Title
Distribution of Tissue Characteristics of Coronary Plaques
Evaluated by Integrated Backscatter Intravascular Ultrasound:
Differences between the Inner and Outer Vessel CurvatureLRH-1
heterozygous knockout mice are prone to mild obesity( 要約版
(Digest) )
Author(s)
佐藤, 裕信
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第990号
Issue Date
2015-04-15
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/51115
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Repository(Form4)学位論文要約
Extended Summary in Lieu of the Full Text of a Doctoral Thesis
甲第
990 号
氏 名:
Full Name佐 藤 裕 信
Hironobu Sato
学位論文題目
:
IB-IVUS を用いた冠動脈プラークにおける組織性状分布の評価:小彎側と大彎側との 比較Thesis Title Distribution of Tissue Characteristics of Coronary Plaques Evaluated by Integrated Backscatter Intravascular Ultrasound: Differences between the Inner and Outer Vessel CurvatureLRH-1 heterozygous knockout mice are prone to mild obesity
学位論文要約:
Summary of Thesis 冠動脈プラークの安定性はその組織性状に関連しており,組織性状を解析することは急性冠症候群発症の 予測と予防のために重要である。また,冠動脈プラークの分布は同じ動脈硬化リスクファクターを有する患 者でも一様でなく,血流による血管壁へのずり応力の違いや血流の乱れが原因の一つと報告されている。狭 窄部位の小彎側下流では,大彎側に比べてずり応力が弱く,粥状硬化が進行しやすい。しかし,冠動脈プラ ークの組織性状の小彎側と大彎側の違いについて生体内で検討した報告はない。それは,最近まで生体内で 冠動脈プラークの組織性状を診断する装置が存在しなかったからである。我々は最近,血管内超音波検査 (IVUS)に超音波後方散乱波(integrated backscatter:IB)の解析を組み合わせ,IB 値を計算することによ り冠動脈二次元カラーコードマップを作成し,冠動脈プラークの組織性状(石灰化成分 calcification,線 維成分 fibrous,脂質成分 lipid)診断を可能とする IB-IVUS 装置を開発した。本研究の目的は,IB-IVUS を用いて冠動脈の軽度または中等度狭窄病変における小彎側と大彎側の組織性状 の違いを明らかにすることである。 【対象と方法】 冠動脈左前下行枝に対して経皮的冠動脈形成術(PCI)を行った連続 293 症例のうち,中等度狭窄(プラーク 面積率 50%以上 75%未満)を有しない症例,3か月以内の不安定狭心症または心筋梗塞,心房細動,左室駆 出率 30%以下,解析が不可能な画質低下,石灰化が 30°以上,前後 10 ㎜以内に側枝や過去に留置されたステ ントがある症例を除いた 66 症例を抽出,中等度狭窄 66 病変を対象とした。そのうちプラーク面積率 30%以 上 50%未満の軽度狭窄 49 病変も対象とした。左前下行枝のみを研究対象とした理由は,中隔枝を目印とし て小彎側を容易に同定できるためである。 TERUMO 社製 IVUS カテーテル(ViewIT)を用いて病変を観察し IB-IVUS 画像を専用のシステム(VISIWAVE)を用いて解析した。病変部の最狭窄部位を中心として,中心と その前後 0.5mm,1.0mm,1.5 ㎜の合計 7 断面を解析した。小彎側である中隔枝の方向を基準に,血管を 90° ずつ,(1)小彎側(2)大彎側(3)小彎側から時計軸回転方向の側壁(4)小彎側から反時計軸回転方向の側壁にそ れぞれ4分割した。各部位における,石灰化成分(calcification),線維成分(fibrous),脂質成分(lipid) の 3 つの成分の割合を測定し,その結果を平均して検討した。倫理委員会の承認を得て研究を実施し,各患 者より内容の説明後に同意を取得した。 【結果】 冠動脈左前下行枝の中等度狭窄病変において,冠動脈プラークが一番厚い部位は,小彎側から時計回転方向 に+12.4 ± 68.4˚,軽度狭窄病変では+14.7 ± 64.6˚であった。脂質成分が占める割合は,小彎側(52 ± 16%), 小彎側から時計軸回転方向の側壁(42 ± 14%),小彎側から反時計軸回転方向の側壁(39 ± 16%),大彎側(35 ± 18%)であり,小彎側が他の 3 つの部位と比較して最も多かった(p<0.05)。逆に線維成分が占める割合は,小
彎側(48 ± 16%),小彎側から時計軸回転方向の側壁(59 ± 13%),小彎側から反時計軸回転方向の側壁(61 ± 16%),大彎側(66 ± 15%)であり,小彎側が他の 3 つの部位と比較して最も少なかった(p<0.05)。石灰化成分 の割合は 4 つの部位で有意差は認めなかった。また,中等度狭窄病変において,最も脂質成分の多かった部 位は小彎側で(p<0.001),最も線維成分の多かった部位は大彎側であった(p<0.001)。どちらも軽度狭窄病変 ではそのような違いは認めなかった。 【考察】 本研究では,冠動脈左前下行枝の中等度狭窄病変において小彎側にプラークの不安定要素である脂質成分を 多く認めた。過去の病理学的検討では,冠動脈硬化の進展は心筋側,すなわちずり応力の小さい小彎側で多 く認められている。本研究の所見は生体内では世界で初めて得られたものであり,過去の病理学的所見と一 致した。急性冠症候群は主に,狭窄度は軽度~中等度であっても薄い線維性被膜で覆われた大きな脂質成分 を有するプラークの破綻により発症するため,冠動脈プラークの組織性状とその分布を生体内で把握するこ とは急性冠症候群の予測と予防のために重要である。本研究の所見から,血管造影で認められる左前下行枝 の小彎側のプラークは大彎側のプラークより多くの脂質成分を含んでおり,より慎重な経過観察が必要であ ることが示唆される。 冠動脈側枝もずり応力の低下や乱流をもたらし,粥状硬化を促進する原因となるが,本研究では対角枝側(小 彎側から時計軸回転方向の側壁)とその対側では脂質成分の割合に差を認めなかった。本研究では側枝のな い部位を対象にしており,乱流の影響が少ないことが理由の一つと考えられた。また,軽度狭窄病変では中 等度狭窄病変と同様の結果は認めなかった。この理由の一つとして,粥状硬化初期の軽度狭窄病変では血流 の影響を受ける期間が短いことが推測された。一方,冠動脈プラークの厚みは軽度狭窄病変と中等度狭窄病 変の両者とも小彎側で大きいことから,冠動脈プラークは,ずり応力や血流の影響を受けながら偏って始ま り,組織性状は粥状硬化の進展と共に徐々に変化していく可能性が示唆された。 【結論】 冠動脈左前下行枝の中等度狭窄病変において,脂質成分は小彎側に,線維成分は大彎側に偏って分布してい た。軽度狭窄病変ではそのような傾向は認められなかった。冠動脈プラークは偏って進展し,組織性状は動 脈硬化の進展と共に変化していく可能性が示唆された。