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異 業 種 で の 映 像 情 報 メ デ ィ ア 利 用 第 7 回 放射線治療のための画像処理 久保田 佳 樹 キーワード 放射線治療 レジストレーション 追跡 治療計画 患者位置決め リアルタイム 1 まえがき 治療計画 近年 放射線治療は高度化が進み 定位放射線治療 Stereotactic

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Academic year: 2021

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1.まえがき

近 年 , 放 射 線 治 療 は 高 度 化 が 進 み , 定 位 放 射 線 治 療 (Stereotactic Body Radiation Therapy: SBRT),強度変調 放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: I M R T ), 回 転 型 強 度 変 調 放 射 線 治 療( V o l u m e t r i c Modulated Arc Therapy: VMAT),粒子線治療(Particle Therapy)のように,高精度放射線治療が普及しています. そのため,正常組織の線量を低下し,かつターゲットに高 線量を投与することが可能となっています.しかしその一 方で,照射位置がずれてしまった場合に,周りの正常組織 にまで高線量を投与してしまう危険があります.このよう な事態を防ぎ,ターゲットに処方線量を高精度に照射する ために,画像誘導放射線治療(Image-Guided Radiotherapy: IGRT)が広く行われてきています.また,近年では画像誘 導粒子線治療(Image-Guided Particle Therapy: IGPT)も 普及してきています. IGRT や IGPT ではさまざまな画像処理技術が使用される ことで高精度かつ高速な治療を実現しています1)2).また これらの技術だけではなく,放射線治療の中ではさまざま な箇所で画像処理技術が使用されています.本稿では,放 射線治療の大まかな流れと,それぞれの箇所において使用 される画像処理技術の研究開発の現状と,今後の放射線治 療における画像処理技術の展望について述べます.

2.放射線治療の大まかな流れ

放射線治療はがんと診断された後,治療のための準備か ら照射するまでに図 1 に示すように三つのシーンがありま す.まず,Computed Tomography(CT)画像を撮影し, CT 画像上で治療計画を立てます.治療計画とは,放射線 を照射する方向と照射線量を決める作業で,治療計画装置 に よ っ て 計 算 さ れ た 後 , 線 量 分 布 や Dose Volume Histogram(DVH)を利用してターゲットや重要臓器の照射 予定線量を確認し,それらの線量に応じて計画修正をする ということを繰り返します.次に,患者位置決めを行いま す.患者位置決めは,治療計画用の CT 画像を撮影した患 者位置に治療直前の患者位置を合わせこむ作業のことで す.患者位置決めは Cone Beam CT(CBCT),X 線 Flat Panel Detector(FPD),治療室 CT 等,治療室に設置され た装置で撮影された画像を用いて治療台を動かすことで行 います.そして最後に,照射を行います.照射自体は早い ものであれば 1 ∼ 2 分もあれば終わりますが,治療計画や 患者位置決め等,放射線治療を正確に行うためにはこれら の準備が必須となります. 画像処理技術はこれらのシーンのさまざまな箇所で使用 されており,高精度な放射線治療の実現に今や欠かせない ものとなっています.次章では,それぞれのシーンにおい て,画像処理技術が放射線治療にどのように役に立ってい るかを説明します.

3.放射線治療における画像処理の役割

3.1 治療計画に用いる画像処理 治療計画を立てるためには,まず目標となるターゲット や線量を評価するための重要臓器の輪郭を囲う必要があり

放射線治療のための画像処理

久保田 佳 樹

† キーワード:放射線治療,レジストレーション,追跡,治療計画,患者位置決め,リアルタイム †群馬大学 重粒子線医学研究センター

"Image Processing in Radiotherapy" by Yoshiki Kubota (Heavy Ion Medical Center, Gunma University, Gunma)

患者位置決め 治療計画

照射

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ます.これらの作業は,放射線科医,放射線技師,医学物 理士等によって行われます.CT 画像上の腫瘍の輪郭を囲 う場合には,図 2 のように Positron Emission Tomography (PET)や Magnetic Resonance Imaging(MRI)など,それ ぞれ異なった特性を持つ画像を使用し,それらの画像と CT 画像をフュージョンすることにより腫瘍輪郭を明確に して抽出します.輪郭の抽出は,画像処理のセグメンテー ション技術によって自動で行われる場合もありますが,最 終的には放射線科医が手動で修正を行います.また,回転 ガントリーを使用する IMRT や VMAT の治療では,回転 ガントリーによってさまざまな角度からの照射が可能とな りますので,治療計画は一つの CT 画像のみを使用して計 算することが可能です.しかし重粒子線など回転ガント リーを持たない場合には,図 3 のように患者の体位を傾け ることによって照射位置を変えます.この時に,それぞれ の体位における治療計画を立てた後,全体位で合成された 実際起こりうる線量分布を確認するためには,いずれかの 体位の CT 画像上で計算された線量分布に,他の体位に よって撮影された CT 画像上で計算された線量分布を合成 する必要があります.また,過去に照射された線量分布と 新たに計画を立てた線量分布の合成分布を確認する場合に も,同様にどちらかの CT 画像上にもう一方の線量分布を 合成する必要があります.このような場合には,3D-3D Registration 法によってそれぞれの体位の CT 画像の対応す る画素の位置を計算し,その位置対応情報を元に線量分布 のフュージョンを行います.このようなフュージョンは, MIM software(MIM software 社),Focal(Elekta 社)などイ

メージフュージョン・ビューアーソフトウェアや,Pinnacle (Philips 社),Eclipse(Varian medical Systems 社)などの治

療計画ソフトウェアで実現しています. 治療計画においては,さまざまな画像処理技術が応用さ れていますが,リアルタイム性を求めるよりも精度を求め ることが重要となります.現在のところ,Registration 技 術などは体の中でも変形の少ない部位に関しては精度良く 実現することが可能ですが,胃や腸など常に動いている部 位に関しては 1 : 1 の対応を取るのが困難であるため,こ のような部位でも高精度に行える変形 Registration 法に期 待が高まっています. 3.2 患者位置決めに用いる画像処理 患者位置決めは,図4で示すようなCT-CBCT Registration 技術を用いた方法が研究されており3)∼ 5),X-ray Volume

Imaging system(Elekta 社)や On-Board Imager system (Varian Medical Systems 社)などのソフトウェアが開発さ れています.光子線治療の患者位置決めにおいては,この ような CBCT を用いた方法が普及してきています. また,図 5 のように 2 方向からの X 線を用いた 2D-3D Registration 法を用いた患者位置決めについて研究されてい ます6)∼ 8).2D-3D Registration 法とは,図6で示されるよう な治療直前に撮影された X 線画像に,CT 画像を並進・回転 し て CT 画 像 か ら 作 成 さ れ た Digitally Reconstructed Radiograph(DRR)画像が一致するように繰り返し計算する 方法のことです.この方法は Exactrac(BrainLAB 社)など のソフトウェアが開発されています.粒子線治療施設では, 581 (a)マーカマッチング (b)ボーンマッチング 図 4 リファレンス CT 画像(紫色)と CBCT 画像(緑色) (文献 5)図 1 より引用・改変) 図 3 異なる体位ごとの線量分布 (右端図は仮想ビームを含む合成線量分布) 図 2 CT 画像(左)と PET-CT 画像(右)

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582 (94) スノート(照射筒)との干渉や粒子線特有のビーム飛程の問 題により,患者位置決めにこれら 2 方向からの X 線を用いた り,治療室 CT が使用されている施設が多くあります.ビー ム飛程の問題とは,粒子線がターゲットまでの通過パスに 影響を受けてターゲット周辺の線量が大きく変化すること であり,ターゲットの位置だけではなく,ターゲットまで の水等価距離(飛程を水に換算した距離)の変化を計算する ことが重要となります.治療室 CT を使用した場合では, 3D-3D Registration 法などにより,ターゲットまでの位置の ずれを調べることに加え,ターゲットまでの水等価距離の 変化についても同時に計算することが必要となります. 患者位置決めではできるだけ高速な処理が必要であり, それぞれの施設の治療室で使用できる画像に合わせたさま ざまな高速な画像処理技術が応用されています. 3.3 照射中に用いる画像処理 放射線治療において,肺や腹部など,呼吸によって変化す る部位の腫瘍に対して,マージンの拡大を抑えて照射する 方法として,腫瘍を待ち伏せて呼吸のタイミングに合わせ て照射を行う呼吸同期照射が広く普及しています9).呼吸同 期照射は,呼吸の動きが腫瘍の動きと相関していると仮定 して,直接的/間接的に呼吸や腫瘍の動きを計測するさまざ まな方法を使用します.それらの方法としては,図7のよう なレーザによって体表面の変動を計測する方法や,X 線透視 によって金属マーカの動きを計測する方法があります. Shirato らは X 線透視画像上から複数の金属マーカをパター ン認識により抽出し,その金属マーカ位置を指標に放射線 を照射する方法を提案しました10)(図 8).また,近年では マーカを使用しない非侵襲的な方法を実現するため,撮影 された画像上より直接腫瘍位置を計算するマーカレス呼吸 同期照射法について盛んに研究されています.治療中に使 用可能な X 線等の画像中から腫瘍位置を抽出することは マーカ抽出と比較しても高難易度であるため,マーカレス での呼吸同期照射は,より高度な画像処理技術が必要とな ります.Cui らは複数の X 線透視画像からテンプレートを用 意し,それぞれのテンプレートでの最適位置の投票を行う ことで高精度な腫瘍位置の追跡を実現しています11)(図 9). Bryant らは,4DCT 画像のそれぞれの位相より作成した Beams-Eye-View(BEV)テンプレートとなる DRR 画像と治 療中撮影される Electronic Portal Imaging Device(EPID)画 像中より,関心領域内の相互相関値を計算することで腫瘍 位置の追跡を実現しています12)(図 10).また,著者らは X 線画像以外の腫瘍位置確認の媒体として,超音波画像を用 図 8 リアルタイム腫瘍追跡システム画面 四角の中心がマーカ,星印が治療計画でのマーカ位置を表す(文献 10) より引用). 図 7 呼吸センサ(左)と呼吸波形(右) 図 6 DRR 画像(左)と X 線画像(右) 図 5 群馬大学での治療台と照射スノートと X 線 FPD

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いた腫瘍位置追跡法を提案しました13).この方法は,体に 固定した超音波装置より得られた画像中の,ある関心領域 内のターゲットの変形と撮影断面位置の変化に対応するた めに,連続する画像と予め保存された最呼気相もしくは最 吸気相の画像をそれぞれ用いることで高精度かつ安定した 追跡を実現しています(図 11). このように,照射中に腫瘍位置を確認することは放射線 治療において非常に重要であり,それを実現するためにさ まざまな高度な画像処理技術が応用されています.

4.今後の展望

画像処理技術は,放射線治療のさまざまな場面で応用され ており,高精度放射線治療のために今や欠かせないものと なっています.今後,放射線治療の分野で使用される CT 画 像,CBCT 画像,MRI,超音波画像などの媒体はさらなる高 精度化に伴い情報量は膨大になり,かつリアルタイムの収 583 Incoming Image t Matching Template 1 Template 2 Template 12 S12, L12 S2, L2 S1, L1 Voting (a) (b) Location for Image t(Lt) 図 9 マルチテンプレートマッチングの流れ(a)と X 線透視画像(b) 青線は関心領域,赤線は腫瘍領域を表す(文献 11)の図 1 と図 2 より引用・改変). 4DCT EPID

Projection Rigid Transforms

Normalized Cross Correlation NCC1 NCCN max NCC MV DRR (a) (b) T 図 10 BEV テンプレートマッチングの流れ(a)と追跡結果(b) 赤線は腫瘍領域を表す(文献 12)の図 1 と図 5 より引用・改変).

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584 (96) 集も実現してくると予想されます.また治療時においては, 画 像 撮 影 を し た そ の 場 で 治 療 計 画 を 修 正 し て 照 射 す る Adaptive Therapy が今後増加してくると予想されます.そ れらを高速かつ高精度に処理するためにも,より高度な画 像処理アルゴリズムの研究開発が必要となります. これらの画像を扱う一つの魅力は,通常のカメラモデル では取得することができない,まさに 3 次元の画像情報を 扱うことができるということだと思います.そのため,通 常用いられる 2 次元の画像処理技術を 3 次元に単に拡張す るということだけではなく,3 次元ならではの特化した処 理技術について考える面白さがあります.このような分野 に斬新な画像処理のアイデアが提案され,放射線治療がよ り安全で負担の小さいものになることを期待します. (2015 年 4 月 6 日受付)

〔文 献〕

1)G.T.Y. Chen, G.C. Sharp and S. Mori: "A review of image-guided radiotherapy", Radiol Phys Technol. 2, 1, 1-12(2009)

2)S. Mori, S. Zenklusen and A.C. Knopf: "Current status and future prospects of multi-dimensional image-guided particle therapy", Radiol Phys Technol., 6, 2, 249-72(2013)

3)T. Chen, S. Kim, S. Goyal, et al.: "Object-constrained meshless deformable algorithm for high speed 3D nonrigid registration between CT and CBCT", Med Phys., 37, 1, 197-210(2010) 4)X. Zhen, X. Gu, H. Yan, et al.: "CT to cone-beam CT deformable

registration with simultaneous intensity correction", Phys Med Biol., 57, 21, 6807-26(2012)

5)A. van der Horst, S. Wognum, R.D. Fajardo, et al.: "Interfractional

Position Variation of Pancreatic Tumors Quantified Using Intratumoral Fiducial Markers and Daily Cone Beam Computed Tomography", Int J Radiat Oncol Biol Phys, 87, 1, 202-8.(2013) 6)D. Fu and G. Kuduvalli: "A fast, accurate and automatic 2D-3D

image registration for image-guided cranial radiosurgery", Med Phys., 35, 5, 2080-94(2008)

7)H.S. Jans, A.M. Syme, S. Rathee, et al.: "3D interfractional patient position verification using 2D-3D registration of orthogonal images", Med Phys., 33, 5, 1420-39(2006)

8)J. Wu, M. Kim, J. Peters, et al.: "Evaluation of similarity measures for use in the intensity-based rigid 2D-3D registration for patient positioning in radiotherapy", Med Phys., 36, 12, 5391-403(2009) 9)K. Ohara, T. Okumura, M. Akisada, et al.: "Irradiation synchronized

with respiration gate", Int J Radiat Oncol Biol Phys., 17, 4, 853-7 (1989)

10)H. Shirato, S. Shimizu, T. Kunieda, et al.: "Physical aspects of a real-time tumor-tracking system for gated radiotherapy", Int J Radiat Oncol Biol Phys., 48, 4, 1187-95(2000)

11)Y. Cui, J.G. Dy, G.C. Sharp, et al.: "Multi template-based fluoroscopic tracking of lung tumor mass without implanted fiducial markers", Phys Med Biol., 52, 20, 6229-42(2007)

12)J.H. Bryant, J. Rottmann, J.H. Lewis, et al.: "Registration of clinical volumes to beams-eye-view images for real-time tracking", Med Phys., 41, 12, 121703-1-9(2014)

13)Y. Kubota, A. Matsumura, M. Fukahori, et al.: "A new method for tracking organ motion on diagnostic ultrasound images", Med Phys., 41, 9, 092901-1-8(2014)

US device

Video signal from monitor Hydraulic fixing arm

AVI file

Respiratory waveform signal US probe

LED sensor PSD camera

Analytical PC Storage PC (a) (b) 図 11 超音波画像からの臓器変位追跡システム図(a)と肝静脈の追跡結果(b) (文献 13)の図 1 と図 6 より引用・改変)

久保田

く ぼ た

佳樹

よ し き 2010 年,東京工業大学大学院総合理 工学研究科知能システム工学専攻博士課程修了.同年, 放射線医学総合研究所博士研究員.その後,群馬大学 特任助教を経て,2014 年,群馬大学重粒子線医学研究 センター助教になり,現在に至る.医学物理,医用画 像処理に関する研究に従事.博士(工学).

図 1 放射線治療の照射までの流れ

参照

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