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発展途上国工業プロジェクトのリスク分析
北川
博・日下泰夫
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はじめに 発展途上国は,第二次大戦後,モノカルチャー からの脱却をめざして経済開発をすすめてきた. 特に,工業化は,輸入代替,外貨獲得につながる ものとして一貫して経済開発の大きな柱として重 視されてきた.しかし,石油危機以降の世界経済 の低迷により累積債務問題が深刻化するなど発展 途上国の経済開発は足踏みを余儀なくされ,この ため,途上国市場への依存度が高いわが国のプラ ント輸出も低迷をつづけている状況である.工業 化を通して経済を自立させるためには,いうまで もなくプロジェクト自体の経済的実現性の有無が カギとなる.それゆえ,わが国は累積債務から立 直りつつある発展途上国へのフィージピリティ調 究団を派遣することによって経済自立に貢献する 工業プロジェクト実施の可能性を調斉し,円借款 等による援助を実施している. 発展途上国のプロジェクトは多くのリスクを内 包しているが,このような途上国への援助資金が プロジェグトのリスクを低下させる効果がある. しかし,これまでわが国では途上国プロジェクト のリスクやこれにもとづく援助効果の定量的評価 はほとんど行なわれていなかった.かぎりある援 きたがわ ひろし (社)日本プラント協会 干 100 千代田区有楽町 1-8-1 日比谷パークピル くさかやすお東京都立商科短大 干 104 中央区晴海 1-2 ー 1 1986 年 2 月号 助資金を有効に配分し途上国の経済自立過程をよ り確実なものとするためには,工業プロジェクト のリスク評価方法を確立し,援助資金投入効果を 定量的に把握することがきわめて重要になってい る.本研究は,途上国援助の一環として実施され ているプラント建設計画調査の大半を占めるプレ .フィージピリティ調賓の経済性分析にリスク分 析による評価方法を導入することを目的としてい る.2
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従来のプロジェクト評価法とリス ク分析 プロジェグトの実施に先立ってフィージピリテ ィ調査が行なわれるが,その中で経済性分析は最 も重要な部分の l つを占めている.途上国の経済 開発プロジェクトに対しては 1960年代から割引現 金フロー法 (DCF 法)による経済性評価が行な われるようになった日 2J. 調査時点の価格にもと づく一点見積りにより投資,費用,収益を算出し, 内部利益率(1
R
R) または純現在価値 (NPV)
によってプロジェクトの結果を予測する方法が一 般に用いられている. しかし,今日のように激しい経済変動の下では 一点見積りは長年月の費用要素の変動を反映する ことができない.たとえば図 1 は 1955年以降のブ ラジルの砂糖の輸出価格を示したものだが, 1960 年代までは比較的安定していたものの, 1970年代 以降は乱高下をくりかえすようになっている. (39) 109 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.セント/ホンド 30 F内 υ F h u n U 60 65 70
7
5
80 年 図 1 ブラジルの砂糖の輸出価格 このように,プロジェクトには種々の不確定な 事象に関する要因が含まれているので,これらの 諸要因を経済性分析に反映させることが重要とな る[注 L 従来のプロジェグトのリスクの評価では一般に 感度分析が用いられてきた.これは,主要なノミラ メータにリスクが存在すると考えられるときに, パラメータのうち l つの値だけを変えてプロジェ クトの結果(経済性評価尺度)の変化を見るもの である.わが国では 2 , 3 のパラメータの値を± 10%変えるといった形式的なやり方しか行なわれ ていない. このような感度分析に対してリスク分析は感度 分析で考えられる複数の要因の変化に確率分布を 付与し,プロジェクトの結果を確率分布として評 価しようとするものである.図 2 はリスク分析の [注] 不確実な事象を確率分布として扱うとき,それ らの確率分布が客観的に与えられる場合はリスク, 主観的に与えられる場合は不確実性と L 、う言葉によ って区別されることがある [2J. また,世界銀行の 研究レポートではリスクと不確実性を同義語として 扱っている [4J. 本研究ではリスクと不確実性を含 めて「リスク J とし、う言葉を用いることとする.1
1
0
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4
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フローダイアグラム [IJ で,先進国では 1964年に 米国のウエアハウザ一社が開発したモンテカルロ .シミュレーションによるリスク分析プログラム が先駆的な例とされている [2J. 途上国プロジェ グトでモンテカルロ・シミュレーションによるプ ロジェグト評価を最初に試みたのは, 1970年に世 界銀行が行なった研究であろう [5J. しかし,そ れ以降現在までシミュレーションによるリスク分 析は行なわれていない. 欧米の代表的な途上国プロジェグト評価法解説 書やマニュアルが刊行されたのは 1960-70年代で あるが,いずれもシミュレーションによるプロジ ェクト評価についてはまったく述べられていな い.たとえば,国際協力事業団は 1977年に欧米の 途上国援助機構のプロジェクト評価法を調査し報 告書を出しているが,その中で紹介されているリ スク分析とは「感度分析に組合せ,確率といった 統計的手法を加味した分析方法 J , すなわち, す べての変動のパターンを考えてそれらに確率を付 与する方法であり,モンテカルロ・シミュレーシ ョンによる方法とは異なっている.この方法では 「…仮定を増すとその組合せが級数的に増加し,そ の各々の内部利益率を出す必要があるうえ,各ケ ースのおこる確率を推定するというやっかいな作 業がある… J [13J とし寸報告書の指摘にもあると おり,変動要因の増加とともに確率的評価は事実 上困難となる.これに対してモンテカルロ・シミ ュレーションで、は変動要因の増加に対しでも高々 数千回のくりかえし計算を実行するにとどまり, 高性能で比較的低価格のパーソナル・コンピュー タが急速に普及している今日,きわめて効果的な 評価方法となりつつある.3
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経済性評価尺度 投資の経済性評価尺度は,利益率,利益額,回 収期間の 3 つに分けられる.途上国の工業プロジ ェクト評価では内部利益率(1
R
R) ,投資利益率(RO
1) ,純現在価値 (NPV) ,回収期間 (PO重要な要因の確率値 将来の生起確率にした がってこれらの要因の 組をランダムに選ぶ 各組合せに対して利益 ネを決定する 投資リスクを明確にす るためこの過帯主をくり かえす *期待値 =:'F均値または故良推定 út(
'
f
起 確 率 図 2 投資計画のシミュレーション p) 等が用いられている.特に,内部利益率は世 界銀行など国際援助機構が用いていることもあっ てわが国では金科玉条のごとく用いられている. しかしながら,内部利益率は割引率を決定しなく てもよいという利点はあるが,プロジェクト評価 で必ず行なわれるといってよい代替案の選択には 使えないという短所がある. これに対して投資利益率は投資効率を示す指標 であり,投資額や利益率に制約のある場合の代替 案の選択に用いられる [3J. 1986 年 2 月号 利益率 純現在価値は利益額の大き さを評価する指様である.回 収期間は,回収の長短を問題 とする指標であり, リスク下 のプロジェクト評価では投資 がどれだけの期間で回収され るかは途上国,援助国政府双 方にとって重大な関心事であ ろう. 各評価尺度には固有の特性 が存在するのでプロジェクト の採否あるいは借款供与に関 する意思決定に当っては,こ れらの指標を適宜選択して決 定すべきである.4
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リスク下のプロジ ヱクトの経済性評価 発展途上国の工業プロジェ クト t土, ①資金,技術,機器,資材 の調達における外国への依存 度が非常に高い. ②経済自立戦略の下に位置 づけられる輸出指向型プロジ ェグトは,先進国の経済動向 に左右されやすい. ③プロジェクトの経済への 影響度が大きく,その成否いかんによっては当該 国の債務増加など経済悪化の原因となる. ④プロジェグトに対する経済的,社会的,政治 的,国際的要因の影響が大きい. など大きなリスクを包含している.特に今日のよ うな厳しい経済環境の下では,現在行なわれてい る l つの見積値にもとづく経済性分析では実行可 能性がないプロジェクトを実行可能と判定してし まう危険性があるので,工業プロジェグトの経済 性評価にはリスク分析を導入する必要が生じる.(
4
1)1
1
1
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.発展途上国のプロジェクトには共通するリスク 要因のあることが国際機闘をはじめとする多くの プロジェクト評価経験者によって報告されている (j;ことえば,
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本研究ではこれらのリスク要因から経済性への 影響が大きく,重要と考えられる要因を抽出し た.すなわち, ①外国為替相場 ②圏内物価指数 ③米国物価指数 ④利子率 ⑤輸入機器コスト ⑥輸入原料コスト ⑦輸入ユーティリテイコスト ⑨保全費(輸入分) ⑨原料供給量 ⑩圏内需要 ⑮圏内市場占有率 ⑫圏内価格 ⑬海外需要 ⑭海外市場占有率 ⑮輸出価格 上述の発展途上国プロジェクトの特徴から資金 に占める借款の割合と利子率の影響は大きい.ま た,投資および費用の相当部分を輸入に頼ること が多いので,機器,原料,ユーティリティ等のコ ストの外貨分は重要である.市場動向の影響も大 きい.さらに,高インフレ下にあって物価指数の 影響も大きし外国為替相場への影響も無視でき ない. 選定された各リスグ要因に対しては,過去のデ ータや経験にもとづいて分布を推定する. プロジェクトの経済的価値は,通常最終的に米 ドルによって表わされる. 一般に通貨の対内購買力は物価指数の逆数とし てとらえられるから AB 両通貨の購買力平価を算 出するには過去の正常な為替レートの存在を前提 として AB 国聞の基準年度の為替レートに両国の1
1
2
(42) 物価指数の比率を乗じる方法が用いられている. しかし,プロジェクト評価では各費用要素につい て基準年度の為替レートで見積ることは事実上困 難であるので,ここでは各年度の為替レートに両 国の物価指数の比率を乗じた値を購買力平価とす る. すなわち,途上国・米国の購買力平価は, 米国物価指数(
1
)
購買力平価=為替レート× 途上国物価指数 となる. 図 3 はリスク下の途上国工業プロジェクトの経 済性評価のフローチャートを示したものである. リスク分析および援助資金のリスク低下の評価の ほかに比較のために現行方式による経済性評価が 加えられている.この新方式によるプロジェクト 評価は次の手順にしたがう. ①現地調査にもとづいてリスク要因を選定する ②プロジェグトの投資,費用,収益の構成要素 の分布を推定する. 確率分布としては,一般に次式のベータ分布を 考えることにする.(
2
)
f(x;a
,
ß;a
,b)=
i
B( α, ß) (b-a) α+lM(日
(a~玉 X~五 b) o その他 ここで B(α, ß) はベータ関数である. しかし,長期間にわたるプロジェクトの変動を 一般的なベータ分布で見積ることは困難であり, むしろ不確実な事象の出現の確率はいずれも等確 率であるとみなすことが自然である場合が多い. それゆえ,ここではベータ分布の特別な場合 (α=゚=
1)とした一様分布で見積る.すなわち, 1 五 , (a~x 計)(
3
)
f(x)=~b ~ 0 その他 この場合,各要因の確率分布は,変動の最大値 と最小値を推定することによって与えられる. ③すべてのリスク要因の値を各々の一様分布か オベレーションズ・リサーチTIli---上 経済性分析 一』白…見積による 算二算 計二計 二一度 ロ一一尺 フこ価 金二評 現二性 味二消 正二経 感度 各リスク要因の最大値(最小値)設定 他の要因を見積値に設定 分 正味現金フロー計算 キ斤 経済性評価尺度計算 全リスク要因の最大値・最小値設定 ス TH ーし 数 発 生 ク IE 味現金フロー計算 分 経済性評価尺度計算 析 経済性評価尺!支の確率分布 援助資金によるリスク低下 援助資金比率の設定
一ーーーー-.1
正味現全フロー計算 経済性評価尺度計算 続 i汽性評価尺!支の確率分布 図 3 リスク分析による途上国工業プロジェクト評価 ら発生さぜて評価尺度の値を計算する. これを 1000回くりかえす.この結果にもとづいて各評価 尺度の確率分布を計算する.なお,本研究で使用 した一様乱数は,乗算合同法によって発生させた もので,使用条件で頻度検定および連の検定を行 なった結果は良好であった日 4]. ④先進国の援助資金の効果を評価する. ⑤さらに,提案方式と現行方式との差異を明ら 1986 年 2 月号 表 1 リスク要因 リスク要因 記号 外国為替相場(途上国通貨) 途上国物価指数 米国物価指数 割引率(資本コスト) 投資の構成要素 j の内貨分 投資の構成要素 j の外貨分 費用の構成要素 h の内貨分 費用の構成要素 h の外貨分 園内需要 海外需要 国内市場占有率 海外市場占有率 原材料供給量 圏内価格 輸出価格叫九九
X
t 。Lt 8Ft 'th
j
t
b
j
t
CLI< CFk DLt DFtS
L
t
SFt 添字の t は時点, L は途上国, Ffま外国(米国)を 表わす. かにする.5.
定式化
とりあけγこリスク要因を表 l に示す.添字 t は 時点 L は途上国 F は外国を表わす. 時点、 t における途上国通貨の購買力平価 X't~土 (1)式から(
4
)
X't=Xdht/θLt となる. 時点 t における投資の第 j 要素の{値直はその内貨 分を購買力平価で 数で割つた値の総和で、あり,次式で表わされる. (日 ) ljt =ILjt/X't+Ùjt/θFt これをすべての要素について加えると時点 t の 投資額 N(
6
)
lt= 石 (ιjt/X九 +h州民) が得られる. (43)1
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3
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.同様に時点、川こおける費用も次式で、表わされる. N
(
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)
Ct=~(C/X't+C /
O
F
t
)
k=1 需要最 Dt は国内需要分と海外需要分との和と して(
8
)
Dt=DLtS
Lt+DFtSFt
で表わされる.最初に原料供給量 Mt が生産能力 V を上回る場合 (V 孟 Mt) を考える.このとき, 生産能力 V が需要量 Dt を上回る場合には需要量 全部を生産し,生産能力 V が需要量日以下とな る場合には生産能力一杯に生産を行なう.すなわ ち,生産量。は (Dt<V ならば Qt=Dt(
9
)
i
lDt~V ならば Qt=V となる.逆に原料供給量 Mt が生産能力に追いつ かない場合 (V>Mt ) には (9) 式の V の代わりに Mt とおけばよい. (9) 式の V~Mt における Qt=V および , V>Mt における Qt= ル1t の場合には輸出 比率 qt をどのように選択するかは各国の政策によ り異なり,一般論として議論することはむずかし い.しかしながら,過去の実績を尊重するという 立場からは輸出比率を大幅に変更することは得策 ではない.よって,ここでは輸出比率は生産量に かかわらず一定と考えて ηFtSF'(
1
0
)
qt=五瓦注亘FtSFt
で与えられているものとする.(
10) 式より時点 t における収益九は,(
1
1
)
Rt=Qt{(I-qt)PLt/X't+qtPFt/θFd で与えられる. 時点 t における正味キャッシュフロー CFt は, 建設期間においては投資額,操業期間においては 収益と費用との差によって与えられるから,(6) ,
(7),
(1 1)式を用いて (-1,
(1;豆 t 壬 T1)(
1
2
)
CFt=i
(R
,
-Ct
(Tl<t~三 T) で表わされる.ここで T1 は建設期間 , T はプロ ジェグトの全計同期間である. したがって,プロジェグトの全計i雨期間におけ1
1
4
る純現在価値 (NP
V) ,投資利益率 (RO 1) はT Rt-Ct
T
l
I
t
(
1
3
)
NPV=
~ 7-一一一一 -~τ一一一一一t=
T,.
+III(
1 +ij) 円 II(I+ij)T Rt-Ct
ラ tt=T
,
+III( 1
+i
j) ( 14) ROI=--j-=1v ー 1 T1 _ _ L_t_一一 1 ・ z ~1I
I
(
1
+i
j) となる.回収期間 (P OP) はT
*
Rt-Ct
T
,I
t
(
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5) ~.
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+1I
I
(
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+i
j) t~I
I
(
!
+i
j) を満たす T* で与えられる.6
.
リスク分析の実施例 以下に 1984年にフィージピリティ調査が実際に 行なわれた A 国 B プロジェクトの解析例を示す. このプロジェクトは建設期間 1 年,操業期間 10 年,投資額 130万ドルで, 製品は全量国内販売を 予定している. 表 2 は,一点見積りによるキャッシュフローの 一部であり,表 3 はキャッシュフロー表にもとづ いて計算された紳 4在価値,投資利益率および同 収期間である. 表 4 は選定されたリスク要因と推定値を示して いる.報告書から原料供給量と販売価格を選定 し,さらに A 国の激しいインフレを考慮して A 国 および米国の物価指数および為替レートを加え, 国際通貨基金統計により最大値と最小値を推定し た.割引率は 10% とした.なお,ここでは傾向変 動は扱っていない.また目標値は,純現在価値80 万ドル,投資利益率70% ,回収期間 6 年としてシ ミュレーションの結果を評価することとした. 図 4 はシミュレーションの結果の出力例として 純現在価値の場合を示したもので,上は確率分 布, ドは累積分布である.この図から最頻値は68 -70万ドルで,目標値自体の達成されない確率が 0.701 もあり, このプロジェクトを実施した場合 のリスクが高いことは明白である.これに対して表 2 現行方式によるキャッ、ンュフロー表 単位:ドル 年 投資額 操業費 収益 正味キャッシュフロー 1 (1985) 1382330.0 -1382330.0 2 (1986) 170681.0 549240.0 378559.0 3 (1987) 184226.0 597000.0 412774.0 : (……) 11(1995) 184226.0 579000.0 412774.0 表 3 現行方式による経済性分析(割引率 10%) 純現在価値(ドル) 投資利益率(%) 回収期間(年) 120800.0 81.2 5.4 表 4 リスク要因と推定値 リスク要因 平均値 最大値 最小値 外貨レート 570.0 684.0 456.0 国内物価指数 200.0 250.0 150.0 米国物価指数 8.0 10.0 6.0 割引率 10.0 12.0 8.0 輸入機器コスト 682200.0 750000.0 614000.0 !原料供給量 7500.0 8250.0 6750.0 函内販売価格 75.0 90.0 60.0 現行方式では利益額は約 102万ドルで目標値を 30 万ドル以とも k 回る高い収益性を示すプロジェク トと判定することになる.しかし,シミュレーシ ョンの結果から 102万ドルが達成される見込はほ とんどない(達成されない確率は 0.996 である)• このように現行方式によるプロジェクトの採否の 判定は大きな誤算をまねく可能性がある. 次に,投資額の 10 , 20 および 30% に援flJJ資金を 導入した場合にプロジェクトのリスクがどの程度 低下するかを検討する.実際には,援助資金の条 約二は国やプロジェクトによって必ずしも一様では ないが,ここで、は簡単のために年利 4% ,据置期 間 0 ,返済期聞はプロジェクトの百十回期間に等し いものとした. 図 5 は援助資金導入によるリスク低ドを示した ものである.純現在価値,投資利益率および回収 期間の分布関数の形は基本的に変わらないが,援 助資金の増加とともに分布が右に(回収期間では 1986 年 2 月号 左に)シフトする. 純現在価値では援助資金が O から 10%刻みで噌 加するにつれて目標値 (80万ドル)が達成されな い確率は, 0.701 から 0.479 , 0.246, 0.123 と減少 し,援助資金によるリスク低下は顕著で、ある. 投資利益率においても同様に援助資金導入によ り目標値 (70%) が達成されない確率は0.688から 0.482, 0.274, 0.151 へと大幅に減少する. 回収期間においても,目標値 (6 年)が達成さ れる確率が0.509から 0.585 , 0.661, 0.726 へと改 善される. このように, リスク分析を通じて援助資金の導 入によるリスク低下の評価を行なうことは,途上 国,援助国双方の意思決定者にとって非常に重要 となる.
7
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結論と今後の展望 本研究では, リスク分析の視点から発展途 L: 国 の工業プロジェクト評価法を提案し,実際の調査 データを用いて現行方式が誤った結論に導く可能 性があることを示し, リスク分析の重要性を明ら かにした.最後に,援助資金によるリスク低下を 定量的に評価することによって本方式の有効性を 示した. 途上国では本方式を導入することによってリス クの高いプロジェクトを実行可能と判断してしま う危険を避けられるので,より信頼性の高い情報 にもとづいて意思決定を行なうことができる. 他方,援助資金を供与する先進国にとってはプ ロジェクトの実現性の適確な評価が得られると同 時に援助効果の予測と資金配分のための定量的な 判断資料をもつことができる.また輸出者にとっ てもリスクを回避できるというメリッ卜がある. 世界銀行のプロジェクト評価スタッフも指摘し ているようにリスク分析の標準化には限界がある [5J が,本研究で提案した方式はプレ・フィージ ビリティ調査段階で十分有効であると考えられ る.プロジェグトの環境に不確実な要因が多い途 (45) 115 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.1
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図 5-1 純現在価値の分布関数 累 積 1.0 石在0.5 率 。 40 50 60 70 80 90 100 110 120%
図 5-2 投資利益率の分布関数 1.0 累 l 援助資金比率30%h
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20% 、 徹・ 0.5 ト キ 10% 0% 。 6 6.5 7 7.5 8 年 図 5-3 回収期間の分布関数 図 5 援助資金によるリスク低下 J-. 国では,むしろブィージピリティ調査において リスク分析を標準的な手順として採用すべきであ ろう.いまや,このような条件は,パーソナル・ コンピュータの普及によって十分整っていると言 える. さらに,今後も累積債務問題が再燃することが 懸念される情勢下では,プロジェクト実施後のフ 1986 年 2 月号 ォローアップを通じて途上国の経済自立過程を推 進する諸政策を講ずることが非常に重要になって いる.本方式は,そのために効果的に用いること ができるであろう.また,補助金の効果の予測な どにも応用することが可能である. 途と国工業プロジェクトの実施または援助資金 供与に関する意思決定は,本研究で、扱った要因以 (47)1
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© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.外のリスク(たとえばカントリー・リスクなど) も考慮して行なわれるので,今後はさらに総合的 なリスク分析に発展させていく必要があろう. [ 1
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