定しているかを確認する。また、発作を誘発させる ような疼痛を伴うケアや精神的にストレスを与える可能性のあるケアは避け、発作時の 対処薬を予め聴取しておく。 ・酸素吸入を行っている患者では、口腔のケアも口腔あるいは鼻腔の近くで酸素を吹き 流す、口腔のケア実施時の酸素濃度を上げる等の配慮が必要である。 ・重度の呼吸器疾患患者では、口腔のケア前後のバイタルサイン、SpO2(血中酸素濃度) を確認する。また、患者の姿勢に注意して口腔のケア中も心拍数や SpO2(血中酸素濃度) をモニタリングしながら行う。
7-1 癌(悪性腫瘍) 癌治療に伴う口腔合併症の発症頻度は、40%:化学療法をうける患者(このうち 50% が口腔粘膜炎が強くスケジュール変更、投与量変更を必要とする。) 80%:造血幹細胞 移植患者、100%:口腔領域が照射野に入る放射線治療の頭頸部癌患者。 癌の種類による口内炎発症率は、乳癌:14%、頭頚部癌:15%、大腸癌:21%、非小 細胞肺癌:41%、非ホジキンリンパ腫:5 %、造血肝細胞移植 4%(Mattdon Jack Database,2003)また、直接的に放射線による口腔粘膜を破壊しない場合でも 2 次的な作 用として、抗がん剤の副作用として骨髄抑制が起こり、白血球減少により易感染状態と なり粘膜に局所感染が起きて口腔粘膜炎を発症する。 ・口腔粘膜炎の発症頻度が高い抗がん剤 ・抗がん性抗生物質:ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、 アクチノマイシンD ・植物アルカロイド:イリノテカン、エトポシド ・代謝拮抗薬 :5-FU、メトトレキサート、TS-1、カペシタビン、シタラビン、 ゲムシタビン、ヒドロキシウレア ・アルキル化剤 :メルファラン、シクロフォスファミド ・アントラサイクリン系:アドリアシン(ドキソルビシン)、 ファルモルビシン(エビルビシン) ・プラチナ系 :シスプラチン ・タキサン系 :パクリタキセル、ドセタキセル 2.代表的な口腔トラブル 1)化学療法 ・口腔粘膜炎 ・口腔感染症 ・ヘルペス ・カンジダ ・口腔乾燥 ・味覚障害 ・歯肉出血 ・歯の知覚過敏 2)放射線療法 ・口腔粘膜炎 ・ヘルペス ・カンジダ ・口腔乾燥 ・味覚障害 ・開口障害 ・軟組織壊死 ・放射線性骨髄炎 ・放射線性う蝕 3.口腔衛生管理(口腔のケア) ・治療前の口腔衛生状態が改善した状態で、癌治療が開始する。 ・治療中の口腔合併症に対し医療者と協働して具体的な口腔衛生管理をおこなう。 ・治療後に遷延する口腔合併症のリスクを、きちんと患者に伝える ・疼痛が強い場合には柔らかい歯ブラシやスポンジブラシを使用 ・疼痛が強い場合には麻酔作用のある含嗽剤の使用 ・乾燥がある場合には口腔内保湿剤の使用 7-2 癌患者(頭頸部・食道癌) 癌患者で頭頸部・食道の手術を必要とする者は、嚥下機能に問題を生じる場合も少な くはなく、汚染された唾液誤嚥による肺炎を防止する事が重要である。また嚥下機能が 正常に保たれていたとしても、手術創部での感染を引き起す原因となるため周術期にお
ける口腔衛生管理を行う。 ・化学療法を行う患者 抗癌剤の種類により口腔粘膜炎の発症頻度が高くなることが予測される。また骨髄抑 制による白血球減少により二次的に局所感染が起こり、口腔粘膜炎を発症する。 放射線療法を行う患者頭頸部領域を照射野とする場合は、ほぼ全例で口腔合併症を発症 するため治療開始前からの 口腔衛生管理が重要である。 ・放射線治療前(照射前)から口腔内を清潔に保つため含嗽剤による口腔内の洗浄は必 須である。 ・放射線治療中(照射中)歯磨剤や刺激性の食物は避けるよう指導する。また、ヨード 系製剤(イソジンガーグル等)は殺菌性が強いが発泡作用と刺激性があるので照射中は 避け, マイルドな含嗽剤(含嗽用ハチアズレ®)が望ましい。 ・放射線治療後 放射線治療前・治療中と同様に含嗽剤による口腔内の洗浄は必須であ る。化学療法・放射線療法を行う場合は、抗癌剤、放射線により細胞周期の短い口腔粘 膜を直接的に破壊され、投与 3 日以内に口腔粘膜発赤、投与 7 日以降、表皮の委縮と口 腔粘膜・舌に潰瘍形成されることが多い。 ・手術、化学療法、放射線療法を問わず、治療開始前からの口腔衛生管理が必要である。 ・患者教育、スタッフ(介助者等)教育も重要である。 ・口腔合併症の予防のみならず疼痛管理や症状軽減に努めることが重要である。 ・口腔粘膜炎などにより疼痛・易出血性を有する者のケアには適切な口腔清掃用具(ヒ アルロン酸配合口腔専用ウエットチッシュなど)を選択する必要がある。 ・嚥下機能の低下が疑われる患者に対しては、誤嚥を防止する姿勢の保持や、ケア時の 吸引などの対応を行いながら口腔衛生管理を行う必要がある。 (8)パーキンソン病 パーキンソン病では手指の振戦(震え)やオーラルディスキネジアなどがある場合に は、歯肉や口腔粘膜を傷つけてしまうことなどから口腔衛生管理を自身で適切に行うこ とができない。歯ブラシなどのケアに使用する器材を改造する工夫や介護者への指導な ど病気の進行程度や症状に合わせた対応が必要となる。嚥下障害や誤嚥はパーキンソン 病の進行程度と一致しない場合が多いため、早期からの注意が必要である。 ・振戦(震え)やオーラルディスキネジアがあって患者本人が自立して行う場合には柔 らかい歯ブラシを選択する。 ・不随意運動は緊張すると強くなることが多いので、リラックスした雰囲気を作ってケ アを行うようにする。 ・病気の進行に関連せずに誤嚥がみられることがある事から、誤嚥性肺炎の予防のため の日常生活における口腔衛生管理についての大切さを指導する。 ・パンなどの食物による窒息も時々みられるので十分咀嚼する食べ方の指導も必要。 (9)認知症 口を開けない、噛みつくなどの問題行動で口腔のケアを拒否することも多くある。患 者の気持ち、感情を受容しながら対応することが求められる。強制的なケアは避けなけ
ればならない。 ・日常介護の中で無理のない範囲で取り組む ・生活習慣としての位置付けを強くする。 ・自立支援の観点からのケアを考える。 ・認知障害が強い場合は口腔領域に加える刺激が弱いものから、簡単なことから少しず つ慣らしていく。 ・経口摂取による自立支援の面から口腔の機能的なケアも必要な場合が多い。 ・義歯装着者の場合は装着状況、適合状況のチェックと管理が必要。 12.慢性関節リウマチ 慢性関節リウマチは多発性関節炎のほか、全身症状を呈する疾患である。口腔衛生管 理の目的としては、口腔内を清潔に保つのはもちろん上肢や手指の関節の症状に対する リハビリテーションの一つとしての意義がある。 ・手指の変形や筋力の低下には歯ブラシの柄を太くしたり電動歯ブラシを使用する。 ・肩や肘関節に可動域制限がある場合は柄の長い把持具(リーチャー)を用いると有効。 ・義歯装着患者には義歯用に工夫された歯ブラシ(洗面所における吸盤ブラシ)を指導 する。 ・局部床義歯の患者には、リウマチの症状に合わせた着脱方法について指導する。 13.重症心身障害 重症心身障害の口腔の問題点は「摂食・構音・呼吸」という口腔の 3 大機能の全てに 重大な障害があることである。摂食の面では口腔から安全に栄養を摂取することが困難 であり、食事もミキサー食や軟らかい食物が多く、自浄作用が悪いので口腔周囲の運動 機能障害などにより、齲蝕や歯周疾患に罹患する可能性が高く、プラークと歯石がたま りやすい。さらに,抗てんかん薬服用による歯肉増殖、口呼吸による乾燥性の歯肉炎、 歯肉増殖、筋緊張亢進や異常反射、不随意運動によるくいしばりや顎の異常運動による 咬合性外傷や咬傷などもみられる。 ・口腔機能の発達を促し、QOL の向上に結びつくような口腔のケアを計画し保護者や介助 者に働きかける。 ・経口摂取をしている場合は、常に食渣の残留を考慮したケアを行う必要がある。 ・座位のとりにくい重症心身障害に対しては,全身的な筋緊張を誘発しにくい体位の工 夫などを行う。 ・口腔のケアを行う際には唾液やプラークなどを誤嚥しないよう吸引を行うなどの注意 が必要である。 ・唇・頬の緊張が強い場合や口腔領域の過敏性が強い場合には、緊張や過敏を取り除き ながら徐々に歯ブラシに慣れさせていく。 ・不随意運動や食いしばりで口唇等を自傷する場合には、口腔周囲筋や舌筋に対する機 能的口腔ケアを行いながら粘膜の保護や咬合の管理を目的としたオクルーザル・アプラ イアンス等の使用も考慮する。
各種症状・状態に対する口腔のケア
1.気管切開(9頁:挿管患者の口腔のケア手技参照) 挿管チューブのカフは必ずしも誤嚥を防止できないため、気管切開を行っても誤嚥は生 じる。また、口腔内が不潔になると唾液とともに種々の細菌が誤嚥され誤嚥性肺炎の原 因となるため、十分な口腔衛生管理が不可欠である。口腔衛生管理の方法を決める上で VF(嚥下造影)検査での誤嚥の有無を確認することが重要である。 ・誤嚥の内容の確認 ・水を使う場合には吸引ブラシなどを用いて咽頭・喉頭に流れ込まないように注意する。 ・ケア時の姿勢(ファーラ―位が基本)に注意する。 ・唾液の貯留感覚が低下しないように口腔粘膜のケアを十分行う。 ・分泌する唾液の処理(吸引、嚥下)方法について指導する。 ・食物を少量でも経口摂取している場合は口腔の自浄性低下を考慮したケアを行う。 2.経管栄養 嚥下がうまくできないため、経管栄養になった患者でも、経鼻経管や食事のときだけ経 口から管を挿入する間歇的経管栄養法、胃ろう、腸ろう、などからの栄養摂取を行って いる場合にも唾液等の誤嚥はみられる。特に経鼻や経口からの場合はチューブ表面が細 菌に汚染されるとバイオフィルムを形成し、それが剥がれて誤嚥されるリスクなども考 慮した口腔衛生管理が必要となる。経鼻(経口)経管や胃瘘による経管栄養患者は経口 摂取を併用している場合も多いので経口摂取の食物の物性や量、摂取時間などを十分に 考慮した口腔衛生管理(口腔のケア)を行う必要がある。 ・咀嚼などの動きがないため唾液の分泌の低下などによる口腔の自浄性が低下し細菌数 が増加することを考慮した十分なケアを行う。 ・経管から栄養物を注入する前に口腔内への刺激の意味から簡単な口腔のケアを行い、 消化管の動きを促してから注入する方法について主治医と連携する。 ・栄養物が直接胃に入るため、胃内容物の逆流(GER:胃食道逆流)の可能性があり、 逆流のある場合には、逆流性の食道炎に加えて胃酸による歯の脱灰がみられることも多 いので予防のケアを行うなどの注意が必要である。 ・口腔のケア時に管が刺激となって吐気を促すことがあるので栄養注入直後のケアは避 ける。 3.オーラルディスキネジア 口をもぐもぐする・舌を突出させる・舌を捻転させる、などを反復性で常道的な不随 意運動として生じてしまう口腔周囲に見られる症状であるオーラルディスキネジアの患 者は、専門的口腔衛生処置(口腔のケア)を必要とする。原因別に分類すると、以下の ようであるが、いずれも内科医、神経内科医、精神科医等と密に連携した対応が必要で ある。 ・抗パーキンソン薬の投与による薬物性ディスキネジア ・向精神薬長期投与による遅発性ディスキネジア・錐体外路系疾患(ハンチントン舞踏病、ウイルソン病、間脳疾患など)によるディス キネジア ・高齢者にみられる原因不明のディスキネジア 口腔のケアを行う際の注意点としては、 ・義歯の不適合は事前にチェックして治療して咬合を安定させる。 ・不随意に動く舌や顎を押さえつけずに清掃器具を動きに逆らわずに使用する。 ・反復する舌の突出や義歯の動きによる口腔粘膜の潰瘍に注意してケアを行う。 ・ディスキネジアのために義歯を装着しない状態が続くと顎関節脱臼の原因となるので 注意。 4.歯肉肥大 歯肉の肥大は薬物の副作用の一つであり、主に抗てんかん薬、カルシウム拮抗剤、免 疫抑制剤、などの服用に起因する。歯肉肥大は歯間乳頭部より生じて進行すると歯冠部 を覆う繊維性に硬く肥厚し、結節状、球状、分葉状の歯肉増殖をきたすことになる。 ・肥大の原因となる薬物の服用中止または変更を医師と相談する。 ・スケーリング、プラークコントロールを徹底する。 ・口腔清掃が不良になると歯肉の発赤や腫脹が歯肉肥大を増悪させる。 5.舌 苔 舌苔は舌表面の糸状乳頭が延長し、その周囲に口腔粘膜の剥離上皮、食塊や細菌が繁 殖したものである。口腔内の汚染や口臭の原因の一つである。舌苔は不潔だが直接健康 上の問題を引き起こすことは少ないが、舌苔があるとカンジダ(真菌の一種)が繁殖し やすくなり、長期間、多量に付着すると種々の細菌が増殖しやすく違和感、味覚異常、 痛み、口臭などを生じることがある。舌表面は舌運動や食塊の移動などによる磨耗と乳 頭の再生で性状が保たれているため、舌苔が付着している患者では舌機能が低下してい ることが推察される。舌苔の除去とともに舌機能の向上を目的にした機能的な口腔のケ アを合わせて行うと効果的である。 ・舌苔の除去は口腔湿潤剤などで保湿した後の湿潤下で行う。 ・舌ブラシや通常のブラシで舌の後方(奥舌部)から舌尖に向けて擦過除去する。 ・多量の舌苔は一度に除去しようとせずに毎日少しずつ少なくする。 ・左右両側でしっかり噛んで食べる習慣を指導する。 舌苔と鑑別診断を要する疾患・症状に、前癌病変として注意を要する舌白板症や舌カン ジダ症、地図状舌などがある。 6.口腔カンジダ症
口腔カンジダ症は、真菌である Candida albicans(C. albicans )による口腔粘膜感 染症である。C. albicans は口腔内の常在菌として舌表面、頬粘膜、歯垢内に多く検出さ れる。健康な人であれば唾液の自浄作用や免疫抵抗などにより菌が定着して口腔カンジ ダ症を発症することは稀であるが、悪性腫瘍、糖尿病、膠原病、内分泌異常などの疾病 及び乳幼児、高齢者、妊婦などの体力、抵抗力が低下している場合にそれらが誘引とな
って発症する。他の誘引としては、抗生剤、ステロイド剤、免疫抑制剤の長期服用、AIDS による日和見感染症、シェーグレン症候群や加齢による唾液分泌の低下、不衛生な義歯 の装着など多岐にわたっている、症状等の特徴から4つに分けると対応しやすい。 1)急性偽膜性カンジダ症:頬粘膜、口蓋、舌などの口腔粘膜に白い苔状の散在性また は孤立性にみられ、痛みを伴うことがある。白苔は易剥離性で剥離後の粘膜は出血し 易い。 2)急性萎縮性カンジダ症:抗生物質の長期服用による菌交代の結果生じるものが多い が、急性 偽膜性カンジダ症の被苔が除去されると本症となる。自発痛の強いびらんが 特徴。 3)慢性肥厚性カンジダ症:急性偽膜性カンジダ症から移行したものが多く、白い偽膜 は厚くなり、粘膜上皮に固着して上皮層の肥厚と角化亢進がみられる。 4)慢性萎縮性カンジダ症: 義歯性口内炎ともよばれ、義歯接触面の口蓋粘膜生じることが多い。多くは無症状で あるが、 患部の浮腫や疼痛を訴えることがある。 ・ケアに先立ち、基礎疾患、全身状態、服薬の状況などから口腔カンジダ症の要因を検 討して改善を図るよう考慮する。 ・低い pH が適しているので食後の清掃や義歯洗浄を怠ると pH が低下してC. albicans が増殖しやすいので食後の口腔のケアを励行する。 ・口腔カンジダ症は日和見感染であるから局所だけのケア対応では根本的な解決になら ないので、局所のケアと併行して全身的な原因を除き、抵抗力を高め体力増強に努め る。 ・義歯を装着している患者ではC. albicans はレジンへの付着性が高いため、夜間就寝 時は義歯をはずして義歯用ブラシで十分に清掃する。また、週 1 度程度は義歯洗浄剤 を使用して義歯用カンジダ症の要因を除くようする。 ・高齢者や唾液分泌が減少する疾患では唾液による自浄作用が減弱するので抗真菌作用 のある口腔浸潤財や歯磨き剤を用いるのも良い。 ・カンジダに対する含嗽薬にはファンギゾン®、イトリゾール®などがあり、軟膏にはフ ロリード®ゲルなどがある。 7.口腔乾燥症 唾液分泌量の減少による口腔内の乾燥に起因して口腔や咽頭にさまざまな症状を呈す る状態が口腔乾燥症である。う蝕や歯周疾患などの歯科疾患、舌などの粘膜疾患、舌痛 症などの疾病の原因となり、摂食嚥下障害、口臭、呼吸器感染症、異常乾燥感などに強 く関連している。 1.口腔乾燥症の原因分類 1)唾液分泌中枢を侵す因子:情動、神経症、気質的疾患、薬剤(モルヒネ) 2)自律神経性唾液分泌中枢を侵す因子:脳炎、脳腫瘍、事故、神経外科手術、薬剤(抗 ヒスタミン、鎮静剤) 3)唾液分泌能に影響を与える因子:シェーグレン症候群、導管閉塞、唾液腺切除後、 先天性萎縮、放射線照射、年齢
4)体液または電解質平衡の変化:脱水、浮腫、糖尿病、心疾患、尿毒症、高血圧、鉄 欠乏性貧血、甲状腺疾患、葉素欠乏、ホルモン異常、薬剤(利尿剤) 2.口腔乾燥症の原因となる薬剤 1)中枢神経または末梢神経とその受容体に作用して唾液分泌を低下 (1)抗コリン薬 ・鎮痙薬(アトロピン、スコポラミン) ・抗パーキンソン病薬(ビペリデン、トリヘキシフェンジル) ・消化性潰瘍治療薬(スコポラミン、プロパンテリン、チメピリジウ、エチルピペリナ ートなど) (2)精神神経用薬 ・統合失調症治療薬(クロルプロマジン、フェルナジン、ハロペリドール、スルピリド) ・うつ病治療薬(イミプラミン、アミトリプチン、マプロチリン、トラゾドン) ・抗不安薬(トリアゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、クロキサゾラム、 オキサゾラ ム、プラゼパムなど) (3)鎮静、催眠薬(フェノバルビタール) (4)抗ヒスタミン薬(H1 拮抗薬としてジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、 ジフェニルピラリン、ホモクロルシクリジン、クロルフェニラミン H2 拮抗薬としてファモチジン、ニザチジン) 2)電解質や水の移動に関与して唾液分泌を低下 (1)降圧薬 ・利尿剤(フロセミド、スピロノラクトン、トリアムテレン、アセタゾラミド、 D-マンニトール、) ・カルシウム拮抗薬(ニフェジピン、ニカルジピン、ベラパミル、ジルチアゼム) (2)気管支拡張薬(エフェドリン、サルブタモール、ツロブテロール) 3.口腔衛生管理(口腔のケア)8ページ参照 ・スプレータイプ、洗口タイプ、ジェルタイプなどの人口唾液や保湿剤を用いてケアを 行う。 ・唾液腺マッサージ(耳下腺や顎下腺相当部)や口腔の筋機能療法を行い唾液の分泌を 促す。 ・口腔清掃などによる口腔内への刺激による唾液分泌の促進を図る。 ・水分の十分な摂取や日常の精神的なゆとりについて指導する。 ・ガム(咀嚼による顎運動刺激)や飴(味覚刺激:キシリトール入り又はシュガーレス) を食べる、また痛みがなければ酸味のある物を食べる、などの指導を行う。 ・アルコールや刺激物香辛料はさけるよう指導する。 8.ビスフォスフォネート系薬剤の副作用 悪性腫瘍、骨粗鬆症、などでビスフォスフォネート系薬剤の投与を受けた経験のある 患者、特に悪性腫瘍で注射剤で投与された場合に顎骨壊死、顎骨骨髄炎の発現が多く報 告されている。多くは抜歯等の侵襲的歯科処置や義歯による褥創や局所感染に関連して 発生している。
・口腔衛生管理(口腔のケア)前に関連する服薬状況の情報を十分に採取し、薬学部の 学生との情報交換、病棟薬剤師の指導を受けてケアや退院後の指導を提案する。
Ⅵ.誤嚥性肺炎への対処の基本
1)誤嚥性肺炎の原因 食物の誤嚥 VAP 口腔内細菌の誤嚥 不顕性誤嚥 喀出反射の減退 GER(胃食道逆流による誤嚥) 2)誤嚥と細菌に関しての確認 (1)挿管チューブのカフは必ずしも誤嚥を防止できない。 (2)気管切開を行っても誤嚥は生じる。 胸空内圧を陰圧にできないため、声門部の閉鎖が不完全になり誤嚥しやすくな る。 (3)経鼻胃(NG)チューブでも誤嚥は生じる。 (4)チューブに共通する為害性。 ① チューブにより粘膜が損傷し、細菌が定着 ② 気管内の繊毛運動 ③ チューブ表面が細菌に汚染されるとバイオフィルムを形成 ① 口腔の自浄性が低下、細菌数が増加 ② 腸粘膜が委縮、胃内容物を逆流させる可能性 注) * 誤嚥=肺炎ではない * 一度肺炎になると繰り返しやすい→予防が非常に必要 3)ターゲットとする細菌 (1)口腔ケアでは全ての微生物を消失させる必要はなく標的は「病原微生物」 (2)口腔内常在細菌が起炎菌となる場合も多く、細菌の塊である歯垢・バイオ フィルムをターゲットとする。 (3)常在菌は外来細菌に対するバリアの役割を担っていることを考えると欧米 のように殺菌消毒剤を使わず、生食や水道水での物理的な消毒方法も併用。 4)口腔内の洗浄の重要性 (1)抗菌作用のない生食や水道水でも唾液が希釈され唾液中の細菌数は一時的 に大幅に減少する。ケア用具 基本セット 歯ブラシ (永久歯用歯ブラシ) (乳歯用歯ブラシ) ・挿管されている場合(特にバイトブロック・挿管チューブが留置されている側)、 開口困難な場合は柄の小さい乳歯用の歯ブラシを使用する ・挿管されていない場合は、永久歯用の歯ブラシを使用する。 歯間ブラシ ・歯と歯の間の汚れを除去する際に使用する。 ・軸がワイヤーで出来ている物もある為、挿入角度に気を付け、 歯肉を傷付けない様に使用する。
プラウト ・歯と歯茎の境目や、残根、鉤歯を磨く際に使用します。 ・通常の歯ブラシの補助的な役割で使用しますが、開口が困難な方や、 呼吸器管理をされている方など、特殊なケアの場合にも有効な道具です。 くるリーナブラシ ・口腔粘膜や、口腔内に貯留している食渣や痰を清掃するのに使用します。 ・軸がワイヤーの為、誤って粘膜を傷付けない様に注意します。 スポンジブラシ ・水につけ少し絞って軽く濡れた状態にして使用 ・奥から前(臼歯部から前歯部)へ向かって清拭 ・使用前にスポンジが柄から外れていない事を確認してから使用 ・清拭中に噛まれても無理に引き抜かない
舌ブラシ ・舌にブラシを当て、表面を軽く奥から手前に拭って舌苔や汚れを落とす ・舌の奥まで入れすぎると嘔吐感があるので注意 口腔清掃に使用する薬液 ネオステリングリーン(0.004%ベンゼト二ウム塩化物水) ・0.004%に希釈して用いる ・歯ブラシやスポンジブラシを薬液で軽く湿らせ、 十分に水気を切って使用する ・発疹や発赤が認められた場合には使用を中止する
オプション用具 義歯ブラシ ・義歯を清掃する時に使用する ・義歯を口から外し軽く水洗し磨く 口腔粘膜湿潤剤 ・口腔乾燥症状がみられた場合に用いる(舌・粘膜の評価参照) ・チューブから少量(約1cm)押し出し指先でまんべんなく塗る ・義歯を使用している場合は義歯の裏全体に塗って使用する
口腔ケアウェッティー
・口腔粘膜の清拭や、ブラッシング後の汚れのふき取りに使用する
ガーグルベイスン
・洗面所で口腔ケア出来ない方、ベッドサイドでの口腔ケアの際吐き出し容器として使用します。 ・洗面器にて代用されても問題ありません。
Ⅱ.口腔の機能的ケア
1.機能面の評価
1)口腔領域の過敏 (1)口唇 (2)舌 2)顎の開口量 開口量: mm 3)口唇の閉鎖能 - ± + 4)舌の可動範囲 左側(- ± + ++ ) 右側(- ± + ++ ) 下方(- ± + ++ ) 上方(- ± + ++ ) 5)鼻呼吸の可否6)安静時唾液(顎下腺、舌下腺)の分泌程度 口腔水分計(ムーカス) 頬粘膜 ① ② ③ 舌背面 ① ② ③ 7)刺激に対する唾液(耳下腺)の分泌程度 ガム咀嚼による唾液流量検査 ml/分 8)RSST 回数( 回/30 秒) 9)MWST(改訂水のみテスト) 1.嚥下無し、むせる and/or 呼吸切迫 2.嚥下あり、呼吸切迫(Silent aspiration の疑い) 3.嚥下あり、呼吸良好、むせる、and/or 湿性嗄声 4.嚥下あり、呼吸切迫、むせない 5.4に加え、追加嚥下運動が 30 秒以内に 2 回可能 口腔内に投与した冷水のほとんどを吐き出してしまう場合は判定不能である。 また、口腔内に冷水を投与したにもかかわらず何の反応も認められない場合は 判定不能である。3ml でも、呼吸の変化、喘鳴・呼吸音の変化・減弱、湿性ラ音、 SpO2の有意な変化に注意する 10) フードテスト 左からお粥、液状食品、プリンの3 種。専用のスプーンは 1 さじ で約4g となる(液状食品のみ 3g)。プリンはクラッシュして用 いる
聖隷式嚥下質問用紙
嚥下機能低下
舌口唇運動機能:オーラルディアドコキネシス 口唇や舌の動きの速度やリズムを評価する。決まった音を繰り返し、なるべく速く発音させ その数やリズムを評価する。10 秒間測定して、1 秒間に換算する。 ・パ音:口唇の動きを評価する ( )回/秒 ・タ音:舌の前方の動きを評価する ( )回/秒 ・カ音:舌の後方の動きを評価する ( )回/秒 ・パタカ繰り返し: ( )回/秒 舌圧:JMS 舌圧測定器、
咀嚼能率スコア法(大阪大学産学連携本部咀嚼評価開発センター) 咀嚼機能検査用グミゼリー(ユーハ味覚糖)30 回咀嚼 咀嚼機能低下症:「スコア0」、「スコア1」、「スコア2」 2)機能的ケアの準備 (1)口腔機能状況の把握 ①口腔状況の把握 ・顎運動の状態:最大可動域(ROM) ・舌運動の状態:最大可動域(ROM) ・口唇運動の状態:持続閉鎖 ②咀嚼運動の状態 ③嚥下運動の状態 (2)実施前の注意事項(依頼票にて確認できることは事前に行っておく) ①呼吸状態等の把握 ②病状の把握 ・実施可能な状態であるか確認後に実施する (3)実際の方法 ①誤嚥を回避する為に必要に応じて吸引を行ってから実施する ②感染防止(スタンダードプリコ―ション) ・実施には、マスク、ゴーグル、グローブ、を必ず着用する。 ③口腔 ・実施時の姿勢の確認、修正 ・口腔の観察(口唇を含む) 乾燥傾向の場合には実施前に保湿剤を塗布(口唇⇒口腔内) ・過敏等のある場合と操作性を考慮し下顎頬側から実施する
3)訓練の実際 (1)口腔及び口腔周囲筋の能動的訓練 A:口唇・頬筋協調訓練(口輪筋・頬筋訓練) *左右対称の動き: *左右非対称の動き 突出と引き(イー・ウー) 口角の左右への偏位 10~20 回繰り返す 口をすぼめたまま左右に動かす 10 回を 1 セットとして 2~3 セット B:舌訓練 ・可能な限り前方へ突出し、しっかり引っ込める ・左右の口角に交互舌尖をつける ・上唇と下唇の交互に舌尖をつける ・舌圧子(スプーンでも可)を舌尖で押す・10 回を1セットとして 2~3 セット C:顎運動訓練 ・口を大きく開けてぱっと閉じる ・舌圧子をかむ ・10 回を1セットとして2~3セット D:軟口蓋・頬・口唇訓練…呼吸との協調訓練 ・ブローイング(コップの水をストローでブクブク吹く)できるだけ長く 5 回 ・頬を膨らませたりへこませることを繰り返す。
・10 回を 1 セットとして 2 セット E:頭部・咽頭部・喉頭部の筋訓練 手順 1)椅子でしっかりした座位をとる、又はベッドをギャッジアップして姿勢を とる 2)首を前に倒し5~10 秒間ゆっくりとストレッチする 3)後方、右、左、右回旋、左回旋をそれぞれ 2~3 回ずつ行う 4)肩をすぼめるようにギュと力を入れ、力が入ったらダランと力を抜く 5)これを 6 回繰り返す。 (緊張が強い時は頸部をホットパックなどで暖めてマッサージしてから行うと効 果的である) (2):喀出訓練・閉口訓練、口腔周囲筋の受動的訓練、 ・ 使用器具:訓練用スチック (3)口腔及び口腔周囲筋の受動的訓練 口腔周囲筋の運動障害は、捕食、咀嚼など準備期の動きを阻害するばかりか、 前頸筋群と協調して営まれる嚥下運動にも大きく影響する。口腔周囲筋の筋力増
強、コントロール能力改善に有効である。 A:口唇訓練 ・食前に、1~2回行うのが最も効果的 ・1回の訓練時間は5~10分程度とし、それ以上は行わない ・少しずつ毎日行う方が効果はあがる ・以下の訓練は顎を閉じた状態で行う 1)口輪筋を筋線維の走行に対して直角に縮める。 上下口唇をそれぞれ3等分し 1/3 ずつ指で口唇をつかむ。 2)口唇と歯肉の間に人差し指を入れ唇を外側へ膨らます。 上下口唇それぞれ 2 等分でおこなう。 口唇は引っ張らないようにする。 3)人差し指の指腹を赤唇部に当てる。 上唇は鼻の方へ、下唇は下方に押し下げる 4)人差し指の指腹を赤唇部と皮膚の境目に置く。 前歯を軽く押さえるように押し下げ(上げ)る。 B:頬訓練 C:舌訓練 ・顎は閉じた状態で顔を下前方に向け頸部の筋肉を縮めておく ・オトガイ部下部の直ぐ後ろ部分をまっすぐ上に押し上げる 頬の中央部を 外側にふくらます 硬さを調べるつもりで、 ゆっくりもみほぐす 頬の中央部を 外側にふくらます 硬さを調べるつもりで、 ゆっくりもみほぐす
・頭部をしっかり固定し、まっすぐな状態で行う ・刺激が確実に伝わっていれば、指を突き上げたとき口腔内で舌が上前方に 動く。 (4)嚥下訓練(間接的訓練法) ・ 使用器具:綿棒 手技: 1)嚥下促通訓練 ガムラビング(歯肉マッサージによる嚥下促通訓練) ・訓練前に口腔のケアを行う。 ・口腔内が過敏症状を呈する場合には行わない。 方 法 1)顎を介助して閉鎖させる 2)指腹を前歯部の歯頸部に当て後方臼歯部に向かってこする 3)後方から前に戻る時には指は歯茎から浮かす 4)口腔内を上下左右 4 等分して順次行う 5)唾液嚥下の確認を忘れずに行う 頭部をしっかり固定する 頭部をしっかり固定する
食事介助法(直接的訓練)
依頼表
依頼主 依頼年月日 年 月 日 1.患者情報 ・患者氏名; 年齢; 1)病 名 ・主たる病名(訪問医療に至った原疾患); ・既往歴(病名、感染症の有無); 2)全身状態(状況) ・麻 痺 ;有 無(上肢、下肢、左、右) ・拘 縮 ;有 無(上肢、下肢、左、右) ・意思の伝達 ;可、少し可、可 ・体 位 ;座位保持 可、不可 ;ギャッジアップ 可、不可 ・摂食状況 ;経口、経管、その他 ・ムセ ;有 無(ムセの状況を含め) 3)口腔清掃状況 ・口腔清掃回数(1日の回数) ・使用器具 4)挿 管 ;有(経口、経鼻、気切)、無 2.依頼元 ・依頼者(職種)氏名 3.その他(注意事項) VF所見: VE所見:依頼から実施までの流れ
地域連携 目的:(1)地域医療連携における医療の質の向上と安全の確保 (2)地域医療連携におけるチーム医療の推進 (3)患者さま、家族の満足度の向上<資
料>
訪問口腔ケア・口腔管理 摂食機能療法 包括支援歯科医療センター 訪問口腔ケアステーション 「朝日大学附属病院 包括支援歯科医療センター地域連携 在宅(居宅)療養 介護老人福祉施設 地区歯科医師会 施設医 看護師 管理栄養士 介護福祉士 在宅主治医 訪問看護師 訪問薬剤師 訪問管理栄養士 介護支援専門員 ホームヘルパー かかりつけ 歯科医師 歯科衛生士 歯科技工士 在宅療養支援 歯科診療所 医療と介護の情報共有 価値観の共有 訪問口腔ケア・口腔管理 摂食機能療法 医療と介護の情報共有 価値観の共有 一般市中病院 口腔ケア 口腔管理 摂食機能療法 医 師 看護師 管理栄養士 言語聴覚士 連携 連携 連携 ・朝日大学附属 病院 包括支援歯科 医療センター ・PDI岐阜歯科 診療所 包括支援歯科 医療センター 朝日大学附属 村上記念病院 包括支援歯科 医療部患
者
地
域
歯
科
診
療
所
患
者
訪問診療依頼 支援要請(アウトリーチ) 訪問診療 訪問診療 周術期・ 摂食嚥下リハ 歯科医療 連携依頼地域連携
地域連携システムの構築 地域歯科医師会「朝日大学附属病院 包括支援歯科医療センター構成図
訪問口腔ケアステーション内規 1.朝日大学包括支援歯科医療センター口腔ケア部に訪問口腔ケアステーション を置く。 2.訪問口腔ケアステーションは歯科衛生士が医療業務を担うステーションとする。 3.訪問口腔ケアステーションの医療業務の内容は以下の通りとする。 1)訪問歯科診療において歯科医師の診療補助を行う。 2)居宅、施設等において歯科医師の指示のもとに訪問口腔ケアを行う。 3)摂食嚥下障害と診断された患者に対して歯科医師の指示のもとに摂食機能 療法を行う。 4.訪問口腔ケアステーションのスタッフは以下の通りとする。 1)朝日大学附属病院の包括支援歯科医療センター口腔ケア部専任歯科衛生 士。 2)朝日大学附属病院の常勤歯科衛生士。 3)朝日大学附属病院の包括支援歯科医療センター口腔ケア部の非常勤歯科 衛生士。 4)朝日大学附属病院の非常勤歯科衛生士。 摂食嚥下 リハ部 地域 連携 担当 地域支援歯科部 口腔ケア部 地 域 連 携 協 議 会 訪問口腔ケア・口腔管理 摂食機能療法 責任者:藤原教授 責任者:玄教授 責任者:永原教授 専任歯科衛生士 兼任歯科衛生士 センター長:藤原教授 専任・兼任 歯科医師 兼任歯科医師 専任・兼任 歯科医師 訪問診療 :居宅・施設 摂食機能療法診断 訪 問 口 腔 ケ ア ス テ ー シ ョ ン 摂食機能療法
紹介患者診察・検査予約申込書(FAX用)
朝日大学附属病院包括支援歯科医療センター行 医療連携専用FAX番号: 紹介目的 紹介医療機関: □:摂食嚥下リハの診察・検査 名 称: □;摂食嚥下リハの地域連携 所在地 □;口腔ケアの評価・管理 電話番号: □;訪問口腔ケアステーションとの連携 FAX番号: □;地域支援歯科との連携(訪問診療) 医師・歯科医師名: 以下の太枠内を記入の上、センター医療連携係へFAXしてください 申込日 月 日(FAX送付日) 第一希望 月 日 時 分頃 第 2 希望 月 日 時 分頃 フリガナ 男 女 生年月日(西暦) 患者名 年 月 日 生ま れ 紹介理由 検査申し込みの種類と希望内容 種 類 希望内容 □;嚥下内視鏡検査(VE) □;嚥下造影検査(VF) □;口腔機能検査(口唇圧、舌圧、) 朝日大学附属病院の受診歴の有無 □;朝日大学附属病院 □;朝日大学附属村上記念病院 □;朝日大学PDI岐阜歯科診療所 朝日大学包括支援歯科医療センター記入欄 予約日: 月 日 ( ) 時 分 問い合わせ先:朝日大学包括支援歯科医療センター Tel: 1.認知症高齢者の日常生活自立度参考資料 1.認知症高齢者の日常生活自立度 ランク 判定基準 Ⅰ 何らかの障害を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。 Ⅱ 日常生活に支障をきたすような症状。行動や意思疎通の困難さが多少見られて も、誰かが注意していれば自立できる。 Ⅱa 家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。 Ⅱb 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 Ⅲ 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見ら れ、介護を必要とする。 Ⅲa 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 Ⅲb 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 Ⅳ 日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが品回に見られ、 常に介護を必要する。 M 著しい精神症状や問題行動、あるいは重篤な身体症状は見られ、専門医療を必要 とする。 ※「「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」の活用について」(平成 18 年 4 月 3 日老健第 135 号厚 生省老人保健福祉局長通知)の別添より引用 2.要介護状態区分 区分 状態例 要支援1 日常生活の動作はほとんど自分で行うことが出来るが、歩行等に不安定さが見 られ機能訓練や日常生活の世話などに時々支援を要する。 要支援2 要支援1の状態から、日常生活能力がわずかに低下。何らかの支援が必要な状 態。 要介護1 立ち上がりや歩行が不安定。入浴、衣服の着脱、掃除等に部分的な介護が必要。 要介護2 立ち上がりや歩行は自力では困難。食事、排泄、入浴等に部分的な支援が必要。 要介護3 座位保持が自力で出来ない、昼夜逆転、介護への抵抗が見られる。 要介護4 日常生活機能はかなり低下。入浴・排泄などで全面的な介護が必要。徘徊や火 元の管理が出来ないなど行動が増える。 要介護5 日常生活能力は著しく低下。生活全般にわたり介護が必要。