Title
Inhibitory effects of Hochu-ekki-to on endometrial carcinogenesis
induced by N-methyl-N-nitrosourea and 17β-estradiol in mice(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
小野木, 京子
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第703号
Issue Date
2007-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/23083
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 小野木 京 子 (岐阜県) 博 士 (医学) 甲第 703 号 平成19 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項核当 InhibitoryeffectsofHochu-ekki-tOOnendometrialcarcinogenesis
induced by N-methyl-N-nitrosourea and17β-eStradiolin mice
(主査) 教授 森 秀 樹 (副査) 教授 永 田 知 里 教授 柴 田 敏 之 論文内容の要旨 今日,漢方薬は科学的医学研究のみならず,代替医療など臨床の場でも広く使用されてきている。今 回我々が使用した補中益気湯は,貴書,白粥,人参,当帰,柴胡,大乗,陳皮,甘草,升麻,生妾の 10種類の生薬から構成されており,その主成分は,四君子湯(黄者,人参,甘草,扶苓)である。 臨床の場では,補中益気湯は,消化機能の衰え,食欲不振などに使用され,生体防御機能の回復をも たらす補剤の代表とされている。 我々はこれまでに,マウス子宮内膜発癌においてc-ゐ∫,C-.カ〟フの発現抑制と関連して,甘草が抑制 作用を有することを報告してきた。一方,補中益気湯に含まれる甘草には,アポトーシス誘導に関連 して,胃癌の発育抑制を有するとの報告もなされている。また,補中益気湯には,免疫賦活作用を有 するとも報告されている。現在,臨床の場においても,悪性腫瘍の放射線療法や化学療法に伴う消化 器症状の副作用を軽減させる効果が認められており広く活用されている。 c-fb∫,C-ノ〟βは細胞が増殖刺激を受けた際に一過的に発現が誘導される遺伝子で,細胞増殖の制御 に重要な役割を果たしている。さらに,C-fbs,C-junの発現はestradiol-17β(E2)により一過的に増 強し,我々はこれまでに,エストロゲンが,N-methyl-N-nitrosourea(MNU)投与下のICR雌マウスにお ける子宮内膜発癌を増強させ,C-fbs,C-jiLnO)発現を誘導している見解を報告してきた。Interleukin (IL)-1αやtumor necrosis factor(TNF)-1αといった内因性サイトカインは発癌過程のみならず悪性
化進展においても重要な因子とされている。また,eStrOgenは生殖器,骨などに幅広く作用するホル モンであり,生殖器癌の増殖にも深く関与し,eStrOgen reCeptOrS(ERs)を介して作用を発揮する。 ERsには,ER-αとER-βがあり,存在する臓器によりその比率も作用も異なるとされる。 我々はこれまでに,四物湯(地黄,筍薬,川考,当帰)を主成分とする十全大補湯(黄者,桂皮, 地黄,筍薬,川考,当帰,貴書,人参,甘草,荏苓)がマウス子宮内膜発癌に対して化学予防作用を 有し,その作用はエストロゲンにより誘導されるc-fbs,C-jEmおよびIL-1αやTNF-1α,さらには ER-α,ER-βmRNAの発現抑制に関連していることを報告してきた。そこで今回我々は,マウス子宮に おける,E2に誘導されたc-fbs,C-hn,IL-1α,TNF-α,ER-α,ER-βmRNAの発現に対する補中益
気湯の効果を短期実験として,reVerSe tranSCriptin-pOlymerase chain reaction(RT-PCR)法および Southern blot法により検討した。さらに長期実験において,MNUやE2によって誘導されたマウス子 宮内膜発癌に対する補中益気湯の作用を検討した。 研究方法 1)短期実験 12適齢のICR雌マウスをエーテル麻酔下開腹し両側卵巣摘出し,1週間後より両側卵巣摘出マ ウスに,マウスの食餌の平均摂取量とヒトのclinicaldose(7.5g/50kg/日)より算出した0.2% 補中益気湯E2(5ppm)を各々の単独投与群と併用投与群およびコントロール群の4群(各6 mice)に分け,2週間経口投与した後,子宮摘出し,C-fbs,C-jun,IL-1α,TNF-α,ER-α,ER-βmRNA発現に対する影響をRT-PCR法およびSouthern blot法を用いて半定量的に解析した。
-51-2)長期実験 長期実験では,10週齢ICR雌マウスをエーテル麻酔下開腹し,左側子宮にMNU(1mg/100g body weight)を,右側子宮にはコントロール群として生理食塩水を投与し,開腹した。1週間後より, 第1群(23mice):0.2%補中益気湯および5ppmE2併用投与群,;第2群(25mice):5ppmE2投 与群;第3群(25mice):0.2%補中益気湯投与群;第4群(24mice):基礎食投与群の4群に分類 した。脚U投与開始より30週間後に,ICRマウスの平均体重および病理学的にⅦ0の診断基準に基づ き,a)単純型子宮内膜増殖症,b)複雑型子宮内膜増殖症,C)子宮内膜異型増殖症およびd)子 宮内膜癌の4病変に診断し,発生頻度を各群間で比較評価した。 結果 1)短期実験 補中益気湯投与群は,E2により誘導されたc-jun(Pく0.001),TNF一α(Pく0.005),ER-α(Pく0.001) mRNA発現を有意に抑制した。また,ER-βmRNA発現に関しても,補中益気湯併用群ではE2単独 投与群より有意に抑制した(P〈0.005)。 2)長期実験 補中益気湯投与は,マウスの平均体重を有意に増加させた(第1群vs第2群,第3群vs第4群, Pく0.05)。 また,第1群(補中益気湯併用投与群)は,第2群(E2単独投与群)より,マウス子宮内膜癌 の発生頻度を有意に減少させた(Pく0.05)。 考察・結語 我々はこれまでに,四物湯を主成分とする十全大補湯がマウス子宮内膜発癌に対して化学予防作用 を有し,その作用はエストロゲンにより誘導されるc-fbs,C-junおよびIL-1α,TNF-α,さらには ER-α,βmRNAの発現抑制に関連していることや,補中益気湯の主成分である四君子湯に含まれる甘 草が,マウス子宮内膜発癌に対して,C-hs,C∴カm mRNA発現抑制と関連して,化学予防作用を有す る事を示してきた。さらに今回の実験では,E2により誘導されたc-jun(Pく0.001),TNF-α(Pく0.005), ER-α(Pく0.001),ER-β(Pく0.005)mRNA発現に関して,補中益気湯が有意に抑制した。また一方でこ れらの結果は,我々がこれまでに行ってきた同様の実験系での十全大補湯での結果と差異を示した。 これらのことより,我々は,十全大補湯での抑制作用は四物湯によるものと推察されている(BioI PharmBul12004)ため,今回の実験における四君子湯を主成分とする補中益気湯における抑制作用と は,異なる経路を介して間接的抗腫瘍効果があることを示唆したと考える。今回の我々の実験では, protooncogenes,サイトカイン,ERTα/βの変動などと関連して薬理作用の相違を証明し得る結果を 得たと考えた。今後更に,これらの薬理作用を解明するなど,補中益気湯のような多成分系の漢方方 剤が異なった作用メカニズムを示すことにより,今後漢方薬による分子標的治療も可能であると考え られる。 論文審査の結果の要旨 申請者 小野木京子は,補中益気湯がマウス子宮内膜発癌に対し,抑制作用を有することを示した。 本研究は,婦人科腫瘍学並びに臨床病理学の発展に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] InhibitoryeEbctsofH∝hu-ekki-tOOnendometrialcarcinogenesisinducedbyN・meth汁N-nitrosou代aand 17β-eStradiolinmke ONCOIJOGYREPORTS16,1343-1348(2006).