CarciJ問 logical Society
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Japan水産甲殻類における福島第一原子力発電所事故による
放射能量の推移
A c c u m u l a t i o n o f radioactive materials released f r o m F u k u s h i m a Daiichi Nuclear P o w e r Plant in crustaceans
渡遁精一
l Seiichi W a t a n a b e . は じ め に . 海 産 甲 殻 類 の 放 射 能 量 2011年 3 月の東北地方を襲った地震と津波による まず,海産の甲殻類で放射性物質の放射能量の推 災害に起因して東京電力福島第一原子力発電所の大 移を見てみよう. きな事故により大量の放射性物質が空中及び海域に 放出された. 空中に放出された放射性物質量はヨウ 素 131 が 500 P B q (1 PBq=1 ベタベ クレル = 1兆 ベク レル =1015ベクレル) ,セシウム 134 が 1 0 P B q,セシ ウム 137 が 10 P B q とされている. この他にも多くの 放射性物資が放出されている. また,海洋に放出さ れた量はヨウ素 131 が 11 PBq,セ シウム 134 が3.5PBq, セシウム 137 が3.6PB q とされている( 東京電力, 2012). このような状況の中で,放射性物質が多くの種類の 動植物に蓄積した. 甲殻類についても放射性物質が 検出されているので,その情報を整理した. データ は水産庁が発表している 2012 年 3 月末までの「水産 物の放射性物質の調査」によった. このデータはエ クセル形式で提供されているので解析に適してい る. ここでの放射性物質の放射能量はヨウ素( 1131) とセシウム (CSI37+CSI34) で検体 1 キログラム( 湿 重量) あたりのベクレル値で表す. l 東京海洋大学名誉教授 〒108-8477 東京都港区港南4 -5-7Professor Emeritus. Tokyo University of Marine Science and Technology, 4-5ー7 Konan, Minato, Tokyo 108-8477, Japan E-mail: [email protected] ズワイガニ 茨城県,福島県で,この期 間に測定された 20 検 体で観測された放射性ヨウ素およびセシウムの放射 能量はすべて検出限界未満であった. ベニズワイガニ 茨城県,福島県で,この期間に測定された2 検体 で観測された放射性ヨウ素およびセシウムの放射能 量はすべて検出限界未満であった. ケガニ 茨城県,福島県,宮城県,岩手県,北海道で,こ の期間に測定された 23 検体で観測された放射性ヨ ウ素およびセシウムの放射能量はすべて検出限界未 満であった. ヒラツメガニ 福島県では, 23 検体が計測され,放射性ヨウ素 は2011 年 6 月の l検体にのみ 8.7 B q が検出されてい る. いっぽう,セシウムの放射能量は 2011 年 6 月に 360 B q が 検 出 さ れ , そ の 後 漸 減 し て い る ( 図 1). 茨城県では, 6 月の 1 9 B q が最大で,その後漸減し ている.
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放射線量 セシウムテナガエピ 茨緩•
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80 間 判 3 3 3 b て 20 11.08.07 11.09.26 11 .11 .15 12.01.04 12.02.23 12.04.13 日 図3. 茨城県霞ヶ浦におけるテナガエビから検出された放射性セシウムの放射能量の変化. 縦軸は1 k gあたりのベ クレル数,横軸は日付である. 20 11年9 月に 88 B q が検出され,その後漸減している. ー ホッコクアカエビ シウムが検出されている. 山形県,新潟県,福島県,北海道で,この期聞に 測定された11検体で観測された放射性ヨウ素および . 淡 水 産 の 甲 殻 類 の 放 射 能量 セシウムの放射能量はすべて検出限界未満であった. ボタンエビ 茨 城 県 で,2011 年 4 月 から 2012 年 2 月 の 期 間 17 検体が測定された . 2011 年 5 月の l検体から 134 B q の放射性セシウムが検出された. それ以外は2B q 以下か検出限界未満であった. 千葉県では 20 11 年 8 月に l検 体 か ら 7.6 B q の セ シ ウ ム が 検 出 さ れ て い る. イセエビ イセエビでは放射性 ヨウ素の放射能量はすべて検 出限界未満であった. セシウムの放射能量は,東京 都島腕部の 2 検体,千葉県の 2 検体では検出限界未 満であった. 茨城県の 2011 年 6 月と 9 月の 2 検 体 か らセシウムの放射能量が 58,26 B q検出され,福島 県の 2011 年 9 月と 2012年 2 月の 2 検体から 14 1, 29 B q が検出されている . シャコ 茨城県の 20 12 年 3 月のl検体から放射性セシウム 6 B q が 検 出 さ れ て い る . 福 島 県 の 2011 年 9 月と 11 月のそれぞれ l検体からは, 50 と20 B q の放射性セ 淡水産の甲殻類での放射性物質の蓄積はどのよう になっているかを見てみよう. モクズガニ 福島県で,この期間に測定された 2 検体で観測さ れた放射性ヨウ素の放射能量はすべて検出限界未満 であった. セシウムの放射能量は, 2011 年 6 月に 1930 B q, 2012 年 3 月に 3 2 0 B q が検出されている. ウチダザリガニ 福島県で,この期間に測定された2検体で観測さ れた放射性ヨウ素の放射能量はすべて検出限界未満 であった. セシウムの放射能量は, 2011 年 6 月に 290, 207 B q が検出されている. テナガエビ 茨城県霞ヶ浦で検出されたセシウムの放射能量は 201 1年 9 月, 10 月 に 88,56 B q, 2012 年 2,3 月 の 4 検体で, 57, 34, 42, 21 B q であ った( 図 3).oe;開
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全体的に標本数が少ない. このため,時期別の解 析が十分にできな い. たとえ ば, 3, 4月 の検体が 少ないので ヨウ素131はほとん ど検出されないこと になる. 淡水産の甲殻類には,海産に比較して高濃 度の放射性物質が蓄積している . これは,塩類の代 謝が淡水では海水より低いことによる. 水産甲殻類においては,底棲生活をしているにも かかわらず放射性物質の体内への蓄積はかなり少な いことが分かる. 海産生物の放射性物質の体内への 取り込みに関わる濃縮係数は1 0 - 1 0 0ぐらいで,魚 類より甲殻類の方が低いとされている. 食物網を構 成する種類の中で高次捕食者の放射性物質の蓄積量 が多い . 体内に 取 り 込 ま れ た セ シ ウ ム 13 7は5 0 -100日で半減するとされている( 鈴木, 2000; 飯淵 ら , 2001). 放射性物質の生体内への濃縮について は,清水 (1973) の総説を見て頂きたい. チェルノブイリ事故前後のセシウム137の挙動か ら,海水の放射能量に比較してスズキ やタラでは遅 れてピ ー クが来ることが知られている( 御園生, 2007) . ちなみに,福島産のヒラメの放射性物質の 出現状況を見ると ,放射性ヨウ素は4 月と 5 月にそ れぞれ l検体から検出されている. 放射性セシウム は, 20日年4 - 6月に22検体か ら検出され,その最 大 値 は350, 最 小 値 は22.6 B qで, 平均は134.35 B q であった. 7 - 9月には5 1検体で最大1610,最小は 検 出 限 界 未 満 , 平 均189.25 B q, 1 0 - 1 1月 に は102 検定で最大4500,最小13 B q,平均189.84 B q, 2012 年1 - 3月にはお検体で最大1000,最小は検 出限界 未満,平均130.62 B qであった. 福島における セシ ウムの濃度は事故後,次第に高くなりピ ークは越え たように見えるがまだ高い値を示しており予断を許 さない. スズキやアイナメではそれほど減少してお68
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らずベクレル値の高い検体がまだ多く出現する. 2011年3月の福島第一原子力発電所の事故による 海洋での放射性物質の分布や挙動は十分には判明し ていない. 海底の放射性物資の動態は生物が関与す ることから複雑だと思われる. 今後,注意深く監視 することが求められる . また,セシウム134の半減 期は約2. 1 年であるが,セシウム137では,約30年 とかなり長いことになる . こ のところセシウム濃度 が減少しているのは セ シウム134が減少している部 分もあることを考えておかねばならない. 全体的に は放射能量は漸減してゆくだろうが,海域でも陸上 と同じように放射能濃度が周囲より高いホットス ポットの存在に注目する必要があろう. 放射性物質 を吸着した泥などの挙動が問題である 。 いずれにせ よ環境中には放射性物質がこれからも残って行くこ とを注意しなければならない.園 支 献
飯淵敏夫 ・石川雄介・鈴木 譲 ・笠松不二男, 2001. 海産魚におけるC s-137濃度の変動要因( 創立25周 年記念研究成果報告会研究報告) . 海生研ニュ ー ス, 72: 5-7 御園生淳, 2007. 海域に負荷 された137Csの影響予 測 チェルノブイリ事故前後の資料と経年変動予 測式をもとに . 海生研ニュース, 75: 3-7. 清水誠, 1973. 環境における放射性物質の生物濃縮 について. Radioisotpes, 22: 62-73. 水産庁, 2012. 水産物の放射性物質の調査 http://w w wj.fa.maff.go.jp/j/s伊nlhousyaseibuss山tyousakekka/
index.html 鈴 木 譲,2000. シリーズ“漁場を見守る" ー その2 生物濃縮一原子力発電所等周辺海洋放射能調査か ら. 海生研ニュ ース, 67: 6-7. 東京電力株式会社, 20 12. 福島第一原子力発電所の事 故に伴う大気への放出量推定について( 平成24年 5 月現在における評価) . 東京電力,東京.