未来のぬけがら

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未来のぬけがら

教科・領域教育専攻 芸術系コ}ス〈美術) 藤 津 優 人 作品の要旨 1.はじめに 私は制作行為に対して無意味感を抱え,作品を作る ことができない時期があった。それを克服し,制作を 続けていくために以下の2つの取り組みを行った。 1つは制作に意味を求めず,脱力感のある作品を完 成像とすること。 2つ自は自分の本来的に心惹かれる ものを描くことである。心惹かれるものを客観的に知 るため,ネットサーフィンで集めていた気になった画 像や自分の撮ったスナップを分析した。そして「シン プルJ

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ノスタルジックJ

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サイエンス・フィクション (以下SFと表記)Jの3つの要素を抽出した。それら をモチーフ,構図,色彩などの構成要素として組み合 わせていくことにした。 「ノスタルジックJrSFJからレトロフューチャー 噌好を自覚し,それを fシンプルJな形式で,特に意 味を求めずにただつくるということをやっていく。そ の結果,作品に能天気な間抜けさやあっけなさが漂う ことを望んでいる。この間抜けさやあっけなさの漂う ものを「未来のぬけがらjと名付け,自身の制作のコ ンセプトとしている。 II.制作の動機 キャンパスを画面の向こう側に通じた窓と意識する ことがこれまでの制作経験の中であった。それを発展 させ,いくつかのキャンパスを窓と見立てて, 1つの 風景を覗いているように見える展示方法を考えた。そ して,前述の「未来のぬけがらj というテーマを下敷 きに,その風景を構想することにした。 指導教員 鈴 木 久 人 盤.制作の過程 1アイデアスケッチ まず,思いついたものをできる限りシンプルに描く。 そして,キャンパスを並べた時,一つの風景として見 えるように構関を考える。 この段階で絵柄に脱力感のあることを重視する。ま た配色なども検討し,テ}マに適うか吟味する。 2摸型作り アイデアスケッチを元に模型を作る。これにより, イメージしたものを立体感や空気感のあるものとして 描くことができる。素材はスタイロフォーム,木,紙 など,イメージしたものの造形に適当なものを使う。 着彩は,アイデアスケッチを参考にアクリ/レ絵具を使 用する。(図1) 図1.製作中の模型の一部 3模型の撮影 背景のセットも制作し,模型を置いて撮影する。 (図

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)

これにより,絵画制作のための具体的なエ スキースを作ることができる。

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− 280 − 図2.模型撮影の様子 4下地作り 支持体はキャンパス,パネルなどを使っている。 今回,下地作りには2通りの方法を試した。 1つは 地塗り材としてシェルマチエールとジェッソ,ジェ ノレメヂィウム,モデ、リングベーストを混ぜたものを 2層以上,刷毛で塗り,サンドペーパーで表面を少 し靖らかにしたもの。もう一つはセラミックスタッ コをベインティングナイフで押さえつけながら2層 以上塗装したものである。どちらも砂をメディウム で練ったもので,画面に抵抗感を持たせるために使 用している。前者は砂の粒子が荒いので表部の凹凸 が激しく,後者は砂の粒子が細かいためザラザラし ていながらも滑らかさがある。 これらの上に,アクリル絵具のパーントシエンナ を2層,刷毛で塗り,有色の下地にする。これによ り,程よい遁かみを保ちながら描画を進めることが できる。また,最終的にも温かさが画面に残存する ので,ノスタノレジックな印象を演出することができ ると考えている。 5描画 エスキースをもとに鉛筆で下描きをし,アクリル 絵具を主材料として描画を進める。アンプリーチド チタニウムで明部や量感を描き起こし,間有色をグ ロスメディウムで溶いて乗せる技法を操り返して いく。(図的これは主にアクリル絵具の発色を高め るために行っている。自を混色することを減らし, 原色に近い色を重ねていくことで,アクリル絵具の ビニールのようなチープな発色を高め,鮮やかで空 患な画面を作りたいと考えている。 描画には,豚毛などの硬めの筆を使ったドライブ ラシを多用する。これにより,パルプ・マガジンの ようなザラッとした感覚を画面に与え,ノスタルジ ックでチープな雰囲気を漂わすことを試みている。 図3.撤iOOの初期段階(画面右側) IV.最後に 「未来のぬけがら J というコンセプトを設定した ことでキャンパスを窓として捉える

J

という些 細なアイデアを具現化することができたのではな いかと考える。 本コンセプトは制作行為に対する無意味感が起 点となっているが,そこまで立ち返ったことによっ て,制作に集中力を持って取り組めるという実感が ある。現時点では,制作することに何らかの意味を 見出すことよりも,制作を継続することが重要であ ると考えている。今後もこのコンセプトに従い,制 作を継続していく。

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